以下、本発明の実施形態を図1〜図12に基づき説明する。
最初に、本発明の実施形態に係るクリーニング装置を搭載した画像形成装置について、図1を用いてその構造の概略を説明する。図1は、画像形成装置の一例であるカラープリンタの概略構造を示す模型的垂直断面左側面図である。このカラープリンタは、中間転写ベルトを用いたタイプである。図1において右方がプリンタの前面側、左方が背面側である。
図1に示すように、プリンタ1の本体2の内部下方には、用紙カセット3が配置されている。用紙カセット3の内部には、用紙Pが積まれて収容されている。そして、この用紙Pは、図1において用紙カセット3の右上方に向けて送り出される。用紙カセット3は、本体2の前面側、すなわち図1において右方から水平に引き出すことが可能である。
用紙カセット3の用紙搬送方向下流には、給紙用用紙搬送路4、給紙用搬送ローラ5、レジストローラ6、及び画像形成部20が配置されている。画像形成部20には、その中心に、回転体の像担持体である感光体ドラム21が備えられている。感光体ドラム21は、図1において反時計方向に回転する。感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って順に帯電装置22、現像装置23、及びドラム用のクリーニング装置30が配置されている。
現像装置23は、その主たるところが図1において時計方向に回転する回転体であるロータリーラック23aで構成され、このロータリーラック23aに計4台の現像器が周方向に等間隔に配置されている。4台の現像器とは、ブラック用の現像器23B、シアン用の現像器23C、マゼンタ用の現像器23M、及びイエロー用の現像器23Yである。ロータリーラック23aは、図示しない駆動手段により回転せしめられ、4台の現像器を順次感光体ドラム21と対向する位置に移動させて、感光体ドラム21表面に各色のトナー像を形成させるものである。
感光体ドラム21のすぐ下方には、中間転写体を無端ベルトの形で用いた中間転写ベルト24が配置されている。中間転写ベルト24は、感光体ドラム21に下方から圧接している。中間転写ベルト24は、複数のローラに巻き掛けられて支持され、図1において時計方向に回転する。
中間転写ベルト24が用紙搬送路に懸かる箇所には、二次転写部40が配置されている。二次転写部40は、二次転写ローラ41を備えている。これら中間転写ベルト24と二次転写ローラ41とが圧接して形成されるニップに用紙Pが挿通される。なお、二次転写ローラ41は、図1において上下方向に移動可能であって、必要に応じて中間転写ベルト24に対して圧接したり、離間したりする。二次転写部40の用紙搬送方向下流には、ベルト用のクリーニング装置25が備えられている。このベルト用クリーニング装置25も、必要に応じて中間転写ベルト24に対して圧接したり、離間したりする。
画像形成部20の上方には光学部7が備えられ、ここからレーザ光Lが感光体ドラム21に向かって照射される。図中の一点鎖線がレーザ光Lを示す。
画像形成部20、及び二次転写部40の用紙搬送方向下流には、定着部8、排出用用紙搬送路9、及び用紙排出部10が配置されている。用紙排出部10は、本体2の上面に、印刷済みの用紙Pを外部から取り出し可能な位置に設けられている。
定着部8、及び二次転写部40の下方であって、用紙カセット3との間には、両面印刷用用紙搬送路11が配置されている。両面印刷用用紙搬送路11は、排出用用紙搬送路9の途中から分岐し、レジストローラ6のすぐ上流で給紙用用紙搬送路4に合流している。
上記構成のプリンタ1は、次のように印刷動作を行う。
印刷前の用紙Pは、用紙カセット3に積み重ね状態で収容され、ここから1枚ずつ分離して送り出される。送り出された用紙Pは、給紙用用紙搬送路4に進入し、給紙用搬送ローラ5により搬送されて、レジストローラ6に到達する。レジストローラ6は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、画像形成部20で中間転写ベルト24表面に形成されるカラートナー画像とのタイミングを計り、用紙Pを二次転写部40へと送り出す。
外部コンピュータ(図示せず)からの文字や図形、模様等の画像データ信号がプリンタ1に送信され、この画像データに基づき、光学部7にて制御されるレーザ光Lが照射される。これにより、画像形成部20において、感光体ドラム21表面に原稿画像の静電潜像が形成される。
次に、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のうち、まず第1色目であるブラックのトナー像を感光体ドラム表面21に形成するため、ブラック用現像器23Bが感光体ドラム21と対向するように、ロータリーラック23aが回転する。ブラック用現像器23Bは、感光体ドラム21表面の静電潜像を現像してブラックのトナー像を形成する。その後、トナー像は中間転写ベルト24表面に転写される。転写後、感光体ドラム21表面に残留したトナーは、ドラム用クリーニング装置30よって除去される。続いて、第1色目と同様の工程が、第2色目から第4色目まで繰り返され、中間転写ベルト24表面には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
上記のように、各色のトナー像が順次中間転写ベルト24に一次転写される間、二次転写部40の二次転写ローラ41及びベルト用クリーニング装置25は中間転写ベルト24から離間している。そして、4色のカラートナー像が中間転写ベルト24表面に形成されると、二次転写ローラ41は中間転写ベルト24に圧接する。カラートナー像は、レジストローラ6によって同期をとって送られてきた用紙Pに、中間転写ベルト24と二次転写ローラ41とが圧接して形成されるニップ部にて転写される。この時、二次転写ローラ41には、トナーを用紙Pに移動させるための転写バイアスが印加される。
その後、未定着カラートナー像を担持した用紙Pは、定着部8へと送られ、熱ローラ及び加圧ローラによりトナー像が定着される。定着部8から排出された用紙Pは、排出用用紙搬送路9を通って上方へ送られ、本体2の上面に設けられた用紙排出部10に排出される。
両面印刷を行う場合、定着部8から排出された用紙Pは、排出用用紙搬送路9を通って用紙排出部10に排出される直前に、その搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、両面印刷用用紙搬送路11に送られ、レジストローラ6のすぐ上流で給紙用用紙搬送路4に合流せしめられて、再度二次転写部40へと送られる。
次に、本発明の第1の実施形態に係るクリーニング装置について、その詳細な構成を、図1に加えて、図2を用いて説明する。図2は、クリーニング装置周辺を示す模型的垂直断面部分拡大図及び制御回路の概略図である。
図1、及び図2に示すように、画像形成部20には、その中心に像担持体である感光体ドラム21が備えられている。そして、感光体ドラム21の近傍には、そのクリーニング装置30が配置されている。
感光体ドラム21は、アルミニウム等により構成される導電性ローラ状基体の外側に、真空蒸着等によって無機光導電性材料であるアモルファスシリコンを設けた無機感光体で、直径が30mmである。感光体ドラム21は、図示しない駆動装置によって、その周速度が用紙搬送速度(150mm/s)と同じになるように回転せしめられている。
感光体ドラム21のクリーニング装置30は、感光体ドラム21の回転方向に沿って、一次転写ニップ部のさらに下流側に配置されている(図1参照)。クリーニング装置30は、図2に示すように、クリーニングブレード31、回転部材であるクリーニングローラ32、スクレーパ33、スクリュー34、及びハウジング35を備えている。
クリーニングブレード31は、硬度77°(JIS規格A準拠)のウレタンゴムで構成され、感光体ドラム21とほぼ同じ軸線方向長さ、厚さ2.2mmであり、感光体ドラム21に接触している。クリーニングブレード31は、感光体ドラム21に対して、接触箇所の接線との角度が26°であり、接触箇所の線圧が30N/mになるように設けられている。このクリーニングブレード31の配置方法については、後に詳述する。クリーニングブレード31は、感光体ドラム21表面に残留したトナー等の付着物を掻き取るようにクリーニングする。
クリーニングローラ32は、直径8mmの芯金の周りに、硬度55°(JIS規格A準拠)のエチレンプロピレンゴム(EPDM)を設けた形で構成され、ローラ部の直径が12mmである。クリーニングローラ32は、その軸部の両端に備えられた図示しない付勢手段により、感光体ドラム21に対して1,000gf(片側500gf)の力で押し付けられて設けられている。クリーニングローラ32は、図示しないモータ等により、感光体ドラム21との接触箇所における表面が感光体ドラム21表面と同じ方向に移動する向きに回転せしめられる。効率良くクリーニングを実施するためには、クリーニングローラ32を所定の表面速度で回転させる必要があり、クリーニングローラ32の表面速度は感光体ドラム21のそれの0.8倍である。クリーニングローラ32は、感光体ドラム21表面やクリーニングブレード31周辺のトナーを回収したり、そのトナーをスクリュー34の方に送り出したりする役目を果たす。
スクレーパ33は、厚さ0.08mmのステンレス板で構成され、クリーニングローラ32とほぼ同じ軸線方向長さを有している。そして、スクレーパ33は、クリーニングローラ32に対して接触、離間両様の姿勢をとり得るものである。スクレーパ33は、クリーニングローラ32に接触した時、クリーニングローラ32表面に付着するトナーを除去する。
スクレーパ33は、ソレノイド等で構成される駆動手段50により姿勢変更せしめられる。駆動手段50は、スクレーパ33の先端をクリーニングローラ32に対して接触姿勢に変位させたり、クリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位させたりする。そして、駆動手段50は制御手段60によって制御され、制御手段60が、クリーニング動作時のスクレーパ33の姿勢を選択する。
トナー像を中間転写ベルト24(図1参照)に転写した後、感光体ドラム21に残留したトナーは、クリーニングブレード31によって掻き取られてクリーニングローラ32に付着したり、クリーニングローラ32に直接移動したりする。クリーニングローラ32に付着したトナーは、クリーニングローラ32に接触したスクレーパ33表面を渡ってスクリュー34の方に導かれ、スクリュー34によりハウジング35の外部へと搬送される。
ここで、画像形成に使用した現像剤であるトナーについて説明する。図1で示したロータリーラック23aのブラック用現像器23Bに収容されたブラックトナーとしては不定形トナーを、カラー用現像器23C、23M、23Yに収容されたシアントナー、マゼンタトナー、及びイエロートナーとしては球形トナーを用いた。
ブラックの不定形トナーは次のような方法で製造した。まず、ポリエステル系樹脂にカーボンブラックを5重量部(ポリエステル系樹脂の重量を100とした時の重量)、及び帯電制御剤(CCA)としてニグロシンN21(オリエント化学(株)製)を混合し、2本ロール混練機にて100°Cで30分混練した。これを粗粉砕した後、衝突板方式のジェット気流粉砕機で微粉砕した。そして、空気式分級機により分級し、体積平均粒径7.8μmの粉体を得た。この粉体に疎水性シリカ粉末を1.5重量部加え、粉体混合機にて混合することにより不定形トナーを得ることができる。吸引法による帯電量は、プラス12μC/gであった。この不定形トナーの球形度を、シスメックス(株)製フロー式粒子像分析装置によって計測した結果、0.91〜0.93であった。
カラー3色の球形トナーは次のような方法で製造した。まず、スチレン80重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート20重量部、着色剤5重量部、低分子量ポリプロピレン3重量部、電荷制御剤(4級アンモニウム塩)2重量部、及びジビニルベンゼン(架橋剤)1重量部の混合溶液に、重合開始剤2重量部、及び2−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)2重量部を加えた。これを精製水400重量部に加え、さらに懸濁安定剤として第三リン酸カルシウム5重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部を加えた。そして、これを特殊機化工業(株)製乳化・分散機を用いて回転数7000rpmで20分間攪拌し、窒素雰囲気下において、70°C、100rpmで10時間重合反応させ、体積平均粒径6.4μmの球形トナーを得た。カラー3色の吸引法による帯電量は、シアンがプラス33μC/g、マゼンタプラス29μC/g、イエローがプラス32μC/gであった。これらの球形トナーの球形度を、シスメックス(株)製フロー式粒子像分析装置によって計測した結果、0.96〜0.99であった。
上記のような構成のクリーニング装置30において、クリーニングブレード31及びクリーニングローラ32の配置方法について、図3を用いて説明する。図3は、球形トナー量がクリーニング可能最小線圧に及ぼす影響を示すグラフである。
まず、不定形トナーであるブラックトナーのみの場合について、クリーニングブレード31によるクリーニング可能最小線圧を判定した。これは、感光体ドラム21全周分の隙間のない画像を現像し、その後、紙表面の、クリーニングブレード31による拭き残しを目視で判断した。紙表面に僅かでもトナーの付着を確認できたものは、クリーニング不足と判断した。その結果、クリーニングブレード31のクリーニング可能最小線圧は20N/mであった。この時、クリーニングローラ32の配置方法としては、前述のように、感光体ドラム21に対して1,000gfの力で押し付けている。
そして、図3に示すように、不定形トナーのみの場合から、徐々にカラー用の球形トナー量を増加した場合のクリーニング可能最小線圧を判定した。図3の横軸は、不定形トナー重量Wuに対する球形トナー重量Wsを示し、1.0の箇所が各々のトナー重量が同じであって、右に行くほど球形トナーの方が多くなる。縦軸は、クリーニングブレード31によるクリーニング可能最小線圧を示している。上に行くほど高い線圧が必要、すなわち上に行くほどクリーニングブレード31を強い力で感光体ドラム21に押し付ける必要があるのでクリーニング性能が悪く、下に行くほどクリーニング性能が良いことになる。
図3によると、全ての色に対する画像形成動作で、感光体ドラム21表面の近傍でクリーニングブレード31とクリーニングローラ32との間に残留する、球形トナー重量Wsと不定形トナー重量Wuとが、(Ws/Wu)<1.5なる関係を有する場合を超えると、クリーニング可能最小線圧が徐々に上昇していくのが分かる。すなわち、(Ws/Wu)<1.5の場合を超えて球形トナーが多くなると、クリーニング性能が悪くなる。
ここで、一般的には、球形トナーは転写効率が高く、感光体ドラム21表面に残留するトナー量は供給トナー量(現像トナー量)の5%以下(本実験では約4%)である。一方、不定形トナーは10〜20%(本実験では約18%)が残留する。これにより、ブラックの不定形トナーが最も少なく、カラー3色の球形トナーが最も多く残留した場合、球形トナー重量Wsと不定形トナー重量Wuとの関係は、おおよそ(Ws/Wu)=1.5となる。
したがって、本発明のクリーニング装置30のクリーニングブレード31及びクリーニングローラ32は、全ての色に対する画像形成動作で、感光体ドラム21表面の近傍でクリーニングブレード31とクリーニングローラ32との間に残留する、球形トナー重量Wsと不定形トナー重量Wuとが、(Ws/Wu)<1.5なる関係を有するように、感光体ドラム21に対して配置されている。
なお、上記実験において、感光体ドラム21に供給される現像トナー量は、不定形トナーが0.60mg/cm2、球形トナーが0.52mg/cm2であった。また、転写効率や現像条件などを変更することより、球形トナー重量Wsと不定形トナー重量Wuとの(Ws/Wu)<1.5なる関係を保持できるようにすることも可能である。
続いて、スクレーパ33の姿勢変更が、感光体ドラム21表面に残留するトナーの挙動に与える影響について、図4、及び図5を用いて説明する。図4はクリーニング装置周辺を示す模型的垂直断面部分拡大図にして、スクレーパがクリーニングローラに対して離間姿勢にある状態を示すもの、図5は同じく、スクレーパがクリーニングローラに対して接触姿勢にある状態を示すものである。
図4に示すように、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位させた場合、感光体ドラム21表面からクリーニングされた残留トナーは、クリーニングローラ32の周囲からスクリュー34の方に送り出されることはない。これにより、クリーニングブレード31によって感光体ドラム21表面から掻き取られてクリーニングローラ32上に落下したり、感光体ドラム21表面から直接クリーニングローラ32に付着したりしたトナーが、クリーニングローラ32表面に付着したままの状態が続く。したがって、残留トナーは、クリーニングローラ32表面やクリーニングブレード31との間で滞留する。
図5に示すように、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して接触姿勢に変位させた場合、クリーニングローラ32に付着した残留トナーは、スクレーパ33の表面を渡ってスクリュー34の方へと導かれる。そして、残留トナーは、スクリュー34によりハウジング35の外部へと搬送される。
次に、クリーニング装置30によるクリーニング動作について、図2、図4、及び図5に加えて、図6を用いて説明する。図6は、クリーニング時におけるクリーニング装置の制御チャート及びこれに対応した残留球形トナー量の変化を示すグラフである。
なお、図6において、感光体ドラム21は「ドラム」と記述した。スクレーパ33の姿勢変更については、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位させた場合を「離間」、接触姿勢に変位させた場合を「接触」と記述した。また、残留球形トナー量の変化は、図3に対応して「球形トナー重量Ws/不定形トナー重量Wu」で示した。感光体ドラム21表面に残留するトナー量は、各現像器やクリーニングローラ32等の駆動時における所定のタイミングで、クリーニングブレード31周辺のトナーを採取し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて計測した。
図6に示すように、感光体ドラム21に対する画像形成動作において、まず感光体ドラム21が回転し始め、続いて4台の現像器である、ブラック用現像器23B、シアン用現像器23C、マゼンタ用現像器23M、及びイエロー用現像器23Yが順次駆動して、中間転写ベルト24(図1参照)の表面にカラートナー像が形成される。
画像形成動作中、制御手段60は、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位させる(図4参照)。これにより、4色全てのトナーは、画像形成動作が終了するまでクリーニングローラ32表面やクリーニングブレード31の周辺に滞留する。不定形トナー量に対する球形トナー量は、シアン、マゼンタ、及びイエローの各カラートナーが現像されるのに従って増加し、画像形成動作終了時には最大0.69に達するが、1.5以下を保持している。
4色全ての画像形成動作が終了すると、制御手段60は、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して接触姿勢に変位させる(図5参照)。4色全てのトナーは、スクレーパ33の表面を渡ってスクリュー34の方へと導かれ、スクリュー34によりハウジング35の外部へと搬送される。このようなクリーニング動作により、球形トナーは不定形トナーとともに感光体ドラム21表面から除去される。クリーニングローラ32の回転が停止すると、スクレーパ33は、クリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位せしめられる。
次に、クリーニング装置30によるクリーニング動作を、第1の実施形態とは変化させた場合について、本発明の第2の実施形態として図2、図4、及び図5に加えて、図7を用いて説明する。図7は、クリーニング時におけるクリーニング装置の制御チャート及びこれに対応した残留球形トナー量の変化を示すグラフである。なお、この実施形態のクリーニング装置の構成は、前記第1の実施形態と同じであるので、図面の記載、及びその説明を省略するものとする。また、図7の描画方法についても図6と同様である。
図7に示すように、感光体ドラム21に対する画像形成動作において、まず感光体ドラム21が回転し始め、続いて第1色目であるブラックの現像が開始される。ブラックトナー、すなわち不定形トナーをクリーニングする時、制御手段60は、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位させる(図4参照)。これにより、3色のカラートナー、すなわち球形トナーのクリーニングが始まるまで、不定形トナーはクリーニングローラ32表面やクリーニングブレード31の周辺に滞留する。
ブラックトナーの現像が終了し、3色のカラートナーのうち第1色目であるシアンの現像が開始されると、そのクリーニングのために、制御手段60は、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して接触姿勢に変位させる(図5参照)。そして、順次マゼンタ、イエローと、球形トナーのクリーニングが続けられる。球形の各カラートナーは、不定形のブラックトナーとともに、順次スクレーパ33の表面を渡ってスクリュー34の方へと導かれ、スクリュー34によりハウジング35の外部へと搬送される。不定形トナー量に対する球形トナー量は、シアン、マゼンタ、及びイエローの各カラートナーが現像されるのに従って増加し、画像形成動作終了時には最大0.54に達するが、1.5以下を保持している。
画像形成動作が終了すると、4色全てのトナーのクリーニングも済み、球形トナーは不定形トナーとともに感光体ドラム21表面から除去される。クリーニングローラ32の回転が停止すると、スクレーパ33は、クリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位せしめられる。
次に、本発明の第3の実施形態に係るクリーニング装置について、その詳細な構成を、図1に加えて、図8を用いて説明する。図8は、感光体ドラムのクリーニング装置周辺を示す模型的垂直断面部分拡大図及び制御回路の概略図である。
図8に示すように、第3の実施形態は、前記第1、及び第2の実施形態と異なる点として、電源部70を用いて、回転部材であるクリーニングローラ32にバイアス電圧を印加できるようになっている。バイアス電圧は、トナーの帯電電位と逆極性の場合に350V、同極性の場合に900Vである。DC電圧だけでなくAC電圧を重畳させると、クリーニングローラ32周辺にトナーを滞留させたり、スクリュー34の方へ送り出したりする効率を高めることができる。したがって、特にトナーの帯電電位と同極性の場合に、画像形成動作終了時からクリーニングローラ32を停止させるまでの時間を短くすることができる。電源部70は制御装置60によって制御され、制御手段60が、クリーニング動作時のクリーニングローラ32表面の電位やその極性を切り替える。
続いて、クリーニングローラ32に印加するバイアス電圧の変更が、感光体ドラム21表面に残留するトナーの挙動に与える影響について、図9、及び図10を用いて説明する。図9はクリーニング装置周辺を示す模型的垂直断面部分拡大図にして、トナーの帯電電位と逆極性のバイアス電圧をクリーニングローラに印加した状態を示すもの、図10は同じく、トナーの帯電電位と同極性のバイアス電圧をクリーニングローラに印加した状態を示すものである。
図9に示すように、クリーニングローラ32に、トナーの帯電電位と逆極性のバイアス電圧を印加した場合、クリーニングローラ32とトナーとは互いに吸引し合うので、クリーニングブレード31によって感光体ドラム21表面から掻き取られたトナーは、クリーニングローラ32上に落下して、再び感光体ドラム21表面に付着し易くなる。また、感光体ドラム21表面から直接クリーニングローラ32に付着したトナーも、クリーニングローラ32表面から離れることはない。このようにして、感光体ドラム21表面からクリーニングされたトナーは、スクリュー34の方へ送り出されることはなく、クリーニングローラ32の周辺に滞留せしめられる作用を強く受ける。なお、この間、スクレーパ33は、クリーニングローラ32に対して離間姿勢にある。
図10に示すように、クリーニングローラ32に、トナーの帯電電位と同極性のバイアス電圧を印加した場合、クリーニングローラ32とトナーとは互いに反発し合うので、クリーニングブレード31によって感光体ドラム21表面から掻き取られたり、感光体ドラム21表面から直接クリーニングローラ32に付着したりしたトナーは、重力の作用や、クリーニングローラ32の回転に従ってスクリュー34の方に送り出され易くなる。そして、残留トナーは、スクリュー34によりハウジング35の外部へと搬送される。なお、この間、スクレーパ33は、クリーニングローラ32に対して接触姿勢にある。
次に、クリーニング装置30によるクリーニング動作について、図8〜図10に加えて、図11を用いて説明する。図11は、クリーニング時におけるクリーニング装置の制御チャート及びこれに対応した残留球形トナー量の変化を示すグラフである。なお、図11の描画方法については、前記第1の実施形態の説明の際に用いた図6の描画方法と基本的に同じであるが、クリーニングローラ32の回転制御に換えて、クリーニングローラ32へ印加するバイアス電圧の制御チャートを描画している。
図11に示すように、感光体ドラム21に対する画像形成動作において、まず感光体ドラム21が回転し始め、続いて4台の現像器である、ブラック用現像器23B、シアン用現像器23C、マゼンタ用現像器23M、及びイエロー用現像器23Yが順次駆動して、中間転写ベルト24(図1参照)の表面にカラートナー像が形成される。
画像形成動作中、制御手段60は、クリーニングローラ32に、トナーの帯電電位と逆極性のバイアス電圧を印加する(図9参照)。また、制御手段60は、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位させる。これにより、4色全てのトナーは、クリーニングローラ32に引き寄せられ、画像形成動作が終了するまでクリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺に滞留する。不定形トナー量に対する球形トナー量は、シアン、マゼンタ、及びイエローの各カラートナーが現像されるのに従って増加し、画像形成動作終了時には最大0.69に達するが、1.5以下を保持している。
4色全ての画像形成動作が終了すると、制御手段60は、クリーニングローラ32に、トナーの帯電電位と同極性のバイアス電圧を印加する(図10参照)。また、制御手段60は、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して接触姿勢に変位させる。4色全てのトナーは、クリーニングローラ32と反発し、重力の作用や、スクレーパ33表面を渡ってスクリュー34の方へと導かれ、スクリュー34によりハウジング35の外部へと搬送される。このようなクリーニング動作により、球形トナーは不定形トナーとともに感光体ドラム21表面から除去される。クリーニングローラ32の回転が停止されると、クリーニングローラ32へのバイアス電圧印加も停止され、スクレーパ33はクリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位せしめられる。
次に、クリーニング装置30によるクリーニング動作を、第3の実施形態とは変化させた場合について、本発明の第4の実施形態として図9〜図10に加えて、図12を用いて説明する。図12は、クリーニング時におけるクリーニング装置の制御チャート及びこれに対応した残留球形トナー量の変化を示すグラフである。なお、この実施形態のクリーニング装置の構成は、前記第3の実施形態と同じであるので、図面の記載、及びその説明を省略するものとする。また、図12の描画方法についても図11と同様である。
図12に示すように、感光体ドラム21に対する画像形成動作において、まず感光体ドラム21が回転し始め、続いて第1色目であるブラックの現像が開始される。ブラックのトナー、すなわち不定形トナーをクリーニングする時、制御手段60は、クリーニングローラ32に、トナーの帯電電位と逆極性のバイアス電圧を印加する(図9参照)。また、制御手段60は、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位させる。これにより、3色のカラートナー、すなわち球形トナーのクリーニングが始まるまで、不定形トナーはクリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺に滞留する。
ブラックのトナーの現像が終了し、3色のカラートナーのうち第1色目であるシアンの現像が開始されると、そのクリーニングのために、制御手段60は、クリーニングローラ32に、トナーの帯電電位と同極性のバイアス電圧を印加する(図10参照)。また、制御手段60は、スクレーパ33を、クリーニングローラ32に対して接触姿勢に変位させる。そして、順次マゼンタ、イエローと、球形トナーのクリーニングが続けられる。球形の各カラートナーは、不定形のブラックトナーとともに、順次重力の作用や、クリーニングローラ32と反発してスクレーパ33を渡ってスクリュー34の方へと送り出され、スクリュー34によりハウジング35の外部へと搬送される。不定形トナー量に対する球形トナー量は、シアン、マゼンタ、及びイエローの各カラートナーが現像されるのに従って増加し、画像形成動作終了時には最大0.54に達するが、1.5以下を保持している。
画像形成動作が終了すると、4色全てのトナーがクリーニングも済み、球形トナーは不定形トナーとともに感光体ドラム21表面から除去される。クリーニングローラ32の回転が停止されると、クリーニングローラ32へのバイアス電圧印加も停止され、スクレーパ33はクリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位せしめられる。
このようにして、複数の色毎に画像形成プロセスを繰り返す像担持体である感光体ドラム21の表面に残留するトナーのクリーニング装置30において、感光体ドラム21に接触してその表面に付着するトナーを掻き取るクリーニングブレード31と、このクリーニングブレード31の感光体ドラム21回転方向上流側に設けられ、感光体ドラム21に接触するクリーニングローラ32と、このクリーニングローラ32に対して接触、離間両様の姿勢をとり得るものであって、クリーニングローラ32に接触した時にその表面に付着するトナーを除去するスクレーパ33と、このスクレーパ33の姿勢を変更させる駆動手段50と、この駆動手段50を制御する制御手段60とを備え、前記不定形、及び球形の複数のトナーのうち不定形トナーを最初にクリーニングするものであるとともに、制御手段60が、クリーニング動作時にスクレーパ33の姿勢を変更するので、不定形トナーをクリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺に滞留させておく期間を任意に選択することができる。これにより、球形トナーのクリーニング時に、好適な量の不定形トナーを混合させてクリーニングすることが可能となる。したがって、小径で、形や大きさの揃った球形トナーを用いることによって得られる鮮明で高画質な画像を損なうことなく、感光体ドラム21表面に残留するトナーに対して好適なクリーニング性能を得ることができる。
また、制御手段60は、スクレーパ33を、感光体ドラム21に対する全ての色の画像形成動作が終了するまではクリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位させ、全ての色の画像形成動作終了時からクリーニングローラ32が停止するまでの間はクリーニングローラ32に対して接触姿勢に変位させるので、画像形成動作中に感光体ドラム21表面に残留するトナーを、全て色の画像形成動作が終了するまでクリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺に滞留させておくことができる。これにより、不定形、及び球形の複数の異なる色のトナーについて、感光体ドラム21表面に残留する不定形、及び球形の全てのトナーを同時にクリーニングすることが可能となる。したがって、不定形トナーを用いた球形トナーのクリーニング性能が高められる。
また、制御手段60は、スクレーパ33を、不定形トナーのクリーニング時はクリーニングローラ32に対して離間姿勢に変位させ、球形トナーのクリーニング時はクリーニングローラ32に対して接触姿勢に変位させるので、球形トナーのクリーニングが始まるまで、不定形トナーをクリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺に滞留させておくことができ、複数の異なる色の球形トナーをクリーニングする時、各色毎に順次球形トナーを不定形トナーとともに排出することができる。これにより、クリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺に存在する、先に現像した色の球形トナーを、後に現像した色の球形トナーをクリーニングする時にできるだけ少なくなるようにすることが可能となる。したがって、球形トナーのクリーニング性能がさらに向上する。
さらに、クリーニングローラ32にバイアス電圧を印加する電源部70を備え、制御手段60が、電源部70を制御して、クリーニング動作中にクリーニングローラ32へ印加するバイアス電圧を切り替えるので、クリーニングローラ32とトナーとが、逆極性の場合は互いに吸引し合い、同極性の場合は互いに反発し合う性質を、トナーのクリーニングに利用することができる。これにより、球形トナーのクリーニングが始まるまで、不定形トナーをクリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺に滞留させておく作用を強めることができ、他の箇所に不定形トナーが飛散するのを抑制することが可能となる。したがって、球形トナーのクリーニング時に、不定形トナーをより多く混合させてクリーニングすることが可能となる。その結果、感光体ドラム21表面に残留するトナーに対するクリーニング性能をさらに向上させることができる。
また、制御手段60は、クリーニングローラ32に、感光体ドラム21に対する全ての色の画像形成動作が終了するまではトナーと逆極性の電圧を印加し、全ての色の画像形成動作終了時からクリーニングローラ32が停止するまでの間はトナーと同極性の電圧を印加するので、画像形成動作中に感光体ドラム21表面に残留するトナーを、全ての色の画像形成動作が終了するまでクリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺に滞留し易くすることができる。これにより、感光体ドラム21表面に残留する不定形、及び球形の全てのトナーを同時にクリーニングする効果が高められ、不定形トナーを用いた球形トナーのクリーニング性能が一層向上する。
また、制御手段60は、クリーニングローラ32に、不定形トナーのクリーニング時はトナーと逆極性の電圧を印加し、球形トナーのクリーニング時はトナーと同極性の電圧を印加するので、球形トナーのクリーニングが始まるまで不定形トナーをクリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺に滞留させておく作用と、各色毎に順次球形トナーを不定形トナーとともに排出する作用とを高めることができる。これにより、先に感光体ドラム21表面で現像した色の球形トナーを、後の色の球形トナーのクリーニングを開始する前にクリーニングローラ32やクリーニングブレード31の周辺から排除する効果が高くなり、球形トナーのクリーニング性能がさらに向上する。
そして、不定形トナーがブラックトナーであり、球形トナーがブラック以外のトナーであるので、カラートナーに小径で、形や大きさの揃った球形トナーを用いることができる。これにより、より鮮明で高画質なカラー画像が得られるとともに、不定形のブラックトナーによりクリーニング性能を向上させることが可能となる。
また、全ての色に対する画像形成動作で、感光体ドラム21表面の近傍でクリーニングブレード31とクリーニングローラ32との間に残留する、球形トナー重量Wsと不定形トナー重量Wuとが、(Ws/Wu)<1.5なる関係を有するようクリーニングブレード31及びクリーニングローラ32を配置したので、鮮明で高画質な画像を形成するために球形トナーを多く使用した場合であっても、感光体ドラム21表面に残留するトナーのクリーニングに対し、好適な不定形トナーの量を保持することが可能となる。したがって、鮮明で高画質な画像が得られるのとともに、無駄に浪費される不定形トナーを抑制して、低ランニングコストで資源・環境に配慮したクリーニング装置30を得ることができる。
また本発明では、上記クリーニング装置30を画像形成装置1に搭載することとしたので、球形トナーを用いることによって得られる鮮明で高画質な画像を損なうことなく、感光体ドラム21表面に残留するトナーに対して好適なクリーニング性能を保持することが可能であって、低ランニングコストで資源・環境に配慮した高性能な画像形成装置1を得ることができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。