JP4859641B2 - チタン酸バリウム粉末およびその製法、ならびに誘電体磁器 - Google Patents

チタン酸バリウム粉末およびその製法、ならびに誘電体磁器 Download PDF

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Description

本発明は、チタン酸バリウム粉末およびその製法、ならびに誘電体磁器に関し、特に、平均粒径が100nm以下のチタン酸バリウム粉末とその製法、ならびに、このチタン酸バリウム粉末を用いて形成される誘電体磁器に関する。
近年のセラミック電子部品は、電子機器の小型化に対応するため、小型高性能化が急速に進んでいる。積層セラミックコンデンサもまた同様であり、誘電体材料の高性能化と共に、誘電体層の薄層化、高積層化が進められている。これらの目標に対するアプローチとして、誘電体層を構成する原料粉末の配合、成形、焼成など種々の要素技術の開発が行われている。
ところで、積層セラミックコンデンサは誘電体層と内部電極層とが交互に積層された構造を有し、その誘電体層は、通常、主成分であるチタン酸バリウムなどの主原料粉末と、この主原料粉末の誘電特性を制御するための希土類元素の酸化物等、各種の副原料粉末が添加された混合粉末の焼結体で構成される。
そして、誘電体層の薄層化に対応すべく、チタン酸バリウム粉末は、従来より、工業的に量産化されている、炭酸バリウムと酸化チタンを出発原料とする固相法について、改善が図られ、微粒化の工法が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−2738号公報
しかしながら、上述の特許文献1に開示された製法では、平均粒径200nm以下のチタン酸バリウム粉末を得ようとする場合、炭酸バリウムおよび酸化チタンの混合粉末をセラミックス製容器に入れ、長時間の加熱を施して仮焼を行う必要がある。このため得られるチタン酸バリウム粉末は仮焼の段階でセラミックス製容器の中で凝集しやすく、その結果、得られるチタン酸バリウム粉末は粒度分布が大きくなる。また、仮焼後に、得られた合成粉末を粉砕処理したとしても、粉砕メディアからのコンタミがあり、高純度のチタン酸バリウム粉末が得られないという問題があった。
従って本発明は、微粒であっても、正方晶を主体とする結晶構造を有し、高純度のチタン酸バリウム粉末とその製法、ならびに誘電体磁器を提供することを目的とする。
本発明のチタン酸バリウム粉末は、純度が99.6%以上、平均粒径が50〜200nmであり、粒径の変動係数を標準偏差/平均粒径×100(%)として表したときに前記変動係数が40%以下であって、チタン酸バリウムのX線回折パターンにおける(200
)面の回折強度を100としたときに、前記チタン酸バリウムのX線回折パターンにおける(002)面の回折強度が30以上であり、(002)面の回折ピークのベースラインに対する低角度側に向けた仰角が40°以上であり、格子定数比c/aが1.006以上であることを特徴とする。
また、上記チタン酸バリウム粉末では、平均粒径が60〜100nmであることが望ましい。
次に、本発明のチタン酸バリウム粉末の製法は、純度99.9%以上の炭酸バリウム粉末と純度99.9%以上の酸化チタン粉末との混合粉末を気体中で分散した状態で、900〜1360℃の温度で瞬時に加熱して溶融させる加熱工程と、瞬時に冷却して固化させる冷却工程とを有することを特徴とする。
また、上記チタン酸バリウム粉末の製法では、前記加熱工程として、前記混合粉末を、温度が上昇する方向に変化する温度勾配を有し最高温度が1000℃以上に設定された空間を、前記混合粉末の周囲の温度が1000℃/sec以上で変化するように通過させる。前記冷却工程として、前記混合粉末が反応して得られたチタン酸バリウム粉末を、前記最高温度が1000℃以上に設定された空間から温度が低下する方向に変化する温度勾配を有する空間を、前記チタン酸バリウム粉末の周囲の温度が1000℃/sec以上で変化するように通過させる。
次に、本発明の誘電体磁器は、上記のチタン酸バリウム粉末を成形し、焼成して得られることを特徴とする。
本発明のチタン酸バリウム粉末は、上述のように、純度が高く、微粒かつ、粒径の変動係数が小さく、X線回折パターンにおいて正方晶性が高く、格子定数比c/aが1.005以上のチタン酸バリウム粉末である。このようなチタン酸バリウム粉末によれば、平均粒径が200nm以下の微粒であっても正方晶の割合が高いために高誘電率を得ることができる。
上記チタン酸バリウム粉末の製法によれば、高純度の炭酸バリウムの粉末と酸化チタンの粉末との混合粉末を、気体中で分散した状態で瞬時に加熱し(溶融させ)冷却する(固化させる)工程であるため、加熱されたチタン酸バリウム粉末は結晶性が高まり、微粒であっても正方晶性の高いものとなる。
しかも、本発明の製法は上記のように気体中で分散した状態で瞬時に加熱し(溶融させ)冷却する(固化させる)工程であるために、チタン酸バリウム粉末同士が固まりの状態で加熱されることがなく、粒成長が抑制され微粒化と粒径の制御が容易であり、また、粉
砕が必要ないことから、粉砕メディアからのコンタミを抑制でき、高純度のチタン酸バリウム粉末が容易に得られる。
そして、このような製法により得られたチタン酸バリウム粉末は、高純度で粒子の正方晶性が高いことから、高誘電率の誘電体磁器を容易に得ることが可能となり、高容量かつ高絶縁性の積層セラミックコンデンサを得ることができる。
本発明のチタン酸バリウム粉末は純度が99.6%以上であることを特徴とするものである。ここでの純度はバリウムとチタンを酸化物として表したときの含有量である。
チタン酸バリウム粉末の純度が99.6%以上であれば、不純物量が少なくチタン酸バリウムへの固溶量が低減されるために、ペロブスカイト型結晶構造の立方晶化が抑制され、正方晶が維持されやすいという利点がある。
一方、純度が99.6%より低い場合にはチタン酸バリウム粉末の正方晶性が低下する。
次に、本発明のチタン酸バリウム粉末は、平均粒径が50〜200nmであり、粒径の変動係数を標準偏差/平均粒径として表したときに、変動係数が40%以下であることを特徴とする。
チタン酸バリウム粉末の平均粒径が50nm以上であると、このチタン酸バリウム粉末がコアシェル構造となる場合に、コア部の割合が大きくなり、正方晶を示す割合が増すことから、微粒であっても高い比誘電率を得ることが可能となる。
一方、平均粒径が200nm以下であると、例えば、積層セラミックコンデンサの誘電体層として薄層化に好適なものとなり、誘電体層中において厚み方向に多くの粒界を形成できるため高絶縁性となる。
一方、チタン酸バリウム粉末の平均粒径が50nmよりも小さい場合には、粉末中の正方晶の割合が少ないために高誘電率を得ることが困難となる。
また、チタン酸バリウム粉末の平均粒径が200nmよりも大きいものは、このチタン酸バリウム粉末を積層セラミックコンデンサに用いる場合に、誘電体層の薄層化が困難となり、また、誘電体層中の厚み方向の結晶粒子の数が少なくなり、そのため誘電体層1層あたりの粒界数が減ることから絶縁性が低下する。
なお、本発明のチタン酸バリウム粉末を用いて作製した焼結体における結晶粒子の平均粒子径は60〜100nmであることが望ましい。
また本発明のチタン酸バリウム粉末は粉末の粒径の変動係数(標準偏差/平均粒径)が40%以下であり、粒径のばらつきの小さい粉末である。チタン酸バリウム粉末の粒径の変動係数が40%以下であると、焼結後の誘電体層中の結晶粒子もまた粒径ばらつきの小さいものとなり、積層セラミックコンデンサなどに適用した場合に特性の安定化が容易となる。
図1は、本発明のチタン酸バリウム粉末のX線回折ピークの模式図である。図1のX線回折ピークの模式図は、2θ=44〜46°におけるかX線回折パターンである。2θ=44.9°付近のピークが(002)面のピークであり、45.5°付近のピークが(200)面のピークである。
本発明のチタン酸バリウム粉末は、チタン酸バリウムのX線回折パターンにおける(200)面を100としたときに、X線回折パターンにおける(002)面が30%以上であることを特徴とする。
つまり、本発明のチタン酸バリウム粉末は、図1から明らかなように、X線回折パターンの(200)面と(002)面の2つのピークに分離しており、しかも上述のように、(200)面の回折強度を100としたときに、(002)面の回折強度が30%以上であることから、上記の平均粒径を有し微粒であっても正方晶性が高いものである。この場合、(200)面の回折強度を100としたときに、(002)面の強度が50%以上であることがより望ましい。
一方、(200)面の回折強度を100としたときに、(002)面の強度が30%よりも小さい場合には、正方晶性が低いために高誘電率は得られない。
また本発明のチタン酸バリウム粉末は、(002)面回折ピークのベースラインに対する低角度側に向けた仰角が40°以上である。(002)面の回折ピークのベースラインに対する低角度側に向けた仰角が40°以上であるとチタン酸バリウム粉末の平均粒径が60〜100nm以下であっても、焼結後の誘電体磁器の比誘電率を1500以上にできるという利点がある。
さらに本発明のチタン酸バリウム粉末は、格子定数比c/aが1.005以上であることを特徴とする。つまり、本発明のチタン酸バリウム粉末は格子定数比c/aが1.005以上である正方晶性の高い微粒のチタン酸バリウム粉末である。これに対して、格子定数比c/aが1.005よりも小さい場合には正方晶性が低いために、微粒化したときに比誘電率の向上が困難となる。
また、本発明のチタン酸バリウム粉末は、バリウムとチタンの原子比(Ba/Ti)は0.997〜1.005の範囲であることが望ましい。(Ba/Ti)が0.997〜1.005の範囲であると、正方晶を示すペロブスカイト型構造を有する均質な誘電体粒子を形成できるという利点がある。
また、本発明のチタン酸バリウム粉末は、図1に示すように、X線回折ピーク(002)のベースラインに対する低角度側に向けた仰角が50°以上であることが望ましい。
チタン酸バリウム粉末はX線回折ピーク(002)のベースラインに対する低角度側に向けた仰角が50°以上であると、正方晶の結晶性が高まり、チタン酸バリウム粉末の比誘電率をさらに高められる。
次に、本発明の誘電体原料粉末の製法について説明する。まず、炭酸バリウムおよび酸化チタンを含む混合粉末を調製する。炭酸バリウムの純度は99.9%以上、酸化チタンは99.9%以上が、高純度のチタン酸バリウム粉末を得るという点で好ましい。
用いる炭酸バリウム粉末は、形状が柱状晶を有するものであるが、比表面積は10〜100m/gであるものが好ましい。
また、酸化チタン粉末の平均粒径は20〜100nm、比表面積は10〜100m/gが望ましい。
炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末が上記の範囲の比表面積や平均粒径を有するものであれば微粒化が容易となる。
次に、混合粉末をビーズミルを用いて混合し予備粉砕する。ビーズミルは粉砕を短時間で行え、かつ粉砕時におけるメディアボール等による衝撃に起因するメディアボールからのコンタミを低減できるという利点がある。なお、ビーズミルの容器の内張および粉砕ボールは、これも99.9%以上のジルコニアが好ましい。
次に、混合粉末を、瞬時に加熱して溶融させる加熱工程と、瞬時に冷却して固化させる冷却工程をつくることのできる加熱炉に導入する。
図2は、本発明のチタン酸バリウム粉末を作製するための加熱炉の断面模式図である。用いる加熱炉は、炉本体11の上部に原料投入フィーダ13が、一方、炉本体11の下部に粉末回収部15が備えられており、さらに、回収部15には炉心管17内の気流の流れ(層流)をつくるための吸引装置21が備えられている。炉本体11は炉心管17の周囲に加熱部19が設けられている。そして、加熱炉は原料投入フィーダ13から炉本体11を通じて粉末回収部15に至る経路(矢印)の方向に向けて吸引したガスによって、炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末との混合粉末(以下、混合粉末という。)5を含む気体の流れが形成される。また、炉本体11には混合粉末5を含む気体の流れが炉心管17の長さ方向の中央部に、高温に設定された温度領域の空間23が設けられており、本発明においては、上述の混合粉末5を構成している炭酸バリウム粉末および酸化チタン粉末を瞬時に反応させる加熱工程と、反応後に形成されたチタン酸バリウム粉末を瞬時に固化させる冷却工程とを有することを特徴とする。
そして、本発明における加熱工程は、上記混合粉末5を、温度が上昇する方向に変化する温度勾配を有し最高温度が1000℃以上に設定された空間23を、この混合粉末5の周囲の温度が1000℃/sec以上で変化するように通過させる。
また、上記の加熱工程に続く冷却工程は、混合粉末5を、最高温度が1000℃以上に設定された空間23から温度が低下する方向に変化する温度勾配を有する空間24を、この複合粒子5の周囲の温度が1000℃/sec以上で変化するように通過させる。
本発明では、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径の変動係数を小さくするという点で、特に1100℃以上1250℃以下が好ましい。加熱炉の最高温度が1000℃以上であると、チタン酸バリウム粉末の結晶性が高まり、正方晶性の割合が多くなるという利点がある。また、上述のような瞬時の加熱冷却は、チタン酸バリウム粉末の表面の非晶質化を抑制でき、これにより正方晶性を高められる。
上述の加熱工程および冷却工程の条件は炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末との混合粉末を含む気体の流れの速度と、加熱炉における炉心管11の上下端の温度と炉心管11の最高温度を示す位置との間の距離とから求められる。つまり、加熱炉の炉心管17の上端部と、その長さ方向の中央部の位置における最高温度との間、および中央部付近の位置における最高温度と炉心管17の下端部との間を通過する加熱された気体の速度から見積もられる。
なお、本発明の製法においては加熱炉の炉心管17の下端部側から吸引して層流を形成しているために炉心管17を境に上端部側と下端部側とは炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末との混合粉末5を通過させる周囲の温度変化はほぼ同じになる。
さらに、得られるチタン酸バリウム粉末の凝集や結晶化を抑制し、得られるチタン酸バリウム粉末の粒径の変動係数を低減するという理由から、本発明では以下のような温度変化を有する環境に設定することが望ましい。
つまり、本発明では、混合粉末5を瞬時に加熱して溶融させる加熱工程において、混合粉末5を通過させる周囲の温度変化が1000℃/sec以上であり、特に、1100℃/sec以上が好ましい。
また、上記の加熱工程の後の反応後に得られたチタン酸バリウム粉末を瞬時に冷却して固化させる冷却工程においても、加熱工程と同様に、混合粉末5を通過させる周囲の温度変化が1000℃/sec以上であり、特に、1100℃/sec以上が好ましい。複合粒子5を通過させる周囲の温度変化が1100℃/sec以上であると、チタン酸バリウム粉末が結晶化しやすいという利点がある。
なお、本発明では炉心管17の下端部側から空気を吸引する方法であるために加熱工程および冷却工程において混合粉末を通過させる条件(温度変化)は同じである。
これに対して、自然落下のように吸引操作を行わずにチタン酸バリウム粉末を加熱および冷却した場合にはチタン酸バリウム粉末が加熱炉の炉心管11の中で落下中に凝集して粗大な粒子が形成されてしまう。
なお、加熱工程および冷却工程においてチタン酸バリウム粉末を通過させる条件(温度勾配)を上記のように設定でき、本発明のように、チタン酸バリウム粉末の結晶性を高めるという点で、炉心管17の長さは3m以上、特に、4m以上が好ましい。
なお、本発明の製法はチタン酸バリウム粉末以外の金属酸化物や複合酸化物のセラミック粉末を形成する手法として適用できることはいうまでもなく、例えば、チタンジルコン酸鉛、アルミナ、ジルコニア、コーディエライト、ムライト、スピネル等のセラミック粉末や種々のガラス粉末等にも適用可能である。
本発明の製法は、従来より公知の製法である、炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末との混合粉末を焼成炉を用いて、セラミックス製の容器の中で仮焼する方法に比較して、チタン酸バリウム粉末の前駆体が気体中で分散した状態で加熱されるために、凝集が少なく、このため微粒の粉末が得られやすい。
つまり、炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末との混合粉末5を、焼成炉を用いてセラミックス製の容器の中で仮焼する方法では、粉末自体の凝集や加熱時の拡散により、チタン酸バリウム粉末の粒成長が起こりやすく、高純度で、微粒かつ結晶性の高いチタン酸バリウム粉末を得ることは困難である。
また、上記本発明の製法に比較して、最高温度が、例えば、1000℃よりも低温、特に、500℃程度の温度で処理を行う仮焼の方法では、炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末との混合粉末の分解反応が起こるものの、チタン酸バリウム粉末の結晶化度を高められない。
次に、本発明のチタン酸バリウム粉末を用いて得られる誘電体磁器、ならびに、この誘電体磁器によって形成される積層セラミックコンデンサについて説明する。
本発明のチタン酸バリウム粉末を用いて得られる誘電体磁器は、上記のチタン酸バリウム粉末を成形し、焼成して得られることを特徴とする。そして、本発明の積層セラミックコンデンサは、誘電体層と電極層とが積層されており、この誘電体層が、本発明のチタン酸バリウム系粉末の焼結体である。この積層セラミックコンデンサは、例えば、以下のように製造することができる。
まず、本発明のチタン酸バリウム粉末をMg、希土類元素およびMnなどの各種金属酸化物粉末や焼結助剤であるガラス成分とともに樹脂および必要に応じて溶媒と混合してスラリを調製する。焼結助剤としては、例えば、SiO−CaO−B系ガラスが好適である。樹脂はポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどを使用することができ、溶媒としては、例えば、水、アルコール、酢酸ブチル、酢酸エチルなどを使用することができる。
続いて、前記スラリをシート状に成形し誘電体グリーンシートを作製する。成形方法は特に限定するものではないが、例えば、ドクターブレード法などを採用することができる。次に、誘電体グリーンシートと電極パターンとを積層して積層体を得る。電極パターンとしては、例えば、銅、ニッケルまたはコバルトなどの卑金属粉末に、樹脂および溶媒を混合してなる導体ペーストを用いることができる。なお、誘電体グリーンシートおよび電極パターンの積層数は、特に限定するものではなく、所望の静電容量などに応じて適宜設定することができる。
次に、必要に応じて脱バインダ処理などを実施した後、この積層体を焼成し、さらに、焼成した積層体に外部電極などが適宜形成されて積層セラミックコンデンサが得られる。
焼成温度は、焼結助剤の種類および添加量、ならびに用いる誘電体原料粉末の粒子径に応じて適宜設定することができるが、例えば1100〜1300℃、好ましくは1100〜1250℃である。また、焼成雰囲気は、電極層の酸化を抑制するため、非酸化性雰囲気とすることが好ましい。
まず、原料粉末として以下に示す炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末を準備した。炭酸バリウム粉末は短辺の寸法が平均で20nm、長辺の寸法が平均で100nmであり、純度は99.9%および99.95%の2種とした。酸化チタン粉末は平均粒径が20nmであり、純度は99.9%および99.95%のものを用いた。組成はBa/Ti=1とした。
次に、上記の炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末とを用いて攪拌機により混合粉末を調製した。次に、調製した混合粉末をイオン交換水を用い、ビーズミルにより予備粉砕し、次いで、大気中、温度120℃で乾燥を行った。この場合、混合容器はおよびボールは純度99.9%のジルコニアを用いた。
次に、この混合粉末を図2に示した加熱炉を用いて、表1の条件(温度、吸引力(層流)、昇温速度)にて熱処理を行いチタン酸バリウム粉末を調製した。温度は加熱炉の長さ方向中央部の炉内の温度とした。昇温速度は以下のように求めた。つまり、本発明のチタン酸バリウム粉末の製法において調製される層流は吸引ポンプを用いて大気を排出することによって調製した。この場合、炉心管の直径は75mm、長さは5m、長さ方向の中央部が最高温度の領域であり、炉心管の上端は50℃であった。混合粉末を通過させる周囲の温度変化は炉心管の上端の位置から中央部までの2.5mの位置に達する気流の時間から求めた。炉心管中央部付近の最高温度が1250℃であると、その温度差は1200℃、吸引量10L/minの場合の落下速度が5mあたり2秒であるので、加熱工程および冷却工程における複合粒子5を通過させる周囲の温度変化は1200/1=1200℃/secとなる。この場合、炉心管の下端部側から空気を吸引する方法であるために加熱工程および冷却工程における混合粉末および得られたチタン酸バリウム粉末を通過させる周囲の温度変化は同じとした。炉心管の最高温度が800℃未満では層流中の複合粒子の落下速度は3sec、800℃以上では2秒である。なお、吸引しないで自然落下させた場合、高さ5mの炉心管の上端から回収部までの到達時間は10秒であったが、この場合、複合粒子が凝集し、焼結して直径が10μm以上の大きさの凝集体となった。
次に、得られたチタン酸バリウム粉末について平均粒径とその変動係数(標準偏差/平均粒径)を求めた。また、同チタン酸バリウム粉末について結晶構造および格子定数比c/aをX線回折により評価した。
また、同チタン酸バリウム粉末を用いて直径12mm、厚み1mmのペレット状の成形体を作製し、1100℃、2時間の条件にて焼成を行った。次に、得られた焼結体の各試料について結晶粒子の平均粒径と粒径の変動係数を測定した。また、この焼結体試料の両主面にIn−Gaの金属を塗布して、静電容量を測定し、試料の厚みと表面積から比誘電率を求めた。試料数は各10個とした。
チタン酸バリウム粉末の平均粒径および粒径の変動係数は、得られたチタン酸バリウム粉末を走査型電子顕微鏡により写真撮影し、この写真に映し出されたチタン酸バリウム粉末の輪郭を画像処理し、各粒子を円と見立ててその直径を求め、平均化して求め、また粒径の変動係数を求めた。
また、焼結体中における結晶粒子の平均粒径と粒径の変動係数は得られた焼結体の破断面を研磨した後、これも走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮り、次いで、これらの写真に映し出されている結晶粒子の輪郭を画像処理し、各粒子を円と見立ててその直径を求め、平均化して求め、また、粒径の変動係数を求めた。この場合、焼結体中の結晶粒子の断面は最大径のところの断面ではない場合が多いために原料粉末である誘電体粒子の平均粒子径よりも小さくなる場合がある。
得られたチタン酸バリウム粉末の純度はICP分析によりBaとTiについて定量分析を行い求めた。この場合、定量分析にはBaおよびTiの1000ppmの標準液を用いた。
比較例として、表1に示すように、減圧仮焼によって合成したチタン酸バリウム粉末についても評価した。この場合、用いた混合粉末は試料No.3に用いたものと同じものである。減圧仮焼の条件は、最高温度で圧力が1Paになるように調整した。仮焼の最高温度は1000℃および1100℃とした。仮焼に用いたセラミック製の容器(こう鉢)は純度99%のジルコニア容器を用いた。
Figure 0004859641
Figure 0004859641
表1、2の結果から明らかなように、本発明の製法により作製した試料は、平均粒径が50〜200nmであっても、正方晶であり、純度が99.6%以上、c/aが1.006以上であった。
特に、加熱工程の温度を1000〜1150℃とし、その温度勾配を1000〜1050℃/secとした試料No.4〜7では、得られたチタン酸バリウム粉末の平均粒径が60〜100nm、正方晶性を示すX線回折の(002)/(200)比が33〜40%、c/aが1.007〜1.009であり、これらのチタン酸バリウム粉末を用いて作製した誘電体磁器は結晶粒子の平均粒径が90〜96nmであり、比誘電率が1500〜1600であり、優れた誘電特性を示した。
これに対して、従来の固相法である減圧仮焼により作製したチタン酸バリウム粉末は平均粒径が95nmであっても、粒径のばらつきが70%もあり、しかも、正方晶性を示すX線回折の(002)/(200)比が25%しかなく、正方晶の割合が低く、純度が最高でも98.8%であった(試料No.12)。
また、本発明の誘電体原料粉末を用いて形成した焼結体は、従来の固相法である減圧仮焼により形成した試料に比較して比誘電率が高かった。
本発明のチタン酸バリウム粉末のX線回折ピークの模式図である。 本発明のチタン酸バリウム粉末を作製するための加熱炉の断面模式図である。
符号の説明
11 炉本体
13 原料投入フィーダ
15 粉末回収部
17 炉心管
19 加熱部
23 空間

Claims (4)

  1. 純度が99.6%以上、平均粒径が50〜200nmであり、粒径の変動係数を標準偏差/平均粒径×100(%)として表したときに前記変動係数が40%以下であって、チタン酸バリウムのX線回折パターンにおける(200)面の回折強度を100としたときに、前記チタン酸バリウムのX線回折パターンにおける(002)面の回折強度が30以上であり、(002)面の回折ピークのベースラインに対する低角度側に向けた仰角が40°以上であり、格子定数比c/aが1.006以上であることを特徴とするチタン酸バリウム粉末。
  2. 平均粒径が60〜100nmである請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末。
  3. 純度99.9%以上の炭酸バリウム粉末と純度99.9%以上の酸化チタン粉末との混合粉末を気体中で分散した状態で、900〜1360℃の温度で瞬時に加熱して溶融させる加熱工程と、瞬時に冷却して固化させる冷却工程とを有し、前記加熱工程として、前記混合粉末を、温度が上昇する方向に変化する温度勾配を有し温度が1000℃以上に設定された空間を、前記混合粉末の周囲の温度が1000℃/sec以上で変化するように通過させるとともに、前記冷却工程として、前記混合粉末が反応して得られたチタン酸バリウム粉末を、前記最高温度が1000℃以上に設定された空間から温度が低下する方向に変化する温度勾配を有する空間を、前記チタン酸バリウム粉末の周囲の温度が1000℃/sec以上で変化するように通過させることを特徴とするチタン酸バリウム粉末の製法。
  4. 請求項1または2に記載のチタン酸バリウム粉末を成形し、焼成して得られることを特徴とする誘電体磁器。
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