特許文献1や特許文献2に示されているように、バスケットの内周に形成されたケーキをケーキ掻取装置により掻き取って、掻き取ったケーキをバスケット外に排出する方法を採用した遠心分離機においては、バスケット内にケーキ掻取装置を挿入する必要があるため、構造が複雑になるのを避けられなかった。
遠心分離機においては、バスケット内に高圧の空気を供給してバスケット内の圧力を高め、脱液を行う際にケーキ中を通して高圧空気を流すようにしておくと、濾過速度を高めることができ、固液分離処理に要する時間を短縮することができる。バスケット内の圧力を高めるためには、バスケットの開口部を閉じてバスケット内を密封状態にする必要があるが、ケーキ掻取装置を用いた従来の遠心分離機では、バスケット内にケーキ掻取装置を挿入する必要があるため、バスケット内を簡単に密封することができなかった。そのため、バスケット内に高圧空気を供給してバスケット内の圧力を高めた状態で固液分離処理を行うことを可能にした従来の遠心分離機はその構造が複雑になるのを避けられなかった。
また特許文献3に示されているように、横型のバスケット内に配置したフィルタを反転させてバスケット外に押し出す方法を採用したフィルタ反転式の遠心分離機においては、ケーキ掻取装置を設ける必要がないため、バスケット内の構造を簡単にすることができ、またバスケット内の圧力を高めることも容易である。しかしながら、横型のバスケットを用いたフィルタ反転式の遠心分離機においては、フィルタ全体を反転させてバスケット外に押し出す必要があるため、バスケットを片持ち支持する回転軸が長くなり、水平方向に配置された回転軸及び該回転軸を支持する軸受けにかかる負担が大きくなるという問題があった。そのため、バスケットの質量の軽減を図る必要があり、処理量を多くするためにバスケットの深さを深くすることができないという問題があった。
本発明の目的は、バスケットを支持する回転軸の長さを横型のフィルタ反転式遠心分離機ほど長くすることなく、かつバスケット内にケーキ掻取装置を設けることなく、バスケット内のケーキの回収を行うことができるようにした遠心分離機を提供することにある。
本発明の他の目的は、バスケット内の圧力を高めた状態での固液分離処理を容易に行うことができるようにした遠心分離機を提供することにある。
本発明は、原液をケーキと液分とに分離する固液分離処理を行う遠心分離機に係わるものである。本願に開示された第1の発明においては、上端及び下端に開口部を有するケーシングと、第1の位置と第2の位置との間を回動し得るようにしてケーシングに対して回動自在に支持されて、第1の位置にあるときにケーシングの上端の開口部を閉じ、第2の位置にあるときにケーシングの上端の開口部を開く可動フレームと、可動フレームが第1の位置にあるときに上下方向に伸びるように設けられて一端が可動フレームを貫通し、可動フレームに対して回転自在に支持された中空の回転軸と、多数の透孔を有する周壁部と該周壁部の軸線方向の一端を閉じる端部壁とを有して、回転軸の中空部内を前記周壁部の内側の空間に開口させた状態で端部壁の中心部が回転軸の一端に結合され、可動フレームが第1の位置にあるときにケーシング内に配置されて前記周壁部の軸線方向の他端に形成された開口部が下方に開口させられるバスケットとが設けられる。
第1の発明においてはまた、上記回転軸の中空部内にスライド自在に嵌合されて一端が回転軸の一端からバスケット内に導出された中空のスライド軸と、スライド軸と回転軸とを一緒に回転させるように結合するとともに、スライド軸が回転軸の軸線方向にスライドした際にスライド軸と回転軸との間に周方向の相対的変位を生じさせるようにスライド軸と回転軸とを結合する軸結合機構と、バスケット内に配置されてスライド軸の一端をバスケット内に開口させた状態でスライド軸の一端に結合された可動部材とバスケットの外側に配置されて、バスケットの周方向に間隔をあけて配置された複数の連結部材により可動部材に連結された蓋板部とを有して、スライド軸のスライド変位に伴って蓋板部がバスケットの開口部を閉じた状態になる閉位置とバスケットの開口部との間に隙間を形成した状態になる開位置との間を変位させられる可動蓋構造体と、バスケットの周壁部の内周に配置されたフィルタと、可動フレームよりも上方の位置で回転軸を回転駆動してバスケットを回転させる回転駆動装置と、スライド軸の回転を許容した状態でスライド軸を回転軸の軸線方向に駆動するリニア駆動装置と、スライド軸と回転軸との間に生じる周方向の相対的変位に伴って可動蓋構造体とバスケットとの間に生じる周方向の相対的変位をバスケット内に形成されたケーキに伝達してバスケット内に形成されたケーキを破壊するケーキ破壊手段とが設けられている。
本発明に係わる遠心分離機においては、可動フレームを第1の位置に位置させてケーシング内でバスケットの開口部を下方に向け、かつ可動蓋構造体の蓋板部によりバスケットの開口部を閉じた状態でバスケットを回転させつつスライド軸の中空部内を通してバスケット内に原液を供給することにより固液分離処理を行うことができる。
また可動蓋構造体の蓋板部を開位置側に変位させた際に可動蓋構造体とバスケットとの間に生じた相対変位をケーキ破壊手段を介してケーキに伝達してケーキを破壊することができ、破壊したケーキを、蓋板部とバスケットの開口部との間に形成された隙間を通してケーシング内に落下させて回収することができる。この場合、バスケット及び可動蓋構造体を低速回転させながらケーキの排出を行うと、可動蓋構造体の蓋板部の上に落下したケーキを遠心力により飛ばしてケーシング内に振り落すことができるため、バスケット内からのケーキの排出を円滑に行わせることができる。
上記のようにバスケットの回転軸を上下方向に向けて配置すると、水平方向に伸びる回転軸の端部でバスケットを片持ちで支持していた従来の横型遠心分離機に比べて回転軸及び軸受け装置にかかる負担を軽減することができるため、バスケットの深さを深くして、固液分離処理1回当たりの処理容量を増大させることができる。
また本発明に係わる遠心分離機は、バスケットの開口部を可動蓋構造体の蓋板部で閉じた状態で、バスケットを回転させながらスライド軸の中空部内を通してバスケット内に原液を供給して固液分離処理を行うように構成されているため、バスケット内への原液の供給が終了した後、スライド軸の中空部内を通してバスケット内に高圧ガスを供給することによりバスケット内の圧力を上昇させることができる。従って、上記のように構成すると、遠心分離機の構造を複雑にすることなく、バスケット内の圧力を上昇させた状態での脱液処理を容易に行わせることができる。
本願に開示された第2の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、上記可動蓋構造体の蓋板部のバスケット内に臨む面が、バスケットの端部壁側に凸な円錐面状に形成されている。
このように構成しておくと、蓋板部の上に落下したケーキを円錐面に沿って滑らせて蓋板部の外周側に移動させることができるため、バスケット内からのケーキの排出を円滑に行わせることができる。
本願に開示された第3の発明は、第1の発明または第2の発明に適用されるもので、本発明においては、可動部材が円板状に形成されてその外周部が前記バスケットの周壁部の内周に近接配置され、フィルタは、可動部材の外周部に一端が固定され、バスケットの開口部付近に他端が固定された濾布からなっている。この場合、濾布がケーキ破壊手段を兼ねていて、可動蓋構造体とバスケットとの間に周方向の相対的変位を生じた際に濾布が捻れることにより、該濾布の内側に形成されているケーキを破壊するように構成されている。
上記のように構成しておくと、可動蓋構造体を下方に変位させて、可動蓋構造体とバスケットとの間に周方向の相対的な変位を生じさせた際に濾布を捻ることができるため、濾布の捻れにより、該濾布の内周に形成されたケーキを容易に破壊して可動蓋構造体の蓋板部の上に落下させることができ、バスケットを低速で回転させることにより、バスケット内のケーキを外部に排出することができる。
本願に開示された第4の発明は、第1の発明または第2の発明に適用されるもので、本発明においても、可動部材が円板状に形成されてその外周部がバスケットの周壁部の内周に近接配置される。本発明においては、フィルタが、バスケットの周壁部の内面に添わせて配置されてバスケットに対して固定されている。この場合、ケーキ破壊手段は、フィルタよりも目が粗いネットからなっていて、該ネットがフィルタの内周に沿わせた状態で配置されてその一端が可動蓋構造体の可動部材の外周寄りの部分に固定されるとともに、他端がバスケットの開口部付近に固定され、可動蓋構造体とバスケットとの間に周方向の相対的変位が生じた際にネットが捻れることによりケーキを破壊するように構成されている。
このように構成しておくと、可動蓋構造体を下方に変位させて可動蓋構造体とバスケットとの間に周方向の相対的な変位を生じさせた際にネットを捻ることができ、ネットの捻れにより、濾布の内周に形成されたケーキを破壊して可動蓋構造体の蓋板部の上に落下させることができるため、バスケットを低速で回転させることにより、バスケット内のケーキを外部に排出することができる。この場合、可動蓋構造体とバスケットとの間に生じさせた変位をケーキに伝達するケーキ破壊手段としてフィルタを利用しないので、フィルタとしては、可撓性を有しない多孔板からなるものを用いることができる。
本願に開示された第5の発明は、第1の発明または第2の発明に適用されるもので、本発明においても、フィルタが、バスケットの周壁部の内面に添わせて配置されてバスケットに対して固定される。ケーキ破壊手段は、バスケットの周方向に間隔をあけて配置されてその一端が可動蓋構造体の可動部材に固定されるとともに他端がバスケットの開口部付近に固定された複数本のワイヤからなっている。この場合は、可動蓋構造体とバスケットとの間に周方向の相対的変位を生じた際にワイヤが捻れることによりケーキを破壊する。
上記のように構成した場合にも、第3の発明または第4の発明による場合と同様の効果を得ることができる。
本願に開示された第6の発明も第1の発明または第2の発明に適用されるもので、本発明においても、フィルタがバスケットの周壁部の内面に添わせて配置されてバスケットに対して固定される。本発明においては、複数の連結部材が固液分離処理によりバスケット内に形成されるケーキ内に埋設されるように設けられ、該複数の連結部材がケーキ破壊手段を兼ねる。この場合、フィルタは多孔板からなっていてもよく、濾布からなっていてもよい。
上記のように構成した場合には、可動蓋構造体を下方に変位させて可動蓋構造体とバスケットとの間に周方向の相対的な変位を生じさせた際に、可動蓋構造体の可動部材と蓋板部とを連結している連結部材を介してケーキに力を加えてケーキを破壊することができるため、第3ないし第5の発明による場合と同様の効果を得ることができる。
本願に開示された第7の発明は、第1の発明または第2の発明に適用されるもので、本発明においても、フィルタがバスケットの周壁部の内面に添わせて配置されてバスケットに対して固定される。本発明においては、可動蓋構造体の各連結部材に、固液分離処理によりバスケット内に形成されるケーキ内に少なくとも一部が埋設される突起が設けられていて、該突起によりケーキ破壊手段が構成される。
本発明によっても、第6の発明と同様の効果を得ることができる。
本願に開示された第8の発明は、第1ないし第7の発明のいずれかに適用されるもので、本発明においては、軸結合機構が、回転軸に形成された螺旋状のガイド溝と、スライド軸に取付けられてガイド溝に嵌合された被ガイド部材とを備えて、リニア駆動装置によりスライド軸が駆動された際にスライド軸のスライド変位に伴って被ガイド部材がガイド溝に沿って変位させられることにより、回転軸とスライド軸との間に周方向の相対的変位が生じさせられるように構成されている。
上記のように構成すると、軸結合機構を簡単に構成することができ、回転軸とスライド軸との間に周方向の相対変位を生じさせるための駆動源を特に設けることなく、可動蓋構造体とバスケットとの間に周方向の相対変位を生じさせることができる。
本願に開示された第9の発明は、第1ないし第8の発明のいずれかに適用されるもので、本発明においては、回転駆動装置が、可動フレーム上に支持されたモータと、モータの回転を回転軸の他端に伝達する回転伝達機構とにより構成される。
本願に開示された第10の発明は、第1ないし第9の発明のいずれかに適用される。本発明においては、リニア駆動装置が、スライド軸の他端に軸受けを介して結合された可動ブロックと、可動フレーム上に支持されて可動ブロックを駆動する流体圧シリンダからなっている。
本願に開示された第11の発明は、第1ないし第10の発明のいずれかに適用される。本発明においては、ケーシングの下端の開口部を閉じる蓋が設けられ、この蓋によりケーシングの下端の開口部を閉じた状態にしたときにケーシング内を液密な状態に保持し得るように構成されている。
上記のように構成しておくと、ケーシングの下端の開口部を閉じた状態で、ケーシング内を洗浄液で満たすことができ、この状態でバスケットを回転させることにより、ケーシング内及びバスケット内の洗浄を容易に行うことができる。
本願に開示された第12の発明は、第1ないし第11の発明のいずれかに適用される。本発明においては、可動フレームの上に配置された部品を収容するハウジングが可動フレームに取り付けられて、該ハウジングを気密に貫通したフィードパイプがスライド軸の他端から該スライド軸内に挿入されている。またフィードパイプとスライド軸との間に、スライド軸のスライド変位及び回転変位を許容しつつフィードパイプとスライド軸との間のシールを図るシール部材が配置され、フィードパイプを通してバスケット内への原液の供給と圧縮ガスの供給とを行い得るように構成されている。
上記のように構成すると、フィードパイプを通してバスケット内に原液を供給できるだけでなく、バスケット内への圧縮ガスの供給をも行うことができる。フィードパイプはハウジングに固定されているため、フィードパイプと原液供給ライン及び圧縮ガス供給ラインとの接続は容易に行うことができる。
本発明によれば、バスケットの回転軸を上下方向に向けて配置するので、水平方向に伸びる回転軸の端部でバスケットを片持ちで支持する場合に比べて回転軸及び軸受け装置にかかる負担を軽減することができる。そのため、バスケットの深さを深くして、固液分離処理1回当たりの処理容量を増大させることができる。
本発明によればまた、固液分離処理が終了した後バスケットと可動蓋構造体との間に周方向の相対変位を生じさせてこの変位をバスケット内のケーキに伝達することによりケーキを破壊し、破壊したケーキをバスケットの開口部と可動蓋構造体の蓋板部との間に形成した隙間を通して重力により落下させるようにしたため、バスケット内からのケーキの排出を容易に行わせることができる。またバスケットを低速回転させることにより可動蓋構造体の蓋板部の上に落下したケーキを遠心力により振り落すことができるため、バスケット内からのケーキの排出を円滑に行わせることができる。
本発明によれば、バスケット内からケーキを排出する際に、バスケットの開口部と可動蓋構造体の蓋板部との間に隙間を形成すればよく、横型のバスケットを用いるフィルタ反転式遠心分離機のように、スライド軸を大幅にスライドさせてフィルタ全体を押し出す必要がないため、遠心分離機の軸線方向の長さ寸法を必要以上に大きくすることなく、かつケーキ掻取装置を用いることなく、ケーキを回収することができる遠心分離機を得ることができる。
また本発明によれば、バスケットの開口部を可動蓋構造体の蓋板部で閉じた状態で、バスケットを回転させながらスライド軸の中空部内を通してバスケット内に原液を供給して固液分離処理を行うように構成されているため、バスケット内への原液の供給が終了した後、スライド軸の中空部内を通してバスケット内に高圧空気を供給することによりバスケット内の圧力を上昇させることができる。従って、遠心分離機の構造を複雑にすることなく、バスケット内の圧力を上昇させた状態での脱液処理を容易に行わせることができる。
また本発明によれば、バスケットがケーシングの上部の開口部を開閉する可動フレームに支持されているので、可動フレームを第2の位置まで回動させてケーシングの上端開口部を開いた状態にしたときに、バスケットがケーシングの外部に配置されるようにすることができる。従って、固液分離処理が終了した後に行うバスケットの洗浄を、ケーシングに妨げられることなく、容易に行わせることができる。
請求項2に記載された発明によれば、可動蓋構造体の蓋板部のバスケット内に臨む面をバスケットの端部壁側に凸な円錐面状に形成したので、蓋板部の上に落下したケーキを円錐面に沿って滑らせて蓋板部の外周側に容易に移動させることができ、バスケット内からのケーキの排出を円滑に行わせることができる。
請求項3に記載された発明においては、可動部材の外周部に一端が固定され、バスケットの開口部付近に他端が固定された濾布によりフィルタを構成して、可動蓋構造体とバスケットとの間に周方向の相対的変位を生じた際に濾布を捻ることにより、該濾布の内側に形成されているケーキを破壊するように構成したので、可動蓋構造体とバスケットとの間に生じさせた相対変位をケーキに伝達するためにバスケット内に特別の部材を設けることなく、ケーキを破壊することができ、バスケット内の構造の簡素化を図ることができる。
請求項4ないし7に記載された発明によれば、可動蓋構造体とバスケットとの間に生じさせた変位をケーキに伝達するケーキ破壊手段としてフィルタを利用しないので、フィルタとして、可撓性を有しない多孔板を用いることができるという利点が得られる。
請求項8に記載された発明によれば、回転軸に形成された螺旋状のガイド溝と、スライド軸に固定されてガイド溝に嵌合された被ガイド部材とにより軸結合機構を構成するので、スライド軸のスライド変位を利用して回転軸とスライド軸との間に周方向の相対変位を生じさせることができる。従って、軸結合機構を簡単に構成することができ、ケーキ掻取装置を用いないことと相俟って、遠心分離機の構成の簡素化を図ることができる。
請求項11に記載された発明によれば、ケーシングの下端の開口部を閉じた状態で、ケーシング内を洗浄液で満たすことができ、ケーシング内を洗浄液で満たした状態でバスケットを回転させることにより、ケーシング内及びバスケット内の洗浄を容易に行うことができる。
請求項12に記載された発明によれば、可動フレームの上にハウジングを取り付けて、このハウジング内に可動フレーム上に配置される部品を収容すると共に、ハウジングを気密に貫通したフィードパイプをスライド軸の他端から該スライド軸内に、該スライド軸に対してシールした状態で挿入したので、フィードパイプを通してバスケット内への原液の供給を行うことができるだけでなく、バスケット内への圧縮ガスの供給をも行うことができ、バスケット内で固液分離処理を行う際にバスケット内に圧縮ガスを供給して、処理能率を高めることができる。
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1ないし図3において、1は上端及び下端にそれぞれ開口部1a及び1bを有するケーシングである。図示のケーシング1は、円筒状に形成された第1の筒部101と、第1の筒部101の下端に大径側の端部がフランジ結合された円錐台形の第2の筒部102とからなっており、第1の筒部101の上端及び第2の筒部102の下端にそれぞれ開口部1a及び1bが形成されている。ケーシング1は、その周方向に間隔をあけて配置されたショックアブソーバ付きの3つの支持脚2により支持されて、その軸線を鉛直方向(上下方向)に向けた状態で配置されている。
3はヒンジ結合部4によりケーシング1の上部に回動自在に支持された円板状の可動フレームである。ヒンジ結合部4は、可動フレーム3に一端が固定された腕部401と、ケーシング1の側面の上部に一端が固定された腕部402と、腕部401に固定されたブラケット403と、ブラケット403を腕部402に結合するピン404とからなっている。可動フレーム3は、ヒンジ結合部4のピン404を中心にして、図示のようにケーシング1の上端開口部の上に載った状態になる第1の位置と、この第1の位置からほぼ90度離れた第2の位置との間を回動することができるようになっており、可動フレーム3が図示の第1の位置にあるときに、ケーシング1の上端開口部が閉じられ、可動フレーム3が第2の位置まで回動させられることによりケーシング1の上端開口部1aが開かれるようになっている。第1の位置にある可動フレーム3をケーシング1に対して固定するため、ケーシング1の上端に配置された可動フレーム3をフランジ部に締結する締結具5が設けられている。また可動フレーム3を回動させるために、ヒンジ結合部4の腕部401と402との間に流体圧シリンダ(図示せず。)が設けられている。
可動フレーム3の上部には、円筒状の回転軸保持筒6が固定されている。回転軸保持筒6は、可動フレーム3が第1の位置にあるときにその軸線が鉛直方向に向くように配置されて、その下端が可動フレーム3に適宜の手段により固定されている。回転軸保持筒6には中空管状の回転軸7が回転自在に支持されている。回転軸7は、可動フレーム3が第1の位置にあるときに鉛直方向(上下方向)に伸びるように設けられて、回転軸保持筒6内の上端及び下端にそれぞれ設けられた軸受け8及び9により回転自在に支持されている。回転軸7の一端7aは、可動フレーム3の中心部に設けられた孔3aを貫通してケーシング側に導出され、回転軸7の他端7bは、回転軸保持筒6の可動フレーム3と反対側の端部から外部に導出されている。本実施形態では、回転軸保持筒6と、軸受け8及び9とにより、回転軸7を支持する軸受け装置10が構成されている。
可動フレーム3を貫通してケーシング側に導出された回転軸7の一端7aには、バスケット11が取り付けられている。バスケット11は、多数の透孔hを有する周壁部11aと該周壁部の軸線方向の一端を閉じる端部壁11bとを有する円筒体からなっていて、その端部壁11bの中心部が回転軸7の一端7aに結合されている。バスケット11の端部壁11bの中心部には貫通孔11cが設けられていて、回転軸7の一端がこの貫通孔を通してバスケットの周壁部11aの内側の空間に(バスケット内に)開口させられている。
バスケット11の周壁部11aの開口端の外周には、バスケットの底壁部11b側に向うに従って径が大きくなるようにテーパが付けられたガイド筒体12の小径側の端部が接続されている。ガイド筒体12の大径側の端部には径方向の外側に突出した張出し部12aが形成され、張出し部12aの外周には、バスケットの開口部側に突出した裾部12a1が形成されている。
ケーシング1の内周には、バスケット11がケーシング1内に挿入された際にガイド筒体12の張出し部12aの下方に位置するようにして、環状の樋13が固定され、固液分離処理を行う際に、バスケット11の周壁部11aの開口部寄りの部分に設けられた透孔hを通して排出された液分が、ガイド筒体12により案内されて樋13内に流入させられるようになっている。ケーシング1の周壁部には、樋13内に排出された液分を外部に流出させるための排液口14が設けられている。
回転軸保持筒6の可動フレームと反対側の端部から外部に導出され回転軸7の他端には、プーリ15が取り付けられている。回転軸7と、該回転軸を貫通させるために可動フレーム3に設けられた孔3aの内周との間には、回転軸7の貫通部の液密を保持するためのシール部材16が配置されている。
回転軸7内には、中空管状のスライド軸20がスライド自在に嵌合されている。スライド軸20は、回転軸7よりも長い長さを有していて、その一端20aがバスケット11の端部壁11bの中央の貫通孔11cを通してバスケット内に導入され、他端20bは、回転軸7の他端7bから外部に導出されている。
バスケット11内に導入されたスライド軸20の一端20aには、可動蓋構造体21が取り付けられている。可動蓋構造体21は、バスケット11内に配置されてスライド軸20の中空部の一端をバスケット内に開口させた状態でスライド軸20の一端に結合された可動部材22と、バスケット11の開口部の外側に配置されてバスケット11の開口部を開閉する蓋板部24と、バスケットの周方向に間隔をあけた状態でバスケット内に配置されて可動部材22と蓋板部24とを連結する複数の連結部材23とを有している。
可動蓋構造体21は、スライド軸20のスライド変位に伴って、蓋板部24がバスケット11の開口部を閉じた状態になる閉位置(図1に示された位置)と、バスケットの開口部11Aとの間に隙間Gを形成した状態になる開位置(図3に示された位置)との間を変位させられる。
本実施形態では、可動蓋構造体21が閉位置にあるときに、蓋板部24がバスケット11の開口部に当接して、バスケットの開口部を気密かつ液密に閉じた状態になるとともに可動部材22がバスケット11の端部壁11bの内面に近接した状態で配置され、可動蓋構造体21が開位置にあるときには、図3に示したように、蓋板部24がバスケット11の周壁部11aの開口端から十分に離れた位置に達するとともに、可動部材22がバスケット11の周壁部11aの開口端寄りの位置に達するように、可動部材22と蓋部材24との間の位置関係と、スライド軸20のスライド変位量とが設定されている。バスケット11の周壁部の開口端部には、蓋板部24が該開口端部に当接した際にその当接部の気密及び液密を図るためのシール部材が貼り付けられている。
本実施形態で用いている可動部材22は、スライド軸20の中空部に連通する孔22aを中央部に有する円板状の部材からなっていて、その外周部がバスケット11の周壁部11の内周に近接配置されるようになっている。
可動蓋構造体21の蓋板部24のバスケット11内に臨む面24aは、バスケット11の端部壁11b側に凸な円錐面となっていて、蓋板部24の上に落下したケーキの破片を円錐面24aの傾斜により蓋板部24の外周側に容易に移動させることができるようになっている。
スライド軸20の回転軸7内に配置された部分の外周に被ガイド部材30(図1参照)が取付けられ、この被ガイド部材30が、回転軸7の周壁部に形成された螺旋状のガイド溝31にスライド自在に嵌合されている。ガイド溝31は大きいピッチを持ってほぼ90°の角度の範囲を伸びるように設けられていて、スライド軸20が回転軸7の軸線方向にスライドさせられたときに、被ガイド部材30がガイド溝31に沿って変位させられることにより、スライド軸20と回転軸7との間に、一定の角度範囲(図示の例ではほぼ90°)の周方向の相対的変位が生じさせられ、これにより、可動蓋構造体21とバスケット11との間に周方向の相対的変位が生じさせられるようになっている。被ガイド部材30としては、ガイド溝31に嵌合し得る大きさを有するピンや、ガイド溝31に嵌合した状態でガイド溝31に沿ってスライドし得る形状に形成されたキーを用いることができる。
本実施形態では、スライド軸20に取付けられた被ガイド部材30と回転軸7に設けられたガイド溝31とにより、スライド軸20と回転軸7とを一緒に回転させるように結合するとともに、スライド軸20が回転軸7の軸線方向にスライドした際にスライド軸20と回転軸7との間に周方向の相対的変位を生じさせるようにスライド軸20と回転軸7とを結合する軸結合機構が構成されている。後記するリニア駆動装置によりスライド軸20を変位させて可動蓋構造体21を開位置側に変位させる過程で、上記軸結合機構により、スライド軸と回転軸との間に周方向の相対的変位が生じさせられることにより、可動蓋構造体21とバスケット11との間に周方向の相対的変位が生じさせられる。
可動フレーム3の上には、可動フレーム上に配置された部品を収容する円筒状のハウジング35が取り付けられている。図示のハウジング35は、下端が可動フレーム3に固定された円筒状の下部ハウジング35Aと、下端が下部ハウジング35Aの天井部に固定された上部ハウジング35Bとからなっている。下部ハウジング35Aの天井部には、回転軸保持筒6の上端(先端)を貫通させる開口部が設けられ、回転軸保持筒6の上端から導出された回転軸7の他端に取り付けられたプーリ15が、上部ハウジング35B内の下部に配置されている。上部ハウジング35B内には、スライド軸20の他端に軸受け37を介して結合された円板状の可動ブロック38が配置されている。
図2に示されているように、互いに平行に配置されて可動ブロック38を軸線方向にスライド自在に貫通した一対のガイド棒40,40が設けられて、これらのガイド棒の一端及び他端がそれぞれ下部ハウジング35Aの天井部及び上部ハウジング35Bの天井部に支持され、ガイド棒40,40により、可動ブロック38が回転軸7の軸線方向にスライド自在に変位するようにガイドされている。
下部ハウジング35A内には、下端が可動フレーム3に固定された一対の流体圧シリンダ(好ましくは油圧シリンダ)42,42が配置されている。流体圧シリンダ42,42は、可動フレーム3の周方向に、ガイド棒40,40に対して90°位置をずらした状態で設けられている。流体圧シリンダ42,42は、それぞれの先端を下部ハウジング35Aの天井部に設けられた開口部内に位置させた状態で配置されていて、これらの流体圧シリンダ42,42のピストンロッド42a,42aの先端が可動ブロック38に連結されている。
本実施形態では、可動ブロック38と、流体圧シリンダ42,42とにより、スライド軸20の回転を許容した状態でスライド軸20を回転軸の軸線方向に駆動するリニア駆動装置が構成されている。
図2に示されているように、下部ハウジング35Aの側面に、モータ45がその出力軸45aを回転軸7と同方向に向けた状態で支持され、モータ45の出力軸に取り付けられたプーリ46と回転軸7の他端に取り付けられたプーリ15とにベルト47が掛け渡されている。本実施形態では、上部ハウジング35Bの側壁部の下部にベルト47を通すための窓部48が設けられ、モータ45を覆い、かつ窓部48を塞ぐカバー49が、下部ハウジング35Aの上部と下部ハウジング35Bの下部とに跨って取り付けられている。
本実施形態では、モータ45と、プーリ15及び46と、ベルト47とにより、可動フレーム3よりも上方の位置で回転軸7を回転駆動してバスケットを回転させる回転駆動装置が構成されている。
上部ハウジング35Bの天井部の中央部を気密かつ液密に貫通した状態でフィードパイプ50の基端部が固定され、このフィードパイプ50がスライド軸20の中空部内に挿入されている。スライド軸20の他端(図1において上端)の内周には、フィードパイプ50とスライド軸20との嵌合部をシールするためのシール部材51が配置され、フィードパイプ50を通してバスケット11内に原液または高圧ガスを供給する際に、原液及び高圧ガスがハウジング35内に漏れるのが防止されている。フィードパイプ50は、図1に示すように、スライド軸20が可動蓋構造体21を閉位置に位置させた状態にする上限位置にあるときに、その先端50aがスライド軸20の中間部に達するようにその長さが設定され、図3に示すように、スライド軸20が可動蓋構造体21を開位置に位置させた状態にする下限位置に達したときでも、フィードパイプ50の先端50aはスライド軸50内に配置されるようになっている。
バスケット11内に原液または洗浄液を供給する際には、フィードパイプ50に給液ラインが接続され、バスケット11内に圧縮ガスを供給する際には、フィードパイプ50に圧縮ガスの供給ラインが接続される。バスケット11が回転する際にフィードパイプ50は回転しないため、フィードパイプ50と給液ラインとの接続部及びフィードパイプ50と圧縮ガス供給ラインとの接続部にはロータリジョイントを必要とせず、それぞれの接続を容易にすることができる。固液分離処理を行う際にバスケット内に圧縮ガスを供給して加圧濾過を行う場合には、フィードパイプ50に切替バルブを介して給液ラインと圧縮ガス供給ラインとを接続して、フィードパイプ50を通してバスケット11内に原液または洗浄液を供給する状態と、フィードパイプ50を通してバスケット11内に圧縮ガスを供給する状態とを簡単に切り替えることができるようにしておくことが望ましい。
本実施形態では、バスケット11の周壁部11aの内周に配置するフィルタとして、バスケットの周壁部の内周に添わせた際に円筒状の形態をとるように形成された周知の濾布55が用いられている。濾布55は、バスケット11の周壁部11aの内周に添わせた状態で配置されて、その一端が全周に亘って円板状の可動部材22の外周部に固定されている。また濾布55の他端は、その全周がバスケット11の周壁部11aの開口端部に固定されている。
本実施形態では、可動部材22の外周寄りの部分にリング状の固定具56が配置されて、この固定具56と可動部材22との間に濾布55の端部を挟み込んだ状態で固定具56が可動部材22に締結されることにより、濾布55の一端が可動部材22に固定されている。またバスケットの周壁部11aの開口端にリング状の固定具57が配置されて、この固定具57と周壁部11aの開口端との間に濾布55の他端を挟み込んだ状態で、固定具57が周壁部11aに締結されることにより、バスケット11の周壁部11aの開口端に濾布55の他端が固定されている。本実施形態ではまた、バスケット11へのガイド筒体12の固定も固定具57により行われている。固定具57の下面にシール部材が貼り付けられ、図1に示されているように、可動蓋構造体21が閉位置に変位させられたときに、蓋板部24がこのシール部材に当接することにより、バスケット11内が気密及び液密に閉鎖されるようになっている。可動蓋構造体21が閉位置に変位させられた状態では、流体圧シリンダ42,42の付勢力により蓋板部24がバスケット11の開口端に強圧された状態にされるので、可動蓋構造体21とバスケット11とは一緒に回転するように機械的に強固に結合される。従って、バスケットを可動蓋構造体とともに高速回転させる際に、被ガイド部材30とガイド溝31との嵌合部に大きな力がかかることはない。
本実施形態ではまた、必要に応じて、ケーシング1の下端に蓋58を取り付けることができるようになっており、この蓋58によりケーシング1の下端の開口部1bを液密に閉じることができるようになっている。
本実施形態においては、可動フレーム3が第1の位置から第2の位置に回動する際、及び第2の位置から第1の位置へ回動する際にバスケット11がケーシング1の上端開口部と干渉することがないように、ケーシング1の上端開口部の寸法が設定されている。また可動フレーム3を第2の位置まで回動させた際に、バスケット11がケーシング1の上端開口部より上方に配置された状態になるように、可動フレーム3の第2の位置が設定されている。
本実施形態の遠心分離機を用いて固液分離処理を行う際には、可動フレーム3を第1の位置に固定して、ケーシング1の上端開口部を閉じた状態にし、バスケット11をケーシング1内に配置する。また流体圧シリンダ42を駆動してスライド軸20を上方の限界位置まで変位させることにより、図1に示すように可動蓋構造体21を閉位置に位置させる。可動蓋構造体21が閉位置にあって、バスケット11内が気密かつ液密に閉鎖されていることを確認した後、モータ45を駆動して回転軸7をスライド軸20と共に回転駆動し、バスケット11を高速回転させる。バスケット11を高速回転させた状態で、フィードパイプ50を通してバスケット11内に原液を供給する。バスケット内に供給された原液は遠心力によりケーキと原液とに分離される。液分は濾布55とバスケットの周壁部の透孔とを通してバスケット外に排出され、濾布55の内側にケーキ層が形成されていく。バスケットの周壁部の透孔から排出された液分は、ガイド筒体12によりガイドされて樋13上に落下させられ、排液口14から外部に排出される。
バスケット11内における原液の液面レベルが規定値に達したときにバスケット11内への原液の供給を停止し、バスケット11を高速回転させて脱液を行わせる。このときバスケット11内に圧縮空気を供給して加圧濾過を行わせることにより、濾過速度を向上させる。液分が除去されることによりバスケット11内の液面レベルが規定値よりも低下したときに再度バスケット内に原液を供給する。これらの動作を繰り返すことにより、固液分離処理を進める。バスケット内に形成されるケーキ層の厚みが所定値に達したときに固液分離処理を終了する。バスケット内に所定の厚みのケーキ層が形成された状態では、可動蓋構造体21の可動部材22の外周寄りの部分がケーキ層の軸線方向端面に接した状態にある。
固液分離処理が終了した後、フィードパイプ50を通してバスケット内に洗浄液を供給し、次いでバスケット11内に圧縮空気を供給しながらバスケットを高速回転させてケーキの洗浄工程を行う。ケーキを洗浄する工程でも、加圧濾過により脱液を促進して洗浄時間を短縮する。
バスケット内への洗浄液の供給と、該洗浄液の脱液とを所定回数繰り返し、脱液によりケーキ内の残留液分を減少させた後、ケーキの洗浄工程を終了する。その後、フィードパイプ50を通してバスケット11内に乾燥した高温の圧縮ガス(ドライエアー)を送り込み、ケーキ中の残留液分を更に減少させる乾燥工程を行う。
バスケット内のケーキが十分に乾燥した後、バスケット11を減速し、バスケット11を低速で回転させたままの状態で、流体圧シリンダ42により可動ブロック38を下降させて、スライド軸20を下降させ、可動蓋構造体21を開位置に向けて変位させる。このとき、被ガイド部材30とガイド溝31との嵌合により、スライド軸20と回転軸7との間に周方向の相対的変位を生じさせ、可動蓋構造体21とバスケット11との間に周方向の相対的変位を生じさせる。このように、可動蓋構造体21とバスケット11との間に周方向の相対的変位を生じさせると、濾布55が捻られる。このとき、濾布55からその内周のケーキに、捻り力が加えられるとともに、ケーキの端面に接している可動部材22からケーキにバスケットの軸線方向に向いた力と周方向の力とが加えられるため、ケーキが容易に破壊させられる。
前述のように、バスケット11内に高温高圧のドライエアーを供給して、ケーキを十分に乾燥させておけば、ケーキは濾布55及び可動部材22から力が加えられた際に容易に崩れ、細かい粉末状ないしは粉末の固まりになって蓋板部24上に重力により落下する。このときバスケット11は低速で回転しているため、蓋板部24上に落下したケーキの粉末は、遠心力により蓋板部24の外周側に運ばれて、蓋板部24とバスケット11の開口部との間の隙間Gからケーシング1内に振り落とされる。ケーシング1内に振り落とされたケーキは、ケーシング1の下端の開口部から図示しない回収容器内に排出される。可動蓋構造体21を開位置まで変位させた状態では、図3に示すように濾布55の一部が折り返されてバスケット11の開口部から下方に垂れ下がった状態になる。バスケット11内からケーキを排出する際のバスケットの回転速度は、ケーキが落下を妨げられる程にバスケットの周壁部の内周に強く押しつけられることがなく、かつ蓋板部24の上面のケーキを該蓋板部の外周側に移動させるために必要な遠心力を生じさせるように、適当な大きさに設定する。このバスケットの回転速度は、実験的に決定することができる。
バスケット11内からのケーキの回収を終了した後、スライド軸20を上昇させて可動蓋構造体21を閉位置に位置させ、これによりバスケット11を閉鎖して次の処理に備える。
従来の横型のバスケットを用いたフィルタ反転式の遠心分離機では、回転軸の端部にバスケットが片持ちで支持されていたため、バスケットの回転軸及び回転軸を支持する軸受装置にかかる負担が大きく、バスケットとして大型のものを用いることができなかった。そのため、バスケットとして深さが深いものを用いることができず、1回の固液分離処理で処理できる原液の量が少ない量に制限されるという問題があった。
これに対し、本発明に係わる遠心分離機では、固液分離処理を行う際にバスケットの軸線を鉛直方向に向けた状態で配置するので、ボスケットを回転させる回転軸7及び軸受装置にかかる負担を軽くすることができる。そのため、バスケット11として、深さが深いものを用いることができ、原液の処理量を増大させることができる。
また横型のバスケットを用いたフィルタ反転式の遠心分離機では、フィルタを反転させてその全体をバスケットの外部に押し出す必要があるため、フィルタを押し出すスライド軸のスライド量はバスケットの軸線方向の長さの2倍に達する。そのためスライド軸の長さが長くなり、スライド軸の内側に給液通路を形成しようとすると、給液通路の長さが長くなるのを避けられない。この場合、スライド軸の内側の給液通路は、水平方向に伸びる通路となるため、原液中の固形分が内部に堆積して詰まることがある。
これに対し、本発明に係わる遠心分離機では、バスケットの軸線を鉛直方向に向け、回転軸及びスライド軸も鉛直方向に向けて配置するので、スライド軸の内側に形成される給液通路内に固形分が堆積することはなく、バスケット内への原液の供給が滞るおそれを無くすことができる。また本発明においては、下方に向いたバスケットの開口部からバスケット内のケーキを重力により落下させるので、従来のフィルタ反転式の遠心分離機のように、フィルタ全体をバスケット外に押し出さなくてもケーキの排出を行うことができる。従って、スライド軸20のスライド変位量を少なくすることができ、スライド軸20の長さを短くすることができる。
本実施形態の遠心分離機においては、ケーシング1の下端の開口部を閉じる蓋58が用意されているため、ケーシング1の下端の開口部を閉じた状態でケーシング1内に洗浄液を満たすことができ、この状態でバスケットを回転させることにより、バスケットの洗浄を行わせることができる。
ケーシング1の下端の開口部は、ケーキを輸送する輸送管に接続するように構成することもできる。ケーシング1の下端に輸送管を接続して、該輸送管を通してケーキを輸送するようにすると、ケーキが汚損されるおそれを無くすことができる。
上記の実施形態では、バスケットの内周に形成されたケーキを破壊するために、可動蓋構造体21とバスケット11との間に生じさせた相対変位をケーキに伝達するケーキ破壊手段として、フィルタを構成する濾布55を利用したが、フィルタは、バスケット11の周壁部11aの内周に添わせた状態でバスケット11に固定しておき、代りに、可撓性を有する材料により形成された円筒状のネットをフィルタの内側に配置して、上記の実施形態の濾布55と同様に、このネットの一端を可動蓋構造体21の可動部材22の外周部に固定し、他端をバスケット11の周壁部11aの開口端に固定して、可動蓋構造体21とバスケット11との間の相対変位によりネットを捻るようにしてもよい。この場合、ネットとしては、濾過を妨げないように、フィルタよりも目が粗いものを用いることが好ましい。ネットを構成する材料としては、金属線や、樹脂繊維など、可撓性を有するもの(容易に変形し得るもの)を用いる。可動蓋構造体11の可動部材22としては、図1ないし図3に示した実施形態を同様に、円板状に形成されたものを用いる。
上記のように、可動蓋構造体21の可動部材22とバスケット11の開口端との間にネットを設けて、このネットをケーキ破壊手段として用いる場合には、フィルタとしては、必ずしも濾布を用いる必要はなく、バスケットの周壁部11aの内周に添わせた状態で配置されてバスケットに対して固定された多孔板をフィルタとして用いることもできる。
図5及び図6は本発明の他の実施形態を示したものである。この実施形態では、バスケットの周壁部11aの内面に添わせた状態で多孔板からなるフィルタ60が配置されて、該フィルタ60がバスケットの周壁部11aに適宜の手段により固定されている。また、バスケット11内には、フィルタ60の内側に位置させて、多数本のワイヤ61,61,…がバスケットの周方向に並べた状態で配置されている。各ワイヤ61の一端は可動蓋構造体21の可動部材22の外周部に固定されている。各ワイヤ61の他端は、バスケット11の周壁部11aの開口端付近に固定されている。その他の点は、前記の実施形態と同様に構成されている。ワイヤ61の数は、該ワイヤがバスケットの周方向に均一に分散して配置されるように設定する。
本実施形態においては、可動蓋構造体21が開位置に向けて変位させられる過程で、可動蓋構造体21とバスケット11との間に周方向の相対的変位を生じた際に、ワイヤ61,61,…が捻れることにより、ケーキに捻り力を伝達するとともに、可動部材22がケーキに軸線方向及び周方向の力を与えて、ケーキを破壊する。可動蓋構造体21が開位置まで変位した状態では、図6に示されているように、ワイヤ61が折り返されてバスケット11の開口部から下方に垂れ下がった状態になる。
図7は本発明の更に他の実施形態を示したもので、本実施形態においては、バスケット11の周壁部の内周に多孔板からなるフィルタ60が固定されている。また可動蓋構造体21の可動部材22と蓋板部14とを連結する各連結棒23にバスケットの周壁部11a側に突出した複数の突起25が形成されている。各突起25は、その少なくとも一部が固液分離処理によりバスケット11の内周に形成されるケーキ内に埋設されるように設けられていて、連結棒23,23,…にそれぞれ形成された突起26により、可動蓋構造体とバスケットとの間に生じた相対変位をケーキに伝達してケーキを破壊させるケーキ破壊手段が構成されている。その他の点は、前記の実施形態と同様に構成されている。
図7に示した実施形態では、可動蓋構造体21とバスケット11との間に周方向の相対的な変位が生じたときに、連結棒23に設けられた突起25からケーキに軸線方向及び周方向の力が伝達されるとともに、可動部材22からケーキに軸線方向及び周方向の力が与えられるため、ケーキが破壊されて蓋板部24の上に落下させられる。
図7に示した実施形態では、可動蓋構造体21の可動部材22と蓋板部24とを連結する連結棒23に、ケーキ内に少なくとも一部が埋設される突起25を設けて、この突起をケーキ破壊手段として用いたが、各連結棒23をケーキ内に埋設される位置に設けて、各連結棒23をケーキ破壊手段として用いるようにしてもよい。
図7に示したように、連結棒23に突起25を設けて、この突起をケーキ破壊手段として用いる場合、又は連結棒23をケーキ層内に埋設されるように設けて、連結棒23をケーキ破壊手段として用いる場合には、バスケット11の周壁部11a側にケーキ層に食い込んだ状態で配置される突出部を設けておくと、突起25または連結棒23からケーキに周方向の力が加わった際に、ケーキ層がバスケットの周方向に変位する(滑る)のを阻止できるため、ケーキの破壊を容易に行わせることができる。
バスケットの周壁部側にケーキ層に食い込む突出部を設けるには、例えば、バスケットの周壁部の内周に配置するフィルタの一部にバスケットの径方向の内側に突出した突出部を設けるようにすればよい。フィルタとして濾布を用いる場合には、バスケットの周壁部の内周に突出部を形成しておくことにより、フィルタの一部をバスケットの径方向の内側に突出させることができる。またフィルタとして多孔板を用いる場合には、該多孔板の一部をバスケットの径方向の内側に突出させるように変形させることにより、フィルタの一部をバスケットの径方向の内側に突出させることができる。
上記のように、バスケット11の周壁部側にケーキ層内に食い込む突出部を設ける場合、可動蓋構造体21の可動部材22及び連結棒22に設ける突起25は、バスケット11の周壁部側に設けられた突出部に妨げられることなくバスケットの軸線方向に変位し得るように設けておく。
上記の各実施形態において、バスケット11の周壁部11aの内周面に、端部壁11b側から開口端部側に向うに従って次第に径が大きくなる向きのテーパをつけておくと、バスケット11内からのケーキの排出を容易にすることができる。
上記の実施形態では、スライド軸20に取り付けた被ガイド部材30と、回転軸7に設けられたガイド溝31とにより、スライド軸20と回転軸7とを一緒に回転させるように結合するとともに、スライド軸20がスライドした際にスライド軸と回転軸との間に周方向の相対的変位を生じさせるようにスライド軸20と回転軸7とを結合する軸結合機構を構成したが、本発明は軸結合機構をこのように構成する場合に限定されない。
例えば、スライド軸の外周に設けた螺旋状のガイド溝と、回転軸7側に固定されてスライド軸の外周のガイド溝に嵌合させられる被ガイド部材とにより軸結合機構を構成することもできる。この場合、スライド軸の外周のガイド溝は、スライド軸を貫通しないように設ける。被ガイド部材は、回転軸7の周壁部を貫通させた状態で回転軸7に取付ける。
上記の実施形態では、スライド軸20をスライドさせるリニア駆動機構を流体圧シリンダを用いて構成したが、モータの回転を直線変位に変換して可動ブロック38に伝達する機構によりリニア駆動機構を構成することもできる。例えば、可動ブロック38に連結されたネジ棒と、回転自在に支持されて該ネジ棒に螺合されたナットと、モータと、このモータの回転をナットに伝達する回転変位伝達機構とによりリニア駆動機構を構成することもできる。この場合、回転変位伝達機構としては、タイミングベルトを用いたベルト伝達機構や歯車機構等を用いることができる。