JP4853754B2 - 複数配向分割型垂直配向モード液晶ディスプレイ、およびこれに用いたカラーフィルタ - Google Patents

複数配向分割型垂直配向モード液晶ディスプレイ、およびこれに用いたカラーフィルタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)に関するものであり、詳しくは、複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ(MVA−LCD;Multi−domain Vertical Alignment mode−LCD)に関するものである。
【0002】
背景技術
液晶ディスプレイは、薄型、軽量、小消費電力、フリッカーレスといった特徴から、ノートパソコンを中心にその市場が急速に拡大してきた。特に、最近になって、こうしたパソコン用ディスプレイの一環として、ノートパソコンに比べてより大型のデスクトップ用モニターの需要が発生している。また、パソコン用のみならず、従来であればCRTが主流であったテレビ向けにも液晶ディスプレイが利用されるようになってきた。
【0003】
ところで、前述のような大型の液晶ディスプレイにおいては、全画面にわたって視野角度によらない、均一な輝度やコントラスト等を確保することが特に要求される。しかしながら、従来から広く用いられている捩れ配向モード(以下TN−LCD)では、視野角度の狭さが大きな問題点となっていた。
【0004】
これに対して、近年、In Plane Switching(IPS)モード、光学補償TNモードなど、多くの改善モードが開発されてきている。その中でも、複数配向分割型垂直配向モード(以下、MVAモードともいう)が、その(1)広視野角、(2)高コントラスト、(3)高速応答、(4)忠実な色再現、(5)高精細といった優位性から、現在広く注目を集めている。このMVAモードは、電圧非印加時に全ての液晶分子が配向膜上に垂直に立った状態で整列しており、電圧印加時に液晶分子が倒れることで表示制御を行う方法である。そして、高品位な表示を実現するために、液晶分子が倒れる方向が隣接するドメイン毎に異なる構成となっている。
【0005】
当初、このような複数配向分割、いわゆるマルチドメイン化、を実現するためにマスクラビングを複数回繰り返す手法が提案された。
【0006】
しかしながら、この方法を用いた場合、ラビング工程に起因する静電気の発生、発塵などの発生による歩留まり率の低下、プロセスの複雑化による生産性の低下などの理由から、生産プロセスにおける信頼性が十分であるとは言えなかった。
【0007】
このような実情に鑑み、近年、特許公報第2947350号に記載されるように、液晶パネル内に突起を設けることにより、ラビングの手法を用いることなく液晶分子の傾斜方向を規定する手法が採用されてきている。この際、配向を制御する突起がジグザグ線のストライプ状に設けられることにより、電圧印加時の液晶分子の長軸が、ジグザグ線の中心軸に対して水平に見て45°の角度をなす4方向に均等に規制されてなる。すなわち、一画素内における配向方向を4分割とし、かつその分割面積が等しくなるように設計されている。また、この手法では、配向を制御する突起がカラーフィルタ側とアレイ側の双方に設けてあり、セル化したときに交互に配列するように形成される。
【0008】
さらに最近では、アレイ側の配向制御突起の代わりに、仮想的な配向制御突起としてITO膜にスリットを設けた構造も開発されている。
【0009】
ところで、一般に、配向制御のための突起を設けたMVAモード液晶ディスプレイにおいては、液晶層厚さを規定するスペーサとして、球状のスペーサービーズが用いられている。この場合、カラーフィルタ基板とアレイ基板とが、一定直径値からなるスペーサービーズを介して貼り合わせられることとなる。
【0010】
しかしながら、スペーサービーズが存在することにより、ビーズ周辺の液晶分子の配向状態に乱れが生じる。その結果、黒表示状態でも複屈折現象が発生し光漏れが生じてコントラストが低下する一方、白表示時にディスクリネーションラインに起因する輝度の低下が発生する、といった問題点がある。また、一般にスペーサービーズは高所より重力を利用して散布されるため、その基板内における位置を特定できず、微小部分的にはその密度を制御するのが困難であるとともに、セル化後においてもビーズ位置の若干の移動が発生することもあり得る。
【0011】
一方、プロセス面ではクリーンルーム内で非常に微小なビーズ粒子を散布するため、飛散する等、製造プロセスにおける信頼性の点で問題があった。特にMVAモードは、従来のTNモードとは異なり、液晶の複屈折を利用した複屈折モードであるため、表示エリア全域に渡って非常に精密な液晶層厚の制御が要求されるため、スペーサビーズよりも高精度のスペーサが望まれていた。
【0012】
【発明の概要】
本発明者らは、今般、複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイにおいて、駆動電極層および透明電極層の間に、スペーサビーズに代わりに柱状またはリブ状に配設されるスペーサを設け、かつ、このスペーサを液晶の配向方向を制御する配向制御突起と重なる位置に設けることにより、生産プロセスにおける信頼性が高く、かつ、ディスクリネーションラインに起因する輝度の低下を防ぎ、表示エリア全体にわたって高コントラストな表示ができることを知見した。
【0013】
したがって、本発明は、生産プロセスにおける信頼性が高く、かつ、ディスクリネーションラインに起因する輝度の低下を防ぎ、表示エリア全体にわたって高コントラストな表示ができる、MVAモード液晶ディスプレイ、およびそれに用いるカラーフィルタを提供することを目的としている。
【0014】
上記目的を達成するためになされたものであり、本発明は、各画素に対応する駆動電極が二次元的に配列されてなる駆動電極層と、
該駆動電極層と所定間隔離間して平行に設けられ、前記駆動電極層との間に電場を形成する透明電極層と、
前記駆動電極層および前記透明電極層の間に柱状またはリブ状に配設され、前記所定間隔を保持するスペーサと、
前記駆動電極層および前記透明電極層の間に充填され、負の誘電異方性を有する液晶からなる液晶層と、
前記液晶層の駆動電極層側表面および透明電極層側表面に、それぞれ設けられ、前記液晶を垂直方向に配向させる垂直配向層と、
前記駆動電極層および/または前記透明電極層の前記液晶層側の表面に線状に設けられ、前記液晶の配向方向を制御する配向制御突起と、
複数色の着色画素パターンからなる着色層とを有してなる、複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイであって、
前記スペーサが前記配向制御突起と重なる位置に設けられてなり、前記スペーサの側面が、前記配向制御突起の長手方向に対して平行な側面を少なくとも一対含んでなり、
前記スペーサにより覆われる水平領域が前記配向制御突起により覆われる水平領域に包含されるか、あるいは、前記スペーサにより覆われる水平領域が前記配向制御突起により覆われる水平領域を一部または全部において超過する場合には、該超過部分のスペーサ側面の、前記配向制御突起のからの水平離間距離が、基部を基準として7μm以下である、複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイを提供する。
【0015】
また、本発明は、複数配向分割型垂直配向モード液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタであって、基板と、
該基板上に形成され、複数色の着色画素パターンからなる着色層と、
該着色層上に形成される電極層と、
前記電極層上に線状に設けられ、液晶の配向方向を制御する配向制御突起と、前記配向制御突起と重なる位置に柱状またはリブ状に配設され、液晶の厚さを保持するスペーサとを有してなり、
前記スペーサの側面が、前記配向制御突起の長手方向に対して平行な側面を少なくとも一対含んでなり、
前記スペーサにより覆われる水平領域が前記配向制御突起により覆われる水平領域に包含されるか、あるいは、前記スペーサにより覆われる水平領域が前記配向制御突起により覆われる水平領域を一部または全部において超過する場合には、該超過部分のスペーサ側面の、前記配向制御突起のからの水平離間距離が、基部を基準として7μm以下である、カラーフィルタを提供する。
【0016】
【発明の具体的説明】
以下、本発明のMVAモード液晶ディスプレイについて具体的に説明する。
【0017】
MVAモード液晶ディスプレイ
図1に、本発明のMVAモード液晶ディスプレイの一例の概略断面図を示す。図1に示されるように、MVAモード液晶ディスプレイ10は、透過型の液晶ディスプレイであって、着色層12と、透明電極層14と、配向制御突起16と、スペーサ18と、液晶層20と、垂直配向層21と、駆動電極層22とを少なくとも有する。
【0018】
駆動電極層22は、各画素に対応する駆動電極が二次元的に配列されてなる電極層である。図2に、駆動電極層22の構成の一例を概念的に示す。図2に示される駆動電極層22は、電極が画素毎にパターニングされて画素電極40として形成されるとともに、各画素電極40がスイッチング素子である薄膜トランジスタ42(TFT;Thin Film Transistor)で制御され、かつ補助容量部44により印加された電荷が所望の時間にわたって充分保持されるように構成されている。また、図1に示されるように、駆動電極層22は基板26に支持されており、バックライトの光を透過できるように、駆動電極層22および基板26が透明になっている。
【0019】
このような透明な駆動電極層22は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、あるいはこれらの合金等の材料で構成するのが好ましく、スパッタリング、真空蒸着法、CVD法等の一般的な成膜方法により形成することができる。
【0020】
また、透明基板は、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性の無い透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。なお、本発明は反射型液晶ディスプレイにも適用することができ、その場合には、駆動電極層22および基板26を不透明ないし半透明な材料で構成してもよい。
【0021】
透明電極層14は、駆動電極層22と所定間隔離間して平行に設けられ、駆動電極層22との間に電場を形成する電極層である。透明電極層14は、液晶ディスプレイに使用され得る種々の透明電極層が採用可能であり、特に限定されないが、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、あるいはこれらの合金等で構成するのが好ましい。この透明電極層14は、スパッタリング、真空蒸着法、CVD法等の一般的な成膜方法により好ましく形成することができる。
【0022】
図示例の透明電極層14は、基板24に支持されており、光を透過できるように、基板24も透明になっている。この透明基板24は、上述した透明基板と同様の材料で構成すればよい。
【0023】
着色層12は、複数色の画素パターンからなる層であり、各画素毎に赤、青および緑から選択される1色を付与するものであり、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの着色層として知られるものと同様に構成すればよく、特に限定されない。すなわち、着色層12は、赤色画素12R、緑色画素12G、および青色画素12Bの3つの画素によって1つの絵素を構成し、この絵素が二次元的に規則的に繰り返されてなる着色画素パターンを有してなる。なお、本発明の着色層にあっては、赤、青および緑の組み合わせの代わりに、シアン、マゼンタおよびイエローからなる補色の組み合わせを採用する構成であってもよい。
【0024】
この着色層12は、染料、顔料等の色素を含んでなることにより所望の色に構成されており、公知の顔料分散法、染色法、電着法により形成することができる。また、着色画素パターンもストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の種々のパターンが採用可能であり、特に限定されない。
【0025】
本発明において着色層12の設けられる位置は、液晶ディスプレイ内の一層として設けられるのであれば特に限定されない。図示例の液晶ディスプレイ10は、着色層12が透明電極層14と透明基板24との間に設けられてなるが、駆動電極層22と基板26との間に設ける構成としてもよいし、それ以外の位置に設けてもよい。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、着色層12は、黒色で遮光性を有するブラックマトリクス層12Kを有してなることができる。図示例のブラックマトリクス層12Kは、赤色画素12R、緑色画素12Gおよび青色画素12Bからなる着色画素パターンにおいて、各着色画素間に設けられる。これにより、コントラストが向上し、高品位の表示が得られるという利点がある。このブラックマトリクス層12Kの材質は特に限定されないが、好ましい例としては、酸化クロム、もしくは黒色樹脂等が挙げられる。なお、ブラックマトリクス層は、着色層12とは別個の層として形成してもよく、その場合には、液晶層に対して観測者側に配置してもよいし、液晶層に対して観測者と反対側(バックライト側)に配置してもよく、特に限定されない。
【0027】
配向制御突起16は、透明電極層14および駆動電極層22の両方またはいずれか一方の、液晶層20側の表面に線状に設けられる突起であって、液晶の配向方向を制御する。この配向制御突起16は、断面が斜面を有する山状に形成されており、この突起に接触する液晶分子を斜面に垂直な方向に傾斜して配向させる。このため、液晶層に電圧を印加した際に、この突起近傍の傾斜した液晶分子を起点として、各ドメイン内の液晶分子を所定の方向に配向させることが可能となる。これにより、配向制御突起の頂点を境に液晶の配向方向を、水平方向に見て180度、鉛直方向には傾斜した角度で、対称的に配向させることができる。そして、この隣接する2つのドメインを1組とし、さらにこの組み合わせを複数組み合わせて1画素を表示することで、観測者の見る角度を配向制御突起の垂直方向に変化させても、観測者は常に同じ像を見ることが可能となる。すなわち、広い視野角を確保することができる。なお、配向制御突起は、直線状(特にジグザグ線状)であるのが好ましいがこれに限定されず、点線状等であってもよい。
【0028】
この配向制御突起16は、アクリル系樹脂を用いたフォトレジストの材料で構成すればよく、従来一般に広く用いられているフォトリソグラフィ等の方法により好ましく形成することができる。また、配向制御突起16は、透明電極層14および駆動電極層22の両側に設ける構成としてもよいし、透明電極層14側にのみ、あるいは駆動電極層22側にのみ設け、他方の層を後述するスリットで構成してもよく、特に限定されない。
【0029】
図示例の液晶ディスプレイ10は、配向制御突起16を透明電極層14にのみ形成し、かつ、配向制御突起が形成されない駆動電極層22が、配向制御突起16との間で所定方向の電場を形成するように、線状に切り欠かれてなるスリット23を有するように構成されている。なお、上記図示例に限られず、配向制御突起16を駆動電極層22にのみ形成し、配向制御突起が形成されない透明電極層14にスリットを形成する構成とすることもできる。
【0030】
いずれにしても、配向制御突起16および/またはスリット23が所定間隔毎に交互に繰り返されてなるストライプ状に形成されるのが、隣接するドメイン毎に電場の方向が対称となるように規定しやすい点で好ましい。
【0031】
本発明の好ましい態様によれば、配向制御突起16が所定間隔毎に90度屈折してなるジグザグ線状に設けられてなり、各ジグザグ線が互いに平行なストライプ状に形成されてなることができる。これにより、配向制御突起線の垂直方向のみならず、上下左右の全方向において完全に対称な視野角特性を得ることができる。すなわち、配向制御突起線の90度の屈折角を境に隣接した2つのドメイン間で、水平方向に180度の対称性を有している液晶分子の配向が、90度異なっている。このため、屈折角および配向制御突起線を境に4つのドメインに分割されることになり、これら4つのドメイン間で、液晶分子の長軸の配向角度が、ジグザグ線の中心軸に対し、水平方向に45度の角度で、鉛直方向には傾斜した角度で、4方向に配向する。このようにして、1つの画素を互いに対称な角度で4分割して表示することができるので、観測者は上下左右の全方向において常に同じ像を見ることが可能となる。
【0032】
ここで、スリット23が配向制御突起16の線と同形状かつ平行に形成されてなるのが好ましい。図3および図4に示されるように、配向制御突起16がジグザグ線状に形成される場合にあっては、スリット23も配向制御突起の線と同じ間隔で屈折してなるジグザグ線状に形成することが好ましい。より好ましくは、スリット23の各々が、液晶層を隔てて隣接する2本の配向制御突起線16の中央に位置するように、配向制御突起線と交互にストライプ状に設けられてなるようにする。これにより、各ドメイン毎に電圧印加時における配向性を明確に規制することができる。
【0033】
スペーサ18は、透明電極層16および駆動電極層22の間に柱状またはリブ状に配設され、この2層間を所定間隔に保持して、液晶層の厚さを規定する部材である。これにより、スペーサビーズの使用に伴う従来の問題点を解消して、生産プロセスにおける信頼性を高め、高精度に制御されたディスプレイを得ることができる。
【0034】
本発明において、柱状またはリブ状のスペーサ18は、配向制御突起16と重なる位置に設けられてなり、スペーサ18の側面が、配向制御突起16の長手方向に対して平行な側面を少なくとも一対含んでなる。なお、配向制御突起の屈折部(頂点)には2通りの長手方向が存在するが、本明細書においてはいずれか一方のみを長手方向と規定するものとする。これにより、電圧印加時におけるスペーサ側面近傍の液晶の配向方向を、配向制御突起近傍の液晶の配向方向とほぼ一致させることができる。したがって、新たなディスクリネーションラインの発生を実質的に無くして、スペーサが無い場合とほぼ同等の輝度を実現することができる。そのため、この態様によれば、スペーサを有効表示エリア内に配設することも可能である。
【0035】
さらに、スペーサ18により覆われる水平領域は、配向制御突起16により覆われる水平領域に包含されるのが好ましい。すなわち、この場合には、スペーサの基部が配向制御突起の基部と実質的に一致するか、またはそれよりも小さい。これにより、スペーサに起因する新たなディスクリネーションラインおよび光漏れを完全に無くすことができる。また、スペーサにより覆われる水平領域は、配向制御突起により覆われる水平領域に包含されていなくてもよく、多少はみ出してもよい。すなわち、スペーサにより覆われる水平領域が配向制御突起により覆われる水平領域を一部または全部において超過してもよい。この場合には、この超過部分のスペーサ側面の、前記配向制御突起のからの水平離間距離(すなわち、「ずれ」)が、基部を基準として7μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下とする。この程度の離間距離であれば、ディスクリネーションラインおよび光漏れがほとんどない。また、スペーサが配向制御突起に対して若干の超過部分を有することから、スペーサの面積を大きく確保できるとともに、製造工程上スペーサを比較的容易に形成できるという利点もある。
【0036】
このように、本発明のスペーサを採用することにより、新たなディスクリネーションラインが発生せず、液晶ディスプレイの輝度を低減することなく、スペーサの大きさを自由自在に設定することが可能となる。このような利点は、以下のi)およびii)のような事情からもその重要性が高いことが分かるであろう。
【0037】
i)一般のMVAモード液晶ディスプレイにおいては、スペーサを画素電極の間隙部分に設けることも一案として考えられる。すなわち、この間隙部分は電界が発生しないため常に黒色表示となるとともに、それを考慮してブラックマトリックスが通常、配置される。その結果、この間隙部分において、スペーサに起因する光の漏れをある程度隠すことができる。
【0038】
しかしながら、近年、ブラックマトリクスと画素間の間隙マージンがディスプレイの高精細化、高開口率化に伴って細くなる傾向にある。その一方、スペーサにはセルギャップを保持するために、ある程度の大きさが必要とされる。このため、スペーサがブラックマトリクスからはみ出してしまい、スペーサーの側面の液晶配向制御効果により有効表示面積部分にディスクネーションラインが発生するなどの悪影響が出るおそれがある。
【0039】
ii)また、スペーサを画素電極の電圧印加により電界が発生する、画素内の補助容量部分に設けることも一案として考えられる。しかしながら、この場合には、白表示時にディスクリネーションラインが発生してしまい、このラインが有効表示面積部分にかかってしまう可能性が有る。この場合もブラックマトリクスと同様に、開口面積を確保するために補助容量は小さくなる傾向にあることから、この場合はますますその危険性が大きくなる。
【0040】
また、配向制御突起を設けたMVAモードでは、ラビング工程が不要であり、通常TN−LCDなどで問題となる液晶層厚さ制御突起に起因するラビングされない部分、いわゆる影が原理上発生しないので、前述のごとく配置することによりそのメリットを生かすことができる。
【0041】
なお、スペーサ18は、配向制御突起16と重なる位置であれば、配向制御突起から多少はみ出していてもよいし、配向制御突起よりも狭く設けてもよい。また、配向制御突起線の屈折部に設けてもよいし、屈折部以外の直線部に設けてもよく、特に限定されない。
【0042】
また、スペーサおよび/または前記配向制御突起は、着色されたものであってもよいし、透明であってもよいし特に限定されない。
【0043】
ここで、セル全域にわたって高度なセルギャップ制御を実現するためには、ある一定以上の面積を有する複数のスペーサが必要となる。この点、本発明においては、配向制御突起上にスペーサを形成することにより、有効表示エリア内にスペーサを設けた場合であっても、新たなディスクリネーションラインを発生しないという利点がある。この有効表示エリアとは、液晶画像表示時においてブラックマトクスに遮光されることなく、画像を有効に表示できるエリアである。したがって、配向制御突起上である限り、有効表示エリアの内外を問わず、任意の位置にリブ状スペーサを形成できる。よって、この態様によれば、容易にスペーサ面積の増加が図れるとともに、新たなディスクリネーションラインも発生しなくすることができる。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、スペーサがジグザグ線の屈折部(頂点)に一致するように設けられる。後述する図6からも分かるように、電圧印加時において、屈折部を結ぶ線上においては、2方向から倒れた液晶分子が迫り合ってしまうので、垂直に近い配向方向を有し、透光性が著しく低下する。このため、屈折部を結ぶ線の近傍は常に暗くなっており、そのような位置にスペーサを配置することで、スペーサーに起因するディスクリネーションラインは、もともと存在する配向制御突起に起因するディスクリネーションラインに統合され、見かけ上発生しない。すなわち配向制御突起上に形成することにより、液晶の配向に何ら影響を与えない。また、配向制御突起が透明な材料で形成されている場合には、配向制御突起上であっても屈折部以外にスペーサを形成すると、白表示時にスペーサが黒点として観察されてしまうおそれがある。そこで、屈折部上にスペーサを形成することで、パネルが白表示時に黒く表示されるスペーサの少なくとも一部分を隠蔽することができ、より効率的に輝度を上げることができるという利点もある。
【0045】
ここで、スペーサを屈折部に設ける構成としては、図3に示されるように、屈折部分の正方形を基部とし、この基部から上方に延出する構成としてもよいし、あるいは図4に示されるように、屈折部分およびその近傍からなるV字状部分を基部とし、この基部から上方に延出する構成としてもよく、特に限定されない。
【0046】
また、本発明のより好ましい態様によれば、着色層12内に、または着色層12とは別個にブラックマトリクス層12Kを有してなり、かつ、配向制御突起線の屈折部の少なくとも一部がブラックマトリクス層12Kで遮光されてなることができる。また、本発明の別の好ましい態様によれば、図2に示されるように、駆動電極層22が補助容量部44を有し、かつ、配向制御突起線の屈折部の少なくとも一部が補助容量部で遮光されてなることもできる。
【0047】
このような屈折部の遮光はブラックマトリクス層12Kおよび補助容量部44のいずれか一方により行ってもよいが、これらの両方により行われるのがさらに好ましい。この場合におけるブラックマトリクス層および補助容量部の配置関係好ましい一例を図5に示す。図5に示されるように、ジグザグ線状の配向制御突起16およびスリット23は互いに平行なストライプ状に形成されていることから、各屈折部を結ぶ線は直線となる。そして、これらの直線がブラックマトリクス層12Kおよび補助容量部44と交互に一致するように配設されている。特に、図2にも示されるように、屈折部は、通常、ブラックマトリクス層で遮光される画素電極の間隙部分46のみならず、電圧印加により電界が発生する画素電極上にも存在しうる。このため、画素電極の間隙部分に位置する屈折部をブラックマトリクス層12Kにより、画素電極内に位置する屈折部を補助容量部44によりそれぞれ遮光する構成とし、かつこれらの屈折部に一致するようにスペーサ(図示せず)を設置することにより、白表示時に黒いディスクリネーションラインが発生するのを効率的に防止して、白表示時の輝度をより多く確保することができる。
【0048】
本発明において、スペーサ18の形状は種々の形状が採用可能であると考えられ、例えば、図示例のように、スペーサ18が配向制御突起16の基部からテーパー状に延出してなる形状が好ましく例示される。これにより、配向制御突起による配向の制御がスペーサによって阻害されるのを防止することができる。また、スペーサ基部が配向制御突起の基部よりも小さい場合も同様な効果が期待できる。
【0049】
本発明の好ましい態様によれば、スペーサにより覆われる領域が配向制御突起により覆われる領域に包含される。これにより、配向制御突起の機能をほとんど損なうことなく、高度に制御されたセルギャップを実現でき、配向させようとする方向に適切に液晶を配向させることができる。
【0050】
本発明の好ましい態様によれば、スペーサ18の側面が、配向制御突起16の長手方向に対して、平行な側面および垂直な側面から実質的になるものとする。すなわち、スペーサの側面のうち、配向制御突起の長手方向と平行ではない残りの側面をこの方向と垂直な側面で構成する。この垂直な側面は、配向制御突起上における液晶の配向方向を阻害しないため、スペーサに起因する新たなディスクリネーションラインおよび新たな光漏れを生じるのをより一層効果的に防止することができる。より詳しく説明すると次の通りである。配向制御突起上における液晶は、本来的に、配向制御突起の長手方向に沿って配向する傾向にある。そして、この長手方向に垂直なスペーサ側面によって液晶が配向する方向は、このスペーサ側面に対し垂直な方向であり、この配向方向は配向制御突起の長手方向と一致する。したがって、この場合、スペーサが設けられても、配向制御突起上における液晶の配向方向は基本的に変わらない。そのため、この態様によれば、スペーサを有効表示エリア内に配設することも可能である。
【0051】
この態様におけるスペーサ18の形状は、上記平行側面および垂直な側面から構成されていれば、図2に示されるような正方形状の水平断面を有する柱状であってもよいし、図3に示されるように略V字状の水平断面を有するリブ状であってもよいし、特に限定されない。本発明の好ましい態様によれば、スペーサの高さは1〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは2〜7μmである。
【0052】
また、本発明の好ましい態様によれば、スペーサが紫外線感光性樹脂からなるのが好ましく、より好ましくは、光重合開始剤を含有したネガ型レジストである。このような紫外線感光性樹脂の好ましい例としては、カルボン酸基などの酸性基をもつアクリル系ネガ型レジストが挙げられ、形状安定性の点でJSR製;NN700がより好ましい。これにより、公知の手法に従いネガ型レジストのパターンを電極層上に印刷しておき、その後紫外線を照射するという、極めて簡便な操作により効率良くスペーサを形成できるので、生産性が高いという利点がある。
【0053】
液晶層20は、電圧非印加時に垂直方向に配向し、かつ電圧印加時に非垂直方向に配向可能な液晶を含んでなる液晶層であり、透明電極層14および駆動電極層22の間に充填されてなる。具体的には、本発明に用いる液晶としては、負の誘電異方性を有するもの、すなわち液晶分子の長軸方向の誘電率が短軸方向の誘電率よりも小さいもの、を用いる。そして、このような液晶層20の駆動電極層側表面および透明電極層側表面には、液晶を垂直方向に配向させる垂直配向層21がそれぞれ設けられる。これにより、電圧非印加時には液晶を垂直方向に配向させておくとともに、電圧印加時には配向制御突起等により制御された所定方向に傾斜して配向させることが可能となる。
【0054】
このような垂直配向層21は、垂直配向性ポリイミド等の材料を用いて、例えばスクリーン印刷後、溶剤除去、焼成を行うことにより好ましく形成することができるが、本発明はこれに限定されない。
【0055】
本発明の好ましい態様によれば、駆動電極層16または透明電極層14の外側にバックライト(図示せず)が設けられてなる。これにより、所望の高画質カラー画像を十分な輝度で表示することができる。ただし、本発明は、透過型液晶ディスプレイに限定されるものではなく、反射型液晶ディスプレイにも適用することが可能であるので、その場合にはバックライトは必要とされない。
【0056】
カラーフィルタ
本発明のMVAモード液晶ディスプレイは、上記各層を積層することによって作製することができるが、好ましくは、本発明のスペーサを有してなるカラーフィルタを予め作製しておき、これを対向すべきアレイと貼り合わせ、スペーサにより形成された空間に液晶を注入する構成とするのが効率良く製造できる点から好ましい。
【0057】
図1に示される液晶ディスプレイは、本発明のスペーサ18が形成されたカラーフィルタ30と、一般的なアレイ32との間に、液晶層20を挟持させた構成となっている。すなわち、図1に示されるカラーフィルタ30は、基板24と、基板上に形成される着色層12と、着色層上に形成される電極層14と、電極層上に線状に設けられる配向制御突起16と、配向制御突起と重なる位置に柱状またはリブ状に配設されるスペーサ18とを有してなる。なお、電極層14は、駆動電極層であってもよいし、単なる透明電極層であってもよい。すなわち、本発明のカラーフィルタは、観測者側に配置されるものであってもよいし、観測者と反対側に配置されるものであってもよく、特に限定されない。これらの各層の構成は、液晶ディスプレイ10に関して上述した通りである。
【0058】
本発明の好ましい態様によれば、カラーフィルタ30の電極側表面に、液晶を垂直方向に配向させる垂直配向層21が形成されてなる。これにより、カラーフィルタとアレイとの間に液晶層を充填するのみで極めて簡便に液晶層を構成することができる。
【0059】
アレイ
本発明のMVAモード液晶ディスプレイは、カラーフィルタ側にスペーサを配置する構成のみならず、アレイ側にスペーサを配置する構成としてもよい。この場合には、本発明のスペーサを有してなるアレイを予め作製しておき、これを対向すべきカラーフィルタと貼り合わせ、スペーサにより形成された空間に液晶を注入する構成とするのが効率良く製造できる点から好ましい。
【0060】
本発明に用いることができるアレイとしては、基板と、基板上に形成される駆動電極層と、駆動電極層上に線状に設けられ、液晶の配向方向を制御する配向制御突起と、配向制御突起と重なる位置に柱状またはリブ状に配設され、液晶の厚さを保持するスペーサとを有してなるものが好ましく挙げられる。すなわち、本発明のアレイは、上述した本発明のカラーフィルタ30から着色層を排したものと同等であり、観測者側に配置されるものであってもよいし、観測者と反対側に配置されるものであってもよく、特に限定されない。これらの各層の構成は、液晶ディスプレイ10に関して上述した通りである。
【0061】
作用
このようにして得られた本発明の液晶ディスプレイ10において、バックライト(図示せず)が駆動電極層22側に配置された場合、バックライトの光が基板26、駆動電極層22、および垂直配向層21を透過して、液晶層20に入射する。一方、駆動電極層22は、薄膜トランジスタ(TFT)によって各画素毎に、透明電極層14との間に所定の電圧の印加/非印加を制御されることで、所望の画素にのみ電圧を印加する。このとき、電圧が印加されないドメインは液晶が垂直方向に配向しているので光が透過しない一方、電圧が印加されたドメインは液晶が配向制御突起により規制された方向(非垂直方向)に配向することで光が透過する。この透過された光は、垂直配向層21、透明電極層14、着色層12の赤12R、緑12Gおよび青12Bの各区画、および透明基板26を透過して、観測者の視覚により着色光として感知される。このような制御を全ての画素について行うことで、所望のカラー画像が出力されることとなる。
【0062】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
実施例1:カラーフィルタおよび液晶ディスプレイの作製
(a)カラーフィルタの作製
まず、透明基板24としてガラス基板を用意した。次にこのガラス基板を適切な処理を施して清浄とした後に、スパッタリングの手法を用いてクロム酸化物層を形成した。引き続きポジ型レジストをもちいてエッチング処理を行い、ブラックマトリクス層12Kを形成した。次に、赤の紫外線硬化型レジストとしてカラーモザイクCR−2000(富士ハントエレクトロニクステクノロジー製)、を、緑の紫外線硬化型レジストとしてカラーモザイクCG−2000(富士ハントエレクトロニクステクノロジー製)を、青の紫外線硬化型レジストとしてカラーモザイクCB−2000(富士ハントエレクトロニクステクノロジー製)を用意した。これら3色の紫外線硬化型レジストのうちの1色を、ブラックブラックマトリクス層が形成されたガラス基板に、スピンコート法により塗布した。
【0064】
得られた基板に所望のパターンでフォトマスクを施した後、紫外線を照射して所望のパターン部を硬化させた。未硬化部分を現像処理により除去して、一定の着色画素パターン12を約2.0μmの厚さで得た。このフォトリソグラフィ法を3色分繰り返して行うことにより、ブラックマトリクス層12K上に赤、青および緑からなる着色層12を形成した。次に、スパッタリング法により厚さ2000ÅのITO膜を透明電極層14として形成した。そして、この透明電極層上に、紫外線硬化型透明ネガ型レジスト(富士ハントエレクトロニクステクノロジー製、カラーモザイクCT)を用いて、上記同様のフォトリソグラフィ法により90°の屈折角のジグザグ線状ストライプ(高さ1.5μm、底面幅10μm)を、配向制御突起16として形成した。
【0065】
さらに、得られた配向制御突起16の屈折部上に、スペーサ18を作製した。具体的には、紫外線硬化型透明ネガ型レジストNN700(JSR社製)を用い、上記同様のフォトリソグラフィ法により、高さ5μmの突起をスペーサとして形成した。このとき、図3に示されるように、配向制御突起の屈折部に、スペーサの底面が配向制御突起の幅と同じサイズの正方形(1辺の長さ;10μm)であり、かつ、スペーサの側面が、配向制御突起の長手方向に対して、平行な側面と垂直な側面とから実質的になることを意図して、スペーサを形成した。さらに、スペーサが形成された基板に、JALS−688(JSR社製)をスピンコートし、200℃で1時間焼成することにより、厚さ700Åの垂直配向層21を形成した。こうして得られた積層体が本発明のカラーフィルタである。
【0066】
(b)液晶ディスプレイの作製
まず、カラーフィルタと対向するアレイ用基板としてガラス基板26を用意した。次に、スパッタリング法により厚さ2000ÅのITO膜を駆動電極層22として形成した。ただし、本実施例における駆動電極層は、液晶ディスプレイのディスクリネーションラインの評価という目的のため、画素毎にパターニングされていない単なるITO膜として構成されているが、実際に液晶ディスプレイとして機能させるためには、公知の技術に従い、電極を画素毎にパターニングし、かつ各画素電極を薄膜トランジスタ(TFT)で制御するように容易に構成することができる。得られた基板の透明電極層側の面をエッチング処理して、ガラス基板の露出幅10μmのスリット23を形成した。ここで、スリットが配向制御突起の線と同形状かつ平行になるように形成した。こうして得られた透明電極層22に、JALS−688(JSR社製)をスピンコートし、200℃で1時間焼成することにより、厚さ700Åの垂直配向層21を形成して、アレイ32を得た。
【0067】
次に、(a)で作製したカラーフィルタ30の配合制御突起側の面と、アレイ32のスリット側の面とを、スリットが隣接する2本の配向制御突起線の中央に位置し、かつ、スリットと配向制御突起線とが交互になるように向かい合わせて、貼り合わせた。その後、負の誘電異方性をもつ液晶MLC−6608(メルク社製)を真空注入法を用いてセル内に注入し、110℃で1時間アフターアニールして流動配向効果をキャンセルして、本発明の液晶ディスプレイを得た。
【0068】
実施例2:液晶ディスプレイの評価
まず、作製したMVA−LCDにおける液晶の配向特性を観察するために、着色層およびブラックマトリクス層を有しないこと以外は、上記(a)および(b)と同様にして、ディスクリネーションライン測定用の液晶ディスプレイを作製した。これは、ディスクリネーションラインの存在を明確にするために、着色層およびブラックマトリクス層を省略して評価を行うこととしたことによるものである。なお、ここで観察されたディスクリネーションラインは本来、着色層およびブラックマトリクス層を有していても同様に現れるものであると考えられるため、ここで得られた評価は着色層およびブラックマトリクス層を有する液晶ディスプレイにもそのまま適用されるものと考えられる。
【0069】
作製した測定用MVA−LCDについて、電圧2.0V1kHz印加時の配向特性を偏光顕微鏡(オリンパス社製;BX60)のクロスニコル下で観察した。顕微鏡写真を図6に示す。
【0070】
実施例3
配向制御突起上であるが、屈折部以外の位置にスペーサを形成したこと以外は、実施例2と同様にして、カラーフィルタおよび液晶ディスプレイを作製し、評価を行った。顕微鏡写真を図7に示す。
【0071】
比較例1
配向制御突起から外れた位置であって、屈折部を結ぶ線上の、配向制御突起近傍の位置に柱状スペーサを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタおよび液晶ディスプレイを作製し、評価を行った。顕微鏡写真を図8に示す。
【0072】
比較例2
配向制御突起から外れた位置であって、屈折部を結ぶ線上の、スリット近傍の位置に柱状スペーサを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタおよび液晶ディスプレイを作製し、評価を行った。顕微鏡写真を図9に示す。
【0073】
比較例3
配向制御突起から外れた位置であって、スリットの屈折部の位置に柱状スペーサを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタおよび液晶ディスプレイを作製し、評価を行った。顕微鏡写真を図10に示す。
【0074】
比較例4
配向制御突起から外れた位置であり、かつ、屈折部を結ぶ線上でもない位置に柱状スペーサを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタおよび液晶ディスプレイを作製し、評価を行った。顕微鏡写真を図11に示す。
【0075】
比較例5
スペーサを形成する代わりに、スペーサビーズ(粒径;5.0μm、SEKISUI FINE CHEMICAL CO.LTD製;商品名ミクロパールSP−205)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタおよび液晶ディスプレイを作製し、評価を行った。顕微鏡写真を図12に示す。
【0076】
結果
図6および7から分かるように、実施例1および2により作製された液晶ディスプレイは、スペーサが形成されているにも関わらず、このスペーサに起因するディスクリネーションラインが発生しなかった。特に、図6および図7からも分かるように、スペーサの底面が配向制御突起の幅と同じサイズの正方形となるようにスペーサを形成したにもかかわらず、実際はスペーサの各側面が、配向制御突起から基部を基準としてそれぞれ5μm程度はみ出していた。しかしながら、このようにスペーサが配向制御突起からはみ出していても、このスペーサに起因するディスクリネーションラインは発生しなかった。この実施例の結果から分かるように、実際の製造工程においては、スペーサの底面を配向制御突起の幅と同じサイズとし、かつ配向制御突起の底面部分と完全に一致させて形成することは容易ではない。ディスクリネーションラインを発生しない程度に、スペーサを配向制御突起から多少はみ出させる方が、製造工程上は、むしろ有利であると考えられる。
【0077】
図8〜11から分かるように、比較例1〜4により作製された液晶ディスプレイは、柱状スペーサに起因して、配向制御突起による配向の制御に乱れが生じ、ディスクリネーションラインが発生した。そして、その部分の透過光輝度、すなわち輝度が低下した。
【0078】
図12から分かるように、比較例5により作製された液晶ディスプレイは、スペーサビーズに起因して、白表示時に有効エリア内で黒点となって表示された。
【0079】
なお、図6〜図12に関して、上記実施例および比較例では、配向制御突起がジグザグ線状パターンとして形成されているが、この屈折部を結ぶ線上はディスクリネーションラインの発生により黒線として表示される。一方、通常のMVA−LCDでは、パターンニングされた駆動電極の間隙、すなわちブラックマトリクスにより区分される画素間の間隙は、電界が発生せず常に黒状態となるため、この部分に屈折部を配する手法が取られている。さらにまた、画素内部に存在する屈折部を結ぶ線上は、上述のとおり黒線となるため、補助容量を配置することにより遮光している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMVAモード液晶ディスプレイおよびカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示される液晶ディスプレイにおける、駆動電極層の構成を示す概念図である。
【図3】図1に示される液晶ディスプレイにおける、ジグザグ線状の配向制御突起およびスリットと、スペーサとの位置関係の一例を示す平面図である。
【図4】図1に示される液晶ディスプレイにおける、ジグザグ線状の配向制御突起およびスリットと、スペーサとの位置関係の他の一例を示す平面図である。
【図5】図1に示される液晶ディスプレイにおける、ブラックマトリクス層および補助容量部の配置関係を示す概念図である。
【図6】配向制御突起の屈折部にスペーサを設けた、本発明のMVAモード液晶ディスプレイの偏光顕微鏡写真である。
【図7】配向制御突起上であるが、屈折部以外の位置にスペーサを形成した、本発明のMVAモード液晶ディスプレイの偏光顕微鏡写真である。
【図8】配向制御突起から外れた位置であって、屈折部を結ぶ線上の、配向制御突起近傍の位置に柱状スペーサを形成したMVAモード液晶ディスプレイの偏光顕微鏡写真である。
【図9】配向制御突起から外れた位置であって、屈折部を結ぶ線上の、スリット近傍の位置に柱状スペーサを形成したMVAモード液晶ディスプレイの偏光顕微鏡写真である。
【図10】配向制御突起から外れた位置であって、スリットの屈折部の位置に柱状スペーサを形成したMVAモード液晶ディスプレイの偏光顕微鏡写真である。
【図11】配向制御突起から外れた位置であり、かつ、屈折部を結ぶ線上でもない位置に柱状スペーサを形成したMVAモード液晶ディスプレイの偏光顕微鏡写真である。
【図12】スペーサとしてスペーサービーズを用いた場合の、MVAモード液晶ディスプレイの偏光顕微鏡写真である。

Claims (40)

  1. 各画素に対応する駆動電極が二次元的に配列されてなる駆動電極層と、
    該駆動電極層と所定間隔離間して平行に設けられ、前記駆動電極層との間に電場を形成する透明電極層と、
    前記駆動電極層および前記透明電極層の間に柱状またはリブ状に配設され、前記所定間隔を保持するスペーサと、
    前記駆動電極層および前記透明電極層の間に充填され、負の誘電異方性を有する液晶からなる液晶層と、
    前記液晶層の駆動電極層側表面および透明電極層側表面に、それぞれ設けられ、前記液晶を垂直方向に配向させる垂直配向層と、
    前記駆動電極層および/または前記透明電極層の前記液晶層側の表面に線状に設けられ、前記液晶の配向方向を制御する配向制御突起と、
    複数色の着色画素パターンからなる着色層とを有してなる、複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイであって、
    前記スペーサが前記配向制御突起と重なる位置に設けられてなり、前記スペーサの側面が、前記配向制御突起の長手方向に対して平行な側面を少なくとも一対含んでなり、
    前記スペーサにより覆われる水平領域が前記配向制御突起により覆われる水平領域に包含されるか、あるいは、前記スペーサにより覆われる水平領域が前記配向制御突起により覆われる水平領域を一部または全部において超過する場合には、該超過部分のスペーサ側面の、前記配向制御突起のからの水平離間距離が、基部を基準として7μm以下であり、
    前記配向制御突起が所定間隔毎に90度屈折してなるジグザグ線状に設けられてなり、各ジグザグ線が互いに平行なストライプ状に形成されてなり、前記スペーサが前記ジグザグ線の屈折部に設けられてなる、複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  2. 前記スペーサが前記配向制御突起の基部からテーパー状に延出してなる、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  3. 前記スペーサの少なくとも一部が、有効表示エリア内に存在する、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  4. 前記スペーサの側面が、前記配向制御突起の長手方向に対して、平行な側面および垂直な側面から実質的になる、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  5. 前記スペーサの高さが1〜10μmである、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  6. 前記スペーサが紫外線感光性樹脂からなる、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  7. 前記スペーサがネガ型レジストからなる、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  8. 前記着色層内に、または前記着色層とは別個の層として、ブラックマトリクス層を有してなり、かつ、前記屈折部の少なくとも一部が前記ブラックマトリクス層で遮光されてなる、請求項に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  9. 前記駆動電極層が補助容量を有し、かつ、前記屈折部の少なくとも一部が前記補助容量で遮光されてなる、請求項に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  10. 前記着色層内に、または前記着色層とは別個の層として、ブラックマトリクス層を有してなり、かつ、前記屈折部の少なくとも一部が前記ブラックマトリクス層で遮光されてなり、
    前記駆動電極層が補助容量を有し、かつ、前記屈折部の少なくとも一部が前記補助容量で遮光されてなり、
    各屈曲部を結ぶ線が、直線であり、前記直線が、前記ブラックマトリックスおよび前記補助容量と交互に一致するように配設されてなる、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  11. 前記スペーサおよび/または前記配向制御突起が着色されたものである、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  12. 前記スペーサおよび/または前記配向制御突起が透明である、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  13. 前記配向制御突起が前記駆動電極層および前記透明電極層のいずれか一方にのみ形成され、かつ、
    該配向制御突起が形成されない駆動電極層または透明電極層が、前記配向制御突起との間で所定方向の電場を形成するように、線状に切り欠かれてなるスリットを有する、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  14. 前記スリットが前記配向制御突起の線と同形状かつ平行に形成されてなる、請求項13に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  15. 前記スリットの各々が、前記液晶層を隔てて隣接する2本の配向制御突起線の中央に位置するように、前記配向制御突起線と交互にストライプ状に設けられてなる、請求項14に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  16. 前記駆動電極層が基板に支持されてなる、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  17. 前記駆動電極層が透明である、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  18. 前記基板が透明である、請求項16に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  19. 前記透明電極層が透明基板に支持されてなる、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  20. 前記着色層が前記駆動電極層と前記基板との間に設けられてなる、請求項16または18に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  21. 前記着色層が前記透明電極層と前記透明基板との間に設けられてなる、請求項19に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  22. 前記駆動電極層または前記透明電極層の外側にバックライトが設けられてなる、請求項1に記載の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイ。
  23. 複数配向分割型垂直配向モード液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタであって、
    基板と、
    該基板上に形成され、複数色の着色画素パターンからなる着色層と、
    該着色層上に形成される電極層と、
    前記電極層上に線状に設けられ、液晶の配向方向を制御する配向制御突起と、 前記配向制御突起と重なる位置に柱状またはリブ状に配設され、液晶の厚さを保持するスペーサとを有してなり、
    前記スペーサの側面が、前記配向制御突起の長手方向に対して平行な側面を少なくとも一対含んでなり、
    前記スペーサにより覆われる水平領域が前記配向制御突起により覆われる水平領域に包含されるか、あるいは、前記スペーサにより覆われる水平領域が前記配向制御突起により覆われる水平領域を一部または全部において超過する場合には、該超過部分のスペーサ側面の、前記配向制御突起のからの水平離間距離が、基部を基準として7μm以下であり、
    前記配向制御突起が所定間隔毎に屈折してなるジグザグ線状に設けられてなり、各ジグザグ線が互いに平行なストライプ状に形成されてなり、前記スペーサが前記ジグザグ線の屈折部に設けられてなる、カラーフィルタ。
  24. 前記カラーフィルタの電極側の最表面に、液晶を垂直方向に配向させる垂直配向層が形成されてなる、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  25. 前記電極層が各画素に対応する駆動電極が二次元的に配列されてなる駆動電極層である、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  26. 前記駆動電極層が透明である、請求項25に記載のカラーフィルタ。
  27. 前記基板が透明である、請求項26に記載のカラーフィルタ。
  28. 前記基板および前記電極層が透明である、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  29. 前記スペーサが前記配向制御突起の基部からテーパー状に延出してなる、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  30. 前記スペーサの少なくとも一部が、有効表示エリア内に存在する、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  31. 前記スペーサの側面が、前記配向制御突起の長手方向に対して、平行な側面および垂直な側面から実質的になる、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  32. 前記スペーサの高さが1〜10μmである、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  33. 前記スペーサが紫外線感光性樹脂からなる、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  34. 前記スペーサがネガ型レジストからなる、請求項33に記載のカラーフィルタ。
  35. 前記着色層内に、または前記着色層とは別個の層として、ブラックマトリクス層を有してなり、かつ、前記屈折部の少なくとも一部が前記ブラックマトリクス層で遮光されてなる、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  36. 前記駆動電極層が補助容量を有し、かつ、前記屈折部の少なくとも一部が前記補助容量で遮光されてなる、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  37. 前記着色層内に、または前記着色層とは別個の層として、ブラックマトリクス層を有してなり、かつ、前記屈折部の少なくとも一部が前記ブラックマトリクス層で遮光されてなり、
    前記駆動電極層が補助容量を有し、かつ、前記屈折部の少なくとも一部が前記補助容量で遮光されてなり、
    各屈曲部を結ぶ線が、直線であり、前記直線が、前記ブラックマトリックスおよび前記補助容量と交互に一致するように配設されてなる、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  38. 前記スペーサおよび/または前記配向制御突起が着色されたものである、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  39. 前記スペーサおよび/または前記配向制御突起が透明である、請求項23に記載のカラーフィルタ。
  40. 請求項1の複数配向分割型垂直モード液晶ディスプレイに用いられる、請求項23に記載のカラーフィルタ。
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