本発明の実施の形態を図1〜図5を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は塗布物を生産する生産装置の模式図である。
図中、1は生産装置を示す。生産装置1は被塗布物の供給工程2と、塗布工程3と、乾燥工程4と、冷却工程5と、回収工程6とを有している。供給工程2は、被塗布物201が巻き芯に巻かれたロール状被塗布物202を繰り出す繰り出し装置(不図示)を有している。
塗布工程3は、供給工程2から連続搬送されてくる被塗布物201を保持するバックロール301と、バックロール301で保持された連続搬送されてくる被塗布物201に塗布液を塗布する塗布ヘッド302と、塗布時に塗布ヘッド302からの塗布液と被塗布物201との間に形成されるビードを安定化するために塗布ヘッド302の上流側に設けられた減圧室303とを有している。減圧室303はブロワ(不図示)に接続されており内部が減圧状態になる。減圧室303は空気漏れがない状態になっており、且つ、バックアップロールとの間隙も狭く調整されている。
塗布ヘッド302は、塗布ヘッド302と被塗布物201との間隙を調整するため間隙調整手段により移動可能に台座304に支持部材306を介して配設されている。塗布ヘッド302は幅方向に一定の塗布液を供給するためスリット302f(図2を参照)の間隙、塗布ヘッド302のリップ面302h(302h′)(図2を参照)と被塗布物201とのクリアランス(間隙)が幅方向で一定になるように調整されている。
塗布に際しては、塗布する塗布液の性質にあわせて塗布位置Bを決定する。これは各種実験や計算により塗布ヘッド302とバックアップロール301との位置を決めておき、実際にその位置に塗布ヘッドがくるように調整することである。塗布位置Bの調整方法であるが、これについては様々な方法がある。例えば、アクチュエータやボールネジを使用する方法がある。これは塗布ヘッド302の被塗布物201の移動方向と直交する幅手方向に複数配置し、塗布ヘッド302を固定している台座304との関係から塗布ヘッド302自身を押し引きする。又、単に被塗布物201と塗布ヘッド302との間隙を塗布ヘッド302の両端で差を付けるという方法もある。これは、塗布幅手方向で直線的に被塗布物201と塗布ヘッド302の間隙が変化する。更に、バックアップロール301の曲率を利用して被塗布物201と塗布ヘッド302の間隙を変化させる方法も考えられる。即ち、通常塗布幅手方向で水平が出ている塗布ヘッドを傾けたり、一部で塗布ヘッドの角度を変更したりさせる方法も可能である。
塗布位置Bが所定の位置に調整された後は待機位置Aに塗布ヘッド302を移動させておき、塗布液を流入させる準備を行う。待機位置Aで必要とする塗布液吐出量を設定した後、塗布ヘッド302を塗布位置B迄移動し、被塗布物201への先行塗布が行われる。尚、先行塗布とは本発明では膜厚測定装置による膜厚測定が行われる前の塗布を言う。
使用する塗布液の粘度は、塗布性、工程適性等を考慮し、20mPa・sec以下が好ましい。粘度は、東機産業(株)製B型粘度計を使用し、25℃で測定した値を示す。湿潤状態の塗布膜の厚みは、塗布性、工程適性等を考慮し、40μm以下が好ましい。塗布膜の厚みは、送液流量と搬送速度と塗布幅から計算した値を示す。待機位置Aから塗布位置Bへの移動及び塗布位置Bから待機位置Aへの移動は台座304に取り付けられている移動手段、例えばエアシリンダー等の駆動力で移動することで行われる。塗布が行われている間、塗布ヘッド302と被塗布物201との間に形成されるビード(液だまり)を安定させるために、減圧室303を稼動させる。
乾燥工程4は、塗布工程3で被塗布物201の上に塗布された湿潤塗膜を乾燥する乾燥装置401を有している。402は乾燥用気体の導入口を示し、403は排出口を示す。乾燥風の温度及び風量は塗膜の種類及び被塗布物201の種類により適宜決めることが可能となっている。尚、乾燥装置401の最後に塗膜の硬化装置(不図示)を配設しても構わない。
冷却工程5は、乾燥工程4で乾燥された塗膜を有する被塗布物201を、温度が高い状態で巻き取った時に冷却に伴い発生する塗膜を有する被塗布物201の縮み等に伴う故障を防止するための温度を下げる冷却装置501を有している。502は冷却風の入り口を示し、503は冷却風の出口を示す。冷却風の温度及び風量は塗膜の種類及び被塗布物201の種類により適宜決めることが可能となっている。乾燥工程4と冷却工程5との間に塗膜中の溶媒量を調整するための調整工程(不図示)を設けても構わない。
回収工程6は、塗膜が形成された被塗布物201(塗布物)を巻き取る巻き取り装置(不図示)を有している。601は巻き芯に巻き取られ回収されたロール状の塗布物を示す。a〜dは塗膜を有する被塗布物201を搬送する搬送ロールを示す。
7は塗膜が形成された被塗布物201(塗布物)の幅方向の膜厚を測定する膜厚測定装置を示す。膜厚測定装置7による幅方向の測定箇所は、少なくとも10箇所が好ましい。測定装置としては特に限定はなく、例えば反射分光膜厚計等が挙げられ、必要に応じて適宜選択して使用することが可能である。本図は膜厚測定装置7がオンラインで組み込まれた場合を示しているが、オフラインとすることも可能である。又、本図に示すオンラインで組み込まれた膜厚測定機は常に塗布物の塗布幅方向の膜厚分布を監視し、被塗布物の変化による塗布物の膜厚変化や何らかの突発的な運転条件の変化による塗布物の膜厚変化に対応し、ただちに塗布位置Bの制御を実施することも可能である。
本発明は、塗布工程3において予めスリット間隙、被塗布物201とのクリアランス(間隙)等の調整が出来た塗布ヘッド302を使用し塗布された塗布物の塗布幅方向の膜厚分布を、測定装置7により測定し、その測定結果に基づき、塗布ヘッド302の塗布液流出口302g(図2を参照)とバックロール301(図1を参照)で保持された被塗布物201(図1を参照)との間の間隙を調整し、本番塗布を行うことで塗布幅方向の膜厚分布が均一な塗布物を生産する生産方法に関するものである。
尚、本番塗布とは本発明では膜厚測定装置による膜厚測定の結果に基づき塗布ヘッド302の塗布液流出口302g(図2を参照)とバックロール301で保持された被塗布物201との間の間隙を調整して行われる塗布を言う。
図2は図1の塗布工程に使用されている塗布ヘッドの配設状態を示す拡大概略図である。図2(a)は図1の塗布工程に使用されている塗布ヘッドの配設状態を示す拡大概略斜視図である。図2(b)は図2(a)のC−C′に沿った概略断面図である。尚、減圧室は省略してある。
塗布ヘッド302は2つのブロック302aとブロック302bとを有しており、ボルト302cなどで締結することで組み立てられている。302dは塗布ヘッド302の幅方向に設けられたマニホールドと呼ばれる塗布液を一旦溜めるための部分であり、ここには供給管302eから塗布液が送り込まれる。マニホールド302dで塗布幅方向に溜められた塗布液はスリット302fを通り塗布幅方向に均一な厚みとなり、スリット302fの先端の塗布液流出部302gまで送られる。塗布液流出部302gの間隙は、圧力損失、塗布幅方向流量均一性等を考慮し、30μm以上、200μm以下が好ましい。間隙は、塗布ヘッド302の製作時の設定値を示す。
302hは塗布ヘッド302の先端のブロック302a側のリップ面を示し、302h′は塗布ヘッド302の先端のブロック302b側のリップ面を示す。リップ面302hと、リップ面302h′とはバックアップロール301(図1を参照)に保持された被塗布物201(図1を参照)と対向する部分であり、このリップ面302hと、リップ面302h′と被塗布物201(図1を参照)との間に塗布液はビード(液だまり)を形成して塗布が行われる。
302iは塗布ヘッド302の塗布幅方向両端部には液漏れ防止のために設けられたサイドプレートを示す。サイドプレート302iは必要に応じて設けることが可能である。306は塗布ヘッド302を架台305を介して台座304に固定する支持部材を示す。台座304は移動手段により図中の矢印方向に移動可能となっている。
307a(307b)は架台305に取り付けられた間隙調整手段のボールネジを示す。間隙調整手段は、塗布ヘッド302の被塗布物201の移動方向と直交する幅手方向に複数配置されている。ボールネジ307aとボールネジ307bとは別々に駆動源(不図示)を有している。間隙調整手段としては特に限定はなく、例えば各種アクチュエータ、ボールネジ等が挙げられる。本図はボールネジを使用した場合を示している。塗布ヘッド302の被塗布物201(図1を参照)の移動方向と直交する幅手方向に配設する間隙調整手段の位置、数は塗布ヘッド302の大きさ、間隙調整手段の種類に合わせ適宜選択し決めることが可能である。
ボールネジ307a(307b)の回転方向に伴い塗布ヘッド302を押し引きすることが可能となっており、台座304に固定された状態の塗布ヘッド302の塗布液流出口302gとバックロール301(図1を参照)で保持された被塗布物201(図1を参照)との間の間隙を調整するように配設されている。本図に示される塗布ヘッドの配設状態の場合、間隙調整手段により調整される塗布ヘッドの塗布液流出部と被塗布物との最短間隙が、50μm以上、200μm以下に適している。
本図に示す間隙調整手段としてボールネジを使用した場合、塗布ヘッドと被塗布物間の間隙調整方法は、塗布ヘッド302を固定している台座304との関係から塗布ヘッド302自身を押し引きする方法である。他の方法としては、又、単に被塗布物201と塗布ヘッド302との間隙を塗布ヘッド302の両端で差を付けるという方法もある。これは、塗布幅手方向で直線的に被塗布物201と塗布ヘッド302の間隙が変化する。更に、バックアップロール301の曲率を利用して被塗布物201と塗布ヘッド302の間隙を変化させる方法も考えられる。即ち、通常と塗布幅手方向で水平が出ている塗布ヘッドを傾けたり、一部で塗布ヘッドの角度を変更したりさせる方法も可能である。
図3は図2に示す塗布ヘッドの配設状態での塗布ヘッドと被塗布物との間隙を調整する時の塗布ヘッドの移動パターンを示す模式図である。
図3(a)の場合に付き説明する。本図は、間隙調整手段のボールネジ307aを塗布ヘッド302に対して押す方向に回転させ、塗布ヘッド302の塗布液流出口302gの幅方向の図面上の右側とバックロール301との間隙を狭くする場合を示している。
図3(b)の場合に付き説明する。本図は、間隙調整手段のボールネジ307bを塗布ヘッド302に対して押す方向に回転させる、塗布ヘッド302の塗布液流出口302gの幅方向の図面上の左側とバックロール301との間隙を狭くする場合を示している。
図3(c)の場合に付き説明する。本図は、間隙調整手段のボールネジ307aとボールネジ307bとを塗布ヘッド302を押す方向に回転させることで、塗布ヘッド302の塗布液流出口302gが、塗布液流出口302gの幅方向の中心を軸として両側とバックロール301との間隙を、バックロール301の幅方向に対して、湾曲する状態で図面の左側及び右側を狭くする場合を示している。
図3(d)の場合に付き説明する。本図は、間隙調整手段のボールネジ307aとボールネジ307bとを塗布ヘッド302を引く方向に回転させることで、塗布ヘッド302の塗布液流出口302gが、塗布液流出口302gの幅方向の中心を軸として両側とバックロール301との間隙を、バックロール301の幅方向に対して、湾曲する状態で図面の左側及び右側を広くする場合を示している。
図4は先行塗布で得られた塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果に基づき、塗布ヘッドとバックアップロールに保持された被塗布物との間隙の状態を示す模式図である。尚、右側の図は塗布開始時は塗布ヘッドと被塗布物との間隙を均一として行い、塗布を行った結果、塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果を示すグラフである。このグラフで示される結果に従って塗布ヘッドと被塗布物との間隙を塗布開始時の間隙から変更する方法を以下に説明する。縦軸は、各測定点に付き平均膜厚からのズレ%を示し、横軸は幅方向の距離を示す。図中の符号は図3と同義である。
図4(a)の場合に付き説明する。(a)1は塗布開始時の塗布ヘッドと被塗布物との間隙で塗布した塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果を示すグラフである。(a)2は(a)1に示すグラフに従って塗布ヘッドと被塗布物との間隙を調整した状態を示す概略図である。(a)1に示す様に、塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果、図面上右側が平均膜厚からのズレ%がマイナス側に大きい場合を示す。本発明で平均膜厚からのズレ%がマイナス側に大きいとは膜厚が薄い場合を示す。この場合、塗布ヘッド302は図3(a)に示す様に、塗布液流出口302gとバックロール301に保持された被塗布物201との間隙を、バックロール301の図面上右側の幅方向を狭くする((a)2の状態)ことで幅手方向の膜厚分布を均一に修正することが可能となる場合を示している。
図4(b)の場合に付き説明する。(b)1は塗布開始時の塗布ヘッドと被塗布物との間隙で塗布した塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果を示すグラフである。(b)2は(b)1に示すグラフに従って塗布ヘッドと被塗布物との間隙を調整した状態を示す概略図である。(b)1に示す様に、塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果、図面上左側が平均膜厚からのズレ%がマイナス側に大きい(膜厚が薄い)場合を示す。この場合、塗布ヘッド302は図3(b)に示す様に、塗布液流出口302gとバックロール301に保持された被塗布物201との間隙を、バックロール301の図面上左側の幅方向を狭くする((b)2の状態)ことで幅手方向の膜厚分布を均一に修正することが可能となる場合を示している。
図4(c)の場合に付き説明する。(c)1は塗布開始時の塗布ヘッドと被塗布物との間隙で塗布した塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果を示すグラフである。(c)2は(c)1に示すグラフに従って塗布ヘッドと被塗布物との間隙を調整した状態を示す概略図である。(c)1に示す様に、塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果、図面上左側及び右側が平均膜厚からのズレ%がマイナス側に大きい(膜厚が薄い)場合を示す。この場合、塗布ヘッド302は図3(c)に示す様に、塗布液流出口302gとバックロール301に保持された被塗布物201との間隙を、バックロール301の図面上左側及び右側の幅方向を狭くする((c)2の状態)ことで幅手方向の膜厚分布を均一に修正することが可能となる場合を示している。
図4(d)の場合に付き説明する。(d)1は塗布開始時の塗布ヘッドと被塗布物との間隙で塗布した塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果を示すグラフである。(d)2は(d)1に示すグラフに従って塗布ヘッドと被塗布物との間隙を調整した状態を示す概略図である。(d)1に示す様に、塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果、図面上左側及び右側の膜厚が厚い場合を示す。本発明で平均膜厚からのズレ%がプラス側に大きいとは膜厚が厚い場合を示す。この場合、塗布ヘッド302は図3(d)に示す様に、塗布液流出口302gとバックロール301に保持された被塗布物201との間隙を、バックロール301の図面上左側及び右側の幅方向を広くする((d)2の状態)ことで幅手方向の膜厚分布を均一に修正することが可能となる場合を示している。
図4(a)〜図4(d)に示す様に塗布ヘッドの塗布液流出口とバックロールに保持された被塗布物との間隙の調整は、膜厚分布の計測結果に基づき決められるため、塗布ヘッドの移動距離は一義的に決めることは困難である。実際の調整に際しては、膜厚分布の計測結果に対して予め求めた実験結果に基づき第1段階の間隙の調整を行い、膜厚分布の計測結果に基づき再度調整を行う等数段階に分けて間隙の調整を行うことが好ましい。
本発明は塗布ヘッドの塗布液吐出部と被塗布物との間隙は、間隙調整手段により、予め、前記間隙を一定にして塗布を行い、塗布物の幅手方向の膜厚分布の計測の結果に基づき、塗布ヘッドを移動して膜厚の薄い部分の塗布ヘッドの被塗布物との間隙を、平均膜厚からのズレ%がマイナス側に大きい部分の前記塗布ヘッドの前記間隙を、平均膜厚からのズレ%がプラス側に大きい部分の前記塗布ヘッドの前記間隙に対して相対的に狭く調整(平均膜厚からのズレ%がプラス側に大きい部分の前記塗布ヘッドの前記間隙を、平均膜厚からのズレ%がマイナス側に大きい部分の前記塗布ヘッドの前記間隙に対して相対的に広く調整)し、塗布を行う塗布物の生産方法に関するものである。
図1〜図4に示す様に塗布ヘッドに対して上流側を減圧状態に保ちながら連続的に移動する被塗布物に、予め、塗布ヘッドのリップ面とバックロールとの間隙を一定にして塗布を行う。この後、塗布物の幅手方向の乾燥後の膜厚分布の計測の結果に基づき、塗布ヘッドのリップ面とバックロールとの間隙を、間隙調整手段により膜厚分布が厚い領域は広く、膜厚分布が薄い領域は狭くなるように調整して塗布を行うことで次の効果が挙げられる。
1.工程全体で塗膜厚み分布ムラの発生するする全ての原因に対して対応が取れた、塗布幅方向の膜厚分布が均一な塗布物の生産が可能となった。
2.高機能性が要求される光学用フィルムへの対応が可能となった。
3.塗膜厚み分布ムラの発生するする原因として挙げられる塗布ヘッドそのものの設計不良や製作不良、塗布ヘッドの幅方向への塗布液量の不安定供給、ビード(液だまり)の不安定化、被塗布物の搬送不良、塗布時の振動、被塗布物の保持ロールの回転揺れ等に対して個々に厳密な管理を必要とすることがなくなり、作業効率の向上が可能となった。
4.良品率の向上に伴い生産効率の向上が可能となった。
図5は図1〜図3に示す塗布装置を使用した塗布物の生産方法のフローである。
ステップ1では、設計されたスリット間隙、リップ面を有する塗布ヘッドが組み立てられ、台座に載置される。
ステップ2では、塗布する塗布液の性質にあわせて塗布位置を決定する。
ステップ3では、塗布位置が調整された後、台座に取り付けられている移動手段により台座を移動して塗布ヘッドを待機位置に移動する。
ステップ4では、待機位置で塗布ヘッドに対して必要とする塗布液吐出量を設定する。
ステップ5では、塗布液吐出量が決められ、塗布液流出部から塗布液が吐出した状態で塗布位置に台座に取り付けられている移動手段により塗布ヘッドを塗布位置に移動して、被塗布物に先行塗布が開始される。尚、塗布ヘッドの移動に合わせ被塗布物の搬送も開始される。又、減圧室を稼動させる。
ステップ6では、冷却工程の後に配設されている膜厚測定装置により被塗布物の幅方向の膜厚分布が計測される。計測結果から、各測定点に付き平均膜厚からのズレ%が求められる。
ステップ7では、ステップ6で求められた幅方向の膜厚の各測定点に付き平均膜厚からのズレ%に基づき、膜厚分布のズレ%がプラス側又はマイナス側に最大の場所に対して、間隙調整手段により塗布位置で塗布ヘッドのリップ面とバックロールに保持された被塗布物との間隙を調整し、調整後、本番塗布が行われる。尚、調整は数段階に分けて行うことも勿論可能である。本番塗布が続けられている間、本図に示すオンラインで組み込まれた膜厚測定機は常に塗布物の塗布幅方向の膜厚分布を監視し、被塗布物の変化による塗布物の膜厚変化や何らかの突発的な運転条件の変化による塗布物の膜厚変化に対応し、ただちに塗布位置での塗布ヘッドのリップ面とバックロールに保持された被塗布物との間隙の調整を実施することも可能である。
ステップ8では、塗布終了後は、塗布液の供給を止め、架台を待機位置に移動し塗布ヘッドの清掃が行われる。
ステップ9では、製品が回収される。尚、製品は回収された塗布物に対して、膜厚測定機の膜厚測定結果に基づき定められた品質目標の膜厚分布に入る位置が確認され、その品質基準を満たすところから製品となる。
ステップ1〜ステップ9により塗布を行うことで塗布幅方向の膜厚分布が均一な塗布物を生産することが可能となっている。
本発明の塗布方法により作製される塗布物としては特に限定はなく、例えば一般用及び産業用ハロゲン化銀感光材料、感熱材料、熱現像感光材料、フォトレジスト、LCDや有機EL等に代表される電機光学パネルのデバイス用に使用する光学材料が挙げられる。これらの中でも、特に高性能が要求されるLCDや有機EL等に代表される電機光学パネルのデバイス用に使用する機能層を有する光学材料である光学用フィルム、反射防止フィルムを製造するのに使用することが好ましい。
本発明に係る被塗布物に使用する材料としては特に限定はなく、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン社製))、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム等を挙げられる。これらのフィルムは、溶融押し出し法で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。製造する製品に合わせ適宜選択することが可能である。
これらの材料の中で光学材料としては、セルロースエステルが透明性、耐熱性及び液晶とのマッチング性に優れ、固有複屈折率が低く、光弾性係数が小さいので特に好適に用いられる。
例えば、市販品としてはコニカミノルタ製TACフィルム、KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4UE、KC8UE、KC4FR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UX−RHA−N等が好ましく用いられる。
本発明に係るセルロースエステルは、脂肪酸アシル基、置換若しくは無置換の芳香族アシル基の中から少なくとも何れかの構造を含む、単独又は混合酸エステルである。芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環である時、ベンゼン環の置換基の例としてハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基及びアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2及び−O−Si(−R)3が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基である。置換基の数は、1個〜五個であることが好ましく、1個〜4個であることがより好ましく、1個〜3個であることが更に好ましく、1個又は2個であることが最も好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基及びウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基及びカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基が更に好ましく、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基が最も好ましい。
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は、環状構造或いは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル及び2−エチルヘキシルが含まれる。上記アルコキシ基は、環状構造或いは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、更に別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ及びオクチルオキシが含まれる。
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリール基の例には、フェニル及びナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシ及びナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アシル基の例には、ホルミル、アセチル及びベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミド及びベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド及びp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル及びナフチルメチルが含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルが含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニルが含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることが更に好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイル及びN−メチルカルバモイルが含まれる。上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることが更に好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイル及びN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ及びベンゾイルオキシが含まれる。
上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル及びイソプロペニルが含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルキニル基の例には、チエニルが含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。
本発明に係るセルロースエステルにおいて、セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルである時、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で、具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
本発明において前記脂肪族アシル基とは、更に置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては上述の芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環である時、ベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
又、上記セルロースエステルのエステル化された置換基が芳香環である時、芳香族環に置換する置換基Xの数は0又は1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1又は2個である。更に芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、又、互いに連結して縮合多環化合物(例えば、ナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
上記セルロースエステルにおいて置換若しくは無置換の脂肪族アシル基、置換若しくは無置換の芳香族アシル基の少なくとも何れか1種選択された構造を有する構造を有することが本発明に係るセルロースエステルに用いる構造として用いられ、これらは、セルロースの単独又は混合酸エステルでもよく、2種以上のセルロースエステルを混合して用いてもよい。
本発明に係るセルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
混合脂肪酸エステルの置換度として、更に好ましいセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂である。
式(I) 2.0≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
この内特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.0≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦2.0であることが好ましい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することが出来る。
更に、本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは2.0〜5.0であり、更に好ましくは2.5〜5.0であり、更に好ましくは3.0〜5.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することが出来る。
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることが出来る。
本発明に使用するセルロースエステルフィルムには、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来る。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。その他のカルボン酸エステルの例には、トリメチロールプロパントリベンゾエート、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることが出来る。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
本発明に係る塗布液としては、高分子成分を0.5〜20質量%含んでいることが好ましい。高分子成分としては、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、天然ゴム等が挙げられる。
これらの高分子成分を含んだ塗布液としては特に制限はなく、例えば、一般用及び産業用ハロゲン化銀感光材料、感熱材料、熱現像感光材料、フォトレジスト、LCDや有機EL等に代表される電機光学パネルのデバイス用の塗布液が挙げられる。電気光学パネル用のデバイスとしてはCRTや液晶表示装置の視認性を改善するために、表示装置前面に張り付ける反射防止層が形成された光学材料、光学補償フィルム、帯電防止フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。ところで、テレビのような大画面の表示装置では、直接、物が接触することがあり傷が付き易い。そこで、通常は傷つき防止のためにクリアハードコート層を支持体上に形成した光学材料、又は反射防止層が形成された光学材料が用いられる。以下、クリアハードコート層を支持体上に形成した光学用フィルム、又は反射防止層が形成された反射防止フィルムに付き説明する。
クリアハードコート層を有した光学用フィルムに付き説明する。クリアハードコート層としては活性線硬化樹脂層が好ましく用いられる。活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層を言う。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用出来る。又、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤又光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が1つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。又不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
又、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これらの活性線硬化樹脂層はグラビアコータ、ディップコータ、リバースコータ、ワイヤーバーコータ、ダイコータ、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は好ましくは、5〜150mJ/cm2であり、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
又、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
又、紫外線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコーン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1,000〜100,000、好ましくは、2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
シリコーン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。又、ドライ膜厚としては0.1〜20μm、好ましくは1〜20μmである。特に好ましくは8〜20μmである。
又、鉛筆硬度は、2H〜8Hのハードコート層であることが好ましい。特に好ましくは3H〜6Hであることが好ましい。鉛筆硬度は、作製したハードコートフィルム試料を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K−5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、1kgの加重にて各硬度の鉛筆で引っ掻きを10回繰り返し、傷が全く認められない引っ掻きの本数を表したものである。
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中又は後に、紫外線を照射するのがよく、前記の5〜150mJ/cm2という活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜5分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率又は作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。又、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
反射防止層を有した反射防止フィルムに付き説明する。本発明の反射防止フィルムに用いられる反射防止層は低屈折率層のみの単層構成でも、又多層の屈折率層でもどちらでも構成することが出来る。通常、反射防止層は被塗布物物上のハードコート層(クリアハードコート層或いは防眩層)の表面上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層出来る。反射防止層は、被塗布物よりも屈折率の高い高屈折率層と、被塗布物よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成したり、特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、被塗布物側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(被塗布物又はハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましい。ハードコート層が高屈折率層を兼ねてもよい。
本発明に係わる反射防止層の好ましい層構成の例を下記に示す。ここで/は積層配置されていることを示している。
被塗布物/ハードコート層/低屈折率層
被塗布物/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
被塗布物/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
被塗布物/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
被塗布物/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
被塗布物/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
〈バックコート層〉
反射防止フィルムを作製する被塗布物のハードコート層を設けた側と反対側の面にはバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、ハードコート層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることが出来る。尚、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものがヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもでアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられる反射防止フィルムは、活性エネルギー線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層は、具体的にはセルロースエステルフィルムを溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/又は膨潤させる溶媒の混合物の他更に溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合いや樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/又は膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒及び/又は膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。この様な混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解又は膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム等がある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノール或いは炭化水素類(トルエン、キシレン)等がある。
これらの塗布組成物をグラビアコータ、ディップコータ、リバースコータ、ワイヤーバーコータ、ダイコータ、或いはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体或いは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/又はアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマー等が市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することも出来る。
特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
バックコート層を塗設する順番はセルロースエステルフィルムのハードコート層を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。或いは2回以上に分けてバックコート層を塗布することも出来る。
〈低屈折率層〉
低屈折率層では以下の中空シリカ系微粒子が好適に用いられる。
(中空シリカ系微粒子)
中空微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、又は(II)内部に空洞を有し、且つ内容物が溶媒、気体又は多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層には(I)複合粒子又は(II)空洞粒子の何れかが含まれていればよく、又双方が含まれていてもよい。
尚、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体又は多孔質物質等の内容物で充填されている。この様な中空球状微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される中空球状微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの中空球状微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さ又は空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマー等が容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。又、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。又空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、又厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
複合粒子の被覆層又は空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。又、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。この内、特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種又は2種以上を挙げることが出来る。この様な多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表した時のモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。又、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、更に屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
この様な多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。尚、この様な多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。又、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。又多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例表した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
この様な中空球状微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。
この様にして得られた中空微粒子の屈折率は、内部が空洞であるので屈折率が低く、それを用いた本発明に用いられる低屈折率層の屈折率は、1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.44であることが更に好ましい。
外殻層を有し、内部が多孔質又は空洞である中空シリカ系微粒子の低屈折率層塗布液中の含量(質量)は、10〜80質量%が好ましく、更に好ましくは20〜60質量%である。
(テトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解物)
低屈折率層には、ゾルゲル素材としてテトラアルコキシシラン化合物又はその加水分解物が含有されることが好ましい。
低屈折率層用の素材として、前記無機珪素酸化物以外に有機基を有する珪素酸化物を用いることも好ましい。これらは一般にゾルゲル素材と呼ばれるが、金属アルコレート、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることが出来る。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。
低屈折率層は前記珪素酸化物と下記シランカップリング剤を含むことが好ましい。具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
又、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製KBM−303、KBM−403、KBM−402、KBM−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−802、KBM−803等が挙げられる。
これらシランカップリング剤は予め必要量の水で加水分解されていることが好ましい。シランカップリング剤が加水分解されていると、前述の珪素酸化物粒子及び有機基を有する珪素酸化物の表面が反応し易く、より強固な膜が形成される。又、加水分解されたシランカップリング剤を予め塗布液中に加えてもよい。
又、低屈折率層は、5〜50質量%の量のポリマーを含むことも出来る。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持出来るように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、或いは(3)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。
バインダーポリマーは、飽和炭化水素又はポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。
又、本発明に用いられる低屈折率層が、熱又は電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」とも言う)の架橋からなる低屈折率層であってもよい。
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の相み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
低屈折率層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号)により、塗布により形成することが出来る。又、2以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2,761,791号、同2,941,898号、同3,508,947号、同3,526,528号及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
本発明の低屈折率層の膜厚は50〜200nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。
〈高屈折率層及び中屈折率層〉
本発明においては、反射率の低減のために透明支持体と低屈折率層との間に、高屈折率層を設けることが好ましい。又、該透明支持体と高屈折率層との間に中屈折率層を設けることは、反射率の低減のために更に好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、透明支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
中、高屈折率層は下記一般式(1)で表される有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物を含有する塗布液を塗布し乾燥させて形成させた屈折率1.55〜2.5の層であることが好ましい。
一般式(1) Ti(OR1)4
式中、R1としては炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基がよいが、好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。又、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物は、アルコキシド基が加水分解を受けて−Ti−O−Ti−のように反応して架橋構造を作り、硬化した層を形成する。
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーとしては、Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(O−n−C3H7)4、Ti(O−i−C3H7)4、Ti(O−n−C4H9)4、Ti(O−n−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−i−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−n−C4H9)4の2〜10量体等が好ましい例として挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて用いることが出来る。中でもTi(O−n−C3H7)4、Ti(O−i−C3H7)4、Ti(O−n−C4H9)4、Ti(O−n−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−n−C4H9)4の2〜10量体が特に好ましい。
有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物は、塗布液に含まれる固形分中の50.0質量%〜98.0質量%を占めていることが望ましい。固形分比率は50質量%〜90質量%がより好ましく、55質量%〜90質量%が更に好ましい。この他、塗布組成物には有機チタン化合物のポリマー(予め有機チタン化合物の加水分解を行って架橋したもの)或いは酸化チタン微粒子を添加することも好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層は、微粒子として金属酸化物粒子を含み、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。
上記塗布液調製法で加水分解/重合した有機チタン化合物と金属酸化物粒子を組み合わせると、金属酸化物粒子と加水分解/重合した有機チタン化合物とが強固に接着し、粒子の持つ硬さと均一膜の柔軟性を兼ね備えた強い塗膜を得ることが出来る。
高屈折率層及び中屈折率層に用いる金属酸化物粒子は、屈折率が1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることが更に好ましい。金属酸化物粒子の1次粒子の質量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることが更に好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。層中での金属酸化物粒子の質量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが更に好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。金属酸化物粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることが更に好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
金属酸化物粒子の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも1種の元素を有する金属酸化物であり、具体的には二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化ジルコニウムが挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。金属酸化物粒子は、これらの金属の酸化物を主成分とし、更に他の元素を含むことが出来る。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びS等が挙げられる。
金属酸化物粒子は表面処理されていることが好ましい。表面処理は、無機化合物又は有機化合物を用いて実施することが出来る。表面処理に用いる無機化合物の例としては、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム及び酸化鉄が挙げられる。中でもアルミナ及びシリカが好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例としては、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が挙げられる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層中の金属酸化物粒子の割合は、5〜65体積%であることが好ましく、より好ましくは10〜60体積%であり、更に好ましくは20〜55体積%である。
上記金属酸化物粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層及び中屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
又金属酸化物粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することが出来る。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。又、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
高屈折率層及び中屈折率層は、架橋構造を有するポリマー(以下、架橋ポリマーとも言う)をバインダーポリマーとして用いることが好ましい。架橋ポリマーの例として、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。中でも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物が更に好ましく、ポリオレフィンの架橋物が最も好ましい。
モノマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが最も好ましいが、その例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。アニオン性基を有するモノマー、及びアミノ基又は4級アンモニウム基を有するモノマーは市販のモノマーを用いてもよい。好ましく用いられる市販のアニオン性基を有するモノマーとしては、KAYAMARPM−21、PM−2(日本化薬(株)製)、AntoxMS−60、MS−2N、MS−NH4(日本乳化剤(株)製)、アロニックスM−5000、M−6000、M−8000シリーズ(東亞合成化学工業(株)製)、ビスコート#2000シリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、ニューフロンティアGX−8289(第一工業製薬(株)製)、NKエステルCB−1、A−SA(新中村化学工業(株)製)、AR−100、MR−100、MR−200(第八化学工業(株)製)等が挙げられる。又、好ましく用いられる市販のアミノ基又は4級アンモニウム基を有するモノマーとしてはDMAA(大阪有機化学工業(株)製)、DMAEA,DMAPAA(興人(株)製)、ブレンマーQA(日本油脂(株)製)、ニューフロンティアC−1615(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
ポリマーの重合反応は、光重合反応又は熱重合反応を用いることが出来る。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、ハードコート層のバインダーポリマーを形成するために用いられる熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。
反射防止層の各層又はその塗布液には、前述した成分(金属酸化物粒子、ポリマー、分散媒体、重合開始剤、重合促進剤)以外に、重合禁止剤、レベリング剤、増粘剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、帯電防止剤や接着付与剤を添加してもよい。
中〜高屈折率層及び低屈折率層の塗設後、金属アルコキシドを含む組成物の加水分解又は硬化を促進するため、活性エネルギー線を照射することが好ましい。より好ましくは、各層を塗設するごとに活性エネルギー線を照射することである。
活性エネルギー線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性させるエネルギー源であれば制限なく使用出来るが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。又、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2〜10,000mJ/cm2が好ましく、更に好ましくは、100mJ/cm2〜2,000mJ/cm2であり、特に好ましくは、400mJ/cm2〜2,000mJ/cm2である。
以下、実施例を挙げて本発明の具体的な効果を示すが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
実施例1
以下に示す方法によりクリアハードコート層付きの光学用フィルムを生産した。
《セルロースエステルフィルムの作製》
下記のように各種添加液、各種ドープを調製して、樹脂フィルム基材であるセルロースエステルフィルムを作製した。
(セルロースエステルフィルムの作製)
〈酸化珪素分散液Aの調製〉
アエロジルR972V (日本アエロジル(株)製) 1kg
エタノール 9kg
以上をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行い、酸化珪素分散液Aを調製した。
〈添加液Bの調製〉
セルローストリアセテート(アセチル基の置換度2.88) 6kg
メチレンクロライド 140kg
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、濾過した。これに10kgの上記酸化珪素分散液Aを撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、濾過し、添加液Bを調製した。
〈ドープCの調製〉
メチレンクロライド 440kg
エタノール 35kg
セルローストリアセテート(アセチル基の置換度2.88) 100kg
トリフェニルホスフェート 10kg
エチルフタリルエチルグリコレート 2kg
チヌビン326(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.3kg
チヌビン109(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.5kg
チヌビン171(チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.5kg
上記の溶剤を密閉容器に投入し、攪拌しながら残りの素材を投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、混合した。ドープを流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。更に上記溶液に添加液Bを3kg添加し、インラインミキサー(東レ(株)製静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で混合し、濾過し、ドープCを調製した。
ドープCを濾過した後、ベルト流延装置を用い、35℃のドープを35℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。その後、支持体上で乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からフィルムを剥離した。この時のフィルムの残留溶媒量は80%であった。ステンレスバンド支持体から剥離した後、80℃に維持された乾燥ゾーンで1分間乾燥させた後、2軸延伸テンターを用いて、残留溶媒量3質量%〜10質量%である時に100℃の雰囲気下で長手方向に0.98倍、幅方向に1.1倍に延伸し、幅把持を解放して、多数のロールで搬送させながら125℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施して、幅2000mm、長さ2500m、膜厚80μmの長尺広幅のセルロースエステルフィルムを作製した。
《クリアハードコート層形成用塗布液の調製》
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100質量部
(2量体及び3量体以上の成分を含む)
光反応開始剤(イルガキュア184 チバスペシャルティケミカルズ社製) 4質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 75質量部
これらの素材を混合しクリアハードコート層形成用塗布液とした。粘度は5.8mPa・secであった。粘度は、東機産業(株)製B型粘度計を使用し、25℃で測定した値を示す。
《クリアハードコート層の形成》
準備したセルロースエステルフィルム2500mを使用し、一方の面に調製したクリアハードコート層形成用塗布液を図1に示す生産装置で図2に示す塗布ヘッドを使用し、図5に示すフローに従って、先行塗布、本番塗布を経てクリアハードコート層を有する光学用フィルムを作製し試料No.101とした。尚、塗布条件、搬送条件、硬化条件を以下に示す。
先行塗布条件
塗布ヘッドとしては、塗布液流出部の間隙が150μm、塗布液吐出口の幅が1500mmを使用し、塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの間隙80μm、減圧室の減圧度1000Pa、セルロースエステルフィルム搬送速度50m/min、湿潤状態の塗布液膜厚10μmで行い、乾燥温度120℃で1分間乾燥した後、紫外線照射強度150mJ/cm2で硬化処理を行った。
膜厚測定装置による膜厚測定
硬化処理後、冷却工程で室温まで下げられたクリアハードコート層が形成されたセルロースエステルフィルムのクリアハードコート層の幅方向の膜厚を膜厚測定装置により膜厚測定を行ない図6に示す幅手方向の各測定点に付き平均膜厚からのズレ(%)の結果を得た。尚、幅方向の測定位置はセルロースエステルフィルムの搬送方向の左側を基準とした。膜厚測定装置としては、ミツトヨ(株)製サーフテストSV−3100を使用した。幅手方向の各測定点に付き平均膜厚からのズレ(%)は以下の方法で求めた。
幅手方向の各測定点に付き平均からのズレ(%)の求め方
塗布幅手方向に1cm間隔で130点(塗布幅両端10cmは計測しない)、セルロースエステルフィルムの搬送方向に15cm間隔で3点、計390点膜厚を測定し、幅手方向の130点に付き搬送方向の3点測定値の平均を算出し、幅手方向の130点に付き平均からのズレをパーセントで下式より求めた。
幅手方向の各測定点に付き平均からのズレ(%)=(点Xの値−平均値)/平均値×100
図6の結果より、幅方向の膜厚分布は図4(a)の(a)1に示すグラフの様に右側のズレ%がマイナス側に大きく(膜厚が薄くなっている)なっている結果となった。図6の結果より、膜厚分布のズレ%の最大は3.2%であった。
本番塗布条件
膜厚測定の結果に基づいて、膜厚分布の最大のズレ%の場所に対して塗布ヘッドの塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの最短間隙を架台に取り付けられている間隙調整手段であるボールネジにより、塗布液流出口とバックロールに保持された被塗布物との図6の右側の幅方向の間隙を65μmと狭くなる様に調整し、図4(a)の(a)2に示す状態とした。尚、左側の塗布ヘッドの塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの間隙は先行塗布条件で設定した距離とした。その他の条件は先行塗布条件と同じとした。最短間隙は、ミツトヨ(株)製デジマチックインジケータにより測定した値を示す。
比較試料として試料No.101と同じセルロースエステルフィルムを使用し、同じクリアハードコート層形成用塗布液を試料No.101を作製した先行塗布条件で塗布しクリアハードコート層が形成されたセルロースエステルフィルムを作製し試料No.102とした。
評価
作製した試料No.101、102に付き、膜厚分布のズレ度合いR(%)を以下に示す方法で求めた結果を表1に示す。
膜厚分布のズレ度合いR(%)の求め方
塗布幅手方向に1cm間隔で130点(塗布幅両端10cmは計測しない)、セルロースエステルフィルムの搬送方向に15cm間隔で3点、計390点膜厚を測定し、幅手方向の130点に付き搬送方向の3点測定値の平均を算出し、幅手方向の130点に付き平均からのズレをパーセントで式1)で求めた。
式1) 幅手方向の各測定点に付き平均からのズレ(%)=(点Xの値−平均値)/平均値×100
式1)から平均からのズレ(%)が高い10点の測定点の膜厚の平均値と平均からのズレ(%)が低い10点の測定点の膜厚の平均値を求め、式2)から膜厚分布のズレ度合いRを算出した。
式2) 膜厚分布のズレ度合いR=(ズレ(%)の値が高い10点の平均値)−(ズレ(%)の値が低い10点の平均値)
本発明の有効性が確認された。
実施例2
以下に示す方法により反射防止フィルムを生産した。
《セルロースエステルフィルムの作製》
実施例1と同じ材料を使用し、同じ方法でセルロースエステルフィルムを作製した。
《クリアハードコート層付きセルロースエステルフィルムの作製》
実施例1と同じクリアハードコート層形成用塗布液を使用し、実施例1の試料No.101と同じ方法、同じ条件でクリアハードコート層付きセルロースエステルフィルムの作製した。
《中屈折率層形成用塗布液の調整》
チタンテトラブトキシド 9.5g
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.9g
カチオン性硬化樹脂(KR−566 旭電化工業社製) 0.9g
2−プロパノール 75ml
ジメチルホルムアミド 8ml
10%塩酸水溶液 2.6ml
これらの素材を混合し中屈折率層形成用塗布液とした。
粘度は2.1mPa・secであった。粘度の測定は実施例1と同じ方法で測定した。
《中屈折率層の形成》
準備したクリアハードコート層付きセルロースエステルフィルムを使用し、クリアハードコート層の上に調製した中屈折率層形成用塗布液を図1に示す生産装置で図2に示す塗布ヘッドを使用し、図5に示すフローに従って、先行塗布、本番塗布を経て中屈折率層を有する反射防止フィルムを作製し試料No.201とした。尚、塗布条件、搬送条件、硬化条件を以下に示す。
先行塗布条件
塗布ヘッドとしては製造ロットが異なる実施例1と同じ方式の塗布ヘッドを使用した。塗布ヘッドの塗布液流出部の間隙が150μm、塗布液吐出口の幅が1500mmを使用し、塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの幅方向の間隙100μm、減圧室の減圧度1500Pa、セルロースエステルフィルム搬送速度50m/min、湿潤状態の塗布液膜厚10μmで行い、乾燥温度120℃で1分間乾燥した後、紫外線照射強度300mJ/cm2で硬化処理を行った。
膜厚測定装置による膜厚測定
硬化処理後、冷却工程で室温まで下げられた中屈折率層が形成されたセルロースエステルフィルムの中屈折率層の幅方向の膜厚を膜厚測定装置により膜厚測定を行ない実施例1と同じ方法により図7に示す幅手方向の各測定点に付き平均膜厚からのズレ(%)の結果を得た。尚、幅方向の測定位置はセルロースエステルフィルムの搬送方向の左側を基準とした。膜厚測定装置としては大塚電子(株)製分光膜厚計を使用した。
図7の結果より、幅方向の膜厚分布は図4(b)の(b)1に示すグラフの様に左側のズレ%がマイナス側に大きく(膜厚が薄くなっている)なっている結果となった。図7の結果より、膜厚分布のズレ%の最大は3.5%であった。
本番塗布条件
膜厚測定の結果に基づいて、膜厚分布の最大のズレ%の場所に対して塗布ヘッドの塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの最短間隙を架台に取り付けられている間隙調整手段であるボールネジにより、塗布液流出口とバックロールに保持された被塗布物との図7の左側の幅方向の間隙を50μmと狭くなる様に調整し、図4(b)の(b)2に示す状態とした。尚、右側の塗布ヘッドの塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの間隙は先行塗布条件で設定した距離とした。その他の条件は先行塗布条件と同じとした。最短間隙は、実施例1と同じ方法により測定した値を示す。
比較試料として試料No.201と同じクリアハードコート層付きセルロースエステルフィルムを使用し、同じ中屈折率層形成用塗布液を試料No.201を作製した先行塗布条件で塗布し中屈折率層が形成された反射防止フィルムを作製し試料No.202とした。
評価
作製した試料No.201、202に付き、膜厚分布のズレ度合いR(%)を実施例1と同じ方法で求めた結果を表2に示す。
本発明の有効性が確認された。
実施例3
以下に示す方法によりクリアハードコート層付きの光学用フィルムを生産した。
《セルロースエステルフィルムの作製》
実施例1と同じセルロースエステルフィルムを作製した。
《クリアハードコート層形成用塗布液の調製》
実施例1と同じクリアハードコート層形成用塗布液を調製した。
《クリアハードコート層の形成》
準備したセルロースエステルフィルム2500mを使用し、一方の面に調製したクリアハードコート層形成用塗布液を図1に示す生産装置で図2に示す塗布ヘッドを使用し、図5に示すフローに従って、先行塗布、本番塗布を経てクリアハードコート層を有する光学用フィルムを作製し試料No.301とした。尚、塗布条件、搬送条件、硬化条件を以下に示す。
先行塗布条件
塗布ヘッドとして、製造ロットが異なる実施例1同じ方式の塗布ヘッドを使用した以外は全て実施例1と同じ条件で塗布を行った。
膜厚測定装置による膜厚測定
硬化処理後、冷却工程で室温まで下げられたクリアハードコート層が形成されたセルロースエステルフィルムのクリアハードコート層の幅方向の膜厚を実施例1と同じ膜厚測定装置により膜厚測定を行ない図8に示す幅手方向の各測定点に付き平均膜厚からのズレ(%)の結果を得た。尚、幅方向の測定位置はセルロースエステルフィルムの搬送方向の左側を基準とした。幅手方向の各測定点に付き平均膜厚からのズレ(%)は実施例1と同じ方法により求めた。
図8の結果より、幅方向の膜厚分布は図4(c)の(c)1に示すグラフの様に左側及び右側のズレ%がマイナス側に大きく(膜厚が薄くなっている)なっている結果となった。図8の結果より、左側の膜厚分布のズレ%の最大は3.1%であった。又、右側の膜厚分布のズレ%の最大は2.8%であった。
本番塗布条件
膜厚測定の結果に基づいて、左側及び右側の膜厚分布の最大のズレ%の場所に対して、塗布ヘッドの塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの最短間隙を架台に取り付けられている間隙調整手段であるボールネジにより、塗布液流出口とバックロールに保持された被塗布物との図8の左側の幅方向の間隙を55μm、右側の間隙を65μmと狭くなる様に調整し、図4(c)の(c)2に示す状態とした。尚、塗布ヘッドの中央部の塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの間隙は先行塗布条件で設定した距離とした。その他の条件は先行塗布条件と同じとした。最短間隙は、実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
比較試料として試料No.301と同じセルロースエステルフィルムを使用し、同じクリアハードコート層形成用塗布液を試料No.301を作製した先行塗布条件で塗布しクリアハードコート層が形成されたセルロースエステルフィルムを作製し試料No.302とした。
評価
作製した試料No.301、302に付き、実施例1と同じ方法で膜厚分布のズレ度合いR(%)を求めた結果を表3に示す。
本発明の有効性が確認された。
実施例4
以下に示す方法によりクリアハードコート層付きの光学用フィルムを生産した。
《セルロースエステルフィルムの作製》
実施例1と同じセルロースエステルフィルムを作製した。
《クリアハードコート層形成用塗布液の調製》
実施例1と同じクリアハードコート層形成用塗布液を調製した。
《クリアハードコート層の形成》
準備したセルロースエステルフィルム2500mを使用し、一方の面に調製したクリアハードコート層形成用塗布液を図1に示す生産装置で図2に示す塗布ヘッドを使用し、図5に示すフローに従って、先行塗布、本番塗布を経てクリアハードコート層を有する光学用フィルムを作製し試料No.401とした。尚、塗布条件、搬送条件、硬化条件を以下に示す。
先行塗布条件
塗布ヘッドとして、製造ロットが異なる実施例1と同じ方式の塗布ヘッドを使用した以外は全て実施例1と同じ条件で塗布を行った。
膜厚測定装置による膜厚測定
硬化処理後、冷却工程で室温まで下げられたクリアハードコート層が形成されたセルロースエステルフィルムのクリアハードコート層の幅方向の膜厚を実施例1と同じ膜厚測定装置により膜厚測定を行ない図9に示す幅手方向の各測定点に付き平均膜厚からのズレ(%)の結果を得た。尚、幅方向の測定位置はセルロースエステルフィルムの搬送方向の左側を基準とした。幅手方向の各測定点に付き平均膜厚からのズレ(%)は実施例1と同じ方法により求めた。
図9の結果より、幅方向の膜厚は図4(d)の(d)1に示すグラフの様に左側及び右側の膜厚分布のズレ%がプラス側に大きく(膜厚が厚くなっている)なっている結果となった。図9の結果より、左側の膜厚分布のズレ%の最大は0.9%であった。又、右側の膜厚分布のズレ%の最大は3.3%であった。
本番塗布条件
膜厚測定の結果に基づいて、左側及び右側の膜厚分布の最大のズレ%の場所に対して塗布ヘッドの塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの最短間隙を架台に取り付けられている間隙調整手段であるボールネジにより、塗布液流出口とバックロールに保持された被塗布物との図9の左側の幅方向の間隙を85μm、右側の間隙を95μmとなる様に調整し、図4(d)の(d)2に示す状態とした。尚、塗布ヘッドの中央部の塗布液流出部とセルロースエステルフィルムの間隙は先行塗布条件で設定した距離とした。その他の条件は先行塗布条件と同じとした。最短間隙は、実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
比較試料として試料No.401と同じセルロースエステルフィルムを使用し、同じクリアハードコート層形成用塗布液を試料No.401を作製した先行塗布条件で塗布しクリアハードコート層が形成されたセルロースエステルフィルムを作製し試料No.402とした。
評価
作製した試料No.401、402に付き、実施例1と同じ方法で膜厚分布のズレ度合いR(%)を求めた結果を表4に示す。
本発明の有効性が確認された。