以下、本発明の電磁弁装置を、蓄圧式燃料噴射装置に用いられる燃料噴射弁に適用して具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係わる固定部材の締付け後の組付状態を示す模式的断面図である。図2は、図1中の固定部材の締付け前の状態を示す模式的断面図である。図3は、本実施形態の電磁弁装置を適用した蓄圧式燃料噴射装置を示す断面図である。図4は、図3中の電磁弁装置の要部を示す部分断面図である。なお、図1は、図4中の電磁弁装置の要部の組付状態を示すものであり、図面作成の簡便のため、固定部材のみを示している。
図3に示すように、蓄圧式燃料噴射装置1に使用される燃料噴射弁2は、例えば自動車等の車両に搭載された図示しない多気筒(例えば、4気筒)のディーゼルエンジン(以下、エンジンと呼ぶ)の各気筒ごとに設けられ、図示しない高圧燃料供給ポンプ(以下、サプライポンプ)3から圧送された高圧燃料を蓄圧器(以下、コモンレール)4内に蓄圧し、このコモンレール4に蓄圧した高圧燃料を燃焼室内に直接噴射供給するいわゆるインジェクタである。
この燃料噴射弁2は、ノズルニードル20を軸方向に移動可能に収容するノズルボデー12と、ノズルニードル20を閉弁側に付勢する付勢部材としてのスプリング35を収容するノズルホルダー11と、ノズルボデー12とノズルホルダー11とを所定の締付軸力により締結する締付け部材としてのリテーニングナット14と、電磁弁装置7とを含んで構成されている。ノズルボデー12、ノズルホルダー11、およびリテーニングナット14は、ノズルボデー12とノズルホルダー11とをリテーニングナット14で締結することで燃料噴射弁のノズル本体を構成している。ノズルニードル20とノズルボデー12はノズル部を構成している。
ノズルボデー12は、略筒状体に形成され、先端部(図3中の下方側の端部)側に、高圧燃料を燃焼室に噴射するための噴孔12bを1個または複数個備えた略筒状部材である。
このノズルボデー12の内部には、中実円柱状のノズルニードル20を軸方向移動可能に保持するための収容孔(以下、第1ニードル収容孔)12eが形成されている。この第1ニードル収容孔12eの図中の中間部位には、その孔径が拡げられた燃料溜り室12cが設けられている。具体的には、ノズルボデー12の内周は、燃料流れの下流に向かって、第1ニードル収容孔12e、燃料溜り室12c、弁座12aの順に形成されており、弁座12aの下流側にノズルボデー12の内外を貫通する噴孔12bが設けられている。
弁座12aは、図3に示すように、円錐台面を有しており、円錐台面の大径側が第1ニードル収容孔12eに連続し、小径側が噴孔12bに向かって延びている。この弁座12aにノズルニードル20が着座および離座可能に配置され、着座および離間することでノズルニードル20が閉弁および開弁する。
さらに、ノズルボデー12には、このノズルボデー12の図示上端側の合わせ面から燃料溜り室12cへ延びる燃料送出路12dが設けられている。この燃料送出路12dは、ノズルホルダー11の後述の燃料供給路11bと連通することで、コモンレール4内で蓄圧された高圧燃料を燃料溜り室12cを経由し弁座12a側へ送り込む。燃料送出路12dと燃料供給路11bとは高圧燃料通路を構成する。
ノズルホルダー11は、図3に示すように、略筒状体に形成されており、内部に、スプリング35、およびノズルニードル20を駆動するための制御ピストン30を軸方向に移動可能に収容するための収容孔(以下、第2ニードル収容孔)11dが設けられている。この第2ニードル収容孔11dの図示下端側の合わせ面には、中間の内周11d1よりは大きく拡げられた内周(以下、スプリング室とも呼ぶ)11d2が形成されている。
具体的には、この内周11d2は、スプリング35、および環状部材31、および制御ピストン30のニードル部30cを収容するいわゆるスプリング室が形成されている。環状部材31は、スプリング35とノズルニードル20との間に挟み込まれて配置されており、スプリング35をノズルニードル20の閉弁方向に付勢するスプリング受け部を構成する。ニードル部30cは、ノズルニードル20に、環状部材31を介して間接的に、もしくは直接的に当接可能に構成されている。
さらに、ノズルホルダー11には、コモンレール4の分岐管に接続される高圧配管(図示せず)が気密に連結する継手部(以下、インレット部)11fが設けられている。このインレット部11fは、コモンレールから供給された高圧燃料を、内部に装着されたバーフィルタ13を介して燃料供給路11bへ導く燃料導入部である。ノズルホルダー11のインレット部11fの内部、およびスプリング室11d2の周囲には、燃料供給路11bが設けられている。
また、ノズルホルダー11には、スプリング室11d2に導かれた燃料を、図示しない燃料タンク等の低圧配管系内に戻すための燃料逃がし通路(リーク回収用通路とも呼ぶ)(図示せず)が設けられている。燃料逃がし通路11c、スプリング室11d2は低圧燃料通路を構成する。
なお、図3に示すように、制御ピストン30の他端部側には、電磁弁装置7により油圧が給排され圧力制御室(以下、油圧制御室)8、16cが設けられている。この油圧制御室8、16cの油圧を増減することで、ノズルニードル20を閉弁および開弁する。具体的には、油圧制御室8、16cから油圧が抜かれ、減少すると、ノズルニードル20および制御ピストン30がスプリング35の付勢力に抗して図3中の軸方向上方に移動し、ノズルニードル20が開弁する。一方、油圧制御室8、16cに油圧が導入され、増加すると、ノズルニードル20および制御ピストン30がスプリング35の付勢力によって図3中の軸方向下方に移動し、ノズルニードル20が閉弁する。
なお、制御ピストン30の端部外壁30pと、第2ニードル収容孔11dと、圧力制御室部16cの内壁によって圧力制御室8、16cが形成している。
次に、電磁弁装置7について詳細に説明する。電磁弁装置7は、圧力制御室8、16cと低圧通路(以下、導通路とも呼ぶ)17dとを断続する電磁二方弁である。電磁弁装置7は、ハウジングとしてのノズルホルダー11の反噴孔側の端部に配設されている。電磁弁装置7は、リテーニングナット52によりノズルホルダー11に固定されている。
図3に示すように、第2ニードル収容孔11dの反噴孔側の端部には、弁座部材としての弁座プレート部材16が設けられている。弁座プレート16には、高圧導入通路(以下、オリフィスとも呼ぶ)16a、16b、16cが設けられている。高圧導入通路16a、16b、16cは、出口側絞り部としてのオリフィス(以下、アウトオリフィス)16aと、入口側絞り部としてのオリフィス(以下、インオリフィス)16bと、第2ニードル収容孔11dに連通する圧力制御室部16cとを有する。
アウトオリフィス16aは、図4に示すように、弁座16dと圧力制御室部16cとを連通するように配置され、弁部材41を介した可動コア42の閉弁および開弁により閉塞および流通する。インオリフィス16bは、圧力制御室部16cと燃料供給路11bとを連通するように配置されている。
弁座プレート部材16の反噴孔側には、図3に示すように、弁ハウジングとしての固定部材(以下、第2固定部材)17が設けられている。第2固定部材17の外周部には、図4に示すように、ノズルホルダー11の筒状ねじ部(以下、雌ねじ)11rに螺合可能なねじ部(以下、雄ねじ)17rが設けられている。この雄ねじ17rと雌ねじ部11rが螺合することにより、第2固定部材17とノズルホルダー11がねじ締結される。
また、第2固定部材17がノズルホルダー11の筒状ねじ部にねじ込まれることによって、弁座プレート16が第2固定部材17とノズルホルダー11とに挟持されている。図4に示すように、第2固定部材17は略円筒形状に形成されており、貫通孔17a、17bが設けられている。貫通孔(以下、ガイド孔とも呼ぶ)17aと貫通孔17bとの間には、導通路17dが形成されている。なお、図1においては、貫通孔17bおよび導通路が、図1の紙面上ない断面を示している。第2固定部材17の上部側に、第1固定部材18を介して、可動コアが対向して配置され、下部側には弁座プレート16が締付けにより挟持されている。
なお、対向配置される固定部材17、18と、可動コア42の関係については後述する。
弁座プレート部材16の第2固定部材側端面と、貫通孔17aの内壁とによって弁室17cが形成されている。弁座プレート部材16の外壁には、二面幅面(図2参照)が形成されており、二面幅面と、ノズルボデー11の内壁の間に形成された隙間は貫通孔17bに連通している。
コイル61は、図3および図4に示すように、樹脂製のスプール62に直接巻回され、スプール62およびコイル61の外周側は図示しない樹脂モールドにより覆われている。なお、巻回装置により巻回されたコイル(以下、巻回コイル)61の外周を樹脂モールドにより被覆した後に、被覆された巻回コイル61に2次樹脂成形を行なってスプール62と一体に成形されるものであってもよい。コイル61の端部には、ターミナル51が電気的に接続されている。
固定コア63は、図3および図4に示すように、略円筒状に形成されており、内周側コア部と、外周側コア部と、これら両コア部に接続する上端部とを備え、内周側コア部と外周側コア部との間にコイル61が挟み込まれている。固定コア63は磁性材で形成されている。
固定コア63の図3中の下部側には、可動部材としての可動コア42が固定コア63に向き合うように配置されおり、固定コア63の下端面(以下、磁極面)と可動コア42の上端面(以下、磁極面)が近接および離間可能に配置されている。電流供給によりコイル61に発生する電磁力を利用し、内周側コア部および外周側コア部の磁極面から可動コア42の磁極面に向けて磁束が流れ、磁束密度に応じた吸引力が可動コア42に作用する。
固定コア63の内側には、略円筒状のストッパ64が挿入配置され、固定コア63と上部ハウジング53の間に挟まれて固定されている。ストッパ64内には、圧縮スプリングなどの付勢部材59が配置されている。この付勢部材59の付勢力は可動コア42に作用し、可動コア42の磁極面と固定コアの磁極面のエアギャップが広がる方向に付勢している。ストッパ64の可動コア側の端面は、可動コア42がフルリフトする際のリフトを規制する。
ストッパ64および上部ハウジング53の内側には、弁室17c、貫通孔17bを介して流出した燃料が低圧側へ流出する燃料通路37が形成されている。
弁ハウジング52、53、54は、図3および図4に示すように、上部ハウジング53と、リテーニングナット52と、中間ハウジング54と、下部ハウジングとしての固定部材17、18とを備えている。中間ハウジング54は略筒状に形成され、固定コア63をガイドするように収容している。具体的には、固定コア63は段付きの略有底円筒状に形成され、中間ハウジング54の下端部の内周側に挿入されている。固定コア63の外周は、段付きを境に下方に向かって縮径しており、その段付きが、中間ハウジング54の内周側に形成された段差に係止されることにより、固定コア63が中間ハウジング54から脱落するのを防止している。
可動コア42は、図4に示すように、略平板状に形成された平板部42aと、平板部より小径の小径軸部42bとを備えている。平板部42aの上端面は、内側コア部および外側コア部の磁極面に対向して配置される磁極面が形成されている。可動コア42は磁性材からなり、例えばパーメンジュールで形成されている。平板部42aの下部側に小径軸部42bが形成されている。
可動コア42の小径軸部42bの端面には、略球状の弁部材41が設けられており、可動コア42は、弁部材41を介して弁座プレート部材16の弁座16dに着座および離座が可能である。なお、弁座プレート部材16は、ピン等の位置決め部材92を介してノズルホルダー11に位置決め固定されている。弁座プレート部材16の貫通孔16pは、位置決め部材92を挿入する係止穴である。
弁部材41は、平面部41bを有する球状体であって、平面部41bが、弁座16dに着座および離座可能に配置されている。弁部材41は、平面部41bの着座時に連通路としてのアウトオリフィス16aを閉塞する。平面部41bは、弁座に着座および離座する平坦面を構成する。
なお、ここで、高圧導入通路16a、16b、16c、油圧制御室8、および燃料供給通路11bは、請求範囲に記載の流体通路の高圧側を構成している。また、弁室17c、貫通孔17b、導通路17d、および燃料通路37は、請求範囲に記載の流体通路の低圧側を構成している。
次に、対向配置される固定部材17、18と、可動コア42の関係について、図1および図4に従って説明する。
図4に示すように、固定部材17、18は、可動コア42の平板部42aに対向する対向面18dを有する第1固定部材18と、第1固定部材18を支持し、かつねじ部17r、11rの螺合による締結により弁座プレート16を挟持可能な第2固定部材17を備えている。
また、図4に示すように、対向配置された可動コア42の平板部42aと、第1固定部材18は、その対向面42ad、18d間の隙間Lが所定の距離に設定されている。
第1固定部材18は、図1に示すように、円板状の平板部材に形成されており、可動コア42の小径軸部42bが軸方向に移動可能な案内孔(以下、第1案内孔)18aを備えている。
第2固定部材17は、図1に示すように、可動コア42側端面に、第1固定部材18を収容する段差部17e、17fを備えている。ねじ部17r、11rの締結により第2固定部材17に曲げが生じるため、第2固定部材17自体が、外周部より内周部を凸状に変形している。この段差部17e、17fは、底面17eと内周17fとで構成されており、底面17eは、貫通孔17a近傍の内周部にて、第1固定部材18の対向面18dとは反対面18cと当接している。内周17fは、第1固定部材18の外周18bとフリーな状態で係合している。
具体的には、図2に示す固定部材17、18の締結前の状態において、第1固定部材17は、段差部17e、fが第2固定部材18を収容する所定の深さを有しており、底面17eは平坦面に形成されている。段差部17e、17fの内周17fと、第1固定部材18の外周18bとの間には、隙間δが形成されており、内周17fと外周18bは係合していない。
上述の構成を有する燃料噴射弁2の作動について以下説明する。高圧源であるコモンレール4から高圧配管、燃料供給路11b、燃料送出路12dを介して燃料溜り室12cに高圧燃料が供給されるとともに、燃料供給路11b、インオリフィス16bを介して油圧制御室8、16cに高圧燃料が供給される。
コイル61への非通電時には、可動コア42および弁部材41は、付勢部材59の付勢力により弁座16d側(図2の下方)へ押し当てられ、弁部材41が弁座16dに着座する。弁部材41の着座によりアウトオリフィス16aが閉塞され、油圧制御室8、16cから弁室17c、低圧通路17dへの燃料流れが遮断される。
このとき、油圧制御室8、16cに蓄えられている燃料圧力(以下、背圧)は、コモンレール4の内部の燃料圧力(以下、コモンレール圧)と同一の圧力に維持される。油圧制御室8、16cに蓄えられている背圧により制御ピストン30を介してノズルニードル20を噴孔閉塞方向へ付勢する作用力(以下、第1作用力)と、スプリング35の付勢力によりノズルニードル20を噴孔閉塞方向へ付勢する作用力(以下、第2作用力)との和は、燃料溜り室12cおよび弁座12a近傍のコモンレール圧によりノズルニードル20が噴孔開放方向に受ける作用力(以下、第3作用力)より大きくなっている。そのため、ノズルニードル20は弁座12aに着座し、噴孔12bが閉塞されている。噴孔12bから燃料は噴射されない。なお、弁座16dに着座している弁部材41には、閉塞されているアウトオリフィス16a内の燃料圧力(背圧)が作用している。
コイル61への通電が開始されると(以下、燃料噴射弁2の開時)、コイル61に電磁力が発生し、固定コア63と可動コア42の両磁極面間に発生する磁気吸引力により、可動コア42が固定コア63方向に吸引される。このとき、弁部材41は、上記アウトオリフィス16aの背圧により離座方向に受ける作用力(以下、第4作用力)が働いているので、可動コア42と共に弁部材41が弁座16dから離座する。その弁部材41が離座すると、ガイド孔17aに沿って弁部材41および可動コア42が固定コア63方向に移動する。
このとき、可動コア42および弁部材41の弁座16dからの着座により、アウトオリフィス16aを介して油圧制御室8、16cから弁室17c、低圧通路17dへ流れる燃料流れが流通する。油圧制御室8、16c内の燃料が低圧側へ開放されるため、油圧制御室8、16cの背圧が低下する。背圧が低下すると、第1作用力が次第に減少する。そして、ノズルニードル20の噴孔閉塞方向に作用する第1作用力および第2作用力より、ノズルニードル20の噴孔開放方向に作用する第3作用力が大きくなると、ノズルニードル20は弁座12aより離座し、図3の上方へリフトする。ノズルニードル20がリフトすると、噴孔12bは開放され、噴孔12bより燃料が噴射される。
また、コイル61への通電が停止されると(以下、燃料噴射弁2の閉時)、コイル61の電磁力が消滅するため、付勢部材59の付勢力により可動コア42および弁部材41が弁座16d方向に移動する。弁部材41の平面部41bが弁座16dに着座すると、油圧制御室8、16cから弁室17c、低圧室17dへの燃料の流出が停止される。そして油圧制御室8、16cの背圧が増加し、第1作用力および第2作用力が第3作用力に勝るようになると、ノズルニードル20が図3の下方へ移動し始める。そして、ノズルニードル20が弁座12aに着座すると、燃料噴射が終了する。
なお、ここで、燃料噴射弁2の閉時に、上記付勢部材59の付勢力により可動コア42および弁部材41が弁座16dする際に発生するバウンスを低減するため、可動コア42と固定部材17、18との対向面42ad、18d間の隙間Lを、所定の距離に設定している。これにより、可動コア42が弁座16d方向に移動時に、隙間Lに存在する燃料の流体抵抗を利用して、可動コア42および弁部材41が移動する方向とは逆方向の抗力を形成し、バウンスを低減する。
一般に、固定部材を締結する場合、締結による曲げ等の変形が固定部材全体に生じるので、固定部材の可動コア側の対向面形状も変形する。例えば、締結前には対向面を平面に形成していたものが、平面でなくなる。可動コアと固定部材の両端面間の隙間を均一に形成できなくなり、上記流体抵抗が一定にならないおそれがある。
これに対して、本実施形態では、固定部材17、18は、可動コア42の平板部42aに対向する対向面18dを有する第1固定部材18と、第1固定部材18を支持し、かつねじ部17r、11rの螺合による締結により弁座プレート16を挟持可能な第2固定部材17を備えている。これにより、締結による曲げ等の変形が固定部材17、18全体に生じることない。固定部材17、18のうち、可動コア42との対向面18dを有する第1固定部材18を除く、第2固定部材17で締結による変形が生じる。
さらに、固定部材17、18の締結時には、第2固定部材17の変形が生じたとしても、図1中のJ内に示すように、第1固定部材18と第2固定部材17はフリーな状態で係合するので、第1固定部材18の対向面18dは、平坦面を維持することができる。これにより、固定部材17、18の締結状態においても、対向面18d、42ad間の隙間Lが均一に設定でき、バウンス低減のための上記流体抵抗を一定にすることができる。したがって、燃料噴射弁2の閉時に、ノズルニードル20の閉弁タイミングが変化するのを防止でき、所望の燃料噴射特性が得られる。
以上説明した本実施形態では、固定部材17、18は、可動コア42の平板部42aに対向する対向面18dを有する第1固定部材18と、第1固定部材18を支持し、かつねじ部17r、11rの螺合による締結により弁座プレート16を挟持可能な第2固定部材17を備え、固定部材17、18の締結時、第1固定部材18と第2固定部材17をフリーな状態で係合するように構成している。
これにより、弁座プレート16を挟み込んで固定部材17、18をノズルホルダー11に締結した締結状態において、固定部材17、18のうちの第2固定部材17が締付けにより曲げ等の変形が生じた場合であっても、第1固定部材18は、平坦面は平坦面のまま等の対向面18d形状を維持することができる。したがって、可動コア42の反固定コア63側に可動コア42と対向して配置される固定部材17、18と、可動コア42との対向面18d、42ad間の隙間Lを管理するものにおいて、固定部材17、18の対向面18dの形状が締結により影響されないようにすることができる。
また、本実施形態では、上記固定部材17、18の締結前の状態において、締結時にフリーな状態で係合する第1固定部材18の外周18bと、第2固定部材17の段差部17e、17fの内周17f間に、隙間δを設けている。
これによると、締付けによる第2固定部材17の変形により、締結前に隙間δを設けていた第1固定部材18の外周18bと、第2固定部材17の段差部17e、17fの内周17f間を、フリーな状態で係合する係合部位に形成することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰返さない。
第1の実施形態では、固定部材17、18において、第1固定部材18を、第2固定部材17の段差部17e、17fに収容するものとした。
これに対して第2の実施形態では、図5に示すように、第1固定部材118を、第2固定部材117内に挿通可能に収容する固定部材117、118とする。図5は、本実施形態に係わる固定部材を示す図であって、図5(a)は締付け前の状態、図5(b)は締付け後の組付状態を示す模式的断面図である。
図5(a)に示すように、固定部材117、118は、円筒状の第1固定部材118と、略円筒状の第2固定部材117を備えている。第2固定部材117は、挿通可能に収容する内周117fを有している。
この固定部材117、118は、図5(a)に示すように、記固定部材117、118の締結前の状態において、第1固定部材118の外周118bと、第2固定部材117の内周117f間に、隙間δが設けられている。
そして、固定部材117、118の締結時には、締結により第2固定部材117の変形が生じたとしても、図5(b)中のJ内に示すように、第1固定部材118の外周118bと第2固定部材117の内周117fがフリーな状態で係合する。
また、第2固定部材117の内周117fは、締結による変形により図5(b)の下方に向かって縮小しており、フリーな状態で係合する係合部位で、第1固定部材を支持している。
このように構成しても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、第1固定部材18を、円板状の平板部材とした。
これに対して第3の実施形態では、図6に示すように、可動コア42の小径軸部42bのガイド孔を有する筒部219を備える第1固定部材218とする。図6は、本実施形態に係わる固定部材を示す図であって、図6(a)は締付け前の状態、図6(b)は締付け後の組付状態を示す模式的断面図である。
図6(a)に示すように、固定部材217、218は、第1固定部材218と、第2固定部材217で構成され、第1固定部材218は、平板部材からなる本体部と、本体部から軸方向に延びる筒部219とを備えている。
筒部219の内周(以下、第2案内孔)219aは、本体部の第1案内孔218aに沿うように形成されており、第1案内孔(ガイド孔とも呼ぶ)218aおよび第2案内孔(ガイド孔とも呼ぶ)219aは、可動コア42の小径軸部42bを軸方向に案内するガイド孔を区画している。
筒部219は、第2固定部材217の貫通孔217aに挿通可能であり、筒部219の外周219bと、貫通孔217aとの間には、隙間δ2が設定されている。
第2固定部材217は、第1固定部材218の本体部を収容する段差部217e、218fを備えている。段差部217e、218fの内周217fと、上記本体部の外周218bとの間には、第1の実施形態で説明した隙間δ(以下、区別のため、δ1とする)が形成されている。
そして、固定部材217、218の締結時には、締結により第2固定部材217の変形が生じたとしても、図6(b)中のJ1内に示すように、第1固定部材218の本体部の外周218bと第2固定部材217の内周217fがフリーな状態で係合する。また、図6(b)中のJ2内に示すように、第1固定部材218の筒部219の外周219bと第2固定部材217の貫通孔217aがフリーな状態で係合する。
なお、本実施例では、フリーな状態で係合する係合部位を、締結前に隙間δ1を設けていた外周218bと内周217f間、および締結前に隙間δ2を設けていた外周219bと貫通孔217a間とした。これに限らず、隙間δ1および隙間δ2のいずれか間でフリーな状態で係合する係合部位が形成されるものであってもよい。
このように構成しても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
また、本実施形態では、第2固定部材217が締付けにより変形が生じた場合であっても、第1固定部材218は、可動コア42を移動可能に案内するガイド孔218a、219aを区画する筒部219にて第2固定部材217とフリーな状態で係合することが可能である。これにより、第2固定部材217の締付けによる、第1固定部材218の上記対向面218dへの影響、および可動コア42を移動可能に案内するガイド孔218a、219aへの影響を抑制することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第3の実施形態で説明した固定部材において、図7に示すように、係止部319kを有する筒部219を備える第1固定部材319とする。図7は、本実施形態に係わる固定部材を示す図であって、図7(a)は締付け前の状態、図7(b)は締付け後の組付状態を示す模式的断面図である。
図7(a)に示すように、固定部材217、318は、第1固定部材318と、第2固定部材217で構成され、第1固定部材318は、平板部材からなる本体部と、本体部から軸方向に延びる筒部319とを備えている。
筒部319の第2案内孔219aは、本体部の第1案内孔218aに沿うように形成されており、第1案内孔218aおよび第2案内孔219aは、可動コア42の小径軸部42bを軸方向に案内するガイド孔を区画している。また、筒部319の外周219bと、第2固定部材217の貫通孔217aとの間には、隙間δ2が設定されている。
さらに、筒部319には、図7(a)に示すように、貫通孔217aに係止可能な係止部319kが設けられている。なお、固定部材217、318の締付け前には、図7(a)に示すように、係止部319kを有する筒部219が、貫通孔217aに挿入可能であり、貫通孔217aに係止部319kが係止されることはない。
貫通孔217aには、係止部319kに対応する部位に、段差部317kが設けられている。なお、段差部317kは、貫通孔217のうち、フリーな状態で係合する係合部位より図示下方に配置されている。
そして、固定部材217、318の締結時には、締結により第2固定部材217の変形が生じたとしても、図7(b)中のJ1内に示すように、第1固定部材318の本体部の外周218bと第2固定部材217の内周217fがフリーな状態で係合する。また、図7(b)中のJ2内に示すように、第1固定部材318の筒部319の外周219bと第2固定部材217の貫通孔217aがフリーな状態で係合する。
このとき、筒部319には、貫通孔217aに係止可能な係止部319kが設けられているので、締結による第2固定部材217の貫通孔217aの変形により、図7(b)中のK内に示すように、係止部319kを貫通孔217aの段差部317kで係止することができる。
以上説明した本実施形態では、筒部319は、第2固定部材217からの抜け防止のための係止部319kを備えている。これにより、固定部材217、318の締付時において、フリーな状態で係合する第1固定部材318と第2固定部材217の組付状態から、可動コア42の軸方向移動等により第1固定部材318が抜けてしまうのを防止することができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態を図8に示す。第5の実施形態は、可動コア42の小径軸部42bを案内する固定部材を、ノズルホルダー(ハウジング)11の雄ねじ11rと螺合する(以下、ねじ締結する)第3固定部材(以下、固定部材本体と呼ぶ)317と、小径軸部42bを移動可能に支持する第4固定部材315とで構成される組付体とする一例を示すものである。図8は、本実施形態に係わる固定部材を示す図であって、図8(a)は締付け前の状態、図8(b)は締付け後の組付状態を示す模式的断面図である。
可動コア42の小径軸部42bを案内する固定部材は、図8に示すように、雄ねじ11rとねじ締結する雌ねじ17rを有する固定部材本体317と、可動コア42の小径軸部42bを支持する第4固定部材315とで構成されている。図8において、第1の実施形態で説明した第1固定部材18の図示を省略している。なお、本実施形態においては、第1固定部材18を有するものに限らず、第1固定部材18を有しない構成であってもよい。
第4固定部材315は、第2筒部315aを有しており、第2筒部315aは、固定部材本体317と、可動コア42の小径軸部42bとの径方向の間に配置されている。この第2筒部315aを有する第4固定部材315は、固定部材本体317と弁座プレート16との間に挟み込まれて、固定部材本体317と弁座プレート16とに組付け固定されるものであればいずれの構造であってもよい。
具体的には、図8(a)に示すように、第2筒部315aは、固定部材本体317の貫通孔aの内側に配置されており、貫通孔aの内周と第2筒部材315aの外周315abとの間に、隙間(以下、案内隙間)δ3が形成されているとともに、可動コア42の小径軸部42bの外周と第2筒部315aの内周315aaとの間に、隙間(以下、支持隙間)δ4が形成されている。
ここで、案内隙間δ3は、上記ねじ締結により固定部材本体317の貫通孔aの内周が変形した状態において、貫通孔aの内周が第2筒部315aの外周315abに干渉しない程度の隙間が設定されている(図8(b)参照)。上記ねじ締結の前後で、第2筒部315aの内周315aaと小径軸部42bの外周とで区画されている支持隙間δ4が、変化することなく、維持できるからである。
また、第4固定部材315は、第2筒部315aから径方向外側に向かって延出している延出部315bが設けられており、延出部315aは、固定部材本体317と弁座プレート16との間に挟み込まれるものである。第4固定部材315を、固定部材本体317と弁座プレート16との間に組付け固定することができるからである。
延出部315bは略円板状に形成されており、固定部材本体317の外周部(雄ねじ17を除く)の形状とほぼ同じに形成されている。延出部315bは、固定部材本体317とノズルホルダー11とのねじ締結により、弁座プレート16と気密に連結されている。延出部315bの下端側には、弁座プレート16の弁座16dに対向する領域に、扁平空間からなる弁室315cが形成されている。そして、弁室315cと、固定部材本体317の低圧通路17dとの間には、延出部315bを内外(図8中の上下)に貫通する貫通孔316dが形成されており、弁室315cと低圧通路17dとは貫通孔316dを介して連通している。
また、図8(a)に示すように、上記延出部315bの外周面315hは、固定部材本体317の外周部(雄ねじ17を除く)より径方向内側に位置していることが好ましい。これにより、延出部315bの外周面315hを、固定部材本体317の外周部よりも径方向内側に配置するので、ノズルホルダー(ハウジング)11側の雌ねじ(ねじ部)に干渉することはない。したがって、固定部材本体317、第4固定部材315、および弁座プレート16から構成される組付体を、ノズルホルダー11内に容易に組み込むことができる。
さらにまた、第4固定部材315と弁座プレート16は、図8(a)に示すように、位置決め部材(以下、第2位置決め部材)392で位置決めされていることが好ましい。これにより、第4固定部材315によって支持される小径軸部42bおよび弁部材41と、弁座プレート16の弁座16dの軸ずれを抑制することができる。
ここで、弁座16dのアウトオリフィス16aは、いわゆる流体通路の高圧側と低圧側とを連通するものであるので、弁部材41が弁座16dから離座している間、略球状の弁部材41に流体流れが作用する。この略球状の弁部材41と、弁座16dのアウトオリフィス16aの軸ずれが比較的顕著である場合には、弁部材41が回転するおそれがある。
その流体流れにより弁部材41が回転し、弁部材41の弁座16dへの着座時に、弁部材41の平面部41bが傾いたまま弁座16dに着座すると、弁座16dの摩耗等が促進されるおそれがある。
これに対して本実施形態では、小径軸部42bおよび弁部材41と、弁座プレート16の弁座16dの軸ずれを抑制することができるので、弁座16dの摩耗等を抑制することができる。
また、上記第2位置決め部材392は、弁座プレート16とノズルホルダー(ハウジング)11とを位置決めするものであることが好ましい。これによると、第2位置決め部材392は、第4固定部材315、弁座プレート16、およびノズルホルダー11を位置決めする機能を有するものである。これにより、位置決め部材を新規に追加することなく、従来技術の弁座プレート16とノズルホルダー11のみを位置決めするための位置決め部材92(図3参照)の軸方向長さを長くする程度で構成することができる。具体的には、第4固定部材315、弁座プレート16、およびノズルホルダー11に、それぞれ貫通孔315p、16p、11pを設けられている。従来に比べて軸方向長さを延長した第2位置決め部材392を、貫通孔315p、16p、11p内に挿入することにより、第4固定部材315、弁座プレート16、およびノズルホルダー11を位置決めする。
なお、ここで、本実施形態の効果と比較説明するための比較例を、図14に従って説明する。図14は、比較例の固定部材を示す図であって、図14(a)は締付け前の状態、図14(b)は締付け後の組付状態を示す模式的断面図である。比較例の固定部材917は、図14(a)の締結前の状態において、貫通孔917aは、図14(a)の下方に向かって拡径するテーパ状の内周に形成されている。締結により固定部材917が変形し、貫通孔917aの内周が歪むと、ストレート孔に変形するように設定されている。即ち、比較例では、締結による固定部材917の変形量を想定した案内隙間δ91、δ92に管理されており、案内隙間は、可動コア42の平板部42a側が、隙間δ91に形成され、弁座プレート16側が、隙間δ92に形成されており(δ91<δ92)、締結後は、隙間δ93でほぼ一定となる。このような比較例による案内隙間の管理方法では、固定部材917の貫通孔917aの内周の形状精度が悪化し易い。そのため、可動コア42の弁座16dへの着座方向および離座方向の両動作時において、形状精度が悪化した貫通孔917a内周に沿って小径軸部42bが移動する際に、摺動抵抗が作用し、可動コア42および弁部材41の動作が不安定となるおそれがある。
また、上記比較例で使用する固定部材917は、貫通孔917をテーパ孔に加工するため、ストレート孔に加工する場合に比べて加工工数が増加するという問題がある。
以上説明した本実施形態では、
可動コア42の小径軸部42bを案内すると共に、弁座プレート16を挟み込んでノズホルダー(ハウジング)11に締結される固定部材を、
弁座プレート16を挟み込んで外周部がノズホルダー11に締結する固定部材本体317と、固定部材本体317と可動コア42の小径軸部42bとの間に配置され、小径軸部42bを移動可能に支持する第4固定部材315とで構成している。そして、固定部材本体317の貫通孔317aの内周側に、固定部材本体317とは別部材からなる、小径軸部42bを移動可能に支持する第4固定部材315を設けている。
このように構成することにより、弁座プレートを挟んで固定部材315、317をノズルホルダー11へ締結するものにおいて、固定部材のうちの固定部材本体317が締結により曲げ等の変形が生じた場合であっても、第4固定部材315を、固定部材本体317の貫通孔317aの内周側に配置されているので、可動コア42の小径軸部42bを移動可能に案内する第3固定部材351の形状を、変形させることなく、維持することが可能である。
したがって、第4固定部材315に支持される上記小径軸部42bおよび弁部材41の着座方向および離座方向への動作の円滑化が図れる。
また、本実施例による第3固定部材315において、可動コア42の小径軸部42bを支持する第2筒部315aの内周315aaは、ストレート孔に加工されている。しかも、固定部材本体317の貫通孔317aの内周も、比較例のようにテーパ孔にする必要はなく、ストレート孔でよい。
さらにまた、本実施形態では、第3固定部材351の内周315aaの形状精度が、締結前後で、低下することなく、維持されるので、比較例の如く、締結により固定部材の変形量を想定して、支持隙間δ4を隙間管理する必要はない。
(第6の実施形態)
第6の実施形態を図9に示す。第6の実施形態は、上記可動コア42の小径軸部42bを案内する固定部材を、固定部材本体417と、第4固定部材415とで構成される組付体とする他の一例を示すものである。図9は、本実施形態に係わる固定部材を示す図であって、図9(a)は締付け前の状態、図9(b)は締付け後の組付状態を示す模式的断面図である。
図9(a)に示すように、固定部材本体417の下端側には、図中の上方に凹状の段差部417gが形成されており、この段差部417gに、第4固定部材415の延出部415bが収容されている。
延出部415bの外周面415hは、段差部417gの側面417hに案内されている。例えば、固定部材本体417、第4固定部材415、弁座プレート16とをねじ締結により組付体とする場合において、固定部材本体417と第4固定部材415とを、外周面415と側面417hによって位置決めすることができる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態を図10に示す。第7の実施形態は、ねじ締結により変形を生じさせる作用力を吸収する凹部517mを有する固定部材517の一例を示すものである。図10は、本実施形態に係わる電磁弁装置の要部を示す部分断面図である。図11は、図10中の固定部材を示す部分平面図である。
図10に示すように、固定部材517は、軸方向端面(図中の軸方向上端面)に凹部517が設けられている。この凹部517は、図11に示すように、軸方向端面に沿って円環状に形成されている。
これによると、凹部517mが形成された固定部材517の部分(以下、凹部部分)は、凹部517mが形成されていない他の部分に比べて変形し易いので、弁座プレート16をノズルホルダー11との間に挟み込んで固定部材517をねじ締結する場合において、固定部材517の凹部部分が変形することによって締結による作用力が吸収される。
これにより、凹部517mを挟んでハウジングに締結される固定部材517の外周部側とは反対側、即ち固定部材517の凹部部分の内側は、変形が防止または抑制される。
しかも、凹部517は軸方向端面に沿って円環状に形成されているので、固定部材517の貫通孔17aの内周自体がねじ締結による変形により歪むのを抑制することができる。
したがって、固定部材517の貫通孔17aに案内される可動コア42の小径軸部42bおよび弁部材41の着座方向および離座方向への動作の円滑化が図れる。
また、本実施形態では、固定部材517の貫通孔17aをストレート孔に形成することができる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態を図12に示す。第8の実施形態は、ねじ締結により変形を生じさせる作用力を吸収する凹部617mを有する固定部材617の他の一例を示すものである。図12は、本実施形態に係わる固定部材を示す部分平面図である。
図12に示すように、固定部材617は、軸方向上端面に有底孔状の凹部517を有しており、凹部517は、軸方向上端面に沿って周方向に複数箇所(本実施例では、6箇所)設けられている。これにより、固定部材517の貫通孔17aの内周自体がねじ締結による変形により歪むのを抑制することが可能である。
(第9の実施形態)
第9の実施形態を図13に示す。第9の実施形態は、可動コア42の小径軸部42bを移動可能に支持する部位を、固定部材ではなく、固定コア63側の収容孔64aとした一例を示すものである。図13は、本実施形態に係わる電磁弁装置の要部を示す部分断面図である。
図13に示すように、固定部材17、18は、第2固定部材17と、第1固定部材18を備えている。また、可動コア42は挿通部643を有している。可動コア42の固定コア側の軸方向端部には、段差部42dが形成されており、挿通部643が段差部42dに嵌合固定されている。
なお、挿通部643を有する可動コア42は、別部材の挿通部643が可動コア42に嵌合固定されるものに限らず、同一部材で一体成形されるものや、非磁性材の挿入部643と、磁性材の磁性材本体(以下、磁性材部)とからなる複合材料で形成されているものであってもよい。
さらに、挿通部643は、可動コア42から固定コア側に向かって軸方向に延出するものである。また、固定コア63側には、上記段差部42dに対向して、ストッパ64が配置されており、ストッパ64内には、可動コア42を弁座16dへ付勢するスプリング59が配置されるとともに、上記挿通部643が摺動可能に収容されている。
具体的には、ストッパ64内には、スプリング59および挿通部643を収容する収容孔64a、64bが形成されており、その収容孔の内周は、挿通部643を移動可能に支持する収容孔64aの内周と、この収容孔64aの内周より大きく形成され、スプリング59を収容する収容孔64aの内周とを備えている。
ノズルホルダー11には、弁室17c、低圧通路17d、貫通孔17bと連通する低圧燃料通路11cが形成されている。低圧燃料通路11cを流れる燃料は、外部の燃料タンクへ排出される。燃料噴射弁2から燃料タンクへ燃料を排出する経路は、これに限らず、第1の実施形態で説明した電磁弁装置7内の燃料通路37から低圧系の燃料タンクへ燃料を排出する経路であってもよい。この場合には、挿通部643の外周面に、二面幅面等の段差面を形成し、段差面と収容孔64aの内周との間に、燃料リーク通路を形成する。
以上説明した本実施形態では、可動コアに設けられ、固定コア側に向かって軸方向に延出する挿通部643と、固定コア63側に設けられ、挿通部643を収容する収容孔64aとを備えており、挿通部643の外周と収容孔64aの内周との間で区画された隙間(以下、摺動隙間)が形成されている。
しかも、固定コア42を固定コア63側の収容孔64で移動可能に支持するため、上記摺動隙間は、第2固定部材17の貫通孔17aの案内隙間に比べて小さく設定されている。
このように構成することにより、可動コア42は、従来の第2固定部材17等の固定部材側ではなく、固定コア63側の収容孔64a内で移動可能に支持されるので、第2固定部材17側の案内隙間を、従来技術に比べて大きく設定することが可能である。これにより、上記案内隙間を比較的大きく設定しておくことができるので、第2固定部材17が締結により曲げ等の変形が生じた場合であっても、可動コア42の小径軸部42bが円滑に移動可能な案内隙間が確保される。したがって、第2固定部材17に案内される可動コア42および弁部材41の着座方向および離座方向への動作の円滑化が図れる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。
(1)例えば以上説明した第9の実施形態では、挿通部643を有する可動コア42は、別部材の挿通部643が可動コア42に嵌合固定されるものとして説明した。これに限らず、同一部材で一体成形されるものや、非磁性材の挿入部643と、磁性材の磁性材本体(以下、磁性材部)とからなる複合材料で形成されているものであってもよい。
(2)上記挿通部643の材料は、非磁性材であることが好ましい。
上記挿通部643は、固定コア63側の収容孔64内に収容されているので、一般に、コイル61が通電され、コイル61の電磁力により固定コア63に吸引力が発生すると、挿通部643には、固定コア63の収容孔64に向かって径方向に吸引される径方向吸引力が作用することがある。この径方向吸引力は、可動コア42の平板部42を軸方向に吸引する軸方向吸引力の如く、可動コア42を固定コア63側へ軸方向移動させることはできない。
これに対して挿通部643を非磁性材とする構成では、コイル61の電磁力により発生する固定コア63の吸引力は、不要な径方向吸引力に使用されることはない。