JP4842888B2 - カーボンナノファイバー及びその製造方法並びに炭素繊維複合材料 - Google Patents

カーボンナノファイバー及びその製造方法並びに炭素繊維複合材料 Download PDF

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本発明は、マトリックス材料中との濡れ性が改善されたカーボンナノファイバー及びその製造方法並びにそのカーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料に関する。
一般に、カーボンナノファイバーはマトリックスに分散させにくいフィラーであった。本発明者等が先に提案した炭素繊維複合材料の製造方法によれば、これまで困難とされていたカーボンナノファイバーの分散性を改善し、エラストマーにカーボンナノファイバーを均一に分散させることができた(例えば、特許文献1参照)。このような炭素繊維複合材料の製造方法によれば、エラストマーとカーボンナノファイバーを混練し、剪断力によって凝集性の強いカーボンナノファイバーの分散性を向上させている。より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合し、この状態で、分子長が適度に長く、分子運動性の高い(弾性を有する)エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの変形に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散していた。このように、マトリックスへのカーボンナノファイバーの分散性を向上させることで、高価なカーボンナノファイバーを効率よく複合材料のフィラーとして用いることができるようになった。
カーボンナノファイバーは、炭化水素などのガスを金属系触媒の存在下で気相熱分解させる気相成長法によって製造されるものが工業的に量産化されている。このような量産化されているカーボンナノファイバーの中には、例えば、1000℃程度の加熱炉内で気相成長法によって製造され、さらに高温で熱処理して、黒鉛化が行なわれているものもあった(例えば、特許文献2参照)。このカーボンナノファイバーを黒鉛化するための熱処理温度は、例えば、2000℃以上であって、2500℃以上が良好で、特には2800℃〜3200℃が良好であるとされていた。しかしながら、このように黒鉛化されたカーボンナノファイバーの表面は、欠陥が少なく好ましい物性を有しているが、マトリックス材料例えばエラストマーとの濡れ性に劣る傾向があった。
特開2005−97525号公報 特開2006−198393号公報
本発明の目的は、マトリックス材料中との濡れ性が改善されたカーボンナノファイバー及びその製造方法並びにそのカーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料を提供することにある。
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
エラストマー中にカーボンナノファイバーが均一に分散した炭素繊維複合材料であって、
前記カーボンナノファイバーは、気相成長法によって製造された後、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理されて得られた平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーであり、
前記エラストマー100重量部に対して、前記カーボンナノファイバーを15〜120重量部含み、
23℃における破断伸びが95%以上であって、
前記エラストマー100重量部に配合された前記カーボンナノファイバー1重量部当たりにおける、前記エラストマー単体の100%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の100%モジュラスの上昇率が13%以上であることを特徴とする。
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、エラストマーに対するカーボンナノファイバーの濡れ性を改善し、カーボンナノファイバーによって剛性及び100%モジュラスを向上することができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記熱処理は、1200℃〜1500℃であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記熱処理されたカーボンナノファイバーは、ラマン散乱分光法によって測定される1600cm−1付近のピーク強度Gに対する1300cm−1付近のピーク強度Dの比(D/G)が1.25を超えかつ1.6未満であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
パルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって観測核がH、150℃で測定した、無架橋体における、スピン−スピン緩和時間(T2s/150℃)は5〜50μ秒であって、
パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核がH、150℃で測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100〜3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0〜0.1であることができる。
本発明にかかるカーボンナノファイバーは、
気相成長法によって製造された未処理カーボンナノファイバーを、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理して得られた平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーであることを特徴とする。
本発明にかかるカーボンナノファイバーによれば、マトリックス材料例えばエラストマーとの表面反応性が向上し、マトリックス材料に対するカーボンナノファイバーの濡れ性を改善することができる。
本発明にかかるカーボンナノファイバーにおいて、
前記熱処理は、1200℃〜1500℃であることができる。
本発明にかかるカーボンナノファイバーにおいて、
ラマン散乱分光法によって測定される1600cm−1付近のピーク強度Gに対する1300cm−1付近のピーク強度Dの比(D/G)が1.25を超えかつ1.6未満であることができる。
本発明にかかるカーボンナノファイバーの製造方法は、
気相成長法によって製造された未処理カーボンナノファイバーを、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理して、平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーを得ることを特徴とする。
本発明にかかるカーボンナノファイバーの製造方法によれば、マトリックス材料例えばエラストマーとの表面反応性が向上し、マトリックス材料との濡れ性が改善されたカーボンナノファイバーを製造することができる。
本発明にかかるカーボンナノファイバーの製造方法において、
前記熱処理は、1200℃〜1500℃であることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の一実施形態にかかる炭素繊維複合材料は、エラストマー中にカーボンナノファイバーが均一に分散した炭素繊維複合材料であって、前記カーボンナノファイバーは、気相成長法によって製造された後、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理されて得られた平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーであり、前記エラストマー100重量部に対して、前記カーボンナノファイバーを15〜120重量部含み、23℃における破断伸びが95%以上であって、前記エラストマー100重量部に配合された前記カーボンナノファイバー1重量部当たりにおける、前記エラストマー単体の100%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の100%モジュラスの上昇率が13%以上であることを特徴とする。
本発明の一実施形態にかかるカーボンナノファイバーは、気相成長法によって製造された未処理カーボンナノファイバーを、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理して得られた平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーであることを特徴とする。
本発明の一実施形態にかかるカーボンナノファイバーの製造方法は、気相成長法によって製造された未処理カーボンナノファイバーを、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理して、平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーを得ることを特徴とする。
(I)エラストマー
まず、炭素繊維複合材料に用いられるエラストマーについて説明する。
エラストマーは、分子量が好ましくは5000〜500万、さらに好ましくは2万〜300万である。エラストマーの分子量がこの範囲であると、エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エラストマーは、カーボンナノファイバーを分散させるために良好な弾性を有している。エラストマーは、粘性を有しているので凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、さらに弾性を有することによってカーボンナノファイバー同士を分離することができるため好ましい。
エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、観測核がH、30℃で測定した、未架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは100〜3000μ秒、より好ましくは200〜1000μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができ、すなわちカーボンナノファイバーを分散させるために適度な弾性を有することになる。また、エラストマーは粘性を有しているので、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合したときに、エラストマーは高い分子運動によりカーボンナノファイバーの相互の隙間に容易に侵入することができる。
また、エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核がH、30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100〜2000μ秒であることが好ましい。その理由は、上述した未架橋体と同様である。すなわち、上記の条件を有する未架橋体を架橋化すると、得られる架橋体のT2nはおおよそ上記範囲に含まれる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によりエラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかるエラストマーは中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
エラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーの末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有する。かかる不飽和結合または基としては、例えば、二重結合、三重結合、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などの官能基から選択される少なくともひとつであることができる。
本実施の形態では、エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーとカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。そして、エラストマーと、カーボンナノファイバーと、を混練する際に、エラストマーの分子鎖が切断されて生成したフリーラジカルは、カーボンナノファイバーの欠陥を攻撃し、カーボンナノファイバーの表面にラジカルを生成すると推測できる。
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。特に、エラストマーの混練の際にフリーラジカルを生成しやすい極性の高いエラストマー、例えば、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)などが好ましい。また、極性の低いエラストマー、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)であっても、混練の温度を比較的高温(例えばEPDMの場合、50℃〜150℃)とすることで、フリーラジカルを生成するので本発明に用いることができる。
本実施の形態のエラストマーは、ゴム系エラストマーあるいは熱可塑性エラストマーのいずれであってもよい。また、ゴム系エラストマーの場合、エラストマーは架橋体あるいは未架橋体のいずれであってもよいが、未架橋体を用いることが好ましい。
(II)カーボンナノファイバー
次に、カーボンナノファイバーについて説明する。
カーボンナノファイバーは、気相成長法によって製造された未処理カーボンナノファイバーを、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理して得られた平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーである。また、このようなカーボンナノファイバーの製造方法は、気相成長法によって製造された未処理カーボンナノファイバーを、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理することを特徴とする。この熱処理の温度は、1200℃〜1500℃であることが好ましい。熱処理の温度が気相成長法の反応温度より高温であることで、カーボンナノファイバーの表面構造を整え、表面の欠陥を減少させることができる。また、この熱処理が1100℃〜1600℃とすることで、マトリックス材料例えばエラストマーとの表面反応性が向上し、マトリックス材料中におけるカーボンナノファイバーの分散不良を改善することができる。
このように熱処理されたカーボンナノファイバーは、ラマン散乱分光法によって測定される1600cm−1付近のピーク強度Gに対する1300cm−1付近のピーク強度Dの比(D/G)が1.25を超えかつ1.6未満であることが好ましい。カーボンナノファイバーのラマンスペクトルにおいて、1300cm−1付近の吸収ピーク強度Dはカーボンナノファイバーを形成する結晶内の欠陥に基づく吸収であり、1600cm−1付近の吸収ピーク強度Gはカーボンナノファイバーを形成する結晶に基づく吸収である。このため、ピーク強度Dとピーク強度Gとの比(D/G)が小さい程、カーボンナノファイバーの結晶化程度が高いことを示す。したがって、ピーク強度Gに対するピーク強度Dの比(D/G)が小さいほどグラファイト化(黒鉛化)度が高く、表面に欠陥の少ないカーボンナノファイバーを意味する。したがって、前記範囲のピーク強度Gに対するピーク強度Dの比(D/G)を有するカーボンナノファイバーは、適度に表面に非結晶部分が存在するため、エラストマーとの濡れ性が良好であり、比較的欠陥も少ないのでカーボンナノファイバーの強度も十分であるため好ましい。
気相成長法は、炭化水素等のガスを金属系触媒の存在下で気相熱分解させて未処理カーボンナノファイバーを製造する方法である。より詳細に気相成長法を説明すると、例えば、ベンゼン、トルエン等の有機化合物を原料とし、フェロセン、ニッケルセン等の有機遷移金属化合物を金属系触媒として用い、これらをキャリアーガスとともに高温例えば400℃〜1000℃の反応温度に設定された反応炉に導入し、未処理カーボンナノファイバーを基板上に生成させる方法、浮遊状態で未処理カーボンナノファイバーを生成させる方法、あるいは未処理カーボンナノファイバーを反応炉壁に成長させる方法等を用いることができる。また、あらかじめアルミナ、炭素等の耐火性支持体に担持された金属含有粒子を炭素含有化合物と高温で接触させて、径が70nm以下の未処理カーボンナノファイバーを得ることもできる。
気相成長法で得られた未処理カーボンナノファイバーの平均直径は、1nm〜350nmが好ましく、10nm〜300nmもしくは50nm〜200nmが好適で、特には70nm〜100nmが好適である。
カーボンナノファイバーのマトリックス材料への配合量は、用途に応じて設定することができる。炭素繊維複合材料は、架橋体エラストマーあるいは無架橋体エラストマーをそのままエラストマー系材料として用いることができ、あるいは金属や樹脂の複合材料の原料として用いることができる。かかる金属あるいは樹脂の複合材料の原料として用いる炭素繊維複合材料は、金属あるいは樹脂にカーボンナノファイバーを混合する際に、カーボンナノファイバーの供給源としてのいわゆるマスターバッチとして用いることができる。
カーボンナノファイバーは、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面を1層もしくは多層に巻いた構造を有する。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブ、気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
(III)炭素繊維複合材料
次に、炭素繊維複合材料について説明する。
炭素繊維複合材料は、エラストマー中に熱処理されたカーボンナノファイバーが均一に分散している。カーボンナノファイバーは、熱処理によってエラストマーとの濡れ性が改善され、剛性の高い炭素繊維複合材料が得られる。
炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって観測核がH、150℃で測定した、無架橋体における、スピン−スピン緩和時間(T2s/150℃)は5〜50μ秒であって、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核がH、150℃で測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100〜3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0〜0.1であることが好ましい。
ソリッドエコー法によるスピン−スピン緩和時間(T2s,T2m,T2l)は、ゴム組成物の分子運動性を示す尺度であるが、炭素繊維複合材料は特にスピン−スピン緩和時間(T2s)が検出され、スピン−スピン緩和時間(T2m,T2l)はほとんど検出されない。スピン−スピン緩和時間(T2s)は、磁場の不均一性に強く影響を受けるため、炭素繊維複合材料の内部構造の不均一性を示す尺度とすることができる。カーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料は、150℃におけるソリッドエコー法によるスピン−スピン緩和時間(T2s/150℃)が小さくなる。
炭素繊維複合材料のT2n及びfnnは、マトリックスであるエラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されていることを表すことができる。つまり、エラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されているということは、エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、カーボンナノファイバーによって拘束を受けたエラストマー分子の運動性は、カーボンナノファイバーの拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、炭素繊維複合材料の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より短くなり、特にカーボンナノファイバーが均一に分散することでより短くなる。
また、エラストマー分子がカーボンナノファイバーによって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーによってエラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、カーボンナノファイバーの活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は、fn+fnn=1であるので、カーボンナノファイバーを含まないエラストマー単体の場合より小さくなる。したがって、炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が上記の範囲にあることによってカーボンナノファイバーが均一に分散されていることがわかる。
炭素繊維複合材料は、エラストマー100重量部(phr)に対してカーボンナノファイバー15〜120重量部(phr)を含み、23℃における破断伸びが95%以上であって、前記エラストマー100重量部に配合された前記カーボンナノファイバー1重量部当たりにおける、前記エラストマー単体の100%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の100%モジュラスの上昇率が13%以上であることができる。ここでいう100%モジュラスの上昇率は、エラストマー単体の100%モジュラスと、炭素繊維複合材料の100%モジュラスと、を測定し差を求め、その差をエラストマー単体の100%モジュラスで割り、さらにカーボンナノファイバーの配合量(重量部)で割ることで求められる。また、炭素繊維複合材料中にカーボンナノファイバー以外の例えばカーボンブラックを含む場合には、カーボンブラックによって上昇した100%モジュラス分を炭素繊維複合材料の100%モジュラスから差し引いた上で計算する。
(IV)炭素繊維複合材料の製造方法
次に、炭素繊維複合材料の製造方法について図1を用いて詳細に説明する。
図1は、オープンロール法による炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
原料となるエラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、未架橋体における、ネットワーク成分の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100〜3000μ秒であることが好ましい。図1に示すように、第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば0.5mm〜1.0mmの間隔で配置され、図1において矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。まず、第1のロール20に巻き付けられたエラストマー30の素練りを行ない、エラストマー分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。カーボンナノファイバーは、適度な熱処理によって表面欠陥が減少し、しかも適度に表面に非結晶化部分が残されているので、ラジカルや官能基を生成しやすくなり、素練りによって生成されたエラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となる。
次に、第1のロール20に巻き付けられたエラストマー30のバンク34に、カーボンナノファイバー40を投入し、混練する。エラストマー30とカーボンナノファイバー40とを混合する工程は、オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
さらに、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0〜0.5mmの間隔に設定し、混合物をオープンロールに投入して薄通しを複数回行なう。薄通しの回数は、例えば5回〜10回程度行なうことが好ましい。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることが好ましく、さらに1.05〜1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。薄通しして得られた炭素繊維複合材料は、ロールで圧延されてシート状に分出しされる。この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜30℃の比較的低い温度に設定して行われ、エラストマー30の実測温度も0〜50℃に調整されることが好ましい。このようにして得られた剪断力により、エラストマー30に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバー40がエラストマー分子に1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30中に分散される。特に、エラストマー30は、弾性と、粘性と、カーボンナノファイバー40との化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノファイバー40を容易に分散することができる。そして、カーボンナノファイバー40の分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。
より具体的には、オープンロールでエラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。カーボンナノファイバーの表面は高度にグラファイト化されていないため、表面に非結晶部分が適度に残されていて活性が高いため、エラストマー分子と結合し易い。次に、エラストマーに強い剪断力が作用すると、エラストマー分子の移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。本実施の形態によれば、炭素繊維複合材料が狭いロール間から押し出された際に、エラストマーの弾性による復元力で炭素繊維複合材料はロール間隔より厚く変形する。その変形は、強い剪断力の作用した炭素繊維複合材料をさらに複雑に流動させ、カーボンナノファイバーをエラストマー中に分散させると推測できる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程は、前記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノファイバーを分離できる剪断力をエラストマーに与えることができればよい。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。
炭素繊維複合材料の製造方法は、薄通し後の分出しされた炭素繊維複合材料に架橋剤を混合し、架橋して架橋体の炭素繊維複合材料としてもよい。また、炭素繊維複合材料は、架橋させずに成形してもよい。炭素繊維複合材料は、オープンロール法によって得られたシート状のままでもよいし、工程(d)で得られた炭素繊維複合材料を一般に採用されるゴムの成形加工例えば、射出成形法、トランスファー成形法、プレス成形法、押出成形法、カレンダー加工法などによって所望の形状例えばシート状に成形してもよい。
本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、通常、エラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。これらの配合剤は、例えばオープンロールにおけるカーボンナノファイバーの投入前にエラストマーに投入することができる。
なお、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法においては、ゴム弾性を有した状態のエラストマーにカーボンナノファイバーを直接混合したが、これに限らず、以下の方法を採用することもできる。まず、カーボンナノファイバーを混合する前に、エラストマーを素練りしてエラストマーの分子量を低下させる。エラストマーは、素練りによって分子量が低下すると、粘度が低下するため、凝集したカーボンナノファイバーの空隙に浸透しやすくなる。原料となるエラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核がH、30℃で測定した、未架橋体における、ネットワーク成分の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100〜3000μ秒のゴム状弾性体である。この原料のエラストマーを素練りしてエラストマーの分子量を低下させ、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が3000μ秒を越える液体状のエラストマーを得る。なお、素練り後の液体状のエラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は、素練りする前の原料のエラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)の5〜30倍であることが好ましい。この素練りは、エラストマーが固体状態のままで行なう一般的な素練りとは異なり、強剪断力を例えばオープンロール法で与えることによってエラストマーの分子を切断し分子量を著しく低下させ、混練に適さない程の流動を示すまで、例えば液体状態になるまで行なわれる。この素練りは、例えばオープンロール法を用いた場合、ロール温度20℃(素練り時間最短60分)〜150℃(素練り時間最短10分)で行なわれロール間隔dは例えば0.5mm〜1.0mmで、素練りして液体状態のエラストマーにカーボンナノファイバーを投入する。しかしながら、エラストマーは液体状で弾性が著しく低下しているため、エラストマーのフリーラジカルとカーボンナノファイバーが結びついた状態で混練しても凝集したカーボンナノファイバーはあまり分散されない。
そこで、液体状のエラストマーとカーボンナノファイバーとを混合して得られた混合物中におけるエラストマーの分子量を増大させ、エラストマーの弾性を回復させてゴム状弾性体の混合物を得た後、先に説明したオープンロール法の薄通しなどを実施してカーボンナノファイバーをエラストマー中に均一に分散させる。エラストマーの分子量が増大した混合物は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核がH、30℃で測定した、ネットワーク成分の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が3000μ秒以下のゴム状弾性体である。また、エラストマーの分子量が増大したゴム状弾性体の混合物の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は、素練りする前の原料エラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)の0.5〜10倍であることが好ましい。ゴム状弾性体の混合物の弾性は、エラストマーの分子形態(分子量で観測できる)や分子運動性(T2nで観測できる)によって表すことができる。エラストマーの分子量を増大させる工程は、混合物を加熱処理例えば40℃〜100℃に設定された加熱炉内に混合物を配置し、10時間〜100時間行なわれることが好ましい。このような加熱処理によって、混合物中に存在するエラストマーのフリーラジカル同士の結合などによって分子鎖が延長され、分子量が増大する。また、エラストマーの分子量の増大を短時間で実施する場合には、架橋剤を少量、例えば架橋剤の適量の1/2以下を混合させておき、混合物を加熱処理(例えばアニーリング処理)し架橋反応によって短時間で分子量を増大させることもできる。架橋反応によってエラストマーの分子量を増大させる場合には、この後の工程で混練が困難にならない程度に架橋剤の配合量、加熱時間及び加熱温度を設定することが好ましい。
ここで説明した炭素繊維複合材料の製造方法によれば、カーボンナノファイバーを投入する前にエラストマーの粘性を低下させることで、エラストマー中にカーボンナノファイバーを従来よりも均一に分散させることができる。より詳細には、先に説明した製造方法のように分子量が大きいエラストマーにカーボンナノファイバーを混合するよりも、分子量が低下した液体状のエラストマーを用いた方が凝集したカーボンナノファイバーの空隙に侵入しやすく、薄通しの工程においてカーボンナノファイバーをより均一に分散させることができる。また、エラストマーが分子切断されることで大量に生成されたエラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーの表面とより強固に結合することができるため、さらにカーボンナノファイバーを均一に分散させることができる。したがって、ここで説明した製造方法によれば、先の製造方法よりも少量のカーボンナノファイバーでも同等の性能を得ることができ、高価なカーボンナノファイバーを節約することで経済性も向上する。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)カーボンナノファイバーの作成
縦型加熱炉(内径17.0cm、長さ150cm)の頂部に、スプレーノズルを取り付ける。加熱炉の炉内壁温度(反応温度)を1000℃に昇温・維持し、スプレーノズルから4重量%のフェロセンを含有するベンゼンの液体原料20g/分を100L/分の水素ガスの流量で炉壁に直接噴霧(スプレー)散布するように供給する。この時のスプレーの形状は円錐側面状(ラッパ状ないし傘状)であり、ノズルの頂角が60°である。このような条件の下で、フェロセンは熱分解して鉄微粒子を作り、これがシード(種)となってベンゼンの熱分解による炭素から、未処理カーボンナノファイバーを生成成長させた。本方法で成長した未処理カーボンナノファイバーを5分間隔で掻き落としながら1時間にわたって連続的に製造した。このように気相成長法によって製造された未処理カーボンナノファイバーを、前記気相成長法における反応温度より高温である表1、表2に示す熱処理温度で熱処理してカーボンナノファイバーを得た。
(2)実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3及び比較例1〜8のサンプルの作製
6インチオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔1.5mm)に、表1、表2に示す所定量のエラストマー(100重量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせ、5分間素練りした後、表1、表2に示す量のカーボンナノファイバー及び/もしくはカーボンブラックを投入し、混合物をオープンロールから取り出した。そして、ロール間隔を1.5mmから0.3mmへと狭くして、混合物を再びオープンロールに投入して薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られた炭素繊維複合材料を投入し、分出しした。
分出しされた炭素繊維複合材料は90℃、5分間プレス成形し、それぞれ厚さ1mmのシート状の炭素繊維複合材料(無架橋体)に成形し、パルス法NMRを用いてハーンエコー法及びソリッドエコー法による測定を行った。また、薄通しして得られた炭素繊維複合材料にパーオキサイドを混合し、ロール間隙を1.1mmにセットして分出しして、さらに175℃、100kgf/cmにて、20分間プレス架橋することで架橋した炭素繊維複合材料(架橋体)が得られた。
表1、表2において、原料エラストマーは、「NR」は分子量が約300万の天然ゴム、「EPDM」は分子量が約20万のエチレン・プロピレンゴムである。また、表1、表2において、「MWNT−A」は平均直径156nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーであり、「MWNT−B」は平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバー(本発明の一実施例にかかるカーボンナノファイバー)であり、「HAF」はHAFグレードのカーボンブラックである。
また、KAISER OPTICAL SYSTEM社製HOLOLAB−5000型(532nmND:YAG)を用いてラマン散乱分光法によって「MWNT−A」及び「MWNT−B」における1600cm−1付近のピーク強度Gに対する1300cm−1付近のピーク強度Dの比(D/G)を測定した。その結果を表1、表2に示す。
さらに、蔵持科学器械製作所社製振盪比重測定器(タッピングマシン)KRS−409型を用いて「MWNT−A」及び「MWNT−B」のタップ法による見かけ密度(g/cm)を測定した。その結果を表1、表2に示す。
(3)パルス法NMRを用いた測定
実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3及び比較例1〜8の各無架橋体の炭素繊維複合材料サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は、150℃であった。この測定によって、各サンプルについて第1のスピン−スピン緩和時間(T2n/150℃)と第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)とを求めた。測定結果を表1、表2に示した。なお、同様に測定した原料ゴムの第1のスピンースピン緩和時間(T2n/30℃)は、「NR」が700μm、「EPDM」が520μmであった。また、パルス法NMRを用いてソリッドエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ソリッドエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−90゜y)にて、減衰曲線を測定し、無架橋体の炭素繊維複合材料サンプルの150℃におけるスピン−スピン緩和時間(T2s)を検出した。
(4)硬度の測定
実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3及び比較例1〜8の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルのゴム硬度(JIS−A)をJIS K 6253に基づいて測定した。測定結果を表1、表2に示す。
(5)100%モジュラス(M100)の測定
実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3及び比較例1〜8の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル(幅5mm×長さ50mm×厚さ1mm)を10mm/minで伸長し、100%変形時の応力(M100:100%モジュラス(MPa))を求めた。測定結果を表1、表2に示す。また、この測定結果に基づいて、エラストマー100重量部に配合されたカーボンナノファイバー1重量部当たりにおける、エラストマー単体の100%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の100%モジュラスの上昇率(M100上昇率)を計算した。100%モジュラスの上昇率(M100上昇率)は、例えば、参考例1であれば、参考例1と比較例6のM100の差(13.9−0.9)を比較例6のM100の値(0.9)で割り、さらに参考例1のMWNT−Aの配合量(10)で割った百分率である。また、参考例3及び実施例8はカーボンブラック40重量部含まれるのでカーボンブラックによって補強された100%モジュラス上昇分を比較例7の100%モジュラス(2.5)とみなし、参考例3の場合、参考例3と比較例7のM100の差(11.2−2.5)を比較例6のM100の値(0.9)で割り、さらに参考例3のMWNT−Aの配合量(20)で割った百分率として計算した。
(6)引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)の測定
各架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを1A形のダンベル形状に切り出した試験片について、東洋精機社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。これらの結果を表1、表2に示す。また、実施例6の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真を図2(5,000倍)及び図3(20,000倍)に示し、比較例4の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真を図4(5,000倍)及び図5(20,000倍)に示した。
(7)動的粘弾性試験
実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3及び比較例1〜8の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを短冊形(40×1×5(巾)mm)に切り出した試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−100〜300℃、動的ひずみ±0.05%、周波数10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い動的弾性率(E’、単位はMPa)を測定した。測定温度が30℃と200℃における動的弾性率(E’)の測定結果を表1、表2に示す。
表1、表2から、本発明の実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3によれば、以下のことが確認された。すなわち、本発明の実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3の熱処理されたカーボンナノファイバーは、ラマンピーク比(D/G)が1.25を超えかつ1.6未満であった。また、実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3の熱処理されたカーボンナノファイバーは、タップ密度が0.011〜0.023g/cmであった。実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルは、比較例1〜8に比べてM100上昇率が高く、カーボンナノファイバーとエラストマーとの濡れ性が向上したことがわかった。また、図4,5に示すように比較例4の炭素繊維複合材料の引張破断面からはカーボンナノファイバーがそれぞれ独立した繊維状に延びているのに対し、図2,3に示すような実施例6の炭素繊維複合材料の引張破断面からカーボンナノファイバーの端部が短くしかもカーボンナノファイバーよりも太く突出していた。このことから、比較例4のカーボンナノファイバーよりも実施例6のカーボンナノファイバーの方がエラストマーとの濡れ性が向上していることがわかった。
実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3の無架橋体の炭素繊維複合材料サンプルは、熱処理されたカーボンナノファイバーを用いたため、スピン−スピン緩和時間(T2s/150℃)は5〜50μ秒であって、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100〜3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0であった。実施例3〜6、8〜11、参考例1〜3は、2800℃で熱処理されたカーボンナノファイバーを用いた比較例1,2に比べT2n,fnn、T2sが短くなった。
本発明の実施例3〜6、8、9及び参考例1〜3の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルは、23℃における破断伸びが95%以上であって、エラストマー100重量部に配合されたカーボンナノファイバー1重量部当たりにおける、エラストマー単体の100%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の100%モジュラスの上昇率が13%以上であった。なお、比較例4は、破断伸びが100%未満であったので、測定できなかった。
オープンロール法による炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。 実施例6の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真(3.0kV、5,000倍で撮影)である。 実施例6の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真(3.0kV、2万倍で撮影)である。 比較例4の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真(3.0kV、5,000倍で撮影)である。 比較例4の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真(3.0kV、2万倍で撮影)である。
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
40 カーボンナノファイバー
d ロール間隔
V1 第1のロールの表面速度
V2 第2のロールの表面速度

Claims (9)

  1. エラストマー中にカーボンナノファイバーが均一に分散した炭素繊維複合材料であって、
    前記カーボンナノファイバーは、気相成長法によって製造された後、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理されて得られた平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーであり、
    前記エラストマー100重量部に対して、前記カーボンナノファイバーを15〜120重量部含み、
    23℃における破断伸びが95%以上であって、
    前記エラストマー100重量部に配合された前記カーボンナノファイバー1重量部当たりにおける、前記エラストマー単体の100%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の100%モジュラスの上昇率が13%以上である、炭素繊維複合材料。
  2. 請求項1において、
    前記熱処理は、1200℃〜1500℃である、炭素繊維複合材料。
  3. 請求項1または2において、
    前記熱処理されたカーボンナノファイバーは、ラマン散乱分光法によって測定される1600cm−1付近のピーク強度Gに対する1300cm−1付近のピーク強度Dの比(D/G)が1.25を超えかつ1.6未満である、炭素繊維複合材料。
  4. 請求項1〜のいずれかにおいて、
    パルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって観測核がH、150℃で測定した、無架橋体における、スピン−スピン緩和時間(T2s/150℃)は5〜50μ秒であって、
    パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核がH、150℃で測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100〜3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0〜0.1である、炭素繊維複合材料。
  5. 気相成長法によって製造された未処理カーボンナノファイバーを、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理して得られた平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーである、カーボンナノファイバー。
  6. 請求項において、
    前記熱処理は、1200℃〜1500℃である、カーボンナノファイバー。
  7. 請求項またはにおいて、
    ラマン散乱分光法によって測定される1600cm−1付近のピーク強度Gに対する1300cm−1付近のピーク強度Dの比(D/G)が1.25を超えかつ1.6未満である、カーボンナノファイバー。
  8. 気相成長法によって製造された未処理カーボンナノファイバーを、前記気相成長法における反応温度より高温であって、かつ、1100℃〜1600℃で熱処理して、平均直径87nmで平均長さ10μmのカーボンナノファイバーを得る、カーボンナノファイバーの製造方法。
  9. 請求項において、
    前記熱処理は、1200℃〜1500℃である、カーボンナノファイバーの製造方法。
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