JP4845138B2 - 炭素繊維複合材料の製造方法 - Google Patents
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粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを混合し、第1の温度に設定した金型内に充填し予備加圧して超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させる工程(a)と、
予備加圧した超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを第2の温度に設定した金型内で加圧して成形して炭素繊維複合材料を得る工程(b)と、
を含み、
前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であって、
前記第2の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であり、
前記工程(a)は、複数回繰り返すことを特徴とする。
量ポリエチレン粒子の表面付近を融解させて周りのカーボンナノファイバーの空隙に侵入させ、超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させることができる。さらに、本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法の工程(b)によれば、第2の温度で加圧して成形することで炭素繊維複合材料内のエアを除いてボイドを減少させ、寸法精度も向上することができる。本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、工程(a)で超高分子量ポリエチレンの粒子の周りを覆うようにカーボンナノファイバーが配置するので、工程(b)で微小サイズの超高分子量ポリエチレンの系を囲うようにカーボンナノファイバーが存在した炭素繊維複合材料を成形することができる。また、本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料を容易に成形することができる。
前記第1の温度は、130℃以上180℃未満であって、
前記第2の温度は、180℃以上230℃以下であることができる。
前記第1の温度は、130℃以上160℃以下であることができる。
前記工程(b)は、真空状態で成形することができる。
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであって、
前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバーを1重量部以上15重量部未満含むことができる。
前記超高分子量ポリエチレンの平均粒径は10〜200μmであることができる。
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、市販されている粒子状の超高分子量ポリエチレン樹脂であって、粘度法で測定した平均分子量が好ましくは100万g/mol〜800万g/mol、さらに好ましくは300万g/mol〜800万g/molである。超高分子量ポリエチレンの平均粒径は、10〜200μmであることが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、融解温度(融点)が130℃〜135℃であり、超高分子量ポリエチレンの粒子同士が融着し始める流動開始温度が180℃以上であり、超高分子量ポリエチレンが熱分解し始める熱劣化開始温度(熱分解温度)が230℃以上であることが好ましい。市販されている超高分子量ポリエチレンとしては、例えば、三井化学工業のハイゼックスミリオン、旭化成工業のサンテック、Ticona社のHOSTALRN.GUR、ハーキュルスのHIFLAX.100などがある。
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであることが好ましく、炭素繊維複合材料の強度を向上させるためには0.5ないし160nmであることがさらに好ましい。さらに、カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状であっても、湾曲繊維状であってもよい。カーボンナノファイバーの配合量は、特に限定されず、用途に応じて設定できるが、超高分子量ポリエチレン100重量部(phr)に対してカーボンナノファイバー1重量部(phr)以上15重量部未満(phr)が成形性の点で好ましい。
本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを混合し、第1の温度に設定した金型内に充填し予備加圧して超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させる工程(a)と、予備加圧した超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを第2の温度に設定した金型内で加圧して成形して炭素繊維複合材料を得る工程(b)と、を含み、前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であって、前記第2の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であり、前記工程(a)は、複数回繰り返し行う。
炭素繊維複合材料について説明する。
炭素繊維複合材料は、超高分子量ポリエチレンの微小系例えば原料時の超高分子量ポリエチレンの粒子と同じくらい小さい系を取り囲むようにカーボンナノファイバーが配置され、多数のケージセルレーションを構成している。前記製造方法によって得られた炭素繊維複合材料は、例えば、超高分子量ポリエチレン100重量部に対してカーボンナノファイバー1重量部以上15重量部未満含み、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核1H、150℃で測定した、特性緩和時間(T2’H/150℃)が800μ秒以上1300μ秒未満であることができる。
1/T2’H=fa/T2a+fb/T2b+fc/T2c・・・
と表すことができる。カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料は、150℃におけるハーンエコー法による特性緩和時間(T2’H/150℃)が小さくなる。なお、T2’Hにおける「H」は、ハーンエコー法で測定したことを示している。
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、三井化学社製ハイゼックスミリオンの粒子状の超高分子量ポリエチレン樹脂であって、粘度法で測定した平均分子量が550万g/molを用いた。粒子状の超高分子量ポリエチレンを融着防止のため石英板(0.5g)で挟み、厚さ約1mmのシート状に圧縮成形し、熱機械分析装置(TMA)によって実質荷重+0.5gで圧縮し、温度変化に対する熱変形量(μm)を測定した。測定装置は、SII社製TMA/SS6100を用いた。測定結果は、図1に示す。
図1の測定結果によれば、本実施例で用いられた超高分子量ポリエチレンは、点Aにおいて膨張率が大きくなり、点Bにおいてさらに急激に膨張率が大きくなり、点Cにおいてほぼ膨張しなくなり、点Dにおいて急激な収縮を開始した。これらの結果から、点Aが約60℃のガラス転移点、点Bが約130℃の融解温度、点Cが160℃の膨張停止温度、点Dが180℃の流動開始温度であることがわかった。なお、点Bについては、示差走査熱量分析(DSC)によって融解温度を確認した。
工程(a):
まず、ミキサーに、表1に示す所定量の超高分子量ポリエチレン(100重量部(phr))と、カーボンナノファイバーと、を投入し、高速攪拌して混合後、粉体状の混合物をミキサーから取り出した。
そして、粉体状の混合物を、150℃に加熱された金型内に充填し、3分間100kgf/cm2で予備加圧した。なお、超高分子量ポリエチレン100重量部(phr)に対してカーボンナノファイバーが5重量部(phr)を超えると工程(b)の成形が難しくなったため、実施例2,3及び比較例3においては、予備加圧した粉末状の混合物に対しさらに高速攪拌と予備加圧を2回繰返し行なった。
工程(b):
予備加圧された粉末状の混合物を220℃に加熱された金型内に充填し、3分間加圧してプレス成形し、それぞれ厚さ1mmのシート状の炭素繊維複合材料に成形した。
また、比較例1は超高分子量ポリエチレン単体を220℃の金型内で3分間100kgf/cm2でプレス成形し、比較例2は超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを高速攪拌した後、220℃の金型内で3分間プレス成形し、それぞれ厚さ1mmのシート状に成形した。
なお、カーボンナノファイバーを15重量部含む比較例3の粉末状の混合物は工程(b)において炭素繊維複合材料のサンプルが成形できなかった。
表1において、原料の超高分子量ポリエチレンの「UHMWPE」は粘度法で測定した平均分子量が約550万g/molの三井化学社製ハイゼックスミリオン、「気相成長炭素繊維」は平均直径約87nmで平均長さ約10μmの気相成長法で製造したマルチウォールカーボンナノチューブであり、CNT13はILJIN社製の平均直径が13nmのマルチウォールカーボンナノチューブ(CVD法)である。
図2は、実施例2の炭素繊維複合材料の断面の光学顕微鏡写真である。図2において、黒色のカーボンナノファイバーに囲われた白色の超高分子量ポリエチレンの微小セルが全体に多数形成されていることが観察できた。
実施例2,3、参考例1,2及び比較例1、2の炭素繊維複合材料サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核が1H、150℃、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜y)にて、減衰曲線を測定し、炭素繊維複合材料サンプルの150℃における特性緩和時間(T2’H)を測定した。測定結果を表1に示す。
さらに、比較例1の超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてハーンエコー法によって同様にして測定した特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)に対して、実施例2,3、参考例1,2の炭素繊維複合材料の特性緩和時間(T2’H/150℃)が低下した割合((T2’Hpe−T2’H)/T2’Hpe)をカーボンナノファイバー1重量部当たりで計算した。例えば参考例1の場合、(1300μ秒−1250μ秒)/1300μ秒/1phr×100=3.8%と計算した。計算結果を表1の「T2’H低下率」に示す。なお、原料の粒子状の超高分子量ポリエチレンの特性緩和時間(T2’H)は1390μ秒であった。
また、パルス法NMRを用いてソリッドエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核が1H、150℃、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ソリッドエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−90゜y)にて、減衰曲線を測定し、炭素繊維複合材料サンプルの150℃における特性緩和時間(T2’S)を検出した。測定結果を表1に示す。なお、ハーンエコー法で測定した特性緩和時間(T2’H)と区別するため、ソリッドエコー法で測定した特性緩和時間はT2’Sとした。
さらに、比較例1の超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって同様にして測定した特性緩和時間(T2’Spe/150℃)に対して、実施例2,3及び参考例1,2の炭素繊維複合材料の特性緩和時間(T2’S/150℃)が低下した割合((T2’Spe−T2’S)/T2’Spe)をカーボンナノファイバー1重量部当たりで計算した。例えば参考例1の場合、(1110μ秒−1000μ秒)/1110μ秒/1phr×100=9.9%と計算した。計算結果を表1の「T2’S低下率」に示す。
炭素繊維複合材料サンプルを短冊形(40×1×5(巾)mm)に切り出した試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−100〜300℃、動的ひずみ±0.05%、周波数10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い動的弾性率(E’、単位はMPa)を測定した。測定温度が30℃と200℃における動的弾性率(E’)の測定結果を表1に示す。
炭素繊維複合材料サンプルを1A形のダンベル形状に切り出した試験片について、東洋精機社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。これらの結果を表1に示す。
厚さ約1mmの炭素繊維複合材料サンプルを熱機械分析装置(TMA)によって無負荷で寸法変化を測定した。そして、融解による大きな変形を開始する温度を、変形開始温度とした。測定装置は、SII社製TMA/SS6100を用いた。その結果を表1に示す。なお、表1において、(測定温度範囲不明)−100℃〜300℃で大きな変形が見られなかった場合を「無し」と記載した。
炭素繊維複合材料サンプルについて、熱重量分析(TG)法によって昇温速度20℃/minで昇温しながら重量変化を測定したとき、熱分解によって重量が減少し始める温度を熱劣化開始温度として得た。測定装置は、SII社製TG/DTA6300を用いた。その結果を表1に示す。
B 融解温度
C 膨張停止温度
D 流動開始温度
Claims (6)
- 粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを混合し、第1の温度に設定した金型内に充填し予備加圧して超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させる工程(a)と、
予備加圧した超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを第2の温度に設定した金型内で加圧して成形して炭素繊維複合材料を得る工程(b)と、
を含み、
前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であって、
前記第2の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であり、
前記工程(a)は、複数回繰り返す、炭素繊維複合材料の製造方法。 - 請求項1において、
前記第1の温度は、130℃以上180℃未満であって、
前記第2の温度は、180℃以上230℃以下である、炭素繊維複合材料の製造方法。 - 請求項1または2において、
前記第1の温度は、130℃以上160℃以下である、炭素繊維複合材料の製造方法。 - 請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記工程(b)は、真空状態で成形する、炭素繊維複合材料の製造方法。 - 請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであって、
前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバーを1重量部以上15重量部未満含む、炭素繊維複合材料の製造方法。 - 請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記超高分子量ポリエチレンの平均粒径は10〜200μmである、炭素繊維複合材料の製造方法。
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