JP4852833B2 - ブラックインク組成物およびインクセット - Google Patents

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Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、色再現性に優れ、かつメタメリズムが低減されたブラックインク組成物およびこれらブラックインク組成物を含むインクセットに関する。
背景技術
インクジエット記録方法等によって画像を形成する場合に、高品質の画像を得る目的で、ライトブラックインクを含むインクセットを用いることがある。ここで、ライトブラックインクとは、他のブラックインクよりもブラック顔料の濃度を低くしたものであり、シャドー部等の暗色に対する色再現性やグレーの階調性を向上させる目的で使用するものである。これを用いて、例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクからなる4色インクセットにライトブラックインクを加えて5色インクセットとしたり、あるいは、ライトシアンインク及びライトマゼンタインクを追加した6色インクセットに、更にライトブラックインクを加えて7色インクセットとすることがある。
しかしながら、ライトブラックインクは、顔料含有量が低いので、得られる色相が、本来必要とする無彩色ではなく、色味を帯びてしまうことがある。すなわち、L*a*b*空間で、(a*,b*)=(0,0)から逸脱し、具体的には黄色味を帯びてしまうことがある。このようなライトブラックインクの帯黄性を修正するために、イエローの補色となる着色剤(すなわち、顔料)をライトブラックインクに添加することが提案されている。例えば、米国特許第5,803,958号明細書(特許文献1)には、カーボンブラックに加えてシアン顔料とマゼンタ顔料とを含むブラックインク組成物が提案されている。また、特開2002−256193号公報(特許文献2)には、カーボンブラックと特定のブルー顔料とを含むことにより、帯黄性が改善されたブラックインク組成物が記載されている。さらに、米国特許第6,565,202号明細書(特許文献3)には、濃淡二種類のブラックインクからなるインクセットにおいて、その一方のブラックインク組成物としてカーボンブラックおよびピグメントブルー顔料を含有するものが提案されている。さらにまた、英国特許出願公開第2370580号明細書(特許文献4)には、カーボンブラックとフタロシアニン顔料とジオキサジンバイオレット顔料とを含むブラックインク組成物が開示されている。
しかしながら、上記のブラックインク組成物では、帯黄性は改善されるものの、紙等の記録媒体に印刷してできる印刷物が、光源(蛍光灯、白熱灯、太陽光等)の違いによって色差を生じていた。即ち、ある光源を用いて見た印刷物の色相と、他の光源を用いて見た同一印刷物の色相とが、同一にならないという現象(メタメリズム)が生じてしまっていた。一般に、メタメリズムとは、分光分布の異なる二色が一定の照明条件等の下で等しい色に見え、照明条件等を変えると、この二色が異なった色に見える現象をいう。なお、ここでの「照明条件等」の中には、照明条件だけでなく光の温度や、見る人の色覚特性も含まれる。
特に、ブラックインク等の無彩色インクにおいては、色差の許容幅が小さいため、微妙な肌色や背景画像を再現することが困難となる場合がある。
米国特許第5,803,958号明細書 特開2002−256193号公報 米国特許第6,565,202号明細書 英国特許出願公開第2370580号明細書
発明の概要
本発明者らは今般、カーボンブラックを含むブラックインク組成物において、特定のグリーン顔料とレッド顔料とを添加することにより、帯黄性が修正されるとともに、メタメリズムが解消できる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
したがって、本発明は、帯黄性が修正されるとともに、メタメリズムが解消できるブラックインク組成物の提供をその目的としている。
そして、本発明によるブラックインク組成物は、着色剤として、カーボンブラックと、グリーン顔料と、レッド顔料とを含んでなるものである。
本発明のブラックインク組成物によれば、帯黄性が修正されるとともに、メタメリズムが解消できる。
また、本発明の別の態様として、異なる顔料濃度を有する少なくとも二種のブラックインク組成物を含んでなるインクセットであって、それらブラックインク組成物のいずれかが、上記のブラックインク組成物であるインクセットが提供される。
このようなインクセットを用いることにより、帯黄性が修正されるとともに、メタメリズムが解消された画像を得ることができる。
発明の具体的説明
ブラックインク組成物
本発明によるブラックインク組成物は、着色剤として、カーボンブラックと、グリーン顔料と、レッド顔料とを含んでなるものである。このように、グリーン顔料およびレッド顔料が、カーボンブラックを含むインク組成物に添加されることにより、帯黄性の改善とメタメリズムの解消とを同時に実現できる。通常、カーボンブラック等の無機顔料を含むブラックインク組成物は、光源による色相の影響を受けにくい。しかしながら、帯黄性を改善するためにブルー顔料等の有色顔料を加えると、メタメリズムが生じてしまう。本発明にあっては、上記のような特定の有色顔料を用いることにより、帯黄性の改善とメタメリズムの解消とが同時に実現できたことは、予想外のことであった。
本発明の好ましい態様によれば、カーボンブラックと、グリーン顔料およびレッド顔料との含有量比は、3:1〜1:1であることが好ましく、特に2:1〜1:1であることが好ましい。無彩色顔料であるカーボンブラックと、有彩色顔料であるグリーン顔料およびレッド顔料との含有量比を上記の範囲とすることにより、無彩色に近い色相のブラックインク組成物とできるともに、種々の光源のもとでも色差が生じ難く、微妙な肌色や背景画像を再現することができる。
また、グリーン顔料とレッド顔料との含有量比は、3:1〜1:1であることが好ましく、特に、2:1〜1:1であることが好ましい。このような範囲においてグリーン顔料とレッド顔料とをカーボンブラックに添加することにより、とりわけ帯黄性の改善とメタメリズムの解消とが同時に改善される。
グリーン顔料としては、ピグメントグリーン7、またはピグメントグリーン36が好ましく、特にピグメントグリーン7が好ましい。
レッド顔料としては、ピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメントレッド12、ピグメントレッド122、ピグメントレッド146、ピグメントレッド202、ピグメントレッド209等が挙げられるが、これらの中でも、ピグメントレッド122、ピグメントレッド202、またはピグメントレッド209であることが好ましく、特に、ピグメントレッド122であることが好ましい。
カーボンブラックとして、例えば、コンタクト法、ファーネスト法、又はサーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックとしては、具体的には、三菱化学製のNo.2300,No.900,MCF88,No.33,No.40,No.45,No.52,MA7,MA8,MA100,No2200B等;コロンビア社製のRaven5750,Raven5250,Raven5000,Raven3500,Raven1255,Raven700等;キャボット社製のRegal 400R,Regal 330R,Rega l660R,Mogul L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400等;デグッサ社製のColor Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,ColorBlack FW18,Color Black FW200,ColorBlack S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex 35,Printex U,Printex V,Printex 140U,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black 4等を使用することができる。また、異なる顔料濃度を有する少なくとも二種のブラックインク組成物を調製するに際しては、同じ種類のカーボンブラックを用いてもよく、また異なる種類のカーボンブラックを用いてもよい。
本発明によるブラックインク組成物は、分散剤をさらに含んでなることが好ましい。特に、上記顔料は、分散剤で水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液として、インク組成物中に添加されるものである。
分散剤としては、慣用の界面活性剤の他、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を好適に使用することができる。なお、顔料分散液に含まれる分散剤がインク組成物の分散剤及び界面活性剤としても機能することは言うまでもない。高分子分散剤として、樹脂分散剤を好適に使用することができる。
高分子分散剤の好ましい例としては天然高分子が挙げられる。その具体例としては、にかわ、ゼラチン、ガゼイン、又はアルブミンなどのタンパク質類、アラビアゴム、又はトラガントゴムなどの天然ゴム類、サボニンなどのグルコシド類、アルギン酸、あるいはアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、又はアルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はエチルヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。
また、高分子分散剤の好ましい例としては合成高分子が挙げられる。その具体例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸塩−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、又はアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、又はスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、あるいは、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、又は酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。
これらの中でも、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、及びスチレン−無水マレイン酸共重合体が分散剤として好ましい。
また、樹脂分散剤としては、市販のものを使用することができ、その具体例としては、ジョンソンポリマー株式会社製、ジョンクリル68(分子量10000、酸価195)、ジョンクリル61J(分子量10000、酸価195)、ジョンクリル680(分子量3900、酸価215)、ジョンクリル682(分子量1600、酸価235)、ジョンクリル550(分子量7500、酸価200)、ジョンクリル555(分子量5000、酸価200)、ジョンクリル586(分子量3100、酸価105)、ジョンクリル683(分子量7300、酸価150)、ジョンクリルB−36(分子量6800、酸価250)等が挙げられる。
本発明によるブラックインク組成物においては、水溶性有機溶媒および/または界面活性剤をさらに含んでなることが好ましい。
本発明において好ましく用いられる水溶性有機溶媒としては、通常の水性顔料インク組成物に配合される水溶性有機溶媒を用いることができ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、若しくはトリメチロールプロパンなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、若しくはトリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類;あるいは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、又はトリエタノールアミンを挙げることができる。
本発明において好ましく用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、又はポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩など)、ノニオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、又はポリオキシエチレンアルキルアミドなど)、両性界面活性剤(例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩、N,N、N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、又は2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン)等を挙げることができ、これらは単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。
これら界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系化合物、アセチレンアルコール系化合物、またはポリシロキサン系化合物のいずれかを界面活性剤を含むのが、より好ましい。これら化合物の添加によってブラックインク組成物の記録媒体への浸透性を向上することができ、種々の記録媒体においてにじみの少ない印刷を実現することができる。
界面活性剤として好ましく用いられるアセチレングリコール系化合物としては、下記式で表わされる化合物等を用いることができる。
Figure 0004852833
(式中、0≦m+n≦50であり、R1〜R4はそれぞれ独立してアルキル基、好ましくは炭素数6以下のアルキル基を表す。)
これら化合物の中でも、特に好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどを挙げることができる。
また、アセチレングリコール系界面活性剤として市販品を利用することも可能であり、具体例としては、サーフィノール104、82、465、485、又はTG(何れも商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)、オルフインSTG、オルフインE1010(何れも商品名、日信化学社製)を挙げることができる。
また、アセチレンアルコール系化合物としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2、4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール、サーフィノール61(商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)等を用いることができる。
ポリシロキサン系化合物としては、下記式で表わされる化合物等を用いることができる。
Figure 0004852833
(式中、R〜Rは、独立して、C1−6アルキル基を表し、j、k、およびlは、独立して1以上の整数を表し、EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表し、mおよびnは0以上の整数を表すが、但しm+nは1以上の整数を表し、EOおよびPOは、[ ]内においてその順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
具体的には、ビックケミー・ジャパン社製のBYK347、同348等を使用できる。
本発明によるブラックインク組成物に含有される界面活性剤量は特に限定されるものではないが、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。この範囲であれば、界面活性効果が十分に得られるとともに、結晶の析出や液晶の形成が起こらず、顔料の安定性低下などによる吐出不良が生じない。
本発明によるブラックインク組成物は、防腐剤、金属イオン捕獲剤、及び/又は防錆剤を更に含有するのが好ましい。ここで、防腐剤は、アルキルイソチアゾロン、クロルアルキルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、ブロモニトロアルコール、オキサゾリジン系化合物、及びクロルキシレノールからなる群から選択された1種以上の化合物が好ましく、金属イオン捕獲剤は、エチレンジアミン四酢酸塩が好ましく、防錆剤は、ジシクロヘキシルアンモニウムニトラート及び/又はベンゾトリアゾールが好ましく用いられる。
また、本発明におけるブラックインク組成物は、保存安定性の確保、目詰まり防止、吐出安定の確保、放置安定性の確保の目的で、湿潤剤、保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤、腐食防止剤、その他の種々の添加剤を含有してもよい。
インク成分の溶解性を向上させ、更に記録媒体、例えば、紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルの目詰まりを防止する目的で、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、又はイソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等を添加してもよい。
また、本発明によるブラックインク組成物においては、pH調整剤として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類及びそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機水酸化物、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類、その他、燐酸塩等を添加してもよい。
その他の添加成分として、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸及びその塩、市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることができる。
また、本発明のブラックインク組成物は、表面張力が45mN/m以下であることが好ましく、特に好ましくは、25〜45mN/mの範囲である。表面張力が45mN/mを越えると、印字の乾燥性が悪くなり、滲みが発生しやすくなり、カラーブリードが発生する等のため、良好な印刷画像が得られにくい。また、表面張力が25mN/m未満では、プリンタヘッドのノズル周囲が濡れやすくなるためにインク滴の飛行曲がりが発生する等、吐出安定性に問題が生じ易い。上記表面張力は、通常に用いられる表面張力計によって測定することができる。
インクの表面張力は、インクを構成する各成分の種類や組成比などを調整することにより上記範囲内とすることができる。
また、本発明によるブラックインク組成物は、通常の方法で調製することができる。
インクセット
本発明によるインクセットは、異なる顔料濃度を有する少なくとも二種のブラックインク組成物を含んでなるインクセットであって、それらブラックインク組成物のいずれかに本発明によるブラックインク組成物を用いるものである。すなわち、ブラックインク組成物として、「ライトブラック」と「ブラック」との少なくとも2種以上の顔料濃度のブラックインクを用いるものであり、そのライトブラックとして、本願発明によるブラックインク組成物を用いるものである。なお、「ライトブラック」とは、シャドー部等の暗色に対する色再現性の向上及びグレーの階調性を向上させ、粒状性の低下を目的に、ブラックインク組成物の顔料(すなわち、カーボンブラック)濃度を低くしたものである。
本発明によるインクセットによれば、上記の本発明によるブラックインク組成物を備えているため、帯黄色性が改善されたニュートラルに近い色相を実現できるとともに、メタメリズムの解消により、種々の光源のもとでも色差が生じ難く、微妙な肌色や背景画像を再現することができる。
本発明のより好ましい態様としては、異なる顔料濃度を有する少なくとも三種のブラックインク組成物を含んでなるインクセットであって、それらブラックインク組成物のうち、最も顔料濃度の低いブラックインク組成物に本発明によるブラックインク組成物を用いるものである。そして、本発明によるインクセットにおいては、上記の三種類のブラックインク組成物のうち、その最も顔料濃度の低いブラックインク組成物と、中間濃度のブラックインク組成物とに、本発明によるブラックインク組成物を用いることが、より好ましい。このように、顔料濃度の異なる三種類以上のブラックインク組成物とすることにより、暗色に対する色再現性をより高め、優れたグレー階調性を有する画像を実現できる。
また、最も顔料濃度の低いブラックインク組成物は、顔料濃度が0.4%未満であることが好ましい。また、中間濃度のブラックインク組成物の顔料濃度を、0.4〜1.5%、特に0.7〜1.3%とすることが好ましい。このような範囲の顔料濃度のブラックインクを組み合わせて用いることにより、暗色に対する色再現性をより高めることができ、優れたグレー階調性を有する画像を実現することができる。なお、顔料濃度とは、本発明によるブラックインク組成物において、カーボンブラックとグリーン顔料とレッド顔料とを含めた顔料の濃度を意味する。
本発明によるインクセットは、モノクロ記録用インクセットとしてもよく、また、他のカラーインクとともに、カラー記録用インクセットとしてもよい。カラーインクとしては、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインク等を用いることができ、本発明に係るインクセットとしての効果を損なわない限り、それらの種類等に特に制限されず、通常のインクジェット記録用に用いられるものが使用できる。
また、カラーインクとして、これら三種類以外にも、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等をインクセットに含めることもできる。なお、「ライトマゼンタ」及び「ライトシアン」の各インク組成物とは、一般的には、濃度変調による印刷画像の画質向上を目的に、それぞれマゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物の色材濃度を低くしたインク組成物である。また、「ダークイエロー」のインク組成物とは、シャドー部等の暗色に対する色再現性を向上させる目的で、イエローインク組成物よりも明度・彩度の低い色材(顔料)を用いたイエローインク組成物である。そして、「レッド」、「オレンジ」、「グリーン」、「ブルー」、及び「バイオレット」の各インク組成物は、色再現範囲を向上させるために、イエロー、マゼンタ、シアンの中間色を構成する要素として使用されるインク組成物である。
本発明によるインクセットは、従来公知のインクセットと同様に構成することができ、従来公知の各種の記録方法用インクとして利用することができる。特に、本発明においては、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速で印刷可能である点で、インクジェット記録用、即ちインクの小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う用途に好適である。
また、本発明によるインク組成物及びこれを用いたインクセットを使用することにより、帯黄性が改善され、かつメタメリズムが解消された鮮明で高品質な画像の記録物を得ることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
ブラックインク組成物の調製
下記表1に示す各成分を混合して、サンドミル(安川製作所製)中でガラスビーズ(直径1.7mm;混合物の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させ、実施例1〜6、および比較例1〜5のブラックインク組成物を得た。なお、顔料として使用したPB60とはピグメントブルー60を、PB15:3とはピグメントブルー15:3を、PR122とはピグメントレッド122を、PR202とはピグメントレッド202を、PV23とはピグメントバイオレット23を、PG7とはピグメントグリーン7を、そしてPG36とはピグメントグリーン36を示す。
また、水溶性樹脂として、スチレン−アクリル酸共重合体(分子量=15000;酸価=100)を用いた。
Figure 0004852833
評価試験
(1)帯黄性改善評価
実施例1〜6および比較例1〜5の各ブラックインク組成物を、インクジェットプリンタ(PM−4000PX;セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジに充填した。
出力は、インクジェット専用記録用紙(PM写真用紙;セイコーエプソン株式会社製)に対して、解像度1440×720dpiで行い、各ブラックインク組成物についてduty10%〜100%までの十段階のグラデーションパッチを印刷した。
出力されたパターンは分光光度計(グレタグマクベスSPM50;グレタグ社製)を用いて測定し、CIEで規定されている色差表示法のL*a*b*表色系の座標を求めた。その際の条件は、光源D50、光源フィルタなしで、視野角は2°とし、白色標準は絶対白とした。
得られた各値から、十段階の各パッチの彩度C*を下記式により求めた。
C*=((a*)+(b*)1/2
得られた彩度C*の値により、帯黄性の評価を行った。
評価基準は以下の通りとした。
A:C*が7.0以下であったもの
B:C*が7.0を超え、10以下であったもの
C:C*が10を超えたもの
結果は下記の表2に示される通りであった。
(2)メタメリズム解消性評価
上記で得られた各印刷物を用いて、D50光源およびF11光源の各光源における、印刷物の同一部分(同一duty部)のCIEで規定されている色差表示法のL*a*b*表色系の座標を求めた。得られた各値から、ΔL*、Δa*、およびΔb*のそれぞれの値を下記式により求めた。
ΔL*=F11光源でのL*の値−D50光源でのL*の値
Δa*=F11光源でのa*の値−D50光源でのa*の値
Δb*=F11光源でのb*の値−D50光源でのb*の値
得られたΔL*、Δa*、およびΔb*の各値から、十段階の各パッチ間の色差ΔE*を下記式により求めた。
ΔE*=((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
得られたΔE*の値により、メタメリズムの評価を行った。
結果は、表2に示される通りであった。
Figure 0004852833
表2に示されるように、比較例1〜5のブラックインク組成物は帯黄性が改善されているものの、メタメリズムに劣るものであった。これに対し、実施例1〜6のブラックインク組成物においては、帯黄性が修正されるとともに、メタメリズムが解消された良好な画像を実現するものであった。

Claims (12)

  1. 着色剤として、カーボンブラックと、グリーン顔料と、レッド顔料とを含んでなり、
    前記グリーン顔料が、ピグメントグリーン7、またはピグメントグリーン36であり、
    前記レッド顔料がピグメントレッド122である、ブラックインク組成物。
  2. 前記カーボンブラックと、前記グリーン顔料およびレッド顔料との含有量比が、3:1〜1:1である、請求項1に記載のブラックインク組成物。
  3. 前記グリーン顔料とレッド顔料との含有量比が、3:1〜1:1である、請求項1または2に記載のブラックインク組成物。
  4. 前記グリーン顔料がピグメントグリーン7である、請求項1に記載のブラックインク組成物。
  5. 分散剤をさらに含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブラックインク組成物。
  6. 水溶性有機溶媒および/または界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のブラックインク組成物。
  7. 異なる顔料濃度を有する少なくとも二種のブラックインク組成物を含んでなるインクセットであって、それらブラックインク組成物のいずれかが請求項1〜6のいずれか一項に記載のブラックインク組成物である、インクセット。
  8. 異なる顔料濃度を有する少なくとも三種のブラックインク組成物を含んでなるインクセットであって、それらブラックインク組成物のうち、最も顔料濃度の低いブラックインク組成物が請求項1〜6のいずれか一項に記載のブラックインク組成物である、請求項に記載のインクセット。
  9. 最も顔料濃度の低いブラックインク組成物と、中間濃度のブラックインク組成物とが、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブラックインク組成物である、請求項8に記載のインクセット。
  10. 最も顔料濃度の低いブラックインク組成物の顔料濃度が0.4%未満である、請求項8または9に記載のインクセット。
  11. 中間濃度のブラックインク組成物の顔料濃度が0.4%以上1.5%未満である、請求項8〜10のいずれか一項に記載のインクセット。
  12. インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブラックインク組成物、または請求項7〜11のいずれか一項に記載のインクセットを用いる、インクジェット記録方法。
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