以下、本発明に係る配線電極構造の製造方法について、実施の形態を示して詳しく説明する。まず配線電極構造について説明する。
<配線電極構造>
図1は、本発明に係る配線電極構造を適用した化学反応装置の一実施形態を示す概略構成図であり、図2は、本実施形態に係る化学反応装置に適用される配線電極構造を示す断面構造図である。ここでは、化学反応装置として、各種機能要素のうち、吸熱触媒反応を生じる反応流路部の構成のみを示して説明する。
図1(a)〜(c)に示すように、本実施形態に係る化学反応装置は、概略、少なくとも後述する薄膜ヒータ40側の面に熱酸化処理により生成された酸化シリコンからなる熱酸化膜11が形成されたシリコン等の微小基板10と、微小基板10の一面側に所定の溝形状を有して形成された反応流路20と、該反応流路20の内壁面のうち、少なくとも一面(本実施形態においては、反応流路20の底面)に付着形成された触媒21と、反応流路20の開放端側を閉止するように微小基板10の一面側に対向して接合されたガラス基板等の閉止基板30と、微小基板10の他面側に所定の形状でパターニング形成された薄膜ヒータ40と、該薄膜ヒータ40の両端部に沿って所定の形状でパターニング形成されたヒータ配線50と、を備えて構成されている。なお、図中、54は、図示を省略したヒータ電源と電気的に接続するための電極パッドであって、例えば、ヒータ配線50の端部等の所定の位置に設けられる。
このような構成に適用されるヒータ配線(配線電極構造)50を含む断面構造の第1の例は、図2(a)に示すように、微小基板10上に、所定の発熱特性を有する薄膜ヒータ(抵抗体層)40と、高融点導電性材料からなる第1の導電性配線層51aと、低抵抗特性を有する第2の導電性配線層52aと、第1の導電性配線層と同様に、高融点導電性材料からなる第3の導電性配線層53aと、少なくとも、上記薄膜ヒータ40及び第3の導電性配線層53aの上面の所定の領域を被覆するように設けられた絶縁性の保護膜60と、が順次積層された構成を有している。ここで、第1、第2及び第3の導電性配線層51a、52a、53aが所定の配線パターン形状を有して順次積層された積層構造の配線は、本発明における積層配線を構成し、図2(a)に示した配線電極構造においては、積層配線を構成する各導電性配線層51a、52a、53aがいずれも同一のパターン幅を有する同一の配線パターン形状に設定された断面構造を有している。
また、ヒータ配線(配線電極構造)50を含む断面構造の第2の例は、図2(b)に示すように、上述した第1の例と同様に、微小基板10上に、薄膜ヒータ40と、第1の導電性配線層51bと、第2の導電性配線層52bと、第3の導電性配線層53bと、保護膜60と、が順次積層され、特に、第1の導電性配線層51bのパターン幅が、少なくとも、第3の導電性配線層53b(図では、第2及び第3の導電性配線層52b、53b)のパターン幅よりも広くなるように配線パターン形状が設定された、段差を備えた断面構造を有している。
ここで、ヒータ配線50を構成する第2の導電性配線層52a、52bは、少なくとも所定の低抵抗特性を有し、上述した化学反応装置におけるヒータ配線として、高い電気伝導効率で薄膜ヒータ40に電気エネルギーを供給することができる導電性材料、例えば、金(Au)又はその合金材料により構成されている。
また、第2の導電性配線層52a、52bは、例えば、金のように低抵抗率の材料で構成され、第1の導電性配線層51a、51bは、薄膜ヒータ40上及び基板10の表面の熱酸化膜11上に配置しており、薄膜ヒータ40及び熱酸化膜11に対して剥離や電気的特性の劣化等を生じにくく、かつ、接合性又は密着性の高い特性を有する導電性材料であるとともに、第2の導電性配線層52a、52bとの間の接合性に優れている材料であり、第3の導電性配線層53a、53bは、第2の導電性配線層52a、52b、及び、保護膜60の双方との直接的な接合に対して、剥離や電気的特性の劣化等を生じにくく、かつ、接合性又は密着性の高い特性を有する導電性材料であり、第1の導電性配線層51a、51b並びに第3の導電性配線層53a、53bは、例えば、タングステン(W)又はその合金材料等の高融点導電性により構成されている。具体的には、金又はその合金材料等(第2の導電性配線層52a、52b)、及び、酸化物又は窒化物等(薄膜ヒータ40、保護膜60)に対して密着性の向上を図ることができる成分、例えば、タングステンに、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)から選択された材料を適当な比率(Atomic比)で含有するように生成された導電性材料を良好に適用することができる。なお、本願発明者が各種比率で検討した結果、タングステンに対して、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)等から任意に選択された成分を、概ね10atomic%以下、より望ましくは、4atomic%程度で含有した導電性材料を良好に適用できることが確認された。
ここで、第1の導電性配線層51a、51b及び第3の導電性配線層53a、53bに適用される材料、並びに第2の導電性配線層52a、52bに適用される材料を表1に示す。
ヒータ配線50pに適用される第2の導電性配線層52a、52bは、低抵抗層として機能するが、この配線材料は抵抗率が低い材料であることが望ましく、表1に示すような各種導電性材料のうち、特に金(Au)のような比較的抵抗率が低く、酸化されにくく、基板中に拡散しにくい材料が望ましい。また、金よりも酸化されやすく、また、基板中に拡散しやすいが、銅を適用することも可能である。さらには、金を含有する合金や銅を含有する合金を適用してもよい。
第1の導電性配線層51a、51b並びに第3の導電性配線層53a、53bに適用されるタングステンは、基板表面の酸化膜により容易に接触面を酸化されやすく、窒化物や同じ酸化物に対し密着性に優れ、また金のような低抵抗導電性材料との密着性にも優れている。
このような材料からなる第1の導電性配線層51a、51bは、接触することにより基板10の表面の熱酸化膜11の酸素と結合して薄い酸化膜を形成することができるので、熱酸化膜11との密着性に優れ、また主成分となるタングステンの線膨張率が1.0×10−5/K未満なので、基板10の表面との線膨張率の差が小さく、第2の導電性配線層52a、52bと薄膜ヒータ40との間における、薄膜ヒータ40での温度変化による熱膨張や収縮による歪みを緩衝することができる。さらに、第1の導電性配線層51a、51b自体は金属元素のみで構成されているので、第2の導電性配線層52a、52bの金属元素との密着性にも極めて優れている。
そして、このような材料からなる第2の導電性配線層52a、52bは、延性、展性に富み、さらには、抵抗率が3.0×10−6Ω・cm未満と低抵抗なので、全体の配線抵抗を下げることができ、特に後述するようなマイクロリアクタに用いられるような微細な配線であって、かつ、迅速に高温に達するような電圧を供給することができる。
第3の導電性配線層53a、53bは、絶縁性の酸化物又は窒化物からなる保護膜60との密着性に優れており、加えて、金属元素のみで構成されているので第2の導電性配線層52a、52bの金属元素との密着性にも極めて優れている。
また、薄膜ヒータ40は、酸化物や窒化物を含み、所定の発熱特性を有する抵抗体層であって、図1(c)に示すように、上述した化学反応装置の反応流路20の形成領域に対応した所定のパターン形状を有して設けられている。ここで、薄膜ヒータ40の発熱特性は、上記ヒータ配線50を介して供給される電気エネルギー(電圧)により、微小基板10の他面側に形成された反応流路20内を流れる流体を加熱して所望の物質を生成するための吸熱触媒反応の進行に寄与する所定の熱エネルギーを発生するように設定されている。
また、保護膜60は、シリコン酸化膜(SiO 2 )や窒化シリコン(Si 3 N 4 )等からなる絶縁膜であって、例えば、図1(c)における微小基板10及び薄膜ヒータ40と、該薄膜ヒータ40上に積層されたヒータ配線50の所定の領域を被覆保護するように設けられている。なお、ヒータ配線50の端部に設けられた電極パッド54は、図示を省略したヒータ電源との電気的な接続を確保するため、保護膜60に開口部が設けられ、露出するように構成されている。
このような構成を有するヒータ配線50によれば、金やその合金材料元素等からなる金属元素のみで構成される低抵抗特性を有する第2の導電性配線層52a、52bと、酸化物又は窒化物等からなる薄膜ヒータ(抵抗体層)40又は絶縁性の保護膜60との間に、相互の材料に対して密着性の高い、タングステン又はその合金材料等の高融点導電性材料を含む第1の導電性配線層51a、51b又は第3の導電性配線層53a、53bが介挿されて、間接的に接合された積層構造を有しているので、薄膜ヒータ40又は保護膜60との剥離や電気的特性の劣化等を抑制し、接合性や密着性を向上させた信頼性の高いヒータ配線を実現することができる。
また、図2(b)に示したヒータ配線50によれば、第1の導電性配線層51bのパターン幅が、第2の導電性配線層52b及び第3の導電性配線層53bのパターン幅よりも広く構成された段差を備えた断面構造を有しているので、ヒータ配線50(第3の導電性配線層53b)の上面と薄膜ヒータ40上面又は微小基板10上面との間の急峻な段差の変化(図2(a)参照)を、パターン幅が広く形成された第1の導電性配線層51bにより緩和することができ、保護膜60のステップカバレッジ(段差被覆性)を改善して、良好な絶縁保護特性を実現することができる。
さらに、このような断面構造を有するヒータ配線50によれば、実質的に、薄膜ヒータ40への電気エネルギーの伝達に寄与する低抵抗特性を有する第2の導電性配線層52a、52bとして、金又はその合金材料を適用することができるので、図示を省略したヒータ電源から薄膜ヒータ40への電気エネルギーの伝達に際して、エネルギー損失を抑制して高いエネルギー利用効率を実現することができる。
<配線電極構造の製造方法>
次に、上述したような構成を有する配線電極構造の製造方法について、図面を参照して説明する。ここでは、上述した配線電極構造のうち、図2(b)に示した断面構造を有するヒータ配線の製造方法について説明する。なお、上述した配線電極構造と同等の構成については、同一の符号を付して説明する。
図3乃至図5は、本発明に係る配線電極構造が適用されるヒータ配線の製造方法の一例を示すプロセス断面図である。また、図6は、断面構造に段差を有していない積層配線の製造方法における問題点を示すプロセス断面図である。
本実施形態に係るヒータ配線の製造方法は、大別して、抵抗膜上に順次積層形成された第1乃至第3の導電性膜に対して、第1のレジスト膜を用いて、第3の導電性膜及び第2の導電性膜を順次エッチングするエッチング工程(便宜的に、「第1のエッチング工程」と記す)と、第2のレジスト膜を用いて、第1の導電性膜をエッチングするエッチング工程(便宜的に、「第2のエッチング工程」と記す)と、第3のレジスト膜を用いて、抵抗膜をエッチングするエッチング工程(便宜的に、「第3のエッチング工程」と記す)と、を含んでいる。
以下具体的に説明すると、まず、図3(a)に示すように、表面にシリコン等からなる微小基板10に設けられた熱酸化膜11が形成された上に、酸素ガス(O 2 )と窒素(N 2 )ガスが混合されたAr雰囲気でタンタル(Ta)、シリコン(Si)のストライプターゲットを用いたスパッタリング法等を用いて、Ta、Si、O、N元素で組成されたTa−Si−O−N系薄膜からなる抵抗膜40xを形成する。Ta−Si−O−N系薄膜では、Ta元素とSi元素のモル比Si/Taが下記の式
0.35<Si/Ta<0.6
を満たしており、より望ましくは、
0.35<Si/Ta<0.45
を満たしていればよい。そして、Ta−Si−O−N系薄膜中のO元素のmol%M1が、
25mol%≦M1≦45mol%
に設定され、薄膜中のN元素のmol%M2が、
5mol%≦M2≦15mol%
に設定されている。
この抵抗膜40xは、アモルファス構造であり、X線分校分析において発現するピーク角が37.5度以下でかつ抵抗率が4mΩ・cm以上であり、また0.5eV〜1.0eVでの光の吸収係数が70000/cm未満である。
次いで、該抵抗膜40x上に、スパッタリング法等を用いて、タングステンに対して概ね4Atomic%のチタンが含有されたタングステン・チタン合金(W−Ti)からなる第1の導電性膜51xを積層形成する。
次いで、第1の導電性膜51x上に、蒸着法やメッキ法等を用いて、金(Au)からなる第2の導電性膜52xを形成し、さらに、スパッタリング法等により、第1の導電性膜51xと同様の材料を用いてタングステン・チタン合金(W−Ti)からなる第3の導電性膜53xを積層形成する。
次いで、図3(b)に示すように、第3の導電性膜53x上の所定の位置に、フォトリソグラフィ技術を用いて、ヒータ配線50のパターン形状(第1のパターン形状)を有する第1のレジスト膜71を形成した後、図3(c)に示すように、第1のレジスト膜71をマスクとして、反応性イオンエッチング(RIE)法等を用いて、第1のレジスト膜71に被覆されていない第3の導電性膜(Ti−W)53x及び第2の導電性膜(Au)52xを連続的にエッチングする(第1のエッチング工程)。そして、第1のレジスト膜71を除去することにより、図3(d)に示すように、第1のパターン形状を有する第3の導電性配線層53b及び第2の導電性配線層52bが形成される。
次いで、フォトリソグラフィ技術を用いて、図4(a)に示すように、第3の導電性配線層53b及び第2の導電性配線層52bの形成領域(第1のパターン形状)を含み、かつ、第3の導電性配線層53b及び第2の導電性配線層52bの配線幅よりもパターン幅が広く設定された第2のパターン形状を有し、さらに、第3の導電性配線層53b及び第2の導電性配線層52bの上面及び側面を被覆する第2のレジスト膜72を形成した後、図4(b)に示すように、第2のレジスト膜72をマスクとして、反応性イオンエッチング法等を用いて、第2のレジスト膜72に被覆されていない第1の導電性膜(Ti−W)51xをエッチングする(第2のエッチング工程)。そして、第2のレジスト膜72を除去することにより、図4(c)に示すように、ヒータ配線50のパターン形状に対応し、パターン幅のみが広く設定された第2のパターン形状を有する第1の導電性配線層51b上に、ヒータ配線50のパターン形状を有する第3の導電性配線層53b及び第2の導電性配線層52bが形成された積層配線が得られる。
次いで、フォトリソグラフィ技術を用いて、図5(a)に示すように、第1、第2及び第3の導電性配線層51b、52b、53bの形成領域(第1のパターン形状、第2のパターン形状)を含む薄膜ヒータ40の所定の形成領域に設定された第3のパターン形状を有し、さらに、第1、第2及び第3の導電性配線層51b、52b、53bの側面を被覆する第3のレジスト膜73を形成した後、図5(b)に示すように、第3のレジスト膜73をマスクとして、ドライエッチング法等を用いて、第3のレジスト膜73に被覆されていない抵抗膜(Ta−Si−O−N)40xをエッチングする(第3のエッチング工程)。そして、第3のレジスト膜73を除去することにより、図5(c)に示すように、所定の形状にパターニングされた薄膜ヒータ40(抵抗体層)上に、ヒータ配線50のパターン形状を有する積層配線が形成された構成が得られる。
その後、図2(b)に示すように、スパッタリング法等を用いて、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、酸素(O)元素を含むTa−Si−O系薄膜からなる絶縁性の保護膜60を形成する。ここで、例えば、図1(c)に示したように、ヒータ配線50の端部に電極パッド54が設けられている場合には、フォトリソグラフィ技術を用いて、当該電極パッド54上の保護膜60をエッチングすることにより、電極パッド54部分が露出する開口部を形成する。
このような工程を有する製造方法によれば、第1のエッチング工程により単一のレジスト膜(第1のレジスト膜71)を用いて、積層配線を構成する第1、第2及び第3の導電性配線層51b、52b、53bのうち、第2及び第3の導電性配線層52b、53bがパターニングされ、次いで、第2のエッチング工程の際に、第2及び第3の導電性配線層52b、53bの上面及び側面を被覆するように形成されたレジスト膜(第2のレジスト膜72)を用いて、第1の導電性配線層51bがパターニングされるので、第1及び第3の導電性配線層51b、53bを、例えば、タングステンを含有する同等の合金材料により形成する場合であっても、第2のエッチング工程の際にすでに形成された第3の導電性配線層53bのオーバーエッチングを防止することができる。
すなわち、第1、第2及び第3の導電性配線層が同一のパターン幅を有する断面構造を有する積層配線であって、かつ、図6(a)〜(d)に示すように、単一のレジスト膜74を用いて、第3、第2及び第1の導電性膜53x、52x、51xを順次エッチングする製造方法を有する場合にあっては、該エッチング工程の初期の段階でパターニングされた第3の導電性配線層53bは、後続の第1の導電性膜51xをエッチングする期間中、その側面部分が常時露出した状態となり、第1及び第3の導電性配線層51b、53bが同等の導電性材料で構成されている場合には、エッチング条件が同等となるため、第3の導電性配線層53bの側面部分がオーバーエッチング(図中、破線矢印参照)される問題が生じる。
これに対して、本実施形態に係る製造方法おいては、第1の導電性膜51xをエッチングする工程において、先行するエッチング工程においてパターニングされた第2及び第3の導電性配線層52b、53bの上面及び側面をレジスト膜(第2のレジスト膜72)により被覆して、上記オーバーエッチングの発生を防止しているので、第3の導電性配線層53bのパターン幅の減少に伴う金又は金を含有する合金材料(第2の導電性配線層52b)と酸化物又は窒化物(保護膜60)との接触面積の増加を抑制することができ、積層配線の接合性や密着性の劣化を抑制することができる。
また、第1及び第2のエッチング工程において、異なるレジスト膜を用いて各導電性配線層をエッチングすることができるので、該レジスト膜のエッチング耐性が低い場合であっても、各導電性配線層を良好にパターニングすることができる。さらに、積層配線の最下層となる第1の導電性配線層のパターン幅が、上層となる第2及び第3の導電性配線層よりも広く設定されているので、第1のエッチング工程における第2及び第3の導電性配線層のフォトマスクの位置合わせを比較的容易に行うことができる。
そして、以上説明したような配線電極構造及びその製造方法により、剥離や断線、電気特性の劣化等が抑制されたヒータ配線は、各種機能要素が微小空間に集積化された化学反応装置(マイクロリアクタ)に良好に適用することができるので、化学物質や薬品等の生成装置、あるいは、近年、実用化のための研究開発が著しい燃料電池における改質器等として良好に適用することができる。
なお、上記各実施形態では、ヒータ配線50のパターニング後に薄膜ヒータ40をパターニングしたが、予め薄膜ヒータ40をパターニングしてからヒータ配線50の各層を堆積後にパターニングして、ヒータ配線50を形成してもよい。この場合、ヒータ配線50は、薄膜ヒータ40上のみならず、基板10(熱酸化膜11)上にも設けることができるので、配線の引き回し設計を容易にすることができる。また、ヒータ配線50は、下層にタングステン又はタングステン合金を含む第1の導電性配線層51a、51bを有して構成されていることにより、基板10の表面に熱酸化膜11あるいは窒化膜が形成されても親和性に優れているので、容易に剥がれることはない。
以下に、本発明に係る配線電極構造を備えた化学反応装置を、燃料電池システムの改質器として適用した場合について説明する。
図7は、本発明に係る配線電極構造を備えた化学反応装置の適用が可能な燃料電池システム300の要部構成及び燃料電池システム300より駆動されるデバイスDVCを示すブロック図であり、図8は、本発明に係る配線電極構造を備えた改質部の具体構成例を示す概略構成図である。なお、ここでは、燃料電池の例として、燃料改質方式を採用した固体高分子型の燃料電池に適用した場合について説明する。
図7に示すように、本発明に係る配線電極構造を備えた化学反応装置の適用が可能な発電モジュール100は、大別して、燃料改質方式の固体高分子型燃料電池の構成を有する発電部(燃料電池本体)110と、燃料パック210の燃料封入部190に貯蔵、封入された発電用燃料(例えば、水素を含む液体燃料、液化燃料及び気体燃料や水)FLの発電部110への供給量を制御する燃料制御部120と、発電部110への空気(酸素)の供給量を制御する空気制御部130と、燃料制御部120により供給された発電用燃料を改質して、発電用燃料に含有される水素をガス化して発電部110に供給する改質部140と、発電部110及び改質部140を必要に応じて加熱するための温度制御部150と、発電部110により生成された電力の一部若しくは全部を受けて充電するコンデンサを有する充電部160と、発電モジュール100内の発電動作、充電動作、後述する動作制御部180が充電部160の蓄電状態を検知する動作等、に必要な電力を出力する副電源部170と、発電モジュール100内の駆動動作を演算処理する動作制御部180と、を有して構成されている。
燃料制御部120は、燃料封入部190から毛細管現象等の物理的手段により送出された燃料を、動作制御部180からの指令信号にしたがって、改質部140に所定量供給するように設定されている。
空気制御部130は、燃料電池システム300外の空気を取込み、発電部110に酸素(O)又は空気を供給するように設定されている。
改質部140は、燃料パック210内のアルコール(ALCOHOL)及び水(H 2 O)から構成される燃料を燃料制御部120から受け、水素(H 2 )と副生成物の二酸化炭素(CO 2 )、さらに、微量の一酸化炭素(CO)を生成する水蒸気改質反応部140aと、次に示す一酸化炭素改質部と、を有する。一酸化炭素改質部は、水蒸気改質反応部140aから供給された一酸化炭素(CO)を燃料制御部120及び/又は発電部110から供給された水(H 2 O)と反応させ、二酸化炭素(CO 2 )及び水素(H 2 )を生成する水性シフト反応部140bと、水性シフト反応部140bで反応しきれなかった一酸化炭素(CO)を酸素(O)と反応させて二酸化炭素(CO 2 )を生成する選択酸化反応部140cのうち、少なくとも一方を備えた構成を有している。
温度制御部150は、動作制御部180からの指令信号により、水蒸気改質反応部140a、水性シフト反応部140b、選択酸化反応部140cにそれぞれ設けられたヒータ薄膜40に、上述した構成を有するヒータ配線50を介して電力を供給することで加熱させるように設定されている。また、発電部110にもヒータ薄膜40が設けられている場合にあっては、上述した構成を有するヒータ配線50を介して電力を供給するように設定されている。
発電部110は、改質部140から供給された水素(H 2 )及び空気制御部130から供給された酸素(O)により発電するように設定され、充電部160は、発電部110で発電された電力により充電されるように設定され、発電部110及び充電部160の少なくとも一方は、デバイスDVCの負荷LDに電力を供給するように設定されている。
副電源部170は、動作制御部180からの指令信号に応じて、充電部160で蓄電された電力により燃料制御部120、温度制御部150、後述する動作制御部180、そして、必要に応じて発電部110に、電力を供給するように設定されている。
動作制御部180は、充電部160で蓄電されたチャージが所定値まで小さくなることを検知するために常時駆動し、充電部160で蓄電されたチャージが所定値まで小さくなったことを検知すると、燃料制御部120、温度制御部150、必要に応じて発電部110に電力を供給するように指令信号を副電源部170に出力するとともに、燃料制御部120が必要量の燃料を供給し、かつ、温度制御部150が改質部140の反応炉を所定の時間、必要温度に達するように指令信号を出力する。
そして、発電モジュール100と着脱自在の燃料パック210は、燃料が封入された燃料封入部190と、発電部110により生成された副生成物を回収する副生成物回収部200と、を有する。
発電モジュール100及び燃料パック210で構成された燃料電池システム300は、デバイスDVCの負荷LDに駆動電力を供給することにより、コントローラCNTの制御にしたがって正常に駆動させることができる。
ここで、発電部110は、周知の固体高分子型の燃料電池本体の構成を有し、概略、白金や白金・ルテニウム等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる燃料極(カソード)と、白金等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる空気極(アノード)と、該燃料極と空気極の間に介装されたフィルム状のイオン導電膜(交換膜)と、を有して構成されている。
そして、このような構成を有する発電部110の燃料極に、改質部140を介して抽出された水素ガス(H 2 )が供給されることにより、次の化学反応式(1)に示すように、上記触媒により電子(e − )が分離した水素イオン(プロトン;H + )が発生し、イオン導電膜を介して空気極側に通過するとともに、燃料極を構成する炭素電極により電子(e − )が取り出されて負荷に供給される。
3H 2 → 6H + +6e − ・・・(1)
一方、空気極に空気制御部130を介して大気中の酸素ガス(O 2 )が供給されることにより、次の化学反応式(2)に示すように、上記触媒により負荷を経由した電子(e − )とイオン導電膜を通過した水素イオン(H + )と空気中の酸素ガス(O 2 )が反応して水(H 2 O)が生成される。
6H + +(3/2)O 2 +6e − → 3H 2 O ・・・(2)
すなわち、このような一連の電気化学反応((1)式及び(2)式)は、概ね室温〜80℃の比較的低温の環境下で進行し、電力以外の副生成物は、基本的に水(H 2 O)のみとなる。なお、上述したような電気化学反応により負荷に供給される電力(電圧・電流)は、上記化学反応式(1)及び(2)に示したように、発電部110の燃料極に供給される水素ガス(H 2 )の量に依存する。
したがって、燃料制御部120は、発電部110において、所定の電力を生成、出力するために必要な量の水素ガス(H 2 )となる分の燃料や水等を取り込んで、後述する改質部140により水素ガスに改質して、発電部110の燃料極に供給する制御を行う。なお、空気制御部130は、発電部110の空気極に供給する酸素ガス(O 2 )の量を制御する機能を有しているが、発電部110における単位時間あたりの酸素の最大消費量に相当する空気を供給可能であれば、発電部110の空気極に供給する酸素ガスの量を制御することなく、発電部110の駆動時に常時酸素ガスを供給するものであってもよく、また、別の構成として、発電部110における電気化学反応の進行状態を、燃料制御部120において調整される水素ガスの供給量のみで制御し、空気制御部130の代わりに通気孔を設け、発電部110における電気化学反応に用いられる上記最大消費量以上の空気(大気)が通気孔を介して供給されるように構成されているものであってもよい。
また、改質部140は、燃料制御部120により所定の供給量で供給される発電用燃料に対して、所定の吸熱触媒反応(水蒸気改質反応)を利用して発電用燃料に含まれる水素成分を抽出して上記発電部110に供給する機能を有するものであって、上述した実施形態に示した配線電極構造を備えた化学反応装置(図1参照)の構成を良好に適用することができる。具体的には、メタノール等の水素を含む液体燃料(アルコール類)から、吸熱触媒反応である水蒸気改質反応を利用して、水素ガス(H 2 )を生成する。ここで、現在、研究開発が行われている燃料改質方式の燃料電池に適用されている発電用燃料としては、上記発電部110により、比較的高いエネルギー変換効率で電気エネルギーを生成することができる燃料であって、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系の液体燃料や、ジメチルエーテル、イソブタン、天然ガス(CNG)等の液化ガス等の常温常圧で気化される炭化水素からなる液化燃料、あるいは、水素ガス等の気体燃料等の流体物質を良好に適用することができる。
ここで、改質部140における水素ガスの生成に利用される吸熱触媒反応の例としては、液体燃料の一例であるメタノールを適用した場合には、次の化学反応式(3)に示すような水蒸気改質反応が生じ、また、常温常圧で気体となる液化燃料の一例であるジメチルエーテルを適用した場合には、次の化学反応式(4)に示すような水蒸気改質反応が生じる。
CH 3 OH+H 2 O → 3H 2 +CO 2 ・・・(3)
CH 3 OCH 3 +3H 2 O → 6H 2 +2CO 2 ・・・(4)
なお、いずれの水蒸気改質反応においても、概ね300℃の熱条件の下で当該反応が良好に進行する。また、この改質反応により生成される水素以外の微量の生成物(主に、CO 2 )は、大気中に排出される。したがって、上述した実施形態に示したような化学反応装置(図1参照)を改質部に適用することにより、ヒータ電源からヒータ配線を介して、基板の他面側に設けられた薄膜ヒータに所定の電気エネルギーを供給して加熱し、基板の一面側に形成された反応流路(触媒)に対して、上記各化学反応式(3)、(4)に示した吸熱を伴う水蒸気改質反応の進行に寄与する所定の熱エネルギーを供給することができ、水素ガスを良好に生成することができる。
ここで、改質部140に適用される具体的な構成例は、例えば、図8(a)に示すように、シリコン等の微小基板141の一面側に、半導体製造技術等の微細加工技術を用いて、所定の溝形状及び所定の平面パターンを有するように設けられた燃料吐出部142a、水吐出部142b、燃料気化部143a、水気化部143b、混合部143c、改質反応流路144、水素ガス排気部145と、上記改質反応流路144の形成領域に対応する領域であって、微小基板141の他面側に設けられた薄膜ヒータ146(上述した薄膜ヒータ40に相当)及びヒータ配線(図示を省略)と、を備えて構成されている。
燃料吐出部142a及び水吐出部142bは、上述したような水蒸気改質反応における原料物質となる発電用燃料及び水を、例えば、所定の単位量ごとに液状粒として流路内に吐出する流体吐出機構を有している。したがって、燃料吐出部142a及び水吐出部142bにおける発電用燃料又は水の吐出量に基づいて、例えば、上記化学反応式(3)式に示した水蒸気改質反応の進行状態が制御されることになるため(詳しくは、薄膜ヒータ146から供給される熱エネルギーも密接に関連する)、燃料吐出部142a及び水吐出部142bは、燃料供給量の調整機能を担う構成を有している。
燃料気化部143a及び水気化部143bは、それぞれ発電用燃料及び水の沸点等の揮発条件に応じて加熱されるヒータであって、燃料吐出部142a及び水吐出部142bから液状粒として吐出された発電用燃料又は水を、加熱処理あるいは減圧処理等することにより気化し、混合部143cにおいて、燃料ガスと水蒸気の混合ガスを生成する。
改質反応流路144及び薄膜ヒータ146は、上述した各実施形態に示した反応流路部に相当し、上記混合部143cにおいて生成された混合ガスを改質反応流路144に導入し、改質反応流路144の内壁面に付着形成された銅-亜鉛(Cu-Zn)系の触媒(図示を省略)、及び、改質反応流路144の形成領域に対応して設けられた薄膜ヒータ146から、改質反応流路144に供給される所定の熱エネルギーに基づいて、上記化学反応式(3)、(4)に示した水蒸気改質反応を生じさせて、水素ガス(H 2 )を生成する。
水素ガス排気部145は、改質反応流路144において生成された水素ガスを排出して、上述した発電部110を構成する燃料電池の燃料極に供給する。これにより、発電部110において、上記化学反応式(1)及び(2)に基づく一連の電気化学反応が生じて、所定の電力が生成される。
温度制御部150は、改質部140及び発電部110での各反応に必要なそれぞれの熱量を供給するために、改質部140及び発電部110の各薄膜ヒータ146に電力を供給する。
そして、このような構成を有する改質部140において、微小基板に形成された反応流路等の形成領域に対応して、上述した実施形態に示した薄膜ヒータ40やヒータ配線50が、微細加工技術を用いて形成された構成を適用することができる。これにより、化学反応装置の構成の全体又は一部を微小空間に集積化することができ、例えば、日本工業規格(JIS)に則った汎用の乾電池の1つと略同一の外形形状及び外形寸法を有するように小型化することができ、既存の乾電池市場において互換可能なポータブル電源を実現することができる。
なお、上述した実施形態に示した薄膜ヒータ40及びヒータ配線50が適用される化学反応装置における第1の流体物質から第2の流体物質への変換(化学反応)は、上述したメタノール水蒸気改質反応に限定されるものではなく、少なくとも、所定の熱条件の下で生じる化学反応(吸熱反応)であれば、良好に適用することができる。また、上述した化学反応装置が適用される電源システムについても、化学反応装置により生成される所定の流体物質を発電用燃料として用いて、発電を行うことができるものであれば、上記燃料電池に限定されるものではない。したがって、化学反応装置により生成された流体物質の燃焼反応に伴う熱エネルギーによるもの(温度差発電)や、燃焼反応等に伴う圧力エネルギーを用いて発電器を回転させて電力を発生する力学的なエネルギー変換作用等によるもの(ガス燃焼タービンやロータリーエンジン、スターリングエンジン等の内燃、外燃機関発電)、また、発電用燃料FLの流体エネルギーや熱エネルギーを電磁誘導の原理等を利用して電力に変換するもの(電磁流体力学発電、熱音響効果発電等)等、種々の形態を有する発電装置に適用することができる。
また、図8(a)に示した構成においては、上記化学反応式(3)において、発電用燃料としてメタノール等と水を、別個の吐出部142a、142b及び供給経路を介して供給、気化して混合する構成を備えた化学反応装置を示したが、予めメタノール等に水が混合された発電用燃料を直接化学反応装置に供給して、水素ガスを生成する水蒸気改質反応を実行するものであってもよい。このような場合にあっては、例えば、図8(b)に示すように、改質部140の構成として、微小基板141の一面側に、単一の燃料吐出部142c及び燃料気化部143cと、上述した改質反応流路144、水素ガス排気部145からなる単一の流路を備えた構成を適用することができる。
ここで、改質部140では、上記化学反応式(3)や(4)での反応以外に極微量の一酸化炭素(CO)を生成する恐れがあるが、図7に示すように、生成された一酸化炭素を無害化するような反応部を設けてもよい。
すなわち、発電モジュール100の改質部140は、上述したように、燃料パック210内のアルコール及び水から構成される燃料を燃料制御部120から供給され、水素(H 2 )と副生成物の二酸化炭素(CO 2 )、さらに、微量の一酸化炭素(CO)を生成する水蒸気改質反応部140aに加えて、水蒸気改質反応部140aから供給された一酸化炭素(CO)を燃料制御部120及び/又は発電部110から供給された水(H 2 O)と反応させ、二酸化炭素(CO 2 )及び水素(H 2 )を生成する水性シフト反応部140b、及び、水性シフト反応部140bで反応しきれなかった一酸化炭素(CO)を酸素(O)と反応させて二酸化炭素(CO 2 )を生成する選択酸化反応部140cのうちの少なくとも一方からなる一酸化炭素改質部を備えた構成を有し、燃料パック210に封入された燃料を、改質して得られる水素(H 2 )を発電部110に供給するとともに、微量に生じる一酸化炭素(CO)を無毒化するものである。下記に示す実施形態では、一酸化炭素改質部が水性シフト反応部140b及び選択酸化反応部140cの両方を有する構成になっている。
以下、改質部140の各構成と図8に示した構成との関係について説明する。改質部140の水蒸気改質反応部140aは、図8(a)に示す構造と概略同一であり、燃料気化部143a及び水気化部143bは、薄膜ヒータ146同様に上述の三層配線及びTa−Si−O−N系薄膜からなる抵抗膜を備えている。ここで、温度制御部150により制御された電力により配線を介して上記抵抗膜が所定温度に加熱され、メタノール(CH 3 OH)及び水(H 2 O)を気化させる。
そして、水蒸気改質反応過程においては、上記気化したメタノール(CH 3 OH)及び水(H 2 O)に対して、薄膜ヒータ146で概ね300℃の温度条件の雰囲気を設定することにより、49.4kJ/mol程度の熱エネルギーを吸熱して、上述した化学反応式(3)に示すように、水素(H 2 )と微量の二酸化炭素(CO 2 )が生成される。この二酸化炭素(CO 2 )は、選択的に発電モジュール100の外側に排出される。なお、この水蒸気改質反応においては、水素(H 2 )と二酸化炭素(CO 2 )以外に副生成物として微量の一酸化炭素(CO)が生成される場合がある。
ここで、水蒸気改質反応において、副生成物として生成される一酸化炭素(CO)を除去するための水性シフト反応部140b及び選択酸化反応部140cを水蒸気改質反応部140aの後段に付設して、水性シフト反応及び選択酸化反応からなる各過程を介して、一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO 2 )及び水素(H 2 )に変換して、有害物質の排出を抑止するように構成されている。
具体的には、水性シフト反応部140bは、図8(a)に示す構造と概略同一であるが、燃料吐出部142aの代わりに水蒸気改質反応部140aで改質後の残存する一酸化炭素(CO)を微量に含む水素ガス(H 2 )を吐出する吐出部が設けられ、かつ、薄膜ヒータ146と同様に上述した三層配線及びTa−Si−O−N系薄膜からなる抵抗膜を備えている。
水性シフト反応部140bでの水性シフト反応過程において、一酸化炭素(CO)に対して水(水蒸気;H 2 O)を反応させることにより40.2kJ/mol程度の熱エネルギーを発熱して、次の化学反応式(5)に示すように、二酸化炭素(CO 2 )と水素(H 2 )が生成される。
CO+H 2 O →CO 2 +H 2 ・・・(5)
このとき発生される二酸化炭素(CO 2 )は、発電モジュール100の外側に選択的に排出される。
水性シフト反応部140bの少なくとも一方の後段に付設された選択酸化反応部140cは、水性シフト反応部140bで未反応の一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO 2 )に改質するものであり、概略図8(a)から燃料気化部143a、水気化部143bを省略し、燃料吐出部142a、水吐出部142bの代わりに、それぞれ水性シフト反応部140bからの気体を吐出する吐出部と、発電モジュール100の外側から取り込んだ空気あるいは酸素(O)を吐出する吐出部と、が設けられ、かつ、薄膜ヒータ146と同様に上述した三層配線及びTa−Si−O−N系薄膜からなる抵抗膜を備えている。
選択酸化反応過程において、水性シフト反応により二酸化炭素(CO 2 )と水素(H 2 )に変換されなかった一酸化炭素(CO)に対して酸素(O 2 )を反応させることにより283.5kJ/mol程度の熱エネルギーを発熱して、次の化学反応式(6)に示すように、二酸化炭素(CO 2 )が生成される。
CO+(1/2)O 2 →CO 2 ・・・(6)
なお、選択酸化反応部140cは、水蒸気改質反応部140aと水性シフト反応部140bとの間に設けてもよい。
上記一連の燃料改質反応により生成される水素(H 2 )以外の微量の生成物(主に、二酸化炭素(CO 2 ))は、発電モジュール100に設けられた排出孔を介して、外気に排出される。
上記各実施形態においては、第1の導電性配線層51及び第3の導電性配線層53は、いずれもに同じ材料で構成されたものを示したが、それぞれタングステン(W)に混入される材料をチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)の中から選択された材料であってかつ互いに異なるものとしてもよい。
また、上記各実施形態においては、微小基板10としてシリコンを用いたが、酸化珪素(SiO 2 )で構成されるガラス基板を適用してもよい。ガラス基板は、熱を吸収しにくい材質なので、効率よくヒータを加熱することができる。
次いで、本発明に係る電源システムに上述した各電池形状を適用した場合の発電モジュール100及び燃料パック210の装着自在及び取り外し自在構造と、電極構造との関係について、図面を参照して詳しく説明する。
(装着自在及び取り外し自在構造の一実施例)
図10(a)〜図10(d)及び図10(e)〜図10(h)は、それぞれ本発明の一実施例に係る電源システムの燃料パック及びホルダー部を上方向、前方向、横方向、後方向から見た外形形状を示す概略構成図であり、図11は、本実施例に係る電源システムにおける発電モジュール及び燃料パックの装着自在及び取り外し自在構造を示す概略図である。ここで、上述した各実施形態と同等の構成については、その説明を簡略化又は省略する。
図10(a)〜図10(d)及び図10(e)〜図10(h)に示すように、本実施例に係る電源システムは、発電用燃料が所定の条件で封入された燃料パック210と、前記燃料パック210が装着自在及び取り外し自在に構成された発電モジュール100を収容したホルダー部220と、を備えて構成されている。ここで、燃料パック210は、燃料FLを封入する透明の分解性高分子ケースであって、未使用の場合、バクテリア等の分解要因から保護するパッケージ211でケースの周囲を覆われている。そして、燃料パック210の装着時には、後述するように、燃料パック210からパッケージ211を剥がせばよい。また、燃料パック210を透明なケースで構成するとともに、図10(a)に示すように、その側面の適当な位置に指標210cを設けた構成を適用することにより、燃料パック210内に残存する発電用燃料の量(残量)を視覚的に確認することができる。
ホルダー部220は、大別して、上述した実施形態と同等の構成を有する発電モジュール100が収納され、正極端子EL(+)が設けられた発電部220aと、負極端子EL(−)が設けられた対向部220bと、発電部220aと対向部220bを連結するとともに、発電部220aと負極端子EL(−)を電気的に接続する連結部220cと、を有して構成されている。ここで、発電部220a、対向部220b及び連結部220cにより囲まれた貫通した空間SP1が、上記燃料パック210を結合した際の収納位置となる。
さらに、ホルダー部220は、対向部220bの当接部分の周囲にバネ材等の弾性を有し、中央に孔を有する凸部220dと、凸部220dの孔及び発電モジュール100の副生成物供給経路104を連結する副生成物回収経路220eと、を備えている。なお、ホルダー部220の連結部220cには、図10(e)に示すように、図10(a)に示した燃料パック210の指標210cに代えて、又は、指標210cと併設して、指標220hが刻まれた構成を適用することができる。これにより、ホルダー部220に燃料パック210を結合した際に、発電用燃料の残量がどれだけあるかを簡易かつ正確に確認することができる。この場合、連結部220cは、不透明である方が指標220hを視認しやすい。
このような構成を有する電源システムにおいて、図11(a)に示すように、指FN1及び指FN2でパッケージ211を剥がした燃料パック210を支えながら、発電部220a、対向部220b及び連結部220cにより構成される空間SP1に対して、燃料パック210の燃料供給弁210d(後述する図12参照)が設けられた燃料送出口(一端側)210aをホルダー部220に当接させて支点とし、燃料パック210の他端側210bを旋回させて押し込むことにより(図中、矢印P9)、図11(b)に示すように、前記燃料パック210の底部(他端側)210bが対向部220bに当接して、燃料パック210が空間SP1に収納される。
このとき、燃料送出経路となる燃料送出管220f(後述する図12参照)が、バネで姿勢が固定されている燃料供給弁210dを押し下げて、燃料パック210の漏出防止機能が解除されて、燃料パック210に封入された発電用燃料FLが、毛細管210f内及び燃料送出管220f内での表面張力により自動的に搬送されて発電モジュール100に供給される。
なお、図11(c)に示すように、燃料パック210をホルダー部220にセットした未使用の電源システムの周囲をバクテリア等の分解要因から保護するパッケージ230でケースの周囲全体を覆った状態で市場に流通させるようにしてもよい。この場合、デバイス等の電源として利用する際には、パッケージ230を剥がして装着すればよい。ここで、充電部160で蓄電されたチャージが所定値まで低下したことを検知するために常時駆動している動作制御部180に電力を供給するために副電源部170が出力する電力を、発電部110で生成して充電部160を介して供給しているが、このとき、発電部110から生成される二酸化炭素(CO 2 )を電源システム300の外部に放出するための孔230aがパッケージ230に設けられている。
ここで、電源システムは、燃料パック210が空間SP1に収納され、ホルダー部220に結合された状態において、例えば、上述した円柱形状の汎用の化学電池と略同等の外形形状及び寸法を有するように構成されている。また、このとき、燃料パック210が空間SP1に正常に収納された状態で、燃料パック210の燃料送出口210aが、発電部220a側の燃料送出経路に良好に当接して接続するように、燃料パック210の他端側210bを適当な力で押圧するとともに、燃料パック210がホルダー部220から不用意に脱落することを防止するために、燃料パック210の他端側210bと対向部220bの当接部分が、適当な押圧力で係合するように構成されていることが望ましい。
具体的には、図11(a)、(b)に示すように、例えば、副生成物である水等を回収するために燃料パック210の他端側210bに形成された副生成物取込弁210eが配置された凹部と、対向部220bの当接部分の周囲にバネ材等の弾性を有する凸部220dと、の間での係合機構を適用することができる。このとき、凸部220dに押し上げられることにより、副生成物取込弁210eが閉じた状態から開いた状態になるとともに、副生成物回収経路220eと連結するため、副生成物回収経路220eからの副生成物が、燃料パック210内に設けられた副生成物回収部200に回収可能となる。
これにより、上述した全体動作において説明したように、副電源部170から発電モジュール100内の動作制御部180に動作電力が供給される。また、本実施形態に係る電源システムが所定のデバイスDVCに装着されることにより、充電部160あるいは発電部110から出力された電力の一部が正極端子EL(+)及び対向部220bに設けられた負極端子EL(−)を介して、デバイスDVCに内蔵されたコントローラCNTに駆動電力(コントローラ電力)として供給される(初期動作)。
したがって、汎用の化学電池と同様に簡易に取り扱うことができ、汎用の化学電池と同一又は同等の外形形状及び寸法(ここでは、円柱形状)を有するとともに、同一又は同等の電気的特性を有する電力を供給することができる完全互換の電源システムを実現することができるので、既存の携帯機器等のデバイスに対して、汎用の化学電池と全く同様に、動作電力として適用することができる。
特に、本実施例に係る電源システムにおいて、発電モジュールとして燃料電池を備えた構成を適用し、かつ、発電部220a(発電モジュール100)に対して装着自在及び取り外し自在に構成された燃料パック210として、上述した分解性プラスチック等の材料を適用することにより、環境への影響(負担)を抑制しつつ、高いエネルギー利用効率を実現することができるので、既存の化学電池の投棄や埋め立て処理による環境問題やエネルギー利用効率の問題等を良好に解決することができる。
また、本実施例に係る電源システムによれば、燃料パック210が収納されるホルダー部220側の空間SP1が、2つの開口部を有する貫通形状を有しているので、指FN1及び指FN2で燃料パック210の対向する側面部を把持しながらホルダー部220に容易に装着することができ、また、2つの開口部の一方から燃料パック210を押すことによって、2つの開口部の他方から燃料パック210が押し出されるので、燃料パック210の取り外しを簡易かつ確実に行うことができる。
(具体的構成例)
次に、上述した各実施形態(各構成例を含む)のいずれかを適用した電源システム全体の具体構成例について、図面を参照して説明する。
図12は、本発明に係る電源システム全体の具体構成例を示す概略構成図である。ここでは、発電モジュールに設けられる副電源部170が、充電部160で蓄電されたチャージにより充電され、発電部110の燃料セルとして燃料改質方式の燃料電池が適用されているものとする。また、上述した各実施形態及び各構成例を適宜参照し、同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化する。
図12に示すように、本具体構成例に係る電源システム300は、発電モジュール100と燃料パック210が装着自在及び取り外し自在に構成され、全体として円柱形状からなる外形形状を有している。また、これらの構成(特に、発電モジュール100)が、マイクロマシン製造技術等を用いて微小空間に構成され、汎用の化学電池と同等の外形寸法を有するように構成されている。
発電モジュール100は、概略、円柱形状の円周側面に沿って延在する発電部110と、円柱状の発電モジュール100内部に、深さ及び幅がそれぞれ500μm以下の燃料流路及び流路内の空間を所定温度に設定するヒータが形成された水蒸気改質反応部(水蒸気改質反応炉)140aと、深さ及び幅がそれぞれ500μm以下の燃料流路及び流路内の空間を所定温度に設定するヒータが形成された水性シフト反応部(水性シフト反応炉)140bと、深さ及び幅がそれぞれ500μm以下の燃料流路及び流路内の空間を所定温度に設定するヒータが形成された選択酸化反応部(選択酸化反応炉)140cと、発電モジュール100内部にマイクロチップ化されて収納された動作制御部180と、発電モジュール100の円柱側面から上記発電部110の空気極まで貫通し、外部の空気を取り入れる複数の通気孔(スリット)130aと、上記空気極側において生成される副生成物(水等)を液化(凝縮)して分離回収する分離回収部102と、回収した副生成物の一部を水蒸気改質反応部140aに供給する副生成物供給経路220eと、円柱上面から上記発電部110の空気極まで貫通し、少なくとも、発電部の燃料極側や水蒸気改質反応部140a、水性シフト反応部140b、選択酸化反応部140cにおいて生成され、非回収物質である副生成物(二酸化炭素等)を発電モジュールの外部に排出する排出孔106と、記載はないが副電源部170と、を備えて構成されている。
水蒸気改質反応部140a及び水性シフト反応部140bは、反応に必要な水として、副生成物供給経路104を介して供給される発電部110で生成された水及び燃料パック210内の燃料FL内の水の少なくとも一方を利用する。また水蒸気改質反応部140a、水性シフト反応部140b及び選択酸化反応部140c内で各反応により生じた二酸化炭素は、排出孔106を介して発電モジュール100の外部に排出される。
燃料パック210は、発電部110に供給される発電用燃料FLが充填、封入される燃料封入部190と、上記分離回収部102により回収された副生成物(水)を固定的に保持する副生成物回収部200と、発電モジュール100との境界にあって、発電用燃料FLの漏出を防止する燃料供給弁210d(燃料漏出防止手段)と、回収保持された副生成物(回収物)の漏出を防止する副生成物取込弁210e(回収物漏出防止手段)と、を有して構成されている。ここで、燃料パック210は、上述したような分解性プラスチックにより形成されている。
このような構成を有する燃料パック210を発電モジュール100と結合すると、燃料送出管220fがバネで姿勢が固定されている燃料供給弁210dを押し下げて燃料パック210の漏出防止機能が解除され、燃料パック210に封入された発電用燃料FLが毛細管210f内及び燃料送出管220f内での表面張力により発電モジュール100まで自動的に搬送される。また、燃料パック210を発電モジュール100から外すと、燃料供給弁210dがバネの復元力で元の閉じた状態になって、発電用燃料FLが漏れないようになる。