JP4866086B2 - 組み合わせレンズ、色収差の補正方法 - Google Patents

組み合わせレンズ、色収差の補正方法 Download PDF

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Description

本発明は、D線波長光に対する屈折率が1.48以下であり、かつ、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーを含む光学部品材料に関し、詳しくは、該光学部品材料を成形して得られる反射防止膜および光学レンズに関する。
近年のマルチメディア技術の発達に伴って、撮影記録映像の高画質化や受像映像の高精細化が要求されている。受像映像の高精細化では、受像機器のディスプレイ表面での反射を小さくして、光の映り込みによる見づらさを低減する必要がある。また、撮影時の高画質化のためには、使用するカメラやビデオカメラの光学系内で発生する収差を補正する必要がある。
一般に、ディスプレイ表面での反射を抑制するために、表面には反射防止処理が施されている。非特許文献1によると、反射抑制には、表面に凹凸をつけて反射光を散乱させて防眩効果を利用する方法と、反射波の光の干渉効果を利用する方法がある。後者の効果を利用する反射防止膜は、高屈折率の透明基材と低屈折率の薄膜から構成されている。そして、反射防止効果を向上させるためには、より屈折率の低い材料を薄膜に使用することが有効であることが記載されている。
また、非特許文献2によると、撮像機器の光学系内で発生する収差には、球面収差、コマ収差、非点収差、歪曲収差、像面収差といった単色収差と色収差がある。特に、色収差が大きくなると色にじみが大きくなり、カラー画像としての画質が極端に低下する。この色収差補正は、高屈折率レンズとアッベ数の大きいレンズを組み合わせた、組み合わせレンズによって改善できることが記載されている。
色収差補正のための高屈折率レンズ材料としてポリカーボネート、アッベ数の大きいレンズ材料としてフッ化カルシウムが知られている。しかしながら、フッ化カルシウムはポリカーボネートと異なって無機化合物の結晶であるために、レンズとして使用するには単結晶から削りだし研磨を行う必要がある。さらに、軟らかく傷が付きやすいこと、劈開しやすいことから、製造コストが高価であるとともに、大量生産に適さない問題があった。
従って、これらの問題を解決するための無色透明な低屈折率の材料やアッベ数の大きい有機材料が望まれていた。
無色透明な低屈折率材料として、非特許文献3には、以下の一般式(2)であらわされる繰り返し構造単位を含む、D線波長光に対する屈折率が1.29〜1.31のパーフルオロポリマーが開示されている。
Figure 0004866086
また特許文献1には、以下の一般式(3)であらわされる繰り返し構造単位を含むD線波長光に対する屈折率が1.34のパーフルオロポリマーが開示されている。
Figure 0004866086
しかしながら、これらの文献のパーフルオロポリマーは、フッ素原子を多く含むことから、ポリマーを溶かすためには、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)やパーフルオロベンゼン等のようなフッ素含有率の高い特殊で高価な有機溶媒を必要とする。よって、反射防止膜のように、ポリマーを溶液化して使用するプロセスにおいては、製造コストを安くするためにも、フッ素原子を含まない安価な溶媒に溶けるポリマーが望まれる。更に、上記のパーフルオロポリマーを成形して得られる成形品は、テフロン(登録商標)と同じように、成形品表面とコート材料との密着性が低いために、薄膜やレンズの表面硬度を強化するためのハードコート等の表面処理を行っても、コート層が剥離しやすい問題点がある。従って、コート材料との密着性を高くするためには、表面極性の程度を表す水接触角を小さくする必要がある。
また上記のパーフルオロポリマーは、熱安定性が悪いために、高温で加熱成形すると、ポリマーが分解して腐食性のフッ素ガスを発生させる。このフッ素ガスによって、ステンレス製の成形用金型は腐食されるため、金型には耐腐食性を有する高価な材料を使用する必要がある。
この他の溶融成形可能な低屈折率でアッベ数の大きい材料として、例えば、屈折率1.46、アッベ数61のポリ(4−メチル−1−ペンテン)がある。しかしながら、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)は結晶性ポリマーであるために、成形により結晶化した部分の収縮率が大きく、また成形品中に非晶部分と結晶部分が存在することによって乱反射が生じて透明性を低下させるため、反射防止膜や光学レンズに必要な精密成形やレンズ用途には不向きである。
従って、フッ素原子を含まない溶媒にも可溶であり、屈折率が低く、透明性が高く、および表面極性が高い、即ち水接触角が小さい、反射防止膜用の材料、また、屈折率が低く、高いアッベ数を有し、透明性が高く、表面極性が高く、および熱可塑性であるとともに、熱安定性が良好である、光学レンズ用の材料の開発が望まれている。
特許文献2には、157nmの紫外線に対する吸収係数が3.0μm−1以下の高い透明性を示す部分的にフッ素原子を含有するフッ素含有環状オレフィンポリマーがあげられており、その透明性を活かしたペリクル膜への適用が開示されている。しかしながら、D線波長光に対する屈折率、アッベ数、表面極性、溶媒への溶解性についての特性や、それらの特性を利用した用途については開示されていない。

ディスプレイ用光学フィルム、監修 井出文雄、シーエムシー出版 2004年2月29日発行 プラスチックレンズの技術と応用、監修 村中昌幸、シーエムシー出版2003年6月30日発行 Proceedings of SPIE The International Society for Optical Engineerings(1990),vol.1330,p142 特開平1−131215号公報 WO2002/088216号公報
本発明は、D線波長光に対する屈折率が1.48以下であり、かつ、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーを含む光学部品材料、並びに、該光学部品材料を成形して得られる反射防止膜および光学レンズを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来のパーフルオロポリマーと異なって、特定の構造を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーが、屈折率が低く、フッ素を含まない溶媒にも可溶であり、表面極性が高いことから、反射防止膜用の材料に好適に使用できること、および、熱可塑性であるとともに、熱安定性が高く、表面極性が高く、透明性に優れ、高いアッベ数を有することから光学レンズ用の材料として好適に使用できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
[1]D線波長光に対する屈折率が1.48以下であり、アッベ数が60以上であり、かつ、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーを成形して得られる光学レンズと、高屈折レンズとの組み合わせレンズの提供。
Figure 0004866086
(式(1)中、Xは炭素原子または酸素原子を示し、R1〜R4のうち、少なくとも1つは、フッ素原子、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルキル、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルコキシまたは、フッ素原子を含有する炭素原子数2〜10のエーテル基含有アルキルであり、R1〜R4が互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは、0または1の整数を表す。)
[2]一般式(1)で表わされる繰り返し構造単位中のフッ素原子の含有率が20〜75質量%である、前記[1]に記載の組み合わせレンズの提供。
[3]フッ素含有環状オレフィンポリマーの水接触角が105°以下である、前記[1]または[2]に記載の組み合わせレンズの提供。
[4]D線波長光に対する屈折率が1.48以下であり、アッベ数が60以上であり、かつ、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーを成形して得られる光学レンズと、高屈折レンズとを組み合わせて使用することを特徴とする色収差の補正方法を提供することである。
Figure 0004866086
(式(1)中、Xは炭素原子または酸素原子を示し、R 1 〜R 4 のうち、少なくとも1つは、フッ素原子、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルキル、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルコキシまたは、フッ素原子を含有する炭素原子数2〜10のエーテル基含有アルキルであり、R 1 〜R 4 が互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは、0または1の整数を表す。)
本発明の、D線波長光に対する屈折率が1.48以下であり、かつ、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーは、フッ素原子を含まない有機溶媒に可溶であり、表面極性が高く、即ち水接触角が小さいことから、反射防止膜として好適に使用することができる。
また、熱可塑性であるとともに、優れた熱安定性を有することから射出成形を行なうことができ、光学レンズ等を生産効率良く得ることができる。
また、表面極性が高いことから、薄膜やレンズの表面硬度を強化するための表面コート層との密着性が良好であり、更に透明性に優れ、アッベ数が60以上と大きいことから、色収差補正に際して高屈折率のレンズと組み合わせて好適に用いることができ、工業的に極めて価値がある。
以下に、本発明におけるフッ素含有環状オレフィンポリマーからなる光学部品材料について詳述する。
[フッ素含有環状オレフィンポリマー]
本発明におけるフッ素含有環状オレフィンポリマーは、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有することを特徴としている。
Figure 0004866086
(式(1)中、Xは炭素原子または酸素原子を示し、R1〜R4のうち、少なくとも1つは、フッ素原子、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルキル、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルコキシまたは、フッ素原子を含有する炭素原子数2〜10のエーテル基含有アルキルであり、R1〜R4が互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは、0または1の整数を表す。)
さらに詳しくは、式(1)中R1〜R4としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロピル基、ノナフルオロブチル基、パーフルオロシクロペンチル基等のフッ素を含有する炭素原子数1〜10のアルキル;トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロブトキシ基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロポキシ基、ヘプタフルオロブトキシ基、パーフルオロシクロペントキシ基等のフッ素を含有する炭素原子数1〜10のアルコキシ;メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、2−メチルイソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基等の炭素原子数2〜10のエーテル基含有アルキルから選ばれる。また、nは、0または1の整数である。
本発明においてフッ素含有環状オレフィンポリマーは、一般式(1)で表される繰り返し構造単位のみでもよく、一般式(1)のR1〜R4、Xおよびnの少なくとも1つが互いに異なる二種類以上の構造単位からなるものであってもよい。さらに本発明の効果を損なわない範囲であれば一般式(1)で表される繰り返し構造単位以外の繰り返し構造単位を含んでいてもよいが、一般式(1)以外の繰り返し構造単位の含有量は、50質量%以下であることが好ましい。
本発明において、一般式(1)で表わされる構造単位中のフッ素原子の含有率は、以下の数式(1)により求めることができる。
フッ素原子の含有率(質量%)=( Fn × 19 ) × 100 / Fw (1)
ここで、数式(1)中、Fnは一般式(1)で表わされる構造単位中のフッ素原子の数、Fwは一般式(1)で表わされる構造単位の式量を表わす。
数式(1)で表されるフッ素原子の含有率は、20〜75質量%、好ましくは20〜70質量%である。
また、構造単位の同定と該構造単位中のフッ素含有率の測定は、NMRと元素分析を用いることによって測定することもできる。
従来フッ素原子を含むポリマーは、そのポリマー中のフッ素原子の割合が多くなると屈折率は低くなるが、同時に表面極性は小さく、即ち水との接触角は大きくなる。
これに対して、一般式(1)で表わされる特定の構造を有するとともに、上記のフッ素含有率が特定の範囲にある、本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマーは、フッ素原子による電子吸引効果によって紫外領域での光吸収が小さくなり、D線波長光に対する屈折率が1.48以下と低いとともに、水接触角が105°以下の極めて優れた特性を有するポリマーである。
本発明においてフッ素含有環状オレフィンポリマーは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、500〜1,000,000、好ましくは5,000〜300,000の範囲にある。この重量平均分子量(Mw)が500以上であると、ポリマーとしての物性が発現することから好ましい。また、1,000,000以下であると、薄膜形成や射出成形時の流動性が損なわれることがなく好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、1.0〜5.0の範囲にあるが、例えば均一な厚みの薄膜形成や良好な射出成形性を得るためには、分子量分布は広い方が好ましく、1.4〜5.0、さらに1.5〜3.0であることが好ましい。
また、本発明におけるフッ素含有環状オレフィンポリマーは低屈折率であり、アッベ数が高い(以降、アッベ数が高いことを、高アッベ数と記載する)光学的特徴を有する。
なお、アッベ数とは、以下の数式(2)により表される数値で、可視光領域における屈折率変化の程度を示している。
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc) (2)
ここで、数式(2)中、ndはD線屈折率(波長589nm)、nfはF線屈折率(波長486nm)、ncはC線屈折率(波長656nm)を表わす。
従って、高アッベ数の物質は、可視光領域において屈折率変化が小さく直進性の高い性質であることを表している。
本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマーのアッベ数は60以上、好ましくは60〜120であり、さらに60〜100であることが好ましい。
本発明におけるフッ素含有環状オレフィンポリマーは低屈折率で、高アッベ数であることから、例えば、ディスプレイや反射防止膜等の情報表示分野の光学フィルム;カメラ、ビデオカメラ、プロジェクションテレビ、レーザープリンター、マイクロレンズアレイ等の撮像および投影用光学レンズ;光ファイバー、光ファイバー用コネクター、光導波路等の情報伝送部品などの光学部品材料に好適に用いることができる。
本発明におけるフッ素含有環状オレフィンポリマーは、一般式(1)で表わされる特定の構造を有することにより、D線に対する極めて低い屈折率を得ることができ、D線波長光に対する屈折率は、1.48以下、好ましくは1.30〜1.48であり、この屈折率範囲において、光は優れた直進性を示す。なお、屈折率の下限値は空気の1であり、水は1.33である。
また、本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマーは、可視光領域の光線透過率が80%以上、好ましくは85〜100%であることが好ましい。
また、本発明におけるフッ素含有環状オレフィンポリマーの水接触角は105°以下、好ましくは50〜105°、さらに80〜100°であることが好ましい。また、一般式(1)中のXを酸素とすることによって、Xが炭素原子の場合よりも水接触角をさらに小さくすることができる。
また、本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマーは、300℃で5分間加熱したときの質量減少量が0.1%未満、好ましくは0.07%未満であり、熱可塑性で且つ熱安定性に優れることから溶融成形することができる。
[フッ素含有環状オレフィンポリマーの製造]
本発明においてフッ素含有環状オレフィンポリマーは、一般式(4)で表わされるフッ素含有環状オレフィン単量体を、開環重合触媒によって開環重合し、得られる重合体の主鎖のオレフィン部を水素添加処理することによって合成することができる。
Figure 0004866086
(式(4)中、Xは炭素原子または酸素原子を示し、R1〜R4のうち、少なくとも1つは、フッ素原子、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルキル、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルコキシまたは、フッ素原子を含有する炭素原子数2〜10のエーテル基含有アルキルであり、R1〜R4が互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは、0または1の整数を表す。)
さらに詳しくは、式(4)中R1〜R4としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロピル基、ノナフルオロブチル基、パーフルオロシクロペンチル基等のフッ素を含有する炭素原子数1〜10のアルキル;トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロブトキシ基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロポキシ基、ヘプタフルオロブトキシ基、パーフルオロシクロペントキシ基等のフッ素を含有する炭素原子数1〜10のアルコキシ;メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、2−メチルイソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基等の炭素原子数2〜10のエーテル基含有アルキルから選ばれる。また、nは、0または1の整数である。
一般式(4)で表わされるフッ素含有環状オレフィン単量体は、例えばWO2002/088216号公報に記載されている合成方法によって得ることができる。
また、本発明においてフッ素含有環状オレフィンポリマーの製造に用いる単量体としては、一般式(4)で表されるフッ素含有環状オレフィン単量体のみでもよく、一般式(4)のR1〜R4、Xおよびnの少なくとも1つが互いに異なる二種類以上の単量体を組み合わせて用いてもよい。さらに本発明の効果を損なわない範囲であれば一般式(4)で表されるフッ素含有環状オレフィン単量体以外の単量体を含んでいてもよい。
フッ素含有環状オレフィン単量体の開環重合において使用する重合触媒としては、例えば開環メタセシス重合触媒を挙げることができる。開環メタセシス重合触媒としては、開環メタセシス重合を行うことができる触媒であれば限定はされないが、例えば、W(N−2,6−Pr )(CHBu)(OBu、W(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMeCF、W(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMe(CF、W(N−2,6−Pr )(CHBu)(OC(CF、W(N−2,6−(ME))(CHBu)(OC(CF、W(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OBu、W(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMeCF、W(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF、W(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OC(CF、W(N−2,6−Me)(CHCMePh)(OC(CF、またはW(N−2,6−Me)(CHCHCMePh)(OBu(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMe)(OBu(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCPh)(OBu(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMePh)(OCMe(CF))(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF))(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCPh)(OCMe(CF))(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMePh)(OCMe(CF(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCPh)(OCMe(CF(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMePh)(OC(CF(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMe)(OC(CF(PR)、W(N−2,6−Me)(CHCHCPh)(OC(CF(PR)、W(N−2,6−Pr )(CHCHCMePh)(OCMe(CF))(PR)、W(N−2,6−Pr )(CHCHCMePh)(OCMe(CF(PR)、W(N−2,6−Pr )(CHCHCMePh)(OC(CF(PR)、W(N−2,6−Pr )(CHCHCMePh)(OPh)(PR)、またはW(N−2,6−Me)(CHCHCMePh)(OBu(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMe)(OBu(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCPh)(OBu(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMePh)(OCMe(CF))(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF))(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCPh)(OCMe(CF))(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMePh)(OCMe(CF(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCPh)(OCMe(CF(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMePh)(OC(CF(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCMe)(OC(CF(Py)、W(N−2,6−Me)(CHCHCPh)(OC(CF(Py)、W(N−2,6−Pr )(CHCHCMePh)(OCMe(CF))(Py)、W(N−2,6−Pr )(CHCHCMePh)(OCMe(CF(Py)、W(N−2,6−Pr )(CHCHCMePh)(OC(CF(Py)、W(N−2,6−Pr )(CHCHCMePh)(OPh)(Py)等のタングステン系アルキリデン触媒。
また、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OBu、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMeCF、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMe(CF、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OC(CF、Mo(N−2,6−Me)(CHBu)(OC(CF、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF))、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OC(CF、Mo(N−2,6−Me)(CHCMePh)(OC(CF、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OBu(PR)、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMeCF(PR)、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF(PR)、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OC(CF(PR)、Mo(N−2,6−Me)(CHCMePh)(OC(CF(PR)、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OBu(Py)、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMeCF(Py)、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF(Py)、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OC(CF(Py)、Mo(N−2,6−Me)(CHCMePh)(OC(CF(Py)(但し、式中のPrはiso−プロピル基を示し、Rはメチル基、エチル基等のアルキル基またはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を示し、Buはtert−ブチル基を示し、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示し、Pyはピリジン基を示す。)等のモリブデン系アルキリデン触媒や、Ru(CHCHCPh)(PPhCl(但し、式中のPhはフェニル基を示す。)等のルテニウム系アルキリデン触媒をあげることができる。
また、上記開環メタセシス重合触媒の他に、有機遷移金属錯体、遷移金属ハロゲン化物または遷移金属酸化物と、助触媒としてのルイス酸との組み合せからなる開環メタセシス重合触媒を用いることもでき、例えば、W(N−2,6−Pr )(thf)(OBuCl、Mo(N−2,6−Pr )(thf)(OBuCl、(但し、式中のPrはiso−プロピル基を示し、Buはtert−ブチル基を示し、thfはテトラヒドロフランを示す。)等のタングステン、モリブデン等の遷移金属ハロゲン錯体;MoCl、WCl、ReCl、TiCl、RuCl、IrCl等の遷移金属ハロゲン化物;トリメチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、テトラメチル錫等の有機錫化合物等の助触媒があげられる。
さらにまた、これらの開環メタセシス重合触媒は、単独または、二種以上を組合わせて用いてもよい。
フッ素含有環状オレフィン単量体の開環メタセシス重合において、フッ素含有環状オレフィン単量体と開環メタセシス重合触媒とのモル比は、タングステン、モリブデン、またはルテニウム等の遷移金属アルキリデン触媒の場合は、遷移金属アルキリデン錯体1モルに対して、該単量体が10モル以上であり、好ましくは30モル以上である。また、有機遷移金属ハロゲン錯体または遷移金属ハロゲン化物または酸化物と有機金属化合物からなる開環メタセシス触媒の場合、有機遷移金属ハロゲン錯体または遷移金属ハロゲン化物または酸化物1モルに対して、該単量体が10モル以上、好ましくは30モル以上であり、助触媒としての有機金属化合物は、有機遷移金属ハロゲン錯体または遷移金属ハロゲン化物または酸化物1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは1〜50モルとなる範囲である。
また、フッ素含有環状オレフィン単量体の開環メタセシス重合は、無溶媒でも溶媒を使用しても良いが、特に使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンまたはジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピルまたは酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはエチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサンまたはヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンまたはデカリン等の脂肪族環状炭化水素、またはメチレンジクロライド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンまたはトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メタキシレンヘキサフルオリド等のフッ素含有芳香族炭化水素、パーフルオロヘキサン等のフッ素含有脂肪族炭化水素、パーフルオロシクロデカリン等のフッ素含有脂肪族環状炭化水素、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素含有エーテル類が挙げられ、これらの2種類以上を組合わせて使用しても良い。
本発明において、触媒効率を高めるため、および分子量分布を制御するために、連鎖移動剤としてオレフィンを使用することができる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のオレフィンまたはこれらのフッ素含有オレフィンがあげられ、さらに、ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリイソプロピルシラン等のケイ素含有オレフィンまたはこれらのフッ素およびケイ素含有オレフィンがあげられ、また、ジエンとしては、1、4−ペンタジエン、1、5−ヘキサジエン、1、6−ヘプタジエン等の非共役系ジエンまたはこれらのフッ素含有非共役系ジエンがあげられる。さらに、これらオレフィン、フッ素含有オレフィン、ジエンまたはフッ素含有ジエンはそれぞれ単独または2種類以上を併用しても良い。
上記のオレフィン、フッ素含有オレフィン、ジエンまたはフッ素含有ジエンの使用量は、オレフィンまたはジエンがフッ素含有環状オレフィン単量体1モルに対して0.001〜1000モル、好ましくは0.01〜100モルの範囲である。また、オレフィンまたはジエンが遷移金属アルキリデン錯体のアルキリデンまたは遷移金属ハロゲン化物の1モルに対して0.1〜1000モル、好ましくは1〜500モルの範囲である。
フッ素含有環状オレフィン単量体の開環メタセシス重合では、該単量体の反応性および重合溶媒ヘの溶解性によっても異なるが、溶媒に対するフッ素含有環状オレフィン単量体の濃度は5〜100質量%、好ましくは10〜60質量%の範囲が好ましく、通常−30〜150℃の反応温度で10分〜120時間反応させ、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類等の失活剤で反応を停止し、重合体の溶液を得ることができる。
フッ素含有環状オレフィンポリマーは、フッ素含有環状オレフィン単量体を開環メタセシス重合して得られたポリマーの主鎖のオレフィン部を、例えば触媒により水素添加反応することによって得ることができる。そして、その水素添加触媒は使用する溶媒の水素添加反応を起こさずに、該ポリマーの主鎖のオレフィン部を水素添加できる触媒であれば、均一系金属錯体触媒でも不均一系の金属担持触媒であってもかまわない。均一系金属錯体触媒として、例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)オスミウム、ジクロロヒドリドビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルホスフィン)ルテニウム等があげられ、不均一系金属担持触媒として、例えば、活性炭担時パラジウム、アルミナ担持パラジウム、活性炭担持ロジウム、アルミナ担持ロジウム等があげられる。これら水添触媒は、単独または二種類以上を組合わせて使用することができる。
上記の主鎖のオレフィン部の水素添加処理をするに際して、公知の不均一系または均一系水素添加触媒を使用する場合、水素添加触媒の使用量は、水素添加触媒中の金属成分が、水素添加処理前のポリマー100質量部に対して5×10−4質量部〜100質量部であり、好ましくは1×10−2質量部〜30質量部である。
水素添加処理の際に用いられる溶媒としては、水素添加処理前のフッ素含有環状オレフィンポリマーを溶解することができるとともに、溶媒自体が水素添加されないものであればどのようなものでもよく、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピルまたは酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族環状炭化水素、メチレンジクロリド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メタキシレンヘキサフルオリド等のフッ素含有芳香族炭化水素、パーフルオロヘキサン等のフッ素含有脂肪族炭化水素、パーフルオロシクロデカリン等のフッ素含有脂肪族環状炭化水素、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素含有エーテル類等があげられ、これらは2種以上を組合わせて使用してもよい。
上記の主鎖のオレフィン部の水素添加反応は、使用する水素添加触媒の種類にもよるが、水素圧力が通常、常圧〜30MPa、好ましくは0.5〜20MPa、特に好ましくは2〜15MPaの範囲で行われ、その反応温度は、通常0〜300℃の温度であり、好ましくは室温〜250℃、特に好ましくは50〜200℃の温度範囲である。水素添加反応の実施様式は、触媒を溶媒中に分散または溶解して行う方法、触媒をカラムなどの容器に充填し、固定相としてポリマー溶液を流通させて行う方法などが例示できる。また、これらの方法以外の様式であってもよい。
さらに、主鎖のオレフィン部の水素添加処理は、水素添加処理前のフッ素含有環状オレフィンポリマーを、重合溶媒から貧溶媒中に析出させポリマーを単離した後に、再度溶媒に溶解して水素添加処理を行なう方法、または、主鎖のオレフィン部が水素添加処理前のフッ素含有環状オレフィンポリマーを重合溶媒から単離することなく、上記の均一系錯体触媒または、または不均一系金属単持触媒によって、該ポリマー溶液をそのまま用いて水素添加反応を行う方法など、特に制限無く採用することができる。
またフッ素含有環状オレフィンポリマーのオレフィン部の水素添加率に特に制限はないが、80%以上、好ましくは90〜100%であることが好ましい。水素添加率が80%未満であれば、オレフィン部に起因する光の吸収によって、屈折率が高くなったり、耐熱性または耐候性を悪化させることがある。
また、水素添加反応を行なうに際して、該ポリマー中に重合に使用したモノマーが残存していてもよく、該モノマーが同時に水素添加されてもよい。
本発明の水素添加されたフッ素含有環状オレフィンポリマーを含む溶液から、フッ素含有環状オレフィンポリマーを回収する方法としては特に制限はなく、例えば、撹拌下の貧溶媒中に反応溶液を排出しフッ素含有環状オレフィンポリマーを凝固させる濾過法、遠心分離法、デカンテーション法等により回収する方法、反応溶液中にスチームを吹き込んでフッ素含有環状オレフィンポリマーを析出させるスチームストリッピング法、反応溶液から溶媒を加熱等により直接除去する方法等があげられる。
[反射防止膜]
本発明の反射防止膜について具体的に説明する。
反射防止膜とは、該膜の表面での光の反射を抑制する機能を有する膜であり、光の反射抑制には、膜の表面に凹凸をつけて反射光を散乱させて防眩効果を利用する方法と、反射波の光の干渉効果を利用する方法がある。後者の効果を利用する反射防止膜は、高屈折率の透明基材と低屈折率の薄膜から構成されている。
本発明における反射防止膜は、一般式(1)で表わされるフッ素含有環状オレフィンポリマーからなる低屈折率の薄膜が、透明基材の片面、両面、中間のいずれに設けられていてもよく、また、本発明における反射防止膜は、透明基材上に設けられた低屈折率の塗布膜の他に、透明基材上に設けられた低屈折率の自立フィルムを含む。
本発明における透明基材としては、無機材料でも有機材料であっても特に制限はない。無機材料としては、例えば、ガラス、石英、スパッタリングや蒸着によって形成された酸化チタン、酸化ニオブ、酸化錫をドープした酸化インジウム等が例示される。また、有機材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ノルボルネン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ジエチレングリコールジアリルカーボネート樹脂等が例示される。
本発明の反射防止膜は、一般式(1)で表わされるフッ素含有環状オレフィンポリマーを溶媒に溶解した溶液を調製した後に、均一に塗布、乾燥することによって透明基材に設ける方法、押出成形等の溶融成形方法によって透明基材に設ける方法によって得ることもできる。また本発明の効果を損なわない範囲でフッ素含有環状オレフィンポリマーを他の樹脂と混合して使用しても、貼り合わせても、ラミネートされても良い。
本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマーは、可視光領域の光線透過率が80%以上、であることが好ましい。該光線透過率が80%以上においては、反射防止膜としてCRTや液晶ディスプレイ表面に設定しても、映像がぼけて見えることがなく好ましい。
本発明におけるフッ素含有環状オレフィンポリマーは、フッ素含有置換基を一般式(1)に示す特定の位置に持つ特定の構造を有することから、フッ素を含まない有機溶媒にも良好に溶ける。一方、非特許文献3や特許文献1のパーフルオロポリマーでは、分子全体がフッ素で覆われた構造であるために、有機溶媒をはじく撥油性が強く、フッ素含有有機溶媒のみだけが該ポリマーを溶解できる。
本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマー溶液を調製する際の溶媒としては、フッ素含有有機溶媒の他にもフッ素を含まない有機溶媒を使用することができる。より安価な溶媒を使用するためには、フッ素を含まない有機溶媒であることが好ましい。
フッ素含有有機溶媒としては、特に制限はないが、例えば、メタキシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メタキシレンヘキサフルオリド等のフッ素含有芳香族炭化水素;パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン等のフッ素含有脂肪族炭化水素;パーフルオロシクロデカリン等のフッ素含有脂肪族環状炭化水素;パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素含有エーテル類等をあげることができる。また、フッ素を含まない有機溶媒としては、特に制限はないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等をあげることができる。
本発明において、本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマー溶液を透明基材上に均一に塗布する方法としては特に制限はなく、例えば、スピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、バーコート、ロールコート、カーテンフローコートなどの方法があげられる。
本発明の反射防止膜の反射率は、空気と低屈折率薄膜との境界で反射した入射光の一部と、低屈折率の薄膜と透明基材の境界面で反射した入射光の干渉光によって決定される。そのために、低屈折率薄膜の膜厚は、光が干渉作用をおこす程度に薄いものが好ましい。
本発明の反射防止膜の膜厚は、使用するフッ素含有環状オレフィンポリマーの屈折率や測定波長にも依存するが、0.05〜10μmであり、0.05〜3μmであることが好ましい。この範囲であると、優れた反射防止効果が得られる。膜厚が薄すぎれば、例えば、入射光との干渉作用による反射率の低減が不十分になることがある。また、膜厚が厚すぎれば、例えば、薄膜が乾燥した際にソリが発生して透明基材から剥離することがある。
また本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマーの水接触角は105°以下であることが好ましい。水接触角が105°以下であれば、反射防止膜等の成形品表面と該成形品表面に施した表面コート材料との密着性が高く、コート材料を剥離しにくくできる。
本発明の反射防止膜では、耐擦傷性を向上させるためのハードコート層を設けることも好ましい態様である。ハードコート層は、例えば、透明基材と本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマーからなる低屈折率の薄膜の間に設けることができる。そして、ハードコート層材料としては、特に制限されないが、例えば、シランカップリング剤、アクリル系樹脂等があげられる。
また、本発明における反射防止膜は、屈折率の異なる多層の膜を積層することによって、さらに低い反射率を得ることもできる。例えば、透明基材と低屈折率の薄膜との中間、あるいはハードコート層と低屈折率の薄膜との中間に、さらに高い屈折率の薄膜を設けることによって反射率の低い反射防止膜を得ることができる。
[光学レンズ]
本発明の光学レンズについて具体的に説明する。
光学レンズは、例えば、カメラ、ビデオカメラ等に使用する撮像レンズ;プロジェクションテレビ等に使用する投影用レンズ;レーザープリンターに使用するfθレンズやマイクロレンズアレイ等に使用されるレンズである。
本発明の光学レンズは、一般式(1)で表わされるフッ素含有環状オレフィンポリマーを成形することによって得ることができる。
本発明におけるフッ素含有環状オレフィンポリマーは、300℃で5分間加熱したときの質量減少量が0.1%未満であり、熱可塑性で且つ熱安定性に優れることから溶融成形することができる。加熱時の質量減少が小さいポリマーは、例えば、成型金型腐食の原因となるフッ化水素などの腐食性の高いフッ素含有ガスの発生量が少なくなるため、金型に耐腐食性を有する高価な材質を使用する必要がない。
本発明におけるフッ素含有環状オレフィンポリマーから光学レンズを成形する方法は特に限定されず、例えば、射出成形、プレス成形、圧縮成形、射出圧縮成形、押出成形などがあげられる。また、本発明の光学レンズを溶融成形する場合の成型温度は、330℃以下であることが好ましい。330℃以下であれば、5分間加熱したときの質量減少量は0.1%未満となり、質量減少に伴うフッ化水素などの腐食性の高いフッ素含有ガスの発生量が少ない。さらに、成形する際には、透明性の低下やアッベ数に影響を与えない範囲で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等の添加剤を添加することもできる。
本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマーを成形して得られる光学レンズのアッベ数は、60以上、好ましくは60〜120、さらに好ましくは60〜100である。アッベ数が60以上であれば、例えば、高屈折レンズと組み合わせて使用した場合に、必要とする色収差の補正効果を得ることができる。
さらに、本発明における光学レンズは、光の乱反射によって生じる透明性の低下を示す一つの指標であるヘイズ値が2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。なお、ヘイズの下限値は0.5%程度である。
また、本発明のフッ素含有環状オレフィンポリマーの反射防止膜、光学レンズ以外の用途としては、透明シート材料、透明フィルム材料、透明防湿膜材料、透明保護膜材料等をあげることができる。
以下、実施例において、本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例において得られたポリマーの各物性値は、以下の方法により測定を行った。
なお、D線屈折率、全光線透過率、ヘイズ、水接触角測定には、厚さ1mmの熱プレス成形試料を使用した。アッベ数の測定には、酸化防止剤のIRGANOX1010を添加し、厚さ3mmに射出成形した試料を使用した。
[フッ素含有率]
構造単位中のフッ素原子の含有率は、以下の数式(1)により算出した。
フッ素原子の含有率(質量%)=( Fn × 19 ) × 100 / Fw (1)
ここで、数式(1)中、Fnは一般式(1)で表わされる構造単位中のフッ素原子の数、Fwは一般式(1)で表わされる構造単位の式量を表わす。
[重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、テトラヒドロフラン(THF)に溶解したポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を以下の条件で、ポリスチレンスタンダードによって分子量を較正して測定した。
検出器:日本分光製830−RIおよび875−UV
カラム:Shodex k−806M,804,803,802.5
流量1.0ml/分
[フッ素含有環状オレフィンポリマーの水素添加率]
水素添加反応を行った開環メタセシス重合体の粉末を重水素化クロロホルム、または重水素化テトラヒドロフラン、またはヘキサフルオロベンゼンと重水素化クロロホルムの混合溶媒に溶解し、270MHz−1H−NMRスペクトルを用いてδ=4.5〜7.0ppmの主鎖の二重結合炭素に結合する水素に由来する吸収スペクトルの積分値より水素添加率を算出した。
[熱安定性]
島津製作所製DTG−60Aを用い、測定試料を空気雰囲下で温度300℃まで昇温した後に、そのままの温度にて20分間加熱を継続して質量減少量の測定を行った。
[屈折率およびアッベ数]
D線屈折率および、アッベ数は、アタゴ社製多波長アッベ屈折計を用いて測定を行なった。屈折率の測定は、表面が鏡面状のステンレス板を用いて熱プレス成形して得られた厚さ1mmの試験片、またアッベ数の測定は、熱安定剤としてIRGANAX1010を添加した試料を射出成形して得られた、厚さ3mmの試験片を用いて測定を行なった。
[全光線透過率およびヘイズ]
日本電色工業製ヘイズメーターNDH2000を用いて、表面が鏡面状のステンレス板を用いて熱プレス成形して得られた厚さ1mmの試験片の可視領域の全光線透過率とヘイズを評価した。
[水接触角]
協和界面科学製自動接触角計CA−V型を用いて、表面が鏡面状のステンレス板を用いて熱プレス成形して得られた厚さ1mmの試験片を使用し、純水を滴下する液滴法によって測定し、解析ソフトFAMASを使用することによって評価を行った。
[反射率]
日立製U−4100分光光度計を用いて測定して、厚さ2mmの樹脂板上に塗布した反射防止膜の平均反射率を380〜780nmの波長領域において測定し、波長450〜650nmの平均反射率を算出して反射率とした。
[実施例1]
5−(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンのTHF溶液に、Mo(N−2,6−(ME))(CHBu)(OC(CFのTHF溶液を添加し、60℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を得た。得られたポリマーの水素添加率は100%、フッ素含有率は35質量%、重量平均分子量(Mw)は43000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.54であった。
次いで、得られた水素添加後のポリマーのTHF溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、スピンコートによってポリカーボネート上に厚さ90nmの反射防止膜を作成した。
D線光波長における屈折率は1.45、光線透過率は94.0%、水接触角は95°であった。また、ポリカーボネート上に形成した反射防止膜の反射率は0.5%であった。
[実施例2]
5,5,6−トリフルオロ−6−(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンの酢酸エチル溶液に、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CFの酢酸エチル溶液を添加し、70℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーの酢酸エチル溶液を得た。得られたポリマーの水素添加率は100%、フッ素含有率は52質量%、重量平均分子量(Mw)は38000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.70であった。
次いで、得られた水素添加後のポリマーの酢酸エチル溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、スピンコートによってポリエチレンテレフタレート上に厚さ120nmの反射防止膜を作成した。
D線光波長における屈折率は1.41、光線透過率は94.3%、水接触角は94°であった。また、ポリエチレンテレフタレートに形成した反射防止膜の反射率は0.4%であった。
[実施例3]
実施例2の水素添加後のポリマーの酢酸エチル溶液を用いて、スピンコートによってポリカーボネート上に厚さ210nmの反射防止膜を作成した。ポリカーボネートに形成した反射防止膜の反射率は0.5%であった。
[実施例4]
5,6−ジフルオロ−5−(トリフルオロメチル)−6−(ペンタフルオロエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンのTHF溶液に、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMe(CFのTHF溶液を添加し、60℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を得た。
次いで、得られた水素添加後のポリマーのTHF溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを得た。得られたポリマーの水素添加率は100%、フッ素含有率は60質量%、重量平均分子量(Mw)は45000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.79であった。
次いで、粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、スピンコートによってポリカーボネート上に厚さ110nmの反射防止膜を作成した。
D線光波長における屈折率は1.39、光線透過率は95.4%、水接触角は95°であった。また、ポリカーボネートに形成した反射防止薄膜の反射率は0.4%であった。
[実施例5]
実施例4の水素添加後のポリマーのメチルエチルケトン溶液を用いて、スピンコートによってポリエチレンテレフタレート上に190nmの反射防止膜を作成した。ポリエチレンテレフタレートに形成した反射防止膜の反射率は0.5%であった。
[実施例6]
5,6−ジフルオロ−5,6−(トリフルオロメチル)−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンの酢酸エチル溶液に、Mo(N−2,6−Me)(CHCMePh)(OC(CFの酢酸エチル溶液を添加し、70℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーの酢酸エチル溶液を得た。得られたポリマーの水素添加率は99.8%、フッ素含有率は56質量%、重量平均分子量(Mw)は70000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.75であった。
次いで、得られた水素添加後のポリマーの酢酸エチル溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、スピンコートによってポリカーボネート上に厚さ105nmの反射防止膜を作成した。
D線光波長における屈折率は1.38、光線透過率は95.5%、水接触角は85°であった。また、ポリカーボネートに形成した反射防止膜の反射率は0.4%であった。
[実施例7]
実施例6の水素添加後のポリマーの酢酸エチル溶液を用いて、スピンコートによってポリカーボネート上に厚さ180nmの反射防止膜を作成した。ポリカーボネートに形成した反射防止膜の反射率は0.5%であった。
[実施例8]
等モル数の5,5,6−トリフルオロ−6−(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと5,6−ジフルオロ−5,6−(トリフルオロメチル)−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンに、さらに1,5−ヘキサジエンを加えた酢酸エチル溶液に、Mo(N−2,6−Me)(CHCMePh)(OC(CFの酢酸エチル溶液を添加し、70℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーの酢酸エチル溶液を得た。得られたポリマーの水素添加率は99.3%、フッ素含有率は54質量%、重量平均分子量(Mw)は117000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.52であった。
次いで、得られた水素添加処理後のポリマーの酢酸エチル溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、スピンコートによってポリエチレンテレフタレート上に厚さ115nmの反射防止膜を作成した。
D線光波長における屈折率は1.39、光線透過率は95.3%、水接触角は92°であった。また、ポリエチレンテレフタレートに形成した反射防止薄膜の反射率は0.4%であった。
[実施例9]
5−(パーフルオロデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンのトリフルオロメチルベンゼン溶液に、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CFのトリフルオロメチルベンゼン溶液を添加し、70℃にて開環メタセシス重合を行った後、トリフルオロメチルベンゼン溶液をメタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状の水素添加前のポリマーを得た。次いで、該水素添加処理前のポリマーをTHF溶液として、該ポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を得た。
次いで、得られたフッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによってフッ素含有環状オレフィンポリマーの粉体を得た。該粉体状のポリマーの水素添加率は99.4%、フッ素含有率は65質量%、重量平均分子量(Mw)は52000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.81であった。
次いで、粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、スピンコートによってポリエチレンテレフタレート上に厚さ120nmの反射防止膜を作成した。D線光波長における屈折率は1.35、光線透過率は95.8%、水接触角は100°であった。また、ポリカーボネートに形成した反射防止薄膜の反射率は0.4%であった。
[実施例10]
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンと1,5−ヘキサジエンのTHF溶液に、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMe(CFのTHF溶液を添加し、温度70℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を得た。得られた水素添加後のポリマーの水素添加率は99.5%、フッ素含有率は25質量%、重量平均分子量(Mw)は80000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.12であった。
次いで、得られた水素添加後のポリマーのTHF溶液を、0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに析出させ、濾過を行うことによって粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを得た。
次いで、得られた粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、スピンコートによってポリエチレンテレフタレート上に厚さ105nmの反射防止膜を作成した。D線光波長における屈折率は1.48、光線透過率は93.9%、水接触角は93°であった。また、ポリカーボネートに形成した反射防止薄膜の反射率は0.6%であった。
[比較例1]
特許文献1の実施例1に従って、パーフルオロアリルビニルエーテルとジイソプロピルパーオキシジカーボネートから、脂環式のパーフルオロポリマーを合成した。得られたポリマーに、トルエン、THF、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)をそれぞれ添加し、さらにスターラーチップを加えて12時間撹拌を行った。
パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を添加したサンプルだけが溶解した。
[比較例2]
比較例1で合成したポリマーの物性を評価した。繰り返し構造単位中のフッ素含有率は67質量%、D線波長光における屈折率は1.34であった。
また、該ポリマーをパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)溶液に調製し、0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、スピンコートによってポリカーボネート上に厚さ195nmの反射防止膜を作成した。反射率は、0.9%であった。
また、スピンコート前のポリカーボネートの水接触角は80°、その上にスピンコートして得られた反射防止薄膜の水接触角は112°であった。
[比較例3]
実施例1において、フッ素含有環状オレフィン単量体を8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンに代えたこと以外は、実施例1と同様に重合反応と水素添加反応を行った。水素添加処理よって得られたポリマーの水素添加率は99.2%、フッ素含有率は11質量%、重量平均分子量(Mw)は54000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.10であった。次いで、得られた水素添加後のポリマーのTHF溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のポリマーを得た。得られた粉体状のポリマーのD線光波長における屈折率は1.52、水接触角は91°であった。
[比較例4]
実施例1において、フッ素含有環状オレフィン単量体を8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンに代えたこと以外は、実施例1と同様に重合反応と水素添加反応を行った。得られた水素添加後のポリマーの水素添加率は99.5%、フッ素含有率は19質量%、重量平均分子量(Mw)は43000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.01であった。
次いで、得られた水素添加後のポリマーのTHF溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のポリマーを得た。得られた粉体状のポリマーのD線光波長における屈折率は1.51、水接触角は90°であった。
[実施例11]
5−(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンのTHF溶液に、Mo(N−2,6−Me)(CHBu)(OCMe(CFのTHF溶液を添加し、60℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を得た。
得られた水素添加後のポリマーのTHF溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを得た。該粉体状のポリマーの水素添加率は100%、フッ素含有率は35質量%、重量平均分子量(Mw)は190000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.77であった。また、熱安定性の評価結果は0.05%であった。この粉体状のポリマーを120℃で射出成形した試料片のアッベ数は69であった。さらにまた、屈折率は、1.45、光線透過率は94.0%、水接触角は95°、ヘイズは0.8%であった。
[実施例12]
5,5,6−トリフルオロ−6−(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンの酢酸エチル溶液に、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CFの酢酸エチル溶液を添加し、70℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーの酢酸エチル溶液を得た。該水素添加後のポリマーの酢酸エチル溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを得た。該粉体状のポリマーの水素添加率は100%、フッ素含有率は52質量%、重量平均分子量(Mw)は120000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.71であった。また、熱安定性の評価結果は0.03%であった。この粉体状のポリマーを170℃で射出成形した試料片のアッベ数は80であった。さらにまた、屈折率は、1.41、光線透過率は94.2%、水接触角は94°、ヘイズは0.7%であった。
[実施例13]
5,6−ジフルオロ−5−(トリフルオロメチル)−6−(ペンタフルオロエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンのメタキシレンヘキサフルオライド溶液に、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMe(CFのメタキシレンヘキサフルオライド溶液を添加し、60℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのメタキシレンヘキサフルオライド溶液をメタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のポリマーを得た。
次いで、得られた粉体状のポリマーをTHF溶液として、該ポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を得た。水素添加後のポリマーのTHF溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを得た。粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーの水素添加率は100%、フッ素含有率は60質量%、重量平均分子量(Mw)は139000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.87であった。また、熱安定性の評価結果は0.05%であった。この粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを170℃で射出成形した試料片のアッベ数は85であった。さらにまた、屈折率は1.39、光線透過率は95.4%、水接触角は、95°、ヘイズは0.7%であった。
[実施例14]
5,6−ビス(ノナフルオロブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンのトリフルオロメチルベンゼン溶液に、Mo(N−2,6−Pr )(CHCMePh)(OCMe(CFのトリフルオロメチルベンゼン溶液を添加し、60℃にて開環メタセシス重合を行った。
得られたポリマーのトリフルオロメチルベンゼン溶液をメタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のポリマーを得た。該粉体状のポリマーをTHF溶液とし、該ポリマーのオレフィン部を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を得た。
水素添加後のポリマーのTHF溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを得た。粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーの水素添加率は100%、フッ素含有率は64質量%、重量平均分子量(Mw)は89000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.81であった。また、熱安定性の評価結果は0.05%であった。さらに粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを150℃で射出成形した試料片のアッベ数は89であった。また、屈折率は1.36、光線透過率は96.1%、ヘイズは0.8%、水接触角は95°であった。
[実施例15]
5,6−ジフルオロ−5−トリフルオロメチル−6−ヘプタフルオロイソプロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと1,5−ヘキサジエンのトリフルオロメチルベンゼン溶液に、Mo(N−2,6−Pr )(CHBu)(OCMe(CFのトリフルオロメチルベンゼン溶液を添加し、70℃にて開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのトリフルオロメチルベンゼン溶液をメタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のポリマーを得た。
得られた粉体状のポリマーをTHF溶液として、開環メタセシス重合体の二重結合を、パラジウムカーボンによって160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を得た。水素添加後のポリマーのTHF溶液を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した後に、メタノールに加えて析出させ、濾過を行うことによって粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを得た。粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーの水素添加率は100%、フッ素含有率は62質量%、重量平均分子量(Mw)は105000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.83であった。また、熱安定性の評価結果は0.03%であった。さらに粉体状のフッ素含有環状オレフィンポリマーを190℃で射出成形した試料片のアッベ数は94であった。また、屈折率は1.34、光線透過率は95.9%、ヘイズは0.8%、水接触角は96°であった。
[比較例5]
比較例1で得たポリマーの熱安定性の評価結果は、0.1%であった。
[比較例6]
ポリ(4−メチル−1−ペンテン)を300℃にてプレス成形し、厚さ1mmの板を成形した。得られた成形板のヘイズ測定結果は2.5%であった。
本発明の特定の構造を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーを含む光学部品材料は、特に、カメラ、ビデオカメラ等に使用する撮像レンズ、プロジェクションテレビ等に使用する投影用レンズ、レーザープリンターに使用するfθレンズやマイクロレンズアレイ等の光学レンズおよび、反射防止膜として使用することができ、工業的価値は極めて高い。

Claims (4)

  1. D線波長光に対する屈折率が1.48以下であり、アッベ数が60以上であり、かつ、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーを成形して得られる光学レンズと、高屈折レンズとの組み合わせレンズ
    Figure 0004866086
    (式(1)中、Xは炭素原子または酸素原子を示し、R1〜R4のうち、少なくとも1つは、フッ素原子、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルキル、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルコキシまたは、フッ素原子を含有する炭素原子数2〜10のエーテル基含有アルキルであり、R1〜R4が互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは、0または1の整数を表す。)
  2. 一般式(1)で表わされる繰り返し構造単位中のフッ素原子の含有率が20〜75質量%である、請求項1に記載の組み合わせレンズ
  3. フッ素含有環状オレフィンポリマーの水接触角が105°以下である、請求項1または2に記載の組み合わせレンズ
  4. D線波長光に対する屈折率が1.48以下であり、アッベ数が60以上であり、かつ、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーを成形して得られる光学レンズと、高屈折レンズとを組み合わせて使用することを特徴とする色収差の補正方法
    Figure 0004866086
    (式(1)中、Xは炭素原子または酸素原子を示し、R 1 〜R 4 のうち、少なくとも1つは、フッ素原子、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルキル、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜10のアルコキシまたは、フッ素原子を含有する炭素原子数2〜10のエーテル基含有アルキルであり、R 1 〜R 4 が互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは、0または1の整数を表す。)
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