JP4854202B2 - 新規改変型s−ヒドロキシニトリルリアーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、新規な改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼに関する。より詳細には、アミノ酸を置換することにより耐熱性が向上したS-ヒドロキシニトリルリアーゼに関する。
S-ヒドロキシニトリルリアーゼは、青酸とアルデヒド、あるいはケトンとの反応を触媒し、光学活性を有するシアノヒドリン類を生成させる。光学活性シアノヒドリン類は医薬合成の中間体として重要であり、したがってS-ヒドロキシニトリルリアーゼは工業上で重要な酵素といえる。
S-ヒドロキシニトリルリアーゼとしては、例えば、キャッサバ(Manihot esculenta)由来のS-ヒドロキシニトリルリアーゼ、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)由来のS-ヒドロキシニトリルリアーゼ、またはイネ科植物であるモロコシ(Sorghum bicolor)由来のS-ヒドロキシニトリルリアーゼなどが知られている。しかしながら、酵素を生物より分離するコストが高額であるため、工業的には、天然の酵素に加えて組換え型S-ヒドロキシニトリルリアーゼが好適に用いられると期待される。
組換え型S-ヒドロキシニトリルリアーゼの製造では、酵素活性を損なうことなく、宿主細胞破砕液より当該酵素を分離する工程が必要となる。酵素の分離法としてはイオン交換等のクロマトグラフィーを用いた方法が最もよく知られているが、高コストのため、工業的には加熱による分離法が望ましい。
一方、Wagnerらは、パラゴムノキ由来のS-ヒドロキシニトリルリアーゼの結晶構造を解析し、この酵素がα/βヒドロラーゼスーパーファミリーに属することを報告している。この報告によれば、酵素の活性中心はSer80, His235、およびAsp207 からなるCatalytic Triadで構成され、タンパクの奥深くに存在し、狭い疎水性チャンネルで外界につながっている(非特許文献1)。そこで、酵素の基質受容性を改良するために、この疎水性チャンネル内のかさ高いアミノ酸をより小さなアミノ酸に置換した改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼも開発されている(特許文献1)。しかしながら、基質受容性以外を目的としたS-ヒドロキシニトリルリアーゼの改変、特に耐熱性の向上のための改変については、未だ具体的な報告はない。
特開2000-125886号公報 Wagner UG., et al, Structure. 1996 Jul 15;4(7):p811-22.
本発明の課題は、耐熱性および安定性の向上した新規S-ヒドロキシニトリルリアーゼを提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、S-ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸を遺伝子工学的に置換することで、改変前の酵素に比較して著しく安定性の向上した酵素が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、天然型S-ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、ヘリックスD3’、ヘリックスA、およびβシート2領域に存在する少なくとも1つのアミノ酸を改変して得られる、改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼに関する。
天然型S-ヒドロキシニトリルリアーゼとしては、キャッサバ(Manihot esculenta)由来のS-ヒドロキシニトリルリアーゼ(配列番号2)またはパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)由来のS-ヒドロキシニトリルリアーゼ(配列番号4)を挙げることができる。前記キャッサバまたはパラゴムノキ由来の天然型S-ヒドロキシニトリルリアーゼを用いる場合、配列番号2に示されるアミノ酸配列上の15-28番目(ヘリックスA)、32-36番目(βシート2)、および163−174番目(ヘリックスD3’)、あるいは、配列番号4に示されるアミノ酸配列上の15-28番目(ヘリックスA)、32-36番目(βシート2)、および162−173番目(ヘリックスD3’)に存在する少なくとも1つのアミノ酸を改変することが望ましい。
本発明の改変型酵素の一例として、配列番号2に示されるアミノ酸配列上の21、163、165、169、172、173、および174番目から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を改変して得られる改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼを挙げることができる。
なかでも、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、165番目のアミノ酸を酸性アミノ酸に改変して得られる改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼは、高い熱安定性と有機溶媒耐性を有する。また、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、173番目のアミノ酸をもう一方のモノマーのアミノ酸と近接するように改変して得られる改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼも、高い熱安定性と有機溶媒耐性を有する。さらに、163番目のアミノ酸を改変して得られる改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼも高い熱安定性を有する。
具体的には、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、a) 21番目のリジンのアスパラギン酸、グルタミン酸、またはアスパラギンへの置換、b) 165番目のグリシンのアスパラギン酸またはグルタミン酸への置換、c) 173番目のバリンのロイシンへの置換、d) 174番目のメチオニンのロイシンへの置換、e) 163番目のトレオニンのアスパラギン酸、グルタミン酸、またはセリンへの置換を導入した改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼは改変前の酵素に比較して高い安定性を有する。これらの置換は1箇所でもよいが、2箇所以上に複合して導入することにより、さらに酵素の安定性を高めることができる。
特に好適な改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼの例として、配列番号6、8、16、20、22、26、28、32、36、40、42、または44に示されるアミノ酸配列を有する改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼを挙げることができる。
本発明の改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼは、30分間の加熱処理によって酵素活性が半減する温度が、天然型S-ヒドロキシニトリルリアーゼにおける該温度と比較して1℃以上高いことが望ましい。
本発明はまた、本発明の改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼをコードするDNAを提供する。そのようなDNAの好適な例として、配列番号6、8、16、20、22、26、28、32、36、40、42、または44に示されるアミノ酸配列をコードするDNAを挙げることができる。
本発明はまた、本発明の改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼをコードするDNAを導入した宿主を培養し、得られる培養物からS-ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有するタンパク質を回収することを特徴とする、改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法を提供する。
本発明はさらに、本発明の改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼをカルボニル化合物およびシアン化合物と接触させることを特徴とする光学活性シアノヒドリンの製造方法を提供する。
さらにまた、本発明は、天然型S-ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、ヘリックスD3’、ヘリックスA、およびβシート2領域に存在する少なくとも1つのアミノ酸を改変することにより、S-ヒドロキシニトリルリアーゼの安定性を向上させる方法を提供する。
本発明の改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼは、従来の酵素に比較して熱安定性や有機溶媒耐性が著しく向上している。よって、光学活性シアノヒドリンの工業的生産における当該酵素のより広範な適用が可能になる。また、前記改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼは、酵素活性を損なうことなく、加熱処理により細胞破砕液から低コストで簡便に精製できるため、S-ヒドロキシニトリルリアーゼの効率的な組換え生産が可能になる。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.天然型S-ヒドロキシニトリルリアーゼ
本発明において、「天然型S-ヒドロキシニトリルリアーゼ(以下、SHNLと略記する)」とは、植物から単離・精製されたSHNL、あるいは当該SHNLと同じアミノ酸配列を有するSHNLを意味する。前記天然型SHNLの由来は特に限定されず、例えば、モロコシ(Sorghum bicolor)などのイネ科植物由来のSHNL、キャッサバ(Manihot esculenta)やパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)などのトウダイグサ科植物由来のSHNL、キシメニア(Ximenia america)などのボロボロノキ植物由来のSHNL等を挙げることができる。これらSHNLのアミノ酸配列や遺伝子の塩基配列は既に公知であり、GenBank等の公共データベースを通じて容易に入手することができる。例えば、パラゴムノキ由来SHNL遺伝子はAccession No.U40402(配列番号3はU40402のCDSに該当)、キャッサバ由来のSHNL遺伝子はAccession No. Z29091、モロコシ由来SHNL遺伝子はAccession No.AJ421152として、それぞれGenBankに登録されている。
2.S-ヒドロキシニトリルリアーゼの立体構造
いくつかのSHNLについては、既にその立体構造が解析がされており、例えば、日本DNAデータバンクのデータベースPDB Retrieverよりデータを取得することができる。こうした立体構造情報によれば、SHNLはホモダイマーを形成し(図7および図11参照)、その活性中心はタンパクの奥深くに存在し、狭い疎水性チャンネルで外界につながっている。
SHNLには、ダイマー形成時に他方のSHNLのヘリックスAおよびβシート2と結合する、ヘリックスD3’と呼ばれる領域がある。以下に、キャッサバとパラゴムノキ由来SHNLのヘリックスA、βシート2、およびヘリックスD3’の各アミノ酸配列上の位置を示す。
ヘリックスA βシート2 ヘリックスD3’
キャッサバSHNL 15-28 32-36 163-174
パラゴムノキSHNL 15-28 32-36 162-173
(上記各番号は配列表の各配列上のアミノ酸番号を示す)
上記に示すよう、ヘリックスD3’は、配列番号2に示されるキャッサバ由来のSHNLのアミノ酸配列においては163−174番目のアミノ酸に、配列番号4に示されるパラゴムノキ由来のSHNLのアミノ酸配列においては、162−173番目のアミノ酸に該当する。
図13は、キャッサバ(Manihot esculenta)およびパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)由来のSHNLのアミノ酸配列をアラインメントしたものである。両SHNLのアミノ酸の相同性は74%であり、個々のアミノ酸は必ずしも完全に同一ではない。例えば、パラゴムノキ由来のSHNLでは、キャッサバ由来のSHNLの139番に該当するアミノ酸が欠失しているため、ヘリックスD3’領域のアミノ酸番号が1つずれている。しかしながら、いずれもα/βヒドロラーゼスーパーファミリーに属し、他植物種由来のSHNLを含めて、その立体構造は類似している。
本発明において、「ヘリックスD3’」とは、SHNLがダイマーを形成する際に他方のSHNLモノマーの「ヘリックスA」および「βシート2」と結合する領域であって、SHNLの熱安定性や酵素活性に深く関与する領域である。具体的には、「ヘリックスD3’」領域は、配列番号2に示されるキャッサバ由来のSHNLのアミノ酸配列の163−174番目や配列番号4に示されるパラゴムノキ由来のSHNLのアミノ酸配列の162−173番目のアミノ酸に該当する領域、あるいは他の植物由来のSHNLにおいて前記アミノ酸に相当する領域である。他の植物由来のSHNLにおけるヘリックスD3’の位置は、そのSHNLのアミノ酸配列を上記配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列とアラインメントし、配列番号2の163-174番目または配列番号4の162−173番目のアミノ酸に対応する領域として求めることができる。
本発明にかかる「ヘリックスA」領域は、具体的には、配列番号2に示されるキャッサバ由来のSHNLや配列番号4に示されるパラゴムノキ由来のSHNLのアミノ酸配列において、15-28番目のアミノ酸に該当する領域、あるいは他の植物由来のSHNLにおいて前記アミノ酸に相当する領域である。他の植物由来のSHNLにおけるヘリックスAの位置は、そのSHNLのアミノ酸配列を上記配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列とアラインメントし、配列番号2または配列番号4の15-28番目のアミノ酸に対応する領域として求めることができる。
本発明にかかる「βシート2」領域は、具体的には、配列番号2に示されるキャッサバ由来のSHNLや配列番号4に示されるパラゴムノキ由来のSHNLのアミノ酸配列において、32-36番目のアミノ酸に該当する領域、あるいは他の植物由来のSHNLにおいて前記アミノ酸に相当する領域である。他の植物由来のSHNLにおけるヘリックスD3’の位置は、そのSHNLのアミノ酸配列を上記配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列とアラインメントし、配列番号2または配列番号4の32-36番目のアミノ酸に対応する領域として求めることができる。
3.改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼ
本発明は、天然型S-ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、ヘリックスD3’、ヘリックスAおよびβシート2領域に存在する少なくとも1つのアミノ酸を改変して得られる、安定性が向上した改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼに関する。
ここで、「アミノ酸の改変」とは、アミノ酸を別種のアミノ酸に改変することを意味する。改変は、アミノ酸を相互に置換することのほか、適当な置換基や修飾の導入によって改変するものであってもよい。
アミノ酸の置換は、周知の方法に従い、当該アミノ酸配列をコードする遺伝子に部位特異的変異を導入すればよい。そのような部位特異的変異は、市販のキット(例えば、QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE)、TransformerTM Site-Directed Mutagenesis Kit(CLONTECH)等)を用いて容易に行うことができる。
本発明において、「安定性が向上した」とは、熱安定性や有機溶媒耐性等の向上を意味する。なお、「熱安定性が向上した」とは、改変型SHNLを加熱した後に室温に戻して得られる酵素活性が、同じく加熱処理した天然型SHNLの酵素活性と比較して多く残存していることを意味する。具体的にいえば、30分間の加熱処理によって改変型SHNLの酵素活性が半減する温度が同活性値、同タンパク質濃度に調整された天然型SHNLにおける該温度と比較して少なくとも1℃以上高いことを意味する。また、30分間の加熱処理によって改変型SHNLの酵素活性が半減する温度が、同活性値、同タンパク質濃度に調整された天然型SHNLにおける該温度と比較して1℃上昇したことを「熱安定性/耐熱性が1℃向上した」と表現する。具体的にいえば、30分間の加熱処理によって酵素活性が半減する温度が、天然型S-ヒドロキシニトリルリアーゼにおける該温度と比較して少なくとも1℃以上高いことを意味する。本発明の改変型SHNLは、こうした耐熱性に加えて、有機溶媒に対する耐性も高く、工業的生産工程において非常に有用な酵素といえる。
本発明においては、一方のSHNLモノマーのヘリックスD3’領域のアミノ酸と他方のSHNLモノマーのヘリックスAおよびβシート2領域のアミノ酸を最適化し、酵素の熱安定性を向上させる。酵素の熱安定性を向上させる有効な手段の一つとして、オリゴマー形成力を強化する方法が考えられる。本発明においては、一方のSHNLモノマーのヘリックスD3’領域のアミノ酸と他方のSHNLモノマーのヘリックスA、βシート2領域のアミノ酸を最適化し、酵素の熱安定性を向上させる。SHNLのダイマー形成には相互のモノマーのアミノ酸残基のイオン結合や疎水性相互作用が関与していると思われるが、このような要因が有効にはたらくのはアミノ酸残基間の距離が2〜5オングストロームまでと思われる。したがって、改変させるアミノ酸は、特にその10オングストローム以内(10オングストローム以内であればアミノ酸の改変によりアミノ酸残基間の距離を最適化しうる)に、もう一方のモノマーのヘリックスD3’領域、あるいはヘリックスA、βシート2領域のアミノ酸残基が存在するようなアミノ酸であることが好ましい。そのようなアミノ酸は、ヘリックスD3’領域であれば、配列番号2に示される164〜166、および168〜174番目のアミノ酸である。
本発明の改変型SHNLの好適な一例として、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、165番目のグリシンを、酸性アミノ酸、例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸に置換して得られるS-ヒドロキシニトリルリアーゼ(それぞれ、配列番号6および8)、173番目のバリンをロイシンに置換して得られるS-ヒドロキシニトリルリアーゼ(配列番号16)、174番目のメチオニンをロイシンに置換して得られるS-ヒドロキシニトリルリアーゼ(配列番号20)あるいは21番目のリジンをアスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギンに置換して得られるS-ヒドロキシニトリルリアーゼ(配列番号22、26、および28)、163番目のトレオニンをアスパラギン酸、グルタミン酸、またはセリンに置換して得られるS-ヒドロキシニトリルリアーゼ(配列番号、40、42、および44)、あるいはこれらの置換を組み合わせた変異部位複合S-ヒドロキシニトリルリアーゼ(配列番号32および36)を挙げることができる。これらの改変型SHNLは、天然型SHNLと比較して、酵素活性が半減する温度が5℃以上向上した優れた耐熱性酵素であるとともに、有機溶媒に対する耐性を有するため、工業的生産工程において非常に有用な酵素である。
4. 改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼの製造
4.1 改変型SHNLをコードするDNA
本発明にかかる改変型SHNLタンパク質をコードするDNAは、公知の天然型SHNL遺伝子に、部位特異的変異を導入して得られる。すなわち、置換部位のコドンを目的とするアミノ酸をコードするコドンに改変しうるプライマーを設計し、該プライマーを用いて天然型SHNLをコードするDNAを鋳型として伸長反応を行えばよい。部位特的変異導入は、市販のキット(例えば、QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE)、TransformerTM Site-Directed Mutagenesis Kit(CLONTECH)等)を用いて容易に行うことができる。
本発明にかかる改変型SHNLタンパク質をコードするDNAの例としては、配列番号5、7、15、19、21、25、27、29、31、35、39、41、および43に示される塩基配列を有するDNAを挙げることができる。
4.2 組換えベクター
次いで、前記改変型SHNLをコードするDNAをプラスミド等の公知のベクターに連結(挿入)して組換えベクターを作製する。前記ベクターは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えばプラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。
前記プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば pBR322, pBR325, pUC18, pUC119, pTrcHis, pBlueBacHis 等、特に強力なT7プロモーターを有するpET21ベクターが好ましい)、枯草菌由来のプラスミド(例えば pUB110, pTP5 等)、酵母由来のプラスミド(例えば YEp13, YEp24, YCp50, pYE52 等)などが、ファージ DNAとしてはλファージ等が挙げられる。
前記ベクターへの本発明の遺伝子の挿入は、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、ベクターDNAの適当な制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法が採用される。
宿主内で外来遺伝子を発現させるためには、構造遺伝子の前に、適当なプロモーターを配置させる必要がある。前記プロモーターは特に限定されず、宿主内で機能することが知られている任意のものを用いることができる。なおプロモーターについては、後述する形質転換体において、宿主ごとに詳述する。また、必要であればエンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、ターミネーター配列等を配置させてもよい。
4.3 改変型SHNL発現系(形質転換体)
次いで、前記組換えベクターを目的遺伝子が発現しうるように宿主中に導入し、改変型SHNL発現系を作製する。ここで宿主としては、本発明のDNAを発現できるのもであれば特に限定されず、例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロテイ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌、またサッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cervisiae)、チゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces. pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母、その他COS細胞、CHO細胞等の動物細胞、あるいはSf19、Sf21等の昆虫細胞を挙げることができる。
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HMS174(DE3)、K12、DH1、B株等が挙げられ、枯草菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)MI 114、207-21等が挙げられる。プロモーターとしては、大腸菌等の上記宿主中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の、大腸菌やファージに由来するプロモーターが挙げられる。また、tacプロモーター等のように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法は、特に限定されず、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Cohen, S.N. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110-2114 (1972)]や、エレクトロポレーション法等を挙げることができる。
酵母を宿主とする場合は、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、ピキア・パストリス等が用いられる。プロモーターとしては、酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等を挙げることができる。酵母へのベクターの導入方法は、特に限定されず、例えば、エレクトロポレーション法[Becker, D.M. et al.:Methods. Enzymol., 194: 182-187 (1990)]、スフェロプラスト法[Hinnen, A.et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 75: 1929-1933 (1978)]、酢酸リチウム法[Itoh, H.:J. Bacteriol., 153:163-168 (1983)]等を挙げることができる。
4.4 形質転換体の培養
本発明の改変型SHNLは、本発明の形質転換体を適当な培地で培養し、その培養物から該酵素活性を有するタンパク質を採取することによって得ることができる。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主に応じて、適宜決定される。例えば、大腸菌や酵母等の微生物を宿主とする形質転換体の場合は、微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体を効率的に培養しうる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いても良い。
培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加しても良い。プロモーターとして誘導性のものを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加しても良い。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、インドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加しても良い。
培養後、本発明の酵素タンパク質が菌体内または細胞内に生産される場合は、菌体または細胞を破砕する。一方、本発明のタンパク質が菌体外または細胞外に分泌される場合は、培養液をそのまま用いるか、遠心分離等によって回収する。
タンパク質の単離・精製には、例えば硫安沈澱、SDS−PAGE、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独であるいは適宜組み合わせて用いればよい。
本発明の改変型SHNLの酵素活性は、基質となりうる適当なシアン化合物とアルデヒド、あるいはケトンを含む反応液に該酵素を添加し、生成する光学活性シアノヒドリンを検出することにより確認することができる。光学活性シアノヒドリンの確認は、例えば、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を用いることができる。あるいは、本発明の改変型SHNLに特異的に結合する抗体を作製し、該抗体を用いたウェスタンブロッティングによって発現を確認することもできる。例えば、SHNLの酵素活性は、マンデロニトリルのSHNLによる分解によって生じるアルデヒドの単位時間あたりの生成量(波長249.6nmにおける吸光度から算出)を測定することによって確認できる。
SHNLを精製する際には通常イオン交換クロマトグラフィー等の操作が必要であるが、本発明の改変型SHNLは加熱処理を行うことで、遠心分離などの操作により酵素活性を保持したまま宿主(大腸菌)に由来するタンパク質を除去することができる。したがって、本発明の改変型SHNLは低コストで簡便に精製を行うことが可能であり、酵素の組換え生産効率を著しく向上させることができる。
本発明の改変型SHNLの製造法としては、例えば、特開平10-373246号、特開平10-373248号、特開平11-367251号を参考にすることができる。
5.改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼによる光学活性シアノヒドリンの合成
本発明の改変型SHNLは、耐熱性、有機溶媒耐性が高いにもかかわらず、天然型SHNLと同等の生産効率および光学純度で光学活性シアノヒドリンを合成できる。本発明の改変型SHNLを用いた光学活性シアノヒドリンの合成は、天然型SHNLと全く同様の方法で実施できる。
すなわち、反応溶媒中に、本発明の改変型SHNLおよび反応基質を加え、反応温度10〜50℃において、20分間〜24時間反応させることによって、光学活性シアノヒドリンを合成することができる。反応時間は、基質の転換速度に応じて適宜調整する。反応基質としては、カルボニル化合物およびシアン化合物を使用することができる。カルボニル化合物は、COR1R2で示されるアルデヒドまたはケトンであり、R1とR2は水素原子、置換または非置換の炭素数1〜18の線状または分枝鎖状の飽和アルキル基、あるいは置換または非置換の環員が5〜22の芳香族基である(ただし、R1とR2は同時に水素原子を表すことはない)。シアン化合物は、シアン化物イオン(CN-)を生じる物質であれば特に限定されず、例えば、シアン化ナトリウムやシアン化カリウムなどのシアン化水素塩、アセトンシアンヒドリンなどのシアノヒドリン類を用いることができる。
反応溶媒としては、反応系内に水が大量に存在すると、酵素反応によって生成した光学活性シアノヒドリンのラセミ化が起こりやすくなったり、水に対する溶解度の小さいアルデヒドまたはケトンを原料として用いる場合には生産効率が低下するなどの点から、水に難溶または不溶である有機溶媒を主成分とする反応溶媒を用いることが好ましい。このような有機溶媒としては、酵素反応による光学活性シアノヒドリンの合成反応に影響を与えないものであれば特に制限はなく、合成反応に用いる原料のアルデヒドまたはケトンの物性、生成物であるシアノヒドリンの物性に応じて適宜選択することができる。具体的には、ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和炭化水素系溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、トルエン、キシレン、塩化メチレンなど;ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和アルコール系溶媒、例えば、イソプルピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、n−アミルアルコールなど;ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和エーテル系溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルなど;ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和エステル系溶媒、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどが挙げられ、これらを単独で用いても、また複数を混合して用いてもよい。また、上記溶媒は水または水系の緩衝液を含有または飽和させたものを用いることもできる。
工業的生産工程において、改変型SHNLは適当な無機担体に固定化させた固定化酵素として用いてもよい(例えば、特開2002-176974号参照)。本発明の改変型SHNLを用いたシアノヒドリンの好適な合成方法としては、例えば、特開2002-355085号、特開2002-176974号、特開2001-363840号、特開2001-346596号、特開2001-190275号、特開2000-245286、特開2001-120289号、特開2000-217590号等に記載された方法を挙げることができる。
以下、実施例を用いて本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:改変酵素Actmt-001f2-SHNLの調製
1.変異導入
キャッサバ(Manihot esculenta)由来のS-ヒドロキシニトリルリアーゼ(Wild-SHNL)遺伝子(配列番号1:特願2002-365675)への変異導入はGeneMorphTMPCR Mutagenesis Kit (STRATAGENE社製)を用いて行った。鋳型として、pKK223-3(アマシャム・バイオサイエンス社製)のマルチクローニングサイトにWild-SHNL遺伝子が組み込まれているpKK223-3/SHNL-Wildプラスミド600ng を用い、下記のオリゴDNAをプライマーとして、PCRを行った。
Forward primer: 5’-GGG GAA TTC ATG GTT ACT GCA CAC TTC GTT CTG ATT CAC-3’(配列番号9)
Reverse primer: 5’-GGG AAG CTT TTA AGC GTA TGC ATC AGC AAC TTC TTG CAG-3’(配列番号10)
2.形質転換
得られたPCR産物(SHNL-Mutants)を制限酵素EcoRI、HindIII(TOYOBO社製)を用いて消化し、同じく制限酵素EcoRI、HindIIIによりマルチクローニングサイトが消化されているベクターpKK223-3とライゲーションを行った。ライゲーションにはLigaFastTMRapid DNA Ligation System(Promega社製)を用いた。ライゲーション反応液をコンピテントセルDH5α(TOYOBO社製)に形質転換し、複数のDH5α/pKK223-3/SHNL-Actmtを得た。
3.選抜および高発現ベクターへの組換え
複数のDH5α/pKK223-3/SHNL-Actmtを試験管で培養し、培養液をそれぞれ1mLずつ取り、遠心分離を行って上清を除去し、細胞ペレットを得た。得られた細胞をクエン酸ナトリウムバッファー(pH5.5)200μLで再懸濁した後、超音波細胞破砕機で細胞を破砕した。細胞破砕物を15000rpm、5minの条件で遠心分離し、細胞破砕液を得た。この細胞破砕液を60℃、2hの条件で加熱し、加熱後にそれぞれの細胞破砕液のSHNL活性を測定した。SHNL活性は、反応温度20℃においてマンデロニトリルのSHNLによる分解によって生じるアルデヒドの単位時間あたりの生成量から算出した。なお、アルデヒドの単位時間あたりの生成量は、波長249.6nmにおける吸光度を測定すること(島津製作所製 分光光度計使用)によって算出される。
この結果、加熱後も活性を有していたDH5α/pKK223-3/SHNL-Actmt001f2を耐熱株として選抜した。選抜された株をコロニーPCRし、得られたPCR産物を鋳型としてシーケンス反応を行った。反応物の解析結果より、DH5α/pKK223-3/SHNL-Actmt001f2は配列番号1に示される塩基配列の494番目のグアニンがアデニンに改変された塩基配列(配列番号5)を有することが確認された。したがって、Actmt001f2-SHNLはWild-SHNLのアミノ酸配列(配列番号2)の165番目のグリシンがアスパラギン酸へ置き換えられたアミノ酸配列(配列番号6)を有する改変型SHNLであることが確認された。以下、この改変型SHNL(165番目のグリシンをアスパラギン酸に置換したSHNL)をActmt-001f2-SHNLと呼ぶ。
次に、SHNL-Actmt001f2遺伝子をタンパク質高発現ベクターpET21(Novagen社製)へ導入した。pKK223-3/SHNL-Actmt001f2プラスミドを調製し、これを鋳型として、下記のプライマーとDNAポリメラーゼKODplus(TOYOBO社製)を用いてPCRを行うことで、鋳型の両末端に付加されている制限酵素サイトEcoRI、HindIIIを除き、代わりに制限酵素サイトNdeI、BamHIを付加した。
Forward primer: 5’-GGG GGG GGG CAT ATG GTT ACT GCA CAC TTC GTT CTG ATT CAC AC-3’(配列番号11)
Reverse primer: 5’-GGG GGA TCC TTA AGC GTA TGC ATC AGC AAC TTC TTG CAG-3’(配列番号12)
得られたPCR産物を制限酵素NdeI(New England Bio Labs社製)、BamHI(TOYOBO社製)を用いて消化し、同じく制限酵素NdeI、BamHIによりマルチクローニングサイトが消化されているベクターpET21a(Novagen社製)とライゲーションを行った。ライゲーションにはLigaFastTMRapid DNA Ligation System(Promega社製)を用いた。ライゲーション反応液をコンピテントセルBL21(DE3)(Novagen社製)に形質転換し、165番目のアミノ酸がAspに置換されたSHNLの発現系BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Actmt001f2を得た。
実施例2:Actmt001f2-SHNLの熱安定性実験
1.実験方法
1)酵素液の調製
大腸菌BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Wild、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Actmt001f2をLB培地5mLを用いて37℃で12h培養した。得られた培養液100μLを下記に示すNS-2培地5mLに接種し、IPTGを添加して20℃、60hで培養を行った。培養終了後培養液を遠心分離し、細胞を回収した。この細胞を0.2Mクエン酸Na buffer(pH5.5)に懸濁し、超音波により細胞を破砕した。この破砕液を遠心分離し、上清を回収しWild-SHNL、Actmt-001f2-SHNL酵素液を得た。酵素液はWild-SHNLが活性値74U/mL、タンパク質濃度6.29mg/mL、Actmt-001f2-SHNLが活性値69U/mL、タンパク質濃度5.96mg/mLであった。
Figure 0004854202
上記を加熱減菌した後、フィルター減菌したアンピシリン100mg/L(終濃度)、およびフィルター減菌したIPTG 238mg/L(終濃度)を添加する。
2)酵素液の加熱処理
Wild-SHNL、Actmt-001f2-SHNL酵素液200μLをエッペンドルフチューブに入れ、ヒートブロックにより酵素液温が45〜70℃となるよう加熱した。30min後に遠心分離し、サンプルを回収し、開始時の酵素活性に対する残存活性を測定した。酵素活性の測定は実施例1に記載したとおりである。
2.実験結果
この結果、Wild-SHNLでは温度65℃において活性が半減したのに対し、Actmt-001f2-SHNLは90%以上の残存活性を示した(図1)。Actmt-001f2-SHNLについて活性の半減がみられたのは70℃付近で、Wild-SHNLと比較して約5℃の耐熱性向上が見られた。この結果より、キャッサバ由来のSHNLでは、165番目のアミノ酸がグリシンからアスパラギン酸へ置換されることにより、熱に対する安定性が向上することが明らかとなった。
加熱後の酵素液サンプルをSDS-PAGEにより解析した(図2)。サンプルは前述のように加熱後遠心分離されているため、熱により変性し、水に不溶となったタンパク質は除去されている。
図2に示すよう、Wild-SHNLにおいては、加熱温度60℃より酵素量(図2の矢印部分のバンド 参照)が急激に減少し、70℃ではバンドがほぼ消滅している。一方、Actmt-001f2-SHNLにおいても、酵素量の減少はみられるが、70℃においても酵素は十分残存している。このSDS-PAGEの結果は、酵素活性の測定結果(図1)と一致している。
図3に加熱によるサンプル中のタンパク質濃度の変化を示す。45℃のサンプルではホストである大腸菌に由来するタンパク質が多く認められる(図2および図3)が、このタンパク質も加熱により変性し不溶化するため、加熱温度の上昇と共にサンプル中から除去される。そのため、サンプル中のタンパク質濃度はWild-SHNLとActmt-001f2-SHNLのいずれについても、加熱温度の上昇に伴いほぼ直線的に減少した。
一般に、酵素を精製する際にはゲルろ過クロマトグラフィー等の操作が必要であるが、Actmt-001f2-SHNLは加熱処理を行うことで、遠心分離などの操作により酵素活性を保持したまま大腸菌に由来するタンパク質を除去することができる。したがって、Actmt-001f2-SHNLは低コストで簡便に精製を行うことが可能であると考えられた。
実施例3:Actmt-001f2-SHNLの60℃加熱処理における安定性、およびタンパク濃度変化の検討
加熱処理により、酵素活性を保持したまま大腸菌に由来するタンパク質を除去することが実際に可能であることを確認するため、次の実験を行った。
1.実験方法
1)酵素液の調製
大腸菌BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Wild、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Actmt001f2をLB培地5mLを用いて37℃で12h培養。得られた培養液100μLをNS-2培地5mLに接種し、IPTGを添加して20℃、60hで培養を行った。培養終了後培養液を遠心分離し、細胞を回収した。この細胞を0.2M クエン酸Na buffer(pH5.5)に懸濁し、超音波により細胞を破砕した。この破砕液を遠心分離し、上清を回収しWild-SHNL、Actmt-001f2-SHNL酵素液を得た。酵素液の濃度はWild-SHNLが活性値83U/mLタンパク質濃度7.01mg/mL、Actmt-001f2-SHNLが活性値81U/mLタンパク質濃度6.65mg/mLであった。
2)酵素液の加熱処理
Wild-SHNL、Actmt-001f2-SHNL酵素液200μLをエッペンドルフチューブに入れ、ヒートブロックにより酵素液温が60℃となるよう加熱した。30min毎に遠心分離し、サンプルを10μLずつ回収し、残存活性、タンパク濃度を測定した。
2.実験結果
1)残存活性
Wild-SHNLは加熱時間1.5hで活性が半減したのに対し、Actmt-001f2-SHNLは加熱時間1.5hでも75%の活性が残存していた(図4)。
2)タンパク濃度変化
得られたサンプルをSDS-PAGEにより解析した。SDS-PAGEの結果(図5)から、0h(加熱なし)の状態では大腸菌に由来するタンパク質が多く混合しているが、加熱後のサンプルでは、Wild-SHNLもActmt-001f2-SHNLも、大腸菌に由来するタンパク質がサンプル中から除去されていることが明らかとなった。
加熱時間1hにおけるActmt-001f2-SHNLサンプル中のタンパク質濃度は4.25mg/mLであり、初期の64%まで減少していた(表2)。一方、加熱時間1hにおけるActmt-001f2-SHNLの残存活性は80%以上であった。したがって、Actmt-001f2-SHNLは、加熱処理により酵素活性を保持したまま大腸菌に由来するタンパク質を除去できることが明らかになった。Wild-SHNLについては、1hにおけるタンパク質濃度が4.21mg/mLであり、初期の63%まで減少したものの残存活性は60%まで減少した。
Figure 0004854202
以上より、Wild-SHNLは、60℃の加熱処理では他の共雑タンパク質と共に変性、失活してしまうため、この温度以上の加熱処理による分離精製は困難であることがわかった。なお、45℃〜55℃の範囲で加熱処理することも可能であるが、図3から明らかなように、この温度範囲では共雑タンパク質の変性が極めて緩やかであるため、十分な分離精製を行うためには、かなりの時間を要することになる。
実施例4:Actmt-001f2-SHNLの有機溶媒耐性
一般に、酵素の熱安定性と他の環境ストレス、例えば有機溶媒などに対する安定性には高い関連性がある。したがって、Actmt-001f2-SHNLは有機溶媒に対する安定性も向上している可能性がある。このためActmt-001f2-SHNLの有機溶媒耐性に関する検討を行った。
1.実験方法
1)酵素液の調製
実施例2と同様の方法で酵素液を調製した。ストレスに対する酵素の耐性を測定する場合、サンプル中の共雑タンパク質が保護剤として働き、見かけ上耐性が向上する場合がある。したがって上記のサンプルをそれぞれ牛血清アルブミンおよびバッファーで希釈し、全てのサンプルを活性値44.19U/mL、比活性値6.50U/mgで揃え、共雑タンパク質の影響を実験系から排除した。
2)有機溶媒処理
有機溶媒としてエタノールおよび酢酸エチルを用い、これを酵素液に添加した。エタノールの終濃度は30%、酢酸エチルは40%とした。その後サンプルを攪拌しながら50時間保持した。数時間毎に遠心分離を行い、上清(水相)をサンプルとして10μL取り、活性測定を行った。
2.実験結果
Actmt-001f2-SHNLはWild-SHNLと比較して、エタノール(図6A)、および酢酸エチル(図6B)に対して耐性を有することが明らかとなった。
実施例5:Actmt-001f2-SHNLによる光学活性シアノヒドリンの製造
SHNLはアルデヒドおよびケトンと青酸の反応を触媒し、光学活性なシアノヒドリンを合成する酵素である。Actmt-001f2-SHNLの上記反応に対する触媒能を、Wild-SHNLとの比較により検討した。
1.実験方法
1)酵素液調製
BL21(DE3)/pET21a/SHNL-WildおよびBL21(DE3)/pET21a/SHNL-Actmt001f2を培養し、培養液を遠心分離して上清を除去し、細胞ペレットを得た。この細胞ペレット0.33gにクエン酸ナトリウムバッファー(pH5.5)0.66gを加えて再懸濁した後、超音波細胞破砕機で細胞を破砕した。細胞破砕物を15000rpm、5minの条件で遠心分離し、細胞破砕液を得た。この細胞破砕液を50℃、3hの条件で加熱し、加熱後に細胞破砕液を遠心分離した。この上清を0.45μmフィルターでろ過した後、限外ろ過濃縮した。これらの濃縮酵素液にクエン酸ナトリウムバッファー(pH5.5)を加え、両者の活性を下表のように揃えた。調製した酵素液0.3mLをシリカゲル300mgと混合し、固定化酵素を得た。
Figure 0004854202
2)酵素反応
1.61MのHCNを溶解したt-ブチルメチルエーテル4.492mLに0.2Mクエン酸バッファー(pH5.5)0.337mLを加え、30分間攪拌した後、静置し水相を除去した。この溶液を上記で調製した固定化酵素300mgを入れた9mLのスクリューバイアルへ添加した。ここにベンズアルデヒド0.508mLを添加し、ボトルローラーで攪拌することにより酵素反応を実施した。反応開始1時間後に反応液4mLを回収した。引き続き同じ処理を行ったHCN/t-ブチルメチルエーテル溶液を同量添加し、ベンズアルデヒドを同量添加して、酵素反応を行った。反応開始1時間後に反応液5mLを回収した。この反応操作を繰り返し行い、計11回の酵素反応を行った。11回目では、酵素反応経過を測定するため、反応時間を延長し、経過分析を行った。
2.実験結果
耐熱性酵素 Actmt-001f2-SHNLは、Wild-SHNLと同じ反応速度でS-マンデロニトリルを生成した。この結果から、Actmt-001f2-SHNLは光学活性シアノヒドリン合成においてWild-SHNLと同等の能力を有していることが明らかとなった。反応を繰り返すことにより、両者ともに反応速度が徐々に低下してきたが、反応速度の減少度合いはActmt-001f2-SHNLの方が緩やかであった。(図8A)。
反応11回目の反応経過を比較したところ、Actmt-001f2-SHNLの方が反応速度が10%程度高くなった(図8B)。この原因として、耐熱性酵素Actmt-001f2-SHNLは、耐熱性だけではなく、酵素反応系での安定性も向上している可能性があると考えられた。
3.結論
Actmt-001f2-SHNLはWild-SHNLと同じ生産性、光学純度で光学活性シアノヒドリンを合成できることが明らかとなった。更に繰り返し反応においては、10%程度の寿命延長が認められた。
実施例6:BL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165Eの作製
耐熱性酵素Actmt001f2-SHNLはそのアミノ酸配列の165番目が酸性アミノ酸のアスパラギン酸に置き換えられていた。そこで、165番目のアミノ酸を、同じ酸性アミノ酸であるグルタミン酸で置換したSHNL(塩基配列:配列番号7、アミノ酸配列:配列番号8)の発現系BL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165Eを作製した。
1.変異導入
実施例1と同様、165番目のアミノ酸の改変には、QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit (STRATAGENE社製)を用いた。鋳型としてpET21a/SHNL-Wildプラスミド10 ng を用い、下記のオリゴDNAをプライマーとして、伸長反応を行った。次に得られた反応産物をキット付属の制限酵素DpnIで消化した。
Forward primer: 5’-CGT GAA AAC CTG TTC ACC AAA TGC ACT GAT GAA GAA TAT GAA CTG GCA AAA ATG-3’(配列番号13)
Reverse primer: 5’-CAT TTT TGC CAG TTC ATA TTC TTC ATC AGT GCA TTT GGT GAA CAG GTT TTC ACG-3’(配列番号14)
2.形質転換
得られた制限酵素処理済反応産物をキット付属のコンピテントセルXL10-Goldに形質転換し、得られた株をコロニーPCRした。このPCR産物を鋳型としてシーケンス反応を行い、反応物を解析することで塩基配列494-495番目のGCがAAに改変されている株を選抜した。この株よりプラスミドpET21a/SHNL-G165Eを調製し、コンピテントセルBL21(DE3)(Novagen社製)に形質転換を行い、165番目のアミノ酸がGluに置換されたSHNLの発現系BL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165Eを作製した。
実施例7:置換部位のアミノ酸種による耐熱性の変化
SHNLのアミノ酸配列165番目を様々な極性のアミノ酸に置換し、それがSHNLの耐熱性にどのように影響するのかを確認した。
1.実験方法
実施例1および実施例6にしたがい、QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE)を用いて165Glyへの変異導入を行い、以下の変異株を作製した。
i)DH5α/pKK223-3/ Actmt001f2-Glu (165アミノ酸がグルタミン酸に置換)
ii)DH5α/pKK223-3/ Actmt001f2-Lys (165アミノ酸がリジンに置換)
iii)DH5α/pKK223-3/ Actmt001f2-Arg (165アミノ酸がアルギニンに置換)
iv)DH5α/pKK223-3/ Actmt001f2-Ala (165アミノ酸がアラニンに置換)
グルタミン酸はアスパラギン酸と同様、酸性残基を持つアミノ酸である。リジン、アルギニンは塩基性であり、アラニンはグリシンと同様中性アミノ酸である。これら4株と、DH5α/pKK223-3/SHNL-Actmt001-f2およびSHNL-Wildを合わせた合計6株を用いて、実施例2と同様の方法で加熱試験を行った。
2.実験結果
実施例2にしたがって加熱試験を行った結果、改変SHNLは導入されたアミノ酸残基の性質の違いにより、大きく3つの耐熱性パターンを示した(図9)。
1)塩基性アミノ酸(Arg、Lys)への置換:
30minで活性がほぼ完全に消滅した。Wild-SHNLと比較して明らかに耐熱性が低下した。
2)中性アミノ酸(Ala)への置換:
Wild-SHNL(165Gly、中性)と同程度の耐熱性であった。
3)酸性アミノ酸(Glu)への置換:
Actmt-001f2-SHNL(165Asp、酸性)とほぼ同じパターンで活性が変化した。3種のアミノ酸グループの中で、最も高い耐熱性を示した。
以上の結果より、165番目のアミノ酸が酸性アミノ酸に置換された改変SHNLでは耐熱性が向上し、塩基性アミノ酸に置換された改変SHNLでは逆に耐熱性が大きく減少することが明らかとなった。
図10にSHNLの三次元構造を示す(図中赤い部分は165Gly、黒い部分は21Lysを示す)。SHNLはホモダイマーとして存在し、Wagnerらの報告(Mechanism of cyanogenesis: the crystal structure of hydroxynitrile lyase from Hevea brasilinsis Structure 1996 Vol4 No7)によれば、165GlyはD3’(162−173)と呼ばれるヘリックスの構成アミノ酸である。D3’はSHNLがダイマーを形成する時、他方のSHNLモノマーのヘリックスA(15−28)およびβシート2(32−36)と結合する領域である。グリシンからアスパラギン酸への置換により、D3’が−の電荷を帯び、ヘリックスAおよびβシート2の+のアミノ酸残基(20His、21Lys、23Lys)との結合力が増強され、ダイマー形成が安定化することが耐熱性向上に一部で寄与した可能性が考えられた。
実施例8:ヘリックスD3’の改変−BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SD173-1e9の作製
ヘリックスD3’(163-174)の165-173までのアミノ酸と、ヘリックスAの17-21までのアミノ酸とは交差するように配置され、近接している。これらの区間のアミノ酸を置換することで、耐熱性が変化する可能性がある。そこで、SHNLのアミノ酸配列173番目のアミノ酸をValからLeuに置換し、それがSHNLの耐熱性にどのように影響するのかを確認した。
1.変異導入
実施例1および実施例6にしたがい、QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE)を用いて173番目のアミノ酸をLeuに置換したSHNL(配列番号16)を調製した。
鋳型としてpET21a/SHNL-Wildプラスミド10 ng を用い、下記のオリゴDNAをプライマーとして、伸長反応を行った。次に得られた反応産物をキット付属の制限酵素DpnIで消化した。
Forward primer:5’-GGC GAA TAT GAA CTG GCA AAA ATG NNN ATG CGC AAG GGC TCT CTG-3’(配列番号17)
Reverse primer:5’-CAG AGA GCC CTT GCG CAT NNN CAT TTT TGC CAG TTC ATA TTC GCC-3’(配列番号18)
2.形質転換と耐熱性アッセイ
得られた制限酵素処理済反応産物を同じくキット付属のコンピテントセルXL10-Goldに形質転換し、LB(Amp)プレート上に得られたコロニーを全てLB(Amp)液体培地に懸濁した。この懸濁液よりプラスミドpET21a/SHNL-SD173-1NNNMutantsを調製し、コンピテントセルBL21(DE3)(Novagen社製)に形質転換を行いBL21(DE3)/pET21a/SHNL-SD173-1NNNMutants株を作成した。
複数のBL21(DE3)/pET21a/SHNL-SD173-1NNNMutants株を試験管で培養し、培養液をそれぞれ1mLずつ取り、遠心分離を行って上清を除去し、細胞ペレットを得た。得られた細胞をクエン酸ナトリウムバッファー(pH5.5)200μLで再懸濁した後、超音波細胞破砕機で細胞を破砕した。細胞破砕物を15000rpm、5minの条件で遠心分離し、細胞破砕液を得た。この細胞破砕液を60℃、2hの条件で加熱し、加熱後に細胞破砕液それぞれのSHNL活性を測定した。この結果加熱後も活性を有していたBL21(DE3)/pET21a/SHNL-SD173-1e9他3株を耐熱株として選抜した。選抜された株をコロニーPCRし、得られたPCR産物を鋳型としてシーケンス反応を行った。これら反応物の解析より、SHNL-SD173-1e9は塩基配列517-519番目のGTT(V)がCTG(L)に改変され、173番目のバリンがロイシンに置換されていることが明らかとなった(配列番号15)。以下、SHNL-SD173-le9をSHNL-V173Lと呼ぶ。他の3株も全て173番目のバリンがロイシンに置換した変異株であった。
実施例9:V173L-SHNLの耐熱性評価
V173-SHNLの耐熱性をWild-SHNLおよびActmt001-f2-SHNLと比較した。
1.実験方法
1)酵素液の調製
大腸菌BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Wild、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Actmt001-f2、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-V173Lをそれぞれ実施例2と同様の方法で培養し、酵素液を得た。上記のサンプルをそれぞれ牛血清アルブミンおよびバッファーで希釈し、全てのサンプルを活性値17.6 U/mL、比活性値4.5U/mg、タンパク濃度3.9 mg/mLで揃え、共雑タンパク質の影響を実験系から排除した。
2)酵素液の加熱処理
Wild-SHNL、Actmt001-f2-SHNLおよびV173L-SHNL酵素液200μLをエッペンドルフチューブに入れ、ヒートブロックにより酵素液温が45〜70℃となるよう加熱した。30min後に遠心分離し、サンプルを回収し、残存活性を測定した(図14)。
その結果、上記サンプル条件において、酵素活性が半減した加熱温度はWild-SHNLが60℃であったのに対し、V173L-SHNLおよびActmt001-f2-SHNLでは65℃付近であり、Wild-SHNLに比較して約5℃の耐熱性向上が見られた。以上の結果より、V173L-SHNLは、Actmt001-f2-SHNLと同等の耐熱性を有することが明らかとなった。
SHNLの173番目のアミノ酸Valは、ダイマー形成時において、もう一方のモノマーのアミノ酸Valと近接している(末端同士の距離が約4.5オングストローム)。バリンからロイシンへの置換により、173番目のアミノ酸残基は炭素一つ分伸長することになる。したがって、炭素鎖が互いに伸長することで残基同士の距離が縮まり、非極性アミノ酸残基同士の疎水性相互作用が強まった可能性が高い。
実施例10:改変酵素V173L-SHNLの有機溶媒耐性
実施例4において示されたように、熱安定性を有する改変酵素Actmt001-f2-SHNLはWild-SHNLと比較して、エタノール、酢酸エチルに対して耐性を有していた。
一方、実施例9に記載の改変酵素V173L-SHNLもActmt001-f2-SHNLとほぼ同等の耐熱性を示している。従って、V173L-SHNLについても同様にエタノール、酢酸エチルに対する耐性を確認した。
1.実験方法
1)酵素液の調製
大腸菌BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Wild、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Actmt001-f2、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-V173Lを実施例2と同様の方法で培養し、酵素液を調製した。さらにこれらの調製された酵素液をそれぞれ牛血製アルブミンおよび0.2Mクエン酸Naバッファーで希釈し、全てのサンプルを活性値45U/mL、比活性値6.5U/mgで揃え、共雑タンパク質の影響を実験系から排除した。
2)有機溶媒処理
エタノールおよび酢酸エチルを用いて、実施例4と同様の方法で酵素液を処理し、残存活性を測定した。
2.実験結果
V173L-SHNLはWild-SHNLと比較して、エタノール(図15A)および酢酸エチル(図15B)に対して耐性を有することが明らかとなった。更にV173L-SHNLはエタノールに対してActmt001-f2-SHNL以上の耐性を示し、添加後16時間の時点でActmt001-f2-SHNLの残存活性が23%であったのに対し、V173L-SHNLは34%活性が残存していた。酢酸エチルに対しては2つの改変酵素の耐性はほぼ同等であった。
実施例11:改変酵素Actmt020-b8-SHNLの獲得
1.変異導入
実施例1と同様、GeneMorphTM PCR Mutagenesis Kitを用いてWild-SHNL 遺伝子へ変異導入を行った。鋳型、プライマーとも実施例1と同じものを用いた。
2.形質転換
実施例1と同様、得られたPCR産物をベクターpKK223-3にライゲーション後、コンピテントセルDH5αへ形質転換し、複数のDH5α/pKK223-3/SHNL-Actmt020を得た。
3.熱安定性酵素の選抜と配列解析
実施例1と同様の選抜法により、加熱後も活性を有していたDH5α/pKK223-3/SHNL-Actmt020-b8を選抜した。配列番号9および配列番号10のプライマーを用いて選抜された株を鋳型にコロニーPCRを行い、更に得られたPCR産物を鋳型に同じプライマーを用いてシーケンス反応を行った。反応物の解析結果より、SHNL-Actmt020-b8は配列番号1に示される塩基配列の520番目のアデニンがチミンに改変された塩基配列(配列番号19)を有していることが確認された。従って、SHNL-Actmt020-b8はWild-SHNLのアミノ酸配列(配列番号2)の174番目のメチオニンがロイシンへ置き換えられたアミノ酸配列(配列番号20)を有する改変型SHNLであることが確認された。以下、この改変型SHNLをActmt020-b8-SHNLと呼ぶ。
実施例12:改変酵素Actmt020-b8-SHNLの熱安定性
1.実験方法
1)酵素液の調製
実施例11において構築された大腸菌株DH5α/pKK223-3/SHNL-Actmt020-b8、および比較としてDH5α/pKK223-3/SHNL-Wildを実施例2と同様の方法で培養し、酵素液を調製した。更にこれらの調製された酵素液をそれぞれ牛血製アルブミンおよび0.2Mクエン酸Naバッファーで希釈し、全てのサンプルを活性値3.15U/mL、タンパク質濃度1.38mg/mLで揃え、共雑タンパク質の影響を実験系から排除した。
2)酵素液の加熱処理
実施例3と同様の方法で、酵素液温が60℃となるよう加熱を行った。加熱開始後30min毎に酵素液を遠心分離し、上清を用いて加熱前の酵素活性に対する残存活性を測定した。
2.実験結果
Actmt020-b08-SHNLはWild-SHNLと比較して大きく熱安定性が向上していた(図16)。従ってヘリックスD3’を構成する174番目アミノ酸であるメチオニンをロイシンへ置換することでSHNLの熱安定性を向上できることが明らかとなった。
実施例13:改変酵素Actmt022-g12-SHNLの獲得
1.変異導入
実施例1と同様、GeneMorphTM PCR Mutagenesis Kitを用いてWild-SHNL遺伝子へ変異導入を行った。鋳型、プライマーとも実施例1と同じものを用いた。
2.形質転換
実施例1と同様、得られたPCR産物をベクターpKK223-3ライゲーション後、コンピテントセルDH5αへ形質転換し、複数のDH5α/pKK223-3/SHNL-Actmt022を得た。
3.熱安定性酵素の選抜と配列解析
実施例1と同様の選抜法により、加熱後も活性を有していたDH5α/pKK223-3/SHNL-Actmt022-g12を選抜した。配列番号9および配列番号10のプライマーを用いて選抜された株を鋳型にコロニーPCRを行い、更に得られたPCR産物を鋳型に同じプライマーを用いてシーケンス反応を行った。反応物の解析結果より、SHNL-Actmt022-g12は配列番号1に示される塩基配列の63番目のアデニンがチミンに改変された塩基配列(配列番号21)を有していることが確認された。従って、Actmt022-g12-SHNLはWild-SHNLのアミノ酸配列(配列番号2)の21番目のリジンがアスパラギンへ置き換えられたアミノ酸配列(配列番号22)を有する改変型SHNLであることが確認された。アミノ酸配列21番目のリジンは、ダイマー形成部位であるヘリックスAを構成するアミノ酸の一つである。
実施例14:Lys21部位のアミノ酸を改変した改変酵素の構築
SHNLのアミノ酸配列21番目を様々なアミノ酸で置換し、SHNLの耐熱性に対する影響を確認した。
1)変異導入
実施例8と同様、QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit (STRATAGENE社製)を用いた。鋳型としてpET21a/SHNL-Wild 10ngを用い、配列番号23および配列番号24で示されるプライマーを用いて、伸長反応を行った。次に得られた反応産物をキット付属の制限酵素DpnIで消化した。
2)形質転換
得られた制限酵素処理済反応産物を同じくキット付属のコンピテントセルXL10-Goldに形質転換し、LB(Amp)プレート上で培養した。この結果プレート上に得られたコロニーをLB(Amp)液体培地で再懸濁し、プラスミドpET21a/SHNL-SDLys21NNNを調製した。このプラスミドをコンピテントセルBL21(DE3)(Novagen社製)に形質転換を行い、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SDLys21NNN株を複数作成した。
3)改変SHNLの選抜
作成した大腸菌株BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SDLys21NNN株を実施例2と同様の方法により培養した。これら培養液を用いて、実施例1と同様の選抜法により耐熱性が向上した改変株を選抜した結果、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SDLys21-RAM1、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SDLys21-RAM6、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SDLys21-RAM8の3つの改変株が加熱後も活性を有していた。次に、配列番号9および配列番号10のプライマーを用いてこれら選抜された株を鋳型としてコロニーPCRを行い、更に得られたPCR産物を鋳型に同じプライマーを用いてシーケンス反応を行った。反応物を解析した結果、SHNL-SDLys21-RAM1は配列番号1に示される塩基配列の61番目のアデニンがグアニンに改変された塩基配列(配列番号25)を有していることが確認された。従って、SDLys21‐RAM1-SHNLはWild-SHNLのアミノ酸配列(配列番号2)の21番目のリジンがグルタミン酸へ置き換えられたアミノ酸配列(配列番号26)を有する改変型SHNLであることが確認された。同様にSHNL-SDLys21-RAM6は配列番号1に示される塩基配列の61-63番のAAAがGACに改変された塩基配列(配列番号27)を有しており、従って、SDLys21‐RAM6-SHNLはWild-SHNLのアミノ酸配列(配列番号2)の21番目のリジンがアスパラギン酸へ置き換えられたアミノ酸配列(配列番号28)を有する改変型SHNLであり、更にSHNL-SDLys21-RAM8は配列番号1に示される塩基配列の63番目のアデニンがシトシンに改変された塩基配列(配列番号29)を有しているため、SDLys21‐RAM8 SHNLはWild-SHNLのアミノ酸配列(配列番号2)の21番目のリジンがアスパラギンへ置き換えられたアミノ酸配列(配列番号30)を有する改変型SHNLであることが確認された。以下、SDLys21-RAM1 SHNLをK21E-SHNLと呼ぶこととし、同様にRAM6をK21D-SHNL、RAM8をK21N-SHNLと呼ぶ。
実施例15:改変酵素K21E-SHNL、K21D-SHNL、およびK21N-SHNLの耐熱性
1.実験方法
1)酵素液の調製
実施例14において構築された大腸菌株BL21(DE3)/pET21a/SHNL-K21E、BL21(DE3)/pET21a /SHNL-K21DおよびBL21(DE3)/pET21a/SHNL-K21N、更に比較としてBL21(DE3)/pET21a/SHNL-Wildを実施例2と同様の方法で培養し、酵素液を調製した。更にこれらの調製された酵素液をそれぞれ牛血製アルブミンおよび0.2Mクエン酸Naバッファーで希釈し、全てのサンプルを活性値11U/mL、タンパク質濃度6.8(mg/mL)で揃え、共雑タンパク質の影響を実験系から排除した。
2)酵素液の加熱処理
実施例2と同様の方法で、酵素液温が45-65℃となるよう加熱を行った。加熱開始後30minの時点で酵素液を遠心分離し、上清を用いて加熱前の酵素活性に対する残存活性を測定した。
2.実験結果
K21E-SHNL、K21D-SHNL、およびK21N-SHNLはWild-SHNLと比較して大きく熱安定性が向上していた(図17)。従ってヘリックスAを構成する21番目のアミノ酸リジンをグルタミン酸、アスパラギン酸およびアスパラギンで置換することでSHNLの熱安定性を向上できることが明らかとなった。
実施例16:改変部位を複合したSHNL遺伝子SHNL-G165E,V173LおよびSHNL-G165E,V173L,M174Lの調製
改変SHNL: Actmt001-f2-SHNL、V173L-SHNLおよび Actmt020-b8-SHNLはそれぞれ1つのアミノ酸改変部位を有し、Wild-SHNLと比較して優れた耐熱性、耐溶媒性を有していた。これら個々の改変部位を1つの遺伝子上に複合することで、耐熱性、耐溶媒性を更に向上させることを試みた。
1.改変部位複合SHNL遺伝子SHNL-G165E,V173Lの構築
1)変異導入
実施例8と同様、QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit (STRATAGENE社製)を用いた。鋳型としてpET21a/SHNL-SD173-1e9 プラスミド10ng を用い、配列番号13および配列番号14で示されるプライマーを用いて、伸長反応を行った。次に得られた反応産物をキット付属の制限酵素DpnIで消化した。
2)形質転換
得られた制限酵素処理済反応産物を同じくキット付属のコンピテントセルXL10-Goldに形質転換し、LB(Amp)プレート上に得られたコロニーを取り、LB(Amp)液体培地で37℃、12hの培養を行った。この培養液よりプラスミドを調製し、このプラスミドを鋳型として配列番号9および配列番号10のプライマーを用いて伸長反応を行い、更に得られた反応産物を鋳型に同じプライマーを用いてシーケンス反応を行った。反応物を解析し、Gly165GluとVal173Leuの2つのアミノ酸変異を持つSHNL遺伝子(塩基配列:配列番号31、アミノ酸配列:配列番号32)を保有するプラスミドpET21a/SHNL-G165E,V173Lを選抜した。このプラスミドをコンピテントセルBL21(DE3)(Novagen社製)に形質転換し、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165E,V173L株を作成した。
2.改変部位複合SHNL遺伝子SHNL-G165E,V173L,M174Lの構築
1)変異導入
実施例8と同様、QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit (STRATAGENE社製)を用いた。鋳型として上記で構築されたpET21a/SHNL-G165E,V173Lプラスミド10ng を用い、配列番号33および配列番号34で示されるプライマーを用いて、伸長反応を行った。次に得られた反応産物をキット付属の制限酵素DpnIで消化した。
2)形質転換
得られた制限酵素処理済反応産物を同じくキット付属のコンピテントセルXL10-Goldに形質転換し、LB(Amp)プレート上に得られたコロニーを取り、LB(Amp)液体培地で37℃、12hの培養を行った。この培養液よりプラスミドを調製し、このプラスミドを鋳型として配列番号9および配列番号10のプライマーを用いて伸長反応を行い、更に得られた反応産物を鋳型に同じプライマーを用いてシーケンス反応を行った。反応物を解析し、Gly165Glu、V173LおよびMet174Leuの3つのアミノ酸変異を持つSHNL遺伝子(塩基配列:配列番号35、アミノ酸配列:配列番号36)を保有するプラスミドpET21a/SHNL-G165E,V173L,M174Lを選抜した。このプラスミドをコンピテントセルBL21(DE3)(Novagen社製)に形質転換し、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165E,V173L,M174L株を作成した。
実施例17:変異部位複合SHNL遺伝子G165E,V173L,M174L-SHNLおよびG165E,V173L、M174L-SHNLの熱安定性
1.実験方法
1)酵素液の調製
実施例16において構築された大腸菌株BL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165E,V173L、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165E,V173L,M174LおよびBL21(DE3)/pET21a/SHNL-Wildを実施例2と同様の方法で培養し、酵素液を調製した。更にこれらの調製された酵素液をそれぞれ牛血製アルブミンおよび0.2Mクエン酸Naバッファーで希釈し、全てのサンプルを活性値70U/mL、タンパク質濃度6mg/mLで揃え、共雑タンパク質の影響を実験系から排除した。
2)酵素液の加熱処理
実施例2と同様の方法で、酵素液温が45-75℃となるよう加熱を行った。加熱開始後30minの時点で酵素液を遠心分離し、上清を用いて加熱前の酵素活性に対する残存活性を測定した。
2.実験結果
G165E,V173L-SHNLおよび G165E,V173L,M174L-SHNLはWild-SHNLと比較して大きく熱安定性が向上し、両者とも70℃において活性が90%近く残存した(図18)。G165E,V173L-SHNLでは75℃において急激な失活が観察され、残存した活性は2%であった。一方で3つの改変部位を複合したG165E,V173L,M174L-SHNLは75℃において13%の活性が残存した。これらの結果より、個々の改変部位を1つの遺伝子上に複合することで、耐熱性を更に向上させられることが明らかとなった。
実施例18:変異部位複合SHNL-G165E,V173L-SHNLおよびG165E,V173L,M174L-SHNLの耐溶媒性
1.実験方法
1)酵素液の調製
大腸菌BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Wild、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165E,V173L、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165E,V173L,M174Lを実施例2と同様の方法で培養し、酵素液を調製した。更にこれらの調製された酵素液をそれぞれ牛血製アルブミンおよび0.2Mクエン酸Naバッファーで希釈し、全てのサンプルを活性値45U/mL、比活性値6.5U/mgで揃え、共雑タンパク質の影響を実験系から排除した。
2)有機溶媒処理
エタノールおよび酢酸エチルを用いて、実施例4と同様の方法で酵素液を処理し、残存活性を測定した。
2.実験結果
エタノールを用いて酵素液を処理した結果、Wild-SHNLは処理16時間目で活性がほぼ消滅したが、改変部位複合G165E,V173L-SHNLは73%もの活性が残存した(図19)。実施例4、11で示されたようにアミノ酸1つの変異を持つActmt001-f2、V173L-SHNLにおいて、エタノールに対して16時間の処理後に20-30%活性が残存することから、改変部位複合SHNLは複合によりエタノール耐性が大幅に向上していたことが明らかとなった。
酢酸エチルを用いた場合、G165E,V173L,M174L-SHNLは24時間の処理後も80%以上の活性が残存した(図20)。エタノール耐性と同様に、個々の改変部位の複合により、大幅に有機溶媒耐性を向上することができた。
実施例19:変異部位複合酵素G165E,V173L-SHNLを用いた光学活性シアノヒドリンの合成
変異部位複合酵素G165E,V173L-SHNLを用いた光学活性シアノヒドリンの繰り返し合成反応を行い、酵素反応系での安定性についての検討を行った。また、改変により基質特異性が変化したり、不斉合成能力が消滅したりしている恐れがある。従って通常のSHNLと同様に光学活性シアノヒドリンの製造が行えることも合わせて確認した。
1.実験方法
1)酵素液調製
大腸菌株BL21(DE3)/pET21a/SHNL-Wild およびBL21(DE3)/pET21a/SHNL-G165E,V173Lを実施例2と同様の方法で培養し、酵素液を調製した。更にこれらの調製された酵素液にクエン酸ナトリウムバッファー(pH5.5)を加え、両者の活性を500 U/mLに揃えた。G165E,V173L-SHNL酵素液にはBSAを添加し、総タンパク質濃度をWild-SHNLと一致させた。これら酵素液0.3mLに対しシリカゲルを300mgの比率で混合し、固定化酵素を得た。
2)酵素反応
実施例5に示した反応条件で酵素反応を行った。ただし反応基質としてベンズアルデヒドの代わりに、2-クロルベンズアルデヒド(2CBA)を終濃度1.0Mで用いた。1時間毎にサンプルを回収し、反応液の2CBA濃度および(R/S)-2-クロルマンデロニトリルの濃度を測定した。反応の終了は2-クロルベンズアルデヒドの転換率が95%を超えた時点と定義し、反応終了後に反応液4mLを回収した。引き続き同じ処理を行ったHCN/t-ブチルメチルエーテル溶液を同じ量添加し、ベンズアルデヒドを同じ量添加して、2回目の酵素反応を行った。2回目以降は反応終了後に反応液5mLを回収した。この反応操作を繰り返し行い、計4回の酵素反応を行った。
2.実験結果
1)光学純度
G165E,V173L-SHNLは、4回の繰り返し反応において、平均95%eeの光学純度で(S)-2-クロルマンデロニトリルを生産した。一方でWild-SHNLも同様に95%ee程度の光学純度であった。従って、G165E,V173L-SHNLは光学活性シアノヒドリンの製造に関して、光学純度の点からはWild-SHNLとほぼ同等の能力を有していることが明らかとなった。
2)反応速度および活性低下度合いの比較
G165E,V173L-SHNLは、反応1回目において、Wild-SHNLと同様の速度で(S)-2-クロルマンデロニトリルを生産した。従って、G165E,V173L-SHNLは光学活性シアノヒドリンの製造に関して、生産性の点からはWild-SHNLと同等の能力を有していることが明らかとなった。反応を繰り返すに従い、両者とも酵素活性が低下し、反応速度が減少していくが、G165E,V173L-SHNLはWild-SHNLと比較して明らかに減少度合いが緩やかであった(図21)。従ってG165E,V173L-SHNLは、耐熱性だけではなく、酵素反応系での安定性も向上していることが明らかとなった。
実施例20:Thr163部位のアミノ酸を改変した改変酵素の構築
SHNLのアミノ酸配列163番目を様々なアミノ酸で置換し、SHNLの耐熱性に対する影響を確認した。
1)変異導入
実施例8と同様、QuikChange XL Site-Directed Mutagenesis Kit (STRATAGENE社製)を用いた。鋳型としてpET21a/SHNL-Wild 10ngを用い、配列番号37および配列番号38で示されるプライマーを用いて、伸長反応を行った。次に得られた反応産物をキット付属の制限酵素DpnIで消化した。
2)形質転換
得られた制限酵素処理済反応産物を同じくキット付属のコンピテントセルXL10-Goldに形質転換し、LB(Amp)プレート上で培養した。この結果プレート上に得られたコロニーをLB(Amp)液体培地で再懸濁し、プラスミドpET21a/SHNL-SDThr163NNNを調製した。このプラスミドをコンピテントセルBL21(DE3)(Novagen社製)に形質転換を行い、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SDThr163NNN株を複数作成した。
3)改変SHNLの選抜
作成した大腸菌株BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SDThrNNN株を実施例2と同様の方法により培養した。これら培養液を用いて、実施例1と同様の選抜法により耐熱性が向上した改変株を選抜した結果、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SD163-1b5、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SD163-1f5、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-SD163-1f7の改変株が加熱後も活性を有していた。次に、以下に示すプライマーを用いてこれら選抜された株を鋳型としてコロニーPCRを行い、更に得られたPCR産物を鋳型に同じプライマーを用いてシーケンス反応を行った。
Forward primer: 5’- TGAAAACCTGTTCACCAAATGCNNNGATGGCGAATATGAACTGGC -3’(配列番号37)
Reverse primer: 5’- GCCAGTTCATATTCGCCATCNNNGCATTTGGTGAACAGGTTTTCA -3’(配列番号38)
反応物を解析した結果、SHNL-SD163-1b5は配列番号1に示される塩基配列の487-489番目がGATに改変された塩基配列(配列番号39)を有していることが確認された。従って、SD163-1b5-SHNLはWild-SHNLのアミノ酸配列(配列番号2)の163番目のトレオニンがアスパラギン酸へ置換されたアミノ酸配列(配列番号40)を有する改変型SHNLであることが確認された。同様にSHNL-SD163-1f5は配列番号1に示される塩基配列の487-489番がGAAに改変された塩基配列(配列番号41)を有しており、従って、SD163-1f5-SHNLはWild-SHNLのアミノ酸配列(配列番号2)の163番目のトレオニンがグルタミン酸へ置換されたアミノ酸配列(配列番号42)を有する改変型SHNLであることが確認された。更にSHNL-SD163-1f7は配列番号1に示される塩基配列の487-489番目がTCTに改変された塩基配列(配列番号43)を有しており、従って、SD163-1f7-SHNLはWild-SHNLのアミノ酸配列(配列番号2)の163番目のトレオニンがセリンへ置換されたアミノ酸配列(配列番号44)を有する改変型SHNLであることが確認された。
以下、SD163-1b5-SHNLをT165D-SHNLと呼ぶこととし、同様にSD163-1f5-SHNLをT163E-SHNL、SD163-1f7-SHNLをT163S-SHNLと呼ぶこととする。
実施例21:改変酵素T163D-SHNL、T163E-SHNL、T163S-SHNLの耐熱性
1.実験方法
1)酵素液の調製
実施例20において構築された大腸菌株BL21(DE3)/pET21a/SHNL-T163D、BL21(DE3)/pET21a /SHNL- T163EおよびBL21(DE3)/pET21a/SHNL-T163Sを実施例2と同様の方法で培養し、酵素液を調製した。更にこれらの調製された酵素液をそれぞれ牛血製アルブミンおよび0.2Mクエン酸Naバッファーで希釈し、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-T163D、BL21(DE3)/pET21a /SHNL- T163Eについては活性値70U/mL、タンパク質濃度7mg/mLとし、BL21(DE3)/pET21a/SHNL-T163Sについては活性値70U/mL、タンパク質濃度14mg/mLに調製した。比較としてそれぞれ同濃度に調製されたBL21(DE3)/pET21a/SHNL-Wildを用いた。
2)酵素液の加熱処理
実施例2と同様の方法で、酵素液温が50-70℃となるよう加熱を行った。加熱開始後30minの時点で酵素液を遠心分離し、上清を用いて加熱前の酵素活性に対する残存活性を測定した。
2.実験結果
T163S-SHNLはWild-SHNLと比較して大きく熱安定性が向上していた(図12)。またT163D-SHNL、T163E-SHNLも60℃における熱安定性はWild-SHNLを上回っていた。従ってヘリックスD3’を構成する163番目のアミノ酸トレオニンをアスパラギン酸、グルタミン酸、またはセリンで置換することでSHNLの熱安定性を向上できることが明らかとなった。
本発明の改変型SHNLは、Wild-SHNLと比較して耐熱性や有機溶媒耐性に優れ、かつWild-SHNLと同様の生産効率、光学純度で光学活性シアノヒドリンを合成できる。また、本発明の改変型SHNLは低コストで簡便に精製できるため、効率的な組換え生産が可能である。したがって、本発明の改変型SHNLは光学活性シアノヒドリンの工業的生産用酵素として極めて有用である。
図1は、Wild-SHNLとActmt-001f2-SHNLの熱に対する安定性を比較したグラフである。 図2は、Wild-SHNLとActmt-001f2-SHNLの加熱処理サンプルのSDS-PAGEによる解析結果を示す写真である。 図3は、Wild-SHNLとActmt-001f2-SHNLの加熱処理サンプルのタンパク質濃度の変化を示すグラフである。 図4は、Wild-SHNLとActmt-001f2-SHNLの熱に対する安定性を比較したグラフである。 図5は、Wild-SHNLとActmt-001f2-SHNLの加熱処理サンプル(上清)のSDS-PAGEによる解析結果を示す写真である。 図6は、Actmt-001f2-SHNLの有機溶媒耐性を示すグラフである(A:エタノール耐性、B:酢酸エチル耐性)。 図7は、Actmt-001f2-SHNLの繰り返し反応における反応1時間目のS-マンデロニトリルの光学純度を示すグラフである。 図8は、Actmt-001f2-SHNLの繰り返し反応におけるベンズアルデヒド転換率を示すグラフである(A:反応1時間目の転換率の繰り返し回数による変化、B:反応11回目の転換率の経時的変化)。 図9は、種々の改変型SHNLの加熱による酵素活性の変化を示すグラフである。 図10は、SHNLの三次元構造を示す図である(赤:165Gly、黒:21Lysを示す)。 図11は、SHNL dimerの結合部位におけるアミノ酸側鎖配置図を示す(図中、赤:酸性アミノ酸 青:塩基性アミノ酸)。 図12は、改変酵素T163S-SHNLの熱に対する安定性を示すグラフである。 図13は、キャッサバ(Manihot esculenta)およびパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)由来SHNLのアミノ酸配列をアラインメントした図である。 図14は、Wild-SHNL、Actmt-001f2-SHNL、V173L-SHNLの熱に対する安定性を比較したグラフである。 図15は、V173L-SHNLの有機溶媒耐性を示すグラフである(A:エタノール耐性、B:酢酸エチル耐性)。 図16は、改変酵素Actmt020-b8-SHNLの熱に対する安定性を示すグラフである。 図17は、Lys21改変酵素の熱に対する安定性を示すグラフである。 図18は、改変部位を複合したSHNLの熱に対する安定性を示すグラフである。 図19は、G165E,V173L-SHNLのエタノール耐性を示すグラフである。 図20は、G165E,V173L,M174L-SHNLの酢酸エチル耐性を示すグラフである。 図21は、G165E,V173L,M174L-SHNLを用いた繰り返し反応における反応1時間目の2CMN生産量を示すグラフである。
配列番号5−165番のGlyをAspで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号6−165番のGlyをAspで置換した改変型SHNL
配列番号7−165番のGlyをGluで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号8−165番のGlyをGluで置換した改変型SHNL
配列番号9−人工配列の説明:プライマー
配列番号10−人工配列の説明:プライマー
配列番号11−人工配列の説明:プライマー
配列番号12−人工配列の説明:プライマー
配列番号13−人工配列の説明:プライマー
配列番号14−人工配列の説明:プライマー
配列番号15−173番のValをLeuで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号16−173番のValをLeuで置換した改変型SHNL
配列番号17−人工配列の説明:プライマー
配列番号18−人工配列の説明:プライマー
配列番号19−174番のMetをLeuで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号20−174番のMetをLeuで置換した改変型SHNL
配列番号21−21番のLysをAsnで置換した改変型SHNL(Actmt022-G12-SHNL)をコードするDNA
配列番号22−21番のLysをAsnで置換した改変型SHNL(Actmt022-G12-SHNL)
配列番号23−人工配列の説明:プライマー
配列番号24−人工配列の説明:プライマー
配列番号25−21番のLysをGluで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号26−21番のLysをGluで置換した改変型SHNL
配列番号27−21番のLysをAspで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号28−21番のLysをAspで置換した改変型SHNL
配列番号29−21番のLysをAsnで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号30−21番のLysをAsnで置換した改変型SHNL
配列番号31−165番のGlyをGlu、173番のValをLeuで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号32−165番のGlyをGlu、173番のValをLeuで置換した改変型SHNL
配列番号33−人工配列の説明:プライマー
配列番号34−人工配列の説明:プライマー
配列番号35−165番のGlyをGlu、173番のValをLeu、174番のMetをLeuで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号36−165番のGlyをGlu、173番のValをLeu、174番のMetをLeuで置換した改変型SHNL
配列番号37−人工配列の説明:プライマー
配列番号38−人工配列の説明:プライマー
配列番号39−163番のThrをAspで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号40−163番のThrをAspで置換した改変型SHNL
配列番号41−163番のThrをGluで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号42−163番のThrをGluで置換した改変型SHNL
配列番号43−163番のThrをSerで置換した改変型SHNLをコードするDNA
配列番号44−163番のThrをSerで置換した改変型SHNL

Claims (7)

  1. 配列番号2に示されるアミノ酸配列において、
    a) 21番目のリジンのアスパラギン酸、グルタミン酸、またはアスパラギンへの置換、
    b) 165番目のグリシンのアスパラギン酸またはグルタミン酸への置換、
    c) 173番目のバリンのロイシンへの置換、
    d) 174番目のメチオニンのロイシンへの置換、
    e) 163番目のトレオニンのアスパラギン酸、グルタミン酸、またはセリンへの置換
    より選ばれる少なくとも1以上のアミノ酸置換を有する改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼ。
  2. 配列番号6、8、16、20、22、26、28、32、36、40、42、または44に示されるアミノ酸配列を含む、改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼ。
  3. 請求項1または2に記載の改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列をコードするDNA。
  4. 配列番号6、8、16、20、22、26、28、32、36、40、42、または44に示されるアミノ酸配列をコードするDNA。
  5. 請求項3または4に記載のDNAを導入した宿主を培養し、得られる培養物からS-ヒドロキシニトリルリアーゼ活性を有するタンパク質を回収することを特徴とする、改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼの製造方法。
  6. 請求項1または2に記載の改変型S-ヒドロキシニトリルリアーゼをカルボニル化合物およびシアン化合物と接触させることを特徴とする光学活性シアノヒドリンの製造方法。
  7. S-ヒドロキシニトリルリアーゼのアミノ酸配列において、配列番号2に示されるアミノ酸配列における、
    f) 21番目のリジンのアスパラギン酸、グルタミン酸、またはアスパラギンへの置換、
    g) 165番目のグリシンのアスパラギン酸またはグルタミン酸への置換、
    h) 173番目のバリンのロイシンへの置換、
    i) 174番目のメチオニンのロイシンへの置換、
    j) 163番目のトレオニンのアスパラギン酸、グルタミン酸、またはセリンへの置換
    より選ばれる少なくとも1以上のアミノ酸置換を、配列番号2に示されるアミノ酸配列とのアラインメントにより対応するアミノ酸において実施することにより、S-ヒドロキシニトリルリアーゼの安定性を向上させる方法。
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