JP4844679B2 - 溶銑の脱硫処理方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載から分かるように、脱硫剤を含むフラックスを複数回に分けて溶銑に添加する場合でも、脱硫剤の添加は、従来、添加した脱硫剤が溶銑内に分散できるような攪拌状態のときに、新たな脱硫剤の添加を実施している。
本発明は、上記のような点に着目したもので、添加した脱硫剤の反応効率を向上可能な溶銑の脱硫処理方法を提供することを目的としている。
脱硫剤を複数回に分けて溶銑に添加し、2回目以降の脱硫剤の添加のうち、少なくとも一回の添加は、一時的に上記攪拌を停止若しくは攪拌力を弱めることで溶銑表面にスラグを浮上させ、その浮上したスラグ上に脱硫剤を添加して実施することを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した構成に対して、上記スラグ上への脱硫剤の添加は、インペラの回転軸近傍に位置するスラグとすることを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載した構成に対し、上記インペラの回転数を一時的に落とすことでスラグを浮上させる際に、インペラの浸漬深さを浅くすることを特徴とするものである。
なお、脱硫反応は、反応界面積(脱硫剤と溶銑との接触面積)が大きいほど反応が促進される。
また、請求項3に係る発明によれば、インペラの回転によって、溶銑の表面は、インペラの回転軸に向けて傾斜しており、浮上したスラグの層は、回転軸近傍に近づくにつれて厚くなる。
また、請求項5に係る発明によれば、インペラの浸漬深さを浅くすることで、浮上したスラグとインペラとが衝突して、新たな界面を増やすことで脱硫の反応率を向上させる。更に、請求項4でインペラを下方に移動させる際に、浮上させたスラグとインペラとの衝突回数を増加出来ると共に、予め上方に移動させることから、下方に移動させたインペラの高さを最適な高さにすることが出来る。又は上記インペラの下降量を稼ぐことが出来る。
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、以下に開示された実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態における溶銑の脱硫処理設備を示す概念図である。また図3には、図1に示された脱硫処理設備の利用状態の一例が示されている。
まず、設備構成について説明する。
図1中、符号1は溶銑鍋である。この溶銑鍋1内に溶銑2が収容されている。その溶銑2を収容した溶銑鍋1内に対し上側からインペラ3を挿入することで、当該インペラ3を溶銑2内に浸漬した状態とする。上記インペラ3は、例えば翼型のインペラ3から構成する。そのインペラ3の回転軸4は、軸を上下に向けて配置され、駆動モータ5によって回転可能となっている。駆動モータ5は、コントローラ7からの指令に応じて回転数の制御が実施される。そして、インペラ3を所定回転数で回転駆動することで、溶銑鍋1中の溶銑2が機械的に攪拌され、溶銑2に添加した脱硫剤8を溶銑2中に分散させることで脱硫が可能となっている。
コントローラ7には、インペラ3の回転パターンと、脱硫剤8の添加パターンのスケジュール情報を入力する。
次に、上記設備及び上記脱硫スケジュールを使用した溶銑2の脱硫処理方法の例について説明する。
コントローラ7は、脱硫処理開始と判定すると、モータ5に上記脱硫処理用の回転数N1とする回転数指令を出力する。すなわち、コントローラ7は、停止していたインペラ3を、脱硫処理用の回転数N1を目標値として所定の回転数増加率で上昇させる指令をモータ5に出力する。
これによって、インペラ3は、上記脱硫処理用の回転数N1に向けて所定の上昇率で回転数が上昇する。そして、脱硫処理用の回転数N1となったらその回転数を維持するように回転数制御が行われる。
添加された脱硫剤8は、順次、インペラ3の回転によって溶銑2の中に取り込まれ、インペラ3の回転による攪拌によって当該溶銑2中に分散する。溶銑2中に分散した脱硫剤8は、溶銑2中の硫黄(S)と脱硫反応が起こる。
以上のように、浮上していたスラグ9と共に新たな脱硫剤8が溶銑2内に取り込まれて分散することで、脱硫剤8の凝集を抑えつつ、脱硫剤8を溶銑2内に分散させることが可能となる。この結果、脱硫剤8と溶銑2との接触面積を稼ぐことが出来て、脱硫反応を促進することが可能となる。
このインペラ3の回転数の上昇に同期をとって、第3回目の脱硫剤添加指令を脱硫剤添加装置6に出力する。添加位置は、インペラ3の回転軸4近傍が好ましい。
図8に従来技術における脱硫剤の添加方法(上段)、すなわち溶銑上への添加の模式図と、その際の溶銑上での脱硫剤の凝集挙動(下段)を示す。
脱硫剤8、特にCaO系の脱硫剤8は、溶銑2上で凝集しやすいために一度に投入すると脱硫剤8が図8下段に示すように凝集して大きな塊となり未反応のCaOが多くなるが、分割して添加することで凝集を低減できる。更に、本実施形態では、第2回目以降の脱硫剤8の添加を、浮上したスラグ9に向けて行うことで、更に、溶銑2上での脱硫剤8の凝集を抑制する結果、脱硫反応の効率を更に促進することが出来る。
また、上記実施形態では、一時的にインペラ3の回転数を低下して脱硫剤8を添加する場合を例示しているが、一時的にインペラ3を停止して脱硫剤8を添加しても良い。但し、インペラ3を停止する場合には、その分、脱硫処理時間が長くなる。
但し、インペラ3の回転数を上昇しながら脱硫剤8を添加する方が、脱硫処理時間の短縮となる。その理由は、次の通りである。
また、溶銑2の攪拌は、インペラ3でなくても良い。他の手段によって溶銑2の攪拌を行う脱硫処理設備にも適用可能である。
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記実施形態と同様な装置等については同一の符号を付して説明する。また以下の例に限定されないことも同様である。
通常のインペラ3の昇降制御は、脱硫処理前にインペラ3を溶銑鍋1内に下降してインペラ3の溶銑2への浸漬を行い、続けて脱硫処理中はインペラ3の高さを一定に保持しつつ回転させて攪拌を行い、更に、脱硫処理が終了したら、インペラ3を上昇させて当該インペラ3を溶銑鍋1から取り出す。
ここで、本実施形態におけるインペラ3の回転パターン及び脱硫剤8の添加パターンのスケジュールは、上記第1実施形態と同様とする。
以下の説明では、インペラ3の回転パターン及び脱硫剤8の添加パターンとして、図2のスケジュールを採用した場合を例示する。但し、インペラ3の回転パターン及び脱硫剤8の添加パターンは、これに限定されるものでは無い。
また、脱硫剤8の添加は、脱硫処理開始によってインペラ3の回転数を目的の脱硫処理用の回転数N1になった時点で、第1回目の添加処理として、例えば全体の1/2の脱硫剤8を添加する。また、インペラ3の回転数をスラグ浮上用回転数N2まで低下させたときに、それぞれ1/4の脱硫剤8を添加する。
インペラ3の昇降動作を中心に、本実施形態における動作等を図5〜図7に模式的に示す。 図5はインペラを上昇させた状態、図6は浮上したスラグに脱硫剤を添加する状態、図7はインペラを下降させる状態をそれぞれ示す。
ここで、回転数の減少と共にインペラ3の浸漬深さを浅くしていないのは、この時期はまた十分にスラグが浮上していないためである。そして、スラグ9が浮上すると推定される時期に合わせてインペラ3の上昇をさせている。
脱硫剤8の添加が終了したら、図7に白抜き矢印で示すようにインペラ3を下方に移動させる。インペラ3の下方への移動によって、浮上させたスラグ9を溶銑2内に巻き込みつつ(図7にて模式的に矢印で示す。)、インペラ3との衝突を増加させることで、脱硫反応の促進を図る。このとき、予めインペラ3を上昇に移動させているので、インペラ3の下降量を稼ぐことが出来て、その分、浮上させたスラグ9との衝突量を稼げる可能性がある。
ここで、脱硫処理時におけるインペラ3の昇降を行うことで、スラグの平均粒径が小さくなったことを確認している。
なお、初回の脱硫剤添加に際しても、以上に述べた目的等に応じて適宜インペラの昇降制御を行ってよい。
上記インペラ3の回転数を一時的に落とすことでスラグ9を浮上させる際に、インペラ3の浸漬深さを浅くする。インペラ3の浸漬深さを浅くすることで、浮上したスラグ9とインペラ3とが衝突して、新たな界面を増やすことで脱硫の反応率を向上させる。
なお、浮上させたスラグ9を巻き込む際に、インペラ3を複数回昇降させるようにしても良い。
なお通常の攪拌におけるインペラ上端面高さは静止湯面より100cm下とした。
「溶銑について」
処理前組成:C:4.3mass%、S:0.023mass%(S0)
処理量:300トン
「脱硫剤について」
種類:石灰
使用量:1500kg
回転数N1での処理1回あたり:約8分
回転数N2での処理1回あたり:約2分
「処理結果」
上記処理によって得られた結果は下記の通りである。なお、Sfは脱硫処理後の溶銑のS濃度である。
・第1実施形態:脱S率 ln(S0/Sf)=2.1
・第2実施形態:脱S率 ln(S0/Sf)=3.0
・比 較 例 :脱S率 ln(S0/Sf)=1.8
この結果から分かるように、本発明に基づき脱硫処理を行うことで脱硫効率が向上する。
2 溶銑
2a 表面
3 インペラ
4 回転軸
5 モータ
6 脱硫剤添加装置
7 コントローラ
8 脱硫剤
9 スラグ
N1 脱硫処理用の回転数
N2 スラグ浮上用回転数
Claims (5)
- 脱硫剤を添加した溶銑を攪拌することで、上記脱硫剤を分散して溶銑の脱硫処理を行う溶銑の脱硫処理方法において、
脱硫剤を複数回に分けて溶銑に添加し、2回目以降の脱硫剤の添加のうち、少なくとも一回の添加は、一時的に上記攪拌を停止若しくは攪拌力を弱めることで溶銑表面にスラグを浮上させ、その浮上したスラグ上に脱硫剤を添加して実施することを特徴とする溶銑の脱硫処理方法。 - 上記攪拌は、溶銑に浸漬したインペラを回転して実施し、
上記インペラの回転数を一時的に落とすことで、脱硫剤の添加のためにスラグを浮上させることを特徴とする請求項1に記載した溶銑の脱硫処理方法。 - 上記スラグ上への脱硫剤の添加は、インペラの回転軸近傍に位置するスラグとすることを特徴とする請求項2に記載した溶銑の脱硫処理方法。
- 上記インペラの回転数を一時的に落とすことで浮上させたスラグを、上記インペラの回転数を増加することで溶銑内に取り込み、その浮上させたスラグを溶銑内に取り込む際に、上記インペラを下方に移動させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載した溶銑の脱硫処理方法。
- 上記インペラの回転数を一時的に落とすことでスラグを浮上させる際に、インペラの浸漬深さを浅くすることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載した溶銑の脱硫処理方法。
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