JP4845138B2 - 炭素繊維複合材料の製造方法 - Google Patents

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本発明は、カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料の製造方法に関する。
一般に、カーボンナノファイバーはマトリックスに分散させにくいフィラーであった本発明者等が先に提案した炭素繊維複合材料の製造方法によれば、エラストマーとカーボンナノファイバーを混練し、剪断力によって凝集性の強いカーボンナノファイバーを均一に分散させることができた(例えば、特許文献1)。より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合し、この状態で、分子長が適度に長く、分子運動性の高い(弾性を有する)エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの変形に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散していた。このように、マトリックスへのカーボンナノファイバーの分散性を向上させることで、高価なカーボンナノファイバーを効率よく複合材料のフィラーとして用いることができるようになった。
また、本発明者等が先に提案した熱可塑性樹脂をマトリックスとした炭素繊維複合材料の製造方法によれば、これまで困難とされていた熱可塑性樹脂マトリックスに対するカーボンナノファイバーの分散性を改善することができた(例えば、特許文献2参照)。
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などは、医療分野、特に生体関節に置換して用いられる人工関節の部材に採用されている(例えば、特許文献3参照)。人工関節としては、膝関節、股関節、肘関節、指関節などが十分に機能しなくなった場合に置換して用いられている。人工関節は、繰返し摩擦や荷重を受けるため、超高分子量ポリエチレンにおいては接触面における耐摩耗性の要求が高かった。
特開2005−97525号公報 特開2005−336235号公報 特開2002−301093号公報
本発明の目的は、カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料の製造方法を提供することにある。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを混合し、第1の温度に設定した金型内に充填し予備加圧して超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させる工程(a)と、
予備加圧した超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを第2の温度に設定した金型内で加圧して成形して炭素繊維複合材料を得る工程(b)と、
を含み、
前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であって、
前記第2の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であり、
前記工程(a)は、複数回繰り返すことを特徴とする。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法の工程(a)によれば、超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを混合し、第1の温度で予備加圧することで超高分子
量ポリエチレン粒子の表面付近を融解させて周りのカーボンナノファイバーの空隙に侵入させ、超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させることができる。さらに、本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法の工程(b)によれば、第2の温度で加圧して成形することで炭素繊維複合材料内のエアを除いてボイドを減少させ、寸法精度も向上することができる。本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、工程(a)で超高分子量ポリエチレンの粒子の周りを覆うようにカーボンナノファイバーが配置するので、工程(b)で微小サイズの超高分子量ポリエチレンの系を囲うようにカーボンナノファイバーが存在した炭素繊維複合材料を成形することができる。また、本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料を容易に成形することができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記第1の温度は、130℃以上180℃未満であって、
前記第2の温度は、180℃以上230℃以下であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記第1の温度は、130℃以上160℃以下であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記工程(b)は、真空状態で成形することができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであって、
前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバーを1重量部以上15重量部未満含むことができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記超高分子量ポリエチレンの平均粒径は10〜200μmであることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の一実施形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを混合し、第1の温度に設定した金型内に充填し予備加圧して超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させる工程(a)と、予備加圧した超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを第2の温度に設定した金型内で加圧して成形して炭素繊維複合材料を得る工程(b)と、を含み、前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であって、前記第2の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であり、前記工程(a)は、複数回繰り返すことを特徴とする。
(I)超高分子量ポリエチレン
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、市販されている粒子状の超高分子量ポリエチレン樹脂であって、粘度法で測定した平均分子量が好ましくは100万g/mol〜800万g/mol、さらに好ましくは300万g/mol〜800万g/molである。超高分子量ポリエチレンの平均粒径は、10〜200μmであることが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、融解温度(融点)が130℃〜135℃であり、超高分子量ポリエチレンの粒子同士が融着し始める流動開始温度が180℃以上であり、超高分子量ポリエチレンが熱分解し始める熱劣化開始温度(熱分解温度)が230℃以上であることが好ましい。市販されている超高分子量ポリエチレンとしては、例えば、三井化学工業のハイゼックスミリオン、旭化成工業のサンテック、Ticona社のHOSTALRN.GUR、ハーキュルスのHIFLAX.100などがある。
(II)カーボンナノファイバー
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであることが好ましく、炭素繊維複合材料の強度を向上させるためには0.5ないし160nmであることがさらに好ましい。さらに、カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状であっても、湾曲繊維状であってもよい。カーボンナノファイバーの配合量は、特に限定されず、用途に応じて設定できるが、超高分子量ポリエチレン100重量部(phr)に対してカーボンナノファイバー1重量部(phr)以上15重量部未満(phr)が成形性の点で好ましい。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
カーボンナノファイバーは、超高分子量ポリエチレンと混合される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、超高分子量ポリエチレンとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(III)炭素繊維複合材料の製造方法
本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを混合し、第1の温度に設定した金型内に充填し予備加圧して超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させる工程(a)と、予備加圧した超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを第2の温度に設定した金型内で加圧して成形して炭素繊維複合材料を得る工程(b)と、を含み、前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であって、前記第2の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であり、前記工程(a)は、複数回繰り返し行う
工程(a)の粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとの混合は、カーボンナノファイバーが炭素繊維複合材料の一部に偏在することを防止することができるため高速攪拌が好ましく、このような高速攪拌に用いられる攪拌機としては、一般に2種類以上の粒子状の物質を混合するミキサやブレンダを用いることができる。このような混合操作は、超高分子量ポリエチレンの融解温度未満で行なうことがカーボンナノファイバーの偏在を防止するために好ましい。このようにして得られた粉体状の混合物は、例えば平均粒径が10〜200μmの超高分子量ポリエチレンの粒子を、例えば平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーが囲むように存在することができる。そして、例えば攪拌操作によって得られた粉体状の混合物を、第1の温度に設定した金型内に充填し予備加圧することで超高分子量ポリエチレン粒子の表面付近を融解させて周りのカーボンナノファイバーの空隙に侵入させ、超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させることができる。金型の第1の温度は、超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であって、例えば130℃以上180℃未満であることが好ましい。第1の温度で予備加圧しても超高分子量ポリエチレンの粒子同士は融着しないので、予備加圧後もカーボンナノファイバーが付着した超高分子量ポリエチレンは粉体状であるが、予備加圧によって超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとは濡れて超高分子量ポリエチレンの表面にカーボンナノファイバーが埋め込まれる。
工程(a)は、複数回繰り返し行われる。すなわち、超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを混合して予備加圧した後、さらに混合と予備加圧を繰り返すことができる。このように工程(a)を繰返し実施することで、カーボンナノファイバーの配合量を増やしても工程(b)で炭素繊維複合材料の成形が可能になる。例えば、1回目の工程(a)で超高分子量ポリエチレンに付着しなかったカーボンナノファイバーがたくさんあると、工程(b)で一体化した炭素繊維複合材料に成形できないことがある。そのため、例えば、カーボンナノファイバーの配合量を増やして1回目の工程(a)では超高分子量ポリエチレンに付着しなかったカーボンナノファイバーが残ってしまう場合、2回目以降の工程(a)を実施することでその残ったカーボンナノファイバーが超高分子量ポリエチレンに付着でき、工程(b)において炭素繊維複合材料が成形できる。また、例えば、1回目の工程(a)では超高分子量ポリエチレンに十分に濡れていなかったカーボンナノファイバーがあった場合、2回目以降の工程(a)を実施することで十分に濡れることができる。このように、複数回の工程(a)を実施することで超高分子量ポリエチレンの表面に緻密にカーボンナノファイバーを付着させることができる。
工程(b)は、予備加圧した超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを第2の温度に設定した金型内で加圧して成形して一体化した炭素繊維複合材料を得ることができる。工程(b)の成形は、例えばプレス成形法などによって所望の形状例えばシート状に成形した炭素繊維複合材料を得ることができる。工程(b)における金型の第2の温度は、超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であって、例えば180℃以上230℃以下であることが好ましい。第2の温度の金型内で超高分子量ポリエチレンは流動開始温度以上に昇温されると流動が可能となり、加圧されることで他の粒子と結合すると共に所望の形状に成形することができる。工程(b)は、例えば真空状態で成形することが好ましく、少なくとも金型内を真空状態にしてプレス成形することで炭素繊維複合材料内のボイドを減少させ、成形品としての寸法精度を向上させることができる。
(IV)炭素繊維複合材料
炭素繊維複合材料について説明する。
炭素繊維複合材料は、超高分子量ポリエチレンの微小系例えば原料時の超高分子量ポリエチレンの粒子と同じくらい小さい系を取り囲むようにカーボンナノファイバーが配置され、多数のケージセルレーションを構成している。前記製造方法によって得られた炭素繊維複合材料は、例えば、超高分子量ポリエチレン100重量部に対してカーボンナノファイバー1重量部以上15重量部未満含み、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核H、150℃で測定した、特性緩和時間(T2’H/150℃)が800μ秒以上1300μ秒未満であることができる。
ハーンエコー法による特性緩和時間(T2’H)は、超高分子量ポリエチレンの分子運動性を示す尺度であって、多成分系の平均的緩和時間を表す。したがって、特性緩和時間(T2’H)は、ハーンエコー法によって検出された複数の緩和時間の平均値であり、
1/T2’H=fa/T2a+fb/T2b+fc/T2c・・・
と表すことができる。カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料は、150℃におけるハーンエコー法による特性緩和時間(T2’H/150℃)が小さくなる。なお、T2’Hにおける「H」は、ハーンエコー法で測定したことを示している。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。(1)超高分子量ポリエチレンの熱機械分析装置(TMA)による測定
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、三井化学社製ハイゼックスミリオンの粒子状の超高分子量ポリエチレン樹脂であって、粘度法で測定した平均分子量が550万g/molを用いた。粒子状の超高分子量ポリエチレンを融着防止のため石英板(0.5g)で挟み、厚さ約1mmのシート状に圧縮成形し、熱機械分析装置(TMA)によって実質荷重+0.5gで圧縮し、温度変化に対する熱変形量(μm)を測定した。測定装置は、SII社製TMA/SS6100を用いた。測定結果は、図1に示す。
図1の測定結果によれば、本実施例で用いられた超高分子量ポリエチレンは、点Aにおいて膨張率が大きくなり、点Bにおいてさらに急激に膨張率が大きくなり、点Cにおいてほぼ膨張しなくなり、点Dにおいて急激な収縮を開始した。これらの結果から、点Aが約60℃のガラス転移点、点Bが約130℃の融解温度、点Cが160℃の膨張停止温度、点Dが180℃の流動開始温度であることがわかった。なお、点Bについては、示差走査熱量分析(DSC)によって融解温度を確認した。
(2)実施例2,3、参考例1,2及び比較例1〜3の炭素繊維複合材料サンプルの作製
工程(a):
まず、ミキサーに、表1に示す所定量の超高分子量ポリエチレン(100重量部(phr))と、カーボンナノファイバーと、を投入し、高速攪拌して混合後、粉体状の混合物をミキサーから取り出した。
そして、粉体状の混合物を、150℃に加熱された金型内に充填し、3分間100kgf/cmで予備加圧した。なお、超高分子量ポリエチレン100重量部(phr)に対してカーボンナノファイバーが5重量部(phr)を超えると工程(b)の成形が難しくなったため、実施例2,3及び比較例3においては、予備加圧した粉末状の混合物に対しさらに高速攪拌と予備加圧を2回繰返し行なった。
工程(b):
予備加圧された粉末状の混合物を220℃に加熱された金型内に充填し、3分間加圧してプレス成形し、それぞれ厚さ1mmのシート状の炭素繊維複合材料に成形した。
また、比較例1は超高分子量ポリエチレン単体を220℃の金型内で3分間100kgf/cmでプレス成形し、比較例2は超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを高速攪拌した後、220℃の金型内で3分間プレス成形し、それぞれ厚さ1mmのシート状に成形した。
なお、カーボンナノファイバーを15重量部含む比較例3の粉末状の混合物は工程(b)において炭素繊維複合材料のサンプルが成形できなかった。
表1において、原料の超高分子量ポリエチレンの「UHMWPE」は粘度法で測定した平均分子量が約550万g/molの三井化学社製ハイゼックスミリオン、「気相成長炭素繊維」は平均直径約87nmで平均長さ約10μmの気相成長法で製造したマルチウォールカーボンナノチューブであり、CNT13はILJIN社製の平均直径が13nmのマルチウォールカーボンナノチューブ(CVD法)である。
図2は、実施例2の炭素繊維複合材料の断面の光学顕微鏡写真である。図2において、黒色のカーボンナノファイバーに囲われた白色の超高分子量ポリエチレンの微小セルが全体に多数形成されていることが観察できた。
(3)パルス法NMRを用いた測定
実施例2,3、参考例1,2及び比較例1、2の炭素繊維複合材料サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、150℃、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜y)にて、減衰曲線を測定し、炭素繊維複合材料サンプルの150℃における特性緩和時間(T2’H)を測定した。測定結果を表1に示す。
さらに、比較例1の超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてハーンエコー法によって同様にして測定した特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)に対して、実施例2,3、参考例1,2の炭素繊維複合材料の特性緩和時間(T2’H/150℃)が低下した割合((T2’Hpe−T2’H)/T2’Hpe)をカーボンナノファイバー1重量部当たりで計算した。例えば参考例1の場合、(1300μ秒−1250μ秒)/1300μ秒/1phr×100=3.8%と計算した。計算結果を表1の「T2’H低下率」に示す。なお、原料の粒子状の超高分子量ポリエチレンの特性緩和時間(T2’H)は1390μ秒であった。
また、パルス法NMRを用いてソリッドエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、150℃、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ソリッドエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−90゜y)にて、減衰曲線を測定し、炭素繊維複合材料サンプルの150℃における特性緩和時間(T2’S)を検出した。測定結果を表1に示す。なお、ハーンエコー法で測定した特性緩和時間(T2’H)と区別するため、ソリッドエコ法で測定した特性緩和時間はT2’Sとした。
さらに、比較例1の超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって同様にして測定した特性緩和時間(T2’Spe/150℃)に対して、実施例2,3及び参考例1,2の炭素繊維複合材料の特性緩和時間(T2’S/150℃)が低下した割合((T2’Spe−T2’S)/T2’Spe)をカーボンナノファイバー1重量部当たりで計算した。例えば参考例1の場合、(1110μ秒−1000μ秒)/1110μ秒/1phr×100=9.9%と計算した。計算結果を表1の「T2’S低下率」に示す。
(4)動的粘弾性試験
炭素繊維複合材料サンプルを短冊形(40×1×5(巾)mm)に切り出した試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−100〜300℃、動的ひずみ±0.05%、周波数10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い動的弾性率(E’、単位はMPa)を測定した。測定温度が30℃と200℃における動的弾性率(E’)の測定結果を表1に示す。
(5)引張強さ(TB)及び破断伸び(EB)の測定
炭素繊維複合材料サンプルを1A形のダンベル形状に切り出した試験片について、東洋精機社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。これらの結果を表1に示す。
(6)変形開始温度の測定
厚さ約1mmの炭素繊維複合材料サンプルを熱機械分析装置(TMA)によって無負荷で寸法変化を測定した。そして、融解による大きな変形を開始する温度を、変形開始温度とした。測定装置は、SII社製TMA/SS6100を用いた。その結果を表1に示す。なお、表1において、(測定温度範囲不明)−100℃〜300℃で大きな変形が見られなかった場合を「無し」と記載した。
(7)熱劣化開始温度(熱分解温度)の測定
炭素繊維複合材料サンプルについて、熱重量分析(TG)法によって昇温速度20℃/minで昇温しながら重量変化を測定したとき、熱分解によって重量が減少し始める温度を熱劣化開始温度として得た。測定装置は、SII社製TG/DTA6300を用いた。その結果を表1に示す。
表1から、本発明の実施例2,3及び参考例1,2によれば、以下のことが確認された。すなわち、本発明の実施例2,3及び参考例1,2の炭素繊維複合材料は、比較例1、2に比べて特性緩和時間(T2’H/150℃)が短く、950μ秒〜1250μ秒であった。また、本発明の実施例2,3及び参考例1,2の炭素繊維複合材料は、比較例1〜2に比べて特に高温(200℃)における動的粘弾性率(E’)が向上したため、耐摩耗性も向上したと推測できた。実施例2,3及び参考例1,2の炭素繊維複合材料においては、変形開始温度が200℃以上の温度であり、高い耐熱性を示すことがわかった。このように耐熱性が向上したことで、耐摩耗性も向上することが推測できた。
熱機械分析装置(TMA)によって測定した温度変化−熱変形量を示すグラフである。 実施例2の炭素繊維複合材料の断面の光学顕微鏡写真である。
A ガラス転移点
B 融解温度
C 膨張停止温度
D 流動開始温度

Claims (6)

  1. 粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを混合し、第1の温度に設定した金型内に充填し予備加圧して超高分子量ポリエチレンにカーボンナノファイバーを付着させる工程(a)と、
    予備加圧した超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーを第2の温度に設定した金型内で加圧して成形して炭素繊維複合材料を得る工程(b)と、
    を含み、
    前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であって、
    前記第2の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であり、
    前記工程(a)は、複数回繰り返す、炭素繊維複合材料の製造方法。
  2. 請求項において、
    前記第1の温度は、130℃以上180℃未満であって、
    前記第2の温度は、180℃以上230℃以下である、炭素繊維複合材料の製造方法。
  3. 請求項1または2において、
    前記第1の温度は、130℃以上160℃以下である、炭素繊維複合材料の製造方法。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項において、
    前記工程(b)は、真空状態で成形する、炭素繊維複合材料の製造方法。
  5. 請求項1ないしのいずれか1項において、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであって、
    前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバーを1重量部以上15重量部未満含む、炭素繊維複合材料の製造方法。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項において、
    前記超高分子量ポリエチレンの平均粒径は10〜200μmである、炭素繊維複合材料の製造方法。
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