JP4853691B2 - α,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオン、ω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸およびその塩、ジカルボン酸およびその塩の分離回収方法 - Google Patents
α,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオン、ω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸およびその塩、ジカルボン酸およびその塩の分離回収方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種合成原料ないし中間体として有用であり、特に香料工業分野で用いられる、大環状ラクトン系香料の重要中間体であるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸の製造において、α,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオン、ω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸およびその塩、ジカルボン酸およびその塩を分離回収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般式(1)
【0003】
【化10】
(式中、kは7〜13の整数、Mはアルカリ金属を表す)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と、一般式(4)
【0004】
【化11】
(ただし、kは7〜13の整数)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸は、各種合成原料ないし中間体として有用であり、特に香料工業分野における大環状ラクトン系香料の重要中間体である。
【0005】
かかるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸またはその塩の合成法としては、一般式(6)
ROOC(CH2 )l COOR (6)
(式中、l=7〜13の整数、Rはアルキル基またはアルケニル基を表す)で示されるジカルボン酸エステルとγ−ブチロラクトンとを出発物質とする方法が、国際公開特許番号WO97-06156号公報に記載されていている。
【0006】
また、本発明者らは、一般式(4)のジカルボン酸エステルとγ−ブチロラクトンから生成された一般式(7)
【0007】
【化12】
(式中、oは7〜13の整数、Rはアルキルまたはアルケニル基、Mはアルカリ金属を表す)で示される、2−(ω−アルコキシカルボニルアルカノイル)−4−ブタノリッドのアルカリ金属塩と、未反応のジカルボン酸エステルを不活性溶媒とアルカリ水溶液を用いて分離する方法を提案した。この方法で得られた水層に、さらにアルカリ金属水酸化物等を添加して加水分解・脱炭酸反応することで一般式(1)で示される化合物を得ることができる。
【0008】
【化13】
しかしながら、この反応混合物中には一般式(2)
【0009】
【化14】
(式中、mは7〜13の整数、Mはアルカリ金属を表す)で示される長鎖ジカルボン酸のナトリウム塩と、一般式(3)
【0010】
【化15】
(ただし、nは7〜13の整数)で示されるα,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオンが副反応生成物として含まれている。
【0011】
一般式(2)で示される化合物を回収し、これを酸性化して一般式(5)
【0012】
【化16】
(式中、mは7〜13の整数)で示される長鎖ジカルボン酸とした後、これをエステル化すれば、出発原料である一般式(6)で示される化合物となり、再利用可能である。
【0013】
また一般式(3)の化合物は、特開平3−118314号公報に記載されているように、制がん剤として有用なα,ω−アルカンジオールの重要な合成中間体として利用される。しかしながら、これらの三成分は、塩基性かつ高温条件下ではいずれも水に溶解しやすく、酸性条件では油溶性であるため、分離が非常に困難である。そのため、大環状ラクトンの製造においては、通常これらは混合物のまま次の還元および環化反応に用いられている。よって、一般式(5)および一般式(3)で示される有用物質の回収を行なうことができないばかりか、環化反応では収率低下、反応残渣の固化、香気の悪化などの問題が生じる恐れがある。
また、公開特許公報平4−134047号公報には、ω−ヒドロキシ脂肪酸もしくはそのエステル、α,ω−ジオールおよびジカルボン酸もしくはそのエステルの三種の混合物の分離回収法が記載されているが、分子内にカルボニル基を有するような化合物については何等触れられていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決して、α,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオン、ω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸およびその塩、ジカルボン酸およびその塩をそれぞれを選択性よく分離回収する方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成せんと鋭意研究した結果、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の分離回収方法の一つは、前記一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と、一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む混合物から、前記一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩を選択的に晶析させ、これを固液分離によりケークと濾液に分離することを特徴とする一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の分離回収方法である。
【0017】
この発明では、ここで得られたケークと濾液を、それぞれ鉱酸で処理して、一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸を分離回収すること、分離された少量の一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩を含む濾液を、鉱酸によりpH=5〜7に中和調整して、一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を分離回収すること、そして、ここで分離された一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む濾液をさらに鉱酸によりpH=3〜5に調整して一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸を分離回収することが好ましい態様として含まれる。
【0018】
また、本発明の他の分離回収方法は、一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と、一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩と、一般式(3)で示されるα,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオンの三種を含む混合物から、有機溶媒により前記一般式(3)で示されるα,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオンを抽出するか、あるいは該混合物から一般式(3)で示されるα,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオンを選択的に晶析させることを特徴とする一般式(3)で示されるα,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオンの分離回収方法である。
【0019】
この発明においては、上記で分離された一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の混合物を、鉱酸によりpH=5〜7に中和調整して、一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の分離回収すること、回収された一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む濾液を鉱酸によりpH=3〜5に調整して一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸の分離回収方法が好ましい態様として含まれる。
【0020】
またこの発明においては、上記で得られた一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩分の混合物から、一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩化合物を選択的に晶析させ、それを固液分離によりケークと濾液とに分離して一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の分離回収すること、これらの分離されたケークと濾液を、それぞれ鉱酸で処理して一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸の分離回収すること、
さらには、分離された少量の一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩を含む濾液を、鉱酸によりpH=5〜7に調整して一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の分離回収すること、および、ここで得られた一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む濾液を鉱酸によりpH=3〜5に調整して一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸の分離回収方法が好ましい態様として包含される。
【0021】
また、本発明のさらに他の分離回収方法は、前記の一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と、一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む混合物を、鉱酸によりpH=5〜7に中和調整して、一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の分離回収方法であり、この発明では、一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を採取し、さらにその濾液を鉱酸によりpH=3〜5することで一般式(4)示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸を分離回収することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明においては、一般式(6)
ROOC(CH2 )l COOR (6)
(ただしl=7〜13、Rはアルキル基またはアルケニル基を表す)で示されるジカルボン酸エステルとγ−ブチロラクトンの縮合反応物を、特願平9−215752号公報に記載の方法により塩基性条件で抽出、加水分解、脱炭酸反応した反応混合物から、有機溶媒によって一般式(3)で示される化合物を抽出分離する。さらに、残った水溶液を所定の温度で処理することによってω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩を選択的に晶析させ、固液分離によりケークと濾液とに分離することによって、一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示されるジカルボン酸のアルカリ金属塩を分離回収する。または、得られたケークと濾液それぞれを鉱酸で処理することで、一般式(4)のω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)のジカルボン酸それぞれを分離回収する。
【0023】
あるいは、一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む混合物を、鉱酸によりpH=5〜7に調整することで一般式(4)を析出させて固液分離することにより、一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を分離回収する。また、必要に応じて、さらにその濾液を鉱酸によりpH=3〜5に調整することで一般式(5)で示される化合物を析出させて固液分離することにより、一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸を分離回収する。
【0024】
また、これらの手法の組合せによっても本発明の目標は達成される。例えば、一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩と一般式(3)で示されるα,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオンを含む混合物から一般式(3)で示される化合物を抽出除去するか、あるいは混合液を所定の温度で処理することで一般式(3)を選択的に晶析させ、これを固液分離によりケークとして除去した後の水溶液を、さらに所定温度で処理することにより、一般式(1)の化合物を選択的に晶析させ、固液分離によりケークと濾液とに分離した後に、少量の一般式(1)の化合物を含む場合は、その濾液から鉱酸によりpH=5〜7に調整することで一般式(4)の化合物を晶析させて固液分離することにより、一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を分離回収する。また、さらにその濾液をpH=3〜5に調整することで一般式(5)を晶析させて固液分離することにより、一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を分離回収するなどの手法が挙げられる。
【0025】
本発明において用いられる反応混合物は、一般式(6)
ROOC(CH2 )l COOR (6)
(式中、l=7〜13、Rはアルキル基またはアルケニル基を表す)で示されるジカルボン酸エステルとγ−ブチロラクトンをアルカリ金属アルコラートなどの塩基を用いて縮合反応させた化合物を、不活性溶媒の存在下にアルカリ水溶液を用いて抽出し、さらにアルカリ金属水酸化物などを添加して、加水分解および脱炭酸反応を行なったものである。
【0026】
本発明で用いられるアルカリ金属に特に限定はないが、ナトリウムまたはカリウムが好ましい。
【0027】
本発明において、反応混合物中から一般式(3)のα,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオンの抽出分離に用いられる有機溶媒は、塩基性条件に不活性で水に不溶なものであれば特に限定されない。具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、デカリン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、イソプロピルエーテルよび、ジブチルエーテルなどが挙げられる。なかでもトルエンが特に好ましく用いられるれる。
【0028】
本発明において、有機溶媒の使用量に特に限定はないが、操作上、副資材費などの点から、反応混合物に対して好ましくは0.5〜20重量倍、特に好ましくは1〜10重量倍である。
【0029】
本発明において、一般式(3)の化合物の抽出温度は特に限定はされないが、温度が高い方が抽出効率がよい反面、抽出に用いられる有機溶媒と水の沸点の問題から50〜110℃、特に60〜90℃の範囲が好ましい。なお、有機層に一般式(1)の化合物が含まれることもあるが、温水を用いて逆抽出することで、ほとんどが回収可能である。
【0030】
本発明において、一般式(3)の化合物の晶析温度は、反応混合物の組成、特に水分率に影響を受けやすいが、一般式(3)の化合物が結晶化し、かつ一般式(1)および(2)の塩が溶解している温度であれば特に限定はされない。ただし、操作上の問題から−20〜80℃、特には0〜40℃が好ましい。
【0031】
一般式(3)の化合物の晶析において、反応混合物の水分率は反応混合物の組成、および温度に影響を受けやすいが、一般式(3)の化合物が結晶化し、かつ一般式(1)および(2)の塩が溶解している水分率であれば特に限定はされない。ただし、操作上の問題から50〜99重量%、特には70〜90重量%が好ましい。
【0032】
本発明において生成した塩の固液分離の方法は、遠心沈降、遠心脱水および濾過等の通常の方法を使用することができる。なお、得られたケーク中には、一般式(1)および一般式(2)の塩が混入することもあるが、水などで洗浄することにより、更にケーク中の一般式(3)の塩の純度を高め、かつ一般式(1)および一般式(2)の塩を水溶液として回収することができる。
【0033】
また、本発明において、抽出工程の形式についてはバッチ式、多段槽式および連続式などいずれでもよい。
【0034】
次に、一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩の晶析条件について説明する。
【0035】
本発明において、一般式(1)の化合物の晶析温度は、反応混合物の組成、特に水分率に影響を受けやすいが、一般式(1)の化合物が生成し、かつ一般式(2)の化合物が溶解している温度であれば特に限定はされない。ただし、操作上の問題から−20〜80℃、特には0〜40℃が好ましい。
【0036】
本発明において、反応混合物の水分率は反応混合物の組成、および温度に影響を受けやすいが、一般式(1)の化合物が生成し、かつ一般式(2)の化合物が溶解している水分率であれば特に限定されない。ただし、操作上の問題から50〜99重量%、特に70〜90重量%が好ましい。
【0037】
本発明において生成した塩の固液分離の方法は、遠心沈降、遠心脱水および濾過等の通常の方法が使用できる。なお、得られたケーク中には一般式(2)の化合物が混入することもあるが、水などで洗浄することにより、更にケーク中の一般式(1)の化合物の純度を高め、かつ一般式(2)の化合物を水溶液として回収することができる。
【0038】
大環状ラクトンの製造において得られたケークは、次の還元反応にはそのままでも、あるいは一旦酸性化してからでも利用できる。還元反応は、Wolff-Kishner 還元やClemmensen 還元など、それ自体は公知の方法で行なうことができる。
【0039】
一般式(1)および一般式(2)のアルカリ金属塩を酸性化するために使用される鉱酸は特に限定はないが、硫酸や塩酸がよく用いられる。酸性化した後の脂肪酸の取得には、その形状にもよるが、遠心沈降、遠心脱水および濾過等の固液分離や、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素およびジクロロエタン等の有機溶媒を用いた抽出手段を用いることができる。
【0040】
本発明において、一般式(1)および一般式(2)の混合物から、鉱酸を用いて一般式(4)を採取する際のpHは5〜7が好ましく、特に5.5〜6.5が好ましい。さらに、一般式(2)を酸性化し一般式(5)を採取する際のpHは、3〜5が好ましく、特には3.5〜4.5が好ましい。これよりpHを下げることは、一般式(5)の回収率、純度に関して問題はないが、鉱酸使用量が増大し、副原料費が増大するので好ましくない。
【0041】
【実施例】
次に、本発明を実施例により説明するが、下記実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
【0042】
(参考例) 反応混合物の調製
1,12−ドデカン二酸ジメチルエステル(105.00g、406.4mol)とγ−ブチロラクトン(8.75g、101.6mmol)と28wt%ナトリウムメトキサイド−メタノール溶液(19.60g、101.6mmol)とから調製した縮合反応液を、50℃で加熱撹拌した。これにn−ヘキサン104.4gを添加して2分間撹拌した。これにさらに5.5%−NaOH水溶液を73.87g添加して、そのまま120分間撹拌した。5分間静置した後、分液して有機層と水層とに分けた。水層に41%−NaOH水溶液19.00gを添加し、2時間環流したのち、80℃まで冷却し、反応混合物126.52gを得た。
【0043】
(実施例1) 1,18−ジヒドロキシ−4,15−オクタデカンジオンの抽出回収
上記参考例で得られた反応混合物の一部を、80℃に保温しながら同重量のトルエンを用いて20分間抽出した。この操作を5回繰り返して得た有機層と水層を、それぞれ希硫酸で酸性化した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、溶媒を留去して結晶物を得た。それぞれをHPLCで定量分析した結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
(実施例2) 15−ヒドロキシ−12−ケトペンタデカン酸の精製
上記参考例で得られた反応混合物の水分率を84%に調整した後、40℃恒温槽で2時間晶析処理を行なった。析出した結晶物を、遠心濾過器を用いてケーク部分と濾液とに分離した。ケークは40℃で水を添加してリスラリー化した後、遠心濾過器を用いてケーク部分と濾液とに分離し、濾液は先の濾液と混合した。それぞれを希硫酸を用いて酸性化した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、溶媒を留去して結晶物を得た。それぞれをHPLCで定量分析した結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
(実施例3) 15−ヒドロキシ−12−ケトペンタデカン酸の精製
上記参考例で得られた反応混合物を80℃に保温しながら、同重量のトルエンを用いて20分間抽出した。この操作を5回繰り返して得た水層を20℃恒温槽で2時間晶析処理を行なった。析出した結晶物を遠心濾過器を用いてケーク部分と濾液とに分離した。それぞれを希硫酸を用いて酸性化した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、溶媒を留去して結晶物を得た。それぞれをHPLCで定量分析した結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
なお、表3の結果から、硫酸処理する前に晶析分離した結晶物には、15−ヒドロキシ−12−ケトペンタデカン酸に対応するナトリウム塩が7.28g含まれ、濾液にはドデカン二酸に対応するナトリウム塩が1.25g含まれていることが明らかとなった。
【0050】
(実施例4) pH調整による15−ヒドロキシ−12−ケトペンタデカン酸の精製
上記参考例のようにして得た反応混合物を80℃に保温しながら、同重量のトルエンを用いて20分間抽出した。この操作を5回繰り返して得た水層を20℃恒温槽で2時間晶析処理を行なった。析出した結晶物を遠心濾過器を用いてケーク部分と濾液とに分離した。得られた濾液を硫酸を用いてpH=6.5とし、析出した結晶物を遠心濾過器を用いてケーク部分と濾液とに分離した。濾液はさらに硫酸を用いてpH=3.0とし、析出した結晶物を遠心濾過器を用いてケークを得た。それぞれをHPLCで定量分析した結果を表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、特に香料工業分野で用いられる大環状ラクトン系香料の重要中間体であるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸の製造において、従来困難であった、α,ω−ジヒドロキシ−δ,(ω−3)−アルカンジオン、ω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸およびその塩、ジカルボン酸およびその塩のそれぞれを、選択性よく効率的に分離回収することができる。
Claims (13)
- 一般式(1)
- 請求項3において一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む濾液を鉱酸によりpH=3〜5に調整することを特徴とする、一般式(4)示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸の分離回収方法。
- 請求項2で得られた一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩分の混合物から、一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩化合物を選択的に晶析させ、それを固液分離によりケークと濾液とに分離することを特徴とする一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の分離回収方法。
- 請求項6で分離されたケークと濾液を、それぞれ鉱酸で処理することを特徴とする一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸の分離回収方法。
- 請求項2で分離された一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の混合物を、鉱酸によりpH=5〜7に調整することを特徴とする一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の分離回収方法。
- 請求項8で一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む濾液を鉱酸によりpH=3〜5に調整することを特徴とする一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸の分離回収方法。
- 請求項1で分離された少量の一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩を含む濾液を、鉱酸によりpH=5〜7に調整することを特徴とする一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の分離回収方法。
- 請求項10で分離された一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む濾液をさらに鉱酸によりpH=3〜5に調整することを特徴とする一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸の分離回収方法。
- 請求項6で分離された少量の一般式(1)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸のアルカリ金属塩を含む濾液を、鉱酸によりpH=5〜7に調整することを特徴とする一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩の分離回収方法。
- 請求項12で分離された一般式(2)で示される長鎖ジカルボン酸のアルカリ金属塩を含む濾液を鉱酸によりpH=3〜5に調整することを特徴とする一般式(4)で示されるω−ヒドロキシ−(ω−3)−ケト脂肪酸と一般式(5)で示される長鎖ジカルボン酸の分離回収方法。
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