JP4850524B2 - 発振・エコーキャンセラーシステム - Google Patents

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Description

この発明は、携帯電話又はPHS等の移動体通信機器をはじめ一般的な電話機、テレビ会議システムや音声入力機器のイヤホーンマイク全般、翻訳機、聾唖者や声帯損傷者用拡声器、旅行業者のガイド用通信機、アナウンサー用通信機、電車の車掌用通信機、オペレーター用ヘッドセット等各種の通信機器に用いられて、これら通信機器の発振・エコー防止に効果のある発振・エコーキャンセラーシステムに関するものである。
従来、通信機器として例えば携帯電話又はPHS等の移動体通信に用いられる有線と無線の子機が知られており、この子機から親機、さらにNTTドコモ等の電話用無線電波中継部を含む伝送系を介して相手側の通信機器と双方向通信をする通信システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これは一方の通信機器が音声等の信号を送るためのマイクロホン、増幅回路を含む送話部と、音声等の信号を受け取るスピーカ又はイヤホーン、増幅回路を含む受話部とで構成され、他方の通信機器が同様なマイクロホン、増幅回路を含む送話部と、スピーカ又はイヤホーン、増幅回路を含む受話部とで構成され、これら両通信機器が伝送系を介して接続され双方向通信が可能になっている。
しかし、特許文献1の通信システムによる双方向通信の場合には、両通信機器の送受話部の空間を伝わる音波等を含めた電気的結合によるループが形成されて発振現象やエコー現象が生じることがあった。このとき発振現象は電気的結合のループ利得が1以上の時に生じ、またエコー現象は電気的結合のループ利得が1以下の時に生じるので、送話部と受話部の一体化や同設はもとより、近づけることすらできないのが現状であり、有線、無線のいずれにおいても通信機器のノイズ対策、小型化、軽量化、製造コスト低減等を進める上で大きな問題点となっていた。そこで、出願人はこれらの問題点を解消することが可能な通信システムを提案した(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−300074号公報 特開2005−277792号公報
ところで、前記特許文献2の通信システムでは、静音環境で使用する場合はイヤーマイク内のスピーカの出力は小さくても良好な双方向通信が可能であるが、80〜100dBの騒音環境でイヤーマイクを使用する場合は、スピーカの出力が足りず、出力を上げる必要がある。しかし、外耳道内の空間容積が平均約2ccであるので、出力を上げるとスピーカ音が外耳道内での減衰量をオーバーし飽和状態となり、当然イヤーマイク内のマイクに大きく伝わる。すなわち、特許文献2の通信システムでは、80〜100dBの騒音環境での使用条件としてスピーカの出力を上げて大音量で使用する場合は、エコー・発振を防止することは不可能である。
そこでこの発明は、前記のような従来の問題点を解決し、エコー成分を可及的に低レベルまで抑制して、エコー現象と発振現象をほぼ完全に防止することができ、80〜100dBの騒音環境での安定した双方向通信が可能な発振・エコーキャンセラーシステムを提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、耳の穴に適合する大きさに形成された開口付き挿入部を有する中空状の本体を具え、該本体内に挿入部の開口を経て空気振動として伝わってくる音声信号を取り込むマイクロホンと、1つの放音孔以外は密閉状に形成されて外部送受信機から受信する音声信号を拡声するスピーカとを有し、このスピーカは、放音孔が挿入部の開口を向いて設けられ、前記マイクロホンは、集音孔が挿入部の開口に対して前記スピーカの放音孔より離れた位置に設けられ、前記挿入部を耳の穴に挿入することにより着脱可能に耳に装着されて、外部送受信機と双方向通信を可能とするシステムにおいて、前記マイクロホンは、集音孔がその前方に形成された集・放音道と連通して前記スピーカの放音孔と同じ向きに設けられているとともに、該集音孔と反対側に第2の集音孔が同面積で同個数設けられており、前記スピーカと同様に1つの放音孔以外は密閉状に形成されて外部送受信機から受信する音声信号を拡声する第2のスピーカを有し、この第2のスピーカと前記マイクロホンとの間には前記集・放音道と連通して形成された放音道に通じる空間が設けられ、前記第2のスピーカの放音孔と前記マイクロホンの第2の集音孔は、前記空間に向けて配置され、第2のスピーカの放音孔からの出力が前記空間を伝い第2の集音孔を通じてマイクロホンへ入力され、かつその出力が前記スピーカの出力を100%としたとき、その約10%を同時に出力していることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記スピーカと第2のスピーカは、第2のスピーカがスピーカに対して挿入部と反対側であって、かつ下方に位置するように配置され、それぞれその周囲に設けたエラストマー又は吸音部材によって形成された型孔に嵌入して固定されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記マイクロホンの集・放音道は、前記スピーカで拡声された音声信号の一部分を集音し、かつ第2のスピーカの放音道と連通する分岐音道、集音道、集音ホールを有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記マイクロホンの集音道及び第2のスピーカの放音道は、その周囲に設けた合成樹脂又はエラストマーによって形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかにおいて、防音のために、本体の挿入部の先端にはゴムなど弾性材料からなり、外耳道に密着するイヤーパッドが装着されているとともに、挿入部を含む本体は合成樹脂製となっていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5において、本体の内側層を形成するようにスピーカのある部分にエラストマーが配置され、第2のスピーカのある部分に吸音部材が配置されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかにおいて、本体外面に補聴用マイクロホンを有し、この補聴用マイクロホンとマイクロホンを切り替える制御回路が設けられていることを特徴とする。
この発明は、前記のようであって、マイクロホンは、集音孔がその前方に形成された集・放音道と連通して前記スピーカの放音孔と同じ向きに設けられているとともに、該集音孔と反対側に第2の集音孔が同面積で同個数設けられており、前記スピーカと同様に1つの放音孔以外は密閉状に形成されて外部送受信機から受信する音声信号を拡声する第2のスピーカを有し、この第2のスピーカと前記マイクロホンとの間には前記集・放音道と連通して形成された放音道に通じる空間が設けられ、前記第2のスピーカの放音孔と前記マイクロホンの第2の集音孔は、前記空間に向けて配置され、第2のスピーカの放音孔からの出力が前記空間を伝い第2の集音孔を通じてマイクロホンへ入力され、かつその出力が前記スピーカの出力を100%としたとき、その約10%を同時に出力している構成からなるので、エコー成分を可及的に低レベルまで抑制して、エコー現象と発振現象をほぼ完全に防止することができ、80〜100dBの騒音環境での安定した双方向通信を可能とする発振・エコーキャンセラーシステムを提供することができる。
この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
[実施の形態1]
図1は発振・エコーキャンセラーシステムの一部省略した縦断正面図、図2は図1のA−A線断面図(イヤーパッドは除く)、図3は図1のB−B線断面図、図4は図1のC−C線断面図である。1は発振・エコーキャンセラーシステムで、イヤホーンマイク2をその主要構成部材として具えている。イヤホーンマイク2は、耳の穴に適合する大きさに形成された開口3付き挿入部4を有する中空状の本体5を具えている。本体5は合成樹脂製で、側面から見て円形となった略円筒形状を呈し、挿入部4に開口3を有する以外に開口部がなく、内部は密閉状の中空部となっている。挿入部4は本体5の側面中央部から突出状に設けられ、その先端にはゴムなど弾性材料からなり、どのような大きさの耳の穴(外耳道)でも密着するイヤーパッド6が嵌合により装着されるようになっている。本体5は、イヤーパッド6側の半部5aと反対側の半部5bとが嵌合され、さらに半部5bの外周にはリング部材7が介装されたうえ、後記する電気配線等を収容するチューブ体8の一端拡開部が嵌合により装着され、一体化されている。前記のようにイヤホーンマイク2は、挿入部4を耳の穴に挿入することにより着脱可能に耳に装着される。そして装着されると、イヤーパッド6の外周に多数形成した遮音壁6aが挿入側と反対側にたわんで倒れ込み、その外周縁が外耳道の内壁に接触して外耳道を密閉するようになっている。
本体5内には挿入部4の開口3を経て空気振動として伝わってくる音声信号を取り込むマイクロホンMic1と、1つの放音孔以外は密閉状に形成されて図示しない外部送受信機から受信する音声信号を拡声するスピーカSP1とが挿入部4側の内側層を形成するように配置されたエラストマー9に形成した型孔に嵌入して固定されている。スピーカSP1は、図示しない前記放音孔が挿入部4の開口3を向いて設けられている。また、スピーカSP1の放音孔から開口3のある方向の挿入部4には漏斗状にやや拡開した放音道10が所定長さにわたり形成されている。放音道10の下方の挿入部4には集・放音道11が並行して形成されている。マイクロホンMic1の前面中央に設けた集音孔12の前方には半球状の集音ホール13が形成されているとともに、そのやや上方の前方には集音道14が形成され、該集音道の前端と集・放音道11の後端は分岐音道15によって連通している。16は集・放音道11と分岐音道15を介して連通して形成された放音道である。
前記のようにマイクロホンMic1は、集音孔12が挿入部4の開口3に対してスピーカSP1の前記放音孔より離れた位置に設けられているとともに、開口3から集音する集音道11,13,14,15がスピーカSP1の放音道10から直接集音不可能な材質、例えば本体5の合成樹脂や前記エラストマー9によってその周囲が形成されている。また、マイクロホンMic1の後面やや上方には後記スピーカSP2用の集音孔17が、集音孔12と同面積で同個数(1個)設けられている。
本体5内にはまた、スピーカSP1と同様に1つの放音孔18以外は密閉状に形成された第2のスピーカSP2が図示しない外部送受信機から受信する音声信号を拡声可能に、挿入部4と反対側の内側層を形成するように配置された吸音材であるムンクス(ブリヂストン社製)20に形成した型孔に嵌入して固定されている。ムンクス20とは、MNCS(Micro Network Controlled Structure)の商品名であり、特殊ポリマーとオイルとのコンパウンド技術を用いて、人間の細胞に近い構造を形成した熱可塑性の素材である。このムンクスは、良好な流動性を有して精密成形が可能であり、防振性や、耐薬品性に優れており、非常に安定した材料とされている。スピーカSP2は、スピーカSP1の後端面に前端面が接し、かつスピーカSP1よりもやや下方の位置となって配置されている。スピーカSP2の放音孔18はマイクロホンMic1の放音道16及び集音孔17を向いて設けられている。スピーカSP2の出力は、スピーカSP1の出力を100%としたとき、その約10%を同時に出力するように構成されている。このスピーカSP1(100%)>スピーカSP2(約10%)となる出力制御は図示しない抵抗などの部品からなる出力低減回路を用いることによってなされる。すなわち、前記の場合はスピーカSP2側の出力低減回路に例えば抵抗を入れればよい。22,23はエラストマー9やムンクス20に形成された空間と溝である。
スピーカSP1の放音道10及びマイクロホンMic1の集音道11,13,14,15は、前記のように本体5の合成樹脂やエラストマー9によって形成されているので、スピーカSP1の機械的振動がこれらによって抑制されてマイクロホンMic1に直接伝わらず、必ず放音道10から集・放音道11に入る振動音のみ集音することが可能となっている。図1,2,3において24,25はイヤホーンジャックと電気配線で接続する端子、26は電気配線用孔、27はハンダ部である。
前記実施の形態1の動作について図5及び図1を参照して説明する。送受信に際しては、発振・エコーキャンセラーシステム1のイヤホーンマイク2の挿入部4に装着されたイヤーパッド6を外耳道に挿入して密着させるとともに、図示しないイヤホーンジャックを前記外部送受信機のイヤホーンジャック穴に挿入する。
そして、受信に際しては、外部送受信機から送信された音声信号が、イヤホーンマイク2で受信され、スピーカSP1及びスピーカSP2で拡声される。その拡声された音声信号はその大部分が図1の矢印aで示すように放音道10を通して、一部分が図1の矢印cで示すように放音道16、分岐音道15、集・放音道11を通して開口3から外方向に伝わって外耳道の先にある鼓膜に音声信号として伝達されるが、約10%の回折音がエコー成分入力音として図1の矢印bで示すように集・放音道11、分岐音道15、集音道14、集音ホール13、マイクロホンMic1の集音孔12を通してマイクロホンMic1に入力される。しかし、スピーカSP1の出力と同時にスピーカSP2の出力による約10%の出力音が図1の矢印dで示すように集音孔17を通してマイクロホンMic1に入力されるので、マイクロホンMic1内にあるダイヤフラムへの振動がプラス入力とマイナス入力となり、打ち消される。これによりエコー成分を100%抑制することができる。
送信に際しては、声帯及び無声音より発生する鼓膜方向からの外耳道内の空気振動として伝わってくる音声信号は、集・放音道11から分岐音道15へ、さらにそこから集音道14と放音道16に分岐して入る。集音道14に入った音は集音ホール13からマイクロホンMic1の集音孔12を通してマイクロホンMic1に100%入力される。一方、放音道16に入った音は分散してi)空間22と溝23、ii)放音孔18を通してスピーカSP2の内部、iii)吸音材としてのムンクス20へ約90%入力されて吸収されるとともに、残りの約10%がマイクロホンMic1の集音孔17を通して入る回折音の入力となる。したがって、外耳道内の音声信号は、マイクロホンMic1の集音孔12の入力音100%に対し、マイクロホンMic1の集音孔17の入力音約10%となり、マイクロホンMic1内にあるダイヤフラムへの振動がプラス入力とマイナス入力として打ち消しあっても、約90%は打ち消されずに充分残り、外部送受信機に送信され、伝送系を通して相手側へ送られるため、消えることはない。
前記の送受信に際し、外部から外耳道内に進入する音はイヤーパッド6の遮音壁6aの外周縁が外耳道の内壁に接触して外耳道を密閉することによって防がれ、また本体5(一部はチューブ体8も)とその内部に配設したエラストマー9及びムンクス20によって防がれ、マスキング現象及びマイクロホンMic1への外部音の入力を防止する。
前記のように、(1)スピーカSP1のほかにスピーカSP2が追加されていること、(2)マイクロホンMic1の集音孔17が集音孔12と同面積で同個数(1個)設けられ、指向性マイクロホンMic1になっていること、(3)スピーカSP1の出力を100%としたときの約10%の出力を、同時にスピーカSP2から出力させていること、等からエコー成分は可及的に低レベル(約1%)まで抑制される。そのため、エコーの原因であるループ利得が1以下で生成されたエコー成分を常に減衰させた状況で保持することができ、エコー現象は生じない。このようにエコー成分を可及的に低レベルまで抑制でき、スピーカSP1・SP2の出力を上げてもエコー現象と発振現象をほぼ完全に防止することができるため、80〜100dBの騒音環境でも安定した双方向通信が可能となる。
また、前記のように出力低減回路によりスピーカSP2の出力は、スピーカSP1の出力を100%としたとき、その約10%を同時に出力させるので、発振の原因であるループ利得を1以下に保持することができるので、発振現象も生じない。
[実施の形態2]
図6,7は、実施の形態2を示し、この実施の形態2は発振・エコーキャンセラーシステム1に補聴機能をもたせたものである。実施の形態2においては本体5の半部5bのセンターに補聴用マイクロホンMic2が、その外表面をチューブ体8の表面とほぼ面一となって外部に現出するように両部材5b,8間にわたり形成した型孔31に嵌入固定されている。マイクロホンMic2は外表面中央に集音孔32が設けられているとともに、増幅器33を介して制御回路34に接続され、該制御回路に設けた切替器(図示せず)によってマイクロホンMic1と切り替え可能になっている。そのほかの構成は実施の形態1と同様であるので、同様の部分には同一符号を付して説明は省略することとする。
実施の形態2では制御回路34による切替器の切替えにより、図7に示すように通常はマイクロホンMic2の集音孔32で集音した音声を増幅器33で増幅して、スピーカSP1及びスピーカSP2を駆動し、補聴器として使用する。また、例えば携帯電話35のリング音信号が制御回路34へ入力されるか、あるいは携帯電話35の通話ボタンを押して会話を開始すると、制御回路34の切替器によってマイクロホンMic2の集音孔32で集音した音から外耳道内発声音をマイクロホンMic1で集音した音声に自動的に切り替わり、携帯電話35を通して伝送系へ送信される。また、同時にスピーカSP1及びスピーカSP2の音は携帯電話35のスピーカ音声(通話相手の声など)に切り替わる。これにより携帯電話35による双方向通信が可能となる。
これまでの一般的な補聴器においては、補聴器を装着したマイクロホンに集音される外部音を単純に増幅したスピーカ音を外耳道に入れているため、人間の可聴領域において、ノイズとなる成分が多く含まれる等々の問題が発生していた。そのため、補聴器を装着した場合、現状は電話の受話器を耳に当てては聞き取りにくい状況にあった。しかしながら、実施の形態2では外耳道をイヤーパッド6で密閉するため防音率が高まり、外部の騒音によるマスキングをキャンセルできるため、より可聴領域が広がり、騒音の中でも聞き取り易くなる。したがって、補聴器を装着する難聴者全員が固定電話や子機、及び携帯電話を利用できる利点がある。
また、制御回路34をデジタル化することにより、難聴が進行した場合でも、制御回路34に組み込むソフトによりスピーカSP1及びスピーカSP2の出力音調を調整するだけで対応することもできる。したがって、従来のように耳型を取って作るインナータイプの補聴器のような高価でありながら経年変化によってその都度新しく作り直す必要もなく、現状の10分の1以下の廉価で購入が可能となる。
[使用例]
図8,9,10は実施の形態1の各種の使用例を示すものである。以下、これらを順に説明する。図8は、発振・エコーキャンセラーシステム1とスピーカ41を電気配線42等で接続して、防音・ハウリング防止拡声装置とした例である。43は電源スイッチ、44は音量切替スイッチ、45はマイクロホンジャック、46はマイクロホンプラグである。このような防音・ハウリング防止拡声装置によれば、イヤホーンマイク2の防音性とイヤーパッド6による外耳道の密閉によって外耳道内への外部騒音の進入を防止することができ、約100dBの騒音環境下でも外耳道内の発声音のみを拡声することができる。しかも、外耳道内の発声音を約100dBの大きさまで拡声しても、ハウリングループを形成するその拡声音が外耳道に進入しないので、100%ハウリングを起こさない。つまり、周囲が騒音環境であろうとなかろうと関係なく、明瞭な拡声音として使用できる。
図9は、発振・エコーキャンセラーシステム1と、スピーカ及びマイクロホンが無く、送受信のための機器のみ有した無線機51を電気配線52等で接続して、防音無線機とした例である。53は無線機51の表示部、54は小型電池、55は接続端末である。図に鎖線で示すように従来必要とした大型スピーカとマイクロホンは不要となり、大きさも略半分となるから胸ポケットやクリップ留めで装着が可能である。このような防音無線機によれば、イヤーパッド6で密閉された外耳道内の発声音を、防音されたイヤホーンマイク2内のマイクロホンMic1で集音することで、外部の騒音を約30dB以上カットできるため、イヤホーンマイク2装着者の外耳道における発声音のみを送信し、外部の騒音が相手側に伝わることがない。しかも、外耳道内に防音されたイヤホーンマイク2内のスピーカSP1及びスピーカSP2(1mW)から直接再生された音を聞くことにより、周囲の騒音によるマスキング現象もなく、明瞭に聞き取れる。また、イヤーパッド6で密閉された外耳道内において送受話を行なうため、無線端末にセットされた大型スピーカ(出力0.6W前後)及びマイクロホンは不要となり、本体の小型・軽量な商品化が可能となる。
図10は、発振・エコーキャンセラーシステム1とアプリケーション装置61を電気配線62等で接続して、音声を介した各種エンジンをもった防音・音声装置とした例である。すなわち、電気配線62に接続された増幅器63からスピーカSP1及びスピーカSP2ラインと、マイクロホンMic1ラインが分岐し、スピーカSP1及びスピーカSP2ラインには音声合成エンジン64が接続され、マイクロホンMic1ラインには音声認識エンジン65が接続されている。音声認識エンジン65は音響分析と認識デコーダ(音響モデル・辞書・言語モデル)を有し、その処理結果を音声合成エンジン64、音声認証エンジン66、声紋認証エンジン67、及びアプリケーション装置61へ出力可能になっている。アプリケーション装置61内は外耳道内音声認証、外耳道内声紋認証、合成音声拡声、文字入力、翻訳文字入力、自動通訳、作動入力、からなっている。
音声認証とは音声によって本人確認を行なうバイオメトリクス(生体情報)認証のことで、音声を分析して特徴データを抽出し、個人の音声モデルとして登録しておき、認証時に入力された音声と照合を行うことで、登録者本人の音声か否かを判定する。声紋認証の声紋とは広くは音声認証に含まれるが、人間の声を分析し、特徴を抽出したパターンのことで、個人の識別に利用される。合成音声拡声とは機械的な音声ではなく、例えば声帯をなくした人の場合では、小さく聞き取り難い声を大きく拡声して出すのではなく、その小さな声を人が話しているような非常にリアルな合成音声を作って拡声するものである。文字入力とはPCやPDAのキーボードの操作が不慣れな人や、障害によって使えない人達等が、自分の音声で入力して文字変換させることである。翻訳文字入力とは例えば日本語で話した言葉が、英語などの別言語に変換されて文字入力されることである。自動通訳とは例えば日本語で話した言葉が、他国語に変換されて、拡声されて相手方に聞こえるものである。作動入力とは入力例である通り、音声でできるものは全部音声で作動させるものである。
このような防音・音声装置によれば、音声認識エンジン65の音響分析機能による処理情報量が、ノイズレスとなることで分析スピード及び精度が向上し、当然その先の各エンジンの処理能力も軽減され、回路簡素化とともに省電力となり、低コストで小型化が可能となる。また、音声合成エンジン64による合成音声ガイダンスもクリアに聞き取れ、かつ発振・エコー・マスキングもない。
また、前記の防音・音声装置は、新規の端末投資が不要、言語に依存しない、心理的負担が少ない、複雑なパスワードの忘却やカード紛失の心配不要、冗長なキーボード操作・ボタン操作からの解放、音声認識や音声合成、テレフォニー技術との高い親和性、という特長が期待できるため、テレホンバンキング、受発注システム、入退室管理システム、各種機器の制御システム、電子カルテ管理システム、ICカード・ソリューションなどの技術分野で利用することが可能である。
尚、前記に示した各実施の形態は好ましい一例を挙げたにすぎず、これ以外の実施の形態を排除するものではない。例えば、実施の形態1において、スピーカSP1及びスピーカSP2や、マイクロホンMic1の配置は図示した以外としてもよい。また、集・放音道11に連なる集音道14、集音ホール13、分岐音道15の配置や構成も任意であり、図示した以外としてもよい。また、前記で示した外部送受信機としては、例えば携帯電話やPHSなどの移動体通信機器、通信用端末機や各種通信機などに内蔵または外付けされたイヤホーンマイク専用送受信機があり、これらのいずれかを採用してもよい。実施の形態2において、補聴用マイクロホンMic2の配置は図示した以外としてもよい。
この発明の実施の形態1として示す発振・エコーキャンセラーシステムの一部省略した縦断正面図である。 図1のA−A線断面図(イヤーパッドは除く)である。 図1のB−B線断面図である 図1のC−C線断面図である。 作用説明用の図面である 実施の形態2として示す発振・エコーキャンセラーシステムの一部省略した縦断正面図である。 同上のブロック概要図である 実施の形態1の発振・エコーキャンセラーシステムを防音・ハウリング防止拡声装置として使用した例を示す概要図である。 実施の形態1の発振・エコーキャンセラーシステムを防音無線機として使用した例を示す概要図である。 実施の形態1の発振・エコーキャンセラーシステムを防音・音声装置として使用した例を示す概要図である。
符号の説明
1 発振・エコーキャンセラーシステム 2 イヤホーンマイク
3 開口 4 挿入部
5 本体 6 イヤーパッド
8 チューブ体 9 エラストマー
10,16 放音道 11 集・放音道
12,17,32 集音孔 13 集音ホール
14 集音道 15 分岐音道
18 放音孔 20 ムンクス(吸音部材)
33 増幅器 34 制御回路
35 携帯電話 41 スピーカ
51 無線機 61 アプリケーション装置
Mic1,2 マイクロホン SP1,SP2 スピーカ

Claims (7)

  1. 耳の穴に適合する大きさに形成された開口付き挿入部を有する中空状の本体を具え、該本体内に挿入部の開口を経て空気振動として伝わってくる音声信号を取り込むマイクロホンと、1つの放音孔以外は密閉状に形成されて外部送受信機から受信する音声信号を拡声するスピーカとを有し、このスピーカは、放音孔が挿入部の開口を向いて設けられ、前記マイクロホンは、集音孔が挿入部の開口に対して前記スピーカの放音孔より離れた位置に設けられ、前記挿入部を耳の穴に挿入することにより着脱可能に耳に装着されて、外部送受信機と双方向通信を可能とするシステムにおいて、
    前記マイクロホンは、集音孔がその前方に形成された集・放音道と連通して前記スピーカの放音孔と同じ向きに設けられているとともに、該集音孔と反対側に第2の集音孔が同面積で同個数設けられており、前記スピーカと同様に1つの放音孔以外は密閉状に形成されて外部送受信機から受信する音声信号を拡声する第2のスピーカを有し、この第2のスピーカと前記マイクロホンとの間には前記集・放音道と連通して形成された放音道に通じる空間が設けられ、前記第2のスピーカの放音孔と前記マイクロホンの第2の集音孔は、前記空間に向けて配置され、第2のスピーカの放音孔からの出力が前記空間を伝い第2の集音孔を通じてマイクロホンへ入力され、かつその出力が前記スピーカの出力を100%としたとき、その約10%を同時に出力していることを特徴とする発振・エコーキャンセラーシステム。
  2. 前記スピーカと第2のスピーカは、第2のスピーカがスピーカに対して挿入部と反対側であって、かつ下方に位置するように配置され、それぞれその周囲に設けたエラストマー又は吸音部材によって形成された型孔に嵌入して固定されている請求項1記載の発振・エコーキャンセラーシステム。
  3. 前記マイクロホンの集・放音道は、前記スピーカで拡声された音声信号の一部分を集音し、かつ第2のスピーカの放音道と連通する分岐音道、集音道、集音ホールを有する請求項1又は2記載の発振・エコーキャンセラーシステム。
  4. 前記マイクロホンの集・放音道及び第2のスピーカの放音道は、その周囲に設けた合成樹脂又はエラストマーによって形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の発振・エコーキャンセラーシステム。
  5. 防音のために、本体の挿入部の先端にはゴムなど弾性材料からなり、外耳道に密着するイヤーパッドが装着されているとともに、挿入部を含む本体は合成樹脂製となっている請求項1ないし4のいずれかに記載の発振・エコーキャンセラーシステム。
  6. 本体の内側層を形成するようにスピーカのある部分にエラストマーが配置され、第2のスピーカのある部分に吸音部材が配置されている請求項5に記載の発振・エコーキャンセラーシステム。
  7. 本体外面に補聴用マイクロホンを有し、この補聴用マイクロホンとマイクロホンを切り替える制御回路が設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載の発振・エコーキャンセラーシステム。
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