JP4842168B2 - プラスチック段ボールの溶着方法及びこの溶着方法に用いられるヒートチップ - Google Patents
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しかし、運送回数を重ねると、紙製であるため、変形したり、破損したりして強度が劣化する場合が多い。その場合廃棄処理されるが、廃棄の手間や廃棄処理費用などを含めてゴミとして扱われ、環境的に問題になるケースが生じる。
また、紙粉が発生して製品に付着したり、周囲に飛散したりしてクリーンルームに持ち込めないなどの品質的な問題もある。
このプラ段箱は、紙製段ボール箱に比べて、軽量であり、耐湿性もあるため、変形や耐衝撃性も優れている。したがって、紙製の段ボール箱に較べて耐久性が格段に高い。
さらに、使用に耐えなくなった時は、粉砕して成形材料に還元し、再度プラ段等に成形して再利用することができることから、省資源対策にもなり、また環境負荷を低減できる効果がある。
また、プラ段は、多色にカラー化できるため、色分けして収容製品の管理がしやすいようにできる利点がある。
そこで、従来のプラ段箱では、相互のプラ段を熱により溶かして融合させ、その融合部を冷却して固化させることにより、箱状に一体化するという組み立て方法が行なわれている。
複数枚の熱可塑性樹脂段ボールを重ね合せ、この重ね合せ部の一部に加熱された加熱工具を押付け、該加熱工具により上記段ボールを軟化溶融させつつ該加熱工具の先端が上記段ボールの重ね合せ面を超えるように該加熱工具を上記重ね合せ部内に挿入し、隣り合う段ボール間の樹脂の溶融層を形成させた後、上記加熱工具を引抜き、上記溶融層を冷却固化させる。
また、特公昭51−40102号公報には、合成樹脂製多重構造体の製造方法が次の様に記載されている。
複数枚を積み重ねた同質の合成樹脂製ダンボールの最上層の上面複数箇所から各層の対接面板を貫通して加熱金属棒を圧層し、穿孔熔着する。
また、溶融部が薄いため、部分的に結合層が形成されず、一部の製品においては溶着面に孔が開いてしまい、美観的にも優れない溶着状態の製品が発生したりしている。
また、前記公知例の場合、加熱工具でプラ段を溶融した後、加熱工具をそのまま引き抜くため、所謂糸引きが発生したり、引き抜いた跡の凹部の形状が崩れて一定とならないために、強度にバラツキが発生し、更に、自然冷却のため、生産性が悪い。
本発明の目的は、従来よりも高い溶着強度を得ることができると共に、生産性が高く、かつ、美観的にも優れたプラ段の溶着部における強化構造とその強化構造を得るためのヒートチップを提供することにある。
プラ段は中空であるため、溶融しても樹脂量が少なく溶融層が薄く形成される。したがって、目的とする溶着強度を得ることができないが、本発明では、凹状の溶着部に溶融樹脂を集約して肉厚となる補強部、つまりリブを形成することにより、溶着強度を向上することができる。補強部のリブ形状としては、直線形状又はドーナッツ型の円形状との複合形状などでもよく、溶着部において、底面と側面及び側面同士とを結ぶ形成ならば、その形状にはこだわらない。
また、融合凹部の穴形状としては、平面視円形にこだわらず、三角、四角、六角形等の多角形の形状でもよい。したがって、この際のヒートチップの形状も同じような形状となる。
この発明によると、融合凹部に底面と側面に繋がるようにリブの形状が平面視十字形状となるため、複数の箇所で融合凹部の側面が対面と連結される。この結果、リブの分融合凹部の面積(肉厚)を増加させて溶着強度を高めることができる。
この発明によると、十字形状のリブに加えてさらに融合凹部の底面の中心にドーナッツ形状の円形リブが形成されるため、さらに融合凹部の面積を増加させて、溶着強度を高めることができる。
前記ヒートチップにおいて、前記凹溝の底部が位置する外周側面部には、溶融した樹脂の返し用として小径化した樹脂溜り段部が形成されていること、
前記ヒートチップ内は中空状に形成されていると共にこの中空内には冷却用エアーを吹き付けるためのエアーパイプが組み付けられていること、
前記内部が中空状に形成されたヒートチップの側面には、中空内に吹き付けた冷却用エアーを外に逃がすためのスリットが形成されていること、
を特徴とするものである。
さらに、本発明では、ヒートチップを2等分する位置であって、ヒートチップの開口部から下方に向かって縦にスリットが形成されているため、ヒートチップを冷却したエアーはこのスリットから外部へ逃れてエアーがスムーズに流れて冷却効果を高めることができると共に、スリットから排出されたエアーは同時に融合凹部を冷却する効果もある。
プラスチック段ボールの溶着方法及びヒートチップは、次の効果を奏する。
1.融合凹部の底面に補強用のリブを形成するため、溶着部の強度が向上する。
2.リブの形状を選択することにより、最適な溶着強度を得ることができる。
3.ヒートチップの側面に樹脂溜り効果が得られる段差を設けたことにより、ヒートチップ先端のリブ形成用溝内に溶融樹脂を流入させて樹脂圧を高め、リブ中の樹脂密度を高めてリブ強度の向上を図ることが出来ると共に、プラ段の表面に逃げ場を失った溶融樹脂が吹き出すことがなく、きれいな溶着部の形状を得ることができる。
4.ヒートチップにエアーパイプから冷却用のエアーを吹きつけるため、ヒートチップを瞬時に冷却することができるので、離脱時に糸引き、あるいは融合凹部の変形による強度のバラツキといった不具合が発生するのを防止できる。
請求項1及び請求項2に記載の発明について、その実施例を図1乃至図7を用いて説明する。
図1は溶着部で融合凹部の平面図、図2は融合凹部の斜視図、図3は融合凹部の断面図であって、図3(a)は図1におけるA−A´線断面図、図3(b)は図1におけるB−B´線断面図である。
いずれもPP樹脂からなる上層プラ段A及び下層プラ段Bの2枚を重ね合せた後、上層プラ段Aの一部に発熱させたヒートチップ(図8以下で説明)を押しつけて樹脂を溶融させながら、さらに下層プラ段Bの一部に到達するまで挿入する。この挿入により、上層プラ段Aと下層プラ段Bの樹脂は、ヒートチップにより加熱されて、融合し、融合凹部が形成される。その後、エアーによりヒートチップ及び融合凹部は強制的に冷却されて樹脂が固化し、上層プラ段Aと下層プラ段Bは結合し、一体化される。
上記図1〜図3の形状の融合凹部1について、その溶着強度を測定した。測定方法を図12に示す。上層プラ段Aと下層プラ段Bの各試験片の一箇所を実施例1の溶着構造に形成し、その後、矢印に示すように上下方向へ引っ張り溶着部が破断した時の力を測定した。
この実施例1の溶着強度測定値を表1に示す。
請求項3に記載した発明の実施例について、図4〜図6を用いて詳細に説明する。
図4は融合凹部1の平面図、図5は融合凹部1の斜視図、図6は融合凹部1の断面図であって、図6(a)は図4におけるC−C´線断面図、図6(b)は図4におけるD−D´線断面図である。
本実施例2における融合凹部1について図4〜図6を基に説明すると、上層プラ段Aと下層プラ段Bにすり鉢型の融合凹部1が形成され、その底面2には中心にドーナッツ形の円形リブ3aとこの円形リブ3aから放射状に融合凹部1の側面4に延びる直線リブ3bが形成されている。実施例1の十字形状リブ3に加えてさらに融合凹部1の底面2の中心にドーナッツ形状の円形リブ3aを追加形成したことにより、さらに融合樹脂量及び面積が増加し、溶着強度を高めることができる。
実施例2の溶着強度測定値を表1に示す。試験方法は実施例1と同じである。
請求項4に記載したヒートチップの実施例を図7及び図8を用いて詳細に説明する。
図7は、実施例1に記載した溶着を行うためのヒートチップ10を示し、図7(a)はヒートチップ10の側面図、図7(b)は正面図、図7(c)は図7(b)におけるE−E´線断面図である。
本実施例におけるヒートチップ10は、ステンレス材を用いて切削加工されており、全体的には中空のカップ型形状である。ヒートチップ10は、開口部11から先端にかけて、大径部12、中径部13、傾斜面部14、先端加工部15と4ブロックに別れており、上端の開口部11から大径部12、中径部13にかけて、左右に2分割するように縦にスリット16、16aが形成されている。なお、傾斜部14は、先端に向かって細くなるテーパー形状で、その角度は37°である。
先端加工部15には、融合凹部1のリブ3を形成するための溝15aが正面視十字形状に形成されている。本実施例3における溝15aの深さ及び幅の寸法は両方とも2mmである。
以上説明したヒートチップ10には、図8に示す様に、電線19、19aを接続し、冷却エアー供給用のパイプ20を固定部部材(図示せず)によりヒートチップ10内へ組み込み、更にヒートチップ10の大径部11の周囲を囲むように耐熱樹脂(例えば、金属粉入りエポキシ樹脂)からなるカバー21が被覆されていて、溶着装置Cを構成している。
請求項4に記載したヒートチップに係る発明の実施例として、実施例2及び3に記載した融合凹部1形成用のヒートチップ10について説明する。図9(a)はヒートチップ10の正面図、図9(b)は先端面の正面図、図9(c)は図9(b)におけるF−F´線断面図、図9(d)は図9(b)におけるG−G´線断面図、である。
基本的には実施例3と同一であるが、先端加工部15が異なるので先端加工部15についてのみ説明する。22はドーナッツ形状の円形リブ3aの中心である薄肉部を形成する突起である。その周囲を囲むように円周溝23が形成され、さらにその円周溝23から外に向けて一段低い放射状の溝24が四方に形成されている。
突起22と円弧状段部17aの高さは突起22の方を0.5mm高くしている。これは、溶着の際、突起22を上層プラ段Aに先当たりすることにより溶融した樹脂を四方へ均等に行き渡らせる効果を奏するためのものである。
以上説明したヒートチップ10を用いたプラ段A、Bの溶着は、図4〜図6に示したヒートチップ10の先端加工部15における円周溝23で円形リブ3aを、放射状溝24で円形リブ3aから融合凹部1の側面4に延びる直線リブ3bを形成することができる。
本実施例5では、本発明の溶着装置Cを用いてプラ段A、Bを溶着する工程を説明する。ヒートチップ10は実施例4に示したものを用いた。
図10は図9(b)におけるF−F´線を断面箇所としたヒートチップ10を用いて行う工程図で、図10(a)は溶着前の説明図、図10(b)は上層プラ段Aにヒートチップ10を少し押し込んでいる説明図、図10(c)は所定の位置までヒートチップ10を押し込んで溶融している説明図、図10(d)はヒートチップ10を離脱させたときの溶着部(融合凹部1)の説明図である。また、図11は図9(b)におけるG−G´線を断面箇所とした場合で、図11(a)は所定の位置までヒートチップ10を押し込んで溶融している説明図、図11(b)はヒートチップ10を離脱させたときの溶着部(融合凹部1)の説明図である。
次に、図10(b)に示す様にヒートチップ10を押し進め、ヒートチップ10の周囲の樹脂を溶融させる。溶融した樹脂はヒートチップ10の段部17の効果にて、ヒートチップ11の先端で溶融した樹脂がヒートチップ10の側面に沿ってプラ段Aの表面までせり上がるのを防止すると共に、溶融した樹脂を先端加工部15に形成された円周溝23や放射状溝24へ流動させる。
以上説明した様に、溶着構造として、ヒートチップ10の放射状溝24で直線リブ3b及び円周溝23で円形リブ3aが形成され、融合凹部1に融合凹部1の側面4につながる肉厚部が形成されたため、従来に比較して溶着部における溶着強度が向上した複合プラ段を得ることができた。
また、融合凹部1の側面4にはヒートチップ10の適切なテーパーにより孔は生じなかった。
比較例として、従来行なわれている熱棒を用いてプラ段A、Bの溶着を行なった。プラ段A、Bについては実施例1と同一である。
ヒータに組み込まれた熱棒を上層プラ段Aに押付け、軟化溶融させつつ熱棒の先端がプラ段の重ね合せ面を超えるように下層プラ段Bへ挿入し、溶融層を形成させた後、熱棒を引抜き、溶融層を冷却固化させて2枚のプラ段A、Bを一体化させた。
熱棒を挿入すると、上層プラ段Aの表面に溶融した樹脂が吹きだし、溶着部の開口部周囲に盛り上がってしまい、取り除くために後加工が必要であった。
また、熱棒を引抜くと、糸引きがおこり、その処理も必要であった。
比較例1の溶着強度測定値を表1に示す。試験方法は実施例1と同じである。
2 底面
3 リブ
4 側面
5 段部
10 ヒートチップ
15 先端加工部
15a 溝
16、16a スリット
A 上層プラ段
B 下層プラ段
C 溶着装置
Claims (4)
- プラスチック段ボールを重ね合せて部分的に溶着して一体化する際、プラスチック段ボール同士を固定する箇所へ先端の加熱面にリブ形成用の凹溝を形成したヒートチップを上層のプラスチック段ボールから下層のプラスチック段ボールの一部まで挿入することにより、上層と下層のプラスチック段ボールを融合させたのち、前記ヒートチップ内に組み付けたエアーパイプから冷却用エアーをヒートチップ内に吹きつけてヒートチップを冷却し、かつ前記融合部の冷却固化を行い、その上でヒートチップを引き抜くことにより、この引き抜いた跡に融合凹部を形成すると共に、この融合凹部の底面に補強用のリブを形成したこと、を特徴とするプラスチック段ボールの溶着方法。
- 前記補強用のリブは、融合凹部の底面の中心部から側面に繋がる平面視十字形状からなることを特徴とする請求項1記載のプラスチック段ボールの溶着方法。
- 前記補強用のリブは、融合凹部の底面中央に形成された正面視ドーナッツ形の円形リブと、この円形リブから放射状に融合凹部の側面に繋がる複数本の直線リブからなることを特徴とする請求項1記載のプラスチック段ボールの溶着方法。
- プラスチック段ボールの溶着に用いられるヒートチップであって、このヒートチップの先端側の外径は先端面に向って先細りとなるようにテーパーがつけられていると共にこの先端面には、補強用リブを形成するための凹溝が形成されていること、
前記ヒートチップにおいて、前記凹溝の底部が位置する外周側面部には、溶融した樹脂の返し用として小径化した樹脂溜り段部が形成されていること、
前記ヒートチップ内は中空状に形成されていると共にこの中空内には冷却用エアーを吹き付けるためのエアーパイプが組み付けられていること、
前記内部が中空状に形成されたヒートチップの側面には、中空内に吹き付けた冷却用エアーを外に逃がすためのスリットが形成されていること、
を特徴とするプラスチック段ボールの溶着に用いられるヒートチップ。
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