JP4838991B2 - 非水電解液二次電池負極材用炭素材およびこれを用いた二次電池用負極材ならびに非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
これらグラファイト材料に関しては、形状により電極密度を向上させるための検討や、充放電効率を高める様々な検討(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)がなされているが、大きな効果は見いだせていないのが現状である。
このような炭素材を備えた負極材は、高い充放電特性を有するものである。
このような負極材を備えた非水電解液二次電池は、充放電特性に優れたものである。
本発明の非水電解液二次電池負極材用炭素材(以下、単に「炭素材」ということがある)は、樹脂組成物を炭化処理してなり、窒素ガス吸着法を用いてマイクロポア法により測定される上記炭素材表面に形成された0.25〜0.45nmの細孔径を有する細孔容積が、0.25nm以上の細孔径を有する全細孔容積に対して30容積%以上であることを特徴とする。
そして、本発明の非水電解液二次電池は、上記本発明の負極材を用いることを特徴とする。
最初に、本発明の炭素材に用いられる樹脂組成物について説明する。
上記樹脂組成物としては特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは、その他の高分子材料から選ばれるもの(以下、これらを単に「主成分樹脂類」ということがある)を含有することができる。上記主成分樹脂類は、単独あるいは二種類以上を併用することができる。
また、後述するように、上記主成分樹脂類とともに、硬化剤、添加剤などを併せて含有することができる。
樹脂組成物中における主成分樹脂類の含有量としては特に限定されないが、50重量%以上であることが好ましい。さらに好ましくは80重量%以上である。
ここで用いられる硬化剤としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合はヘキサメチレンテトラミン、パラホルムなどを用いることができる。また、エポキシ樹脂の場合は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなどのポリアミン化合物、酸無水物、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、ノボラック型フェノール樹脂などを用いることができる。
なお、通常は所定当量の硬化剤を併用する熱硬化性樹脂であっても、本発明で用いられる樹脂組成物においては、所定当量よりも少ない量で用いたり、あるいは、硬化剤を併用しないで用いたりすることができる。
ここで用いられる添加剤としては特に限定されないが、例えば、200〜800℃にて炭化処理した炭素材前駆体、黒鉛及び黒鉛変性剤、有機酸、無機酸、含窒素化合物、含酸素化合物、芳香族化合物、及び、非鉄金属元素などを挙げることができる。
上記添加剤は、用いる主成分樹脂類の種類や性状などにより、単独あるいは二種類以上を併用することができる。
このようにして得られた樹脂組成物は、複数種類の成分を物理的に混合しただけのものであってもよいし、樹脂組成物の調製時、混合(攪拌、混練など)に際して付与される機械的エネルギーおよびこれが変換された熱エネルギーにより、その一部を化学的に反応させたものであってもよい。具体的には、機械的エネルギーによるメカノケミカル的反応、熱エネルギーによる化学反応をさせてもよい。
本発明での炭素材を得る場合の炭化処理方法は特に限定されないが、例えば800〜1500℃で0.1〜50時間、好ましくは1〜10時間行うことができる。
炭化処理時の雰囲気としては窒素、ヘリウムガスなどの不活性雰囲気下、若しくは不活性ガス中に微量の酸素や水素等の酸化性気体が存在する還元雰囲気下などで行うことができる。このような炭化処理時の温度、時間等により、炭素材の特性を最適なものに調整することができる。そして、炭化処理を実質的に不活性な雰囲気下で行うことにより、樹脂組成物の熱分解(酸化分解)を抑制し、所望の炭素材を高収率で得ることができるようになる。
ここで熱処理の条件としては特に限定されないが、例えば200〜600℃で1〜10時間行うことができる。このように、炭化処理前に熱処理を行うことで、組成物を不融化させ、炭化処理工程前に組成物の粉砕処理を行った場合でも、粉砕後の組成物が炭化処理時に再融着するのを防ぎ、所望とする炭素材を効率的に得ることができるようになる。
硬化処理の条件としては特に限定されないが、例えば100〜200℃で1〜10時間行うことができる。炭化処理または熱処理前に硬化処理を行うことにより、熱処理および炭化処理を実質的に固相で行うことができる。これにより、組成物の構造をある程度維持した状態で炭化処理または熱処理を行うことができ、炭素材の構造や特性を制御することができるようになる。
窒素ガス吸着法を用いたマイクロポア法は、炭素材に形成された細孔に窒素ガスを吸着させるものであり、炭素材表面、及び、炭素材表面と連通した内部に形成された細孔について、その細孔径と細孔容積との関係を把握することができるものである。
これにより、リチウムイオンの吸蔵/脱離に対して可逆的であり、かつ、この吸蔵/脱離が選択的である細孔の比率を充分に確保することができるので、高い充放電効率を付与することができる。
本発明のこのような目的のためには、上記比率は、50容積%以上であることがさらに好ましい。
細孔径の分布が広い場合には、Liイオンをクラスター構造として吸蔵できる細孔は増えるが、このような細孔は不可逆的な細孔であることが多く、充放電効率の低下をもたらすとともに、ヒステリシスが増加する傾向がある。
本発明の炭素材においては、上記0.25〜0.45nmの細孔径を有する細孔容積が上記範囲内にあることにより、リチウムイオンを吸蔵/脱離することができる可逆細孔が少なすぎず、一方で可逆細孔が増加するのにあわせて不可逆細孔も増加するところ、その不可逆細孔も多くなりすぎず、この両者のバランスが良好なところで落ち着くため、充放電容量を確保し、充放電効率を向上させることができる。
測定試料を島津製作所製・細孔分布測定装置装置「ASAP2010」を用いて、623Kで真空加熱前処理することで吸着ガスを脱着した。処理後、プローブガスとしてN2を用い、絶対圧15mmHg、相対圧0.005〜0.86の範囲で77.3Kでの吸着等温線を測定し、得られた吸着媒質の比表面積・吸着量から吸着層の厚さtを介し、HalseyおよびHalsey and Juraの厚み式をもとに平均細孔水理半径を算出し、細孔容積を次式に基づいて計算した。
Va=VlI/D
t:吸着層の統計的厚さ
M:吸着質の分子量
Va:吸着媒質単位重量当りの吸着量
Vsp:吸着質ガスの比容積
S:吸着媒の比表面積
VlI:Ithポイント(相対圧のI番目の測定点)の相対圧において、液体吸着質ガスで細孔を満たした場合の体積
D:液体吸着質ガスと、吸着質ガスとの密度変換率(定数)
なお、本測定では、吸着媒質が炭素材になり、この炭素材に吸着する層は窒素(N2)からなり、このN2は吸着媒質である炭素材に対して1層、2層と多層吸着する場合があるので、tとしては統計的な厚さを規定するようになっている。また、吸着質の分子量Mは、N2になるので、N2の分子量が用いられる。また、吸着媒質単位重量当りの吸着量Vaとしては、炭素材1に対しての吸着量が用いられる。
tI:Ithポイントの厚み
HP1:Halseyパラメータ#1
HP2:Halseyパラメータ#2
HP3:Halseyパラメータ#3
PrelI:Ithポイントの相対圧力(mmHg)
なお、HP1〜HP3のいずれも無次元パラメータであり、物質に固有の定数である。
Ithポイント目に遮断した細孔表面積の増分ΔS:ΔS=SI−1−SI
Ithポイント目に遮断した積算細孔表面積(m2/g):S=S1+S2+S3+・・・・・Sn
Ithポイント目に遮断した細孔容積の増分ΔV:
ΔV=(S×104cm2/m2)×(RI×10−8cm/Å)
Ithポイント目の細孔容積(cm3/g):ΔV/ΔRI=ΔV/tI−tI−1
なお、上記Ithポイント目というのは、各相対圧による個々の測定ポイントのことをいう。
平均面間隔(d)が上記下限値より小さいと、リチウムイオンの吸蔵に伴う層間の収縮・膨張が起こり易くなるため、充放電サイクル性の低下が起こることがある。また、上記上限値より大きいと、リチウムイオンの吸蔵・脱離が円滑に行われにくくなるため、充放電効率が低下することがある。
X線回折測定から求められるスペクトルより、平均面間隔を以下に示すBragg式より算出した。
本発明の炭素材のX線回折測定から求められるスペクトルより、平均面間隔d(nm)を以下のBragg式より算出した。
λ=2dhklsinθ Bragg式 (dhkl=d002)
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
θ:スペクトルの反射角度
炭素含有率が上記下限値より低い場合、炭素原子以外の極性の高い原子の含有量が増加する為に、リチウムイオンとの間に化学的もしくは電気的な相互作用を有する可能性が高くなり、その結果、充放電効率が低くなることがある。
このような理由により、本発明の炭素材は、リチウムイオン二次電池用負極材として優れた特性を示すものと考えられる。
二次電池10は、負極材12および負極集電体14により構成される負極13と、正極材20および正極集電体22により構成される正極21と、ならびに電解液16と、セパレータ18とを含むものである。
上記炭素材100重量部に対して、有機高分子結着剤(ポリエチレン、ポリプロピレンなどを含むフッ素系高分子、ブチルゴム、ブタジエンゴムなどのゴム状高分子など)1〜30重量部、および適量の粘度調整用溶剤(N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)を添加して混練して、ペースト状にした混合物を圧縮成形、ロール成形などによりシート状、ペレット状などに成形して、負極材12を得ることができる。
そして、負極集電体14と積層することにより、負極13を製造することができる。
この非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル類などの混合物などを用いることができる。
電解質としては、LiClO4、LiPF6などのリチウム金属塩、テトラアルキルアンモニウム塩などを用いることができる。また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルなどに混合し、固体電解質として用いることもできる。
正極集電体22としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。
そして、本実施形態における正極21は、既知の正極の製造方法により製造することができる。
(実験例1)
攪拌装置及び冷却管を備えた3つ口フラスコに、β−ナフトール100部をメチルエチルケトン200部に溶解させた後、蓚酸2部を添加し、37%ホルムアルデヒド水溶液40部を加え、100℃で3時間反応後、脱水し、β−ナフトール樹脂を得た。得られたβ−ナフトール樹脂100部に対して、ヘキサメチレンテトラミン10部の割合で添加し、これを粉砕混合して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、以下の工程で処理を行い、炭素材を得た。
(a)200℃にて5時間熱処理
(b)窒素雰囲気下で350℃にて3時間熱処理
(c)一旦冷却後にこれを微粉砕
(d)1250℃まで昇温した後、1250℃で10時間炭化処理
実験例1において、樹脂組成物の処理に際して、
(b)窒素雰囲気下で350℃にて10時間熱処理
とした以外は、実験例1と同様にして炭素材を得た。
実験例1において、樹脂組成物の処理に際して、
(b)窒素雰囲気下で400℃にて10時間熱処理
とした以外は、実験例1と同様にして炭素材を得た。
攪拌装置及び冷却管を備えた3つ口フラスコに、シクロヘキサノン100部に対して、37%ホルムアルデヒド水溶液40部、25%硫酸水溶液2部を添加し、100℃で3時間反応後、脱水し、ケトン樹脂を得た。得られたケトン樹脂に対して、メラミン10部を添加して混合し、そのまま樹脂組成物として用いた。
得られた樹脂組成物を、以下の工程で処理を行い、炭素材を得た。
(i)300℃まで昇温
(j)300℃から400℃までを10時間かけて昇温
(k)400℃で3時間熱処理
(l)一旦冷却後にこれを微粉砕
(m)1250℃まで昇温した後、1250℃で10時間炭化処理
実験例1において、樹脂組成物の処理に際して、
(b)窒素雰囲気下で400℃にて10時間熱処理
(d)1100℃まで昇温した後、1100℃で30時間炭化処理
とした以外は、実験例1と同様にして炭素材を得た。
市販のレゾール型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・「PR−50087」)100部を樹脂組成物として用い、200℃で5時間熱硬化処理した後、さらに1250℃まで昇温して、1250℃で10時間炭化処理を行い、炭素材を得た。
実験例9において、市販のノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・「PR−50731」)100部に対して、ヘキサメチレンテトラミン10部を粉砕混合したものを樹脂組成物として用いた以外は、実験例9と同様にして炭素材を得た。
(1)炭素含有量
各実験例で得られた炭素材を、110℃で3時間乾燥処理後、パーキンエルマー社製元素分析測定装置を用い、炭素、水素、窒素の組成比を測定した。
各実験例で得られた炭素材を用い、窒素ガス吸着法を用いてマイクロポア法で測定した。測定装置、測定方法は上記の通りである。
(1)二次電池評価用二極式コインセルの製造
各実験例で得られた炭素材100部に対して、結合剤としてポリフッ化ビニリデン10部、希釈溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを適量加え混合し、スラリー状の負極混合物を調製した。調製した負極スラリー状混合物を18μmの銅箔の両面に塗布し、その後、110℃で1時間真空乾燥した。真空乾燥後、ロールプレスによって電極を加圧成形した。これを直径16.156mmの円形として切り出し負極を作製した。
正極はリチウム金属を用いて二極式コインセルにて評価を行った。電解液として体積比が1:1のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合液に過塩素酸リチウムを1モル/リットル溶解させたものを用いた。
以上の方法で得られた炭素材、及び二次電池評価用二極式コインセルについて特性評価を行った。
充電条件は電流25mA/gの定電流で1mVになるまで充電した後、1mV保持で1.25mA/gまで電流が減衰したところを充電終止とした。また、放電条件のカットオフ電位は 1.5Vとした。
下記式により算出した。
充放電効率(%)=[放電容量/充電容量]×100
特に、実験例1〜6は、上記細孔容積の容積比率、及び、絶対容量が最も好適であったので、これらの特性に優れたものとなった。
一方、実験例9、10は、上記細孔容積の比率が小さいものであり、実験例1〜8と比較して、充放電効率において劣るものとなった。
12 負極活物質
13 負極
14 負極集電体
16 電解液
18 セパレータ
20 正極活物質
21 正極
22 正極集電体
Claims (5)
- 樹脂組成物を炭化処理してなる非水電解液二次電池負極材用の炭素材であって、窒素ガス吸着法を用いてマイクロポア法により測定される前記炭素材表面に形成された0.25〜0.45nmの細孔径を有する細孔容積が、0.31〜1.6cm 3 /gであり、かつ、0.25nm以上の細孔径を有する全細孔容積に対して30容積%以上69容量%以下であることを特徴とする、非水電解液二次電池負極材用炭素材。
- 請求項1に記載の非水電解液二次電池負極材用炭素材において、
前記炭素材は、X線回折スペクトル法からBragg式を用いて算出される平均面間隔(d)が、0.37〜0.39nmである非水電解液二次電池負極材用炭素材。 - 請求項1または2に記載の非水電解液二次電池負極材用炭素材において、
前記炭素材は、炭素含有率が95重量%以上である非水電解液二次電池負極材用炭素材。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液二次電池負極材用炭素材を含有することを特徴とする非水電解液二次電池用負極材。
- 請求項4に記載の非水電解液二次電池負極材を用いることを特徴とする非水電解液二次電池。
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