JP4841718B2 - 抗アレルギー剤及び抗酸化剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バラ及び/又はバラ抽出物を発酵して得られるバラ発酵抽出物を含有し、或いは、該バラ発酵抽出物に米糠・大豆発酵抽出物を追加して得られる発酵組成物を含む抗アレルギー剤及び抗酸化剤に関する。また、本発明は、バラ及びバラ抽出物のうちの少なくとも一方、米糠類、大豆類及び炭素源を発酵して得られる発酵組成物を含む抗アレルギー剤及び抗酸化剤に関する。本発明は、食品、化粧品、医薬品等に利用される。
【0002】
【従来の技術】
本来、生体は体内に侵入した病原菌等の異物から身体を守る免疫機能を備えている。そして、体内に侵入した異物に対して過剰な免疫反応を起こし、身体に有害な形で現れる場合の一つがアレルギーである。アレルギーはプロセスによってI〜IV型に分類されるが、このうちI型のアレルギーを即時型といい、免疫グロブリン抗体のうちのIgE抗体と抗原の反応が引き金になって起こる。詳しく言えば、体内にカビ、花粉等の抗原が侵入すると、これに対する特異的な抗体であるIgE抗体が作られ、このIgE抗体のFc部分が肥満細胞や好塩基球表面のIgEレセプター結合に付着する(ヒトIgE−IgEレセプター結合)。そして、再び同一の抗原が体内に侵入すると、これが細胞表面のIgE抗体のFab部分にある抗原結合基と結合し、その結果、数個のIgEを橋渡しする形となる。かかる橋渡しにより刺激された肥満細胞等から、ヒスタミン、ロイコトリエン等の種々のケミカルメディエーターが放出され、これらの働きによりアレルギーを引き起こす。このようなアレルギーによって引き起こされるアレルギー疾患の代表的なものには、花粉症、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎及び気管支喘息等がある。そして、今日、これらのアレルギー疾患に苦しむ人々の数は増加傾向にあり、その予防方法及び改善方法が社会で注目されている。
【0003】
従来より、かかるアレルギー疾患に適用される化合物が各種報告されているが、そのほとんどが合成医薬品である。例えば、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、副腎皮質コルチコステロイド(プレドニゾロン等)、テオフィリン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、及び塩酸シプロヘプタジン等が現在、アレルギー疾患の治療に用いられている。しかし、このような合成医薬品にはいずれも眠気等の副作用がある点で問題がある。また、従来の抗アレルギー化合物は、テオフィリンやβ2受容体作用薬(塩酸プロカテロール、サルブタモール等)のように、発作後の症状改善を目的としたり、あるいは、抗ヒスタミンH1薬(マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸シプロヘプタジン等)やプランカルストのように、肥満細胞や好塩基球から放出されるケミカルメディエーターの作用に拮抗するものが中心である。アレルギー疾患の予防という観点から見れば、肥満細胞や好塩基球からケミカルメディエーターが放出された後、それにより引き起こされる反応を抑えるより、むしろ、それ以前のIgE−IgEレセプター結合反応や、ケミカルメディエーターの放出を抑制する作用を有することが好ましい。このような観点から、生体内において比較的安全であると共に、ケミカルメディエーターが放出される前の段階の反応を抑制し、アレルギー性疾患の予防に好適な抗アレルギー剤の開発が求められている。
【0004】
一方、スーパーオキシドジスムターゼ(以下、SODという。)は、酸素分子の1電子還元で生成するスーパーオキシドラジカル(O2 -)の不均化反応(下式)を拡散律速に近い速さで触媒し、細胞内のO2 -濃度を低下させる酵素である。
2O2 -+2H+→H2O2+O2
O2 -に代表される活性酸素種は、通常、生体内において活性化されたマクロファージなどの食細胞から産生され、殺菌作用や殺腫瘍作用を示す。
しかし、これらの活性酸素種には選択毒性がなく、正常細胞にも作用できる結果、生体に対して種々の障害も引き起こすことが知られている。例えば、脂質の過酸化による膜の損傷、タンパク質の酸化修飾によるタンパク質の構造変化、DNAの切断等の結果、細胞に障害作用を示し、様々な疾病の原因ともなることが明らかにされている。
【0005】
従って、O2 -の除去酵素であるSODは、生体を活性酸素種から守るために存在するものであり、この活性酸素種を起因として生じると考えられる病気等に有効であるとの観点から、近年、その反応機構、生理機構等が研究されている〔「活性酸素−生物での生成・消去・作用の分子機構」(新装版2刷、共立出版株式会社発行、中野稔ら編著)223〜230頁)〕。また、癌細胞ではSOD活性が低いという事実があり、更に、SODと発癌との直接因果関係は明らかではないが、SOD又はSOD様物質を癌細胞に注入すると、増殖を抑えるという報告もある(同64頁)。
安全で且つSOD作用(活性酸素濃度を減少させる作用のみならず、これに起因して生じると考えられる種々の病気の予防、改善の作用をも含む。)を有し、食品等に用いられるものがあれば、人の健康及び美容にとって非常に有用であり、その必要性は極めて大きい。従来、このような観点から、生体内において安全な天然物を主成分としたものが日々研究されている。SOD作用と同様の作用を有し、血圧上昇を抑制するものとして、例えば、米糠・大豆発酵抽出物に緑茶抽出エキスを添加した活性酸素抑制組成物及び血圧抑制剤が開発されている(特公平8−40号公報)。そして、現在もなお、より優れた生体内抗酸化作用、活性酸素除去効果を奏するとともに、安全性の高い抗酸化剤の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、バラ及び/又はバラ抽出物を発酵して得られるバラ発酵抽出物を含有し、或いは、該バラ発酵抽出物に米糠・大豆発酵抽出物を追加して得られる発酵組成物を含む抗アレルギー剤及び抗酸化剤を提供することを目的とする。また、本発明は、バラ及びバラ抽出物のうちの少なくとも一方、米糠類、大豆類及び炭素源を発酵して得られる発酵組成物を含む抗アレルギー剤及び抗酸化剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、バラ抽出物を発酵させて得られるバラ発酵抽出物が、従来より抗アレルギー作用を奏することが知られているバラ抽出物(特開平10−72358号公報)そのものよりも抗アレルギー作用及び抗酸化作用に優れていること、及び従来よりSOD様作用を奏することで知られている米糠・大豆発酵抽出物を添加したり、或いは、バラ及びバラ抽出物のうちの少なくとも一方、米糠類、大豆類及び炭素源を発酵して得られる発酵組成物が、更に抗アレルギー作用及び抗酸化作用を増強させることができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
本第1発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤は、バラ科バラ属に属するバラ及びバラ科バラ属に属するバラ抽出物のうちの少なくとも一方を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られたバラ発酵抽出物を含有する。
【0009】
本第1発明において、上記「バラ」としては、バラ科バラ属に属するバラ(Rosa spp.)が好ましく、具体的には、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、ロサ・モスカタ(Rosa moschata)、ロサ・フォエティダ(Rosa foetida)、ロサ・ギガンテア(Rosa gigantea)、ノイバラ(Rosa multiflora)、テリハノイバラ(Rosa wichuraiana)等の野生種、又はこれらを交配して得られた園芸種が挙げられる。また、本第1発明において上記「バラ」の使用部位については特に限定はなく、花、花びら、葉、茎、根及び種子等のどの部分を使用してもよい。
【0010】
本第1発明において、上記「バラ抽出物」とは、上記バラを原料として抽出することにより得られるものである。また、上記「バラ抽出物」としては、上記バラを原料として抽出することにより得られる抽出液を、タンナーゼ等の酵素を用いて酵素処理したものも含まれる。更に、上記「バラ抽出物」としては、抽出液を濾過したままの液でもよいし、これを濃縮した濃縮液でもよい。その他にも、凍結乾燥等の公知の方法により溶媒を除去した固形物や粉末化した粉末物でもよい。
【0011】
上記「バラ抽出物」を得るための抽出方法、抽出条件については特に限定はない。例えば、原料であるバラは未粉砕でも、粉砕したものでもよく、抽出物の品質を維持できる限り、不純物除去等の前処理をしてもよい。また、抽出溶媒としては、水又は熱水の他、エタノール、酢酸エチル、n−ヘキサン等の有機溶媒や、これらの有機溶媒と水又は熱水との混合溶媒等を用いることができ、このうち、特に熱水が好ましい。熱水の温度は、通常、40〜100℃、好ましくは50〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。また、抽出の際の抽出溶媒のpHは通常3〜7、好ましくは4〜6、更に好ましくは4〜5である。pHが7を超えると、バラ及びバラ抽出物に含まれているポリフェノール類が不安定となることから好ましくない。抽出温度は特に制限されないが、常温又は加熱抽出が好ましい。
【0012】
上記「バラ発酵抽出物」を得るための発酵条件については、抗アレルギー作用及び抗酸化作用を奏するものが得られる限り特に限定はない。発酵培養は通常、通気攪拌を行うことにより行われる。また、培養を行うための培地についても、微生物、特に納豆菌、枯草菌やSaccharomyces属に属する酵母が増殖できるものであれば特に制限はなく、通常は液体培地であるが、固形培地であってもかまわない。また、培地のpHは通常4〜7、好ましくは5〜7、更に好ましくは6〜7である。このpHが7を超えると、上記のようにバラ及びバラ抽出物に含まれるポリフェノール類が不安定となることから好ましくない。更に、培養温度についても、発酵が行われる限り特に制限はなく、通常40〜45℃程度である。
【0013】
また、上記「バラ発酵抽出物」を得るために用いる上記「微生物」については、バラ又はバラ抽出物を原料として発酵することにより、抗アレルギー作用及び抗酸化作用を有する発酵組成物を産出する性質を失わない限り特に限定はないが、通常は細菌や酵母が用いられ、この中で、納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母が好ましく用いられる。上記「Saccharomyces属に属する酵母」としては、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces bayanus、Saccharomyces diastaticus及びSaccharomyces rouxii種等の酵母が挙げられ、この中で特にZygosaccharomyces rouxiiが好適に用いられる。
【0014】
本第2発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤は、(1)バラ科バラ属に属するバラ及びバラ科バラ属に属するバラ抽出物のうちの少なくとも一方を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られたバラ発酵抽出物と、(2)米糠類、大豆類及び炭素源を含む培地に微生物を接種し、発酵培養して得られた米糠・大豆発酵抽出物と、を含有する。
【0015】
本第2発明において、上記「バラ」「バラ抽出物」及び「バラ発酵抽出物」は、上記第1発明と同義である。また、上記「米糠類」とは、米胚芽、脱脂米胚芽、米糠、脱脂米糠等をいい、上記「大豆類」とは、脱脂大豆、キナ粉、大豆粉、大豆カス、これらの加水分解物等をいう。更に、上記「炭素源」としては、通常用いられるものを使用でき、例えば、グルコース、デキストリン、乳糖及びデンプン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
本第2発明の発酵組成物は、第1発明のバラ発酵抽出物と、米糠・大豆発酵抽出物とを含有するものである。本第2発明における上記「米糠・大豆発酵抽出物」とは、上記米糠類、大豆類及び炭素源を含む培地に微生物を接種し、発酵培養して得られる抽出物である。上記「バラ発酵抽出物」や上記「米糠・大豆発酵抽出物」を得るための上記「微生物」としては、通常は細菌や酵母が用いられ、この中で、納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母が好ましく用いられる。上記「Saccharomyces属に属する酵母」としては、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces bayanus、Saccharomyces diastaticus及びSaccharomyces rouxii種等の酵母が挙げられ、この中で特にZygosaccharomyces rouxiiが好適に用いられる。
【0017】
また、上記米糠・大豆発酵抽出物を得るための発酵培養条件については、発酵が行われる限り特に制限はない。通常、発酵培養は通気攪拌を行うことにより行われ、培養温度は40〜45℃程度であり、pHは7.5〜10、好ましくは8.5〜10である。培地のpHを調節する場合は、アルカリ剤として炭酸水素ナトリウム等を用いることができる。尚、培地原料としてはプロテアーゼを用いることができる。この場合は、大豆ペプチドを更に分解するので有用である。
【0018】
本第3発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤は、バラ科バラ属に属するバラ及びバラ科バラ属に属するバラ抽出物のうちの少なくとも一方、米糠類、大豆類及び炭素源を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られる。
【0019】
本第3発明において、上記「バラ」及び「バラ抽出物」は、上記第1発明と同義であり、上記「米糠類」、「大豆類」及び「炭素源」は上記第2発明と同義である。本第3発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤は、バラ発酵抽出物の原料となる上記バラ及びバラ抽出物のうちの少なくとも一方と、米糠・大豆発酵抽出物の原料となる上記米糠類、大豆類及び炭素源を含有する培地に微生物を接種し、発酵培養して得られるものである。
【0020】
また、本第3発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤を得るための発酵条件については、抗アレルギー作用及び抗酸化作用を奏するものが得られる限り特に限定はない。発酵培養は通常、通気攪拌を行うことにより行われる。また、培地のpHは通常4〜7、好ましくは5〜7、更に好ましくは6〜7である。このpHが7を超えると、上記のようにバラ及びバラ抽出物に含まれるポリフェノール類が不安定となることから好ましくない。更に、培養温度は、発酵が行われる限り特に制限はなく、通常40〜45℃程度である。尚、本第2発明の場合と同様に、培地原料としてはプロテアーゼを用いることができる。この場合は、大豆ペプチドを更に分解するので有用である。
【0021】
また、上記「培地」としては、それぞれの原料を含み、微生物、特に納豆菌、枯草菌やSaccharomyces属に属する酵母が増殖できるものであれば特に制限はなく、通常は液体培地であるが、固形培地であってもかまわない。更に、上記「バラ発酵抽出物」を得るために用いる上記「微生物」についても、バラ及びバラ抽出物のうちの少なくとも一方、米糠類、大豆類及び炭素源を原料として発酵することにより、抗アレルギー作用及び抗酸化作用を有する発酵組成物を産出する性質を失わない限り特に限定はないが、通常は細菌や酵母が用いられ、この中で、納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母が好ましく用いられる。上記「Saccharomyces属に属する酵母」は、上記第1発明及び第2発明と同様のものが使用できる。
【0022】
尚、上記第1発明〜第3発明において、上記「納豆菌」、「枯草菌」及び「Saccharomyces属に属する酵母」は、市販されている一般的なものを用いるのが通常であるが、自然的、又はニトロソグアニジン等の化学物質、X線、紫外線等により人為的変異手段により得られ、菌学的性質が変異した変異株であっても、抗アレルギー作用及び抗酸化作用を有する発酵組成物を産出する性質を失わない限り利用することができる。また、本第1発明〜第3発明の各発酵抽出物の形態については特に限定はなく、それぞれ培養して得られた培養発酵液を濾過したままの液でもよいし、これを脱色等の後処理をした液でもよいし、又はこれを濃縮した濃縮液でもよい。その他にも、凍結乾燥等の公知の方法により溶媒を除去した固形物や粉末化した粉末物でもよい。
【0023】
本第1発明〜第3発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤は、抗アレルギー性及び抗酸化性という効果を奏するとともに、天然素材を使用しているので、従来の合成アレルギー剤と比較して安全性も高い。抗アレルギー剤及び抗酸化剤に含まれる発酵組成物の量(固形分換算、W/V)は、通常0.0001%以上、好ましくは0.0005〜1%更に好ましくは、0.001〜0.5%、最も好ましくは0.01〜0.05%である。抗アレルギー剤及び抗酸化剤に含まれる発酵組成物の量が0.0001%未満では、抗アレルギー作用及び抗酸化作用が減弱するので好ましくない。また、1%を超える量を添加しても、抗アレルギー作用及び抗酸化作用は頭打ちとなるので、経済的に好ましくない。
【0024】
【発明の実施と形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例)
(1)酵母液の調製
酵母(Zygosaccharomyces rouxii、理化学研究所、JCM No2325)1アンプルを滅菌水1mlに懸濁後、全量を下記に示す組成のYM寒天培地にて、25℃で7日間培養した。培養後、酵母を白金耳でかき取り、滅菌水25mlに懸濁させて酵母液とした。
[YM寒天培地の組成]
Glucose 2.0g
Peptone 1.0g
Yeast extract 0.6g
Malt extract 0.6g
Agar 4.0g
H2O 200.0g
【0025】
(2)バラ抽出物及び発酵組成物の調製
▲1▼試料1(熱水抽出物)
乾燥バラ(ロサ・ガリカ)の花びら(粉砕品)20gを70℃の熱水500mlで30分間抽出後、濾過(濾過助剤としてパーライト使用)した。次いで減圧濃縮後、凍結乾燥をし、試料1(熱水抽出物)とした。
▲2▼試料2(酵素処理抽出物)
乾燥バラ(ロサ・ガリカ)の花びら(粉砕品)20gを70℃の熱水500mlで30分間抽出後、冷却し、pH5.5に調整し、タンナーゼ(キッコーマン株式会社製、商品名:「タンナーゼ「キッコーマン」−KTFH」)12mgを添加して40℃にて90分間攪拌した。その後90℃にて10分間加熱し酵素を失活させ、濾過(濾過助剤としてパーライト使用)し、この濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥し、試料2(酵素処理抽出物)とした。
▲3▼試料3(発酵組成物(R))
乾燥バラ(ロサ・ガリカ)の花びら(粉砕品)20gに水500mlを加えて90℃にて10分間加熱後、冷却した。pH6.0〜7.0に調整後、納豆菌(高橋祐蔵研究所製、商品名:「納豆素」)5mlを添加し、特に強制通気はせず40℃にて18時間攪拌した。その後90℃にて10分間加熱し、冷却後濾過(濾過助剤としてパーライト使用)した。この濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥し、試料3(発酵組成物(R))とした。
▲4▼試料4(発酵組成物(R−G))
乾燥バラ(ロサ・ガリカ)の花びら(粉砕品)20g、脱脂米糠30g、脱脂大豆5g及び炭素源であるグルコース0.5gに水500mlを加えて90℃にて10分間加熱後、冷却した。pH6.0〜7.0に調整後、納豆菌(高橋祐蔵研究所製、商品名:「納豆素」)5mlを添加した。以下、▲3▼と同様の操作により試料4(発酵組成物(R−G))を得た。
▲5▼試料5(発酵組成物(R2))
乾燥バラ(ロサ・ガリカ)の花びら(粉砕品)20gに水500mlを加えて90℃にて10分間加熱後、冷却した。pH6.0〜7.0に調整後、上記(1)で調製した酵母液10mlを添加し、特に強制通気はせず25℃にて10日間攪拌した。その後90℃にて10分間加熱し、冷却後濾過(濾過助剤としてパーライト使用)した。この濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥し、試料5(発酵組成物(R2))を得た。
▲6▼試料6(発酵組成物(R2−G))
乾燥バラ(ロサ・ガリカ)の花びら(粉砕品)20g、脱脂米糠30g、脱脂大豆5g及び炭素源であるグルコース0.5gに水500mlを加えて90℃にて10分間加熱後、冷却した。pH6.0〜7.0に調整後、上記(1)で調製した酵母液10mlを添加した。以下、▲5▼と同様の操作により試料6(発酵組成物(R2−G))を得た。
【0026】
(3)ヒトIgE−IgEレセプター結合阻害活性
(3−1)ELISA法による方法
ELISA法を用いて、ヒトIgE−IgEレセプター結合阻害活性を次のように調べた。96穴マイクロプレートの各ウェルにIgEレセプター(FcεRIα鎖)を固定吸着させ、次いで最終濃度が0.001〜1.0%(w/v)となるように調製した上記(2)の試料1〜6を加えた後、最終濃度が0.4μg/mlとなるようにヒトIgE抗体を加えてインキュベーションした。その後、各ウェルを洗浄して遊離の試料1〜6及びヒトIgE抗体を除去した。
【0027】
次に、上記各ウェルに最終濃度が0.4μg/mlとなるように西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識した抗ヒトIgE抗体を加えてインキュベーションした後、再度各ウェルを洗浄して遊離の抗ヒトIgE抗体を除去した。その後、HRPの基質としてO−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)を各ウェルに加えて反応させ、発色させた後、各ウェルの470nmにおける吸光度をプレートリーダーにて測定した。また、ヒトIgE及び試料を添加しなかった場合の吸光度を(A)、ヒトIgEのみを添加して試料を加えなかった場合の吸光度を(B)、試料のみを添加してヒトIgEを加えなかった場合の吸光度を(C)、更にヒトIgE及び試料を添加した場合の吸光度を(D)として測定し、以下の式によりヒトIgE−IgEレセプター結合阻害率(%)を求めた。その結果を表1及び図1に示す。
阻害率(%)=[1−(D−C)/(B−A)]×100
【0028】
【表1】
【0029】
(3−2)CHO細胞による方法
CHO細胞を用いて、ヒトIgE−IgEレセプター結合阻害活性を次のように調べた。ヒトIgEレセプター(FcεRIα鎖)発現組換えCHO細胞に、0.005%及び0.05%に希釈した上記試料1〜4及びFITC標識ヒトIgEを加えて競合反応をさせた。その後、遊離の試料1〜4及びFITC標識ヒトIgEを洗浄除去し、反応後の細胞をセルソーターにて解析した。尚、比較のため、▲1▼CHO細胞のみ、▲2▼CHO細胞に0.05%の上記試料1〜4を加えて反応させたもの、及び▲3▼CHO細胞にFITC標識ヒトIgEを加えて反応させたものについても、同様に反応後の細胞をセルソーターにて解析した。その測定結果を図2(a)〜(d)に示す。
【0030】
(4)ヒスタミン遊離阻害活性
ヒト末梢血より好塩基球を分離し、既にIgEレセプターに結合しているIgEを乳酸緩衝液により除去し、上記試料1〜6を0.01%及び0.1%(w/v)となるように添加した後、ヒトIgEを1μg/mlとなるように加えて好塩基球を感作させた。その後遊離のヒトIgEを洗浄除去し、抗ヒトIgE抗体を濃度が3μg/mlとなるように加えて、37℃にて40分間インキュベーションした。更に、遠心分離後、オンカラム誘導体化法によるHPLCにより上清中のヒスタミン濃度を測定し、次式よりヒスタミン遊離阻害率を算出した。その結果を表2及び図3に示す。
阻害率(%)=[1−(C−A)/(B−A)]×100
A:未処理(試料、ヒトIgE、抗ヒトIgE抗体ともに添加せず)のコントロール細胞より遊離されるヒスタミン量
B:試料は添加せずヒトIgEと抗ヒトIgE抗体により刺激した場合に遊離されるヒスタミン量
C:試料の存在下でヒトIgEと抗ヒトIgE抗体により刺激した場合に遊離されるヒスタミン量
【0031】
【表2】
【0032】
(5)抗酸化性の測定
リノール酸を基質としたロダン鉄法により抗酸化性を測定した。密栓試験管に4%(w/v)リノール酸溶液5ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)4ml及び上記(2)で調製した試料1〜6を各試料の最終濃度が10及び100ppmとなるように入れて混合し、45℃に放置した。反応開始7日後にこの各反応液0.1mlを採取し、75%(w/v)エタノール4.7ml、30%(w/v)チオシアン酸アンモニウム0.1mlを加えた。この各混合液に3.5%塩酸で調製した0.02M塩化第一鉄0.1mlを添加して発色させ、3分後に500nmにおける吸光度を測定した。尚、対照として試料を加えないものを用い、同様の方法を行って吸光度を測定した。その結果を表3及び図4に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
(6)実施例の結果
表1及び図1によれば、試料濃度が0.1%及び1.0%では、ヒトIgE−IgEレセプター結合阻害活性は全ての抽出物においてほぼ100%近い値であった。一方、試料濃度が0.01%では、試料1(熱水抽出物)で32%であるのに対し、試料2(酵素処理抽出物)で45%と、若干阻害率が向上していることから、酵素処理をすることにより、ヒトIgE−IgEレセプター結合阻害活性が向上することが判る。また、試料3(発酵組成物(R))では66%、試料4(発酵組成物(R−G))では75%、試料5(発酵組成物(R2))では59%、試料6(発酵組成物(R2−G))では68%と、試料1よりも27%以上優れたヒトIgE−IgEレセプター結合阻害活性が認められた。
【0035】
更に、試料濃度0.001%では、試料1及び試料2において0%であるのに対し、試料3においては15%、試料4においては22%、試料5においては18%、試料6においては25%と更に優れていた。以上より、バラ発酵抽出物を含む試料3〜6は、単なるバラ抽出物含んでいるだけの試料1及び2よりも、低濃度でヒトIgE−IgEレセプター結合阻害作用を有し、抗アレルギー作用に優れていることが判る。また、バラ発酵抽出物のみの試料3及び5よりも、米糠及び大豆と共に、バラを発酵して得られた試料4及び6の方が阻害活性が高かったことから、バラ、米糠及び大豆成分間の発酵による相乗作用により、抗アレルギー作用を更に増強できることが判る。
【0036】
また、図2(a)〜(d)によれば、試料1〜4では、いずれも濃度が高くなるに従い、蛍光強度のピークがFITC標識ヒトIgE無添加細胞側にシフトしており、阻害活性が認められたことが判る。また、この阻害活性は、試料1及び試料2よりも、試料3及び試料4の方が高く、試料3よりも試料4の方が高かったことから、細胞を用いた実験においても、上記ELISA法による試験の場合と同様の結論となることが判る。
【0037】
表2及び図3によれば、試料濃度が0.1%では、各抽出物のすべてがほぼ完全にヒト好塩基球からのヒスタミン遊離を阻害し、抗アレルギー作用のあることが認められた。一方、試料濃度が0.01%では、試料1(熱水抽出物)が約24.7%、試料2(酵素処理抽出物)は約35.6%であるのに対し、試料3(発酵組成物(R))は約51.1、試料4(発酵組成物(R−G))は約56.4%、試料5(発酵組成物(R2))は約55.3%、試料6(発酵組成物(R2−G))は約63.7%と、試料1(熱水抽出物)及び試料2(酵素処理抽出物)より高かった。以上の結果より、ヒトIgE−IgEレセプター結合阻害活性と同様にヒスタミン遊離阻害活性も、バラ抽出物を酵素処理又は発酵処理することでより高くなることが判る。更に、バラ発酵抽出物のみの試料3及び5よりも、米糠及び大豆とともに、バラを発酵して得られた試料4及び6の方がヒスタミン遊離阻害活性が高かったことから、バラ、米糠及び大豆成分間の発酵による相乗効果により、ヒスタミン遊離阻害活性も向上することが判る。
【0038】
表3及び図4によれば、いずれの抽出物も100ppmの濃度において、吸光度は試料1(熱水抽出物)の0.116に対して、試料2(酵素処理抽出物)は0.084、試料3(発酵組成物(R))は0.077、及び試料4(発酵組成物(R−G))は0.081、試料5(発酵組成物(R2))は0.071、試料6(発酵組成物(R2−G))は0.066と、強い抗酸化作用を示していることが判る。また、10ppmの濃度においては、試料1の0.254より試料2は0.169と高く、試料3は0.142、試料4は0.121、試料5は0.135、試料6は0.119と更に強い抗酸化作用を示していることが判る。以上の結果より、抗酸化作用もバラ抽出物を酵素処理又は発酵処理することでより高くなることが分かる。更に、バラ発酵抽出物のみの試料3及び5よりも、米糠及び大豆とともに、バラを発酵して得られた試料4及び6の方が抗酸化作用が高かったことから、バラ、米糠及び大豆成分間の発酵による相乗効果により、抗酸化作用も向上することが判る。
【0039】
尚、本発明においては、上記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記組成物の形態は、通常、水溶液若しくは原液等の液状であるが、これに限らず、この抽出物を吸液性粉末に含浸させた粉末品、造粒した造粒品、増量剤等他の粉末成分を配合した錠剤、又はマイクロカプセル等とすることができる。また、これらの水溶液、粉末品等を所定容器に充填してなる商品形態、またこれ単独で使用するか他剤(水溶液のもの、油性液のもの若しくは粉末を問わない。)に配合して使用するかについても特に限定されず、例えば、ポーション型でもよいし、他形状容器に充填してもよいし、粉末品をスティック状容器(袋)に充填したものでもよい。更に、従来の清涼飲料水、ドリンク剤、乳製品、油剤化製品等に配合、分散して使用してもよい。尚、この分散は油中水型、水中油型を問わない。また、他の栄養成分(例えば、各種ビタミン類、カルシウムイオン成分、鉄イオン成分等)、薬効成分、調味成分、匂い成分等を配合してもよい。これらのうち、特に水溶性成分が好ましい。均一に溶解した商品とすることができるからである。
【0040】
【発明の効果】
本第1発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤は、バラ及び/又はバラ抽出物を発酵して得られるバラ発酵抽出物を含有することにより、バラ抽出物よりも優れた抗アレルギー作用及び抗酸化作用を奏する。また、本第2発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤のように、バラ発酵抽出物に米糠・大豆発酵抽出物を追加することにより、或いは、本第3発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤のように、バラ及びバラ抽出物のうちの少なくとも一方、米糠類、大豆類及び炭素源を発酵することにより、バラ抽出物やバラ発酵抽出物単独よりも更に抗アレルギー作用及び抗酸化作用を向上させることができる。更に、本第1発明〜第3発明の抗アレルギー剤及び抗酸化剤は天然成分であることから、生体内において安全である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ELISA法により求めた本実施例の各試料(3〜6)(1、2は参考例である)のヒトIgE−IgEレセプター結合阻害活性を示すグラフである。
【図2】 CHO細胞を用いて求めた本実施例の各試料(3〜4)(1、2は参考例である)のヒトIgE−IgEレセプター結合阻害活性を示すグラフである。
【図3】 本実施例の各試料(3〜6)(1、2は参考例である)のヒスタミン遊離阻害活性を示すグラフである。
【図4】 本実施例の各試料(3〜6)(1、2は参考例である)の抗酸化作用を示すグラフである。
Claims (6)
- バラ科バラ属に属するバラ及びバラ科バラ属に属するバラ抽出物のうちの少なくとも一方を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られたバラ発酵抽出物を含有する抗アレルギー剤。
- (1)バラ科バラ属に属するバラ及びバラ科バラ属に属するバラ抽出物のうちの少なくとも一方を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られたバラ発酵抽出物と、(2)米糠類、大豆類及び炭素源を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られた米糠・大豆発酵抽出物と、を含有する抗アレルギー剤。
- バラ科バラ属に属するバラ及びバラ科バラ属に属するバラ抽出物のうちの少なくとも一方、米糠類、大豆類及び炭素源を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られる抗アレルギー剤。
- バラ科バラ属に属するバラ及びバラ科バラ属に属するバラ抽出物のうちの少なくとも一方を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られたバラ発酵抽出物を含有する抗酸化剤。
- (1)バラ科バラ属に属するバラ及びバラ科バラ属に属するバラ抽出物のうちの少なくとも一方を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られたバラ発酵抽出物と、(2)米糠類、大豆類及び炭素源を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られた米糠・大豆発酵抽出物と、を含有する抗酸化剤。
- バラ科バラ属に属するバラ及びバラ科バラ属に属するバラ抽出物のうちの少なくとも一方、米糠類、大豆類及び炭素源を含む培地に納豆菌、枯草菌、或いはSaccharomyces属に属する酵母を接種し、発酵培養して得られる抗酸化剤。
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