JP4850345B2 - 液剤、粉末剤からなる2剤型接着剤組成物 - Google Patents

液剤、粉末剤からなる2剤型接着剤組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル系接着剤組成物に関する。さらに詳しくは、混合性に優れた2剤型アクリル系接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アクリル系樹脂は、耐久性がよいこと、環境に優しいことなどから、成形材料や塗料、接着剤などの分野で幅広く利用されている。
【0003】
通常、アクリル系接着剤は、重合開始剤として有機過酸化物、および、これを分解してラジカルを発生させる硬化剤を使用して、アクリル系モノマーやオリゴマーを重合し、硬化することにより接着が行われる。
【0004】
一般に、2剤型アクリル系接着剤とは、接着剤の成分を有機過酸化物を含有する組成物と、有機過酸化物を含有しない組成物からなる2剤に分離したアクリル系接着剤である。これらの2剤は使用直前に混合して被着体に塗布して接着が行われる。
【0005】
このような、従来の2剤型アクリル系接着剤は、炭酸カルシウム、シリカなどの充填材を配合して使用すると、2剤の混合が不十分となり、接着不良が発生しやすい問題がある。
【0006】
そこで、従来は、通常かかる混合不良を回避するために、先に2剤を十分に混合してから、充填材をその後に添加して混合する2段階の混合手段等が採られている。
【0007】
しかしながら、このような2段階の混合手段では、混合に要する時間が長くなるためアクリル系接着剤の特徴である速硬性を生かす接着施工において問題が生じる。例えば、充填材混合時に硬化が始まってしまうため、混合が不十分となり、接着不良の原因となったり、あるいは混合に時間を要するため、接着施工時間が十分にとれないなどの問題がある。
【0008】
そこで、さらに、2剤それぞれに充填材を配合する手法や、一方の剤に超高粘度状態になるまで充填材を配合し、これに他方の剤を添加混合する手法も考えられる。しかしながら、有機過酸化物に作用して、保存安定性を極端に低下させる充填材があり、配合できる充填材の種類は限られる。また、低粘度では充填材が分離してしまう問題点を有し、超高粘度まで充填材を充填すると混合性が悪くなり硬化不良が発生する問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような、従来の2剤型アクリル系接着剤に充填材を配合して使用する場合に、2剤の混合性が不十分で、接着不良が発生しやすい問題や、施工時間が十分に取れない等の問題点を解決した接着剤組成物を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、1,2ポリブタジエン変性ジメタクリレートを含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、パラフィンワックスと、シランカップリング剤と、ハイドロキノンと、クメンハイドロパーオキサイドからなる液状a剤、および粉末状充填材と金属石鹸を含有する粉末状b剤からなる2剤型接着剤組成物であり粉末状b剤が、分散剤を含有する該2剤型接着剤組成物であり、該2剤型接着剤組成物からなる多孔質被着体用接着剤組成物であり、液状a剤と粉末状b剤を混合して、被着体間に挿入、注入、もしくは被着体上に塗布施工することを特徴とする該2剤型接着剤組成物の施工方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、アクリル酸エステル系モノマー、重合開始剤等を含有する液状a剤と、硬化材、充填材等を含有する粉末状b剤からなる2剤型接着剤である。
【0012】
本発明で使用する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとは、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルの総記(以下(メタ)アクレートと記す)である。
【0013】
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロトリエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルオキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成テトラフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキシド変成アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキシ変成アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変成アクリレート、ノニルフェノールポロピレンオキシド変成アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、ポリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(大阪有機化学社製ビスコート#540)、ポリエステル(メタ)アクリレート(東亜合成社製アロニックスM−6100、共栄社化学社製エポキシエステル3000M)、ウレタンアクリレート東亞合成社製アロニックスM−1100)、アクリルニトリルブタジェンメタクリレート(宇部興産社製Hycar VTBNX)等が挙げられる。
【0014】
これらの(メタ)アクレートモノマーは、単独で用いても良いが、硬化物の物性を調整する目的で、2種類以上混合して使用することが特に好ましい。
【0015】
本発明の液状a剤は、1,2ポリブタジエン変性ジメタクリレート(例えば、日本曹達社製TE−2000)を配合することにより特徴ある性質を得ることができる。1,2ポリブタジエン変性ジメタクリレートは金属石鹸の作用により、空気中で硬化する成分である。
【0016】
1,2ポリブタジエン変性ジメタクリレートの配合量は、多いほど接着剤組成物の乾燥、硬化性状が顕著となる。
【0017】
1,2ポリブタジエン変性ジメタクリレートを配合することにより、コンクリートなどの多孔質被着体に対する接着性が向上する。しかしながら、配合量が多すぎると液状a剤の粘度が高くなりすぎる問題が生じるので、通常は液状a剤中の配合量は70重量部を超える量では使用しない。一方、5重量部未満では顕著な乾燥、硬化性状が期待できない。最も好ましい配合量は10〜50重量部である。
【0018】
本発明の液状a剤が含有する他の成分は(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合開始剤である。クメンハイドロパーオキサイドは、本発明の液状a剤が含有する有機過酸化物系重合開始剤である。クメンハイドロパーオキサイドは自然分解速度が非常に小さく、常温では無視できる程度であることから、モノマーと共存可能な重合開始剤である。
【0019】
クメンハイドロパーオキサイドは、配合量が多すぎると液状a剤の保存安定性が低下する。液状a剤中の配合量が10質量部を超えると保存安定性が著しく低下するとともに皮膚刺激性が強くなるので好ましくない。0.1質量部未満では硬化不良が発生することがある。クメンハイドロパーオキサイドの好ましい配合量は、液状a剤100質量部に対して0.1〜10質量部である。
【0020】
本発明の液状a剤の長期の保存安定性を改良する目的で、さらに重合禁止剤を少量添加しても良い。例えば、ハイドロキノン、ピロガロール、モノメチルヒドロキノンなどのフェノール系の安定剤を配合することができる。
【0021】
本発明の液状a剤には、流動性などの改良を目的として、保存安定性を阻害しない程度の充填材、例えば、高純度の超微粉末シリカ、微粉末炭酸カルシウムなどを、必要に応じて添加しても良い。さらに、接着性改良のために、シランカップリング剤などを配合することができる。
【0022】
本発明の液状a剤は、さらにパラフィンワックスを配合することにより、乾燥性を向上させることができる。この効果は、(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合硬化の際の酸素による重合阻害、所謂、嫌気性を緩和する作用に起因すると考えられる。
【0023】
パラフィンワックスが本発明の接着剤の嫌気性を緩和する効果は、金属石鹸による1,2ポリブタジエン変性ジメタクリレートに対する乾燥効果が低速度で、完結に1日程度の時間を要するが完全性があるのに対して、パラフィンワックスの効果は、接着剤組成物中におけるパラフィン皮膜形成による空気(酸素)遮断作用によるため、即効性で、接着剤の硬化時間とほぼ同時期に発現するが皮膜形成のために不完全であり、膜が破れるような変化、例えば、硬化途中で流動するなど、が起こると乾燥効果は維持できなくなる。
このような相互補完のために、本発明の接着剤組成物は、1,2ポリブタジエン変性ジメタクリレートと金属石鹸、パラフィンワックスを併用することが好ましい。
【0024】
パラフィンワックスは接着強度を低下させる作用があるので、配合量は液状a剤100質量部に対して5重量部以下が好ましい。本発明のパラフィンワックスの好ましい配合量は、液状a剤100質量部に対して0.1〜5質量部、特に好ましい配合量は0.5〜2質量部である。
【0025】
本発明の粉末状b剤が含有する充填材は、b剤を粉末状あるいは粒状の形態にするために必須な成分である。本発明の充填材としては有機質、無機質、金属質等の粉体があり、同じく粉末状b剤の成分である金属石鹸と配合しても固結したり、著しく反応したりしない粉末状あるいは粒状の形態の粉体であればよい。粉末状あるいは粒状の形態は特定しにくいが、粒径が小さすぎると粉体としての特徴が失われるので好ましくない、また粒径が大きすぎると同じく粉体あるいは、粒状の特徴が失われるので好ましくない。通常、好ましい粒径は、1ミクロンから10mmの範囲であるといえる。
【0026】
本発明の粉末状b剤が含有する粉末状充填材は、無機質粉末状充填材として、ガラス質バルーン、シラスバルーン、セラミックス粉、セラミックスバルーン、ガラス粉、短繊維状Kガラス、シリカ粉、超微粉末シリカ、アルミナ粉、マイカ粉、セラミックス粉、硅砂、砂、岩石粉、マグネシア粉、炭酸カルシウム粉、炭化珪素粉、窒化硅素粉、窒化アルミ粉、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物粉、フェライト粉、乾燥珪藻土粉、顔料類などが挙げられる。
【0027】
本発明の粉末状b剤が含有する粉末状充填材は、有機質粉末状充填材として、合成高分子粉末、例えば、ポリエチレン粉、ポリプロピレン粉、ゴム粉、プラスチックバルーン、ナイロン粉、プラスチック短繊維粉、シリコーンゴム粉、架橋アクリル粉、架橋ポリスチレン粉、ポリエステル粉、テフロン粉、ポリビニルアルコール粉、ポリビニルブチラール粉、ポリカーボネート粉、エポキシ樹脂粉、硬化エポキシ樹脂粉、などが挙げられる。
【0028】
また、本発明の粉末状b剤が含有する粉末状充填材は、いろいろな金属粉であってもよい。このほか、本発明の粉末状b剤が含有する粉末状充填材としては、金属石鹸に著しく溶解しない充填材であればどのような材料であってもよく良く、パラフィンワックス類、有機天然高分子化合物、例えば、木粉、藁粉、籾殻粉、クルミ殻粉、澱粉、小麦粉、蕎麦殻粉、セルロース粉、密ロウなどの充填材などが挙げられる。
【0029】
また、本発明の充填材には、必要に応じて着色剤、例えば顔料や染料を添加しても良い。
【0030】
本発明の充填材は、目的に応じて、その量を変化させたり、複数の充填材を併用してもよい。
【0031】
本発明の粉末状b剤が含有する他の成分である金属石鹸は、本発明の接着剤組成物の硬化剤成分である。
【0032】
本発明の金属石鹸は、具体的にはオクテン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクテン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オクテン酸ニッケル、オクテン酸銅、オクテン酸バナジウム、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸銅、ナフテン酸バナジウムなどがある。
【0033】
本発明の粉末状b剤が含有する金属石鹸としては、液状の金属石鹸が好ましい。しかし、金属石鹸は、半固体状もしくは固体状の金属石鹸であっても良い。
【0034】
本発明の金属石鹸は、単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いても良い。
【0035】
本発明の金属石鹸は、配合量が少なすぎると硬化不良が発生する場合があり、多すぎると硬化が速すぎて、接着剤の可使時間が充分に取れないなどの弊害が生じるので好ましくない。
したがって、金属石鹸の好ましい配合量は金属石鹸に含まれる金属の量として液状a剤100質量部に対して0.01〜1.0質量部である。
【0036】
本発明の粉末状b剤は、粉末状b剤の性質を改善する目的で分散剤を配合することができる。
【0037】
分散剤としてはアクリルモノマー、可塑剤、不乾性油、鉱油、硬化剤としての機能を示さない金属石鹸、シランカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤などが使用できる。
【0038】
分散剤の具体的な例としては(メタ)アクリルモノマー、ひまし油、機械油、オクテン酸カルシウム、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート(味の素社製AL−M)、イソプロピルトリステアロイルチタネート(味の素社製プレンアクトKR-TTS)に代表されるチタネート系カップリング剤、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート(味の素社製プレンアクトKR-11)、などが挙げられる。
【0039】
本発明で使用できる分散剤は、複数混合して配合しても良い。
【0040】
本発明の粉末状b剤成分として使用する分散剤量の配合量は、金属石鹸と分散剤の合計の量が、充填材の吸油量の80質量%以下であることが好ましく、吸油量の80質量%を超える量では、得られる粉末状b剤が塊状になる場合があるので好ましくない。特に20重量%以下が好ましい。ここで使用する吸油量とは、充填材100gにアマニ油を添加混合し、あるいは混練りして混合物が塊状になるために必要なアマニ油量の最小量を測定して求めたものである。
【0041】
以下に、本発明の接着剤組成物の特徴をさらに明確にするために、作用機構について検討する。これは本発明を完成させる過程で考えた作用機構であり、本発明はこの説明により何ら限定されるものではない。
【0042】
本発明の2剤型接着剤組成物は、上記重合開始剤等の成分を含有する液状a剤と、固化剤等を含有する粉末状b剤からなる接着剤である。
【0043】
一般に、アクリル系接着剤に限らず、エポキシ系やメラミン系など大部分の接着剤に対し、充填材は、より多くの有用な特性を接着剤に付与する目的で配合される。
【0044】
しかしながら、有機過酸化物を含有するアクリル系接着剤に於いては、これらの通常使用される、大部分の充填材が、有機過酸化物の自然分解を促進して組成物をゲル化させたり、分離沈降、浮き上がり分離などを起こし、所謂、保存安定性を著しく劣化させてしまう問題点がある。
【0045】
そこで、このような問題点を解決する手段として、本発明においては2剤型接着剤組成物を重合開始剤を含有する組成物と、硬化剤を含有する組成物の2剤に分離し、主に粉末状b剤組成物に必要な量の充填材を配合することにより、重合開始剤と充填材を配合することにより生じるいろいろな問題点を回避し、接着剤組成物に配合可能な充填材の選択範囲を著しく拡大できるようにしたことが本発明の構成の第一の特徴である。
【0046】
本発明の構成とは逆に、重合開始剤と充填材を混合する構成も可能であるが、製造時および保存、移動時などに過酸化物の分解爆発などの可能性が否定できない問題がある。
【0047】
本発明の第2の重要な特徴は、本発明の接着剤の2剤の混合性が良好であることである。
【0048】
すなわち、充填材が、予め、硬化剤、または硬化剤と希釈剤成分と配合されていることにより、充填材表面がこれらの成分により被覆、あるいは濡らされているためと考えられるが、このように配合された本発明の粉末状b剤は、液状a剤と混合した際、混合性がきわめて良好である。
【0049】
例えば、粉末状b剤を円筒型ペール缶に入れ、これにポリエチレン製容器に入れてある液状a剤を投入して棒などで混合すると、混合初期は粉末状b剤の作用でペール缶壁や底に付着せず混合され、次いで、全体が混合液状化する。
【0050】
このようなきわめて優れた混合性は、実用上きわめて重要である。
【0051】
混合不良は、重合開始剤と硬化剤の2剤の混合不足により発生し、硬化反応の不完全な部分が発生し、接着不良の原因となるため実用上避けなければならない重要な問題点である。
【0052】
また、接着施工性の観点から、2剤混合後の接着剤組成物が、高粘度である必要がある場合には、ポリエチレン製袋に詰めてある粉末状b剤を開封して、内部の粉末状b剤を、取っての付いた板上に載せ、液状a剤を粉末状b剤上に注ぎ、塗布用コテで混合することにより容易に作製可能である。このようにして作製した接着剤組成物は被着体に塗り付けるなどができる。このように、優れた2剤の混合性が得られることは実用上きわめて重要な、本発明の特徴である。
【0053】
更に、本発明の接着剤組成物は重合開始剤(有機過酸化物)を含有する液状a剤の容器として、プラスチック容器、例えば、ポリエチレン製容器やポリプロピレン製容器を使用することができる。また、粉末状b剤はプスチック容器や袋、金属容器、木材容器、紙容器など接着剤組成物により短時間で侵されない材質の容器を使用することができる。
このように、粉末状b剤の容器材質や形状の選択範囲が広いことは実用上きわめて重要な、本発明の特徴である。
【0054】
【実施例】
実施例1
(液状a剤組成物の製造)
アクリル酸エステルモノマーとして、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製ライトエステルHO)200g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(ローム アンド ハース社製QM−657)400g、1,2ポリブタジェン変成ジメタクリレート(日本曹達社製TE−2000)400g、パラフィンワックス(日本精鑞社製)10g、シランカップリング剤(日本ユニカ社製A−174)3g、ハイドロキノン(関東化学社試薬)1.6gを投入して攪拌混合しながら65℃まで加熱してパラフィンワックスを溶解してから25℃に冷却した(以下、このクメンハイドロパーオキサイドのない液を「液状原液」と記す)。次いで、クメンハイドロパーオキサイド(日本油脂社製パークミルH80)30gを投入して攪拌混合して液状a剤組成物を得た。
【0055】
(粉末状b剤組成物の製造)
炭酸カルシウム粉末(東洋粉化工業社製NS400N、吸油量:約23g)2000g、カーボンブラック0.01g、チタンホワイト10gをミキサー中に投入して、予備混合した。次いで、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製ライトエステルHO)50g、オクテン酸コバルト(シントーファインケミカル社製オクトライフCo12)35gの混合液を投入し、よく混合して粉末状b剤組成物を得た。
【0056】
(組成物の保存安定性評価)
液状a剤組成物500gを市販ポリプロピレン製の蜂蜜容器に入れ、40℃のオーブン中で促進貯蔵試験を実施した。その結果、4ケ月放置後もゲル化しなかった。
粉末状b剤組成物1000gをペール缶に入れ、40℃オーブン中で促進貯蔵試験を実施した。その結果、4ケ月放置後も、変化が認められなかった。
【0057】
(組成物の混合性試験)
ペール缶に1000gの粉末状b剤組成物を投入し、次いで、液状a剤組成物を500gを投入して、小型のシャベル状器具(土木用匙)で混合すると、灰色に着色した高粘度の接着剤が容易に得られた。
【0058】
(曲げ試験片の作成と評価)
JIS R 5201の試験法に準じ、4cm×4cm×16cmのJISモルタル(テストピース社製JISモルタル)を2分割して、直径1mmのピアノ線スペーサーを介して接着剤を4cm×4cmのJISモルタルの端面に塗布、接合して、23℃、相対湿度65%、中で1週間養生した。養生後、試験片を4点曲げ試験(図面1)で評価した。その結果、曲げ強さは6.6MPaで、破壊はモードは母材モルタル破壊であった。
【0059】
実施例2
【0060】
(粉末状b剤組成物の製造)
ミキサー中に7号ケイ砂(吸油量:約6g)3300g、オクトライフCo12を35g、ビニルトリエトキシシラン(日本ユニカ社製A−172)5g、カーボンブラック0.01g、ひまし油(関東化学社試薬)10g、ホワイトチタン10gを順次投入し、充分に混合して粉末状b剤組成物を得た。
【0061】
(組成物の保存安定性評価)
実施例1と同様に、粉末状b剤組成物1000gをペール缶に入れ、40℃で促進貯蔵試験を実施した。その結果、4ケ月後に何の変化も認められなかった。
【0062】
(組成物の混合性試験)
ペール缶に660gの粉末状b剤組成物を投入し、次いで、実施例1の液状a剤組成物200gを投入し、小型のシャベル状器具(土木用匙)で混合すると容易に高粘度の灰色に着色した接着剤ができた。
【0063】
(曲げ試験片の作成と評価)
実施例1と同様の条件で試験片を作製し、養生後、曲げ強よさを測定した。その結果、曲げ強さは6.8MPaで、破壊モードは母材モルタル破壊であった。。
【0064】
比較例1
(液状主剤a組成物の製造)
実施例1の液状a剤組成物200gに炭酸カルシウム粉末(東洋粉化工業社製NS400N)400g、カーボンブラック0.002g、ホワイトチタン2gを攪拌混合して高粘度液を得た。
【0065】
(液状主剤b組成物の製造)
実施例1の液状a剤組成物の原液200gに炭酸カルシウム粉末(東洋粉化工業社製NS400N)400g、カーボンブラック0.002g、ホワイトチタン2g、オクテン酸コバルト(シントーファインケミカル社製オクトライフCo12)7g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製ライトエステルHO)10gを攪拌混合して高粘度液を得た。
【0066】
(組成物の保存安定性評価)
液状主剤a組成物600gを市販のポリプロピレン製蜂蜜容器に入れ、40℃のオーブン中で促進貯蔵試験を実施した。その結果、3日後に沈降分離が認められた。さらに、1週間後にはゲル化し、硬化した。
【0067】
液状主剤b組成物600gをペール缶に入れ、40℃オーブン中で促進貯蔵試験を実施した。その結果、1日目から分離が認められ、1週間後には容器下部に塊状に充填材が固まっていた。
【0068】
(組成物の混合性試験)
安定性試験と同様の容器を使用し、液状主剤a組成物を液状主剤b組成物のペール缶に投入したが、液状主剤a組成物の瓶付着量は約30gに達した。液状主剤a組成物と、液状主剤b組成物を投入したペール缶を土木用匙で混合したが、容器壁や底部の混合が困難であった。実施例1と同様の条件で試験片を作製し、養生して、曲げ試験を行った。その結果、曲げ強さは0.7MPa、破壊モードは界面剥離であった。また、残留していたペール缶の接着剤は一部固化していたが、柔らかい部分も各所に見られ、特に、底部や缶壁などは硬化していなかった。
【0069】
比較例2
(液状主剤a組成物の製造)
実施例1の液状主剤a剤組成物100gに7号ケイ砂330g、カーボンブラック0.002g、ホワイトチタン1gを攪拌混合して液状a剤組成物を得た。
【0070】
(液状主剤b組成物の製造)
実施例1の液状主剤a剤組成物の原液100gに7号ケイ砂330g、ホワイトチタン1g、オクテン酸コバルト(シントーファインケミカル社製オクトライフCo12)3.5g、ビニルトリエトキシシラン(日本ユニカ社製A−172)0.5g、カーボンブラック0.001g、ひまし油(関東化学社試薬)1g、ホワイトチタン1gを順次投入し混合して液状主剤bを得た。
【0071】
(組成物の保存安定性評価)
液状主剤a組成物600gをポリプロピレン製蜂蜜容器に入れ、40℃オーブン中で促進貯蔵試験を実施した。その結果、1時間後に沈降分離が認められ、1週間後にゲル硬化した。
液状主剤b組成物600gをペール缶に入れ、40℃オーブン中で促進貯蔵試験を実施した。その結果、1時間目で既に分離が認められ、1日後には下部に塊状に充填材が固まっていた。
【0072】
(組成物の混合性試験)
製造後3日目に安定性試験と同様の容器形態で液状主剤a組成物を液状主剤b組成物のペール缶に投入しようとしたが、液状主剤a組成物の瓶底部に、液状主剤b組成物も底部に充填材の塊ができており、移し換えが不能であり、混合接着試験を中止した。
【0073】
【発明の効果】
本発明により、従来のアクリル系接着剤が有する、2剤の混合性が不十分で、接着不良が発生しやすい問題や、施工時間が十分に取れない等の問題点を解決し、施工性、ならびに信頼性が優れたアクリル系接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の4点曲げ試験法の概略図である。

Claims (4)

  1. 1,2ポリブタジエン変性ジメタクリレートを含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、パラフィンワックスと、シランカップリング剤と、ハイドロキノンと、クメンハイドロパーオキサイドからなる液状a剤、および粉末状充填材と金属石鹸を含有する粉末状b剤からなる2剤型接着剤組成物。
  2. 粉末状b剤が、分散剤を含有する請求項記載の2剤型接着剤組成物。
  3. 請求項1又は2のうちの1項記載の2剤型接着剤組成物からなる多孔質被着体用接着剤組成物。
  4. 液状a剤と粉末状b剤を混合して、被着体間に挿入、注入、もしくは被着体上に塗布施工することを特徴とする請求項1〜のうちの1項記載の2剤型接着剤組成物の施工方法。
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