JP4837785B1 - インジウムターゲット及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】異常放電の発生を抑えながら高いスパッタレートを維持することの可能なインジウムターゲット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、ターゲット表面の平均結晶粒径が10mm以下であり、圧延方向に平行な断面から観察した結晶粒について、圧延方向に平行方向の平均粒径に対する圧延方向に直角方向の平均粒径の比が0.1以上0.7未満であり、且つ、孔径50μm以上の空隙が1個/cm3以下であるインジウムターゲットを提供する。当該インジウムターゲットはインジウム原料を溶解鋳造後に冷間圧延することにより製造可能である。
【選択図】なし

Description

本発明はスパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、より詳細にはインジウムターゲット及びその製造方法に関する。
インジウムは、Cu−In−Ga−Se系(CIGS系)薄膜太陽電池の光吸収層形成用のスパッタリングターゲットとして使用されている。
従来、インジウムターゲットは溶解鋳造法によって主に製造されている。
特公昭63−44820号(特許文献1)にはバッキングプレートにインジウムの薄膜を形成した後、該薄膜の上にインジウムを流し込み鋳造することでバッキングプレートと一体に形成する方法が記載されている。
また、特開2010−24474号公報では、加熱された鋳型に所定量のインジウム原料を投入して溶解し、表面に浮遊する酸化インジウムを除去し、冷却してインゴットを得、得たインゴット表面を研削してインジウムターゲットを得るに際し、所定量のインジウム原料を一度に鋳型に投入せずに複数回に分けて投入し、都度生成した溶湯表面の酸化インジウムを除去し、その後、冷却して得られたインゴットを表面研削して得る方法が記載されている。
特公昭63−44820号公報 特開2010−24474号公報
しかしながら、この様な溶解鋳造法でインジウムターゲットを製造する場合、冷却速度が大きいとターゲット内部に空隙ができてしまうために、スパッタ中に異常放電が発生してしまうという問題があった。一方で、冷却速度を小さくすると、結晶粒径が大きくなって、スパッタレートが小さくなってしまうという問題があった。また、従来の溶解鋳造法で製造されたインジウムターゲットは、スパッタ面内でスパッタレートが相違したり、スパッタレートが経時変化したりするという問題もあった。
そこで、本発明は、異常放電の発生を抑えながら高いスパッタレートを維持することの可能なインジウムターゲット及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、溶解鋳造法でインジウムターゲットを凝固する際に、ターゲット表面の外周部は中央部と比較して、表面は内部と比較して、より速く冷却されるため、観察箇所によってターゲットを構成するインジウム結晶粒の粒径が有意に異なっていたことを見出した。そして、これが原因でスパッタ面内でのスパッタレートの相違や、スパッタレートの経時変化という問題が生じていたことを発見した。
そこで、インジウムターゲットを溶解鋳造後、圧延して一定程度にまで平均粒径を小さくすることでターゲットの外周部に対する中央部の結晶粒径の相違や、表面に対する内部の結晶粒径の相違が減少すると共に、圧延によって内部の空隙が押しつぶされて縮小することが分かった。そして、このようにして得られたインジウムターゲットでは異常放電の抑制及び高いスパッタレートの維持が両立できることが分かった。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、ターゲット表面の平均結晶粒径が10mm以下であり、圧延方向に平行な断面から観察した結晶粒について、圧延方向に平行方向の平均粒径に対する圧延方向に直角方向の平均粒径の比が0.1以上0.7未満であり、且つ、孔径50μm以上の空隙が1個/cm3以下のインジウムターゲットである。
本発明に係るインジウムターゲットは一実施形態において、ターゲット表面の最大結晶粒径が20mm以下である。
本発明に係るインジウムターゲットは別の一実施形態において、ターゲット表面の外周部に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面の中央部に存在する結晶の平均粒径の比が1.0〜1.8である。
本発明に係るインジウムターゲットは更に別の一実施形態において、ターゲット表面に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面と平行でターゲットの中心軸の中央点を通る切断面に存在する結晶の平均粒径の比が1.0〜1.8である。
本発明は別の一側面において、インジウム原料を溶解鋳造後に冷間圧延する工程を含むインジウムターゲットの製造方法である。
本発明に係るインジウムターゲットの製造方法は一実施形態において、インジウム原料を溶解鋳造後、ターゲット表面の平均結晶粒径が10mm以下となるまで冷間圧延する。
本発明に係るインジウムターゲットの製造方法は一実施形態において、インジウム原料を溶解鋳造時に3〜70℃/分の冷却速度で冷却し、次いで、合計50〜80%の圧下率で冷間圧延する。
本発明によれば、異常放電の発生を抑えながら高いスパッタレートを維持することの可能なインジウムターゲットが得られる。
ターゲット表面の中央部とターゲット表面の外周部を表した模式図である。 ターゲット表面とターゲット内部を表した模式図である。 断面アスペクト比を測定する際の、圧延方向に平行方向x及び圧延方向に直角方向yを示す模式図である。
本発明に係るインジウムターゲットは、ターゲット表面の平均結晶粒径が10mm以下であり、圧延方向に平行な断面から観察した結晶粒について、圧延方向に平行方向の平均粒径に対する圧延方向に直角方向(板厚方向)の平均粒径の比(以下、「断面アスペクト比」ともいう。)が0.1以上0.7未満という特徴を有する。一般に、インジウムインゴットを溶解鋳造法で作製する場合、インジウムインゴット内で空隙の発生を避けようとすると、ある程度ゆっくりした冷却速度で冷却する必要があり、この場合は平均結晶粒径は約10mm以上程度と大きくなる。このような大きな結晶粒径ではスパッタの成膜速度が小さくなってしまう。本発明ではインジウムインゴットを冷間圧延することにより、結晶構造に物理的力を加えて、すべり転位等の作用により、結晶粒径を小さくしている。また、結晶構造に加えられる物理的力が、インジウムインゴット内部にまで作用して、インジウムインゴット内部の結晶粒径をも小さくすることができる。一方、冷間圧延により結晶粒径は板厚方向に押し潰されることから、断面アスペクト比は圧延前と比べて小さくなる。
結晶粒径の調節は冷間圧延時の圧下率によって調節可能であり、圧下率を高くすればするほど結晶粒径はより小さくなり、断面アスペクト比は小さくなる。結晶粒径は小さくなればそれだけ成膜速度は大きくなるものの、ある一定以下の粒径であれば、更に粒径が小さくなっても、それによる成膜速度の増大効果は逓減してくるのに対して、粒径を小さくするための圧延回数に掛かる手間が増大してくる。そこで、インジウムターゲット表面の平均結晶粒径は好ましくは1〜6mmであり、より好ましくは1〜3mmである。また、断面アスペクト比は、好ましくは0.1〜0.6であり、より好ましくは0.1〜0.5である。
本発明において、インジウムターゲット表面の平均結晶粒径は以下の方法で測定する。ターゲットの表面を弱酸で軽くエッチングする、または、表面にカーボン粉を擦り付けて結晶粒界を見易くした後、ターゲット表面の中央部の任意の25mm×50mmの範囲及びターゲット表面の外周部の任意の25mm×50mmの範囲を合わせた領域を測定対象領域として、目視により、その領域内の結晶粒の個数(N)を数える。領域の境界に跨って存在する結晶粒は0.5個として扱う。測定対象領域の面積(S=1250mm2)を結晶粒の個数(N)で割ることによって、結晶粒の平均面積(s)を算出する。結晶粒を球と仮定して、平均結晶粒径(A)を以下の式で算出する。
A=2(s/π)1/2
本発明において、断面アスペクト比は以下の方法で測定する。切断面がターゲット10の中心軸15を通り、且つ、圧延方向に平行になるようにターゲットを板厚方向に切断する。露出した切断面16を弱酸で軽くエッチングする、または、切断面16にカーボン粉を擦り付けて結晶粒界を見易くした後、任意の20個の結晶粒を測定対象として、目視により、圧延方向に平行方向xの平均粒径(a)と、圧延方向に直角方向(板厚方向)yの平均粒径(b)を算出して、断面アスペクト比(b/a)を求める。
圧延方向に平行方向の平均粒径は、各結晶粒が取り囲むことの出来る圧延方向に平行な最も長い線分を各結晶粒における圧延方向に平行方向の粒径としたときの、測定対象となる結晶粒についての平均値である。
圧延方向に直角方向の平均粒径は、各結晶粒が取り囲むことの出来る圧延方向に直角な最も長い線分を各結晶粒における圧延方向に直角方向の粒径としたときの、測定対象となる結晶粒についての平均値である。
本発明に係るインジウムターゲットは好ましい実施形態において、最大結晶粒径が20mm以下である。ターゲット全体の平均結晶粒径に加えて最大結晶粒径を20mm以下に制御することにより、結晶粒径の分布のばらつきが少なくなることで、スパッタの成膜速度の変化が少なくなると共に、特に成膜速度の遅い領域が排除される。最大結晶粒径は好ましくは15mm以下であり、より好ましくは10mm以下であり、例えば5〜10mmである。
本発明において、インジウムターゲットの最大結晶粒径は以下の方法で測定する。
上記の平均粒径測定時の測定対象面積内の結晶粒の中で最大の結晶粒の面積(smax)について、結晶粒を球と仮定して、最大粒径(B)を以下の式で算出する。
B=2(smax/π)1/2
本発明に係るインジウムターゲットは好ましい実施形態において、ターゲット表面の外周部に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面の中央部に存在する結晶の平均粒径の比が1.0〜1.8である。一般的な溶解鋳造法では、外周部よりも冷却速度の遅い中央部の方が結晶粒径は大きくなりやすいが、本発明によれば外周部と中央部において結晶粒径の差を小さくすることができる。これにより、スパッタレートの面内均一性が向上する。その結果として、膜厚の面内均一性が向上する。当該比は好ましくは1.0〜1.6であり、より好ましくは1.0〜1.4である。
本発明において、「ターゲット表面の中央部」とは、ターゲットの表面内の領域であって、ターゲット表面の中心点を含み、ターゲットの全面積の半分の面積を占める領域であって、ターゲットの表面形状と相似の形状を有する領域と定義する。従って、例えば、半径Rの円板状ターゲットの場合、中央部とは、半径R/√2の領域を意味する。従って、本発明で「ターゲット表面の外周部」とは、ターゲットの表面内の領域であって、中央部以外の領域のことと定義する。図1は、ターゲット表面の中央部とターゲット表面の外周部を模式的に示している。
本発明において、ターゲット表面の外周部に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面の中央部に存在する結晶の平均粒径の比は以下の方法で測定する。
まず、ターゲット表面の中央部に存在する結晶の平均粒径は、以下の方法で測定する。
ターゲットの表面を弱酸で軽くエッチングする、または、表面にカーボン粉を擦り付けて結晶粒界を見易くした後、ターゲット表面の中央部の任意の25mm×50mmの範囲を測定対象領域として、目視により、その領域内の結晶粒の個数(N)を数える。領域の境界に跨って存在する結晶粒は0.5個として扱う。測定対象領域の面積(S=1250mm2)を結晶粒の個数(N)で割ることによって、結晶粒の平均面積(s)を算出する。結晶粒を球と仮定して、平均結晶粒径(A)を以下の式で算出する。
A=2(s/π)1/2
一方、ターゲット表面の外周部に存在する結晶の平均粒径は、以下の方法で測定する。
ターゲットの表面を弱酸で軽くエッチングする、または、表面にカーボン粉を擦り付けて結晶粒界を見易くした後、ターゲット表面の外周部の任意の25mm×50mmの範囲を測定対象領域として、目視により、その領域内の結晶粒の個数(N)を数える。領域の境界に跨って存在する結晶粒は0.5個として扱う。測定対象領域の面積(S=1250mm2)を結晶粒の個数(N)で割ることによって、結晶粒の平均面積(s)を算出する。結晶粒を球と仮定して、平均結晶粒径(A)を以下の式で算出する。
A=2(s/π)1/2
上記の方法で得られたターゲット表面の中央部に存在する結晶の平均粒径と、ターゲット表面の外周部に存在する結晶の平均粒径から、ターゲット表面の外周部に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面の中央部に存在する結晶の平均粒径の比は、(ターゲット表面の中央部に存在する結晶の平均粒径)/(ターゲット表面の外周部に存在する結晶の平均粒径)、で求める。
本発明に係るインジウムターゲットは好ましい実施形態において、ターゲット表面に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面と平行でターゲットの中心軸の中央点を通る切断面(以下、「ターゲット内部」ともいう。)に存在する結晶の平均粒径の比が1.0〜1.8である。一般的な溶解鋳造法では、ターゲット表面よりも冷却速度の遅い内部の方が結晶粒径は大きくなりやすいが、本発明によればターゲット表面と内部において結晶粒径の差を小さくすることができる。これにより、スパッタレートの経時変化を軽減することが可能となる。当該比は好ましくは1.0〜1.6であり、より好ましくは1.0〜1.4である。図2は、ターゲット表面とターゲット内部を模式的に示している。
本発明において、ターゲット表面に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面と平行でターゲットの中心軸の中央点を通る切断面に存在する結晶の平均粒径の比は以下の方法で測定する。
まず、インジウムターゲット表面の平均結晶粒径を先述した方法で測定する。
次に、ターゲット表面と平行でターゲットの中心軸の中央点を通る切断面に存在する結晶の平均粒径を求める。これは、当該切断面をスライサーで切り出した後、インジウムターゲット表面の平均結晶粒径を測定する方法と同様の方法で、当該切断面の平均結晶粒径を測定する。
上記の方法で得られた、ターゲット表面に存在する結晶の平均粒径と、ターゲット表面と平行でターゲットの中心軸の中央点を通る切断面に存在する結晶の平均粒径から、ターゲット表面に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面と平行でターゲットの中心軸の中央点を通る切断面に存在する結晶の平均粒径の比は、(ターゲット表面に存在する結晶の平均粒径)/(ターゲット表面と平行でターゲットの中心軸の中央点を通る切断面に存在する結晶の平均粒径)、で求める。
本発明に係るインジウムターゲットは好ましい実施形態において、孔径50μm以上の空隙が1個/cm3以下である。ターゲット内部に存在する空隙、とりわけ孔径50μm以上の大きな空隙はスパッタ中に異常放電を発生させる原因となるために極力少なくすることが望ましい。本発明によれば、溶解鋳造時に内部に存在していた空隙を冷間圧延時に押し潰すことから、空隙を小さくすることが可能となる。孔径50μm以上の空隙が1個/cm3以下である。孔径50μm以上の空隙は好ましくは0.5個/cm3以下であり、より好ましくは0.3個/cm3以下であり、例えば0〜0.3個/cm3である。
本発明において、孔径50μm以上の空隙の数は電子走査式超音波探傷器で測定する。ターゲットを上記装置の探傷器水槽内にセットして、周波数帯域1.5=20MHz、パルス繰返し周波数5KHz、スキャンスピード60mm/minで測定、得られる像イメージから、孔径50μm以上の空隙をカウントして、測定対象ターゲットの体積から空隙の個数割合を求める。ここで、孔径とは像イメージの孔を取り囲む最小円の直径で定義される。
次に、本発明に係るインジウムターゲットの製造方法の好適な例を順を追って説明する。まず、原料であるインジウムを溶解し、鋳型に流し込む。使用する原料インジウムは、不純物が含まれていると、その原料によって作製される太陽電池の変換効率が低下してしまうという理由により高い純度を有していることが望ましく、例えば、純度99.99質量%以上のインジウムを使用することができる。その後、室温まで冷却して、インジウムインゴットを形成する。
この段階で空隙が生じたり、結晶粒径が大きくても、後の冷間圧延で制御できるため大きな問題はないが、圧下率を大きくするための圧延に要する手間がかかるため溶解鋳造の段階で、空隙をある程度少なく、結晶粒径をある程度小さくしておくことが望ましい。
冷却速度は空気による自然放冷(約10℃/分)でよいが、溶解鋳造の段階でインゴット内の空隙を抑えておくことを重視する場合はできるだけゆっくり、例えば9℃/分以下、好ましくは8℃/分以下で冷却することができる。ただし、あまり遅すぎると今度は超音波振動による結晶粗大化抑制効果が十分に得られなくなることから、3℃/分以上とすることが好ましく、5℃/分以上とすることがより好ましい。一方、結晶粒径の成長を防止することを重視する場合はできるだけ速く冷却する。特に、空隙は冷間圧延でかなり縮小させることができるので、高速冷却によって微細な結晶粒を得て、高スパッタレートを得ることがターゲットの全体的な特性向上には好ましい。例えば20℃/分以上とすることができ、好ましくは50℃/分とすることができる。ただし、あまり速すぎると今度は空隙を潰すために必要な圧延加工が面倒になるので、最大でも70℃/分で冷却するのが好ましい。
冷却速度の調整は、冷却速度を小さくする場合は、鋳型をヒーター等で加熱保温することで、逆に、冷却速度を大きくする場合は、鋳型の周辺に冷却水を供給することによる水冷等の方法で行うことができる。ここでの冷却速度は、(インジウムの溶解温度−25℃)/(冷却開始後、インジウムの温度が溶解温度から25℃に低下するまでの時間)で計算される。
その後、得られたインジウムインゴットを全体の平均結晶粒径が10mm以下となるまで冷間圧延し、必要に応じて形状加工や表面研磨してインジウムターゲットとする。冷間圧延時の合計の圧下率が大きければ大きいほど、結晶粒径は微細化され、結晶粒径のばらつきは低減され、空隙は縮小し、断面アスペクト比は小さくなる。本発明に係るインジウムターゲットを製造する上では合計の圧下率は50〜80%が好ましく、60〜70%がより好ましい。
ターゲットの厚みは特に制限はなく、使用装置や使用目的に応じて適宜設定すればよいが、通常3〜20mm程度であり、典型的には5〜10mm程度である。目標とするターゲットの厚みに応じて冷間圧延前のインジウムインゴットの厚みや冷間圧延の圧下率を調節すればよい。
このようにして得られたインジウムターゲットは、CIGS系薄膜太陽電池用光吸収層用のスパッタリングターゲットとして好適に使用することができる。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
内径250mm、深さ50mmの鋳型の内部に160℃で溶解させたインジウム原料(純度5N)を流し込んだ後、室温(25℃)まで表1に記載の冷却速度で冷却して、円盤状のインジウムインゴット(直径250mm×厚み30mm)を形成した。次いで、このインゴットを表1に記載の条件で冷間圧延することで、発明例及び比較例の各インジウムターゲットを得た。
得られたインジウムターゲットを直径204mm×厚み10mmに加工して、次のA〜の特性値を先述した方法により測定した。A〜Dの測定は、ターゲット表面を表面研削と酸によるエッチングによって粒界を観察し易くした後に、目視による観察、寸法測定を行い、Eの測定には日本クラウトクレーマー株式会社製の電子走査式超音波探傷システムPA-101を使用した。結果を表1に示す。
A:部位毎の平均結晶粒径
B:ターゲット表面最大結晶粒径
C:ターゲット表面の外周部に存在する結晶の平均粒径(表1中、「表面外周」で表記)に対するターゲット表面の中央部に存在する結晶の平均粒径(表1中、「表面中央」で表記)の比
D:ターゲット表面に存在する結晶の平均粒径(表1中、「表面全体」で表記)に対するターゲット表面と平行でターゲットの中心軸の中央点を通る切断面に存在する結晶の平均粒径(表1中、「内部」で表記)の比
E:孔径50μm以上の空隙の個数割合
F:断面アスペクト比

また、これら発明例及び比較例のインジウムターゲットを、ANELVA製SPF−313Hスパッタ装置で、スパッタ開始前のチャンバー内の到達真空度圧力を1×10-4Pa、スパッタ時の圧力を0.5Pa、アルゴンスパッタガス流量を5SCCM、スパッタパワーを650Wで30分間スパッタしたときの結果を表2に示す。表2には、初期のスパッタレート及び3.3KWhrスパッタ経過後のスパッタレート、スパッタ中の異常放電の回数を示した。
スパッタレートは、成膜時間と段差計による膜厚測定の結果から算出し、異常放電の回数は目視の方法により測定した。
表1及び表2より以下のことが分かる。
比較例1は圧延しなかったことから結晶粒径が大きく、スパッタレートが遅かった。また、結晶粒の部位毎のばらつきも大きかったため、スパッタレートの経時変化も大きかった。
比較例2は圧延したものの、冷却速度が大きすぎたために十分に空隙を抑制することができなかった。そのため、異常放電の回数が多かった。
比較例3は圧延したものの、冷却速度が小さすぎたために結晶粒径が大きくなった。
発明例1〜3では、冷却速度の上昇に伴って結晶粒径は小さくなり、部位毎のばらつきも小さくなり、高いスパッタレートが維持できていることが分かる。また、冷却速度を上昇させるに従って空隙の量は若干増加するものの、異常放電は十分に抑制されていることが分かる。
Figure 0004837785
Figure 0004837785
10 インジウムターゲット
11 ターゲット表面の中央部
12 ターゲット表面の外周部
13 ターゲット表面
14 ターゲット内部

Claims (6)

  1. ターゲット表面の平均結晶粒径が10mm以下であり、圧延方向に平行な断面から観察した結晶粒について、圧延方向に平行方向の平均粒径に対する圧延方向に直角方向の平均粒径の比が0.1以上0.7未満であり、且つ、孔径50μm以上の空隙が1個/cm3以下であるインジウムターゲット。
  2. ターゲット表面の最大結晶粒径が20mm以下である請求項1に記載のインジウムターゲット。
  3. ターゲット表面の外周部に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面の中央部に存在する結晶の平均粒径の比が1.0〜1.8である請求項1又は2に記載のインジウムターゲット。
  4. ターゲット表面に存在する結晶の平均粒径に対するターゲット表面と平行でターゲットの中心軸の中央点を通る切断面に存在する結晶の平均粒径の比が1.0〜1.8である請求項1〜3の何れか一項に記載のインジウムターゲット。
  5. インジウム原料を溶解鋳造後、ターゲット表面の平均結晶粒径が10mm以下となるまで冷間圧延するインジウムターゲットの製造方法。
  6. インジウム原料を溶解鋳造時に3〜70℃/分の冷却速度で冷却し、次いで、合計50〜80%の圧下率で冷間圧延する請求項1〜4何れか一項に記載のインジウムターゲットの製造方法。
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