JP2002170672A - 発光素子及びその製造方法 - Google Patents

発光素子及びその製造方法

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JP2002170672A JP2000370151A JP2000370151A JP2002170672A JP 2002170672 A JP2002170672 A JP 2002170672A JP 2000370151 A JP2000370151 A JP 2000370151A JP 2000370151 A JP2000370151 A JP 2000370151A JP 2002170672 A JP2002170672 A JP 2002170672A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 発光輝度、発光効率及び耐久性に優れ、製造
コストが低く、且つ大面積化が可能であるためにフルカ
ラーディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光
源、プリンター等の光源アレイ等に有効に利用できる発
光素子、並びにその製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明の発光素子は、基材上に透明電
極、燐光発光性化合物を含有する発光層を含む一層以上
の有機化合物層及び背面電極を製膜して発光積層体を作
成し、該発光積層体に封止部材を設置し有機化合物層を
外部の空気から遮断して得られ、発光層を製膜する工
程、背面電極を製膜する工程、及び封止部材を設置する
工程が、水分濃度及び酸素濃度がともに100ppm以下であ
る雰囲気下で行われることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発光輝度、発光効
率及び耐久性に優れた発光素子、並びにその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】有機物質を使用した有機発光素子は、固
体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み
光源アレイとしての用途が有望視されており、近年活発
な研究開発が進められている。一般に有機発光素子は発
光層を含む有機化合物層及び該有機化合物層を挟んだ一
対の対向電極から構成される。このような有機発光素子
に電圧を印加すると、有機化合物層に陰極から電子が注
入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発
光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価
電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することに
より発光が得られる。
【0003】従来の有機発光素子は、駆動電圧が高く発
光輝度及び発光効率が低いという問題を有している。近
年、この問題を解決するための技術が種々報告されてお
り、例えば有機化合物の蒸着により形成した有機薄膜を
有する有機発光素子が知られている(アプライド フィ
ジクス レターズ, 51巻, 913頁, 1987年)。この有機
発光素子は電子輸送材料からなる電子輸送層と正孔輸送
材料からなる正孔輸送層の積層二層構造を有し、単層型
素子に比べて大幅に向上した発光特性を示す。正孔輸送
材料としては低分子アミン化合物、電子輸送材料兼発光
材料としては8-キノリノールのアルミニウム錯体(Al
q)を用いており、発光色は緑色である。蒸着有機薄膜
を有する有機発光素子はその後も数多く報告されている
(マクロモレキュラリー シンポジウム, 125巻, 1頁,
1997年に記載の参考文献参照)が、このような有機発
光素子は無機LED素子や蛍光管に比べると非常に発光効
率が低く、このことが実用化に際し大きな問題となって
いる。
【0004】従来の有機発光素子の殆どは有機発光材料
の一重項励起子から得られる蛍光発光を利用したもので
ある。単純な量子化学のメカニズムにおいては、励起子
状態において蛍光発光が得られる一重項励起子と燐光発
光が得られる三重項励起子の比は1対3である。即ち、
蛍光発光を利用している限りは励起子の25%しか有効活
用できず、蛍光発光素子の発光効率は低い。このような
状況下、最近、イリジウムのフェニルピリジン錯体を用
いた燐光発光素子が報告された(アプライドフィジクス
レター, 75巻, 4頁, 1999年、ジャパニーズ ジャー
ナル オブアプライド フィジクス, 38巻, L1502頁, 1
999年等)。これらの燐光発光素子は従来の蛍光発光素
子に比べて2〜3倍の発光効率を示すが、その発光効率
は理論的な発光効率限界よりは低く、実用化のためには
更なる発光効率向上が求められている。また、従来の蛍
光発光素子と比較して、該燐光発光素子は耐久性の点で
劣っており、その改良が強く望まれている。
【0005】一方、有機発光素子の有機化合物層を形成
する際には、蒸着法、スパッタ法、CVD、PVD、溶剤を用
いた塗布法等の様々な方法が使用できるが、これらの方
法の中で、製造工程の簡略化、製造コストの低減、加工
性の改善、バックライトや照明光源等のフレキシブルな
大面積素子への応用等の観点からは塗布法等の湿式製膜
法が有利である。上述した公知の燐光発光素子において
は、蒸着法等の乾式法により低分子化合物からなる有機
化合物層を製膜するため、該低分子化合物の結晶化によ
る素子の劣化が避けられず、また、製造コストが高く、
製造効率が悪いという重大な問題がある。高分子化合物
を湿式製膜法により製膜した有機発光素子は既に幾つか
報告されており、該高分子化合物としては緑色発光を示
すポリパラフェニレンビニレン(ネイチャー, 347巻, 5
39頁, 1990年)、赤橙色発光を示すポリ(3-アルキルチ
オフェン) (ジャパニーズ ジャーナル オブ アプラ
イド フィジクス, 30巻, L1938頁, 1991年)、青色発
光を示すポリアルキルフルオレン(ジャパニーズ ジャ
ーナル オブ アプライド フィジクス、30巻, L1941
頁, 1991年)等が提案されている。また、特開平2-2231
88号は低分子化合物をバインダー樹脂に分散させ、湿式
塗布により製膜する方法を報告している。しかしなが
ら、これら湿式製膜型素子はいずれも一重項励起子を利
用したものであり、発光効率が低いという根本的な問題
は残る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、発光
輝度、発光効率及び耐久性に優れ、製造コストが低く、
且つ大面積化が可能であるためにフルカラーディスプレ
イ、バックライト、照明光源等の面光源、プリンター等
の光源アレイ等に有効に利用できる発光素子、並びにそ
の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者は、三重項励起子を利用する燐光発光
素子は、一重項励起子を利用する蛍光発光素子とは異な
り水及び酸素の影響を受けやすく、それらにより消光現
象が引き起こされる事実を見出し、水分濃度及び酸素濃
度が低い雰囲気下で発光層及び背面電極を製膜し封止部
材により封止することによって、発光特性及び耐久性に
優れた燐光発光素子が得られることを発見し、本発明に
想到した。
【0008】即ち、本発明の発光素子は、基材上に透明
電極、燐光発光性化合物を含有する発光層を含む一層以
上の有機化合物層及び背面電極を製膜して発光積層体を
作成し、該発光積層体に封止部材を設置し有機化合物層
を外部の空気から遮断して得られ、発光層を製膜する工
程、背面電極を製膜する工程、及び封止部材を設置する
工程が、水分濃度及び酸素濃度がともに100ppm以下であ
る雰囲気下で行われることを特徴とする。本発明の発光
素子は発光輝度、発光効率及び耐久性に優れているとと
もに、フルカラーディスプレイ、バックライト、照明光
源等の面光源、プリンター等の光源アレイ等に有効に利
用できる。
【0009】また、本発明の製造方法は、上記本発明の
発光素子を製造する方法であって、基材上に透明電極、
燐光発光性化合物を含有する発光層を含む一層以上の有
機化合物層及び背面電極を製膜して発光積層体を作成
し、発光積層体に封止部材を設置し有機化合物層を外部
の空気から遮断して発光素子を製造する方法であって、
発光層を製膜する工程、背面電極を製膜する工程、及び
封止部材を設置する工程を、水分濃度及び酸素濃度がと
もに100ppm以下である雰囲気下で行うことを特徴とす
る。
【0010】本発明においては、上記発光層を製膜した
後から封止部材を設置するまでの間、有機化合物層を空
気中に暴露しないことが好ましい。また、有機化合物層
の少なくとも一層を湿式製膜法により製膜すると、発光
素子を低コストで製造でき、また素子の大面積化が可能
となるため好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の発光素子は、基材上に透
明電極、一層以上の有機化合物層及び背面電極を製膜し
て発光積層体を作成し、発光積層体に封止部材を設置し
有機化合物層を外部の空気から遮断して発光素子を製造
する本発明の製造方法によって得ることができる。有機
化合物層は発光層を含み、発光層は燐光発光性化合物を
含有する。必要に応じて発光層以外の有機化合物層や保
護層等を有していてもよい。なお、本発明において発光
積層体とは、基材、透明電極、一層以上の有機化合物層
及び背面電極を含む構造体をいう。
【0012】本発明においては、発光層を製膜する工
程、背面電極を製膜する工程、及び封止部材を設置する
工程を、水分濃度及び酸素濃度がともに100ppm以下であ
る雰囲気下で行う。これにより、製造した発光素子の内
部に残留する水分及び酸素の量を低減でき、その結果、
三重項励起子の消滅を抑制することができ、高い発光輝
度、発光効率及び耐久性を示す発光素子が得られる。発
光層以外の有機化合物層や保護層等も、上記雰囲気下で
好ましく製膜できる。特に、発光層を製膜した後から封
止部材を設置するまでの一連の工程において、有機化合
物層を空気中に暴露しないことが好ましい。
【0013】上記水分濃度は100ppm以下であればよく、
好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下とす
る。また、上記酸素濃度は100ppm以下であればよく、好
ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下とする。
【0014】本発明の発光素子において、発光積層体の
構成は、基材上に透明電極/発光層/背面電極、透明電
極/発光層/電子輸送層/背面電極、透明電極/正孔輸
送層/発光層/電子輸送層/背面電極、透明電極/正孔
輸送層/発光層/背面電極、透明電極/発光層/電子輸
送層/電子注入層/背面電極、透明電極/正孔注入層/
正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電
極等をこの順に積層した構成、これらを逆に積層した構
成等であってよい。発光層は燐光発光性化合物を含有
し、通常、透明電極から発光が取り出される。各層に用
いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプ
レイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テ
クノタイムズ社)等に記載されている。
【0015】有機化合物層の形成位置は特に制限され
ず、発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択すること
ができるが、透明電極又は背面電極上に形成するのが好
ましい。このとき有機化合物層は透明電極又は背面電極
の全面又は一部に形成してよい。有機化合物層の形状、
大きさ及び厚みも目的に応じて適宜選択することができ
る。
【0016】有機化合物層は乾式製膜法又は湿式製膜法
により製膜してよいが、湿式製膜法を用いると有機化合
物層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効
率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ま
しい。本発明では有機化合物層の少なくとも一層を湿式
製膜法により製膜するのが好ましい。乾式製膜法として
は蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式製膜法として
はディッピング法、スピンコート法、ディップコート
法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バー
コート法、グラビアコート法等が使用可能である。これ
らの製膜法は有機化合物層の材料に応じて適宜選択でき
る。湿式製膜法により製膜した場合は製膜した後に乾燥
してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力
等の条件を選択して行う。
【0017】上記湿式製膜法で用いる塗布液は通常、有
機化合物層の材料と、それを溶解又は分散するための溶
剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機化合物層に用
いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例として
は、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジク
ロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン
等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、
ジエチルケトン、n-プロピルメチルケトン、シクロヘキ
サノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシ
レン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸 n-プロ
ピル、酢酸 n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオ
ン酸エチル、γ-ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、
エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン
等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチル
アセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、水等が挙げ
られる。なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に
制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選
択することができる。
【0018】本発明の発光素子は、例えば、グローブボ
ックスにスピンコーター、蒸着装置、スパッタ装置等の
発光層及び背面電極を製膜するための機器を連結してな
る装置を用いて製造することができる。上記発光層を製
膜する工程、背面電極を製膜する工程及び封止部材を設
置する工程を行う際には、グローブボックスを水分濃度
及び酸素濃度がともに100ppm以下の不活性ガスで置換す
る。不活性ガスとしては窒素、アルゴン等が使用でき
る。
【0019】例えば、発光層を湿式製膜法により製膜す
る場合は、まず基材上に透明電極を設置し、これを水分
濃度及び酸素濃度が100ppm以下の不活性ガスで置換した
グローブボックス内に入れ、加熱等により乾燥する。乾
燥後、グローブボックス内でスピンコーター等により塗
布液を透明電極上に塗布し、乾燥して発光層を製膜す
る。続いてこれをグローブボックスに連結された蒸着機
器に移し、背面電極を製膜し、発光積層体を得る。更
に、得られた発光積層体を再びグローブボックス内に戻
し、封止部材により発光層を封止して、本発明の発光素
子が得られる。
【0020】本発明の発光素子は通常、その透明電極と
背面電極との間に2〜40ボルト程度の直流電圧(交流成
分を含んでもよい)又は直流電流を印加すると発光す
る。また、本発明の発光素子を駆動する際には、特開平
2-148687号、同6-301355号、同5-29080号、同7-134558
号、同8-234685号、同8-241047号、米国特許5828429
号、同6023308号、日本特許第2784615号等に記載の駆動
方法を利用することができる。以下、本発明の発光素子
をなす各構成要素について詳述するが、本発明はそれら
により限定されない。
【0021】(A)基材 本発明で使用する基材は、ジルコニア安定化イットリウ
ム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン
ナフタレート等のポリエステルやポリスチレン、ポリカ
ーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、
アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシ
クロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリ
フルオロエチレン)、テフロン、ポリテトラフルオロエ
チレン−ポリエチレン共重合体等の高分子材料等からな
るものであってよい。基材は単一材料で形成しても、2
種以上の材料で形成してもよい。中でも、フレキシブル
な発光素子を形成するためには高分子材料が好ましく、
耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性及び加工性
に優れ、且つ低通気性及び低吸湿性であるポリエステ
ル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンや、ポリ
(クロロトリフルオロエチレン)、テフロン、ポリテトラ
フルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等のフッ素原
子を含む高分子材料がより好ましい。
【0022】基材の形状、構造、大きさ等は発光素子の
用途及び目的に応じて適宜選択することができる。形状
は板状とするのが一般的である。構造は単層構造であっ
ても積層構造であってもよい。基材は単一の部材で形成
しても、2以上の部材で形成してもよい。また、基材は
無色透明であっても有色透明であってもよいが、発光層
から発せられる光を散乱又は減衰させることがない点で
無色透明であるのが好ましい。
【0023】基材の電極側の面、電極と反対側の面又は
その両方に透湿防止層(ガスバリア層)を設けてもよ
い。透湿防止層を構成する材料としては窒化ケイ素、酸
化ケイ素等の無機物を用いるのが好ましい。透湿防止層
は高周波スパッタリング法等により成膜できる。また、
基材には必要に応じてハードコート層やアンダーコート
層を設けてもよい。
【0024】(B)透明電極 通常、透明電極は有機化合物層に正孔を供給する陽極と
しての機能を有するが、陰極として機能させることもで
き、この場合背面電極を陽極として機能させる。以下、
透明電極を陽極とする場合について説明する。
【0025】透明電極の形状、構造、大きさ等は特に制
限されず、発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択す
ることができる。透明電極を形成する材料としては、金
属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混
合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV
以上の材料を用いる。具体例としては、アンチモンをド
ープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化ス
ズ(FTO)、半導性金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛、
酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜
鉛インジウム(IZO)等)、金属(金、銀、クロム、ニ
ッケル等)、これら金属と導電性金属酸化物との混合物
又は積層物、無機導電性物質(ヨウ化銅、硫化銅等)、
有機導電性材料(ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ
ピロール等)及びこれとITOとの積層物等が挙げられ
る。
【0026】透明電極は印刷法、コーティング法等の湿
式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレー
ティング法等の物理的方法、CVD、プラズマCVD法等の化
学的方法等によって基材上に形成することができる。形
成方法は透明電極材料との適性を考慮して適宜選択すれ
ばよい。例えば、透明電極の材料としてITOを用いる場
合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオ
ンプレーティング法等を用いればよい。また透明電極の
材料として有機導電性材料を用いる場合には、湿式製膜
法を用いてよい。
【0027】透明電極のパターニングはフォトリソグラ
フィー等による化学的エッチング、レーザー等を用いた
物理的エッチング等により行うことができる。また、マ
スクを用いた真空蒸着やスパッタリング、リフトオフ
法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0028】透明電極の形成位置は発光素子の用途及び
目的に応じて適宜選択してよいが、基材上に形成するの
が好ましい。このとき透明電極は基材の表面全体に形成
しても一部のみに形成してもよい。
【0029】透明電極の厚みはその材料に応じて適宜選
択すればよいが、通常10nm〜50μmであり、好ましくは5
0nm〜20μmである。透明電極の抵抗値は103Ω/□以下
とするのが好ましく、102Ω/□以下とするのがより好
ましい。透明電極は無色透明であっても有色透明であっ
てもよい。透明電極側から発光を取り出すためには、そ
の透過率は60%以上とするのが好ましく、70%以上とす
るのがより好ましい。透過率は分光光度計を用いた公知
の方法に従って測定することができる。
【0030】また、「透明導電膜の新展開」(沢田豊監
修、シーエムシー刊、1999年)等に詳細に記載されてい
る電極も本発明に適用できる。特に耐熱性の低いプラス
チック基材を用いる場合は、透明電極材料としてITO又
はIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜するのが好まし
い。
【0031】(C)背面電極 通常、背面電極は有機化合物層に電子を注入する陰極と
しての機能を有するが、陽極として機能させることもで
き、この場合上記透明電極を陰極として機能させる。以
下、背面電極を陰極とする場合について説明する。
【0032】背面電極の形状、構造、大きさ等は特に制
限されず、発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択す
ることができる。背面電極を形成する材料としては、金
属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混
合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数が4.5e
V以下の材料を用いる。具体例としては、アルカリ金属
(Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca
等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウ
ム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−
銀合金、インジウム、希土類金属(イッテルビウム等)
等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいが、安
定性と電子注入性とを両立させるためには2種以上を併
用するのが好ましい。これら材料の中で、電子注入性の
観点からはアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好まし
く、保存安定性の観点からはアルミニウムを主体とする
材料が好ましい。ここでアルミニウムを主体とする材料
とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量
%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金又は混
合物(リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−ア
ルミニウム合金等)を指す。背面電極の材料としては、
特開平2-15595号、特開平5-121172号等に詳述されてい
るものも使用できる。
【0033】背面電極は印刷法、コーティング法等の湿
式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレー
ティング法等の物理的方法、CVD、プラズマCVD法等の化
学的方法等によって形成することができる。形成方法は
背面電極材料との適性を考慮して適宜選択すればよい。
例えば、背面電極の材料として2種以上の金属等を用い
る場合には、その材料を同時又は順次にスパッタして形
成できる。
【0034】背面電極のパターニングはフォトリソグラ
フィー等による化学的エッチング、レーザー等を用いた
物理的エッチング等により行うことができる。また、マ
スクを用いた真空蒸着やスパッタリング、リフトオフ
法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0035】背面電極の形成位置は発光素子の用途及び
目的に応じて適宜選択してよいが、有機化合物層上に形
成するのが好ましい。このとき背面電極は有機化合物層
の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよい。ま
た、背面電極と有機化合物層との間にアルカリ金属又は
アルカリ土類金属のフッ化物等からなる誘電体層を0.1
〜5nmの厚みで設置してもよい。誘電体層は真空蒸着
法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によ
り形成することができる。
【0036】背面電極の厚みはその材料に応じて適宜選
択すればよいが、通常10nm〜5μmであり、好ましくは5
0nm〜1μmである。背面電極は透明であっても不透明で
あってもよい。透明背面電極は、上述した材料の層を1
〜10nmの厚みに薄く製膜し、更にITOやIZO等の透明導電
性材料を積層して形成してよい。
【0037】(D)発光層 本発明の発光素子において、発光層は燐光発光性化合物
を含有する。本発明で用いる燐光発光性化合物は、三重
項励起子から発光することができる化合物であれば特に
限定されることはない。燐光発光性化合物としては、オ
ルトメタル化錯体又はポルフィリン錯体を用いるのが好
ましく、オルトメタル化錯体を用いるのがより好まし
い。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が
好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以
上を併用してもよい。
【0038】本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山
本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」, 150頁及び232
頁, 裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistr
y and Photophysics of Coordination Compounds」, 71
〜77頁及び135〜146頁, Springer-Verlag社(1987年)
等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタ
ル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2-フ
ェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-
(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン
誘導体又は2-フェニルキノリン誘導体であるのが好まし
い。これら誘導体は置換基を有してもよい。また、これ
らのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の
配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成
する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用
可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウ
ム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることが
できる。中でもイリジウムが特に好ましい。このような
オルトメタル化錯体を含む有機化合物層は、発光輝度及
び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体について
は、特願2000-254171号の段落番号0152〜0180にもその
具体例が記載されている。
【0039】本発明で用いるオルトメタル化錯体は、In
org. Chem., 30, 1685, 1991、Inorg. Chem., 27, 346
4, 1988、Inorg. Chem., 33, 545, 1994、Inorg. Chim.
Acta, 181, 245, 1991、J. Organomet. Chem., 335, 2
93, 1987、J. Am. Chem. Soc., 107, 1431, 1985 等に
記載の公知の手法で合成することができる。
【0040】発光層中の燐光発光性化合物の含有量は特
に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であり、1〜2
0質量%であるのが好ましい。燐光発光性化合物の含有
量が0.1質量%未満であるか、又は70質量%を超える
と、その効果が十分に発揮されない場合がある。
【0041】本発明において、発光層は必要に応じてホ
スト化合物、正孔輸送材料、電子輸送材料、電気的に不
活性なポリマーバインダー等を含有してもよい。
【0042】上記ホスト化合物とは、その励起状態から
燐光発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結
果、該燐光発光性化合物を発光させる化合物である。そ
の具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール
誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導
体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導
体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレン
ジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カ
ルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレ
ノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シ
ラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルア
ミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン
化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導
体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘
導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン
誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレ
ン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン
誘導体、8-キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタ
ロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等
を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N-
ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオ
フェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、
ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフ
ェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙
げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以
上を併用してもよい。
【0043】正孔輸送材料は陽極から正孔を注入する機
能、正孔を輸送する機能、及び陰極から注入された電子
を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特
に限定されず、低分子材料であっても高分子材料であっ
てもよい。その具体例としては、カルバゾール誘導体、
トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジア
ゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアル
カン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フ
ェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミ
ノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、
フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘
導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、ス
チリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポル
フィリン化合物、ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカ
ルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオ
リゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオ
フェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレン
ビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられ
る。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用
してもよい。
【0044】電子輸送材料は陰極から電子を注入する機
能、電子を輸送する機能、及び陽極から注入された正孔
を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特
に限定されず、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾー
ル誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導
体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、
ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導
体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘
導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン
等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘
導体、8-キノリノール誘導体の金属錯体、メタロフタロ
シアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を
配位子とする金属錯体、アニリン共重合体、チオフェン
オリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチ
オフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレ
ンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が使用可能
である。
【0045】ポリマーバインダーとしては、ポリ塩化ビ
ニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメ
タクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステ
ル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタ
ジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、
ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹
脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステ
ル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリ
ビニルブチラール、ポリビニルアセタール等が使用可能
である。ポリマーバインダーを含有する発光層は、湿式
製膜法によって、容易に且つ大面積に塗布形成すること
ができる。
【0046】発光層の厚みは10〜200nmとするのが好ま
しく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nm
を超えると駆動電圧が上昇する場合があり、10nm未満で
あると発光素子が短絡する場合がある。
【0047】(E)電子輸送層 本発明の発光素子は、必要に応じて上述した電子輸送材
料からなる電子輸送層を有してよい。電子輸送層は上述
のポリマーバインダーを含有してもよい。電子輸送層の
厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとする
のがより好ましい。厚みが200nmを越えると駆動電圧が
上昇する場合があり、10nm未満であると発光素子が短絡
する場合がある。
【0048】(F)正孔輸送層 本発明の発光素子は、必要に応じて上述した正孔輸送材
料からなる正孔輸送層を有してよい。正孔輸送層は上述
のポリマーバインダーを含有してもよい。正孔輸送層の
厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとする
のがより好ましい。厚みが200nmを越えると駆動電圧が
上昇する場合があり、10nm未満であると発光素子が短絡
する場合がある。
【0049】(G)その他 本発明の発光素子は、特開平7-85974号、同7-192866
号、同8-22891号、同10-275682号、同10-106746号等に
記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の
最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電
極、有機化合物層及び背面電極をこの順に積層する場合
には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機
化合物層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明
電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等
は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素
等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透
過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に
限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニ
ウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0050】保護層の形成方法は特に限定はなく、例え
ば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリン
グ法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム
法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズ
マCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等
が適用できる。
【0051】また、発光素子には水分や酸素の侵入を防
止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形
成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なく
とも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状
構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポ
リユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロト
リフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレ
ン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオ
ロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%
以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金
属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸
化物(MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、F
e2O3、Y2O3、TiO2等)、金属フッ化物(MgF2、LiF、AlF
3、CaF2等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカ
ン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、
該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させた
もの等が使用可能である。
【0052】本発明においては、外部からの水分や酸素
を遮断する目的で、有機化合物層を封止板、封止容器等
の封止部材により封止する。本発明では、封止部材を背
面電極側のみに設置しても、発光積層体全体を封止部材
で覆ってもよい。有機化合物層を封止でき外部の空気を
遮断することができれば、封止部材の形状、大きさ、厚
さ等は特に限定されない。封止部材に用いる材料として
は、ガラス、ステンレス、金属(アルミ等)、プラスチ
ック(ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリエステ
ル、ポリカーボネート等)、セラミック等が使用でき
る。
【0053】封止部材を発光積層体に設置する際には、
適宜封止剤(接着剤)を用いてよい。発光積層体全体を
封止部材で覆う場合は、封止剤を用いずに封止部材同士
を熱融着してもよい。封止剤としては紫外線硬化樹脂、
熱硬化樹脂、二液型硬化樹脂等が使用可能である。
【0054】さらに本発明においては、封止容器と発光
素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を挿入して
もよい。水分吸収剤は特に限定されず、具体例としては
酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カ
ルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグ
ネシウム、五酸化リン、塩化カルシウム、塩化マグネシ
ウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カ
ルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオ
ライト、酸化マグネシウム等が挙げられる。不活性液体
としてはパラフィン類、流動パラフィン類、フッ素系溶
剤(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パー
フルオロエーテル等)、塩素系溶剤、シリコーンオイル
類等が使用可能である。
【0055】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0056】実施例1 厚み0.2mmのガラス板を2.5cm角に切断して基材を作製
し、これを真空チャンバー内に導入した。この基板上
に、SnO2含有率が10質量%であるITOターゲットを用い
て、DCマグネトロンスパッタ(条件:基材温度100℃、
酸素圧1×10-3Pa)によりITO透明電極を形成した。透
明電極の厚みは0.2μmとし、その表面抵抗は10Ω/□で
あった。
【0057】透明電極を形成した基材を洗浄容器に入れ
IPA洗浄した後、UV−オゾン処理を30分間行った。続い
てこの透明電極上にポリ(エチレンジオキシチオフェン)
・ポリスチレンスルホン酸水分散物(BAYER社製、Baytr
on P:固形分1.3%)をスピンコートし、150℃で2時間
真空乾燥して厚み100nmの正孔注入層を形成した。
【0058】次に、ポリビニルカルバゾール(Mw=6300
0、アルドリッチ製、正孔輸送材料兼ホスト材料)、ト
リス(2-フェニルピリジン)イリジウム錯体(燐光発光材
料)、及び2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニ
ル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD、電子輸送材料)を4
0:1:12の質量比でジクロロエタンに溶解し、塗布液
を調製した。
【0059】蒸着機器が併設されたグローブボックスを
水分濃度30ppm、酸素濃度30ppmの窒素ガスで置換し、こ
れに上記正孔注入層を形成した基材及び塗布液を入れ
た。グローブボックス内で基材をヒーター上にのせ、15
0℃で2時間乾燥した。続いて基材をヒーターから降ろ
し室温まで戻した後、グローブボックス内でスピンコー
ターを用いて塗布液を正孔注入層の上に塗布し、100℃
で2時間乾燥して厚み100nmの発光層を形成した。次
に、発光層を形成した基材をグローブボックスに連結し
た蒸着機器に移し、発光層上にパターニングしたマスク
(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、マグ
ネシウム/銀合金(マグネシウム:銀=10:1(モル
比))を0.25μm蒸着し、更に銀を0.3μm蒸着して背面
電極を形成し、発光積層体を得た。
【0060】得られた発光積層体をグローブボックス内
に戻し、その透明電極及び背面電極にアルミニウムのリ
ード線を結線した。これをガラス製の封止容器で紫外線
硬化型接着剤(長瀬チバ製、XNR5493)を用いて封止
し、実施例1の発光素子を作成した。
【0061】実施例2 上記グローブボックスを、水分濃度30ppm、酸素濃度30p
pmの窒素ガスに換えて水分濃度70ppm、酸素濃度80ppmの
アルゴンガスを用いて置換したこと以外は実施例1と同
様に、実施例2の発光素子を作成した。
【0062】実施例3 上記グローブボックスを、水分濃度30ppm、酸素濃度30p
pmの窒素ガスに換えて水分濃度100ppm、酸素濃度100ppm
のアルゴンガスを用いて置換したこと以外は実施例1と
同様に、実施例3の発光素子を作成した。
【0063】比較例1 上記グローブボックスを、水分濃度30ppm、酸素濃度30p
pmの窒素ガスに換えて水分濃度200ppm、酸素濃度30ppm
のアルゴンガスを用いて置換したこと以外は実施例1と
同様に、比較例1の発光素子を作成した。
【0064】比較例2 上記グローブボックスを、水分濃度30ppm、酸素濃度30p
pmの窒素ガスに換えて水分濃度30ppm、酸素濃度200ppm
のアルゴンガスを用いて置換したこと以外は実施例1と
同様に、比較例2の発光素子を作成した。
【0065】比較例3 上記塗布液を正孔注入層の上に塗布する工程を、上記グ
ローブボックス内ではなく、空気中で行ったこと以外は
実施例1と同様に、比較例3の発光素子を作成した。
【0066】比較例4 上記発光積層体を封止容器で封止する工程を、上記グロ
ーブボックス内ではなく、空気中で行ったこと以外は実
施例1と同様に、比較例4の発光素子を作成した。
【0067】実施例4 グローブボックスに連結した蒸着機器内で、発光層上に
2,2',2''-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス[3-(2-メチ
ルフェニル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン]を1nm/秒
の速度で蒸着して厚み0.024μmの電子輸送層を設け、そ
の上に背面電極を設けたこと以外は実施例1と同様に、
実施例4の発光素子を作成した。
【0068】発光輝度及び発光効率の評価 東洋テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用い
て、上記のように得られた各発光素子に直流電圧を印加
して発光させ輝度を測定し、各発光素子の最高輝度
Lmax、最高輝度Lmaxが得られるときの電圧Vmax、輝度20
0cd/m2で発光させたときの発光効率η200、輝度2000cd/
m2で発光させたときの発光効率η2000(外部量子効率)
を求めた。また、各発光素子を85℃、95%RHの条件下で
30日放置した後の最高輝度Lmax、電圧Vmax、並びに発光
効率η200及びη2000を求め、耐久性を評価した。結果
を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】表1に示すように、発光層を製膜する工
程、背面電極を製膜する工程及び封止部材を設置する工
程を、いずれも水分濃度及び酸素濃度の低い雰囲気下で
行った本発明の発光素子(実施例1〜4)は優れた発光
輝度、発光効率及び耐久性を示した。各工程を水分濃度
の高い雰囲気下で行った比較例1の発光素子、及び酸素
濃度の高い雰囲気下で行った比較例2の発光素子におい
ては、発光輝度、発光効率及び耐久性の低下が見られ
た。このことから、本発明では水分濃度及び酸素濃度を
ともに低くすることが重要であることが分かる。また、
発光層を製膜する工程を空気中で行った比較例3の発光
素子、及び封止部材を設置する工程を空気中で行った比
較例4の発光素子においては、発光特性及び耐久性がよ
り著しく悪化しており、発光層の製膜及び封止部材の設
置は、いずれも水分濃度及び酸素濃度が低い雰囲気下で
行うことが非常に望ましいことがわかる。
【0071】
【発明の効果】以上詳述したように、三重項励起子を有
効に利用した本発明の発光素子は、発光輝度、発光効率
及び耐久性に優れ、製造コストが低く、且つ大面積化が
可能であるためにフルカラーディスプレイ、バックライ
ト、照明光源等の面光源、プリンター等の光源アレイ等
に有効に利用できる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に透明電極、燐光発光性化合物を
    含有する発光層を含む一層以上の有機化合物層及び背面
    電極を製膜して発光積層体を作成し、前記発光積層体に
    封止部材を設置し前記有機化合物層を外部の空気から遮
    断して得られる発光素子において、前記発光層を製膜す
    る工程、前記背面電極を製膜する工程、及び前記封止部
    材を設置する工程が、水分濃度及び酸素濃度がともに10
    0ppm以下である雰囲気下で行われることを特徴とする発
    光素子。
  2. 【請求項2】 基材上に透明電極、燐光発光性化合物を
    含有する発光層を含む一層以上の有機化合物層及び背面
    電極を製膜して発光積層体を作成し、前記発光積層体に
    封止部材を設置し前記有機化合物層を外部の空気から遮
    断して発光素子を製造する方法において、前記発光層を
    製膜する工程、前記背面電極を製膜する工程、及び前記
    封止部材を設置する工程を、水分濃度及び酸素濃度がと
    もに100ppm以下である雰囲気下で行うことを特徴とする
    発光素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の発光素子の製造方法に
    おいて、前記発光層を製膜した後から前記封止部材を設
    置するまでの間、前記有機化合物層を空気中に暴露しな
    いことを特徴とする発光素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3に記載の発光素子の製造
    方法において、前記有機化合物層の少なくとも一層を湿
    式製膜法により製膜することを特徴とする発光素子の製
    造方法。
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