JP4838898B1 - 制震ダンパ - Google Patents
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【解決手段】一対の履歴型ダンパ部11と、中間部20と、変位規制部と、からなる。一対の履歴型ダンパ部11は、中間部20を間に挟んで、軸方向の両端に配置される。各々の履歴型ダンパ部11は、塑性化部12と補剛部19とを備える。塑性化部12は、軸方向に作用する交番軸力に対向する。補剛部19は、塑性化部12の周囲に設けられて塑性化部12の座屈を拘束する。中間部20は、一対の履歴型ダンパ部11を構成する各々の塑性化部12の一端側が接続されて一対の履歴型ダンパ部11を繋ぐ。変位規制部は、補剛部に対する塑性化部の軸方向の伸縮量を規制する。本発明の制震ダンパ10は、一対の履歴型ダンパ11の各々に変位規制部が設けられる。
【選択図】図1
Description
また、長孔116の長径は想定変形量を許容するように余裕を持って設定されているため、想定以上の変形が生じた場合には、塑性化部112は設計で想定しているよりも早期に破断(図5(c))するという課題がある。
また、引張方向の変位規制がなされていないことで、想定以上の変形が生じた場合には、特許文献1と同様に、設計で想定しているよりも早期に塑性化部212が破断するという課題がある。
さらに本発明は、想定しているよりも早期に塑性化部が破断するのを抑制することのできる制震ダンパを提供することを目的とする。
一対の履歴型ダンパ部は、中間部を間に挟んで、軸方向の両端に配置される。各々の履歴型ダンパ部は、塑性化部と、継手部と、補剛部とを備える。塑性化部は、軸方向に作用する引張荷重と圧縮荷重からなる交番軸力に対向する。継手部は、塑性化部に連なり建築構造物と接続される。補剛部は、塑性化部の周囲に設けられて塑性化部の座屈を拘束する。
中間部は、一対の履歴型ダンパ部を構成する各々の塑性化部の一端側が接続されて一対の履歴型ダンパ部を繋ぐ。
変位規制部は、一対の履歴型ダンパの各々に設けられる。この変位規制部は、補剛部に対する塑性化部の軸方向の変形を規制する。
本発明は、一対の履歴型ダンパ部と、中間部と、を有する制震ダンパに対して、一対の履歴型ダンパ部の両方に変位規制部を設ける。そうすることで、変位規制部の要素である長孔により生じる断面欠損範囲を各々の履歴型ダンパ部において抑えることができるとともに、塑性化部が破断したとしても、破断した位置よりも先端の塑性化部が完全に分離することがない。
一対の係止壁は、軸方向に沿う所定距離の間隙を隔てて配置される。上述した長孔116は、軸方向に沿う所定距離の間隙を隔てて配置される一対の係止壁を備えるための典型的な例である。
係止体は、一対の係止壁の間隙内を塑性化部の伸縮に伴って軸方向に相対的に移動する。上述したボルト115は、係止体として機能する典型的な例である。
一対の係止壁は、継手部及び補剛部のいずれかの一方に設けることができる。また、係止体は、継手部及び補剛部のいずれかの他方に設けられる。つまり、一対の係止壁が継手部に設けられる場合には、係止体は補剛部に設けられ、逆に、一対の係止壁が補剛部に設けられる場合には、係止体は継手部に設けられる。
以上の構成からなる変位規制部において、一対の係止壁間の距離は、塑性化部の軸方向の長さの1.5〜3.5%に設定されることが好ましい。この1.5〜3.5%という値は、塑性化部に求められる想定歪量に相当する。このように、一対の係止壁間の距離を塑性化部に求められる想定歪量に相当するものとすれば、塑性化部に実際に生じる歪は許容範囲内に抑えられるので、想定しているよりも早期に塑性化部が破断するのを抑制できる。
また、一対の係止壁間の距離を、塑性化部の軸方向の長さの1.5〜3.5%に設定すると、想定しているよりも早期に塑性化部が破断するのを抑制できる。
さらに、係止体がボルトからなる場合に、一対の係止壁の間隙内に、軸方向に沿って複数本のボルトを設けることで、曲げに対する補剛効果を向上できる。
本実施の形態に係る制震ダンパ10は、柱及び梁からなる鉄骨構造物の斜材(ブレース)として用いられ、地震の際に軸方向に作用する引張り力と圧縮力からなる交番軸力を受けたときに、制震ダンパ10の塑性化部12のみを塑性化させることにより、鉄骨構造物は弾性状態を保持するように構成される。したがって、鉄骨構造物は塑性変形部位が制震ダンパ10に特定されるため、制震ダンパ10の破断や鉄骨構造物の崩壊を回避することができる。また、制震ダンパ10を除く鉄骨構造物は常に弾性状態を保つようにも設計できるので、地震後は元の形状・位置に復元し、塑性化した制震ダンパ10のみを交換することで、鉄骨構造物を継続して使用することができる。
塑性化部12は、均一な厚さの鋼板を組合せることで断面が十字状をなしている。塑性化部12は、一端が中間部20に接続され、また他端に継手部13が設けられる。塑性化部12は、継手部13及び中間部20と軸方向に一体的に形成されている。履歴型ダンパ部11は、所定の大きさ以上の引張力または圧縮力が作用すると、中間部20と継手部13までの間の塑性化部12の領域が塑性変形することでエネルギを吸収する。
制震ダンパ10は、鉄骨構造物を構成する柱と梁の間の対角接合部にそれぞれ取付けられた接合部材に継手部13を介して固定される。継手部13は、一体に形成されている塑性化部12よりも幅広に形成されており、中間部20と同様に塑性化部12が弾性域を超えて塑性化しても、弾性域での変形挙動を維持する。また、継手部13にはボルト15が挿通される長孔16が形成されている。長孔16の軸方向の両端が、各々係止壁16aとなり、この一対の係止壁16aは所定距離(長径)を隔てて配置される。長孔16に挿通されるボルト(係止体)15は、一対の係止壁16aに係止されることで、それを超える変位が規制される。
補剛部19は、山形鋼(アングル材)を断面十字形の塑性化部12の4つの隅部に配置される。そして、各補剛部19は、緩衝材17を介してそれぞれ塑性化部12の4つの片を挟むように断面十字状に組み付けられ、引張時と圧縮時に塑性化部12の降伏変形を拘束し、圧縮時には塑性化部12の座屈を防止する。そうすることで、塑性化部12は圧縮軸力を受けたときにも引張り力を受けたときと同様の弾塑性挙動を示す。
この補剛部19は、一対の履歴型ダンパ部11の各々の塑性化部12(降伏部)の全長と継手部13の一部と、さらに一対の履歴型ダンパ部11の間に配置される中間部20とを覆う長さを有している。そして、隣り合う一対の補剛部19同士で、塑性化部12、継手部13及び中間部20を各々挟み込み、その軸方向に間隔を空けてボルト15及びナット(図示省略)で固定する。塑性化部12で満たされない補剛部19同士の隙間にはスペーサ18を介在させる。
長孔16以外のボルト孔14は、ボルト15の径に応じた円形の開孔形状を有している。したがって、補剛部19のボルト孔14に挿通されるボルト15は、補剛部19に対して固定される。
例えばゴム製シートからなる緩衝材17は、塑性化部12と補剛部19の間に配置される。この緩衝材17は、鋼材から構成される塑性化部12と補剛部19が直接接触することを避けるとともに容易に変形することで、塑性化部12から補剛部19への荷重の伝達を軽減するために設けられる。なお、ゴム製シートは一例であり、低摩擦係数の部材などを用いることでも、ゴム製シートと結果として同様の機能を発揮することができる。
中間部20は、塑性化部12と一体的に形成されており、一対の履歴型ダンパ部11,11の間に位置して両者を繋ぐ。中間部20は、交番軸力が作用したときに、一対の履歴型ダンパ部11,11に軸力を伝達する。中間部20は、塑性化部12よりも高強度に構成されており、塑性化部12が弾性域を超えて塑性化しても、弾性域での変形挙動を維持する。制震ダンパ10は、補剛部19が中間部20をも覆うように構成されている。
中間部20を設けることで、本発明における形式の履歴型ダンパ構造が全長にわたる構造に比べて、履歴型ダンパ部11の製作精度の管理が容易になり、制震ダンパ10の長尺化が可能となるとともに、降伏軸力の調整は履歴型ダンパ部11で、また、軸剛性の調整は中間部20でというように、個別に調整できるので、制震ダンパ10について最適な部材特性を設定することが可能となる。
例えば、地震荷重が作用すると制震ダンパ10は引張りと圧縮の交番軸力を受けるが、この軸力は制震ダンパ10の両端に位置する継手部13を介して履歴型ダンパ部11の塑性化部12を経て中間部20に伝わる。そして、引張り軸力が塑性化部12の降伏軸力(+Ny)に達すると塑性軸変形(+δ)が生じ、圧縮軸力が塑性化部12の降伏軸力(−Ny)に達すると塑性変形(−δ)が生ずる。この際、圧縮軸力を受けた塑性化部12は座屈変形しようとしても、周囲に設けられる補剛部19によってその変形が拘束されて座屈が防止される。
こうして制震ダンパ10は、図3(a)に示すようにa→b→c→dのように履歴曲線を描いて応答し、その結果、地震エネルギを吸収して振動を減衰させる。
継手部13に設けられる長孔16の長径は、塑性化部12が地震により伸縮する変形量を想定し、この想定変形量L1にマージンL2を加えた長さL(L1+L2)に設定される。
本実施形態による制震ダンパ10は、中間部20の両側に一対の履歴型ダンパ部11を設け、その各々で塑性化部12の変形を吸収する。そのため、例えば、塑性化部12の長さが同じで、想定変形量L1が同じである場合には、図5に示した制震ダンパ100のように一つの長孔116を設けるのに比べて、長孔16の長径を1/2にすることができる。このように長孔16のサイズが小さくなるので、継手部13の断面欠損部が小さくなり、制震ダンパ100よりも継手部13の強度を向上できる。
また、想定変形量を超えて塑性化部12が延びて破断したとしても、図2に示すように、各々の塑性化部12が長孔16に挿通されるボルト15により軸方向の移動が拘束されるため、図6に示した制震ダンパ200のように塑性化部220が制震ダンパ200から完全に分離することはない。
長孔16の長径は、想定変形量L1にマージンL2を加えた長さL(L1+L2)に設定されるが、その中で、一方の塑性化部12の長さの1.5〜3.5%の範囲とすることが好ましく、2〜3%とすることがより好ましい。長孔16の長径をこの範囲に制限することで、想定変形量を超える変形が塑性化部12に生じることを防止し、塑性化部12が早期に破断するのを回避できる。
また、一対のうちの一方の側の塑性化部12が繰返し荷重により破断した後に、変形量が長孔16の長径まで達すると(図2参照)、長孔16に挿通されるボルト15が長孔16の係止壁16aに接触するので、軸力がボルト15を介して補剛部19に伝達される。そうすると、破断していない他方の側の塑性化部12に軸力が補剛部19を通って伝達されるため、軸力は塑性化部12の塑性荷重で頭打ちする。よって、想定以上の荷重が伝達されることはなく、制震ダンパ10の周囲の部材(柱、梁)を損傷させることがない。また、破断後の履歴挙動は図3の(c)に示すように、A→B→C'→D→C→B'→Aとなり、引張側(図中+側)においては、一方の側の塑性化部12が破断した後も、破断していない他方の側の塑性化部12の挙動により履歴エネルギの吸収が期待できる。なお、図3の長孔16の長径をより大きく設定したときの履歴挙動を図3の(b)に示しておくが、引張側においては履歴エネルギが吸収されない。
制震ダンパ10は、軸方向(長手方向)に作用する荷重に対向するものであるが、現実には、曲げ応力も負荷される。
これまで説明した制震ダンパ10は、長孔16にボルト15を1本だけ挿通しているに過ぎないので、曲げに対しては、1本のボルト15のみからなるピン結合状態となり補剛部19の補剛効果が弱い。そこで、図4に示すように、2本のボルト15を長径方向に並べると、ピン結合状態を排除して複数点で支持できるので、補剛部19の補剛効果を向上できる。
なお、ここでは2本のボルト15を用いた例を示すが、長径方向に長い矩形断面のピン材を2本のボルト15に代えて長孔16に挿通することでも、曲げに対する補剛効果の向上に寄与できる。
また、長孔16に挿通されるボルト15は、係止壁16aに係止される部材の一例であり、同様の機能を発揮することのできるボルト15以外の部材(係止体)を用いることを本発明は許容する。
また、制震ダンパ10は、補剛部19をアングル材から構成しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、特許文献2に示されるように、補剛部を鋼管から構成してもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
11 履歴型ダンパ部
12 塑性化部
13 継手部
14 ボルト孔
15 ボルト
16 長孔
17 緩衝材
18 スペーサ
19 補剛部
20 中間部
Claims (3)
- 軸方向に作用する引張荷重と圧縮荷重からなる交番軸力に対向する塑性化部と、前記塑性化部に連なり建築構造物と接続される継手部と、前記塑性化部の周囲に設けられて前記塑性化部の座屈を拘束する補剛部とを有し、軸方向の両端に配置される一対の履歴型ダンパ部と、
一対の前記履歴型ダンパ部を構成する各々の前記塑性化部の一端側が接続されて一対の前記履歴型ダンパ部を繋ぐ中間部と、
一対の前記履歴型ダンパの各々に設けられ、前記補剛部に対する前記塑性化部の前記軸方向の変形量を規制する変位規制部と、
を備えることを特徴とする制震ダンパ。 - 前記変位規制部は、
前記継手部及び前記補剛部のいずれかの一方に設けられ、前記軸方向に沿う間隙を隔てて配置される一対の係止壁と、
前記継手部及び前記補剛部のいずれかの他方に設けられ、一対の前記係止壁の前記間隙内を前記塑性化部の伸縮に伴って前記軸方向に相対的に移動する係止体と、からなり、
前記間隙は、前記塑性化部の前記軸方向の長さの1.5〜3.5%に設定される、
請求項1に記載の制震ダンパ。 - ボルトからなる前記係止体が、一対の前記係止壁の前記間隙内に、前記軸方向に沿って複数設けられる、
請求項1又は2に記載の制震ダンパ。
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