JPH10236967A - 甘草発酵物からなる薬剤 - Google Patents

甘草発酵物からなる薬剤

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JPH10236967A
JPH10236967A JP9040193A JP4019397A JPH10236967A JP H10236967 A JPH10236967 A JP H10236967A JP 9040193 A JP9040193 A JP 9040193A JP 4019397 A JP4019397 A JP 4019397A JP H10236967 A JPH10236967 A JP H10236967A
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lactic acid
licorice
fermentation
fermented
extract
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JP9040193A
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Yasunori Niino
靖規 新納
Shigeru Koda
繁 香田
Tokutaro Miki
徳太郎 三木
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NIPPON HIGH POTSUKUSU KK
Original Assignee
NIPPON HIGH POTSUKUSU KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 甘草を原料とする、これまで知られていない
薬理作用である末梢血管拡張作用を有する物質および動
脈硬化抑制作用を有する物質、ならびにこれらのものを
含有する各種製品を提供する。 【解決手段】 甘草水抽出液をpH5.0以下になるま
で乳酸発酵させて得られた発酵液またはその脱水処理物
からなる末梢血管拡張作用剤および動脈硬化抑制作用
剤、ならびにこれらを有効成分として含有する医薬品、
医薬部外品、化粧品または食品である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、甘草発酵物からな
る末梢血管拡張作用剤および動脈硬化抑制作用剤ならび
にそれらを含有する各種製品に関する。
【0002】
【従来の技術】日本薬局方に記載されている甘草[glyc
yrrhiza; National Formulary, ヨーロッパ薬局方(Li
quirititiae Radix)]は、古くから食品の調味や薬用
として用いられてきた。特に、主成分であるグリチルリ
チンはしょ糖の150倍の甘さがあり、甘味料として現
在でも広く用いられている。
【0003】この甘草から得られる抽出物は、薬理作用
として、例えば抗炎症作用、抗潰瘍作用、肝保護作用な
どを有することが知られており、医薬品や化粧品などに
広く用いられている。しかしながら、この甘草抽出物
は、グリチルリチンが比較的多量に含まれていることか
ら、甘味が極めて強く、そのままでは食品などに適用し
にくいという問題があり、また副作用として、高血圧や
浮腫などが生じることも知られている。
【0004】このため、甘草や甘草抽出物を乳酸発酵さ
せることが試みられている。例えば、国際公開WO92
/01393号公報には、甘草抽出物を乳酸菌で発酵さ
せることにより得られる甘草発酵物は、甘味が消失し、
かつ抗潰瘍作用や肝保護作用を有することが開示されて
おり、また、韓国特許公告公報KR−B−860255
号公報には、甘草の発酵による乳酸菌の生菌を含む清涼
飲料水の製造方法が開示されている。
【0005】ところで、末梢血管拡張作用剤は、末梢循
環拡張作用に基づく、末梢循環の改善作用を示し、例え
ば末梢動脈硬化症、動脈栓塞、ビュルガー病、レイノー
病、バージャ病、凍瘡、凍傷、脱毛などの予防や治療に
効果を有することが知られている。
【0006】しかしながら、甘草抽出物やその発酵物
に、末梢血管拡張作用あるいは末梢循環の改善作用、さ
らには動脈硬化抑制作用があることは、これまで科学的
に証明された例はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
状況下で、甘草を原料とする、これまで知られていない
薬理作用である末梢血管拡張作用を有する物質および動
脈硬化抑制作用を有する物質、ならびにこれらのものを
含有する各種製品を提供することを目的とするものであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、甘草の水抽出
液を特定のpH以下になるまで乳酸発酵させて得られた
ものが、末梢血管拡張作用および動脈硬化抑制作用を有
することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成す
るに至った。
【0009】すなわち、本発明は、甘草水抽出液をpH
5.0以下になるまで乳酸発酵させて得られた発酵液ま
たはその脱水処理物からなる末梢血管拡張作用剤および
動脈硬化抑制作用剤を提供するとともに、これらの末梢
血管拡張作用剤および動脈硬化抑制作用剤を有効成分と
して含有することを特徴とする医薬品、医薬部外品、化
粧品または食品を提供するものである。
【0010】ここで、末梢血管拡張作用剤および動脈硬
化抑制作用剤として用いられる発酵液またはその脱水処
理物は、リクイリチン1重量部に対して、1〜300重
量部の乳酸および1/30〜3.9重量部のグリチルリ
チンを含有するとともに、下記の性状 (1)265〜275nm付近および305〜320n
m付近に紫外部吸収を示す、(2)固形分濃度5g/1
00ml水溶液にメタノール、エタノールまたはアセト
ンを加えたときに白色の沈殿が生じる、(3)実質的に
甘味を有していない、(4)発酵後に殺菌処理されてい
る、を有するものが好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の末梢血管拡張作用剤およ
び動脈硬化抑制作用剤の製造において、原料として用い
られる甘草は従来より甘味料、賦形剤、漢方薬等に利用
されている甘草を意味し、例えば下記の植物が例示され
る。
【0012】・満州甘草 (Glycyrrhiza uralenis Fisch. et DC.) ・光果甘草 (G. glabra Linne) ・スペイン甘草 (G. glabra L var. typica Reg. et Herd) ・ロシア甘草 (G. glabra L var. glandulifera Reg. et Herd) ・ペルシャ甘草 (G. glabra L var. violacea Boiss.) 本発明においては、発酵原料として、これらの甘草を用
いた甘草水抽出液が用いられるが、この甘草水抽出液は
甘草に1〜1000倍重量程度の水を加え、1〜130
℃程度で0.1〜72時間程度抽出処理することにより
得られる。甘草水抽出液を得るに当たっては、生の甘草
をそのまま利用することも可能であるが、甘草の乾燥物
を利用することが特に好ましい。生の甘草またはその乾
燥物は、全草であっても、全草の一部(根、ストロン
等)であってもよいが、特に、皮を除去した根の乾燥物
や皮を除去したストロンの乾燥物が好ましい。乾燥物を
用いる場合は、粉末として使用することが好ましい。ま
た、甘草水抽出液として、従来より漢方薬に利用されて
いる甘草エキスを1〜1000倍重量程度の水に溶解さ
せた液や、甘草粗エキスを1〜1000倍重量程度の水
に懸濁させた液を用いてもよい。本発明では、これらの
液も甘草水抽出液という。
【0013】また、上記甘草水抽出液の発酵に用いる乳
酸菌としては、従来より食品の加工に用いられる乳酸菌
をそのまま用いることができるが、特にラクトバシルス
(Lactobacillus)属またはビフィドバクテリウム(Bif
idobacterium)属の乳酸菌が好ましい。これらの属の乳
酸菌は各々単独で使用してもよいし、併用してもよい。
また、これらの乳酸菌として、ヨーグルト等の乳製品に
含まれる乳酸菌をこの乳製品とともに使用してもよい。
【0014】甘草水抽出液の乳酸発酵は、甘草水抽出液
と、乳酸菌または乳酸菌を含む乳製品とを混在させて、
1〜50℃程度の通性嫌気的状態の下に1日〜1年間程
度放置することにより行うことができる。このとき、乳
酸菌の栄養源として、グルコース、マルトース、カゼイ
ン、ペプトン、イーストエキスなどを添加してもよい。
【0015】この乳酸発酵は、発酵液のpHが5.0以
下になるまで行うことが必要である。この発酵液のpH
が5.0より高い場合には発酵期間が不足し、所望する
薬理活性が低活性のものしか得られないおそれがある。
【0016】発酵液のpHが5.0以下に低下したこと
を確認したのち、通常加熱処理あるいは高圧蒸気滅菌な
どの周知の方法で発酵液を殺菌処理し、次いで不溶物を
ろ過や遠心分離などの公知の方法で除去することによ
り、所望の本発明の発酵液(以下、本発明の甘草発酵抽
出液という)が得られる。
【0017】この甘草発酵抽出液は、末梢血管拡張作用
剤または動脈硬化抑制作用剤としてそのまま用いてもよ
いし、脱水処理して半固形状または固形状の形態で用い
てもよい。この際、脱水処理方法としては特に制限はな
く、加熱濃縮、減圧濃縮、凍結乾燥などの常法により、
行うことができる。また、脱水処理の際に、デンプン、
デキストリン、乳糖などの適当な賦形剤を添加すること
もできる。
【0018】このようにして得られた本発明の甘草発酵
抽出液またはその脱水処理物には、甘草由来の成分であ
るリクイリチン、イソリクイリチンおよびグリチルリチ
ンが含まれ、さらに乳酸発酵によって生じた乳酸が含ま
れている。これらの成分の含有割合は、リクイリチン1
重量部に対して、乳酸が1〜300重量部およびグリチ
ルリチンが1/30〜3.9重量部の割合で含有されて
いるのが好ましい。このイソリクイリチン、リクイリチ
ンおよびグリチルリチンは、甘草水抽出液が乳酸発酵さ
れることに伴って量的に低下する。また、発酵液中の乳
酸の量は、一般に、発酵期間を長くするに従って増加す
る。
【0019】リクイリチン1重量部に対する乳酸の量が
1重量部未満では、グリチルリチンの量に対する乳酸の
量も少ないことから、甘草発酵抽出液またはその脱水処
理物は極めて甘く、食品に適用しにくい上、発酵期間が
不充分であるので、所望の薬理活性が低いおそれがあ
る。また、リクイリチン1重量部に対する乳酸の量が3
00重量部を超えると、グリチルリチンの量に対する乳
酸の量も多いことから、甘草発酵抽出液またはその脱水
処理物は極めて酸っぱく、食品に適用しにくい。
【0020】本発明の甘草発酵抽出液またはその脱水処
理物は、さらに、通常以下に示す性状を有している。す
なわち、265〜275nm付近および305〜320
nm付近に紫外部吸収を示すとともに、固形分濃度5g
/100ml水溶液にメタノール、エタノールまたはア
セトンを加えたときに白色の沈殿が生じる。また、実質
的に甘味を有していない上、前述のように殺菌処理が施
されている。
【0021】甘草水抽出液の乳酸発酵により得られた本
発明の甘草発酵抽出液またはその脱水処理物は、前記し
たような性状を有し、後述の実施例からも明らかなよう
に、末梢血管の拡張作用に基づく血流量の増加をもたら
し、末梢循環の改善作用を示し、かつ高い安全性を有し
ている。したがって、本発明の甘草発酵抽出液またはそ
の脱水処理物は、末梢血管拡張作用剤として、例えば血
行不良による冷え、肩こり、しもやけ、脱毛の予防ある
いは治療に、また閉塞性動脈硬化症、レイノー病、バー
ジャ病などの末梢循環の不良によって生じる疾患の予防
あるいは治療に有用である。
【0022】また本発明の甘草発酵抽出液またはその脱
水処理物は、動脈硬化抑制作用を有し、動脈硬化抑制作
用剤として用いられる。この動脈硬化抑制作用剤は、上
述の末梢循環改善作用と相補的に作用し循環障害の予防
または治療に有用であると同時に、中枢および心臓を含
む全身の循環系における動脈硬化症の予防あるいは治療
に有用である。動脈硬化症は、糖尿病、高脂血症、高コ
レステロール血症などの疾患において併発することがあ
り、これらの疾患の動脈硬化の進展を治療または予防す
る目的においても本発明の甘草発酵抽出物は有用であ
る。
【0023】本発明はまた、前記の甘草発酵抽出液また
はその脱水処理物からなる末梢血管拡張作用剤または動
脈硬化抑制作用剤を有効成分として含有する医薬品、医
薬部外品、化粧品または食品を提供するものである。
【0024】上記末梢血管拡張作用剤または動脈硬化抑
制作用剤を医薬品として用いる場合、その投与量は、疾
患の種類、症状の程度、患者の年令、健康状態、体重、
同時処理がある場合にはその種類、処置頻度、所望の効
果などによって異なり、特に限定されないが、成人1日
当たり、本発明の末梢血管拡張作用剤または動脈硬化抑
制作用剤を、通常0.01〜500g、好ましくは0.
1〜100gの割合で、経口あるいは非経口的に1日1
回またはそれ以上投与するのがよい。投与剤形として
は、例えば散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、
座剤、注射剤、液剤、ローション剤、乳剤、軟膏などが
挙げられる。
【0025】
【実施例】次に、本発明を製造実施例および薬理試験例
によってさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの
例によってなんら限定されるものではない。
【0026】製造実施例1 局方甘草末(皮除去)10gを水1000mlに加え、
約90℃で1時間加熱した。冷却後、乳酸菌として森永
ビヒダス(森永乳業社製のヨーグルトの商品名)に含ま
れる乳酸菌をこのヨーグルトと共に加えた。培養器上部
の空気を窒素に置換し、35℃にて4日間培養し、乳酸
発酵させた。発酵液のpHが4.6であることを確認
し、90℃で90分間加熱殺菌処理した。冷却後、発酵
液を遠心分離して得られた上澄を分取し、甘草発酵抽出
液800gを得た。
【0027】この甘草発酵抽出液について、高速液体ク
ロマトグラフィーにより分析を行った。結果を表1に示
す。
【0028】〈毒性試験〉この甘草発酵抽出液を、5週
令のウイスター系雄性ラットに10ml/個体/日の割
合で、4週間経口投与した。その結果、投与期間中およ
び投与終了から1週間の観察期間を通して、一般状態、
体重、血液生化学的検査および尿中電解質などに変化は
認められなかった。この結果より、本発明の甘草発酵抽
出液には毒性がないことが明らかである。
【0029】製造実施例2 局方甘草末(皮除去)10g、グルコース10gおよび
イーストエキス10gを水1000mlに加え、約90
℃で1時間加熱した。冷却後、乳酸菌として森永ビヒダ
ス(森永乳業社製のヨーグルトの商品名)に含まれる乳
酸菌をこのヨーグルトと共に加えた。培養器上部の空気
を窒素に置換し、35℃にて4日間培養し、乳酸発酵さ
せた。発酵液のpHが3.7であることを確認し、90
℃で90分間加熱殺菌処理した。冷却後、発酵液をゼオ
ライトろ過し、得られたろ液を分取し、甘草発酵抽出液
820gを得た。
【0030】この甘草発酵抽出液について、製造実施例
1と同様にして、高速液体クロマトグラフィーにより分
析を行った。結果を表1に示す。
【0031】製造実施例3 局方甘草末(皮除去)30g、グルコース10gおよび
イーストエキス10gを水1000mlに加え、約90
℃で1時間加熱した。冷却後、乳酸菌として森永ビヒダ
ス(森永乳業社製のヨーグルトの商品名)に含まれる乳
酸菌をこのヨーグルトと共に加えた。培養器上部の空気
を窒素に置換し、35℃にて4日間培養し、乳酸発酵さ
せた。発酵液のpHが4.5であることを確認し、90
℃で90分間加熱殺菌処理した。冷却後、発酵液を遠心
分離して得られた上澄を分取し、甘草発酵抽出液780
gを得た。
【0032】この甘草発酵抽出液について、製造実施例
1と同様にして、高速液体クロマトグラフィーにより分
析を行った。結果を表1に示す。
【0033】製造実施例4 局方甘草末(皮除去)10gを水1000mlに加え、
約90℃で1時間加熱した。冷却後、グルコース30
g、カゼイン10g、イーストエキス10gおよびペプ
トン10gを加え、121℃で15分間高圧蒸気滅菌処
理した。冷却後、乳酸菌としてラクトバシルス・ブルガ
リクス(Lactobacillus bulgaricus)を加え、培養器上
部の空気を窒素に置換し、35℃にて4日間培養し、乳
酸発酵させた。発酵液のpHが4.3であることを確認
し、90℃で90分間加熱殺菌処理した。冷却後、発酵
液を遠心分離して得られた上澄を分取し、甘草発酵抽出
液800gを得た。
【0034】この甘草発酵抽出液について、製造実施例
1と同様にして、高速液体クロマトグラフィーにより分
析を行った。結果を表1に示す。
【0035】製造実施例5 局方甘草末(皮除去)10g、グルコース30g、カゼ
イン10gおよびイーストエキス10gを水1000m
lに加え、約90℃で1時間加熱した。冷却後、乳酸菌
として森永ビヒダス(森永乳業社製のヨーグルトの商品
名)に含まれる乳酸菌をこのヨーグルトと共に加えた。
培養器上部の空気を窒素に置換し、35℃にて4日間培
養し、乳酸発酵させた。発酵液のpHが4.1であるこ
とを確認し、90℃で90分間加熱殺菌処理した。冷却
後、発酵液をゼオライトろ過し、得られたろ液を分取
し、甘草発酵抽出液810gを得た。
【0036】この甘草発酵抽出液について、製造実施例
1と同様にして、高速液体クロマトグラフィーにより分
析を行った。結果を表1に示す。
【0037】製造実施例6 局方甘草末(皮除去)10g、グルコース30g、カゼ
イン10gおよびイーストエキス10gを水1000m
lに加え、約90℃で1時間加熱した。冷却後、乳酸菌
としてビフィドバクテリウム・ロンガン(Bifidobacter
ium Lomgum)およびラクトバシルス・ブルガリクス(La
ctobacillus bulgaricus)を加え、培養器上部の空気を
窒素に置換し、35℃にて4日間培養し、乳酸発酵させ
た。発酵液のpHが4.3であることを確認し、90℃
で90分間加熱殺菌処理した。冷却後、発酵液を遠心分
離して得られた上澄を分取し、甘草発酵抽出液790g
を得た。
【0038】この甘草発酵抽出液について、製造実施例
1と同様にして、高速液体クロマトグラフィーにより分
析を行った。結果を表1に示す。
【0039】製造比較例1 局方甘草末(皮除去)30gを水1000mlに加え、
90℃で1時間加熱抽出し、甘草抽出液を得た。
【0040】この甘草抽出液について、製造実施例1と
同様にして、高速液体クロマトグラフィーにより分析を
行った。結果を表1に示す。
【0041】製造比較例2 製造実施例3において、発酵液のpHが5.0以下に低
下しないように、発酵時間を6時間とした以外は、製造
実施例3と同様に処理し、発酵不足の甘草発酵抽出液を
得た。なお、発酵終了後の発酵液のpHは5.4であっ
た。
【0042】この発酵不足の甘草発酵抽出液について、
製造実施例1と同様にして、高速液体クロマトグラフィ
ーにより分析を行った。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】表1から分かるように、本発明の甘草発酵
抽出液(製造実施例1〜6)においては、原料甘草抽出
液(製造比較例1)に比べ、グリチルリチンが約1/6
〜1/30に減少し、リクイリチンはほとんど減少して
いない。また、甘草抽出液では乳酸が含まれていないの
に対し、甘草発酵抽出液中には乳酸が含まれ、その量は
発酵の進行に伴って増加する。
【0045】原料甘草抽出液では、通常リクイリチン1
重量部に対し、グリチルリチンを4〜15重量部程度含
むが、本発明の甘草発酵抽出液は、通常、リクイリチン
1重量部に対して、グリチルリチンを1/30重量部
(製造実施例では約1/7重量部が最小)〜3.9重量
部(製造実施例では約1.5重量部が最大)程度含み、
かつ乳酸を1重量部(製造実施例では約30重量部が最
小)〜300重量部(製造実施例では約130重量部が
最大)程度含む。
【0046】さらに、本発明の甘草発酵抽出液につい
て、可視部および紫外部の吸収スペクトルを測定したと
ころ、いずれも265〜275nm付近および305〜
320nm付近に紫外部吸収が認められた。さらに、本
発明の甘草発酵抽出液について、固形分濃度5g/10
0mlの水溶液を調製し、メタノール、エタノールおよ
びアセトンを、それぞれ5倍容量加えたところ、いずれ
の発酵抽出液においても、それぞれ白色の沈殿が生じ
た。
【0047】薬理試験例1 体重10〜12kgの雄性イヌをペントバルビタールナ
トリウム30mg/kg(i.v.)で麻酔し、背位に固定
した。大腿動脈に電磁血流計を設置して、血流量をポリ
グラフに記録した。被験物質を生理食塩水に溶解し、大
腿動脈内に投与し、血流量の変化を指標として、末梢血
管の拡張作用を試験した。なお、被験物質としては、製
造実施例1〜3および製造比較例1、2で得られた甘草
発酵抽出液、甘草抽出液および発酵不足の甘草発酵抽出
液を減圧濃縮して得られたエキスを用いた。結果を表2
に示す。
【0048】
【表2】
【0049】表2から明らかなように、本発明の甘草発
酵抽出液(製造実施例1〜3)は、いずれも甘草抽出液
(製造比較例1)および発酵不足の甘草発酵抽出液(製
造比較例2)よりも、高い血流量増加を示した。このこ
とから、本発明の甘草発酵抽出液の末梢血管拡張作用
は、甘草抽出液および発酵時の発酵液のpHが5.0以
下に低下していない甘草発酵抽出液よりも、強いことが
分かる。
【0050】薬理試験例2 ウイスター系雄性ラットをペントバルビタールナトリウ
ムで麻酔し、背位に固定した。次いで、大腿静脈にカニ
ューレを施し、血圧および心拍数をポリグラフに記録し
た。被験物質を生理食塩水に溶解し、大腿静脈に挿入し
たカニューレを介して静脈内に投与した。なお、被験物
質としては、製造実施例1〜6で得られた甘草発酵抽出
液を用いた。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】表3から明らかなように、本発明の甘草発
酵抽出液は、心拍数を低下させることなく、血圧を下降
させた。一般に、薬物を投与した際、心臓からの血液の
供給量に変化がないにもかかわらず、血圧が下降した場
合、末梢抵抗の低下が生じたものと理解され、末梢血管
が拡張したことを意味する。このことから、明らかなよ
うに、本発明の甘草発酵抽出液は、強い末梢血管拡張作
用を有していることが分かる。
【0053】さらに、前述の薬理試験例1の結果と併
せ、本発明の甘草発酵抽出液は、末梢血管拡張作用に基
づく血流量の増加作用を有し、末梢循環の改善に有用で
あることが明らかとなった。
【0054】薬理試験例3 WHHL(WATANABE HERITABLE HYPERLIPIDEMIC)ラビ
ットは、生後約8カ月において動脈硬化症に至ることか
ら、動脈硬化抑制作用剤の評価に広く用いられている。
WHHLラビット3カ月齢を用い本発明の甘草発酵抽出
物を8v/v%の割合で含む飲用水を体重1kg当り50
mlの用量で、5カ月間毎日飲用させた。対照には飲用
水を同様の用量与え、飲用後は、試験群および対照群共
に飲用水を自由摂取させた。8カ月齢でペントバルビタ
ールナトリウム麻酔下に解剖し放血致死させ、腹腔動脈
より上部の大動脈を摘出した。動脈周囲の脂肪を取り正
中線と大動脈弓の上部を切り、平面に開き、生理食塩水
で血液を洗い血管壁の病変の程度を表4に示す基準で評
点化し粥状硬化巣の形成の程度を観察した。なお、本発
明の甘草発酵物は、製造実施例5に示す製法を繰り返し
て得たのち、冷所に保存した物を使用した。
【0055】
【表4】
【0056】結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】表5から明らかなように本発明の甘草発酵
抽出物は、全例において病変の程度を示す評点が2以下
であり、粥状硬化巣の形成を強く抑制した。このことか
ら、本発明の甘草発酵抽出物が抗動脈硬化作用を有して
いることがわかる。
【0059】製剤調製例1 製造実施例2で得られた甘草発酵抽出液を原材料の一つ
に用い、下記組成のドリンク剤を調製した。
【0060】 グレープフルーツ果汁エキス 2g ステビア甘味料 0.3g 甘草発酵抽出液(製造実施例2) 100g フレーバー 適量 製剤調製例2 製造実施例2で得られた甘草発酵抽出液を原材料の一つ
に用いて顆粒剤を調製した。
【0061】製造実施例2で得た甘草発酵抽出液を減圧
濃縮して得られたエキス50gを、デンプン200gと
混和し、これに精製水50mlを加えて乳鉢にて混練し
た。得られたペーストを50℃で30分間予備乾燥した
のち、径約450μmの顆粒に押し出し造粒した。得ら
れた顆粒を50℃で6時間乾燥して、顆粒剤230gを
調製した。
【0062】製剤調製例3 製造実施例3で得た甘草発酵抽出液を減圧濃縮して得ら
れたエキス50gを、日本薬局方親水軟膏450gと混
和し、本発明の末梢血管拡張作用剤を含む軟膏500g
を調製した。
【0063】
【発明の効果】本発明の甘草発酵抽出液またはその脱水
処理物からなる末梢血管拡張作用剤は、末梢血管の拡張
作用に基づく血流量の増加をもたらし、末梢循環の改善
作用を示し、かつ高い安全性を有している。したがっ
て、本発明の末梢血管拡張作用剤は、例えば血行不良に
よる冷え、肩こり、しもやけ、脱毛の予防あるいは治療
に、また、閉塞性動脈硬化症、レイノー病、バージャ病
などの末梢循環の不良によって生じる疾患の予防あるい
は治療に有用である。
【0064】本発明の末梢血管拡張作用剤は、上記のよ
うな特徴を有することから、例えば医薬品をはじめ、医
薬部外品、化粧品、食品などに利用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 7/00 A61K 7/48 7/48 A23L 2/00 F

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 甘草水抽出液をpH5.0以下になるま
    で乳酸発酵させて得られた発酵液またはその脱水処理物
    からなる末梢血管拡張作用剤。
  2. 【請求項2】 脱水処理物が半固形状または固形状であ
    る請求項1に記載の末梢血管拡張作用剤。
  3. 【請求項3】 発酵液またはその脱水処理物がリクイリ
    チン1重量部に対して、1〜300重量部の乳酸および
    1/30〜3.9重量部のグリチルリチンを含有すると
    ともに、下記の性状 (1)265〜275nm付近および305〜320n
    m付近に紫外部吸収を示す、(2)固形分濃度5g/1
    00ml水溶液にメタノール、エタノールまたはアセト
    ンを加えたときに白色の沈殿が生じる、(3)実質的に
    甘味を有していない、(4)発酵後に殺菌処理されてい
    る、を有するものである請求項1または2に記載の末梢
    血管拡張作用剤。
  4. 【請求項4】 発酵液が、甘草水抽出液を1〜40℃の
    通性嫌気的状態の下に、pH5.0以下になるまで乳酸
    発酵させて得られたものである請求項1、2または3に
    記載の末梢血管拡張作用剤。
  5. 【請求項5】 甘草水抽出液をpH5.0以下になるま
    で乳酸発酵させて得られた発酵液またはその脱水処理物
    からなる動脈硬化抑制作用剤。
  6. 【請求項6】 脱水処理物が半固形状または固形状であ
    る請求項5に記載の動脈硬化抑制作用剤。
  7. 【請求項7】 発酵液またはその脱水処理物がリクイリ
    チン1重量部に対して、1〜300重量部の乳酸および
    1/30〜3.9重量部のグリチルリチンを含有すると
    ともに、下記の性状 (1)265〜275nm付近および305〜320n
    m付近に紫外部吸収を示す、(2)固形分濃度5g/1
    00ml水溶液にメタノール、エタノールまたはアセト
    ンを加えたときに白色の沈殿が生じる、(3)実質的に
    甘味を有していない、(4)発酵後に殺菌処理されてい
    る、を有するものである請求項5または6に記載の動脈
    硬化抑制作用剤。
  8. 【請求項8】 発酵液が、甘草水抽出液を1〜40℃の
    通性嫌気的状態の下に、pH5.0以下になるまで乳酸
    発酵させて得られたものである請求項5、6または7に
    記載の動脈硬化抑制作用剤。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の薬
    剤を有効成分として含有することを特徴とする医薬品、
    医薬部外品、化粧品または食品。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002037740A (ja) * 2000-07-25 2002-02-06 Toyo Hakko:Kk 発酵組成物、並びに該発酵組成物を含有する抗アレルギー性組成物及び抗酸化性組成物
JP2002265343A (ja) * 2001-03-07 2002-09-18 Ichimaru Pharcos Co Ltd 化粧料組成物
JP2003026592A (ja) * 2001-07-09 2003-01-29 Nippon Hypox Lab Inc 甘草発酵抽出物からなる抗アンドロゲン剤
WO2017057265A1 (ja) * 2015-09-30 2017-04-06 国立大学法人 東京大学 強皮症予防および/または治療剤

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