JP4112799B2 - 発光素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光輝度、発光効率及び耐久性に優れた発光素子、並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機物質を使用した有機発光素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視されており、近年活発な研究開発が進められている。一般に有機発光素子は発光層を含む有機化合物層及び該有機化合物層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機発光素子に電圧を印加すると、有機化合物層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
【0003】
従来の有機発光素子は、駆動電圧が高く発光輝度及び発光効率が低いという問題を有している。近年、この問題を解決するための技術が種々報告されており、例えば有機化合物の蒸着により形成した有機薄膜を有する有機発光素子が知られている(アプライド フィジクス レターズ, 51巻, 913頁, 1987年)。この有機発光素子は電子輸送材料からなる電子輸送層と正孔輸送材料からなる正孔輸送層の積層二層構造を有し、単層型素子に比べて大幅に向上した発光特性を示す。正孔輸送材料としては低分子アミン化合物、電子輸送材料兼発光材料としては8-キノリノールのアルミニウム錯体(Alq)を用いており、発光色は緑色である。蒸着有機薄膜を有する有機発光素子はその後も数多く報告されている(マクロモレキュラリー シンポジウム, 125巻, 1頁, 1997年に記載の参考文献参照)が、このような有機発光素子は無機LED素子や蛍光管に比べると非常に発光効率が低く、このことが実用化に際し大きな問題となっている。
【0004】
従来の有機発光素子の殆どは有機発光材料の一重項励起子から得られる蛍光発光を利用したものである。単純な量子化学のメカニズムにおいては、励起子状態において蛍光発光が得られる一重項励起子と燐光発光が得られる三重項励起子の比は1対3である。即ち、蛍光発光を利用している限りは励起子の25%しか有効活用できず、蛍光発光素子の発光効率は低い。このような状況下、最近、イリジウムのフェニルピリジン錯体を用いた燐光発光素子が報告された(アプライド フィジクス レター, 75巻, 4頁, 1999年、ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス, 38巻, L1502頁, 1999年等)。これらの燐光発光素子は従来の蛍光発光素子に比べて2〜3倍の発光効率を示すが、その発光効率は理論的な発光効率限界よりは低く、実用化のためには更なる発光効率向上が求められている。また、従来の蛍光発光素子と比較して、該燐光発光素子は耐久性の点でも劣っており、その改良が強く望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発光輝度、発光効率及び耐久性に優れ、フルカラーディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光源、プリンター等の光源アレイ等に有効に利用できる発光素子、並びにその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、三重項励起子を利用する燐光発光素子は、一重項励起子を利用する蛍光発光素子とは異なり酸素の影響を受けやすく、酸素により消光現象が引き起こされる事実を見出し、有機化合物層を酸素濃度が低い雰囲気下で封止部材により封止することによって、発光特性及び耐久性に優れた燐光発光素子が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0007】
即ち、本発明の発光素子は基材上に透明電極、発光層を含む一層以上の有機化合物層及び背面電極を積層してなる発光積層体、並びに有機化合物層を封止し外部の空気を遮断する封止部材を有し、該発光層が燐光発光性化合物を含有する素子であって、封止部材が酸素濃度100ppm以下の雰囲気下で発光積層体に設置された部材であることを特徴とする。本発明の発光素子は発光輝度、発光効率及び耐久性に優れており、フルカラーディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光源、プリンター等の光源アレイ等に有効に利用できる。
【0008】
また、本発明の製造方法は、上記本発明の発光素子を製造する方法であって、封止部材を酸素濃度100ppm以下の雰囲気下で発光積層体に設置することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の発光素子は基材上に透明電極、一層以上の有機化合物層及び背面電極を積層してなる発光積層体、並びに有機化合物層を封止し外部の空気を遮断する封止部材を有する。有機化合物層は発光層を含み、発光層は燐光発光性化合物を含有する。必要に応じて発光層以外の有機化合物層や保護層等を有していてもよい。この発光素子は本発明の製造方法によって製造でき、該製造方法においては、封止部材を発光積層体に設置する封止工程を、酸素濃度100ppm以下の雰囲気下で行う。これにより、封止工程において発光積層体に吸着される酸素の量を低減でき、また封止された発光素子内部の酸素ガス量を低減できる。その結果、酸素ガスに非常に敏感な三重項励起子の消滅を抑制することができ、高い発光輝度、発光効率及び耐久性を示す発光素子が得られる。
【0010】
上記酸素濃度は100ppm以下であればよく、好ましくは50ppm以下とする。酸素濃度が100ppm以下の雰囲気を得るための方法は特に限定されない。例えば、酸素濃度100ppm以下の不活性ガス雰囲気下で封止工程を行えばよい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等がコスト及び取り扱い易さの観点から好ましい。
【0011】
封止部材としては、封止キャップ、封止カバー等が使用できる。封止部材をなす材料は水分透過性及び酸素透過性の低い材料であればよく、その具体例としてはガラス、セラミック等の無機材料、ステンレス、鉄、アルミ等の金属、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルやポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、テフロン、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等の高分子材料等が挙げられる。中でも、フレキシブルな発光素子や塗布型発光素子を形成するためには高分子材料が好ましい。
【0012】
封止部材を発光積層体に設置する際には、適宜封止剤(接着剤)を用いてよい。封止剤としては紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、二液型硬化樹脂、水分硬化樹脂、嫌気性硬化樹脂、ホットメルト型樹脂等が使用可能である。
【0013】
図1〜3は各々、本発明の発光素子の一実施形態を示す概略断面図である。図1〜3に示す各発光素子は、基材1の上に透明電極2、有機化合物層3及び背面電極4を積層してなる発光積層体7、並びに有機化合物層3を封止する封止部材9を有する。これらの実施形態においては、封止部材9を封止剤(接着剤)8によって基材1、透明電極リード5、背面電極リード6等に接着し、発光積層体7に設置される。本発明では、図1に示すように封止部材9を背面電極4側のみに設置しても、図2及び3に示すように発光積層体7全体を封止部材9で覆ってもよく、有機化合物層3を封止でき外部の空気を遮断することができれば、封止部材9の形状、大きさ、厚さ等は特に限定されない。また、図2及び3に示す発光素子のように発光積層体7全体を封止部材9で覆う場合は、封止剤8を用いずに封止部材9同士を熱融着してもよい。封止部材9と発光積層体7との間には、必要に応じて空間10が存在してもよい。空間10には、水分吸収剤又は不活性液体を挿入してよい。水分吸収剤は特に限定されず、具体例としては酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化リン、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等が挙げられる。不活性液体としてはパラフィン類、流動パラフィン類、フッ素系溶剤(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、塩素系溶剤、シリコーンオイル類等が使用可能である。
【0014】
本発明の発光素子において、発光積層体の構成は、基材上に透明電極/発光層/背面電極、透明電極/発光層/電子輸送層/背面電極、透明電極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/背面電極、透明電極/正孔輸送層/発光層/背面電極、透明電極/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極、透明電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極等をこの順に積層した構成、これらを逆に積層した構成等であってよい。発光層は燐光発光性化合物を含有し、通常、透明電極から発光が取り出される。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。
【0015】
有機化合物層の形成位置は特に制限されず、発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができるが、透明電極又は背面電極上に形成するのが好ましい。このとき有機化合物層は透明電極又は背面電極の全面又は一部に形成してよい。有機化合物層の形状、大きさ及び厚みも目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
有機化合物層は乾式製膜法又は湿式製膜法により製膜してよいが、湿式製膜法を用いると有機化合物層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。乾式製膜法としては蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式製膜法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法等が使用可能である。これらの製膜法は有機化合物層の材料に応じて適宜選択できる。湿式製膜法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0017】
上記湿式製膜法で用いる塗布液は通常、有機化合物層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機化合物層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n-プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸 n-プロピル、酢酸 n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0018】
本発明の発光素子は通常、その透明電極と背面電極との間に2〜40ボルト程度の直流電圧(交流成分を含んでもよい)又は直流電流を印加すると発光する。また、本発明の発光素子を駆動する際には、特開平2-148687号、同6-301355号、同5-29080号、同7-134558号、同8-234685号、同8-241047号、米国特許5828429号、同6023308号、日本特許第2784615号等に記載の駆動方法を利用することができる。以下、本発明で用いる発光積層体をなす各層について詳述するが、本発明はそれらにより限定されない。
【0019】
(A)基材
本発明で使用する基材は、水分を透過させない材料又は水分透過率が極めて低い材料からなるのが好ましい。該材料は、好ましくは有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルやポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料等が挙げられる。中でも、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性及び加工性に優れ、且つ低通気性及び低吸湿性である有機材料が特に好ましく使用できる。基材は単一材料で形成しても、2種以上の材料で形成してもよい。基材の材料は透明電極材料に応じて適宜選択してよく、例えば透明電極が酸化インジウムスズ(ITO)である場合には、ITOとの格子定数の差が小さい材料を用いるのが好ましい。
【0020】
基材の形状、構造、大きさ等は発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。形状は板状とするのが一般的である。構造は単層構造であっても積層構造であってもよい。基材は無色透明であっても有色透明であってもよいが、発光層から発せられる光を散乱又は減衰させることがない点で無色透明であるのが好ましい。
【0021】
基材の電極側の面、電極と反対側の面又はその両方に透湿防止層(ガスバリア層)を設けてもよい。透湿防止層を構成する材料としては窒化ケイ素、酸化ケイ素等の無機物を用いるのが好ましい。透湿防止層は高周波スパッタリング法等により成膜できる。また、基材には必要に応じてハードコート層やアンダーコート層を設けてもよい。
【0022】
(B)透明電極
通常、透明電極は有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有するが、陰極として機能させることもでき、この場合背面電極を陽極として機能させる。以下、透明電極を陽極とする場合について説明する。
【0023】
透明電極の形状、構造、大きさ等は特に制限されず、発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。透明電極を形成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料を用いる。具体例としては、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、半導性金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等)、金属(金、銀、クロム、ニッケル等)、これら金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、無機導電性物質(ヨウ化銅、硫化銅等)、有機導電性材料(ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等)及びこれとITOとの積層物等が挙げられる。
【0024】
透明電極は印刷法、コーティング法等の湿式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方法、CVD、プラズマCVD法等の化学的方法等によって基材上に形成することができる。形成方法は透明電極材料との適性を考慮して適宜選択すればよい。例えば、透明電極の材料としてITOを用いる場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等を用いればよい。また透明電極の材料として有機導電性材料を用いる場合には、湿式製膜法を用いてよい。
【0025】
透明電極のパターニングはフォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザー等を用いた物理的エッチング等により行うことができる。また、マスクを用いた真空蒸着やスパッタリング、リフトオフ法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0026】
透明電極の形成位置は発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択してよいが、基材上に形成するのが好ましい。このとき透明電極は基材の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよい。
【0027】
透明電極の厚みはその材料に応じて適宜選択すればよいが、通常10nm〜50μmであり、好ましくは50nm〜20μmである。透明電極の抵抗値は103Ω/□以下とするのが好ましく、102Ω/□以下とするのがより好ましい。透明電極は無色透明であっても有色透明であってもよい。透明電極側から発光を取り出すためには、その透過率は60%以上とするのが好ましく、70%以上とするのがより好ましい。透過率は分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0028】
また、「透明導電膜の新展開」(沢田豊監修、シーエムシー刊、1999年)等に詳細に記載されている電極も本発明に適用できる。特に耐熱性の低いプラスチック基材を用いる場合は、透明電極材料としてITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜するのが好ましい。
【0029】
(C)背面電極
通常、背面電極は有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有するが、陽極として機能させることもでき、この場合上記透明電極を陰極として機能させる。以下、背面電極を陰極とする場合について説明する。
【0030】
背面電極の形状、構造、大きさ等は特に制限されず、発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。背面電極を形成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数が4.5eV以下の材料を用いる。具体例としては、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、希土類金属(イッテルビウム等)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させるためには2種以上を併用するのが好ましい。これら材料の中で、電子注入性の観点からはアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性の観点からはアルミニウムを主体とする材料が好ましい。ここでアルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金又は混合物(リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金等)を指す。背面電極の材料としては、特開平2-15595号、特開平5-121172号等に詳述されているものも使用できる。
【0031】
背面電極は印刷法、コーティング法等の湿式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方法、CVD、プラズマCVD法等の化学的方法等によって形成することができる。形成方法は背面電極材料との適性を考慮して適宜選択すればよい。例えば、背面電極の材料として2種以上の金属等を用いる場合には、その材料を同時又は順次にスパッタして形成できる。
【0032】
背面電極のパターニングはフォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザー等を用いた物理的エッチング等により行うことができる。また、マスクを用いた真空蒸着やスパッタリング、リフトオフ法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0033】
背面電極の形成位置は発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択してよいが、有機化合物層上に形成するのが好ましい。このとき背面電極は有機化合物層の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよい。また、背面電極と有機化合物層との間にアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物等からなる誘電体層を0.1〜5nmの厚みで設置してもよい。誘電体層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0034】
背面電極の厚みはその材料に応じて適宜選択すればよいが、通常10nm〜5μmであり、好ましくは50nm〜1μmである。背面電極は透明であっても不透明であってもよい。透明背面電極は、上述した材料の層を1〜10nmの厚みに薄く製膜し、更にITOやIZO等の透明導電性材料を積層して形成してよい。
【0035】
(D)発光層
本発明の発光素子において、発光層は燐光発光性化合物を含有する。本発明で用いる燐光発光性化合物は、三重項励起子から発光することができる化合物であれば特に限定されることはない。燐光発光性化合物としては、オルトメタル化錯体又はポルフィリン錯体を用いるのが好ましく、オルトメタル化錯体を用いるのがより好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」, 150頁及び232頁, 裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」, 71〜77頁及び135〜146頁, Springer-Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2-フェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン誘導体又は2-フェニルキノリン誘導体であるのが好ましい。これら誘導体は置換基を有してもよい。また、これらのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることができる。中でもイリジウムが特に好ましい。このようなオルトメタル化錯体を含む有機化合物層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体については、特願2000-254171号の段落番号0152〜0180にもその具体例が記載されている。
【0037】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、Inorg. Chem., 30, 1685, 1991、Inorg. Chem., 27, 3464, 1988、Inorg. Chem., 33, 545, 1994、Inorg. Chim. Acta, 181, 245, 1991、J. Organomet. Chem., 335, 293, 1987、J. Am. Chem. Soc., 107, 1431, 1985 等に記載の公知の手法で合成することができる。
【0038】
発光層中の燐光発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であり、1〜20質量%であるのが好ましい。燐光発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか、又は70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されない場合がある。
【0039】
本発明において、発光層は必要に応じてホスト化合物、正孔輸送材料、電子輸送材料、電気的に不活性なポリマーバインダー等を含有してもよい。
【0040】
上記ホスト化合物とは、その励起状態から燐光発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果、該燐光発光性化合物を発光させる化合物である。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0041】
正孔輸送材料は陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、及び陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されず、低分子材料であっても高分子材料であってもよい。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
電子輸送材料は陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、及び陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されず、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体の金属錯体、メタロフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が使用可能である。
【0043】
ポリマーバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等が使用可能である。ポリマーバインダーを含有する発光層は、湿式製膜法によって、容易に且つ大面積に塗布形成することができる。
【0044】
発光層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nmを超えると駆動電圧が上昇する場合があり、10nm未満であると発光素子が短絡する場合がある。
【0045】
(E)電子輸送層
本発明の発光素子は、必要に応じて上述した電子輸送材料からなる電子輸送層を有してよい。電子輸送層は上述のポリマーバインダーを含有してもよい。電子輸送層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nmを越えると駆動電圧が上昇する場合があり、10nm未満であると発光素子が短絡する場合がある。
【0046】
(F)正孔輸送層
本発明の発光素子は、必要に応じて上述した正孔輸送材料からなる正孔輸送層を有してよい。正孔輸送層は上述のポリマーバインダーを含有してもよい。正孔輸送層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nmを越えると駆動電圧が上昇する場合があり、10nm未満であると発光素子が短絡する場合がある。
【0047】
(G)その他
本発明の発光素子は、特開平7-85974号、同7-192866号、同8-22891号、同10-275682号、同10-106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機化合物層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機化合物層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0048】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0049】
また、発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等)、金属フッ化物(MgF2、LiF、AlF3、CaF2等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0051】
実施例1
厚み0.2mmのガラス板を2.5cm角に切断して基材を作製し、これを真空チャンバー内に導入した。この基板上に、SnO2含有率が10質量%であるITOターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタ(条件:基材温度100℃、酸素圧1×10-3Pa)によりITO透明電極を形成した。透明電極の厚みは0.2μmとし、その表面抵抗は10Ω/□であった。
【0052】
透明電極を形成した基材を洗浄容器に入れIPA洗浄した後、UV−オゾン処理を30分間行った。続いてこの透明電極上にN,N'-ジナフチル-N,N'-ジフェニルベンシジンを1nm/秒の速度で真空蒸着し、厚み0.04μmの正孔輸送層を形成した。次にこの正孔輸送層上にトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム錯体(燐光発光材料)及び4,4'-N,N'-ジカルバゾールビフェニル(ホスト材料)をそれぞれ0.1nm/秒、1nm/秒の速度で共蒸着して厚み0.024μmの発光層を形成した。更に得られた発光層上に2,2',2''-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス[3-(2-メチルフェニル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン]を1nm/秒の速度で蒸着して厚み0.024μmの電子輸送層を設けた。
【0053】
得られた電子輸送層上にパターニングしたマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、蒸着装置内でマグネシウム/銀合金(マグネシウム:銀=10:1(モル比))を0.25μm蒸着し、銀を0.3μm蒸着して背面電極を形成した。透明電極及び背面電極からアルミニウムのリード線を結線し、発光積層体を形成した。この発光積層体を酸素濃度80ppm、露点−80℃の窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止キャップで紫外線硬化型接着剤(長瀬チバ製、XNR5493)を用いて封止し、図1に示す素子と同様の構成を有する実施例1の発光素子を作成した。なお、酸素濃度はデルタF酸素計(パナメトリクス社製)を用いて測定した。
【0054】
実施例2
上記グローブボックスを、上記窒素ガスに換えて酸素濃度40ppm、露点−80℃のアルゴンガスを用いて置換したこと以外は実施例1と同様に、実施例2の発光素子を作成した。
【0055】
比較例1
上記グローブボックスを、上記窒素ガスに換えて酸素濃度200ppm、露点−80℃のアルゴンガスを用いて置換したこと以外は実施例1と同様に、比較例1の発光素子を作成した。
【0056】
発光輝度及び発光効率の評価
東洋テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、上記のように得られた各発光素子に直流電圧を印加して発光させ輝度を測定し、各発光素子の最高輝度Lmax、最高輝度Lmaxが得られるときの電圧Vmax、輝度200cd/m2で発光させたときの発光効率η200、輝度2000cd/m2で発光させたときの発光効率η2000(外部量子効率)を求めた。また、各発光素子を85℃、95%RHの条件下で30日放置した後の最高輝度Lmax、電圧Vmax、並びに発光効率η200及びη2000を求め、耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
Figure 0004112799
【0058】
表1に示すように、封止工程を酸素濃度の高い雰囲気下で行った比較例1の発光素子は耐久性が非常に悪かった。これに比較して、本発明の実施例1及び2の発光素子は優れた発光輝度、発光効率及び耐久性を示した。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように、三重項励起子を有効に利用した本発明の発光素子は、発光輝度、発光効率及び耐久性に優れており、フルカラーディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光源、プリンター等の光源アレイ等に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は本発明の発光素子の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】は本発明の発光素子の一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】は本発明の発光素子の一実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・基材
2・・・透明電極
3・・・有機化合物層
4・・・背面電極
5・・・透明電極リード
6・・・背面電極リード
7・・・発光積層体
8・・・封止剤(接着剤)
9・・・封止部材
10・・・空間

Claims (3)

  1. 基材上に透明電極、発光層を含む一層以上の有機化合物層及び背面電極を積層してなる発光積層体、並びに前記有機化合物層を封止し外部の空気を遮断する封止部材を有する発光素子を製造する方法において、前記発光層が燐光発光性化合物を含有し、前記封止部材を酸素濃度100ppm以下の窒素又はアルゴンの不活性ガス雰囲気下で前記発光積層体に設置することを特徴とする発光素子の製造方法。
  2. 前記封止部材を酸素濃度50ppm以下の雰囲気下で前記発光積層体に設置することを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
  3. 前記燐光発光性化合物は、オルトメタル化錯体又はポルフィリン錯体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子の製造方法。
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