JP4147803B2 - 化学反応装置及び電源システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学反応装置及び電源システムに関し、特に、微小基板に形成された反応流路における吸熱触媒反応により、水素ガス等の所望の流体物質の生成が可能な化学反応装置、及び、該化学反応装置を燃料電池等における燃料供給部に適用した電源システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、化学反応工学の分野においては、流体化された混合物質を反応流路(チャネル)内に設けられた触媒による化学反応(触媒反応)により、所望の流体物質を生成する化学反応装置(「流路反応器」、又は、「チャネルリアクタ」ともいう)が知られている。
【0003】
近年、このような化学反応装置の技術分野に、集積回路等の半導体デバイス製造技術で蓄積された微細加工技術(マイクロテクノロジー)をはじめとする、いわゆる、マイクロマシン製造技術を適用して、例えば、単一のシリコンチップ上の微小空間にミリメートルオーダー又はミクロンオーダーの混合器や反応流路、分析器等の各種機能要素を集積化したマイクロリアクタ(又は、「マイクロチャネルリアクタ」ともいう)の研究開発が活発に行われている。
【0004】
ここで、マイクロリアクタにおける主要な構成である反応流路部について、図9を参照して簡単に説明する。
マイクロリアクタの反応流路部は、概略、図9(a)、(b)、(c)に示すように、シリコン等の微小な主基板10pの一面側にフォトエッチング技術等を用いて、例えば、ミクロンオーダーの幅及び深さを有する溝部からなる反応流路(マイクロチャネル)20pを形成し、該反応流路20pの内壁面(側壁面あるいは底面等)に図示を省略した所定の触媒を付着形成した後、該主基板10pの一面側に、上記反応流路20pの開放部(上記溝部の開口端)を閉止するようにガラス等の閉止基板30pを接合した構成を有している。
【0005】
特に、マイクロリアクタにおける化学反応(触媒反応)が所定の熱条件による吸熱反応を伴う場合には、化学反応時に反応流路20p(詳しくは、触媒)に所定の熱量(熱エネルギー)を供給するために、図9(b)、(c)に示すように、閉止基板30pの他面側(主基板10との接合側とは反対側)に、上記反応流路20pの形状(流路形状)と一致又は近似する形状を有して形成された発熱抵抗体等からなる薄膜ヒータ40pを備えた構成が適用される。
【0006】
なお、図9(a)、(c)においては、反応流路20p及び薄膜ヒータ40pの形状を明確にするために、便宜的にハッチングを施して示した。また、図9においては、化学反応装置の側部に反応流路20pへの流体物質の導入部20a及び排出部20bを設けた構成を示したが、主基板10p又は閉止基板30pに対して垂直方向(すなわち、図9(a)、(c)において、紙面に垂直方向)に上記導入部20a及び排出部20bが設けられた構成であってもよい。
【0007】
このような構成を有するマイクロリアクタにおいて、例えば、メタノールと水からなる原料物質を気化した流体物質(混合ガス)を上記反応流路20pの導入部20a側から導入するとともに、図示を省略したヒータ電源により薄膜ヒータ40pに所定の電圧を印加して加熱し、反応流路20pが所定の温度となるように熱エネルギーを供給することにより、反応流路20p内に付着形成された触媒による吸熱触媒反応が生じて水素ガスと少量の二酸化炭素等が生成され(メタノール水蒸気改質反応)、反応流路20pの排出部20bから排出される。なお、メタノール等のアルコール系原料から上述したような水蒸気改質反応により水素ガスを生成する技術は、近年、実用化に向けての研究開発が目覚ましい燃料改質型の燃料電池における燃料(水素)供給装置にも適用される技術である。
【0008】
そして、このようなマイクロリアクタにおいては、反応流路の構成を微細化することにより、次に示すような種々の特徴を有している。
(1)反応流路の構成を微細化することにより、反応流路における反応容積が小さくなるので、反応流路とヒータとの間の表面積と反応流路の体積の比(表面積/体積比)が高くなり、触媒反応時の熱伝導特性(伝熱特性)が向上して、上述したような化学反応の反応効率が改善されるという利点がある。
【0009】
(2)また、反応流路の構成を微細化することにより、反応流路の径(断面形状のサイズ)が小さくなり、混合物質を構成する反応分子の拡散混合時間が短くなるので、反応流路内における触媒反応の進行速度(反応速度)が向上するという利点がある。
(3)さらに、マイクロリアクタの装置構成自体が小型化されるので、大型炉を製造するときに適用されるような、小型実験炉での検証結果に合わせた段階的なスケールアップ(装置規模の大型化や流体物質の生成能力の向上)に伴う煩雑な反応工学的な検討が不要になるという利点がある。
なお、マイクロリアクタの具体的な構成例については、後述する発明の実施の形態の記載において詳しく説明する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなマイクロリアクタにおいては、次に示すような問題を有している。
(ア)すなわち、従来技術におけるマイクロリアクタ(上述した反応流路部)の製造プロセスは、まず、図10(a)に示すように、主基板10pとなる基板材料の一面側に所定の断面形状及び流路形状を有する溝部(反応流路20p)を形成した後、該溝部の内壁面(側壁面あるいは底面)に所定の触媒層を形成する。一方、この主基板10p側の流路形成工程とは独立して、図10(b)に示すように、閉止基板30pとなる基板材料の一面側に、上記溝部の流路形状に一致又は近似する平面形状(図10(c)参照)を有するように薄膜ヒータ40pを形成する。そして、図10(c)に示すように、これらの主基板10pに形成された上記溝部(反応流路20p)と閉止基板30pに形成された薄膜ヒータ40pの位置が正確に対応するように、主基板10p及び閉止基板30pの位置合わせを行い、主基板10pの一面側と閉止基板30pの他面側を接合する(貼り合わせる)手順が採用されている。
【0011】
ここで、上述したマイクロリアクタのように、微小基板にミクロンオーダーで溝部(反応流路20p)や薄膜ヒータ40pが形成された構成においては、上記基板接合工程における位置合わせ精度が、マイクロリアクタの反応特性等に大きく影響を与える。そのため、基板相互を極めて高い精度で位置合わせする必要があり、基板接合工程における作業が繁雑かつ手間のかかるものとなったり、高精度の製造機器を必要とし、信頼性の低下や製品コストの上昇を招くという問題を有していた。
【0012】
(イ)また、図9、図10に示したように、主基板10pと閉止基板30pの接合構造において、両者の接合性や密着性が良好でない場合、反応流路20pを流下する流体物質(混合ガス、水素ガス等)の漏洩を生じたり、薄膜ヒータ40pからの熱エネルギーを供給した場合に、上記基板相互の熱膨張率の違いにより、接合された基板相互の剥離や破損等が発生して、マイクロリアクタの反応特性の劣化や動作不良、周辺機器への汚染等を生じ、製品品質や信頼性の低下を招くという問題も有していた。
【0013】
(ウ)さらに、上述したようなマイクロリアクタにおいて、薄膜ヒータから反応流路(触媒)への熱エネルギーの伝達効率(熱伝導特性)を向上させ、反応流路内での吸熱触媒反応の反応効率を向上させるために、例えば、反応流路内に薄膜ヒータが露出するような構成を適用した場合、本願発明者による検証によれば、上記吸熱触媒反応(水蒸気改質反応)により生成される流体物質(特に、水素ガス)が、薄膜ヒータを構成する金属や比較的密度の低い酸化物材料、窒化物材料等のヒータ材料に侵入して膜質の劣化を生じ、薄膜ヒータ本来の発熱特性が得られなくなり、反応流路内での反応効率が低下するという問題を有していることが判明した。
【0014】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、微小空間に反応流路や薄膜ヒータ等の機能要素が集積化された化学反応装置において、高精度の位置合わせ等の作業工程を必要とすることなく、かつ、基板相互が良好に接合された構成を有するとともに、反応流路内での反応効率の向上を図ることができる化学反応装置、及び、該化学反応装置を燃料供給部等に適用した電源システムを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る化学反応装置は、少なくとも一つの反応領域を備え、該反応領域において連続的に形成された反応流路を有し、該反応流路内で第1の流体物質を水素を含む第2の流体物質に変換する化学反応を生じる化学反応装置において、前記反応領域において、前記反応流路の流路形状の全域を含む領域に対応して平面形状を有して形成され、前記反応流路に少なくとも一部が露出して該反応流路に所定の熱量を供給する、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、酸素(O)、窒素(N)からなる化合物の薄膜層により構成され、前記化合物の密度が、7.0×1022/cm以上に設定された発熱抵抗体からなる温度調整層を備えたことを特徴としている。請求項2記載の化学反応装置は、請求項1記載の化学反応装置において、前記化学反応装置は、前記反応領域を複数有し、該各反応領域において互いに異なる化学反応を生じ、前記反応流路は少なくとも前記各反応領域毎に形成されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3記載の化学反応装置は、請求項1又は2記載の化学反応装置において、前記反応領域に対応して、一面側に前記反応流路が溝状に形成された第1の基板と、前記反応領域に対応して、一面側に前記温度調整層が前記反応流路領域に対応して形成された第2の基板と、を備え、前記第1の基板の一面側と前記第2の基板の一面側が対向して、前記反応流路の溝部開口端が閉止され、前記反応流路内に前記温度調整層の一部が露出するように接合されていることを特徴としている。
【0017】
請求項記載の化学反応装置は、請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置において、前記化学反応装置は、少なくとも、前記第1の基板及び第2の基板が微小基板からなり、前記反応流路がミクロンオーダーの微細化された流路形状を有して形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項記載の化学反応装置は、請求項1記載の化学反応装置において、前記温度調整層は、前記化合物における酸素及び窒素の合計含有率が、56%以下の任意の数値に設定されていることを特徴としている。
【0019】
請求項記載の化学反応装置は、請求項記載の化学反応装置において、前記温度調整層は、前記化合物における酸素及び窒素の合計含有率が、35%乃至56%の範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴としている。請求項記載の化学反応装置は、請求項又はに記載の化学反応装置において、前記温度調整層は、前記薄膜層のシート抵抗が、10Ω/□乃至100Ω/□の範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴としている。
【0020】
請求項記載の化学反応装置は、請求項乃至のいずれかに記載の化学反応装置において、前記温度調整層は、前記化合物の抵抗率が、0.5mΩcm/□乃至10mΩcmの範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴としている。
【0021】
請求項記載の化学反応装置は、請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置において、前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記反応流路内の少なくとも一部に所定の触媒層が設けられ、前記温度調整層から前記触媒層に供給される所定の熱量に基づいて、吸熱又は発熱を伴う前記化学反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴としている。
【0022】
請求項10記載の化学反応装置は、請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置において、前記第1の流体物質は、アルコール系の気体燃料と酸素を含む混合ガスであり、前記第2の流体物質は、水素ガスであって、前記化学反応装置は、少なくとも、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で水蒸気改質反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴としている。
【0023】
請求項11記載の化学反応装置は、請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置において、前記第1の流体物質は、アルコール系の液体燃料又は水であり、前記第2の流体物質は、前記第1の流体物質が気化した燃料ガス又は水蒸気であって、前記化学反応装置は、少なくとも、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で気化反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴としている。
【0024】
請求項12記載の化学反応装置は、請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置において、前記第1の流体物質は、一酸化炭素ガスと酸素を含む混合ガスであり、前記第2の流体物質は、水素ガス及び二酸化炭素ガスであって、前記化学反応装置は、少なくとも、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で水性シフト反応及び選択酸化反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴としている。
【0025】
本発明の請求項13記載の電源システムは、少なくとも一つの反応領域を備え、該反応領域において連続的に形成された反応流路を有し、該反応流路内で第1の流体物質を水素を含む第2の流体物質に変換する化学反応を生じる化学反応装置を備え、該化学反応装置により生成された前記第2の流体物質を直接的又は間接的に用いて電力を発生する電源システムであって、前記反応領域において、前記反応流路の流路形状の全域を含む領域に対応して平面形状を有して形成され、前記反応流路に少なくとも一部が露出し、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、酸素(O)、窒素(N)からなる化合物の薄膜層により構成され、前記化合物の密度が、7.0×1022/cm以上に設定された発熱抵抗体からなる温度調整層を有し、該温度調整層から前記反応流路に所定の熱量を供給して、前記反応流路内で吸熱又は発熱を伴う前記化学反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴としている。
【0026】
請求項14記載の電源システムは、請求項13記載の電源システムにおいて、前記化学反応装置は、前記反応領域を複数有し、該各反応領域において互いに異なる化学反応を生じ、前記反応流路は少なくとも前記各反応領域毎に形成されていることを特徴としている。請求項15記載の電源システムは、請求項13又は14記載の電源システムにおいて、前記化学反応装置は、前記反応領域に対応して、一面側に前記反応流路が溝状に形成された第1の基板と、前記反応領域に対応して、一面側に前記温度調整層が前記反応流路領域に対応して形成された第2の基板と、を備え、前記第1の基板の一面側と前記第2の基板の一面側が対向して、前記反応流路の溝開口端が閉止され、前記反応流路内に前記温度調整層の一部が露出するように接合されていることを特徴としている。
【0027】
請求項16記載の電源システムは、請求項13乃至15のいずれかに記載の電源システムにおいて、前記化学反応装置は、少なくとも、前記反応流路がミクロンオーダーの微細化された流路形状を有して微小空間に形成されていることを特徴としている。
【0028】
請求項17記載の電源システムは、請求項13乃至16のいずれかに記載の電源システムにおいて、前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記反応流路内の少なくとも一部に所定の触媒層が設けられ、前記温度調整層から前記触媒層に供給される所定の熱量に基づいて、吸熱又は発熱を伴う前記化学反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴としている。
【0029】
請求項18記載の電源システムは、請求項13乃至17のいずれかに記載の電源システムにおいて、前記第1の流体物質は、アルコール系の気体燃料と酸素を含む混合ガスであり、前記第2の流体物質は、水素ガスであって、前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で水蒸気改質反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴としている。
【0030】
請求項19記載の電源システムは、請求項13乃至17のいずれかに記載の電源システムにおいて、前記第1の流体物質は、アルコール系の液体燃料又は水であり、前記第2の流体物質は、前記第1の流体物質が気化した燃料ガス又は水蒸気であって、前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で気化反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴としている。
【0031】
請求項20記載の電源システムは、請求項13乃至17のいずれかに記載の電源システムにおいて、前記第1の流体物質は、一酸化炭素ガスと酸素を含む混合ガスであり、前記第2の流体物質は、水素ガス及び二酸化炭素ガスであって、前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で水性シフト反応及び選択酸化反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴としている。
【0032】
請求項21記載の電源システムは、請求項13記載の電源システムにおいて、前記温度調整層は、前記化合物における酸素及び窒素の合計含有率が、35%乃至56%の範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴としている。
【0033】
請求項22記載の電源システムは、請求項21記載の電源システムにおいて、前記温度調整層は、前記化合物の抵抗率が、0.5mΩcm/□乃至10mΩcmの範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴としている。
【0034】
すなわち、本発明に係る化学反応装置は、少なくとも一つの反応領域を備え、該反応領域において反応流路等の機能要素が微小空間にミクロンオーダーに微細化されて形成され、該反応流路内で第1の流体物質を水素を含む第2の流体物質に変換する化学反応を生じる化学反応装置において、反応領域における、吸熱又は発熱を伴う化学反応を生じる反応流路の流路形状の全域を含む領域に対応して薄膜ヒータ(温度調整層)が設けられ、かつ、該薄膜ヒータがタンタル(Ta)、シリコン(Si)、酸素(O)、窒素(N)からなるTa−Si−O−N系の化合物の薄膜層により構成され、化合物の密度が、7 . 0×10 22 cm 以上に設定されている。
【0035】
このような構成を有する化学反応装置によれば、主基板に閉止基板を接合する際に、反応流路の流路形状の全域に対して、この領域を含む、より大きな領域に薄膜ヒータが形成されているので、基板相互の位置合わせマージンを大きく取ることができ、比較的容易に位置合わせを行うことができる。したがって、高精度の製造機器等を必要とすることなく、基板接合工程における位置合わせ作業を簡素化することができ、製品コストを抑制した信頼性の高い化学反応装置を提供することができる。また、薄膜ヒータを構成する上記Ta−Si−O−N系の化合物の密度が7 . 0×10 22 cm 以上に設定されることにより、通常の金属や酸化物(例えば、Ta+Si+O系の化合物)により薄膜ヒータを形成した場合に比較して、簡易に高い密度を実現することができ、反応流路内で生成される水素等の薄膜ヒータへの侵入を抑制して、膜質の劣化を防止することができる。
【0036】
ここで、上記薄膜ヒータ(温度調整層)は、反応流路が形成される主基板(第1の基板)と反応流路の開口端を閉止する閉止基板(第2の基板)との間に介在して、化学反応が生じる反応流路内に露出するように設けられるものであってもよいし、閉止基板の他面側(主基板との接合に用いない面)に設けられるものであってもよい。
特に、前者の構成においては、薄膜ヒータが反応流路内に露出するように構成されているので、薄膜ヒータから反応流路や触媒層への熱エネルギーの伝熱特性を大幅に向上することができ、反応流路内部で生じる化学反応の反応効率を改善することができる。
【0037】
また、反応流路の流路形状の全域を含むように形成された薄膜ヒータは、上記Ta−Si−O−N系の化合物における酸素及び窒素の合計含有率が、概ね56%以下(好ましくは、概ね35%乃至56%の範囲)の任意の数値、もしくは、化合物の抵抗率が、概ね0.5mΩcm乃至10mΩcmの範囲のうち、任意の数値に設定されていることが望ましく、このような材料組成によれば、薄膜ヒータとして良好な発熱特性が得られる、概ね10Ω/□以上のシート抵抗を実現することができるとともに、反応流路内での化学反応を効率よく促進することができる。
【0038】
また、薄膜ヒータを構成する上記Ta−Si−O−N系の化合物を水素化処理して得られるTa−Si−O−N−Hからなる化合物を、薄膜ヒータとして適用することにより、例えば、シリコン基板からなる主基板とガラス基板からなる閉止基板とを、加熱して所定電圧を印加することにより、シリコンSiとガラス間に生じる静電引力を利用して化学結合させる陽極接合を、主基板と薄膜ヒータ間においても適用することができ、化学反応装置の製造プロセスを簡易化して効率化しつつ、各基板と薄膜ヒータとを良好に接合することができる。
【0039】
さらに、上記Ta−Si−O−N系の化合物は、一般的に発熱抵抗体として適用される金属系の抵抗体材料に比較して、主基板及び閉止基板に適用されるガラス基板やシリコン基板等に対して、極めて良好な密着性を有しているので、薄膜ヒータの発熱に伴って熱膨張や熱収縮が生じた場合であっても、主基板及び閉止基板との間でストレスが比較的生じにくく、剥離や破損の発生を良好に抑制することができる。
【0041】
また、本発明に係る電源システムは、上述したような化学反応装置を燃料供給部に適用した構成を有し、薄膜ヒータから所定の熱エネルギーを供給することにより、微小空間に形成された反応流路内で、例えば、アルコール系の液体燃料又は水(第1の流体物質)から、アルコール系の気体燃料と水蒸気の混合ガス(第1の流体物質)から、水素ガス(第2の流体物質)を生成する水蒸気改質反応、一酸化炭素ガスと水蒸気の混合ガス(第1の流体物質)から、水素ガス及び二酸化炭素ガス(第2の流体物質)を生成する水性シフト反応及び選択酸化反応等を生じさせ、アルコール系の液体燃料から高い変換効率で水素ガスを生成することができるとともに、有害な副生成物の排出を極力抑制することができるので、燃料改質型の燃料電池等を備えた電源システムにおける発電効率の向上や、システム構成の大幅な小型化を図りつつ、実用化に極めて有益な構成を提供することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る化学反応装置及び該化学反応装置を適用した電源システムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明に係る化学反応装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る化学反応装置に適用される反応流路部の一実施形態を示す概略構成図である。また、図2は、本実施形態に係る化学反応装置の製造プロセスの一例を示す概略図である。なお、ここでは、化学反応装置の構成を明瞭にするために、反応流路の流路形状及び薄膜ヒータの平面形状に対して便宜的にハッチングを施して示す。
【0043】
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る化学反応装置(マイクロリアクタ)に適用される反応流路部は、大別して、微小基板からなる主基板(第1の基板)10と、該主基板10の一面側に所定の溝状の断面形状及び蛇行する流路形状を有して形成された反応流路20と、該反応流路20の内壁面(例えば、反応流路20の側壁面や底面)に付着形成された触媒層(図示を省略)と、主基板10の一面側(反応流路20の溝部開口端側)に接合された微小基板からなる閉止基板(第2の基板)30と、上記主基板10と閉止基板30との間に介在し、かつ、反応流路20内にその一部が露出するように接合された薄膜ヒータ(温度調整層)40Aと、を備えて構成されている。
【0044】
ここで、反応流路20は、図1(b)に示すように、シリコン等からなる主基板10の一面側をフォトエッチング技術等を用いて、任意の溝状の断面形状を有するようにエッチングした後、該溝部の内壁面(例えば、側壁面や底面)に、例えば、銅−亜鉛(Cu−Zn)系の触媒を化学気相成長法(CVD)等により任意の厚さ(例えば、1μm〜100μm)に付着形成することにより、図1(a)、(b)に示したような流路形状(蛇行パターンを有する溝部)を有するように形成される。ここで、反応流路20は、主基板10の一面側に溝部の開口端を有するように形成されているため、この反応流路20の開口端を外部から遮断するために、ガラス等の閉止基板(具体的には、後述するように、一面側に矩形状の薄膜ヒータ40Aが形成された閉止基板)30が接合されて閉止される。これにより、所定の流体物質の導入部20a及び排出部20bにのみ開口部を備えた流路が形成される。なお、反応流路20を構成する溝部は、内壁面に触媒層が付着形成されるため、図1(b)に示した断面において流体物質が流下、移動可能な実効断面積が小さくなるが、後述するような流体物質が良好に流下、移動可能な溝断面としては、概ね幅100μm以下、深さ500μm以下であってもよい。
【0045】
また、薄膜ヒータ40Aは、図1(b)、(c)に示すように、少なくとも、主基板10の一面側に形成された反応流路20の流路形状に対応し、該流路形状の全域を含む所定の平面形状(ここでは、矩形状)を有し、かつ、所定の材料組成を有する発熱抵抗体(化合物)の薄膜層により構成されている。ここで、薄膜ヒータ40Aは、具体的には、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、酸素(O)、窒素(N)からなる材料組成を有する化合物TaSiを良好に適用することができる。なお、本発明において発熱抵抗体として適用される化合物TaSiの材料特性については、詳しく後述する。
【0046】
なお、図1においては、化学反応装置の反応流路部を構成する主基板10及び閉止基板30の側部に反応流路20への流体物質の導入部20a及び排出部20bが設けられた構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、主基板10又は閉止基板30に対して垂直方向(すなわち、図1(a)、(c)において、紙面に垂直方向)に上記導入部20a及び排出部20bが設けられた構成を有するものであってもよい。
【0047】
このような構成を有する化学反応装置において、例えば、メタノールと水からなる原料物質を気化した流体物質(第1の流体物質)を上記反応流路20の導入部20a側から導入するとともに、図示を省略したヒータ電源により薄膜ヒータ40Aに所定の電圧を印加して加熱し、反応流路20内に付着形成された触媒層に所定の熱エネルギーを供給することにより、吸熱触媒反応(メタノール水蒸気改質反応)が生じて水素ガスと少量の二酸化炭素等の流体物質(第2の流体物質)が生成され、反応流路20の排出部20bから排出される。
【0048】
そして、このような化学反応装置における製造プロセスは、まず、図2(a)に示すように、フォトエッチング技術等を用いて、主基板10となるシリコン基板等の一面側に所定の流路形状を有する溝部(反応流路20)を形成した後、化学気相成長法(CVD)等により、該溝部の内壁面(側壁面あるいは底面)に銅−亜鉛系の触媒層を形成するとともに、この主基板10側の流路形成工程とは独立して、図2(b)に示すように、閉止基板30となるガラス基板等の一面側であって、上記溝部の平面形状(流路形状)の全域を含む所定の領域に薄膜ヒータ40Aを形成する。ここで、酸素ガス(O)と窒素(N)ガスが混合されたアルゴンガス(Ar)雰囲気中で、タンタル(Ta)、シリコン(Si)のストライプターゲットを用いたスパッタリング法等を行うことにより、Ta−Si−O−N系薄膜からなる薄膜ヒータ40Aが形成される。
【0049】
そして、図2(c)に示すように、主基板10に形成された上記溝部(反応流路20)を含む全域に、閉止基板30に形成された薄膜ヒータ40Aが対応するように、主基板10及び閉止基板30相互の位置合わせを行い、主基板10の一面側(反応流路20の溝部開口端側)と閉止基板30の一面側(薄膜ヒータ40A側)を接合する。これにより、図1に示したように、上記主基板10と閉止基板30との間に薄膜ヒータ40Aが介在するとともに、反応流路20内に膜ヒータ40Aの一部が露出する構成を有する化学反応装置を製造することができる。
【0050】
このように、本実施形態に係る化学反応装置によれば、半導体製造技術等の微細加工技術を用いて主基板に形成された反応流路の流路形状の全域を含む領域に対応するように、閉止基板に矩形状の薄膜ヒータが形成され、主基板に閉止基板を接合する際に、比較的位置合わせ精度が低い場合であっても、反応流路の流路形状の全域(すなわち、反応流路の流路形状の最外縁部により規定される領域)に対して、より大きく形成された矩形状の薄膜ヒータを簡易に対応させることができる。これは、換言すれば、基板接合工程において、基板相互の位置合わせマージンを大きく取ることができることを意味する。したがって、高精度の製造機器等を必要とすることなく、基板接合工程における作業を簡素化することができ、信頼性の低下や製品コストの上昇を良好に抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る化学反応装置によれば、主基板側に形成された反応流路内に薄膜ヒータが露出する構成を有しているので、薄膜ヒータから供給される熱エネルギーの反応流路や触媒層への伝熱特性が向上し、反応流路内部で生じる化学反応の反応効率を改善、もしくは、所定の熱エネルギーを供給するために消費される電力(すなわち、薄膜ヒータに投入される電気エネルギーの量)を削減することができる。
【0052】
ここで、従来技術においても記載したように、反応流路内に薄膜ヒータが露出する構成を適用した場合、薄膜ヒータに用いる材料によっては、反応流路内で生じる化学反応(例えば、水蒸気改質反応等)により生成される流体物質(特に、水素ガス)により、薄膜ヒータの膜質の劣化を招き、発熱特性が悪化して、化学反応の反応効率が低下することが判明している。また、主基板と閉止基板の間に薄膜ヒータが介在する構成を有しているので、発熱に伴う熱膨張率の違いによる剥離や破損を抑制するために、適切な接合性や密着性を有するように材料特性を設定する必要がある。さらに、従来技術に示したような反応流路の流路形状(例えば、蛇行パターン)と略一致する細長い形状の薄膜ヒータ(発熱抵抗体)の場合と、本実施形態に係る矩形状の薄膜ヒータとでは、発熱特性が異なるため、適切な抵抗率を有するように設定する必要もある。
【0053】
そこで、本発明においては、薄膜ヒータとして適用するTa−Si−O−N系薄膜について種々検証し、後述するような電源システムの燃料供給部等としても利用が可能な化学反応装置に適用して良好な材料組成と材料特性との関係を見出した。以下、実験データを示して具体的に説明する。
(発熱特性と抵抗率の関係)
まず、薄膜ヒータ(発熱抵抗体)の発熱特性とその抵抗率との関係について説明する。
【0054】
上述したように、薄膜ヒータに適用される発熱抵抗体は、反応流路に所定の熱エネルギーを供給することを目的とするものであるので、ある程度の抵抗値を有している必要がある。ここで、本実施形態に示したように、薄膜ヒータの平面形状を矩形状とした場合、従来技術に示したように、蛇行パターン等の反応流路の流路形状に一致又は近似させた細長い蛇行した形状の場合に対して、長さが短く、且つ、断面積が大きい形状となるため、仮に同材料を用いて形成した場合、抵抗値が小さくなる。そこで、このような形状で所定の抵抗値を得るためには比較的高い抵抗率を設定する必要がある。
【0055】
このとき、薄膜ヒータに設定されるシート抵抗が小さすぎると(例えば、1Ω/□程度より小さい値の場合)、薄膜ヒータの周辺構造における抵抗(例えば、配線電極部におけるヒータ配線との接触抵抗等)と同程度となって、抵抗値の差が小さくなって、十分な発熱量が得られず、反応流路内での化学反応を十分に促進することができなくなるとともに、無駄な電力を浪費することになる。一方、薄膜ヒータに設定されるシート抵抗が大きすぎると(例えば、100Ω/□程度より大きい値の場合)、薄膜ヒータの周辺構造(例えば、配線電極部等)において良好なオーミックコンタクトが得られ難くなる。
【0056】
本願発明者は、上述したような状況に鑑み、種々検討を重ねた結果、薄膜ヒータに設定されるシート抵抗として、概ね10Ω/□以上、より好ましくは、概ね10Ω/□以上100Ω/□程度以下に設定されていることが望ましいことを見出した。また、この薄膜ヒータは1000Å〜2000Åの膜厚に形成される。そこで、このシート抵抗に基づいて、薄膜ヒータに設定される抵抗率を算出すると、シート抵抗Rが10Ω/□のとき、薄膜ヒータを構成する発熱抵抗体の膜厚tを1000Åとした場合には、抵抗率ρは1mΩcmと算出され、また、膜厚tを2000Åとした場合には、抵抗率ρは0.5mΩcmと算出される。一方、シート抵抗Rが100Ω/□のとき、発熱抵抗体の膜厚tを1000Åとした場合には、抵抗率ρ=10mΩcmと算出され、また、膜厚tを2000Åとした場合には、抵抗率ρは5mΩcmと算出される。
【0057】
このことから、本実施形態に係る構成を有する化学反応装置に適用可能な薄膜ヒータの抵抗率は、概ね0.5mΩcm以上、より好ましくは、概ね0.5mΩcm以上10mΩcm程度以下に設定されていることが望ましいことが判明した。
ここで、表1に、Ta−Si−O−N系材料の材料組成と抵抗率との関係を検証した実験データを示す。表1において、[試料]欄は、検証対象となった各実験試料A〜Mを示している。各実験試料A〜Mにおける材料組成、すなわち、タンタル、シリコン、酸素、窒素の各含有量は異なるように設定されているとともに、材料全体に対する酸素と窒素の含有率(O+N/Ta+Si+O+N)も異なるように設定されている。そして、上記数値範囲(0.5mΩcm〜10mΩcm)の抵抗率を得ることができる材料組成範囲は、表1の良否判定欄に示されているように、酸素と窒素の合計含有率がTa−Si−O−N系材料全体の概ね56%以下、より好ましくは概ね35%〜56%であることが判明した(表1;[O+N/Ta+Si+O+N]欄、[抵抗率]欄、[良否判定]欄参照)。
【0058】
【表1】
Figure 0004147803
【0059】
したがって、上述したように、主基板に形成された反応流路の流路形状の全域を含む領域に対応するように、矩形状の薄膜ヒータを設けた構成を有する化学反応装置において、薄膜ヒータを構成する発熱抵抗体のシート抵抗を概ね10Ω/□〜100Ω/□の範囲のうち、任意の数値に設定することにより、もしくは、上記発熱抵抗体の抵抗率を概ね0.5mΩcm〜10mΩcmの範囲のうち、任意の数値に設定することにより、又は、発熱抵抗体における酸素及び窒素の合計含有率を概ね35%〜56%の範囲のうち、任意の数値に設定することにより、薄膜ヒータの良好な発熱特性が得られ、反応流路内での所定の化学反応を効率よく促進することができる。
【0060】
(材料組成と密度との関係)
次いで、薄膜ヒータ(発熱抵抗体)の材料組成とその密度との関係について説明する。
図3は、本実施形態に係る化学反応装置に適用される薄膜ヒータの材料組成とその密度の関係を示す実験データである。
【0061】
上述したように、反応流路内に薄膜ヒータが露出する構成を適用した場合、反応流路内で生じる化学反応(例えば、水蒸気改質反応等)により生成される流体物質(特に、水素ガス)により、通常の金属や密度の低い酸化物等からなる薄膜ヒータの膜質の劣化を招くので、発熱抵抗体は、高い耐水素性を有している必要がある。ここで、本実施形態に示したように、薄膜ヒータを構成する発熱抵抗体としてTa−Si−O−N系の化合物を適用していることにより、図3に示すように、Ta+Si+O系(酸化物系)の化合物(図中左端×印にて表記)に比較して、高い密度が得られるうえ、酸素と窒素の合計含有率に比例して密度が上昇する傾向が得られた(図中●にて表記)。そして、本願発明者が、種々検討を重ねた結果、水素の侵入による膜質の劣化が防止される密度として、概ね7.0×1022/cm以上の任意の数値に設定されていることが望ましいことが判明した。
【0062】
このような発熱抵抗体における密度の設定により、Ta+Si+O系の化合物に窒素が結合して密度が高くなり、反応流路内で生成される水素の侵入が抑制されるので、本実施形態に示したように、反応流路内に薄膜ヒータが露出する構成を適用した場合であっても、薄膜ヒータの膜質の劣化を招くことなく、所定の発熱特性を維持することができ、反応流路内における化学反応の反応効率を向上させることができる。
【0063】
(材料組成と接合性/密着性との関係)
次いで、薄膜ヒータ(発熱抵抗体)の材料組成と基板材料との接合性及び密着性の関係について説明する。
一般に、シリコン基板とガラス基板とを接合する工程においては、両基板を300〜400℃に加熱して500V〜1kVの電圧を印加することにより、シリコンとガラス間に静電引力を発生させ、界面で化学結合させる陽極接合が適用される。上述したように、主基板及び閉止基板間に薄膜ヒータが介在する構成を適用した場合にあっても、上記陽極接合による場合と同等の高い接合性を実現する必要がある。
【0064】
そこで、本実施形態に示したようなTa−Si−O−N系の化合物を、水素ガス雰囲気中で加熱する水素化処理を施すことにより得られるTa−Si−O−N−Hからなる化合物を薄膜ヒータを構成する発熱抵抗体として適用した場合、この材料は酸化あるいは窒化が不十分であるため、上記陽極接合を、主基板と薄膜ヒータ間にも適用することができる。これにより、接着剤等を用いた他の接合工程を行うことなく、化学反応装置の製造プロセスを簡易化して効率化しつつ、各基板と薄膜ヒータとを良好に接合することができる。
【0065】
また、主基板と閉止基板の間に薄膜ヒータが介在する構成を適用した場合、薄膜ヒータの発熱に伴って、薄膜ヒータや主基板、閉止基板に熱膨張や熱収縮が生じるが、この場合、各々の熱膨張率の違いにより剥離や破損が発生する可能性があるため、高い密着性を有している必要がある。
ここで、本実施形態に示したようなTa−Si−O−N系の化合物は、一般的に発熱抵抗体として適用されるアルミニウム(Al)、チタン−タングステン(TiW)、銅(Cu)、白金(Pt)パラジウム(Pd)等の金属系の抵抗体材料に比較して、熱酸化膜付きシリコン基板、あるいは、パイレックス(登録商標)ガラスや石英ガラスからなるガラス基板等に対して、極めて良好な密着性を有しているので、主基板及び閉止基板に上記シリコン基板やガラス基板を適用することにより、薄膜ヒータの発熱に伴って熱膨張や熱収縮が生じた場合であっても熱ストレスに比較的強いため、主基板及び閉止基板の剥離や破損の発生を良好に抑制することができる。
【0066】
次に、本発明に係る化学反応装置の他の実施形態について、図面を参照して説明する。
図4は、本発明に係る化学反応装置に適用される反応流路部の他の実施形態を示す概略構成図である。ここで、上述した実施形態と同等の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図4(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る化学反応装置に適用される反応流路部は、大別して、微小基板からなる主基板(第1の基板)10と、該主基板10の一面側に所定の溝状の断面形状及び蛇行する流路形状を有して形成された反応流路20と、該反応流路20の内壁面に付着形成された触媒層(図示を省略)と、主基板10の一面側(反応流路20の溝部開口端側)に接合された微小基板からなる閉止基板(第2の基板)30と、閉止基板30の他面側(主基板との接合に用いない面;非接合面側)に形成された薄膜ヒータ(温度調整層)40Bと、を備えて構成されている。
【0068】
ここで、薄膜ヒータ40Bは、図4(b)、(c)に示すように、少なくとも、主基板10の一面側に形成された反応流路20の流路形状の全域を含む所定の平面形状(ここでは、矩形状)を有し、かつ、TaSiからなる化合物の薄膜層により構成されている。なお、化合物TaSiの材料組成と種々の特性との関係については、上述した実施形態に示した場合と同等であるので、その説明を省略する。また、反応流路20の構成についても、上述した実施形態と同等であるので説明を省略する。
【0069】
そして、このような化学反応装置における製造プロセスは、まず、図2(a)、(b)に示した場合と同様に、主基板10となるシリコン基板等の一面側に溝部(反応流路20)を形成した後、該溝部の内壁面に銅−亜鉛系の触媒層を形成するとともに、この主基板10側の流路形成工程とは独立して、閉止基板30となるガラス基板等の一面側であって、上記溝部の平面形状(流路形状)の全域を含む所定の領域に薄膜ヒータ40Bを形成する。
【0070】
次いで、主基板10に形成された上記溝部(反応流路20)を含む全域に、閉止基板30に形成された薄膜ヒータ40Bが対応するように、主基板10及び閉止基板30相互の位置合わせを行い、主基板10の一面側(反応流路20の溝部開口端側)と閉止基板30の他面側(薄膜ヒータ40Bが形成されていない側)を接合する。これにより、図4に示したように、上記主基板10と閉止基板30が直接接合されるとともに、閉止基板30の他面側に、反応流路20の全域に対応した矩形状の薄膜ヒータ40Bが形成された構成を有する化学反応装置を製造することができる。
【0071】
このように、本実施形態に係る化学反応装置によっても、上述した実施形態に示した場合と同様に、主基板に閉止基板を接合する際に、比較的位置合わせ精度が低い場合であっても、反応流路の流路形状の全域に対して、より大きく形成された矩形状の薄膜ヒータを簡易に対応させることができる。したがって、高精度の製造機器等を必要とすることなく、簡易な作業により基板相互を接合することができ、信頼性の低下や製品コストの上昇を良好に抑制することができる。
【0072】
なお、上述した実施形態に係る化学反応装置により実現することができる化学反応は、上記メタノール水蒸気改質反応に限定されるものではなく、少なくとも、薄膜ヒータ40から供給される所定の熱エネルギーに基づいて、吸熱又は発熱を伴う化学反応を生じることにより、所望の流体物質を生成することができるものであれば、他の種類の化学反応であってもよいことはいうまでもない。
また、上述した実施形態においては、反応流路内に所定の触媒層を付着形成し、薄膜ヒータから所定の熱エネルギーを供給することにより、吸熱触媒反応を生じさせて所望の流体物質を生成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反応流路内に触媒層を設けず、単に薄膜ヒータから熱エネルギーを供給することのみにより、気化反応により原料物質を蒸発させるものであってもよい。具体的な化学反応の例については、後述する化学反応装置の適用例において説明する。
【0073】
<電源システムへの適用例>
次に、本発明に係る化学反応装置を、燃料改質型の燃料電池を備えた電源システムに適用した場合の具体例について説明する。
図5は、本発明に係る化学反応装置の適用が可能な電源システム(燃料電池システム)300の要部構成、及び、該電源システム300より駆動されるデバイスDVCを示すブロック図であり、図6は、本発明に係る化学反応装置を備えた燃料供給部の具体例を示す概略構成図である。なお、ここでは、燃料改質方式を採用した固体高分子型の燃料電池を適用した電源システムについて説明する。
【0074】
図5に示すように、本発明に係る化学反応装置が適用される電源システム300は、概略、所定の発電用燃料に基づいて電力を発生する発電モジュール100と、該発電モジュール100に対して着脱可能に構成され、所定の発電用燃料が封入された燃料パック210と、から構成され、発電モジュール100は、大別して、燃料改質方式の固体高分子型燃料電池の構成を有する発電部(燃料電池本体)110と、燃料パック210の燃料封入部190に貯蔵、封入された発電用燃料(例えば、水素を含む液体燃料、液化燃料及び気体燃料や水)の発電部110への供給量を制御する燃料制御部120と、発電部110への空気(酸素)の供給量を制御する空気制御部130と、燃料制御部120により供給された発電用燃料を改質して、発電用燃料に含有される水素をガス化して発電部110に供給する燃料改質部140と、発電部110及び燃料改質部140を必要に応じて加熱するための温度制御部150と、発電部110により生成された電力の一部若しくは全部を充電するコンデンサを有する充電部160と、発電モジュール100内の発電動作、充電動作、後述する動作制御部180により充電部160の蓄電状態を検知する動作等のための必要な電力を出力する副電源部170と、発電モジュール100内の駆動動作を演算処理する動作制御部180と、を有して構成されている。
【0075】
燃料制御部120は、燃料封入部190から毛細管現象等の物理的手段により送出された発電用燃料を、動作制御部180からの指令信号にしたがって、燃料改質部140に所定量供給するように構成されている。
空気制御部130は、燃料電池システム300の外部から空気を取込み、発電部110に酸素ガス(O)又は空気を供給するように構成されている。
燃料改質部140は、燃料パック210内のアルコール(ALCOHOL)及び水(HO)から構成される発電用燃料を燃料制御部120を介して取り込み、水素(H)と副生成物の二酸化炭素(CO)、さらに、微量の一酸化炭素(CO)を生成する水蒸気改質反応部140aと、次に示す一酸化炭素改質部と、を有して構成されている。一酸化炭素改質部は、水蒸気改質反応部140aから供給された一酸化炭素(CO)を燃料制御部120及び/又は発電部110から供給された水(HO)と反応させ、二酸化炭素(CO)及び水素(H)を生成する水性シフト反応部140bと、水性シフト反応部140bで反応しきれなかった一酸化炭素(CO)を酸素(O)と反応させて、二酸化炭素(CO)を生成する選択酸化反応部140cのうち、少なくとも一方を備えた構成を有している。
【0076】
温度制御部150は、動作制御部180からの指令信号により、水蒸気改質反応部140a、水性シフト反応部140b、選択酸化反応部140cにそれぞれ設けられた薄膜ヒータに電力を供給することにより加熱制御するように構成されている。また、発電部110にも薄膜ヒータが設けられている場合にあっては、同様に、所定の電力が供給されるように構成されている。ここで、薄膜ヒータは、上述した各実施形態に示した薄膜ヒータ40A、40Bに相当し、Ta−Si−O−N系の化合物の薄膜層により構成されているとともに、上述した各種の材料特性が得られるように材料組成が設定されている。
【0077】
発電部110は、燃料改質部140から供給された水素(H)、及び、空気制御部130から供給された酸素ガス(O)に基づいて、所定の電力を発生(発電)するように構成され、また、充電部160は、発電部110で発電された電力により充電されるように設定され、発電部110及び充電部160の少なくとも一方は、デバイスDVCの負荷LDに電力を供給するように構成されている。
副電源部170は、動作制御部180からの指令信号に応じて、充電部160で蓄電された電力により燃料制御部120、温度制御部150、後述する動作制御部180に電力を供給するとともに、必要に応じて発電部110にも電力を供給するように構成されている。
【0078】
動作制御部180は、充電部160で蓄電されたチャージ(充電電位)を検知するために常時駆動し、該チャージが所定値まで小さくなったことを検知すると、燃料制御部120、温度制御部150、必要に応じて発電部110に電力を供給するように指令信号を副電源部170に出力するとともに、燃料制御部120が必要量の燃料を供給し、かつ、温度制御部150が燃料改質部140の反応炉(本発明に係る化学反応装置の反応流路に相当)を所定の時間、必要温度に達するように指令信号を出力する。
【0079】
そして、発電モジュール100と着脱自在に構成された燃料パック210は、発電用燃料が封入された燃料封入部190と、発電部110により生成された副生成物を回収する副生成物回収部200と、を有して構成されている。
発電モジュール100及び燃料パック210で構成された燃料電池システム300は、デバイスDVCの負荷LDに対して所定の駆動電力を供給することにより、コントローラCNTの制御にしたがってデバイスDVCを正常に駆動させることができる。
【0080】
ここで、発電部110は、周知の固体高分子型の燃料電池本体の構成を有し、概略、白金や白金・ルテニウム等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる燃料極(カソード)と、白金等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる空気極(アノード)と、該燃料極と空気極の間に介装されたフィルム状のイオン導電膜(交換膜)と、を有して構成されている。
そして、このような構成を有する発電部110の燃料極に、燃料改質部140を介して抽出された水素ガス(H)が供給されることにより、次の化学反応式(1)に示すように、上記触媒により電子(e)が分離した水素イオン(プロトン;H)が発生し、イオン導電膜を介して空気極側に通過するとともに、燃料極を構成する炭素電極により電子(e)が取り出されて負荷に供給される。
3H → 6H+6e ・・・(1)
【0081】
一方、空気極に空気制御部130を介して大気中の酸素ガス(O)が供給されることにより、次の化学反応式(2)に示すように、上記触媒により負荷を経由した電子(e)とイオン導電膜を通過した水素イオン(H)と空気中の酸素ガス(O)が反応して水(HO)が生成される。
6H+(3/2)O+6e → 3HO ・・・(2)
すなわち、このような一連の電気化学反応((1)式及び(2)式)は、概ね室温〜80℃の比較的低温の環境下で進行し、電力以外の副生成物は、基本的に水(HO)のみとなる。なお、上述したような電気化学反応により負荷に供給される電力(電圧・電流)は、上記化学反応式(1)及び(2)に示したように、発電部110の燃料極に供給される水素ガス(H)の量に依存する。
【0082】
したがって、燃料制御部120は、発電部110において、所定の電力を生成、出力するために必要な量の水素ガス(H)となる分の燃料や水等を取り込んで、後述する燃料改質部140により水素ガスに改質して、発電部110の燃料極に供給する制御を行う。なお、空気制御部130は、発電部110の空気極に供給する酸素ガス(O)の量を制御する機能を有しているが、発電部110における単位時間あたりの酸素の最大消費量に相当する空気を供給可能であれば、発電部110の空気極に供給する酸素ガスの量を制御することなく、発電部110の駆動時に常時酸素ガスを供給するものであってもよく、また、別の構成として、発電部110における電気化学反応の進行状態を、燃料制御部120において調整される水素ガスの供給量のみで制御し、空気制御部130の代わりに通気孔を設け、発電部110における電気化学反応に用いられる上記最大消費量以上の空気(大気)が通気孔を介して供給されるように構成されているものであってもよい。
【0083】
また、燃料改質部140は、燃料制御部120により所定の供給量で供給される発電用燃料に対して、所定の吸熱触媒反応(水蒸気改質反応)を利用して発電用燃料に含まれる水素成分を抽出して上記発電部110に供給する機能を有するものであって、上述した実施形態に示した薄膜ヒータを備えた化学反応装置(図1、図4参照)の構成を良好に適用することができる。具体的には、メタノール等の水素を含む液体燃料(アルコール類)から、吸熱触媒反応である水蒸気改質反応を利用して、水素ガス(H)を生成する。ここで、現在、研究開発が行われている燃料改質方式の燃料電池に適用されている発電用燃料としては、上記発電部110により、比較的高いエネルギー変換効率で電力を生成することができる燃料であって、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系の液体燃料や、ジメチルエーテル、イソブタン、天然ガス(CNG)等の液化ガス等の常温常圧で気化される炭化水素からなる液化燃料、あるいは、水素ガス等の気体燃料等の流体物質を良好に適用することができる。
【0084】
ここで、燃料改質部140における水素ガスの生成に利用される吸熱触媒反応の例としては、液体燃料の一例であるメタノールを適用した場合には、次の化学反応式(3)に示すような水蒸気改質反応が生じ、また、常温常圧で気体となる液化燃料の一例であるジメチルエーテルを適用した場合には、次の化学反応式(4)に示すような水蒸気改質反応が生じる。
CHOH+HO → 3H+CO ・・・(3)
CHOCH+3HO → 6H+2CO ・・・(4)
【0085】
なお、いずれの水蒸気改質反応においても、概ね300℃の熱条件の下で当該反応が良好に進行する。また、この改質反応により生成される水素以外の微量の生成物(主に、CO)は、大気中に排出される。したがって、上述した実施形態に示したような化学反応装置(図1、図4参照)を燃料改質部140に適用することにより、反応流路(反応炉)の流路形状の全域を含む領域に対応して、基板間、あるいは、基板の他面側に設けられた薄膜ヒータに、ヒータ電源から所定の電力を供給して加熱することにより、反応流路(触媒層)に対して、上記各化学反応式(3)、(4)に示した吸熱を伴う水蒸気改質反応の進行に寄与する所定の熱エネルギーを供給することができ、水素ガスを良好に生成することができる。
【0086】
ここで、燃料改質部140に適用される具体的な構成例は、例えば、図6(a)に示すように、シリコン等の微小基板(上述した主基板10に相当する)141の一面側に、半導体製造技術等の微細加工技術を用いて、所定の断面形状及び平面形状を有して溝状に設けられた燃料吐出部142a、水吐出部142b、燃料気化部143a、水気化部143b、混合部143c、改質反応流路144、水素ガス排気部145と、例えば、上記改質反応流路144の形成領域を含む領域であって、かつ、改質反応流路144内に露出するように、微小基板141上に設けられた矩形状の薄膜ヒータ146(上述した薄膜ヒータ40Aに相当する)と、微小基板141上に薄膜ヒータ146を介して接合された微小基板(上述した閉止基板30に相当する;図示を省略)と、を備えて構成されている。
【0087】
燃料吐出部142a及び水吐出部142bは、上述したような水蒸気改質反応における原料物質となる発電用燃料及び水を、例えば、所定の単位量ごとに液状粒として流路内に吐出する流体吐出機構を有している。したがって、燃料吐出部142a及び水吐出部142bにおける発電用燃料又は水の吐出量に基づいて、例えば、上記化学反応式(3)式に示した水蒸気改質反応の進行状態が制御されることになるため(詳しくは、薄膜ヒータ146から供給される熱エネルギーも密接に関連する)、燃料吐出部142a及び水吐出部142bは、燃料供給量の調整機能を担う構成を有している。
【0088】
燃料気化部143a及び水気化部143bは、それぞれ発電用燃料及び水の沸点等の揮発条件に応じて加熱されるヒータであって、燃料吐出部142a及び水吐出部142bから液状粒として吐出された発電用燃料又は水を、加熱処理あるいは減圧処理等することにより気化し、混合部143cにおいて、燃料ガスと水蒸気の混合ガスを生成する。ここで、燃料気化部143a及び水気化部143bとして、加熱処理を行う機構を採用する場合には、上述した改質反応流路144と同様に、燃料気化部143a及び水気化部143bを構成する溝部の形成領域を含む領域であって、かつ、該溝部内に露出するように微小基板141上に矩形状の薄膜ヒータを設けた構成を適用するものであってもよい。
【0089】
改質反応流路144及び薄膜ヒータ146は、上述した各実施形態に示した反応流路部に相当し、上記混合部143cにおいて生成された混合ガスを改質反応流路144に導入し、改質反応流路144の内壁面に付着形成された銅−亜鉛(Cu−Zn)系の触媒層(図示を省略)及び改質反応流路144に、該改質反応流路144の形成領域を含む領域に対応して設けられた薄膜ヒータ146から供給される所定の熱エネルギーに基づいて、上記化学反応式(3)、(4)に示した水蒸気改質反応を生じさせて、水素ガス(H)を生成する。
水素ガス排気部145は、改質反応流路144において生成された水素ガスを排出して、上述した発電部110を構成する燃料電池の燃料極に供給する。これにより、発電部110において、上記化学反応式(1)及び(2)に基づく一連の電気化学反応が生じて、所定の電力が生成される。
【0090】
そして、上述したように、このような構成を有する燃料改質部140の微小基板141に形成された溝状の改質反応流路等の形成領域を含む領域に対応して、上述した実施形態に示した薄膜ヒータ40を、微細加工技術を用いて形成することができる。これにより、燃料改質部140全体又は一部、あるいは、燃料改質部140を含む発電モジュール100を微小空間に集積化することができ、例えば、日本工業規格(JIS)に則った汎用の一次電池や種々の二次電池等と略同一の外形形状及び外形寸法を有するように小型化することができ、既存の一次電池や二次電池市場において互換可能なポータブル電源を実現することができる。
【0091】
なお、上述した電源システムは、上述した実施形態に示したような化学反応装置を適用した燃料改質部により生成される所定の流体物質(水素ガス等)を発電用燃料として用いて、発電を行うことができるものであれば、燃料電池に限定されるものではない。したがって、化学反応装置(燃料改質部)により生成された流体物質の燃焼反応に伴う熱エネルギーによるもの(温度差発電)や、燃焼反応等に伴う圧力エネルギーを用いて発電器を回転させて電力を発生する力学的なエネルギー変換作用等によるもの(ガス燃焼タービンやロータリーエンジン、スターリングエンジン等の内燃、外燃機関発電)、また、発電用燃料FLの流体エネルギーや熱エネルギーを電磁誘導の原理等を利用して電力に変換するもの(電磁流体力学発電、熱音響効果発電等)等、種々の形態を有する発電装置に適用することができる。
【0092】
また、図6(a)に示した構成においては、上記化学反応式(3)において、発電用燃料としてメタノール等と水を、別個の吐出部142a、142b及び供給経路を介して供給、気化して混合する構成を備えた燃料改質部を示したが、予めメタノール等に水が混合された発電用燃料を直接燃料改質部に供給して、水素ガスを生成する水蒸気改質反応を実行するものであってもよい。このような場合にあっては、例えば、図6(b)に示すように、微小基板141の一面側に、単一の燃料吐出部142c及び燃料気化部143cと、上述した改質反応流路144、水素ガス排気部145からなる単一の流路を備えた構成を適用することができる。
【0093】
また、上述した電源システムに示した燃料改質部140においては、上記化学反応式(3)や(4)での反応以外に極微量の一酸化炭素(CO)を生成する恐れがあるが、図5に示すように、生成された一酸化炭素を無害化するような反応部を設けてもよい。
すなわち、発電モジュール100の燃料改質部140は、上述したように、燃料パック210内のアルコール及び水から構成される燃料を燃料制御部120から供給され、水素(H)と副生成物の二酸化炭素(CO)、さらに、微量の一酸化炭素(CO)を生成する水蒸気改質反応部140aに加えて、水蒸気改質反応部140aから供給された一酸化炭素(CO)を燃料制御部120及び/又は発電部110から供給された水(HO)と反応させ、二酸化炭素(CO)及び水素(H)を生成する水性シフト反応部140b、及び、水性シフト反応部140bで反応しきれなかった一酸化炭素(CO)を酸素(O)と反応させて二酸化炭素(CO)を生成する選択酸化反応部140cのうちの少なくとも一方からなる一酸化炭素燃料改質部を備えた構成を有し、燃料パック210に封入された燃料を、改質して得られる水素(H)を発電部110に供給するとともに、微量に生じる一酸化炭素(CO)を無毒化するものである。下記に示す実施形態では、一酸化炭素燃料改質部が水性シフト反応部140b及び選択酸化反応部140cの両方を有する構成になっている。
【0094】
以下、燃料改質部140の各構成と図6に示した構成との関係について説明する。
燃料改質部140の水蒸気改質反応部140aは、図6(a)に示す構造と概略同一であり、燃料気化部143a及び水気化部143bは、薄膜ヒータ146と同様にTa−Si−O−N系の化合物(発熱抵抗体)からなる薄膜層を備えている。ここで、温度制御部150により制御された電力により上記薄膜層が所定温度に加熱され、メタノール(CHOH)及び水(HO)を気化させる。
【0095】
そして、水蒸気改質反応過程においては、上記気化したメタノール(CHOH)及び水(HO)に対して、薄膜ヒータ146で概ね300℃の温度条件の雰囲気を設定することにより、49.4kJ/mol程度の熱エネルギーを吸熱して、上述した化学反応式(3)に示すように、水素(H)と微量の二酸化炭素(CO)が生成される。この二酸化炭素(CO)は、選択的に発電モジュール100の外側に排出される。なお、この水蒸気改質反応においては、水素(H)と二酸化炭素(CO)以外に副生成物として微量の一酸化炭素(CO)が生成される場合がある。
【0096】
ここで、水蒸気改質反応において、副生成物として生成される一酸化炭素(CO)を除去するための水性シフト反応部140b及び選択酸化反応部140cを水蒸気改質反応部140aの後段に付設して、水性シフト反応及び選択酸化反応からなる各過程を介して、一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO)及び水素(H)に変換して、有害物質の排出を抑止するように構成する。
具体的には、水性シフト反応部140bは、図6(a)に示す構造と概略同一であるが、燃料吐出部142aの代わりに水蒸気改質反応部140aで改質後の残存する一酸化炭素(CO)を微量に含む水素ガス(H)を吐出する吐出部が設けられ、かつ、薄膜ヒータ146と同様にTa−Si−O−N系の化合物からなる薄膜層を備えている。
【0097】
水性シフト反応部140bでの水性シフト反応過程において、一酸化炭素(CO)に対して水(水蒸気;HO)を反応させることにより40.2kJ/mol程度の熱エネルギーを発熱して、次の化学反応式(5)に示すように、二酸化炭素(CO)と水素(H)が生成される。
CO+HO →CO+H ・・・(5)
このとき発生される二酸化炭素(CO)は、発電モジュール100の外側に選択的に排出される。
【0098】
水性シフト反応部140bの少なくとも一方の後段に付設された選択酸化反応部140cは、水性シフト反応部140bで未反応の一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO)に改質するものであり、概略図6(a)から燃料気化部143a、水気化部143bを省略し、燃料吐出部142a、水吐出部142bの代わりに、それぞれ水性シフト反応部140bからの気体を吐出する吐出部と、発電モジュール100の外側から取り込んだ空気あるいは酸素(O)を吐出する吐出部と、が設けられ、かつ、薄膜ヒータ146と同様にTa−Si−O−N系の化合物からなる薄膜層を備えている。
【0099】
選択酸化反応過程において、水性シフト反応により二酸化炭素(CO)と水素(H)に変換されなかった一酸化炭素(CO)に対して酸素(O)を反応させることにより283.5kJ/mol程度の熱エネルギーを発熱して、次の化学反応式(6)に示すように、二酸化炭素(CO)が生成される。
CO+(1/2)O →CO ・・・(6)
なお、選択酸化反応部140cは、水蒸気改質反応部140aと水性シフト反応部140bとの間に設けてもよい。
上記一連の燃料改質反応により生成される水素(H)以外の微量の生成物(主に、二酸化炭素(CO))は、発電モジュール100に設けられた排出孔を介して、外気に排出される。
【0100】
次いで、本発明に係る電源システムに適用される発電モジュール100及び燃料パック210の形状について、図面を参照して簡単に説明する。
図7(a)〜図7(d)及び図7(e)〜図7(h)は、それぞれ本発明に係る電源システムに適用される一実施例の燃料パック及びホルダー部(発電モジュール)を上方向、前方向、横方向、後方向から見た外形形状を示す概略構成図である。
【0101】
図7(a)〜図7(d)及び図7(e)〜図7(h)に示すように、本実施例に係る電源システムは、発電用燃料が所定の条件で封入された燃料パック210と、該燃料パック210が装着自在及び取り外し自在に構成された発電モジュール100を収容したホルダー部220と、を備えて構成されている。ここで、燃料パック210は、例えば、燃料FLを封入する透明の分解性高分子ケースであって、未使用の場合には、バクテリア等の分解要因から保護するパッケージ211でケースの周囲を被覆されており、燃料パック210の装着時には、パッケージ211を剥離する構成になっている。また、燃料パック210は透明なケースで構成されるとともに、図7(a)に示すように、その側面の適当な位置に指標210cを設けた構成を有しており、これにより、燃料パック210内に残存する発電用燃料の量(残量)を視覚的に確認することができるようになっている。
【0102】
ホルダー部220は、大別して、上述した実施形態と同等の構成を有する発電モジュール100が収納され、正極端子EL(+)が設けられた発電部220aと、負極端子EL(−)が設けられた対向部220bと、発電部220aと対向部220bを連結するとともに、発電部220aと負極端子EL(−)を電気的に接続する連結部220cと、を有して構成されている。ここで、発電部220a、対向部220b及び連結部220cにより囲まれた貫通した空間SP1が、上記燃料パック210を結合した際の収納位置となる。
【0103】
さらに、ホルダー部220は、対向部220bの当接部分の周囲にバネ材等の弾性を有し、中央に孔を有する凸部220dと、凸部220dの孔及び発電モジュール100の副生成物供給経路104を連結する副生成物回収経路220eと、を備えている。なお、ホルダー部220の連結部220cには、図7(e)に示すように、図7(a)に示した燃料パック210の指標210cに代えて、又は、指標210cと併設して、指標220hが刻まれた構成を適用するものであってもよい。これにより、ホルダー部220に燃料パック210を結合した際に、発電用燃料の残量を簡易かつ正確に確認することができるようになっている。なお、この場合、連結部220cは、不透明である方が指標220hを視認しやすい。
【0104】
このような構成を有する電源システムにおいて、パッケージ211を剥がした燃料パック210が空間SP1に収納されると、後述する図8に示すように、燃料送出経路となる燃料送出管220fが、バネで姿勢が固定されている燃料供給弁210dを押し下げて、燃料パック210の漏出防止機能が解除されて、燃料パック210に封入された発電用燃料FLが、毛細管210f内及び燃料送出管220f内での表面張力により自動的に搬送されて発電モジュール100に供給される。
【0105】
ここで、電源システムは、燃料パック210が空間SP1に収納され、ホルダー部220に結合された状態において、例えば、上述した円柱形状の汎用の化学電池と略同等の外形形状及び寸法を有するように構成されている。また、このとき、燃料パック210が空間SP1に正常に収納された状態で、燃料パック210の燃料送出口210aが、発電部220a側の燃料送出経路に良好に当接して接続するように、燃料パック210の他端側210bを適当な力で押圧するとともに、燃料パック210がホルダー部220から不用意に脱落することを防止するために、燃料パック210の他端側210bと対向部220bの当接部分が、適当な押圧力で係合するように構成されていることが望ましい。
【0106】
これにより、上述したように、副電源部170から発電モジュール100内の動作制御部180に動作電力が供給される。また、本実施形態に係る電源システムが所定のデバイスDVCに装着されることにより、充電部160あるいは発電部110から出力された電力の一部が正極端子EL(+)及び対向部220bに設けられた負極端子EL(−)を介して、デバイスDVCに内蔵されたコントローラCNTに駆動電力(コントローラ電力)として供給される(初期動作)。
【0107】
したがって、汎用の化学電池と同様に簡易に取り扱うことができ、汎用の化学電池と同一又は同等の外形形状及び寸法(ここでは、円柱形状)を有するとともに、同一又は同等の電気的特性を有する電力を供給することができる完全互換の電源システムを実現することができるので、既存の携帯機器等のデバイスに対して、汎用の化学電池と全く同様に、動作電力として適用することができる。
【0108】
(具体的構成例)
次に、上述した各実施形態(各構成例を含む)のいずれかを適用した電源システム全体の具体構成例について、図面を参照して説明する。
図8は、本発明に係る電源システム全体の具体構成例を示す要部構成図である。ここでは、発電モジュールに設けられる副電源部170が、充電部160で蓄電されたチャージにより充電され、発電部110の燃料セルとして燃料改質方式の燃料電池が適用されているものとする。また、上述した各実施形態及び各構成例を適宜参照し、同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化する。
【0109】
図8に示すように、本具体構成例に係る電源システム300は、発電モジュール100と燃料パック210が装着自在及び取り外し自在に構成され、全体として円柱形状からなる外形形状を有している。また、これらの構成(特に、発電モジュール100)が、マイクロマシン製造技術等を用いて微小空間に構成され、汎用の化学電池と同等の外形寸法を有するように構成されている。
【0110】
発電モジュール100は、概略、円柱形状の円周側面に沿って延在する発電部110と、円柱状の発電モジュール100内部に、深さ及び幅がそれぞれ500μm以下の燃料流路及び流路内の空間を所定温度に設定する薄膜ヒータが形成された水蒸気改質反応部(水蒸気改質反応炉)140aと、深さ及び幅がそれぞれ500μm以下の燃料流路及び流路内の空間を所定温度に設定する薄膜ヒータが形成された水性シフト反応部(水性シフト反応炉)140bと、深さ及び幅がそれぞれ500μm以下の燃料流路及び流路内の空間を所定温度に設定する薄膜ヒータが形成された選択酸化反応部(選択酸化反応炉)140cと、発電モジュール100内部にマイクロチップ化されて収納された動作制御部180と、発電モジュール100の円柱側面から上記発電部110の空気極まで貫通し、外部の空気を取り入れる複数の通気孔(スリット)130aと、上記空気極側において生成される副生成物(水等)を液化(凝縮)して分離回収する分離回収部102と、回収した副生成物の一部を水蒸気改質反応部140aに供給する副生成物供給経路220eと、円柱上面から上記発電部110の空気極まで貫通し、少なくとも、発電部の燃料極側や水蒸気改質反応部140a、水性シフト反応部140b、選択酸化反応部140cにおいて生成され、非回収物質である副生成物(二酸化炭素等)を発電モジュールの外部に排出する排出孔106と、記載はないが副電源部170と、を備えて構成されている。
【0111】
水蒸気改質反応部140a及び水性シフト反応部140bは、反応に必要な水として、副生成物供給経路104を介して供給される発電部110で生成された水及び燃料パック210内の燃料FL内の水の少なくとも一方を利用する。また水蒸気改質反応部140a、水性シフト反応部140b及び選択酸化反応部140c内で各反応により生じた二酸化炭素は、排出孔106を介して発電モジュール100の外部に排出される。
【0112】
燃料パック210は、発電部110に供給される発電用燃料FLが充填、封入される燃料封入部190と、上記分離回収部102により回収された副生成物(水)を固定的に保持する副生成物回収部200と、発電モジュール100との境界にあって、発電用燃料FLの漏出を防止する燃料供給弁210d(燃料漏出防止手段)と、回収保持された副生成物(回収物)の漏出を防止する副生成物取込弁210e(回収物漏出防止手段)と、を有して構成されている。ここで、燃料パック210は、例えば、分解性プラスチックにより形成されている。
【0113】
このような構成を有する燃料パック210を発電モジュール100と結合すると、燃料送出管220fがバネで姿勢が固定されている燃料供給弁210dを押し下げて燃料パック210の漏出防止機能が解除され、燃料パック210に封入された発電用燃料FLが毛細管210f内及び燃料送出管220f内での表面張力により発電モジュール100まで自動的に搬送される。また、燃料パック210を発電モジュール100から外すと、燃料供給弁210dがバネの復元力で元の閉じた状態になって、発電用燃料FLが漏れないようになる。
【0114】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る化学反応装置によれば、少なくとも一つの反応領域を備え、該反応領域において反応流路等の機能要素が微小空間にミクロンオーダーに微細化されて形成され、該反応流路内で第1の流体物質を水素を含む第2の流体物質に変換する化学反応を生じる化学反応装置において、反応流路が形成された主基板に閉止基板を接合する際に、反応領域において、反応流路及び隣接する反応流路間を含む流路形状の全域に対して、この領域を含む、より大きな領域に薄膜ヒータが形成されているので、基板相互の位置合わせマージンを大きく取ることができ、比較的容易に位置合わせを行うことができる。したがって、高精度の製造機器等を必要とすることなく、基板接合工程における位置合わせ作業を簡素化することができ、製品コストを抑制した信頼性の高い化学反応装置を提供することができる。また、薄膜ヒータを構成する上記Ta−Si−O−N系の化合物の密度が7 . 0×10 22 cm 以上に設定されることにより、通常の金属や酸化物(例えば、Ta+Si+O系の化合物)により薄膜ヒータを形成した場合に比較して、簡易に高い密度を実現することができ、反応流路内で生成される水素等の薄膜ヒータへの侵入を抑制して、膜質の劣化を防止することができる。
【0115】
ここで、薄膜ヒータがタンタル(Ta)、シリコン(Si)、酸素(O)、窒素(N)からなるTa−Si−O−N系の化合物の薄膜層により構成され、かつ、薄膜ヒータが反応流路内に露出するように構成することにより、薄膜ヒータから反応流路への熱エネルギーの伝熱特性を大幅に向上することができるので、反応流路内部で生じる化学反応の反応効率を改善することができる。
【0116】
特に、薄膜ヒータを構成するTa−Si−O−N系の化合物における酸素及び窒素の合計含有率を、概ね56%以下(好ましくは、概ね35%乃至56%の範囲)の任意の数値、もしくは、化合物の抵抗率を、概ね0.5mΩcm乃至10mΩcmの範囲のうち、任意の数値に設定することにより、薄膜ヒータとして良好な発熱特性が得られるとともに、反応流路内での化学反応を効率よく促進することができる。
【0117】
また、薄膜ヒータを構成する上記Ta−Si−O−N系の化合物を水素化処理して得られるTa−Si−O−N−Hからなる化合物を、薄膜ヒータとして適用することにより、例えば、シリコン基板からなる主基板と薄膜ヒータ間に陽極接合を適用することができるので、化学反応装置の製造プロセスを簡易化して効率化しつつ、各基板と薄膜ヒータとを良好に接合することができる。
さらに、上記Ta−Si−O−N系の化合物は、主基板及び閉止基板に適用されるガラス基板やシリコン基板等に対して、極めて良好な密着性を有しているので、薄膜ヒータの発熱に伴って熱膨張や熱収縮が生じた場合であっても、主基板及び閉止基板との間でストレスが比較的生じにくく、剥離や破損の発生を良好に抑制することができる。
【0119】
また、本発明に係る電源システムによれば、上述したような化学反応装置を燃料供給部に適用した構成を有し、薄膜ヒータから所定の熱エネルギーを供給することにより、微小空間に形成された反応流路内で、例えば、蒸発反応や水蒸気改質反応、水性シフト反応、選択酸化反応等を生じさせ、アルコール系の液体燃料(第1の流体物質)から高い変換効率で水素ガス(第2の流体物質)を生成することができるとともに、有害な副生成物の排出を極力抑制することができるので、燃料改質型の燃料電池等を備えた電源システムにおける発電効率の向上や、システム構成の大幅な小型化を図りつつ、実用化に極めて有益な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る化学反応装置(マイクロリアクタの反応流路部)の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る化学反応装置(マイクロリアクタ)の製造プロセスの一例を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係る化学反応装置に適用される薄膜ヒータの材料組成と密度との関係を示す実験データである。
【図4】本発明に係る化学反応装置(マイクロリアクタの反応流路部)の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係る化学反応装置を燃料供給部に適用した電源システムの構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る化学反応装置を燃料供給部に適用した場合の具体構成例を示す図である。
【図7】本発明に係る電源システムに適用される燃料パック及びホルダー部の外形形状を示す概略構成図である。
【図8】本発明に係る電源システムの要部構成の具体例を示す概略構成図である。
【図9】従来技術における化学反応装置(マイクロリアクタの反応流路部)の概略構成を示す図である。
【図10】従来技術における化学反応装置(マイクロリアクタ)の製造プロセスの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
10 主基板
20 反応流路
30 閉止基板
40A、40B 薄膜ヒータ

Claims (22)

  1. 少なくとも一つの反応領域を備え、該反応領域において連続的に形成された反応流路を有し、該反応流路内で第1の流体物質を水素を含む第2の流体物質に変換する化学反応を生じる化学反応装置において、
    前記反応領域において、前記反応流路の流路形状の全域を含む領域に対応して平面形状を有して形成され、前記反応流路に少なくとも一部が露出して該反応流路に所定の熱量を供給する、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、酸素(O)、窒素(N)からなる化合物の薄膜層により構成され、前記化合物の密度が、7.0×1022/cm以上に設定された発熱抵抗体からなる温度調整層を備えたことを特徴とする化学反応装置。
  2. 前記化学反応装置は、前記反応領域を複数有し、該各反応領域において互いに異なる化学反応を生じ、前記反応流路は少なくとも前記各反応領域毎に形成されていることを特徴とする請求項1記載の化学反応装置。
  3. 前記化学反応装置は、
    前記反応領域に対応して、一面側に前記反応流路が溝状に形成された第1の基板と、
    前記反応領域に対応して、一面側に前記温度調整層が前記反応流路領域に対応して形成された第2の基板と、
    を備え、
    前記第1の基板の一面側と前記第2の基板の一面側が対向して、前記反応流路の溝開口端が閉止され、前記反応流路内に前記温度調整層の一部が露出するように接合されていることを特徴とする請求項1又は2記載の化学反応装置。
  4. 前記化学反応装置は、少なくとも、前記第1の基板及び第2の基板が微小基板からなり、前記反応流路がミクロンオーダーの微細化された流路形状を有して形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置。
  5. 前記温度調整層は、前記化合物における酸素及び窒素の合計含有率が、56%以下の任意の数値に設定されていることを特徴とする請求項1記載の化学反応装置。
  6. 前記温度調整層は、前記化合物における酸素及び窒素の合計含有率が、35%乃至56%の範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴とする請求項記載の化学反応装置。
  7. 前記温度調整層は、前記薄膜層のシート抵抗が、10Ω/□乃至100Ω/□の範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴とする請求項又はに記載の化学反応装置。
  8. 前記温度調整層は、前記化合物の抵抗率が、0.5mΩcm/□乃至10mΩcmの範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の化学反応装置。
  9. 前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記反応流路内の少なくとも一部に所定の触媒層が設けられ、前記温度調整層から前記触媒層に供給される所定の熱量に基づいて、吸熱又は発熱を伴う前記化学反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置。
  10. 前記第1の流体物質は、アルコール系の気体燃料と酸素を含む混合ガスであり、前記第2の流体物質は、水素ガスであって、
    前記化学反応装置は、少なくとも、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で水蒸気改質反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置。
  11. 前記第1の流体物質は、アルコール系の液体燃料又は水であり、前記第2の流体物質は、前記第1の流体物質が気化した燃料ガス又は水蒸気であって、
    前記化学反応装置は、少なくとも、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で気化反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置。
  12. 前記第1の流体物質は、一酸化炭素ガスと酸素を含む混合ガスであり、前記第2の流体物質は、水素ガス及び二酸化炭素ガスであって、
    前記化学反応装置は、少なくとも、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で水性シフト反応及び選択酸化反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置。
  13. 少なくとも一つの反応領域を備え、該反応領域において連続的に形成された反応流路を有し、該反応流路内で第1の流体物質を水素を含む第2の流体物質に変換する化学反応を生じる化学反応装置を備え、該化学反応装置により生成された前記第2の流体物質を直接的又は間接的に用いて電力を発生する電源システムであって、
    前記反応領域において、前記反応流路の流路形状の全域を含む領域に対応して平面形状を有して形成され、前記反応流路に少なくとも一部が露出し、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、酸素(O)、窒素(N)からなる化合物の薄膜層により構成され、前記化合物の密度が、7.0×1022/cm以上に設定された発熱抵抗体からなる温度調整層を有し、該温度調整層から前記反応流路に所定の熱量を供給して、前記反応流路内で吸熱又は発熱を伴う前記化学反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴とする電源システム。
  14. 前記化学反応装置は、前記反応領域を複数有し、該各反応領域において互いに異なる化学反応を生じ、前記反応流路は少なくとも前記各反応領域毎に形成されていることを特徴とする請求項13記載の電源システム。
  15. 前記化学反応装置は、
    前記反応領域に対応して、一面側に前記反応流路が溝状に形成された第1の基板と、
    前記反応領域に対応して、一面側に前記温度調整層が前記反応流路領域に対応して形成された第2の基板と、
    を備え、
    前記第1の基板の一面側と前記第2の基板の一面側が対向して、前記反応流路の溝開口端が閉止され、前記反応流路内に前記温度調整層の一部が露出するように接合されていることを特徴とする請求項13又は14記載の電源システム。
  16. 前記化学反応装置は、少なくとも、前記反応流路がミクロンオーダーの微細化された流路形状を有して微小空間に形成されていることを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の電源システム。
  17. 前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記反応流路内の少なくとも一部に所定の触媒層が設けられ、前記温度調整層から前記触媒層に供給される所定の熱量に基づいて、吸熱又は発熱を伴う前記化学反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴とする請求項13乃至16のいずれかに記載の電源システム。
  18. 前記第1の流体物質は、アルコール系の気体燃料と酸素を含む混合ガスであり、前記第2の流体物質は、水素ガスであって、前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で水蒸気改質反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴とする請求項13乃至17のいずれかに記載の電源システム。
  19. 前記第1の流体物質は、アルコール系の液体燃料又は水であり、前記第2の流体物質は、前記第1の流体物質が気化した燃料ガス又は水蒸気であって、
    前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で気化反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴とする請求項13乃至17のいずれかに記載の電源システム。
  20. 前記第1の流体物質は、一酸化炭素ガスと酸素を含む混合ガスであり、前記第2の流体物質は、水素ガス及び二酸化炭素ガスであって、
    前記化学反応装置は、前記反応領域において、前記温度調整層から供給される熱量に基づいて前記反応流路内で水性シフト反応及び選択酸化反応を生じることにより、前記第1の流体物質から前記第2の流体物質を生成することを特徴とする請求項13乃至17のいずれかに記載の電源システム。
  21. 前記温度調整層は、前記化合物における酸素及び窒素の合計含有率が、35%乃至56%の範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴とする請求項13記載の電源システム。
  22. 前記温度調整層は、前記化合物の抵抗率が、0.5mΩcm/□乃至10mΩcmの範囲のうち、任意の数値に設定されていることを特徴とする請求項21記載の電源システム。
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