JP4846897B2 - 遊離基乳化重合のショートストップのためのニトロソアミン阻害性組成物 - Google Patents

遊離基乳化重合のショートストップのためのニトロソアミン阻害性組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
発明の背景
本発明は、遊離基乳化重合のショートストップのための組成物(ニトロソアミンの形成を阻害する)及びその使用である。
【0002】
【従来の技術】
要約すると、この領域の従来技術は、ゴムラテックス及び硬化ゴム製品の両方におけるニトロソアミンのレベルを減少させる方法を開示している。ゴムラテックスについては、ニトロソアミン前駆物質(例えば、二級又は三級アルキルアミン)を含まず且つ生成しない択一的アルキルヒドロキシルアミンショートストッパーの利用に努力が集中されてきた。かかるショートストッパーには、N−イソプロピルヒドロキシルアミン(NiPHA)又はその塩(適宜、多硫化物化合物と混合する)が含まれる。NiPHAベースのショートストッパーの利用は、ゴムラテックス中のニトロソアミンのレベルを減じるが、それは、新たな問題(典型的には、オーバーヘッドポップコーン即ち望ましくないポリマーの防護の欠如)を与える。硬化ゴム組成物については、減少したニトロソアミン形成を生じる択一的加硫促進剤が提案されてきており且つ様々なニトロソアミン阻害剤がゴム加硫剤の配合物中に混合されてきた。これらの以前の発明は、下記を含む:
【0003】
Chasar, D.W.;米国特許第5,070,130号、1991年(The B.F. Goodrich Company)は、硬化ゴム組成物中のニトロソアミンレベルを減じるためにアルカリ土類酸化物又は水酸化物の利用を開示した。
【0004】
Bao, T.B.;Loeppky, R.N.;Chem.Res.Toxicol.4, 382-9, 1991は、モルホリンのニトロソアミンをブロックするためにニトロソアミン反応性官能基を含むポリマーの利用を記載した。かかるポリマーの例には、ポリエチレンイミン及びその誘導体が含まれる。
【0005】
Eisenbrand,G.;DE特許第3,939,474号、1991年(Fed.Rep.Ger.)は、作動液及び化粧品/潤滑剤配合物中のニトロソアミン(例えば、N−ニトロソジエタノールアミン)の形成を阻害するためにポリエチレンイミンの利用を開示した。
【0006】
Schmieder, H.;Naundorf, D.;Huehn, G.;Bertram, M.;DD特許第295,646号、1992年(Buna A.-G.,ドイツ国)は、発癌性ニトロソアミンのレベルが大いに減じた合成ゴムの製造方法を記載した。かかるゴムラテックスは、ブタジエン(及び、適宜、アクリロニトリル又はスチレン)の還元性スルホニル化合物の存在下での乳化重合によって製造することができる。
【0007】
Thoermer, J.;Scholl, T.;EP特許第0,482,470号、1992(Bayer A.-G.,ドイツ国)は、ゴムの加硫中のニトロソアミンの形成を阻止する方法を記載した。この方法は、マレイン酸若しくはフマル酸の半エステル又はそれらの塩のニトロソアミン阻害剤としての利用を含んだ。
【0008】
De Vries, S.;Willemsen, J.A.M.;米国特許第5,177,164号、1993(Shell Oil Company)は、アルカリ金属多硫化物を用いる遊離基重合のショートストップを開示した。かかるショートストッパーは、重合生成物中の発癌性のニトロソアミンの生成へと導かなかった。
【0009】
Lattime, R.R.;米国特許第5,384,372号、1995(The Goodyear Tire & Rubber Company)は、揮発性のニトロソアミンの生成へと導かない遊離基乳化重合のショートストップの方法を開示した。このショートストッパーは、イソプロピルヒドロキシルアミン又はその塩であった。特定のクレームが、合成ゴムラテックスの製造の乳化工程におけるかかるショートストッパーのために作られ、これらのゴムラテックス中ではニトロソアミンの形成が抑制された。
【0010】
Maestri, P.;Presti, A.L.;米国特許第5,504,168号、1996(Enichem Elastomeri S.r.l.)は、共役ジエンの乳化重合(及び、適宜、ビニル芳香族化合物)のショートストップの方法を記載した。この開示された方法は、イソプロピルヒドロキシルアミン(又はその塩)と多硫化ナトリウムの複合物をショートストッパーとして用い、かかる複合物は、重合生成物中にニトロソアミンを生じなかった。
【0011】
Stein, G.;von Arndt, E.-M.;欧州特許第0,727,458号、1996年(Firma Carl Freudenberg, ドイツ国)は、ゴムの処理中のニトロソアミンの生成を抑制するためのモノ又はポリイソシアネートの利用を開示した。かかるイソシアネート化合物は、アミンの形成を阻害し、それ故、ニトロソアミンの形成を阻害する。
【0012】
Gibbs, H.W.;Butcher, D.M.E.;Tate, P.E.R.;Sexton, G.P.;WO特許第9,732,927号、1997(Rhone-Poulenc Chemicals Ltd., 英国)は、アルカリ土類金属炭酸塩又はフェニレートを用いるゴムの加硫中のニトロソアミンの形成の阻止方法を記載した。かかる化合物は、ニトロソアミン形成を抑制するためのゴム加硫配合物中に混合される。
【0013】
更に、従来技術においては、殆どの乳化方法、特にスチレン−ブタジエンゴム(SBR)ラテックスの乳化方法に対して、DEHA(しばしば、SDDC等の第2のショートストッパーを伴う)が、そのユニークなショートストップ性能の故に広く用いられてきた。DEHAの利用に伴う主な問題は、ニトロソアミンの可能な生成であり、これは、DEHAがニトロソアミン前駆物質である第2/第3アミンを含み(不純物として)又は生成し得るからである。この問題を克服するために、ゴムラテックス中でニトロソアミンを生成しない幾つかの代用物例えばNiPHAが提案されてきた。しかしながら、かかる代用物は、気相におけるポップコーン形成を阻止せず、結果として、DEHAが、しばしば、気相ポップコーン防護を促進するために補足される。本発明のショートストップ用技術は、慣用のアルキルヒドロキシルアミン例えばDEHAを用いてニトロソアミン生成を伴わずに乳化重合を停止することができるようにニトロソアミン阻害剤がショートストッパー中に形成される点において新規である。
【0014】
DEHA及びその類似物は、現代のゴム産業において最も広く用いられるショートストッパーであるらしく、ニトロソアミンの可能な生成は種々のショートストップ用組成物の重大な問題であり得よう。本発明は、ショートストップ技術における進歩を表し、ニトロソアミン阻害剤の存在は、ゴムラテックス中にニトロソアミンを導くことなく、DEHA及び他のショートストッパーの多くのユニークな特性の活用を可能にする。
【0015】
この発明の目的は、伝統的なジアルキルヒドロキシルアミン例えばDEHAの利用を可能にするがニトロソアミンの形成を阻止する改良されたショートストップ用組成物を開発することである。かかる組成物は、ニトロソ化種を重合システムから効果的に除去するニトロソアミン阻害剤の利用に基づいており、これらの阻害剤は、ゴムラテックス中に保持されて、エマルジョン中だけでなくその後の操作フェーズにおいても、ニトロソアミンの形成を抑制することができる。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ニトロソアミン阻害剤がショートストップ用組成物中に配合された進歩したショートストップ技術を開示する。かかる阻害剤は、第1アミンに基づく化合物、アミン含有ポリマー、ある種のフェノール及び他の公知のニトロソ化阻害剤を含み;それらは、ニトロソアミンの生成を伴わない慣用のショートストッパー例えばDEHAの利用を可能にする。
【0017】
開示された阻害剤の例には、モノ−(C2−C16)アルキルアミン、ポリエチレンイミン(PEI)及びその誘導体、ピロール(又はインドール)及びその誘導体、ハイドロキノン(又はカテコール)及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにポリオキシメチレン及びその誘導体が含まれる。
【0018】
【発明の実施の形態】
発明の具体的な説明
本発明は、ニトロソアミン阻害剤がショートストップ用組成物に混合され且つこれらの阻害剤がゴムの処理中の加硫配合物ではなく重合中のゴムラテックスに混合される点において、以前の開示と区別される。ショートストップ用組成物中のニトロソアミン阻害剤の存在は、慣用のジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)並びに幾つかの他のショートストッパーの利用を可能にし、これらは、ニトロソアミンの形成を伴わずに第2又は第3のアルキルアミンを含有し又は生成することができ;それは、ショートストップ技術における多大な進歩を与え、かかるショートストッパーの多くの利点が活用され得る。
【0019】
発明の範囲を限定することは意図しないが、我々は、これらのニトロソアミン阻害剤の基礎をなす化学は、(1)ニトロソ化種のニトロソ化能のない小分子への変換、(2)ニトロソ化種の発癌性でない重いニトロソアミンへの変換及び(3)ニトロソアミン前駆物質のレベルの低下を包含し得ると考える。
【0020】
開発された組成物は、共役ジエン(例えば、ブタジエン)及び、適宜、ビニルモノマー(例えば、スチレン及びアクリロニトリル)の遊離基乳化重合のショートストップにおける応用を標的としている。
【0021】
開示したショートストップ用技術の特別の利益は、慣用のショートストッパーの種々の利点の、ニトロソアミンを阻止しての活用である。慣用されるDEHAは、例えば、ショートストッパーとしてのユニークな性能を示す。別のNiPHAと比較して、DEHAは、気相においてポップコーンの形成をずっと効果的に阻止し、一層安定で且つ一層低腐食性である。水へのDEHAの溶解度(約85重量%)は、NiPHAのそれ(約15重量%)よりずっと高い(これは、通常これらの化合物は水溶液として輸送されるので、DEHAの運賃は、NiPHAより一層低いこととなる)。ニトロソアミン阻害剤の存在は又、他のアルキルヒドロキシルアミンの利用をも可能にするであろう。
【0022】
アルキルヒドロキシルアミンショートストッパーは、下記の一般式を有する:
【化2】
Figure 0004846897
(式中、R1及びR2は、同じであっても異なってもよい)。R1及びR2は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル及びスルホン化アルキル基であってよく、アルキル基は、C1〜20を含むことができ且つ直鎖、m分枝又は環式であってよい。しかしながら、R1及びR2は、共にHであってはならず、又はHとメチルであってはならない。
【0023】
本発明のショートスットプのストラテジーの他の利点は、混合されたニトロソアミン阻害剤が、ニトロソアミンの形成を、ゴム製造中(ゴムラテックスから硬化ゴム製品まで)抑制することである。
【0024】
好ましくは、このニトロソアミン阻害剤をショートストッパーに混合して配合されたショートストッパー(通常、溶媒中)を重合システムに目標の変換率で導入する。このニトロソアミン阻害剤は、一種以上の化合物を含むことができ、各々は、ショートストッパー100部当たり0.01〜2部(pph)である。このショートストッパーそれ自身は、一種以上のアルキルヒドロキシルアミン及び適宜一種以上の第2のショートストップ用剤例えばジメチルジチオカーバメート(SDDC)ナトリウムであってよい。典型的には、このショートストッパーは、最初に重合システムに充填したモノマーの0.02〜0.5pphで用いる。溶媒は、通常、水及び適宜一種以上の有機溶媒例えばアルコールである。
【0025】
本発明の変形においては、ニトロソアミン阻害剤を、ショートストッパーと別個に重合システムに導入することができる。これらのニトロソアミン阻害剤は、反応の始めに充填することができ、又はそれらを重合過程の間に所望の変換率に達する前に加えることができる。複合ニトロソアミン阻害剤を用いる場合には、各成分を別々に加えることもできる。
【0026】
本発明のショートストップ用技術は、ゴムラテックスを含む乳化方法の変法である。この標的の乳化方法は、共役ジエン、特に1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の重合及びかかるジエンのモノオレフィン化合物(例えば、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、塩化ビニル等)との共重合を包含する。
【0027】
開示したショートストップストラテジーは、ニトロソアミン前駆物質を含み又は生成するショートストッパーが用いられる任意の重合システムに拡張することができる。
【0028】
これらの代替法は、理論とアナロジーに基づいて提案される。
【0029】
【実施例】
実施例1
SRBラテックスを遊離基乳化重合により合成し、NiPHAをこの乳化工程のショートストップのために用いた。この重合は、下記のコールドソープSBR配合法に基づいた:
材料 a
スチレン 28.0
1,3−ブタジエン 72.0
脱イオン水 200.0
界面活性剤 4.5
電解質 0.30
NaFe(キレート化鉄錯体) 0.02
ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム 0.08
TDMb 0.30
有機ペルオキシド 0.05−0.10
KOHc 可変
a 充填したモノマー100重量部当たりの重量部。
b 第3ドデシルメルカプタン
c KOHにより、pHを10.5〜10.9に調節する。
【0030】
この重合を、10〜12℃で、約60%の変換率まで行い、次いで、NiPHAを反応器に加えて重合反応を停止させた。未反応のブタジエン及びスチレンを除去してからSBRラテックスを回収し、そのラテックス中のニトロソアミンの存在を、熱エネルギー分析機を用いて、ガスクロマトグラフィーにより分析した。かかるラテックスを希硫酸及びメタノール/フレクスゾン(flexzone)混合物を用いて凝固させ、得られたクラムラバーを他の添加剤の非存在下で乾燥させて回転させた。この最終的ゴム試料を再びニトロソアミンについて分析した。
【0031】
3つのSBR重合運転を行い、モノエチルアミン(MEA)及びPEIをニトロソアミン阻害剤として評価した。運転1は、対照用実験であり、400ppmのNiPHA(SBRラテックスの量に基づく)を用いて重合を停止させ、運伝2及び3は、1000ppmのMEA及び1000ppmのPEI(NiPHAの量に基づく)をそれぞれNiPHA中に混合したこと以外は運転1に似ていた。ニトロソアミンをラテックス(未反応モノマー除去)及びゴム(ロールド)試料の両方について分析し、結果を表1に提示した。表1は、NiPHAは、SBRラテックス中でニトロソアミンを生じないが、SBRゴム中ではニトロソアミンを導くということ、及びMEAとPEIの両者がSBRゴム中のニトロソアミンの生成を阻止するということを示している。このSBRゴム中でのニトロソアミンの形成は、多分、ラテックス凝固及びゴム処理の工程中のニトロソアミン前駆物質の生成のためである。
【0032】
【表1】
Figure 0004846897
a検出の限界は、1ppbである。
b未検出
cN−ニトロソジメチルアミン
dN−ニトロソジブチルアミン
【0033】
実施例2
この実験手順は、実施例1に類似したが、DEHA及びDBHAを、NiPHAの代わりにショートストッパーとして用いた。3つの重合運転を行い、ジエチルアミン(DEA、ニトロソアミン前駆物質)を約450ppb(ラテックスの量に基づく)に維持して、MEA及びPEIをニトロソアミン阻害剤としてのそれらの性能について評価した。表2は、これらの実験についてのニトロソアミンの結果を示している。これらの表2の結果は、MEA及びPEIの存在が、SBRゴム中のニトロソアミンレベルを大いに減じることを示している。PEIは、特に、ニトロソアミンを含まないSBRゴムを生成した。
【0034】
【表2】
Figure 0004846897
a検出の限界は、1ppbである。
b利用不能
cN−ニトロソジブチルアミン
dN−ニトロソジメチルアミン
eN−ニトロソジエチルアミン
f未検出
【0035】
実施例3
この実験の詳細は、実施例2と類似したが、DEHAを高レベルのニトロソアミン前駆物質(1900ppmのDEA及び400ppmのトリエチルアミン)と共にショートストッパーとして用いた。7つの重合運転を行い、MEA、モノイソプロピルアミン(MiPA)、モノブチルアミン(MBA)、モノアミルアミン(MAA)及びPEIを、ニトロソアミン阻害剤として評価した。表3は、これらのニトロソアミンの結果を提示しており、これらの結果は、かかるアミンベースの阻害剤の存在がニトロソアミンレベルを劇的に下げること、並びにニトロソアミンを含まないSBRラテックス及びゴム製品を前述の阻害剤の様々な組合せを用いて生成することができることを示している。
【0036】
【表3】
Figure 0004846897
aN−ニトロソジエチルアミン
bN−ニトロソジプロピルアミン
cN−ニトロソジブチルアミン
dN−ニトロソピペリジン
eN−ニトロソピロリドン、検出限界は、干渉により、100ppbである。
fN−ニトロソモルホリン
g未検出、検出限界は、1ppbである。
h未検出、検出限界は、2ppbである。
iDEAレベルは、3000ppmまでスキップした。

Claims (4)

  1. − モノ−(C2−C16)アルキルアミン、ポリエチレンイミン、ピロール、インドール、アスコルビン酸、ポリオキシメチレンから選択された、1種又はそれ以上のニトロソアミン阻害剤、及び、
    − 下記の一般式を有するアルキルヒドロキシルアミンであるショートストッパー
    Figure 0004846897
    (式中、R 1 及びR 2 は、独立に、水素、C 2-20 アルキル、ヒドロキシルC 2-20 アルキル、C 2-20 アルコキシルC 2-20 アルキル、及びスルホン化C 2-20 アルキル基であり、それらは、環状であっても分枝していてもよく、但し、R 1 及びR 2 は、同時には、Hであってはならず、又はHとメチルであってはならない)
    を含む、ショートストップ用組成物。
  2. ショートストッパーがDEHA及び/又はDBHAである、請求項1に記載の組成物。
  3. 共役ジエン及び随意のビニルモノマーの遊離基乳化重合を停止させるための、請求項1又は2に記載の組成物の使用
  4. ジエンがブタジエンであり、ビニルモノマーがスチレン及びアクリロニトリルである、請求項に記載の組成物の使用
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