JP4838951B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高輝度での発光が可能な有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、発光効率を向上させることを目的とした多層積層構造の有機エレクトロルミネッセンス素子として、陽極層及び陰極層の両電極層間に形成され、電子輸送層と発光層とを有するものが知られている。このものにおいて、電子輸送層を構成する電子輸送性物質として、
【0003】
【化3】
Figure 0004838951
【0004】
[化3]に示す3−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−1,2,4−トリアゾール(以下、TAZともいう。)など電子輸送性低分子を用いることが多い。TAZは、イオン化ポテンシャルが5.9eVと比較的高いため、正孔ブロック効果をも有することが特徴である。
【0005】
ところで、上記従来の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光方法として、励起三重項状態からの発光、即ち、燐光を用いると、発光の量子効率を向上させることができる。励起一重項状態による発光、即ち、蛍光のみを利用して発光させる場合の内部量子効率の理論的限界が25%であるのに対し、燐光による発光は、三重項状態の励起エネルギーが発光に寄与するため内部量子効率の理論的限界を100%と考えてよい。このため、駆動電圧に対する発光輝度で定義される発光効率の向上が期待できる。
【0006】
ところが、燐光を利用して発光する場合、上記のように電子輸送性物質が低分子であると移動度が低く、有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させるには高い印加電圧が必要となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、駆動電圧を軽減することを目的として、電子輸送層を構成する電子輸送性物質に、
【0008】
【化4】
Figure 0004838951
【0009】
(一般式[化4]中、Rは水素、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、複素環基のいずれかを示す。)
[化4]で表される繰り返し単位を有するポリフルオレン化合物など、電気抵抗値の低い導電性高分子を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を構成することが考えられる。
【0010】
ところが、この場合、電子輸送層に隣接する発光層における導電性高分子の使用に制約が生じる。これは、隣接する薄膜層、即ち、電子輸送層と発光層とに導電性高分子を用いると、この高分子の導電特性ゆえに両薄膜層間の障壁が低下して、電子輸送層において正孔ブロック効果が減少し、結果的に高輝度での発光が得られなくなるからである。このため、発光層は、電子輸送層より高い負荷電圧を要するにもかかわらず、導電性高分子を使用することが難しく、導電性高分子の比較的小さい電気抵抗値を利用して駆動電圧の軽減を図ることができなくなる。即ち、電子輸送層において駆動電圧を軽減できても、より大きな駆動電圧の軽減効果が期待される発光層において駆動電圧を軽減できず、結果として、有機エレクトロルミネッセンス素子全体での駆動電圧の軽減が効果的に行われない。そして、高輝度の発光も駆動電圧の軽減も達成できないため、発光効率の悪化という不具合が生じる。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、低電圧での駆動により高輝度で発光し得る、即ち、発光効率の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、陽極層及び陰極層の両電極層間に形成され、電子輸送層と発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子輸送層を、前記[化1]または[化2]で表される繰り返し単位を有する重合体で構成する。このような重合体は、ラジカルアニオン化しやすく良好な電子移動度を有するので抵抗値を抑制することができ、また、比較的高いイオン化ポテンシャルを有するため高い正孔ブロック効果を維持できる。そして、隣接する発光層に導電性高分子を用いることも可能である。このため、このような重合体を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子では、高効率の発光が可能である。
【0013】
この場合、前記[化1]で表される繰り返し単位中のX、または、前記[化2]で表される繰り返し単位中のYを、アリール基から水素1原子を除いて成る二価の置換基とすることが可能である。
【0014】
さらに、本発明では、前記[化1]または[化2]で表される繰り返しを有する重合体を、前記発光層中のホスト剤よりイオン化ポテンシャルが大きくなるように構成することを特徴としており、これにより、電子輸送層への正孔の注入を抑制できるので、電子輸送層に確実に正孔ブロック効果を備えることができ、電子輸送層が電子輸送正孔ブロック層として機能する。このためさらに高輝度の発光が得られる。
【0015】
さらに、本発明では、前記発光層は燐光を放射するドープ剤を有することを特徴としており、これにより、燐光を利用して発光する有機エレクトロルミネッセンス素子の形成が可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、発光効率の向上を目的として多層に積層された素子構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構造を示す。有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は、図外の基板上に形成された陽極層10に、正孔輸送層20、電子ブロック層30、発光層40、正孔ブロック層50及び電子輸送層60の各薄膜層が、陽極層10と陰極層70との両電極層間で順次積層されて成る多層積層構造であり、発光層40は、発光層ドープ剤41と発光層ホスト剤42とを有して構成されている。
【0017】
図1で示される素子構造において、陽極層10は、例えばガラス基板のような透明絶縁性支持体に形成された透明な導電性物質が用いられ、その材料としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性酸化物、あるいは、金、銀、クロムなどの金属、よう化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性ポリマーなどを用いることができる。
【0018】
また、陰極層70が透明な材料で形成されている場合には、陽極層10は不透明な材料で形成されても良い。
【0019】
また、図1で示される素子構造において、陰極層70には、ニオブ、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、硼素、アルミニウム、銅、銀、金などの単体または合金が使用できる。さらに、これらを積層して使用することもできる。また、テトラヒドロアルミン酸塩により湿式で形成することもできる。この場合、陰極層70に用いられるテトラヒドロアルミン酸塩としては、特に、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウムを挙げることができる。この中で、水素化アルミニウムリチウムが、特に電子輸送層への電子注入性に優れている。
【0020】
また、正孔輸送層20は、陽極層10から注入される正孔を輸送するための層であり、正孔輸送性有機物を含む有機層である。正孔輸送層性有機物の例として、
【0021】
【化5】
Figure 0004838951
【0022】
[化5]で示されるジノルマルブチルポリフルオレン、
【0023】
【化6】
Figure 0004838951
【0024】
[化6]に示すポリ(N−ビニルカルバゾール)(以下PVKともいう。)、
【0025】
【化7】
Figure 0004838951
【0026】
[化7]で示されるN-フェニルポリカルバゾール
【0027】
【化8】
Figure 0004838951
【0028】
[化8]に示すポリ(パラ−フェニレンビニレン)、
などの高分子からなることが好ましい。あるいは、
【0029】
【化9】
Figure 0004838951
【0030】
[化9]に示すN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(以下TPDともいう。)
【0031】
【化10】
Figure 0004838951
【0032】
[化10]に示すN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)―1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(以下NPDとも言う。)
【0033】
【化11】
Figure 0004838951
【0034】
[化11]に示すカルバゾールビフェニル(以下、CBPとも言う。)、
【0035】
【化12】
Figure 0004838951
【0036】
[化12]に示す4,4’−ビス(10−フェノチアジニル)ビフェニルなどの低分子を用いることが望ましい。
【0037】
また、電子ブロック層30は、陰極層70から発光層40へ注入された電子がそのまま陽極層10へ通過してしまうことを防ぐため電子をブロックするための層であり、電子ブロック性物質で構成される。電子ブロック性物質としては、例えば、[化5]で示されるジノルマルブチルポリフルオレン、[化6]で示されるPVK、[化8]で示されるポリ(パラ-フェニレンビニレン)、[化9]で示されるTPD、[化10]で示されるNPD、[化11]で示されるCBP、[化12]で示される4,4’−ビス(10−フェノチアジニル)ビフェニルや、
【0038】
【化13】
Figure 0004838951
【0039】
[化13]に示す2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアゾール、
【0040】
【化14】
Figure 0004838951
【0041】
[化14]に示すフローレン、
などを挙げることができる。
【0042】
また、発光層40はドープ剤41とホスト剤42とを有し、これらドープ剤41とホスト剤42とを均一に分散させるため、バインダ高分子を添加することも可能である。ホスト剤42は、陽極層10及び陰極層70からそれぞれ注入された正孔と電子とが発光層40において再結合する際に賦活されて励起子として作用する物質であり、[化5]で示されるジノルマルブチルポリフルオレン、[化6]に示すPVK、[化7]で示されるN-フェニルポリカルバゾール、
【0043】
【化15】
Figure 0004838951
【0044】
[化15]に示すオキサジアゾール/ジノルマルブチルフルオレンコポリマー、
【0045】
【化16】
Figure 0004838951
【0046】
【化17】
Figure 0004838951
【0047】
[化16]、[化17]に示すオキサジアゾール系高分子化合物、
【0048】
【化18】
Figure 0004838951
【0049】
【化19】
Figure 0004838951
【0050】
[化18]、[化19]に示すトリアゾール系高分子化合物、などの高分子や、[化11]に示すCBP、
【0051】
【化20】
Figure 0004838951
【0052】
[化20]に示す1,3,5−トリ(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)フェニル(以下OXD−1ともいう。)、
【0053】
【化21】
Figure 0004838951
【0054】
[化21]に示される1,3―ジ(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)フェニル(以下OXD−7ともいう。)、
【0055】
【化22】
Figure 0004838951
【0056】
[化22] に示す2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、(以下PBDともいう。)、
【0057】
【化23】
Figure 0004838951
【0058】
[化23]で示される3,4,5―トリ(1−ナフチル)―1,2,4―トリアゾール
【0059】
【化24】
Figure 0004838951
【0060】
[化24]で示されるN-フェニルカルバゾール、
【0061】
【化25】
Figure 0004838951
【0062】
[化25]で示されるN-メチルカルバゾール、
【0063】
【化26】
Figure 0004838951
【0064】
[化26]に示すバソキュプロイン(以下BCPともいう。)、
【0065】
【化27】
Figure 0004838951
【0066】
[化27]に示す4,4’−ビス(1,1−ジフェニルエテニル)ビフェニル(以下にDPVBiともいう。)、
などが挙げられる。
【0067】
一方、発光層40のドープ剤41は、励起子たるホスト剤42の励起エネルギーにより燐光を放射する物質であり、
【0068】
【化28】
Figure 0004838951
【0069】
[化28]に示すトリ(2フェニルピリジン)イリジウム錯体(以下Ir(ppy)3とも言う。)、
【0070】
【化29】
Figure 0004838951
【0071】
【化30】
Figure 0004838951
【0072】
【化31】
Figure 0004838951
【0073】
【化32】
Figure 0004838951
【0074】
【化33】
Figure 0004838951
【0075】
【化34】
Figure 0004838951
【0076】
(化学式[化34]中、acacは、
【0077】
【化35】
Figure 0004838951
【0078】
[化35]で示される官能基を示す。下記[化36]乃至[化40]に示す化学式において同じ。)
【0079】
【化36】
Figure 0004838951
【0080】
【化37】
Figure 0004838951
【0081】
【化38】
Figure 0004838951
【0082】
【化39】
Figure 0004838951
【0083】
【化40】
Figure 0004838951
【0084】
[化29]乃至[化34]、[化36]乃至[化40]で示されるイリジウム錯体化合物、
【0085】
【化41】
Figure 0004838951
【0086】
[化41]に示す2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−白金(II)ポルフィン(以下PtOEPとも言う。)、
【0087】
【化42】
Figure 0004838951
【0088】
[化42]に示す3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン(以下、クマリン6とも言う。)、
などを挙げることができる。
【0089】
また、発光層40に添加可能なバインダ高分子の例として、ポリスチレン、ポリビニルビフェニル、ポリビニルフェナントレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン、ポリ(エチレン−co−ビニルアセテート)、ポリブタジエンのcisとtrans、ポリ(2−ビニルナフタレン)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(2−ビニルピリジン−co−スチレン)、ポリアセナフチレン、ポリ(アクリロニトリル−co−ブタジエン)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)、ポリ(4−ビニルビフェニル)、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0090】
また、正孔ブロック層50は、陽極層10から発光層40へ注入された正孔がそのまま陰極層70へ通過してしまうことを防ぐため正孔をブロックするための層であり、正孔ブロック性物質で構成される。正孔ブロック性物質としては、例えば、[化20]に示すOXD−1、[化22] に示すPBD、[化26]に示すBCP、[化27]に示すDPVBi、
【0091】
【化43】
Figure 0004838951
【0092】
[化43]に示す2,5−ビス(1−ナフチル)−1.3.4−オキサジアゾール(以下にBNDともいう。)
【0093】
【化44】
Figure 0004838951
【0094】
[化44]に示される4,4’−ビス(1,1−ビス(4−メチルフェニル)エテニル)ビフェニル(以下DTVBiとも言う。)、
【0095】
【化45】
Figure 0004838951
【0096】
[化45]に示される2,5−ビス(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール(以下BBDともいう。)、
また、電子輸送層60は、陰極層70から注入される電子を輸送するための層であり、電子輸送剤を含む。電子輸送剤は、電子輸送性高分子で構成され、さらに電子輸送性低分子を含む構成が可能である。
【0097】
ここで、電子輸送性低分子の例として、[化3]に示すTAZ、[化20]に示されるOXD−1、[化21]に示されるOXD−7、[化22]に示すPBD、[化26]に示すBCP、[化42]に示すDPVBi、[化43]に示すBND、[化44]に示すDTVBi、[化45]に示すBBD、
【0098】
【化46】
Figure 0004838951
【0099】
[化46]に示すトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(以下Alq3ともいう。)が挙げられる。
【0100】
また、電子輸送性高分子の例として、[化15]に示すオキサジアゾール/ジノルマルブチルフルオレン共重合体、
【0101】
【化47】
Figure 0004838951
【0102】
【化48】
Figure 0004838951
【0103】
【化49】
Figure 0004838951
【0104】
【化50】
Figure 0004838951
【0105】
【化51】
Figure 0004838951
【0106】
【化52】
Figure 0004838951
【0107】
[化47]乃至[化52]で示されるオキサジアゾール系高分子化合物、
【0108】
【化53】
Figure 0004838951
【0109】
【化54】
Figure 0004838951
【0110】
【化55】
Figure 0004838951
【0111】
【化56】
Figure 0004838951
【0112】
【化57】
Figure 0004838951
【0113】
【化58】
Figure 0004838951
【0114】
[化53]乃至[化58]で示されるトリアゾール系高分子化合物
などが挙げられる。
【0115】
[化47]乃至[化58]で示すような電子輸送性高分子は、正孔ブロック効果も有するため、このような高分子で構成される電子輸送層は、電子輸送正孔ブロック層としての機能も備える。
【0116】
発光効率のさらなる向上や構造の簡素化のため、図1に示す有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構造に変更を加えたものとして、図2または図3に示す素子構造が可能である。
【0117】
図2で示される有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の第1の実施形態を示す。図1の電子ブロック層30と正孔ブロック層50とが省略されているが、正孔輸送層20に電子ブロック効果を備えさせたり、電子輸送層60に正孔ブロック効果を持たせて電子輸送正孔ブロック層65として形成させたりするなどして発光効率を維持させることができる。
【0118】
図3で示される有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は、図1で示す素子構造において、電子ブロック層30と正孔ブロック層50とを省略し、電子輸送層60に正孔ブロック効果を持たせて電子輸送正孔ブロック層65として形成し、陽極層10と正孔輸送層20との間に正孔注入性物質で構成される正孔注入層21を追加したものである。
【0119】
正孔注入性物質としては、たとえば、
【0120】
【化59】
Figure 0004838951
【0121】
[化59]に示すカッパーフタロシアニンなどの金属フタロシアニンや、
【0122】
【化60】
Figure 0004838951
【0123】
[化60]で示される、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネート(以下PEDT/PSSともいう。)、などが挙げられる。
【0124】
次に、図2を本発明の第1の実施形態として、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を説明する。
【0125】
まず、基板(図示せず)となる透明絶縁性支持体、例えばガラス基板上に陽極層10を蒸着法またはスパッタ法にて形成する。
【0126】
次に、正孔輸送性高分子または正孔輸送性低分子を溶媒に溶解または分散した第1の溶液を作成する。ここで、第1の溶液に、さらにバインダ高分子を溶解または分散することも可能である。そして、第1の溶液を用いた湿式法によって、陽極層10上に正孔輸送層20を形成する。
【0127】
さらに、発光層40のドープ剤41とホスト剤42とを溶媒に溶解または分散した第2の溶液を作成する。ここで、第2の溶液に、さらにバインダ高分子を溶解または分散することも可能である。そして、その第2の溶液を用いた湿式法によって、上記正孔輸送層20上に発光層40を形成する。
【0128】
さらに、正孔ブロック効果を有する電子輸送性高分子または電子輸送性低分子を溶媒に溶解または分散した第3の溶液を作成する。ここで、第3の溶液に、さらにバインダ高分子を溶解または分散することも可能である。その第3の溶液を用いた湿式法によって、発光層40上に電子輸送正孔ブロック層65を形成する。
【0129】
また、第2の溶液に用いた溶媒の溶解度パラメータは、発光層40の成膜温度において、正孔輸送層20に含まれる物質(正孔輸送性高分子または正孔輸送性低分子など)に対して可溶範囲外を示す値を有する。このような溶媒を用いた、湿式法による発光層40の形成において、下層の正孔輸送層20に含まれる有機物を溶解することがない。
【0130】
また、第3の溶液に用いる溶媒の溶解度パラメータは、電子輸送正孔ブロック層65の成膜温度において、発光層40に含まれる物質(ドープ剤41、ホスト剤42及びバインダ高分子など)に対して可溶範囲外を示す値を有する。このような溶媒を用いた、湿式法による電子輸送正孔ブロック層65の形成において、下層の発光層40に含まれる有機物を溶解することがない。
【0131】
この時、上記の第1乃至第3の溶液に用いる溶媒は自然乾燥によって蒸発することにより、正孔輸送層20と発光層40と電子輸送正孔ブロック層65とが形成される。この場合、加熱、紫外線の照射による重合、硬化等の処理を行う必要がなく、従って、製造工程が簡単であり生産効率を向上させることができる。
【0132】
本発明で使用される湿式法には、たとえばキャスティング法、ブレードコート法、浸漬塗工法、スピンコート法、スプレイコート法、ロール塗工法、インクジェット塗工法などの通常の塗工法が含まれる。
【0133】
最後に、電子輸送正孔ブロック層65上に、蒸着法などを用いて陰極層70を形成し、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。
【0134】
なお、溶解度パラメータSPは、モル蒸発熱ΔH、モル体積Vの液体の絶対温度Tにおいて、
SP={(ΔH−RT)/V}1/2
で定義される。ただし、上記式中、SPは溶解度パラメータ(単位:(cal/cm31/2)であり、ΔHはモル蒸発熱(単位:cal/mol)であり、Rは気体定数(単位:cal/(mol・K))であり、Tは絶対温度(単位:K)であり、Vはモル体積(単位:cm3/mol)である。
【0135】
また、図3は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の第2の実施形態であり、上記図2で示される素子構造の製造工程中、正孔輸送層20の形成前に、陽極層10上にPEDTなどの正孔注入性物質を湿式法により成膜して正孔注入層21を形成した後に、該正孔注入層21上に上記図2と同様に、正孔輸送層20、発光層40、電子輸送正孔ブロック層65及び陰極層70を順次形成する製造工程を経て得られる。
【0136】
【実施例】
[実施例1]ゲルパーエイションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算重量平均量(以下、分子量と言う。)1,100,000を有する[化6]で示すPVKとして6mgを1mlの1,2ジクロロエタンで溶解して溶液1を作成した。
【0137】
[化20]で示すOXD−1(イオン化ポテンシャル:6.1eV)として2.5mgと[化28]で示すIr(ppy)3として0.17mgとバインダ高分子たるポリビニルビフェニル(分子量115,000)として2.5mgとをm−キシレン1mlに溶解して溶液2を作成した。
【0138】
[化47]で示される重合体 (イオン化ポテンシャル:6.1eV、分子量:60,000)として5mgをシクロヘキサン1mlに溶解して溶液3を作成した。
【0139】
酸素プラズマ処理を行なったITO基板上(市販ITO、旭硝子社製:20Ω/□以下)に溶液1を回転数1000rpmで1秒間スピンコートする事により50nmの膜厚の正孔輸送層を成膜した。
【0140】
正孔輸送層上に溶液2を回転数1000rpmで1秒間スピンコートする事により20nmの膜厚の発光層を成膜した。
【0141】
さらに、発光層上に溶液3を回転数1000rpmで1秒間スピンコートする事により50nmの膜厚の電子輸送層を成膜した。
【0142】
蒸着速度0.01nm/secでリチウムを0.5nmの膜厚に成膜し、さらにその上にアルミニウムを蒸着速度1nm/secで50nmの膜厚に成膜して、陰極を蒸着により形成した。
【0143】
この時、8V(駆動電圧、以下同じ。)、1mA/cm2(電流密度、以下同じ。)で600cd/m2(発光輝度、以下同じ。)の緑色の発光が得られた。
[比較例1][化47]で示す重合体の替わりに、[化20]で示すOXD−1を真空度10-3Pa、蒸着速度1nm/secで蒸着により成膜した以外は、[実施例1]と同様に図2に示す素子を作成した。この時、9.2V、1mA/cm2で600cd/m2の緑色の発光が得られた。
[比較例2][化47]で示す重合体の替わりに、[化15]で示す重合体(イオン化ポテンシャル:5.8eV)を使用した以外は、[実施例1]と同様に図2に示す素子を作成した。この時、8.8V、1mA/cm2で450cd/m2の緑色の発光が得られた。
[実施例1]と[比較例1]とを比べると、導電性高分子のオキサジアゾール系高分子を使用すると抵抗が下がる事が判る。
[実施例1]と[比較例2]とを比べると、電子輸送層に、ホスト剤よりイオン化ポテンシャルが小さい物質を使用すると1mA/cm2における輝度が低下する事が判る。
[実施例2]〜[実施例12][化47]で示す重合体の替わりに下記[表1]に示す重合体を使用した以外は、[実施例1]と同様に図2に示す素子構造を作成したところ、[表1]に示す発光効率の発光が得られた。
【0144】
【表1】
Figure 0004838951
【0145】
[実施例13]ITO基板と正孔輸送層との間に正孔注入層として、[化59]に示すカッパーフタロシアニンを、真空蒸着により、真空度10-3Pa、蒸着速度0.1nm/secで2nmの膜厚に成膜した以外は、[実施例1]と同様にして図3に示す素子構造を作成した。この時、7.2V、1mA/cm2で570cd/m2の緑色の発光であった。
[実施例14]、[実施例15]ITO基板と正孔輸送層との間に正孔注入層として、[化60]に示すPEDT/PSSを回転数4000rpmで10秒間スピンコートして50nmの膜厚に成膜したこと、正孔輸送層に下記[表2]に示す重合体を使用したこと以外は[実施例1]と同様にして図3に示す素子構造を作成したところ、[表2]に示す発光効率の発光が得られた。
【0146】
【表2】
Figure 0004838951
【0147】
(但し、[実施例15]においては溶液1の溶媒をシクロヘキサンに、溶液2の溶媒を1,2ジクロロエタンに変更している。)
[実施例16]〜[実施例22]発光層ホスト剤として、[化20]で示すOXD−1に替え、下記[表3]で示す化合物を使用した以外は、[実施例1]と同様に図2に示す素子構造を作成したところ、[表3]に示す発光効率の発光が得られた。
【0148】
【表3】
Figure 0004838951
【0149】
[実施例23]〜[実施例30]下記[表4]に化合物として示す重合体(分子量60,000)として5.0mgと[化28]で示すIr(ppy)3として0.17mgとをm−キシレン1mlに溶解して溶液2を作成した以外は[実施例1]と同様に図2に示す素子構造を作成したところ、[表4]に示す発光効率の発光が得られた。
【0150】
【表4】
Figure 0004838951
【0151】
[実施例31]〜[実施例36]陰極をリチウムに替え、下記[表5]に示す化合物を使用した以外は[実施例1]と同様に図2に示す素子構造を作成したところ、[表5]に示す発光効率の発光が得られた。
【0152】
【表5】
Figure 0004838951
【0153】
[実施例37]〜[実施例48]発光層ドープ剤として、[化28]で示すIr(ppy)3に替え、下記[表6]に示す化合物を使用した以外は[実施例1]と同様に図2に示す素子構造を作成したところ、[表6]に示す発光効率の発光が得られた。
【0154】
【表6】
Figure 0004838951
【0155】
[実施例49]分子量60,000の[化5]で示されるジノルマルブチルポリフルオレン(電子親和力:2.15eV)として6mgを1mlの1,2ジクロロエタンで溶解して溶液1を作成した。
【0156】
[化7]で示すN−フェニルポリカルバゾール(電子親和力:2.00eV、分子量:60,000)として5.0mgと[化28]で示すIr(ppy)3として0.17mgとをm―キシレン1mlに溶解して溶液2を作成した。
【0157】
[化47]で示される重合体(分子量50,000)として5.0mgをシクロヘキサン1mlに溶解して溶液3を作成した。
【0158】
酸素プラズマ処理を行なったITO基板上(市販ITO、旭硝子社製:20Ω/□以下)に[化60]で示されるPEDT/PSSを回転数4000rpmで10秒間スピンコートにより50nmの膜厚の正孔注入層を成膜した。
【0159】
次に溶液1を回転数1000rpmで1秒間スピンコートする事により50nmの膜厚の正孔輸送層を成膜した。
【0160】
正孔輸送層上に溶液2を回転数1000rpmで1秒間スピンコートする事により20nmの膜厚の発光層を成膜した。
【0161】
発光層の上に溶液3を回転数1000rpmで1秒間スピンコートする事により50nmの膜厚の電子輸送層を成膜した。
【0162】
蒸着速度0.01nm/secでセシウムを0.5nmの膜厚に成膜し、さらにその上にアルミニウムを蒸着速度1nm/secで50nmの膜厚に成膜して、陰極を蒸着により形成した。
【0163】
この時、3.5V、1mA/cm2で600cd/m2の緑色の発光を得た。
[実施例50][化6]で示すPVK(分子量:1,100,000)として6mgを1mlの1,2ジクロロエタンで溶解して溶液1を作成した。
【0164】
[化42]に示すDPVBi(イオン化ポテンシャル:6.1eV)として2.5mgと[化42]に示すクマリン6として0.13mgとバインダ高分子たるポリビニルビフェニル(分子量:115,000)として2.5mgとをm−キシレン1mlに溶解して溶液2を作成した。
【0165】
[化47]で示される重合体 (イオン化ポテンシャル:6.1eV、分子量60,000)として5mgをシクロヘキサン1mlに溶解して溶液3を作成した。
【0166】
酸素プラズマ処理を行なったITO基板上(市販ITO、旭硝子社製:20Ω/□以下)に溶液1を回転数1000rpmで1秒間スピンコートする事により50nmの膜厚の正孔輸送層を成膜した。
【0167】
正孔輸送層上に溶液2を回転数1000rpmで1秒間スピンコートする事により20nmの膜厚の発光層を成膜した。
【0168】
さらに、発光層上に溶液3を回転数1000rpmで1秒間スピンコートする事により50nmの膜厚の電子輸送層を成膜した。
【0169】
蒸着速度0.01nm/secでリチウムを0.5nmの膜厚に成膜し、さらにその上にアルミニウムを蒸着速度1nm/secで50nmの膜厚に成膜して、陰極を蒸着により形成した。
【0170】
この時、7.8V、1mA/cm2で120cd/m2の緑色の発光を得た。
[比較例3][化20]で示すOXD−1を使用して、真空蒸着(真空度10-3Pa、蒸着速度1nm/sec)により電子輸送層を成膜した以外は、[実施例50]と同様に図2に示す素子構造を作成した。この時、9V、1mA/cm2で120cd/m2の緑色の発光が得られた。
[実施例50]と[比較例3]とを比べると、[化47]で示す重合体を使用した場合、低電圧化することが判る。
【0171】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に用いる電子輸送性高分子は高い電子移動度を有する。このため、電子輸送層から発光層へ電子が効率よく移動できるので電気抵抗値を軽減できる。また、上記電子輸送性高分子は比較的高いイオン化ポテンシャルを有するので正孔ブロック効果をも備える。したがって、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、比較的低電圧の駆動により高輝度の発光が得られるので発光効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造
【図2】本発明の素子構造の第1の実施形態
【図3】本発明の素子構造の第2の実施形態
【符号の説明】
10 陽極層
40 発光層
41 ドープ剤
42 ホスト剤
65 電子輸送正孔ブロック層(電子輸送層)
70 陰極層

Claims (4)

  1. 陽極層及び陰極層の両電極層間に形成され、電子輸送層と発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子輸送層が、
    Figure 0004838951
    (一般式[化1]中、Xは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、複素環基のいずれかから水素1原子を除いて成る二価以上の置換基から独立に選ばれる。)、
    または、
    Figure 0004838951
    (一般式[化2]中のYは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、複素環基のいずれかから水素1原子を除いて成る二価以上の置換基から、前記[化2]中のZは、水素、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、複素環基のいずれかから、それぞれ独立に選ばれる。)
    で表される繰り返し単位を有する重合体で構成され
    前記[化1]または[化2]で表される繰り返しを有する重合体は、前記発光層中のホスト剤よりイオン化ポテンシャルが大きいことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 陽極層及び陰極層の両電極層間に形成され、電子輸送層と発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子輸送層が、
    Figure 0004838951
    (一般式[化1]中、Xは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、複素環基のいずれかから水素1原子を除いて成る二価以上の置換基から独立に選ばれる。)、
    または、
    Figure 0004838951
    (一般式[化2]中のYは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、複素環基のいずれかから水素1原子を除いて成る二価以上の置換基から、前記[化2]中のZは、水素、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、複素環基のいずれかから、それぞれ独立に選ばれる。)
    で表される繰り返し単位を有する重合体で構成され
    前記発光層は燐光を放射するドープ剤を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記[化1]で表される繰り返し単位中のX、または、前記[化2]で表される繰り返し単位中のYは、アリール基から水素1原子を除いて成る二価の置換基から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記発光層は燐光を放射するドープ剤を有することを特徴とする請求項1または3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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