上記従来の技術でも、ある程度のコスト低減にはなるが、デザイン的、または構造的にかなりの制約があった。例えば、異機種で共通使用とする下ケースのサイズが決められるが、例えば楽器の前後方向を小さくしてコンパクトな楽器を得ようとして上ケースを小さくしたい場合でも、上ケースを下ケースより小さくすることはできない。また下ケースを小さくしておくことも考えられるが、上ケースを大きくしたい機種では、上下の差があまりない場合はよいとしても、上ケースに比べて下ケースがあまり小さいと安定性に問題がある。
また、上ケースの上面である上面パネル部を斜めにすることが多いが、その斜めの度合い(水平も含む)を機種によって変えたい場合もある。この場合、上ケースの上面の角度を変えて他機種に対応させればよいように思われるが、上下ケースを結合するネジなどの結合部分の安全性や強度の点で困難性がある。一般に上ケースの上面にはネジが一切露出しないようにするので、下から上にネジ止めする必要がある。この場合、上ケース裏面に形成するネジ孔は金型のアンダーカットを回避するために上面パネルに直角方向とするのが一般である。このため、上面パネル部の傾きを変えるとネジ孔の傾きも変わるため、下ケースからネジを通す孔の角度も変える必要があり、異機種対応とするのが困難になる。
そこで、上ケースのネジ孔を前後方向に長手方向となる長孔にしてネジとの相対的な角度の違いを吸収して取り付けるようにもできるが、この場合、上ケースと下ケースの取り付け時に精度が出ないという問題がある。特に、多くの箇所で固定すると固定箇所同士でバラツキが生じたり、ケースに歪みが生じるなどの問題がある。
このような問題は、下ケースと上ケースとを固定する互いの固定構造から生じるものであり、この固定構造に改良の余地がある。
本発明は、上記の点に鑑みて成されたものであり、鍵盤楽器において、少なくとも上ケースと下ケースとを取り付け固着する構造を改良し、ケース体のデザイン的、構造的な制約を低減して、下ケースを異機種で共通化できるようにすることを課題とする。
請求項1の鍵盤楽器のケース体構造は、鍵操作される複数の鍵を有した鍵盤を内装した鍵盤楽器のケース体構造において、該ケース体は前記鍵盤を有した第1ケース部と脚座を有した第2ケース部とに分かれて形成され、該両ケース部を合わせ結合して組み立てるケース体構造であって、前記第1ケース部はその底面部からの嵩上げによる嵩上げ部を設け、該嵩上げ部は前記各鍵がその基端部で回動自在に支持される鍵支持部と前記嵩上げ部の後方かつ下方に延設した延設部を含むものであり、該延設部に前記第2ケース部の結合部を当接させて、これらを係止手段にて結合するようにし、前記延設部及び前記結合部は前記鍵支持部と前記脚座との間に設けられていることを特徴とする。
なお、好適な他の例として、第1ケース部と第2ケース部とを有し、これら複数のケース部を結合して1つのケース体として構成するケース体構造であって、第1ケース部は鍵盤を保持した単一種の基本ケース部とし、第2ケース部は少なくとも下部を有するケース部であって、基本ケース部の底面部からの嵩上げによる嵩上げ部に鍵支持部を構成し、鍵支持部において鍵盤の各鍵をその基端部で支持する。そして、第2ケース部の結合部を、鍵支持部が構成される嵩上げ部の結合保持部にて結合することで、この基本ケース部と第2ケース部とを結合した種々の拡張ケース体を構成するようにした。
また、ケース体を第1ケース部と第2ケース部とを合わせ結合して1つのケース体として組み立てるケース体構造であって、第1ケース部の底面部からの嵩上げによる嵩上げ部に鍵支持部を設け、第2ケース部に嵩上げ部の反対面部に嵌合する結合部を設け、反対面部に結合部を当接させて係止手段にて第1ケース部と第2ケース部とを結合するようにした。これにより、係止手段にて第1ケース部、第2ケース部、鍵盤を固着するので、ネジ等の共締めによる組立簡素化という作用効果が得られる。
また、鍵盤を内装した第1ケース部と鍵盤の後方を覆う第2ケース部とにて分かれて形成され、両ケース部を合わせ結合して組み立てるケース体構造であって、第1ケース部の底面部からの嵩上げによる嵩上げ部に鍵支持部を設け、第2ケース部は下部と背面部と上面部とを有する構成とするとともに、第2ケース部に前記嵩上げ部の裏面部に嵌合する結合部を設け、第1ケース部の嵩上げ部の裏面部に第2ケース部の結合部を当接させて係止手段にて第1ケース部、第2ケース部、鍵盤を固着するようにした。これにより、係止手段にて第1ケース部、第2ケース部、鍵盤を固着するので、ネジ等の共締めによる組立簡素化という作用効果が得られる。さらに、第2ケース部の下部と背面部と上面部とで後部ケースを構成することができ、この後部ケースにおいて任意にデザインや構造を変えることができる。
また、ケース体を鍵盤を有した第1ケース部と第2ケース部とを合わせ結合して組み立てるケース体構造であって、第2ケース部は下部と背面部と上面部と当該3部で構成される凹部を有する構成とし、第1ケース部の底面部からの嵩上げによる嵩上げ部に鍵支持部を設け、第2ケース部は鍵支持部の下面部に嵌合する結合部を有する構成とし、両ケース部の組合せ時に、第1ケース部の鍵支持部の下面部に第2ケース部の結合部を当接させつつ、第2ケース部を第1ケース部に対して押鍵方向に回転させ、上面部が第1ケース部の上面に位置する位置で係止手段にて第1ケース、第2ケース、及び鍵盤を固着するようにした。これにより、第2ケース部の下部と背面部と上面部とで後部ケースを構成することができ、この後部ケースにおいて任意にデザインや構造を変えることができるとともに、凹部内にスピーカなどを収容することができ、また、第2ケース部を押鍵方向に回転して第1ケース部に配置及び固定でき、回転により組み付けが容易となる。
また、鍵盤を内装し複数のケース部を結合して組み立てるケース体構造であって、基本ケース部を底面部に鍵盤が対向保持された単一種のケース部にて構成し、さらに、基本ケース部を、底面部からの立ち上がり部と、その上部の鍵支持部と、該鍵支持部の下面の結合保持部とを有する構成とし、他のケース部は、前記立ち上がり部に対向する対向面を有した壁部と、この壁部の上部の結合部とを備えた構成とし、結合保持部と結合部とを連結して種々の拡張ケース体を構成し、ケース体を組み立てた時、前記立ち上がり部と前記対向面とが接近して対向するようにした。これにより、ケース体を組み立てた時、基本ケース部の立ち上がり部と他のケース部の壁部の対向面とが接近して対向し、この立ち上がり部と壁部とが、演奏時に一番力がかかるところに鍵並び方向の複数の縦リブを構成するので、鍵支持部を補強してさらに堅牢にすることができる。なお、この立ち上がり部と壁部の対向面とは平行でなくてもよい。また、「接近して対向する」とは、例えば50mm程度以内の距離であればよい。
また、複数のケース部を結合して1つのケース体として構成するケース体構造であって、1つのケース部は鍵盤を保持した単一種の基本ケース部とし、基本ケース部の底面部から斜めかつ後方への嵩上げによる嵩上げ部に鍵支持部を構成し、他のケース部の結合部を、鍵支持部が構成される嵩上げ部の結合保持部にて結合することで、この基本ケース部と他のケース部とを結合した種々の拡張ケース体を構成するようにした。これにより、鍵支持部を構成する嵩上げ部が基本ケース部の底面部から斜めにかつ後方に嵩上げされているので、例えば、基本ケース部の後方に取り付けられる他のケースの高さを異ならせることにより、該取り付け部の高さが変わるので、基本ケース部の傾斜を変えて、鍵盤の傾斜角度の異なるような異機種楽器に容易に対応することができ、このとき、基本ケース部の底面部と嵩上げ部との境界部分が設置面と干渉(接触)するのを防止することができ、容易に様々な機種の楽器が得られる。
また、複数のケース部を結合して1つのケース体として構成するケース体構造であって、基本ケース部は、鍵盤を保持した単一種のケース部にて構成するとともに、鍵支持部とこの下面に結合保持部とを有する構成とし、他のケース部は、結合保持部に接続される結合部を下部前方に有する第1フレームと鍵盤の後部上面を覆う第2フレームとで構成し、結合保持部と結合部とを連結すること、及び第1フレームと第2フレームとを連結する連結手段にて連結することにて種々の拡張ケース体を構成するようにした。これにより、他のケース部は第1フレームと第2フレームとで構成されるので、基本ケース部の後方の下ケース部となる第1フレームと、上ケースとなる第2フレームとを、それぞれ型成形等により形成するのが容易となる。
また、上記構成において、ケース体を樹脂で形成し、連結手段は薄肉のヒンジ部にて両フレームに一体に形成するようにした。これにより、上記構成の作用効果に加えて、第1フレームと第2フレームとを薄肉のヒンジ部で連なった状態で開くことができるので、この第1フレームと第2フレームとを同時に型成形することができ、製造が容易になる。
また、複数のケース部を結合して1つのケース体として構成するケース体構造であって、1つのケース部は鍵盤を保持した単一種の基本ケース部とし、基本ケース部の底面部からの嵩上げによる嵩上げ部に鍵支持部を構成するとともに、この基本ケース部は前後方向における1箇所にて設置面に支持されるよう構成し、他のケース部の結合部を、鍵支持部が構成される嵩上げ部の結合保持部にて結合することで、この基本ケース部と他のケース部とを結合した種々の拡張ケース体を構成するようにした。これにより、基本ケース部は前後方向における1箇所において設置面に支持される。また、前記同様に鍵を支持する鍵支持部が他のケース部の取り付け(固着)部となる。すなわち、この取り付け部は鍵並び方向に水平となり、かつ楽器前後方向における1箇所となる。したがって、基本ケース部の後方に取り付けられる他のケースの高さを異ならせることにより該取り付け部の高さが変わるので、基本ケース部の角度が変わり、鍵盤の上面が非押鍵時に水平となるような楽器、鍵盤の上面が押鍵時に水平となるような楽器など、鍵盤の傾斜角度の異なるような異機種楽器に容易に対応することができる。
また、上記構成において、他のケース部のを脚座にて設置面に支持するようにした。これにより、他のケース部のケース本体を変更しなくても脚座の高さを異ならせるだけで上記構成と同様な作用効果がえられる。なお、脚座は他のケースのケース本体と一体に構成してもよいし、別途取り付けるように構成してもよい。
また、上記格構成において、他のケース部あるいは第2ケース部の結合部に貫通孔を設け、この貫通孔に嵌挿する結合手段にて、当接部を、基本ケース部あるいは第1ケース部の鍵支持部と反対側の下面と結合させるようにした。これにより、他のケース部あるいは第2ケース部のの結合部に設けた貫通孔に結合手段を嵌挿して、当接部を、基本ケース部あるいは第1ケース部の鍵支持部と反対側の下面と結合するので、他のケース部と基本ケース部及び鍵の基端部を、あるいは第2ケース部と第1ケース部及び鍵の基端部を、貫通孔と結合手段で規定される所定の位置にそれぞれ保持し、固着することができる。
なお、鍵盤楽器において、鍵盤は下ケース部に取り付けられる、あるいは、下ケース部の中間部から前部に鍵盤を配置することになるので、下ケース部前端部から鍵長さ程の位置において鍵を支持する構造となる。すなわち、鍵盤楽器では、最小限、鍵盤前後幅程度の下ケース部前部と鍵盤とがあり、その他、鍵盤前後幅程度の下ケース部前部よりも後方の部分や上ケース部のサイズを、下ケース部前部より奥にどれだけ設けるかが、デザイン、機種によって変わってくる。また、鍵盤は異機種でも略同一、あるいは、鍵盤は異機種共通としているので、この鍵盤を支持する鍵支持部も異機種で共通になる。すなわち、異機種で共通となる鍵盤を支持する部位を、複数ケースの互いの固定部とすることにより、単一種のケース部と複数種の1つのケース部とで特定種のケース構造体を形成し、単一種のケース部と複数種の他の1つのケース部とで特定種以外のケース構造体を形成形するのが、きわめて容易になる。
したがって、上記構成のように、基本ケース部または第1ケース部を下ケース部とし、鍵を支持する鍵支持部を、他のケース部または第2ケース部の結合部分(または固着部分)とすることにより、複数機種(複数デザイン)への対応がきわめて容易になる。また、鍵支持部及び鍵盤の基端部は、動的な鍵盤を支持する部位であるので堅牢な構成になっており、両ケース部を堅牢に固定することができる。
請求項1によれば、複数機種(複数デザイン)への対応がきわめて容易になるとともに、鍵支持部及び鍵盤の基端部において、両ケース部を堅牢に固定することができる。
以下、図面を参照して本発明に関連する実施形態及び本発明の実施形態(第4及び第5実施形態)について説明する。なお、この明細書において、鍵盤楽器及びケース体の「上下左右」を指す場合、演奏時の演奏者側(鍵盤側)から見た正立状態の「上下左右」とする。また、「前後方向を指す場合、演奏者側を「前、手前」、背面側を「後、奥」とする。
図1は第1実施形態の鍵盤楽器の側断面図((A) 図)及び第2ケース部2の一部破断斜視図((B) 図)である。図2は同第1実施形態の鍵盤楽器の一部破砕側面図であり、図1(A) は第2ケース部2を第1ケース部1に固着した状態を示し、図2は組立過程の一状態を示している。また、図3は同第1実施形態の鍵盤楽器の外観斜視図であり、図1(A) は図3のI−I矢視断面に、図2は図3のII−II矢視断面に対応してる。なお、図1(A) 及び図2の図面に直交する方向が鍵並び方向である。この鍵盤楽器のケース体は、硬質の合成樹脂で金型成型により形成された第1ケース部1と第2ケース部2とで構成されている。この第1ケース部1は「基本ケース部」でもある。
第1ケース部1は、その後方部に鍵盤4側に嵩上げした嵩上げ部11を有する。この嵩上げ部11は、「立ち上がり部」としての前板11aを底面部1Aから立ち上げ、その上端から支持板部11bを後方に延ばし、さらに後板11cを下に形成し、鍵並び方向に該鍵盤楽器の略全長にわたって延設されている。これにより、嵩上げ部11は「逆さ樋状の凸面部」を形成し、この嵩上げ部11の支持板部11bの上面が鍵支持部11Aとなっている。また、前板11a、支持板部11b及び後板11cで囲われた部分が、嵩上げ部11の凸面部の反対面である「凹面部」を構成している。
第1ケース部1の前端部には底面部1Aから立ち上げて前部にせり出し、湾曲して下方に下がるように前フレーム部13が鍵並び方向に形成されている。この前フレーム部13の左右両端部には、図2に示したように、底面部1A側から内部を中空とされ先端に透孔13a1を有するボス13aが形成されている。なお、第1ケース部1の前方側には、鍵並び方向に該鍵盤楽器の略全長にわたって延設されたストッパ部14が形成されている。ストッパ部14の上にはフェルト等のクッション部材14aが取り付けられ、これを含めてストッパ体という。また、第1ケース部1のストッパ部14と前フレーム13の間には脚座31が形成されている。この脚座31は円柱形状または半球型で形成してよい。
第2ケース部2は、鍵並び方向に略楕円柱の筒状をなす後ケース21を有し、この後ケース21は垂直断面が略U字状(図2参照)の下部21aと、垂直断面が円弧面状の背面部21bと、平面状の上面部21cとを有し、これらの3部21a,21b,21cにより第2ケース部内部に形成される凹部21Aを構成する。また、下部21aの背面部21bと反対側の上部には、嵩上げ部11の裏面部(鍵支持部11Aの下面部)11Bに嵌合する結合部23が形成されている。
結合部23は、嵩上げ部11の前板(立ち上がり部)11aに対向する対向面23Aを有する壁部23aと、この壁部23aの上端から凹部21A側に水平に屈曲した水平部23bとを有する。また、図1(B) に示すように、結合部23には、鍵並び方向の数カ所に水平断面U字状の縦溝23cが形成され、この縦溝23cの上端には水平部23bと面一にされた固定座23dが形成されている。そして、水平部23bと固定座23dは嵩上げ部11の裏面部11Bに当接する「当接部」を形成しており、固定座23dには貫通孔23d1が形成されている。なお、縦溝23cの部分は凹部21A側から見ると縦の畝状に見える。
後ケース21の上面部21cの裏側には、固定座23dに対応する鍵並び方向の数カ所にこの固定座23dと所定間隔を隔てた固着ネジ止め用の押さえボス21hが形成されている。また、第2ケース部2は、後ケース21の左右両端から前方に突出する腕部22を有し、この腕部22の先端部内側にはネジ止めボス22a(図2参照)が形成されている。このネジ止めボス22aは、第1ケース部1の左右両先端のボス13aの透孔13a1に当接する位置にある。また、後ケース21の下部21aの下端部には脚座32が形成されている。なお、この脚座32、第1ケース部1の脚座31はそれぞれケース本体と一体に構成してもよいし、別途取り付けるように構成してもよい。
第1ケース部1には鍵盤4が内装されており、この鍵盤4は、鍵(白鍵及び黒鍵)41を複数鍵配設したものである。鍵41は後方側の基端部41aにおいて第1ケース部1の鍵支持部11Aに取り付けられている。また、鍵41には基端部41aから延びる弾性を有する薄板状のヒンジ部41bが形成されており、鍵41は基端部41aを略支点として揺動可能になっている。鍵41の押鍵方向は図において反時計回り方向であり、鍵操作時のキーオン/やキーオフは回路基板5のキースイッチ51で検出される。また、押鍵時にはストッパ当接片41cがクッション部材14aに当接し、離鍵時には、ストッパ当接片41cが回路基板5のクッション部53に当接する。
この第1実施形態の鍵盤楽器は以下のようにして組み立てられる。図2に示したように、第1ケース部1の鍵支持部11A(支持板部11b)の上に鍵盤4の基端部41aを図示しない位置決め手段により位置決めして取り付ける。嵩上げ部11の鍵支持部11Aの裏面部11Bに第2ケース部2の結合部23の水平部23b及び固定座23dを当接させ、そのまま第2ケース部2を、第1ケース部1に対して押鍵方向(反時計回り)に回転させて、上面部21cが第1ケース部1の略上面に位置する位置で止める。このとき、第2ケース部2の腕部22の先端部のネジ止めボス22aが第1ケース部1の左右両先端のボス13aの透孔13a1に当接する。また、第2ケース部2の押さえボス21hが鍵盤4の基端部41aの上に当接する。
次に、図1に示したように、後ケース21の固定座23dの貫通孔23d1にネジN1を嵌挿し、このネジN1で鍵41の基端部41aの長孔内を貫通する。そして、ネジN1を後ケース21の押さえボス21hにネジ止めする。また、第1ケース部1の左右両先端のボス13a(図2)の透孔13a1にネジを通し、腕部22の先端部のネジ止めボス22aにネジ止めする。上記固定座23d、押さえボス21h及びネジN1が「係止手段」の一例である。また、ネジN1が「結合手段」の一例である。
以上の実施形態に示した第2ケース部2は多重スライドコアを用いて一体成形したものであるが、一部はブロー成形でもよい。またスライドコアを抜くためのスリットがあってもよく、この場合、そのスリットを第2ケース部2内に収納するスピーカの放音孔として兼用してもよい。さらに、第2ケース部2は、全部一体成形ではなく、上下半分ずつを一体成形した後で、接着剤及びまたはネジ等にて一体形に成形して、第1ケース部と第2ケース部とを組み立てるようにしてもよい。
また、成形方法として次のような方法でもよい。図1に三角矢印AまたはB、あるいはA及びBで示した箇所で鍵並び方向にヒンジ構造を採用し、この後ケース21を、Aから上面部21c側のパーツ、AとBの間のパーツ、Bから結合部23側のパーツの、3つのパーツをヒンジ構造により展開自在に形成する。
図4はこのヒンジ構造の一例を示す図であり、図4(A) は開いた状態、図4(B) は閉じた状態を示している。パーツP1とパーツP2の連結部分は当該パーツP1,P2(後ケース21)を成形するときに溝を形成して薄肉にしたものである。また両パーツP1,P2にはヒンジ部Hを挟んで対向するブロックB1,B2を形成し、両ブロックB1,B2に軸を合わせたネジ孔B11,B21を形成し、貫通したネジ孔B21を有するパーツP2にネジ孔B21にネジn1を挿入可能なように切り欠き部P21を形成する。そして、図4(B) の閉じた状態でブロックB1,B2を付け合わせ、ネジn1によりネジ孔B11,B21で両パーツP1,P2を固定する。このようなブロックB1,B2の構造を後ケース21の鍵並び方向に例えば10〜20cm毎に1つづつ形成しておく。これにより、展開状態により後ケース21の金型成形が容易になる。なお、後ケース21を構成するパーツP1とパーツP2が「第1フレーム」及び「第2フレーム」の一例であり、パーツP1とパーツP2とを連結する溝状の薄肉部分からなるヒンジ部Hが「連結手段」の一例である。
図5は第2実施形態の鍵盤楽器の側断面図であり、第1実施形態と同様な要素には図1及び図2と同符号を付記して詳細な説明は省略する。また、第1実施形態と対応する要素には同符号に「′」を付記する。この第2実施形態では、後ケース21′の凹部21A′内の左右2箇所にスピーカ10を配設するようにしている。後ケース21′は、下部21a′の背面部21b′と反対側の上部に、嵩上げ部11の裏面部(鍵支持部11Aの下面部)11Bに嵌合する結合部23′を有する。この結合部23′は、壁部23a′とこの壁部23a′の上端から凹部21A′の外側に向けて水平に屈曲した水平部23b′とを有し、垂直断面が略L字形をしている。また、鍵並び方向の数カ所において、壁部23a′の対向面23A′と水平部23b′の下面とを連結するリブ23e′が形成されており、このリブ23e′により壁部23a′と水平部23b′の構造を堅牢にしている。
水平部23b′は嵩上げ部11の裏面部11Bに当接する「当接部」を形成しており、水平部23b′には貫通孔23b1′が形成されている。また、壁部23a′の対向面23A′は嵩上げ部11の前板(立ち上がり部)11aに対して略50mmほど離れて対向しており、この壁部23a′と前板11aとが、鍵並び方向の2つの縦リブを構成している。これにより、演奏時に一番力がかかる鍵支持部11Aを補強してさらに堅牢になっている。
この第2実施形態における組み立て方は第1実施形態と同様であり、鍵支持部11Aの裏面部11Bに結合部23′(その水平部23b′)を当接させたまま第2ケース部2′を押鍵方向(図における反時計方向)に回転させて、第1ケース部1と第2ケース部2′を位置決めして組み付ける。そして、第1ケース部1に対して第2ケース部2′を固着するとき、該結合部23′において、ネジN1を貫通孔23b1′に嵌挿し、鍵41の基端部41a及び上面部21c′の裏面に形成された押さえボス21h′にネジ止めする。
この第2実施形態の後ケース21′は、背面部21b′の矢印Aで示した箇所で鍵並び方向に前記図4で説明したヒンジ構造を採用している。この後ケース21′の組立時には、ヒンジ部分を開いた状態で下部21a′または背面部21b′のいずれか一方にスピーカ10を仮止めして固定し、そのヒンジ部分を図4(B) のように閉じた状態でネジn1(図4(B) )でネジ止め固定する。そして、スピーカ10を背面部21b′または下部21a′の裏面にネジ止めする。このネジ止めには、結合部23′の壁部23a′に貫通孔を形成してその貫通孔からドライバ等を凹部21A′内に挿入してネジ止めしてもよいし、後ケース21′の外側からネジ止めしてもよい。なお、下部21a′及び背面部21b′のスピーカ対向部分には放音孔21p′が形成されている。このように後ケース21′のヒンジ構造部分を左右2箇所の2つのスピーカ10で固定及び補強をしている。
すなわち、第2ケース部2′を、上記のような構造体に形成することで、スライドコアなしの上下金型のみにて第2ケース部2′を構成できる。そしてスピーカ10によって後ケース21′を縦断面略C字状に組み立てた後、押鍵方向(図における反時計方向)に第2ケース部2′を回転して、第1ケース部1に重ねて組み立てることができる。
図6は第3実施形態の鍵盤楽器の側断面図であり、第1実施形態と同様な要素には図1と同符号を付記して詳細な説明は省略する。また、対応する要素には同符号に「″」を付記する。この第3実施形態の後ケース21″は、水平に前後に幅広の下部21a″と、その後方に立ち上がる背面部21b″と、下部21a″と略平行に対向する上面部21c″とを有している。このように、この第3実施形態の鍵盤楽器は、後ケース21″を第1実施形態よりも後方側に幅を広くしたタイプの鍵盤楽器であり、スピーカ10は上面部21c″の裏面に上向きに取り付けられている。
後ケース21″の下部21a″の前方側には、第1実施形態と同様に、結合部23″が形成されており、結合部23″は、対向面23A″を有する壁部23a″、水平部23b″、縦溝23c″、固定座23d″で構成されている。そして、この第3実施形態で、ネジN1により固定座23d″の貫通孔23d1″において第1ケース部1に第2ケース部2″を固着する方法は第1実施形態と同じである。
この第3実施形態の後ケース21″は後方に幅が広いので下部21a″の裏側と上面部21c″の裏側に井桁状の補強リブ21a1″,21c1″(図7)が形成されている。また、背面部21b″においてその内部上下に補強ボス21j″,21k″を備えている。下側の補強ボス21k″にはネジ止め孔21n″と透孔21m″が形成されており、ネジ止め孔21n″から透孔21m″にネジN3を挿入し、このネジN3で上側の補強ボス21k″にネジ止めして、補強ボス21j″,21k″を固着することで、後ケース21″の縦断面を略C字状に成形できる。その後の組立ては、第2実施形態と同様である。また、この第3実施形態の後ケース21″も図4で説明したヒンジ構造を採用している。図7は後ケース21″をヒンジ部分で展開した状態を示す図であり、図では金型成形時の金型及びスライドコアの抜き方向を矢印で示してある。
なお、この第3実施形態における結合部23″の構造を、第2実施形態における結合部23′の構造に代えてもよいことはいうまでもない。
また、第1実施形態の変形例、第2実施形態及び第3実施形態のようなヒンジ構造を採用せずに、このヒンジ構造で連結されている部分で上下に分割した、上ケース部分と下ケース部分という構造にしてもよい。この場合、例えば図8に示したように、上ケース部分21Uの縁21U1を下ケース部分21Dの縁21D1よりも僅かに外にはみ出すようにして、上ケース部分21Uの内側にリブ21U2を形成し、このリブ21U2に下ケース部分21Dの縁21D1を係合させて上下を組み付けるようにするとよい。なお、この場合、図示しないボス等の部分で上下をネジ止めする。
図9は第4実施形態の鍵盤楽器の側断面図、図10は第5実施形態の鍵盤楽器の側断面図であり、この第4実施形態及び第5実施形態と第1実施形態との違いは以下のおとりである。第4及び第5実施形態における嵩上げ部11の前板111aが、底面部1Aから斜めにかつ後方に嵩上げされている点と、第5実施形態における第2ケース部2の後ケース211の高さが第1実施形態(及び第4実施形態)の後ケース部21より低い点である。その他の点は第1実施形態と同様であり、同様な部分は詳細な説明を省略する。以下、第4及び第5実施形態における前板111aと第5実施形態における後ケース211のみの符号を第1実施形態と符号を変えて説明する。
図9の第4実施形態は、非押鍵時(図9の状態のとき)に鍵41の上面41Aがに設置面Tと平行となるタイプの鍵盤楽器の例である。図10の第5実施形態は二点鎖線で示した押鍵時に鍵41Aの上面が設置面Tと平行となるタイプの鍵盤楽器である。
この第4及び第5実施形態において、第1ケース部1は前方下部15の下面151に設けた下に凸の略半球状の脚座31にて支持され、前後方向における1箇所(図示の部分)において設置面Tに載置される。また、鍵支持部11Aが第2ケース部2の取り付け部となり、この取り付け部(鍵支持部11A)は鍵並び方向に水平となり、かつ楽器前後方向における1箇所となる。したがって、第1ケース部1の後方に取り付けられる第2ケース部2の後ケース21(図10の二点差線),211の高さを異ならせることにより、鍵支持部11A(取り付け部)の高さが変わる。したがって、第1ケース部1の傾斜を変えて鍵盤4の傾斜角度を異ならせることができる。
また、鍵支持部11Aを構成する嵩上げ部11が第1ケース部1の底面部1Aから斜めにかつ後方に嵩上げされ、前板111aが斜めになって第1ケース部1の底面部1Aと前板111aとの境界部分が設置面Tに接触しないので、タイプの変更が容易にできる。このように、両実施形態において第1ケース部1は同一の部材であり、第5実施形態の後ケース211の高さを第4実施形態の後ケース21より低くするだけで、両タイプの鍵盤楽器が実現できる。
また、第2ケース部2の脚座32をケース本体と別体で構成して取り付けるようにし、第5実施形態の後ケース211に取り付けられる脚座32の高さを高くすれば、第5実施形態の第2ケース部2(ケース本体)をそのまま変更することなく、第4実施形態のタイプに変更することもできる。
以上のように、各実施形態における第1ケース部1(基本ケース部)は同一の部材であるが、第2ケース部2,2′,2″は各実施形態特有の構造をしている。すなわち、各実施形態において、第1ケース部を共通にした異なる機種の鍵盤楽器の例が示されている。これにより、第1ケース部の共通使用により各機種の鍵盤楽器自体のコストを低減することができる。また、第1ケース部1の前後方向の幅は略鍵盤4の前後幅(鍵41の長さ程度)となって、サイズが小さなものとなっているので、第2ケース部を小さくすることもできる。また、第2ケース部を大きくする場合も、第1ケース部の後部の空間に第2ケース部によって下後ケースを構成することができ、鍵盤装置自体の安定性を得ることができる。
以上の実施形態では第1ケース部と第2ケース部の構成において、第2ケース部が一体型の場合の他に、前記のように上ケース部分と下ケース部分とからなる上下分離型の例について説明したが、このような上下分離型であっても、上下組み付けて一体にしたものが一つの第2ケース部であることにはかわりはない。
このように第2ケース部が上下分離型であるような場合には、鍵盤楽器の下ケースのうち、鍵支持部近傍より前側になる下前ケースを第1ケース部とし、その後方側の下後ケースを第2ケース部の一部とし、さらに下前ケースと下後ケースを覆う上ケースをさらに第2ケース部の一部とする。そして、下前ケース、下後ケース及び上ケースによりケース体を構成する。そして、下前ケースには前記実施形態と同様な鍵盤を取り付け、下前ケースに対して、前記同様な鍵支持部において下後ケースと上ケースを固着すればよい。
以上の実施形態では、第1ケース部側の鍵支持部11Aと第2ケース部側の結合部23(23′,23″)とを固着する際に、ネジN1と上面部21c(21c′,21c″)の裏面の押さえボス21h(21h′,21h″)とにより鍵盤の基端部41aを上から押圧して固着するようにしているが、結合部23を嵩上げ部11に固着する構造として例えば図11に示すものでもよい。なお、図11において、前記実施形態と対応する部分に同符号を用いる。
図11(A) は第1ケース部1の底面部1Aから前板111aを斜めにかつ後方に嵩上げして形成し、その前板111aの上部において、手前側にボス部112を形成するとともにその後部に支持板部11bを後方に延ばし、これらの上面を鍵支持部11Aとする。そして、鍵支持部11Aに鍵の基端部41aを取り付け、さらにボス部112において第2ケース部2の結合部23を楽器の斜め後方側から固着する。
図11(B) は第1ケース部1の底面部1Aから前板111aを斜めにかつ後方に嵩上げして形成し、その前板111aの上部において、手前側から支持板部11bを後方に延ばすとともにその後部にボス部112を形成し、これらの上面を鍵支持部11Aとする。そして、鍵支持部11Aに鍵の基端部41aを取り付け、さらにボス部112において第2ケース部2の結合部23を楽器の斜め前方側から固着する。
また、前記各実施形態において、第1ケース部1の嵩上げ部11の前板11a,111aに対して結合部23,23′,23″を後方側から押圧するようにして結合部23,23′,23″を嵩上げ部11に固着するようにしてもよい。この場合、及び図11のように斜め後方あるいは斜め前方から固着する場合、第2ケース部2の腕部22のネジ止めボス22aの孔の形状を、前後方向を長手方向とする長孔にする。これにより、第1ケース部1の左右両先端のボス13aから下から上に向けてネジにより固定する場合に、結合部23を後方側からあるいは前方側から押圧することにより生じる前後のズレを吸収することができる。
実施形態では、嵩上げ部を第1ケース部(基本ケース部)の底面部と一体に成形した場合について説明したが、この嵩上げ部は第1には楽器の底面から離れた位置で鍵盤を支持するという機能を持てばよく、底面部に対して別部材により形成した嵩上げ部を別途固着するようにしてもよい。