JP4837186B2 - 食品の含浸処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、食品の含浸処理方法に関する。詳しくは、食品に液体成分または気体成分を含浸させる、食品の含浸処理方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
食品に調味料などをしみ込ませた食品は、多く知られており、たとえば野菜、肉、魚などの食品を、調味料を含む湯中で煮る、調味料に漬け込むなどの調理方法により得られていた。
しかしながら、食品を煮る方法では、加熱によって食品が凝固もしくは軟化する場合が多く、加熱前の食品とは異なる食感となることが避けられなかった。また、食品を煮る方法では、調味料などが食品中に充分にしみ込むには長時間を要し、しかも加熱に多くの熱エネルギーを必要とするという問題があった。
【0003】
食品を煮ることによる味付け時間を短縮するものとして、調理用の素材と調味成分を収容した鍋の内部を減圧することにより、素材内部まで味を早く浸透させる、鍋減圧調理による味付け方法が提案されている(特公平7−112453号公報)。しかしながら、水分を多く含有する食品を調味液中に浸漬して減圧した場合には、食品中の水分と調味液とは浸透圧の差によって置換されるだけであるため、味付け時間の短縮は依然として不十分であった。
【0004】
また、食品を調味料などに漬け込む方法では、常温もしくは低温で食品に調味料などをしみ込ませることもできるが、食品内部まで調味料などを染み込ませるには、煮る方法よりもさらに長時間を要するという問題があった。
これらの通常の調理法以外の方法で、食品に液体をしみ込ませる方法としては、たとえば、牛肉に液体を注射し、マッサージなどの方法で組織中に分散させることが提案されている(特開平4−287665号公報)。しかしながら、この方法では、組織中に液体を均一に分散することは困難であり、また、マッサージにより組織を破壊するという問題があった。また、このような方法は、柔軟性に乏しい食品には適用できないという問題があった。
【0005】
また、漬物などの製造において、容器内部を減圧することにより、気圧差で容器内の漬物が加圧して重しをのせた状態とし、同時に漬物周囲の酸素を除去することで酸化を防ぐ方法が提案されていた(特開平6−205638号公報)。この方法は、いわゆる真空パック内で漬物を製造するものであるが、含浸効果は重しをのせた状態と同程度であり、調味量などの含浸には長期間を要するものであった。
【0006】
このため、簡便な方法により、短時間で食品に液体成分を含浸する方法の出現が強く望まれていた。
一方、食品を窒素充填パックするなど、食品の保存環境の気体を、通常の空気から他の気体に置換することは従来から行われていた。しかしながら、食品組織内部の気体もしくは液体を他の気体で置換して、食品に気体を含浸することは知られていなかった。
【0007】
本発明者は、このような状況に鑑み研究したところ、食品を減圧処理した後、液体または気体と接触させることにより、食品の組織内部に液体または気体を短時間で好適に含浸し得ることを見出した。
しかしながら食品を減圧処理すると、食品中の水分が蒸発するときの蒸発潜熱により食品の温度が急激に低下し、食品中の水分が凍結して、食品の組織を破壊することがある。また食品中の水分が凍結すると水分の蒸発速度が極端に小さくなり、食品中の水分の蒸発が充分に行われないこととなる。このように食品中の水分が凍結したり、食品中の水分の蒸発が充分に行われないと液体または気体の含浸が充分に行われないこととなる。本発明者は、このような状況に鑑みさらに研究したところ、食品を、食品中の水分が凍結しないように加温しながら減圧乾燥した後、液体または気体と接触させて液体または気体を含浸させると、食品中の水分が凍結せず、食品の組織内部に液体または気体を短時間で好適に含浸し得ることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決するためになされたものであって、簡便な方法により、乾燥処理中に食品の凍結を生じることなく、短時間で食品に液体成分または気体成分を含浸する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【発明の概要】
本発明の第一の食品の含浸処理方法は、食品を、該食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧乾燥した後、大気圧下でまたは減圧状態で、含浸する液体成分と接触させて、食品中に液体成分を含浸させることを特徴としている。このような食品の含浸処理方法においては、温度調整を、加温ガスを導入することにより行うことが好ましく、また、含浸を、食品を減圧乾燥し、減圧状態に保ちながら液体成分と接触し、次いで昇圧して行うことが好ましく、さらに、液体成分が、食品添加成分を含有することが好ましい。
【0010】
また、本発明の第二の食品の含浸処理方法は、食品を、該食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧乾燥した後、大気圧下でまたは減圧状態で、含浸する気体成分と接触させて、食品中に気体成分を含浸させることを特徴としている。このような食品の含浸処理方法では、含浸を、食品を減圧処理し、次いで含浸する気体成分で昇圧して行うことが好ましい。
これらの本発明の食品の含浸処理方法では、減圧乾燥時の圧力が、10〜100,000Paであり、かつ、食品と、含浸する液体成分または含浸する気体成分とを接触させる際の圧力が、10〜50,000Paであることが好ましく、また、含浸を、含浸する気体成分または液体成分の温度が−20〜300℃である条件で行うことが好ましく、含浸を、真空含浸装置または真空−加圧含浸装置を用いて行うことが好ましい。
【0011】
このような食品の含浸処理方法では、含浸処理中に、超音波処理を行うことが好ましく、また、含浸処理中に、マイクロ波照射処理を行うことが好ましい。
また、食品の含浸処理方法で用いられる食品は、穀物、肉、魚、卵、野菜、果物および加工食品から選ばれることが好ましい。
【0012】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の食品の含浸処理方法は、食品に、液体成分または気体成分を減圧下で含浸するものである。
本発明では、特に限定することなく、種々の食品を含浸処理することができる。たとえば、本発明で用いることのできる食品としては、葉菜、根菜、きのこなどの野菜、果物、穀物、豆、肉、魚、皮、卵、卵殻、骨、練り製品、これらの加工品、家畜用の餌などが挙げられ、このうち穀物、肉、魚、野菜、果物および加工食品から選ばれる食品が好ましく用いられる。これらの食品は、含浸処理の際に、生の状態であってもよく、適宜切断されていてもよく、粉砕されていてもよく、乾燥されていてもよく、加熱が施されていてもよく、また、冷凍されていてもよい。
【0013】
これらの食品は、一般に多くの細孔、空隙または管状組織を有しており、その内部には、水分、低揮発成分または空気が存在している。本発明では、食品の有する細孔、空隙または管状組織中に存在する水分、低揮発成分または空気と、導入する液体成分または気体成分とを物理的に置換することにより、液体成分または気体成分を食品内部に含浸することができる。
【0014】
本発明の含浸処理方法としては、食品を、該食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧乾燥し、これに液体成分を含浸させる第一の食品の含浸処理方法、および、食品を、該食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧乾燥し、これに気体成分を含浸させる第二の食品の含浸処理方法が挙げられる。
【0015】
これらの本発明の食品の含浸処理方法では、いずれも、食品を、該食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧乾燥する、減圧乾燥の工程を有する。
減圧乾燥の工程は、食品を、該食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧することにより行うことができる。
【0016】
減圧乾燥の工程は、たとえば、減圧装置内に食品を収容し、減圧装置内を通常10〜100,000Pa、温度調整を加温ガスを導入することにより行う場合には、好ましくは2,000〜100,000Pa、加温ガスの導入を行わない場合には、好ましくは10〜50,000Pa程度まで減圧することにより行うことができる。この減圧により、食品の細孔、空隙または管状組織中に存在する水分が食品の外部に排出され、食品が乾燥される。このような減圧乾燥の工程では、減圧に伴い温度の低下が生じるが、本発明ではこの工程において、減圧乾燥する食品中の水分が凍結しないように温度調整を行う。
【0017】
減圧乾燥時の食品の温度は、食品中の水分が凍結しない温度であれば特に限定されず、食品の種類によっても異なるが、0〜200℃の範囲の条件であるのが望ましい。このような減圧乾燥時の食品の温度は、たとえば、食品の生鮮状態を保って食品の含浸処理を行いたい場合などには、食品の温度が好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜40℃、特に好ましくは5〜25℃程度であるのが望ましい。また、たとえば食品の含浸処理と同時に加熱調理を行いたい場合などには、食品の温度が好ましくは0〜200℃であるのが望ましく、特に、減圧乾燥とともに加熱調理を行いたい場合には、食品の温度が好ましくは70〜200℃程度であるのが望ましい。
【0018】
このような減圧乾燥時の食品の温度は、どのような方法で調整してもよいが、たとえば、ヒーターを用いる方法、高周波加熱装置を用いる方法、減圧装置内に加温ガス(空気、不活性ガスなどの熱媒体ガス)を導入する方法などにより食品を直接または間接的に加温して、調整することができる。これらの加温方法は複数用いることができる。
【0019】
ヒーターを用いる方法では、ヒーターは減圧装置内に設置してもよく、減圧装置外部に設置し減圧装置に設けた窓を介して加熱してもよく、またヒーターにより減圧装置を加熱することにより食品を間接的に加熱することもできる。ヒーターとしては、赤外線ヒーターや電熱器などを挙げることができる。
高周波加熱装置を用いる方法では、高周波加熱装置は減圧装置内に設置される。
【0020】
減圧装置内に加温ガス(熱媒体ガス)を導入する方法では、真空度、真空引き速度、導入ガス量、導入ガス温度、導入ガス湿度などのパラメータを任意に調製することができる。ここで用いる加温ガスは、調温とともに調湿されたガスであるのが好ましく、導入前に除湿、乾燥されたガスであるのがより好ましい。加温ガスのガス成分としては、窒素、空気、不活性ガスなどが挙げられ、細菌や夾雑物などを含まないよう、滅菌、フィルター通過などを行ったガスも好ましく用いられ、また食品の酸化を防止するため、酸素含有量の低いガスも好ましく用いられる。また、減圧乾燥の工程を、減圧状態に保つために減圧装置内の気体を排出しながら、一方で加温ガスを導入して行う場合には、排出した気体中の水分を除去し、加温した後、加温ガスとして減圧装置内にリサイクル導入することも好ましい。
【0021】
本発明では、これらのうち、温度調整を加温ガスを導入することにより行う方法が、好ましく採用される。また、ヒーターあるいは高周波加熱装置などを用いて温度調整を行う場合にも、加温ガスの導入あるいはリサイクルを伴う加温ガスの導入を併せて行うと、熱効率が良いため好ましい。
本発明において、減圧乾燥の工程では、減圧装置内の温度をモニターするだけでなく、食品の温度をモニターして温度管理することが好ましい。食品の温度は、温度センサーを用い食品に接触または非接触で温度を測定する方法、減圧装置内に設置された標準液体(エチレングリコール水溶液など)の温度を測定する方法などによって測定することができる。減圧装置内の温度および食品等の温度をモニターすることにより、食品の局所的な凍結を防止することができる。また減圧装置内部の真空度、湿度などを測定することも好ましい。なお、このような減圧装置内の温度、食品温度などの監視は、後述する液体成分あるいは気体成分を含浸する工程においても同様に行うことができる。
【0022】
減圧乾燥の工程における温度管理は、たとえば、減圧装置内に加温ガスを導入する方法では、減圧装置内部の温度および食品の温度をモニターし、食品の温度が急激に下がり食品が凍結する可能性がある場合、または食品の温度が必要以上に上昇する可能性がある場合は、上記パラメータを適宜変更してそれを防ぐことができる。
【0023】
このような、減圧乾燥の工程では、圧力が低く減圧度が高いほど、食品中の水分、低揮発成分が排出されやすく、短時間で高度な減圧乾燥を行うことができるが、食品中の水分などを充分に排出するための圧力条件は、温度、食品中の水分量などによっても異なるものであり、高温度においては比較的小さい減圧度でもよく、低温度においては大きな減圧度を必要とする傾向がある。
【0024】
次に、本発明の第一の食品の含浸処理方法における含浸工程、すなわち、上述のようにして減圧乾燥した食品に、液体成分を含浸する工程について説明する。
含浸工程において食品に含浸する液体成分としては、液体、溶液、スラリー液、分散液など、含浸時に液状で取り扱い可能な成分をいずれも用いることができる。
【0025】
このような液体成分としては、例えば以下のような成分を必要に応じて液体に分散あるいは溶解して用いることができ、また、これらを単独であるいは適宜混合して用いることができる。
水、アルコール、食用油、キレート性液体などの液体;醤油、味噌などの発酵調味料;果汁、肉汁などの食品抽出成分;酒類、ジュース、茶などの飲料;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム塩化鉄などの無機塩類;ヨウ素などの必須無機元素;蔗糖、果糖、ブドウ糖、水あめ、蜂蜜、メープルシロップ、その他の天然甘味料および人口甘味料などの甘味料;各種食酢、酢酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸などの酸味料;苦味成分;胡椒、唐辛子、からし、わさび、ニンニク、生姜などの香辛料、または香辛料抽出成分;香料;油性成分;各種酵素および発酵菌;グリセリン、みりん、カゼイン、糖類などの保湿剤;ソルビン酸、安息香酸塩、タンニン、ポリフェノールなどの保存剤;殺菌剤、抗菌剤、静菌剤;木酢液、燻油などの燻製成分;天然および合成の色素および着色剤;発色剤;寒天、こんにゃく液などの食物繊維成分;にかわ、ゼラチンなどのゼラチン質;カテキン、エリソルビン酸などの酸化防止剤;ビタミン類、アミノ酸などの栄養剤;薬効成分および医療用薬剤;ポリリン酸塩などの品質改良剤;その他の食品添加物。
【0026】
また、本発明で用いることのできる液体成分は、含浸時に液体であればよく、牛脂、バター、チョコレートなどの常温で固体のものであっても、温度などの含浸条件を調整することにより液体として取り扱いの可能な原料もまた、好適に用いることができる。
これらの液体成分のうち、本発明では、調味料などの食品添加成分を含む液体成分および食用油が特に好ましく用いられる。
【0027】
本発明における液体成分の含浸は、減圧処理した後または減圧状態の食品と、液体成分とを接触させて行う。
液体成分を食品に含浸する方法としては、食品中に液体を含浸する過程で、少なくとも一度減圧がなされる方法をいずれも採用することができ、食品を減圧処理した後に大気圧下で液体成分と接触するか、または減圧状態で食品と液体成分とを接触するかのいずれかであるのがよい。このような方法としては、好ましくは、食品を減圧処理し、減圧状態に保ちながら液体成分と接触し、次いで昇圧することにより液体成分を食品に含浸する方法が挙げられる。
【0028】
また、本発明では、食品を減圧処理した後、液体成分と接触させることにより、食品中に液体成分を含浸させてもよい。たとえば、食品を減圧処理し、食品内の減圧状態が保たれているうちに速やかに液体成分と接触する態様などにおいては、減圧処理後液体成分と接触するまでに、食品が短時間常圧に晒される場合があっても差し支えない。
【0029】
食品を減圧状態に保ちながら、液体成分と接触する場合、食品と液体成分との接触は、その方法を特に限定するものではなく、減圧下で食品の含浸部位が充分に液体成分と接触されればよく、浸漬などの方法が挙げられ、たとえば、容器に入った食品を減圧装置内に収容している場合には、減圧処理による減圧状態を保持したまま、食品の入った容器に液体成分を吸入するなどの方法により行うことができる。
【0030】
液体成分を含浸させる工程において、減圧処理あるいは減圧状態とは、上述した減圧乾燥の工程における減圧の処理および減圧状態を意味してもよく、減圧乾燥の工程とは別個の減圧の処理および減圧状態を意味してもよいが、減圧乾燥の工程の後、さらに減圧処理を行い、減圧乾燥工程後よりも高度な減圧状態とすることがより好ましい。
【0031】
食品と、含浸する液体成分とを接触させる際の圧力は、大気圧よりも低い圧力であればよいが、好ましくは10〜50,000Pa、より好ましくは100〜10,000Pa、特に好ましくは、含浸する液体成分が水または水溶液の場合で1,000〜10,000Pa、含浸する液体成分が油または油溶液の場合で100〜5,000Pa程度の圧力条件であるのが望ましい。
【0032】
含浸する液体成分の温度は、液体および食品の種類などによっても異なり、特に限定されるものではないが、好ましくは−20〜300℃、より好ましくは0〜200℃の範囲の条件であるのが望ましい。このような液体成分の温度は、たとえば、食品の生鮮状態を保って食品の含浸処理を行いたい場合などには、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜40℃、特に好ましくは5〜25℃程度であるのが望ましい。また、たとえば食品の含浸処理と同時に加熱調理を行いたい場合などには、液体成分の温度は好ましくは−20〜300℃、より好ましくは0〜200℃であるのが望ましく、特に、液体成分を含浸させる工程とともに加熱調理を行いたい場合には、液体成分の温度が好ましくは70〜300℃、好ましくは70〜200℃程度であるのが望ましい。
【0033】
また、液体成分を含浸する際の食品の温度は、液体および食品の種類などによっても異なり、特に限定されるものではないが、好ましくは0〜200℃の範囲の条件であるのが望ましい。このような食品の温度は、たとえば、食品の生鮮状態を保って食品の含浸処理を行いたい場合などには、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜40℃、特に好ましくは5〜25℃程度であるのが望ましい。また、たとえば食品の含浸処理と同時に加熱調理を行いたい場合などには、食品の温度は好ましくは0〜200℃であるのが望ましく、特に、液体成分を含浸させる工程とともに加熱調理を行いたい場合には、食品の温度が好ましくは70〜200℃程度であるのが望ましい。
【0034】
このようにして減圧処理した食品を、減圧状態に保ちながら液体成分と接触した後、減圧装置内の圧力を昇圧することによって、液体成分が食品中に含浸される。昇圧は、液体成分と接触した食品の雰囲気圧力が、通常10,000Pa〜1.1MPa、好ましくは0.1MPa(大気圧)〜0.9MPa程度の圧力まで上昇する条件で行うのが望ましい。
【0035】
昇圧は、通常、エアパージなどで減圧状態を解除するなどの方法により、大気圧(0.1MPa)程度まで圧力を上昇させることにより行うことができるが、さらに加圧を行ってもよい。大気圧よりもさらに加圧を行う場合には、適宜加圧装置を用いることができる。このような加圧は、たとえば、減圧操作を行う容器に耐圧容器を採用して減圧処理した後、液体成分中に食品が浸漬された状態で、装置内に、空気、窒素ガス、炭酸ガス、不活性ガスなどの気体を導入して所望の加圧状態まで昇圧することにより行うことができる。このとき、導入する気体として水蒸気、アルコール蒸気などを用いて加圧すると、同時に加熱を行うこともできる。また、昇圧に用いる気体としては、細菌や夾雑物などを含まないよう、滅菌、フィルター通過などを行ったガスも好ましく用いられ、また食品の酸化を防止するため、酸素含有量の低いガスも好ましく用いられる。
【0036】
このような方法によれば、含浸前の食品の細孔、空隙または管状組織中に、水分、低揮発成分などの液体成分あるいは空気などの気体成分のいずれが含まれている場合であっても、含浸する液体成分と好適に置換して、含浸処理を好適に達成することができる。
次に、第二の食品の含浸処理方法における含浸工程、すなわち、上述のようにして減圧乾燥した食品に、気体成分を含浸する工程について説明する。
【0037】
含浸工程において食品に含浸する気体成分としては、たとえば、水蒸気、アルコール蒸気、揮発性物質蒸気など、液体を蒸発させた気体;香料、各種添加剤を含有する気体;酸素、二酸化炭素、エチレン、窒素、希ガス、空気などの各種気体を挙げることができ、これらを単独でまたは適宜混合して用いることができる。気体成分が、アルコール蒸気、またはアルコール蒸気を含有する気体である場合には、気体成分の含浸により、食品の殺菌あるいは制菌を行うことができるため好ましい。
【0038】
本発明における気体成分の含浸は、減圧処理した後または減圧状態の食品と、気体成分とを接触させて行う。
減圧処理した後または減圧状態の食品と、気体成分との接触は、減圧処理した後または減圧状態の食品を収容している減圧装置内で行うのが好ましく、減圧装置内に、含浸する気体成分を導入する方法がいずれも好ましく採用される。減圧装置内に含浸する気体成分を導入するには、たとえば、減圧処理後の減圧装置内に気体を直接導入してもよく、減圧処理後の減圧装置内に液体を導入して気化させてもよく、あるいは、食品と液体とを接触しない状態で減圧装置内に収容し、減圧処理することによって液体を気化させてもよい。これらの方法により、減圧処理した後または減圧状態で、食品と含浸する気体成分とを好適に接触させることができる。なお、液体を減圧で気化し、その気体と食品とを接触して含浸する場合には、用いる液体は適宜加熱されていてもよい。
【0039】
本発明では、気体成分の食品への含浸は、食品中に気体を含浸する過程で、少なくとも一度減圧がなされる方法をいずれも採用することができるが、好ましくは、食品を減圧処理し、次いで含浸する気体成分で昇圧することにより気体成分を含浸処理するのが望ましい。
気体成分を含浸させる工程において、減圧処理あるいは減圧状態とは、上述した減圧乾燥の工程における減圧の処理および減圧状態を意味してもよく、減圧乾燥の工程とは別個の減圧の処理および減圧状態を意味してもよいが、減圧乾燥の工程の後、さらに減圧処理を行い、減圧乾燥工程後よりも高度な減圧状態とすることがより好ましい。
【0040】
食品と、含浸する気体成分とを接触させる際の減圧状態の圧力は、大気圧よりも低い圧力であればよいが、好ましくは10〜50,000Pa、より好ましくは100〜10,000Pa、特に好ましくは、100〜5,000Pa程度の圧力条件であるのが望ましい。このとき、減圧装置内をあらかじめ含浸する気体成分で置換しておくのがより好ましい。この減圧処理により、食品の細孔、空隙または管状組織中に存在する、水分、低揮発成分または空気が、食品の外部に排出され、食品が有する細孔、空隙または管状組織中が食品周囲と同等の減圧状態となる。減圧処理時の圧力は、所望の含浸程度により適宜調整することができるが、圧力が低く減圧度が高いほど、食品中の水分、低揮発成分または空気が排出されやすく、高度な含浸を行うことができる。
【0041】
含浸する気体成分の温度は、気体および食品の種類などによっても異なり、特に限定されるものではないが、食品と接触する際の温度で、好ましくは−20〜200℃、より好ましくは0〜200℃の範囲の条件であるのが望ましい。このような気体成分の温度は、たとえば、食品の生鮮状態を保って食品の含浸処理を行いたい場合などには、食品と接触する際の温度で、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜40℃、特に好ましくは5〜25℃程度であるのが望ましい。また、たとえば食品の含浸処理と同時に加熱調理を行いたい場合などには、気体成分の温度は、食品と接触する際の温度で、好ましくは−20〜200℃、より好ましくは0〜200℃であるのが望ましく、特に、気体成分を含浸させる工程とともに加熱調理を行いたい場合には、気体成分の温度が好ましくは70〜200℃程度であるのが望ましい。
【0042】
また、気体成分を含浸する際の食品の温度は、気体および食品の種類などによっても異なり、特に限定されるものではないが、好ましくは0〜200℃の範囲の条件であるのが望ましい。このような食品の温度は、たとえば、食品の生鮮状態を保って食品の含浸処理を行いたい場合などには、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜40℃、特に好ましくは5〜25℃程度であるのが望ましい。また、たとえば食品の含浸処理と同時に加熱調理を行いたい場合などには、食品の温度は好ましくは0〜200℃であるのが望ましく、特に、気体成分を含浸させる工程とともに加熱調理を行いたい場合には、食品の温度が好ましくは70〜200℃程度であるのが望ましい。
【0043】
次いで、減圧処理された食品周囲を、含浸する気体成分で昇圧することによって、食品に気体成分を含浸する。この昇圧方法としては、上述したような方法で、減圧装置内で食品と接触させた気体成分を、通常100Pa〜2MPa、好ましくは10,000Pa〜1.1MPa、特に好ましくは0.1〜0.9MPa程度の圧力条件まで昇圧する方法が挙げられる。昇圧は、含浸する気体成分で、減圧装置内の圧力を大気圧程度まで上昇させることにより行うことができるが、さらに加圧を行ってもよい。
【0044】
このようにして、減圧処理した食品を、減圧状態に保ちながら気体成分と接触した後、減圧装置内の圧力を昇圧することによって、液体成分が食品中に含浸される。昇圧は、気体成分と接触した食品の雰囲気圧力が、通常10,000Pa〜1.1MPa、好ましくは0.1MPa(大気圧)〜0.9MPa程度の圧力まで上昇する条件で行うのが望ましい。
【0045】
昇圧は、上述した液体成分の含浸と同様、通常、エアパージなどで減圧状態を解除するなどの方法により、大気圧(0.1MPa)程度まで圧力を上昇させることにより行うことができるが、さらに加圧を行ってもよい。大気圧よりもさらに加圧を行う場合には、適宜加圧装置を用いることができる。このような加圧は、たとえば、減圧操作を行う容器に耐圧容器を採用して減圧処理した後、液体成分中に食品が浸漬された状態で、装置内に、空気、窒素ガス、炭酸ガス、不活性ガスなどの気体を導入して所望の加圧状態まで昇圧することにより行うことができる。このとき、導入する気体として水蒸気、アルコール蒸気などを用いて加圧すると、同時に加熱を行うこともできる。また、昇圧に用いる気体としては、細菌や夾雑物などを含まないよう、滅菌、フィルター通過などを行ったガスも好ましく用いられ、また食品の酸化を防止するため、酸素含有量の低いガスも好ましく用いられる。
【0046】
このようにして、食品に気体成分を含浸する方法は、たとえば、酸素を含浸してキムチ、漬物などの発酵を促す、窒素などの不活性ガスを含浸して、酸化などの品質劣化を防ぐ、エチレンガスを導入して発芽の抑制あるいは熟成の促進を行う、食品内部の気体と空気との置換など、種々の目的で用いることができる。
液体成分または気体成分を食品に含浸する、本発明の食品の含浸処理方法では,含浸処理中に、超音波処理などの振動を与える処理を行うこともできる。超音波処理等の振動を与える処理は、含浸処理の全工程で継続して行ってもよく、また、一部の工程で行ってもよい。減圧処理の段階でこのような処理を行うと、食品内の水分、低揮発成分または空気の排出がより円滑になされるため好ましい。また、昇圧の段階で、超音波処理などの振動を与える処理を行うと、液体成分または気体成分の含浸がより円滑になされるため好ましい。
【0047】
さらに、本発明の食品の含浸処理では、含浸を、真空含浸装置または真空−加圧含浸装置を用いて行うことが好ましい。このうち、含浸処理を真空−加圧含浸装置を用いて行うと、昇圧時に加圧を伴う場合にも、操作が簡便で円滑に処理できるためより好ましい。
さらに本発明の食品の含浸処理では、含浸処理中に加熱、保温あるいは冷却を行ってもよく、マイクロ波照射処理を行ってもよい。マイクロ波照射処理は、凍結した食品の解凍を目的として行ってもよく、減圧下に水分の蒸発潜熱を奪われることによる温度低下を避けて保温を行う目的で行ってもよく、加熱調理を目的として行ってもよく、また、殺菌を目的として行ってもよい。マイクロ波照射処理は、含浸処理の全工程で継続して行ってもよく、また、一部の工程で行ってもよい。
【0048】
さらにまた、本発明の食品の含浸処理方法では、含浸処理中に攪拌を行ってもよい。減圧条件下での攪拌は、重なり合った食品から、食品が含有する液体成分あるいは気体成分を均一に排出する目的で行ってもよく、また、液体成分あるいは気体成分を均一に含浸する目的で行ってもよい。含浸処理中に攪拌を行うと、含浸処理がより均一に施されるため好ましい。攪拌は、含浸処理の全工程で継続して行ってもよく、また、一部の工程で行ってもよい。
【0049】
このような本発明の食品の含浸処理方法においては、含浸処理を行う前に、食品に前処理を施してもよい。前処理としては、切断、冷凍、解凍、加熱、乾燥、調味、攪拌、加圧、減圧および薬品処理など、食品に施すことのできる処理をいずれも行うことができる。特に本発明を実施するに際しては、凍結した食品は、半解凍もしくは解凍して用いるのが、含浸効率がよく好ましい。
【0050】
さらにまた、本発明の食品の含浸方法においては、含浸処理を行った後に後処理を行ってもよい。後処理としては、切断、冷凍、解凍、加熱、乾燥、調味、攪拌、加圧、減圧および薬品処理など、食品に施すことのできる処理をいずれも行うことができるほか、含浸された成分のうち余分な成分を除去することもできる。たとえば、液体成分を含浸した後に、乾燥または脱水処理を行うことにより、余分な液体成分を除去することができる。
【0051】
本発明の食品の含浸処理方法では、減圧程度などの制御により、含浸の程度を制御することができ、所望の含浸程度を達成した食品を製造することができる。たとえば、中心部まで均一に含浸処理を施された食品を製造することもでき、また、表面部のみを含浸処理した食品を製造することもできる。具体的には、たとえば、食品表面の着色などの場合には、減圧処理時の減圧度を制御することにより、食品の表面のみの含浸処理を達成することもできる。
【0052】
このような含浸処理方法によれば、ごく短時間で食品に液体成分あるいは気体成分を含浸することができる。また、加熱あるいは冷却をせずに常温で含浸処理することもできるため、生鮮食品などに含浸を行った場合であっても、食感を損なわずに含浸処理を施すことができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、簡素な方法により、食品に液体成分あるいは気体成分を短時間で含浸することができる。また、食品の食感、鮮度、形状、硬度などを損なわずに含浸処理を施すこともでき、さらに、含浸処理と同時に加熱調理を行うこともできる。またさらに本発明によれば、漬物や煮物用の食材の味付けを、高速で行うことができ、工業規模での食品加工に有効な食品の含浸処理方法を提供することができる。
Claims (9)
- 食品を、該食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧乾燥した後、減圧状態で、含浸する液体成分と接触させて、その後大気圧よりもさらに水蒸気またはアルコール蒸気を用いた加圧を行い、食品中に液体成分を含浸させることを特徴とする食品の含浸処理方法。
- 液体成分が、食品添加成分を含有する、請求項1に記載の食品の含浸処理方法。
- 食品を、該食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧乾燥した後、減圧状態で、含浸する気体成分と接触させて、その後大気圧よりもさらに水蒸気またはアルコール蒸気を用いた加圧を行い、食品中に気体成分を含浸させることを特徴とする食品の含浸処理方法。
- 減圧乾燥時の圧力が、10〜100,000Paであり、かつ、食品と、含浸する液体成分または含浸する気体成分とを接触させる際の圧力が、10〜50,000Paであり、大気圧よりもさらに加圧を行う際の圧力が0.9MPa以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品の含浸処理方法。
- 含浸を、含浸する気体成分または液体成分の温度が−20〜300℃である条件で行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品の含浸処理方法。
- 含浸を、真空含浸装置または真空−加圧含浸装置を用いて行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の食品の含浸処理方法。
- 含浸処理中に、超音波処理を行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の食品の含浸処理方法。
- 含浸処理中に、マイクロ波照射処理を行う、請求項1〜7のいずれか1項に記載の食品の含浸処理方法。
- 食品が、穀物、肉、魚、卵、野菜、果物および加工食品から選ばれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の食品の含浸処理方法。
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