JP4851263B2 - ビーム応用装置 - Google Patents

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本発明は、床から鏡筒への振動伝達を低減させる機構を備えたビーム応用装置に関する。
電子ビームやイオンビームの如き荷電粒子ビーム、或いは、レーザービームやX線の如き光ビームを使用して、試料を観察したり、材料上にパターンを描いたり、或いは試料を分析したりするビーム応用装置がある。
図1はビーム応用装置の一例である透過型電子顕微鏡の1概略例を示したものである。
図中1は電子光学鏡筒で、電子銃,集束系レンズ,偏向系レンズ,非点補正等の補正系レンズ等の電子光学系や、観察すべき試料を保持した試料保持体等を備えている。
2は像観察室で、蛍光板を備え、試料を透過した電子ビームに基づく試料像が該蛍光板上に結像される様に成っている。
3は前記像観察室の真下にあり、前記試料像をフィルムに撮影するためのカメラ室である。
4はその上面に前記像観察室2が、その下面に前記カメラ室3がそれぞれ取り付けられているベースプレートである。
5は床6上に設置された架台で、平面図で見て四辺形の各4個の頂点にそれぞれ配置された鉛直な4本の支柱7A,7B,7C,7D(図1では7C,7Dは示されていないが、図1のA−A断面図である図2では全て示されている)、及び、該4本の支柱の上部を互いに連結する水平連結枠8A,8B,8C,8D(図1では8B,8C,8Dは示されていないが、図2では全て示されている)と下部を互いに連結する水平連結枠9A,9B,9C,9D(図1では9B,9C,9Dは示されていない)から成り、この様な架台5上に前記ベースプレート4が設置されている。
この様な顕微鏡においては、前記床6から前記鏡筒1に入り込む振動を低減させるために、前記架台5の各支柱7A,7B,7C,7Dの上面と前記ベースプレート4の間に、例えばバネ等から成る防振マウント10A,10B,10C,10D(10C,10Dは図示されていない)が介在されている。
又、前記床6の平面度が充分に高くない場合に対応できる様に、前記床6と前記各支柱7A,7B,7C,7Dの下面との間に、ネジで高さ調整が可能なアジャスタフット11A,11B,11C,11D(11C,11Dは図示されていない)が介在されている。
特開2001−273864号公報 特開2002−310229号公報
さて、床振動は、各アジャスタフット11A,11B,11C,11Dの位置において、同位相で水平面に対し鉛直に振動しているとは限らず、水平面に対し傾斜して振動する場合がある。
例えば、図3に示す様に、傾斜を伴う床振動が存在する時、前記架台5は傾き、前記各防振マウント10A,10B,10C,10Dの位置において、水平方向の振動成分が発生する。この水平方向の振動は、前記各防振マウント10A,10B,10C,10Dを介して一定の割合で前記鏡筒1に伝達する。この振動の振幅は大きいため、結果的に試料観察に支障を来すことになる。
本発明は、この様な問題を解決する新規なビーム応用装置を提供することを目的とする。
本発明のビーム応用装置は、ビーム発生手段,集束レンズ及び偏向器等の光学系を備えた鏡筒を搭載した鏡筒搭載台を、防振マウントを介して架台上に載せ、該架台を床上に設置したビーム応用装置において、前記床と架台との間に、粘弾性体から成るシートを備えたダンパーを介在させたことを特徴とする。
本発明のビーム応用装置によれば、傾斜を伴う床振動が存在することにより、防振マウントの位置において水平方向の振動が発生しても、該水平方向の振動の振幅を著しく抑制することが出来、鏡体への振動伝達を著しく減少させることが出来る。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図4は本発明のビーム応用装置の1例として透過型電子顕微鏡の1概略例を示したものである。図中、図1と同一記号を付したものは同一構成要素である。
図4に示す装置が前記図1に示す装置と異なる構成は以下の通りである。
図1の装置では架台5の各支柱7A,7B,7C,7D(7C,7Dは図示せず)と床6との間には、アジャスタフット11A,11B,11C,11D(11C,11Dは図示せず)だけを介在させたが、図4の装置では、該各アジャスタフット11A,11B,11C,11Dと床6との間に、粘弾性材料(高分子材料若しくはゴム系材料を主原料とする)から成る、薄い(例えば、厚さ0.5mm以下)シート12を2つの金属板13,14(例えば、厚さ5mm〜20mm、大きさ150mm×150mm〜200mm×200mm)の間に挟んだダンパー15A,15B,15C,15D(15C,15Dは図示せず)を介在させた。
そして、該ダンパーと前記架台5から成る物の固有振動数が床振動の周波数より低くなる様に、前記各ダンパー15A,15B,15C,15Dのシート12の厚さと大きさが設定されている。
さて、この様に、粘弾性材料から成る薄いシート12を使用した場合の作用を次に説明する。
一般に、架台5と床6の間に、厚く軟らかい素材(例えば、数mm以上の厚さのゴム)を配置した場合には、該素材の固有振動モードとして、前記架台5に、該架台の下部より上部の方が振幅が大きい、いわゆるロッキング振動モードが発生し、このモードの振動の固有振動数が床振動の周波数と一致すると、伝達して来た床振動は防振マウント10A,10B,10C,10D位置における水平方向に大きく増幅されてしまう。
それに対し、前記図4のダンパー15A,15B,15C,15Dで使用されている充分に薄い粘弾性材料から成る薄いシート12は、水平方向に剪断変形し易く、更に、該シートは面積も大きいので、圧縮方向である垂直方向にバネ定数が高い。その為、この様なシードが前記架台5と床6の間に配置されていると、該シートがバネ成分となって発生する固有振動モードは、殆どロッキング成分を持たず、並進モードに近い形態となる。従って、伝達してきた床振動は防振マウント10A,10B,10C,10Dの位置において水平方向に増幅することが抑えられる。又、前記シート12は薄いだけではなく、損失係数の大きな粘弾性材料から出来ているので、剪断歪み発生に基づく振動エネルギーの減衰作用が起こり、固有振動モードの共振倍率を抑えることが出来、より一層、前記防振マウント10A,10B,10C,10Dの位置における水平方向の振動の振幅の増幅を抑えることが出来る。
次に、前記ダンパーと架台5とから成る物の固有振動数が床振動の周波数より低くなる様に、前記各ダンパー15A,15B,15C,15Dのシート状材の厚さと大きさを設定した場合の作用を説明する。
傾斜を伴う床振動が発生している場合、前記ダンパーと架台5とから成る物の固有振動数が床6の振動周波数より高い場合、床6の傾斜に従って架台5が傾斜し、防振マウント位置に大きな振幅の水平方向の振動が発生する。
又、傾斜を伴う床振動が発生している場合に、前記ダンパーと架台5とから成る物の固有振動数と床6の振動周波数がほぼ一致していると、床6の傾斜に従って架台5が傾斜し、更に、前記振動数と周波数の一致に基づく共振によって、架台固有モードによる増幅作用で発生する振動の位相が架台5の傾斜方向と同位相となり、床6の傾斜に基づいて防振マウント位置に発生する水平方向の振動の振幅がより大きく増幅されてしまう。
しかし、傾斜を伴う床振動が発生している場合に、前記ダンパーと架台5とから成る物の固有振動数が床6の振動周波数より小さいと、床6の傾斜に従って架台5が傾斜し、該傾斜に基づいて防振マウント位置に水平方向の振動が発生しても、前記架台5の固有モードによる増幅作用で発生する振動の位相が該架台の傾斜方向とは逆になり、前記防振マウント位置の水平方向の振動の振幅が著しく小さくなる。
この様に、前記ダンパー15A,15B,15C,15Dと前記架台5との組み合わせすら成る物の固有振動数が床振動の周波数より小さくなる様に、前記各ダンパー15A,15B,15C,15Dのシート12の厚さと大きさを設定する場合、シード12の厚みが薄い程、或いは該シード12の面積が広い程、前記組み合わせ物の固有振動数が高くなり、逆に厚い程、或いは、小さい程、小さくなることを考慮して行われる。
尚、床6の傾斜に基づく防振マウント位置での水平方向振動の振幅を限りなく小さくするには、前記組み合わせ物の振動による水平方向成分が前記床6の傾斜に基づく防振マウント位置での水平方向振動と逆位相で、且つ、前者の振動の振幅が後者の振動の振幅に限りなく近づく様に、前記シート状材12の厚さと面積を設定すればよい。
尚、前記シート12が薄い程、剪断歪みが大きくなるので減衰が効果的に働き、該シードの面積が大きい程、減衰作用をする部材が増え、減衰能が高くなり、振動の共振倍率を低くすることが出来るが、前記シート12の厚さと面積は架台5の固有振動数に影響を与え、設定によっては、前記前者の逆位相の振動の振幅が前記後者の振動の振幅を越えてしまうことがあるので、前記シート12の厚さと面積を設定する場合、シート12の厚さを出来るだけ薄くして架台固有モードの減数能を出来るだけ高くしておき、その状態において、該シートの面積を決めるのが良い。
この様な装置において、傾斜を伴う床振動が存在する場合、前記架台5は傾き、前記各防振マウント10A,10B,10C,10Dの位置において、前記床振動に基づく水平方向の振動成分が発生する。しかし、前記床6と各アジャスタフット11A,11B,11C,11D(11C,11Dは図示せず)の間にダンパー15A,15B,15C,15D(15C,15Dは図示せず)を介在させ、該ダンパーと前記架台5との固有振動数が床振動の周波数より低くなる様に成しているので、前記防振マウント10A,10B,10C,10D(10C,10Dは図示せず)の位置に水平方向の振動が発生しても、前記架台5の固有モードによる増幅作用で発生する振動の位相が該架台の傾斜方向とは逆になり、前記防振マウント位置の水平方向の振動の振幅が著しく小さくなる。従って、試料観察が高精度に行われる。
尚、前記例のダンパー15A,15B,15C,15Dは、シート状材12を金属板13,14で挟む様にして成したが、床面の平面度が充分に高い場合には、下側の金属板14を無くしても良い。
又、前記例では透過型電子顕微鏡を例に上げて説明したが、走査電子顕微鏡や電子ビーム描画装置等の他の荷電粒子ビーム装置や、レーザー加工装置やX線顕微鏡等の他の光ビーム装置等にも本願発明は有効である。
透過型電子顕微鏡の1概略例を示している。 図1の透過型電子顕微鏡に使用されている架台部のA−A断面を示す。 傾斜を伴う床振動がある場合の架台部の様子を示している。 本発明のビーム応用装置の1例を示したものである
符号の説明
1…電子光学鏡筒
2…像観察室
3…カメラ室
4…ベースプレート
5…架台
6…床
7A,7B,7C,7D…支柱
8A,8B,8C,8D,9A,9B,9C,9D…水平連結枠
10A,10B,10C,10D…防振マウント
11A,11B,11C,11D…アジャスタフット
12…シート状材
13,14…金属板
15A,15B,15C,15D…ダンパー

Claims (3)

  1. ビーム発生手段,集束レンズ及び偏向器等の光学系を備えた鏡筒を搭載した鏡筒搭載台を、防振マウントを介して架台上に載せ、該架台を床上に設置したビーム応用装置において、
    前記床と架台との間に、粘弾性体から成るシートを備えたダンパーを介在させ
    前記床の振動に伴って架台が傾斜しても、その傾斜方向と逆方向に架台が動いて前記防振マウント位置における水平方向振動が抑制されるように、前記シートの厚さと大きさが設定されている
    ことを特徴とするビーム応用装置
  2. 前記シートと前記架台及び前記シートと前記床との間に金属板が介在されている請求項1記載のビーム応用装置。
  3. 前記シートと前記架台との間に金属板が介在されている請求項1記載のビーム応用装置。
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