JP4860889B2 - チェーン、チェーンホイール及び巻き上げ装置のチェーン伝動装置 - Google Patents

Description

【０００１】
本発明はチェーン、チェーンホイール及び巻き上げ装置（lifting gear）のチェーン伝動装置に関する。
【０００２】
巻き上げ装置として使用されているものは、通常、例えばEP０８１２２９５B1号に開示されているような溶接されたリンクからなる丸みを帯びたスチールチェーンであり、その断面は溶接ビードによって僅かに膨らんでいる部分を除いて、同じ楕円形状である。多くの場合、この種のチェーンが装着された巻上げ装置は必要とされる要件を満たす。しかしながら、新しい巻き上げ装置の開発を任されている業界では新たな試みによってチェーンの耐荷力及び寿命を向上させることを模索している。従って、EP０８１６７１７A2号ではポケットチェーンホイールの通常平坦な部分においてD字状の断面を有する楕円形のリンクからなる巻き上げ装置チェーンを使用し、チェーンホイールを横たわった状態で通過するチェーンリンク（以下、水平リンクとする）とチェーンホイール間の面圧を減少させ、さらにチェーンホイールを起立した状態で通過するチェーンリンク（以下、垂直リンクとする）を良好に支持している。しかしながら、このような手段による性能の向上には限界がある、なぜなら第１に以前と同様にチェーンリンクの動的抵抗（dynamic resistance）に改善の余地があり、第２に水平リンクがポケットホイール上を旋回する際、ポケットホイールのフランクに沿って水平リンクのD字状縁部が回転する間、そこにかなりの面圧が発生するからである。特に採鉱に主に使用されるいわゆる「ヘビーラウンドスチールチェーン」のリンクの疲労破砕のリスクを減らすためにDE４４２６５０６A1号は、コンプレッシングチェーンリンク（compressing chain links）なるものを開示しており、このチェーンリンクは、内方の幅を小さくするために長手方向に延びるリムの領域にラウンドスチールリンクとして形成されている。特に間隔の狭い巻き上げ装置チェーンに使用する場合、このチェーンリンクは溶接部分が許容範囲を超えて変形したり、チェーンリンクの別のチェーンリンクに対する動きが制限されたり、ポケットチェーンホイールのポケット内のこの種のチェーンリンクとこのホイールの溝との支持比が満足のいくものではないなどの問題がある。
【０００３】
本発明は、水平リンクとチェーンホイール間の軸旋回比（ｐｉｖｏｔｉｎｇ−ｉｎ ｒａｔｉｏｓ）を良好に維持しながら動的抵抗を増加させてチェーンの機能、即ち荷を引き上げるのに必須な部材であるチェーンを駆動するチェーンホイールを含むチェーン伝動装置それ自体を改良することを目的としている。この目的は、長手方向に延びる直線状のリムによって連結された円形端部（９，１０）を有する楕円形のチェーンリンク（５，６）を備え、それらのチェーンリンクの側部に平坦部が設けられている巻き上げ装置用チェーンにおいて、前記のチェーンリンク（５，６）を丸鋼材から製作し、前記の円形端部（９，１０）に局部的な塑性変形を施して形成される横方向に延びた平坦部（１１）を設けることで達成される。また、ポケットチェーンホイールによって駆動され、２つの自由端の一方で荷を支えるチェーンを有する巻き上げ装置用チェーン伝動装置であって、そのチェーンが、前記チェーンホイール内を横向きに通過する水平リンク（６）と縦向きに通過する垂直リンク（５）とが交互に並ぶ楕円形状の複数のチェーンリンクで構成され、個々のリンクが、向き合った２つの円形端部（９，１０）を長手方向に延びる２つのリム（７，８）で接続させた構造にある巻き上げ装置用チェーン伝動装置において、前記のチェーンリンクを丸鋼材から製作し、水平リンク（６）と垂直リンク（５）双方の円形端部の両側に、局部的な冷間塑性変形で形成された平坦部（１１）を設けることで、上記の目的を実現することができる。さらにまた、本発明では、個々のリンク（５，６）を構成するリム（７，８）の両側に、平坦部を設けることができ、水平リンク（６）のリムに設けた平坦部（１２）は、２つのリムの中心を通って長手方向に延びる面（２０）に対して、実質的に垂直であることが好ましい。垂直リンク（５）のリムに設けた平坦部（１７）は、チェーンホイールの溝（１９）の底部（１８）に対して実質的に垂直で、しかも、上記の面（２０）に対して、実質的に平行であることが好ましい。さらに言えば、チェーンホイールのポケット（１３）の底部の中央に位置するくぼみ（１４）の両側に、ポケット内に入り込む水平リンク（６）の円形端部に設けた平坦部（１１）が収まる斜めの支持面（１５，１６）を設けることができる。
【０００４】
本発明によるチェーンは、その断面形状を変えるだけでなく構造的圧縮荷重（structural compression）によって特に動的疲労強度が向上しており、構造的圧縮荷重はチェーンリンクの湾曲した端部で冷却アップセット（cold upsetting）工程の枠組み内で塑性変形することによって得られ、これにより本発明のチェーンは従来のチェーンに較べて優れたものになる。さらにチェーンリンクの長手方向に延びるリムを補足的に変形することによって断面形状をその抵抗モーメントに関し、荷重状況に適合させる従来のチェーンではなし得なかったことによって有利な効果がもたらされる。本発明によるチェーンを駆動する役割を果たすポケットチェーンホイールのポケットは、チェーンの寿命及び強度を向上させる方法でチェーンを形成するチェーンリンクの形状に適合している。
【０００５】
本発明のさらなる特徴を添付の図面を参照して以下に詳述する。
【０００６】
図１において、符号１は巻き上げ装置（ｌｉｆｔｉｎｇ ｇｅａｒ）のチェーン伝動装置のハウジングを示し、この伝動装置にはポケットチェーンホイール２が設けられている。チェーンホイール２の軸部分に示す矢印３は、巻き上げストローク中のホイールの回転方向を示す。垂直リンク５と水平リンク６からなるチェーン４は、チェーンホイール２を経由して案内される。すべてのチェーンリンクは、その円形端部９，１０の領域に冷間塑性変形（ｃｏｌｄ ｄｅｆｏｒｍａｔｉｏｎ）を、局部的に施すことによって形成された平坦部１１を有し、円形端部９，１０は互いに平行な長手方向に延びたリム７，８によって接続されている。水平リンク６は、そのリム７，８のそれぞれ両側に、冷間塑性変形を局部的に施すことによって形成される別の平坦部１２が設けられており、これら平坦部は、２つのリム７，８の中心を通る面に対して実質的に垂直である。リンクの平坦部はチェーンの加熱処理前に形成される。即ち、まず最初に通常の丸鋼チェーンを作製し、その楕円形のリンクの適当な箇所を、好適なアップセッティング装置にて塑性変形させて平坦部を形成する。円形端部９，１０において、垂直チェーンリンク５と水平チェーンリンク６を変形させることにより、リンクの耐久限度は増大し、水平リンク６と、チェーンホイール２のポケット１３の底部との間の支持比率も良好に保持される。このために、ポケット１３はくぼみ部分１４の両側に、水平リンク６の円形端部９，１０の平坦部分１１に適合する斜めの支持面１５を備えている。水平リンク６のリム７，８を塑性変形させることによってその曲げ抵抗が増大し、このことはこれらのリンクがチェーンホイール内で旋回する際に特に有利に働く。比較的小さい荷重の物を持ち上げたり、降ろしたりする場合、リム７，８の平坦部を省略してもよく、図５に示すようなチェーンを使用してもよい。また、この種のチェーンの場合、リンク５，６をアップセットする際に、円形端部９，１０の断面や構造を変えることで、耐久限度を著しく向上させることができる。
【０００７】
図６に示すように垂直リンク５のリム７，８の対向側部にもこれら２つのリム７，８の中心を延びる面に対して平行に配された平坦部を有するチェーンが有効な場合もある。垂直リンク５のリム７，８を塑性変形することによって水平リンク６の平坦部と同じようにたわみ抵抗を増すことになる。図７乃至９は、図６のチェーンの水平リンク６を図１０乃至１２は垂直リンク５をそれぞれ平面及び２つの断面に示している。これらの図から明らかなように図６のチェーンが装着されたチェーンホイールの案内溝１９の底部１８は、垂直リンクの形状に適合されなければならない。
【０００８】
図８は、円形端部９，１０の一方に設けた一対の平坦部１１がそれぞれ位置する２つの面が、円形端部９，１０およびリム７，８の中心を通る面２０上において、チェーンリンク６の外側で交差し、その角度がαであることを示している。角度αは、５°乃至２０°の範囲にあり、好ましくは１０°である。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明のチェーン伝動装置の基本的な部材の略式部分断面図。
【図２】 図１のチェーンホイール及びチェーン伝動装置の複数のチェーンリンクの斜視図。
【図３】 図１のチェーンホイールの拡大部分断面図。
【図４】 図１乃至３に示したチェーン伝動装置に使用されるチェーンストランドの一部の斜視図。
【図５】 チェーンストランドの第１の変形例の一部の斜視図。
【図６】 チェーンストランドの第２の変形例の一部の斜視図。
【図７】 図６のチェーンストランドの水平リンクの平面図。
【図８】 図７のVIII−VIII線に沿った断面図。
【図９】 図７のIX−IX線に沿った断面図。
【図１０】 図６のチェーンストランドの垂直リンクの平面図。
【図１１】 図１０のXI−XI線に沿った断面図。
【図１２】 図１０のXII−XII線に沿った断面図。

Claims (11)

1. 長手方向に延びる直線状のリムによって連結された円形端部（９，１０）を有する楕円形のチェーンリンク（５，６）を備え、それらのチェーンリンクが側部に平坦部（１１）を有している巻き上げ装置用チェーンにおいて、前記チェーンリンク（５，６）が丸鋼材から製せられ、前記円形端部（９，１０）に局部的な冷間塑性変形を施すことによって、前記平坦部（１１）が設けられていることを特徴とする巻き上げ装置用チェーン。
2. 各円形端部（９，１０）が、その両側に平坦部（１１）を備えていることを特徴とする請求項１記載の巻き上げ装置用チェーン。
3. 円形端部９，１０に設けた一対の平坦部１１がそれぞれ位置する２つの面が、円形端部９，１０およびリム７，８の中心を通る面２０上において、チェーンリンク６の外側で交差していることを特徴とする請求項２記載の巻き上げ装置用チェーン。
4. 一つの円形端部（９，１０）に形成された二つの平坦部（１１）が成す角度（α）が、約５°乃至２０°であることを特徴とする請求項３記載の巻き上げ装置用チェーン。
5. チェーンリンク（６）が、そのリム（７，８）に局部的な塑性変形を施すことによって形成された平坦部（１２）を備えていることを特徴とする請求項１乃至４いずれか１項記載の巻き上げ装置用チェーン。
6. 少なくとも一つおきの水平リンク（６）が、そのリム（７，８）に互いに向き合う平坦部（１２）を備え、その平坦部が２つのリム（７，８）の中心を通る面に対して実質的に垂直であることを特徴とする請求項５記載の巻き上げ装置用チェーン。
7. 少なくとも一つおきの垂直リンク（５）が、そのリム（７，８）に互いに向き合う平坦部（１７）を備え、その平坦部が２つのリム（７，８）の中心を通る面（２０）に対して実質的に平行であることを特徴とする請求項５又は６記載の巻き上げ装置用チェーン。
8. ポケットチェーンホイールによって駆動され、２つの自由端の一方で荷を支えるチェーンを備えた巻き上げ装置用チェーン伝動装置であって、そのチェーンが、前記チェーンホイール内を横向きに通過する水平リンク（６）と、縦向きに通過する垂直リンク（５）とが交互に並ぶ楕円形状の複数のチェーンリンクで構成され、個々のリンクが、向き合った２つ円形端部（９，１０）を長手方向に延びる２つのリム（７，８）にて接続させた構造にある巻き上げ装置用チェーン伝動装置において、前記のチェーンリンクが丸鋼材から製せられ、水平リンク（６）と垂直リンク（５）の両方の円形端部（９，１０）の両側に、局部的な冷間塑性変形で形成された平坦部（１１）が設けられていることを特徴とする前記の巻き上げ装置用チェーン伝動装置。
9. 水平リンク（６）のリム（７，８）が、両側に平坦部（１２）をそれぞれ備え、その平坦部（１２）が、チェーンホイール（２）のポケット（１３）の底部及び前記２つのリムの中心を通る長手方向に延びる面（２０）に対して実質的に垂直であることを特徴とする請求項８記載のチェーン伝動装置。
10. 垂直リンク（５）のリム（７，８）が、両側に平坦部（１７）をそれぞれ備え、その平坦部（１７）が、チェーンホイールの溝（１９）の底部（１８）に対して実質的に垂直であり、且つ、前記２つのリムの中心を通って長手方向に延びる面（２０）に対して実質的に平行であることを特徴とする請求項８又は９記載のチェーン伝動装置。
11. チェーンホイールが請求項１乃至７のいずれか一つで規定される巻き上げ装置を対象としたチェーンホイールであり、そのポケット（１３）の底部に位置する中央くぼみ（１４）の両側に、水平リンク（６）の円形端部に設けた平坦部（１１）が収まる斜めの支持面（１５，１６）が設けられていることを特徴とする請求項８乃至１０のいずれか１項記載のチェーン伝動装置。

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