JP4507178B2 - 化学反応装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化学反応装置の製造方法に関し、特に、微小基板に形成された反応流路における反応により、所望の流体物質の生成が可能な化学反応装置の製造方法に関する。
従来、化学反応工学の分野においては、流体化された混合物質を反応流路(チャネル)内に設けられた触媒による化学反応(触媒反応)により、所望の流体物質を生成する化学反応装置(「流路反応器」、又は、「チャネルリアクタ」ともいう)が知られている。
近年、このような化学反応装置の技術分野に、集積回路等の半導体デバイス製造技術で蓄積された微細加工技術等を導入した、いわゆる、マイクロマシン製造技術を適用して、例えば、単一のシリコンチップ上の微小空間にミリメートルオーダー又はミクロンオーダーの混合器や反応流路、分析器等の各種機能要素を集積化したマイクロリアクタ(又は、「マイクロチャネルリアクタ」ともいう)の研究開発が活発に行われている。
ここで、従来技術におけるマイクロリアクタの概略構成について、図面を参照して簡単に説明する。
図12は、従来技術におけるマイクロリアクタの基本構造を示す概略構成図である。
マイクロリアクタは、概略、図12(a)、(b)、(c)に示すように、例えば、シリコン(Si)等の微小な主基板10pの一面側にフォトエッチング技術等を用いて、ミクロンオーダーの幅及び深さを有する溝部からなる反応流路(マイクロチャネル)11pを形成し、該主基板10pの一面側に、上記反応流路11pの開放部(上記溝部の開口端)を閉止するようにガラス(SiO)等の閉止基板20pを接合した構成を有している。
なお、このようなマイクロリアクタにおいて、反応流路で促進される化学反応(触媒反応)が、所定の熱条件による吸熱触媒反応を伴う場合には、図12(b)に示すように、上記反応流路11pの内壁面に所定の触媒を付着した触媒層12pが形成されるとともに、該化学反応時に反応流路11p(詳しくは、触媒層12p)に所定の熱エネルギーを供給するための発熱抵抗体等からなる薄膜ヒータ30pが形成された構成が適用される。ここで、薄膜ヒータ30pは、例えば、図12(b)、(c)に示すように、閉止基板20pの他面側(主基板10pとの接合側とは反対側の面)に、上記反応流路11pの形状(流路形状)と一致又は近似する形状を有するように形成される。
なお、図12(a)、(c)においては、反応流路10p及び薄膜ヒータ30pの形状を明確にするために、便宜的にハッチングを施して示した。また、図12においては、化学反応装置の側部(主基板10pの側方端面)に反応流路11pへの流体物質の導入部13p及び排出部14pを設けた構成を示したが、主基板10p又は閉止基板20pに対して垂直方向(すなわち、図12(a)、(c)において、紙面に垂直方向)に上記導入部13p及び排出部14pが設けられた構成を有するものであってもよい。
ここで、図12に示したようなマイクロリアクタの構成については、例えば、特許文献1等に、一方のガラス基板の一面側(接合面側)に所定の形状を有する流路となる溝部を形成し、該溝部の開放部を閉止するように、他方側の上部ガラス基板を重ねて接着もしくは加熱融着した構成が記載されている。
また、主基板10pと閉止基板20pとの接合性や密着性が良好でない場合、反応流路11pを流れる流体物質の漏洩による反応特性の劣化や動作不良、周辺機器への汚染等を生じたり、薄膜ヒータ30pからの熱エネルギーによる基板の熱膨張等により、接合面の剥離や基板の破損等を生じたりするため、極めて良好な接合状態が得られる手法を適用することが必要となる。このような要望に対応可能な接合方法としては、陽極接合が有効と考えられている。
図13は、従来技術におけるマイクロリアクタの製造プロセスに適用される陽極接合法を示す概念図である。ここで、上述したマイクロリアクタと同等の構成については、同一の符号を付して示し、反応流路及び薄膜ヒータについては図示を省略した。
陽極接合は、図13(a)に示すように、例えば、シリコン(Si)の主基板10pの一面側に、必要に応じて金属膜を含む接合金属膜(酸化性金属膜単独であってもよい)15pを、周知の蒸着法やスパッタ法により形成し、その後、図13(b)に示すように、接合金属膜15p上にガラス(SiO)等の閉止基板20pを重ね、数百℃程度の温度条件下で、接合金属膜15pと閉止基板20p間に数百V程度の直流電圧を印加することにより、接合金属膜(酸化金属膜)15p中の金属が閉止基板(ガラス基板)20pの酸素分子と結合して、接合強度の高い接合が実現されるというものである。
ここで、陽極接合の原理によれば、閉止基板であるガラス(SiO)基板の酸素分子と結合して良好な接合状態が得られる接合金属膜に適用される金属としては、例えば、アルミニウム(Al)やニッケル(Ni)等が知られているが、これらの金属と同等の挙動を示す非金属であるシリコン(Si)の薄膜を、上記接合金属膜に替えて適用した場合であっても、ガラス基板との間で良好な接合状態が得られることが知られている。すなわち、図13(c)に示すように、シリコンからなる主基板(シリコン基板)10pとガラスからなる閉止基板(ガラス基板)20pとは、直接陽極接合することにより良好な接合状態が得られる。
特開2004−53545号公報 (第5頁〜第6頁、図1〜図4)
上述したように、従来技術におけるマイクロリアクタにおいては、主基板と閉止基板との良好な接合状態(接合強度の高い接合)を実現するために、主基板と閉止基板間に接合金属膜を介在させて陽極接合した構成や、例えば、シリコンからなる主基板とガラスからなる閉止基板を直接陽極接合した構成が適用されている。
しかしながら、上述したような接合構造のうち、シリコン基板からなる主基板とガラス基板からなる閉止基板とを直接陽極接合する構成においては、接合金属膜を形成する必要がないため、製造プロセスの簡素化を図ることができるものの、主基板となるシリコン基板が非常に高価であるため、マイクロリアクタの製造コストが高騰するという問題を有していた。これは、主基板と閉止基板間にタンタルTaのような接合金属膜を介在させた構成においても同様であり、主基板としてシリコン基板を適用した場合には、製造コストの高騰を招くという問題を有していた。
そのため、主基板と閉止基板間に接合金属膜を介在させた構成において、マイクロリアクタをより小型薄型化するために、スパッタ等により接合金属膜が被膜される基板の板厚を薄くすると、接合金属膜によるテンションの影響を受けて、接合金属膜が設けられた基板の反り返り等が生じ、特に0.2mm以下の厚さの基板では反りが顕著になり、対向する基板との接合時に良好な接合状態が得られないという問題を有していた。なお、接合金属膜によるテンションの影響については、後述する発明の実施形態において詳しく説明する。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、比較的安価な基板材料を用いて、簡易な製造プロセスでより良好な接合状態を実現することができるとともに、一層の小型薄型化が可能な化学反応装置の製造方法を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、所定の反応流路内で化学反応を生じる化学反応装置の製造方法において
一面側に溝状の前記反応流路が形成されたガラス製の第1の基板と、前記第1の基板に対向して設けられ、前記反応流路の開放端を閉止するガラス製の第2の基板とを準備する基板準備工程と
前記第1の基板及び前記第2の基板のうち一方の基板に対してスパッタ法によりタンタル原子とシリコン原子とからなる金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記一方の基板に形成された前記金属膜を前記第1の基板及び前記第2の基板のうち他方の基板に接してから前記金属膜を陽極接合により酸化する接合工程と、を含むことを特徴とする。
前記基板準備工程において準備する前記一方の基板は、その板厚が0.2mm以下であると特に顕著な作用をもたらす。
前記金属膜形成工程において、前記一方の基板と前記金属膜との間での引っ張り応力又は圧縮応力の差20×10 N/cm 以下に設定するものでよい。
前記金属膜形成工程において形成する前記金属膜は、非晶質の膜を含むことが好ましい。
前記基板準備工程において、前記第1の基板の前記反応流路の内壁面に第1の流体物質を第2の流体物質に変換する反応を促進する触媒物質付着形成する触媒形成工程を含むことを特徴とする。
本発明に係る化学反応装置の製造方法は、一面側に溝状の前記反応流路が形成されたガラス製の第1の基板と、前記第1の基板に対向して設けられ、前記反応流路の開放端を閉止するガラス製の第2の基板とを準備する基板準備工程と、前記第1の基板及び前記第2の基板のうち一方の基板に対してスパッタ法によりタンタル原子とシリコン原子とからなる金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記一方の基板に形成された前記金属膜を前記第1の基板及び前記第2の基板のうち他方の基板に接してから前記金属膜を陽極接合により酸化する接合工程と、を含むので、一方の基板に接合前の状態で接続された膜として基板に印加されるテンションを低くして反りを抑制し、平板性を良好に保持することができる。
特にマイクロリアクタのような超小型の化学反応装置の場合、基板を薄くすることが好ましいが、薄くする程基板の剛性は小さくなり、酸化膜の接合前の膜が成膜されると、この膜によって反りやすくなってしまうので特に好適である。
以下、本発明に係る化学反応装置及び該化学反応装置を適用した電源システムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<化学反応装置>
まず、本発明に係る化学反応装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る化学反応装置及びその製造プロセスの一実施形態を示す概略図である。ここで、図1においては、化学反応装置の断面構造のみを示すが、平面構造については、上述した従来技術に示した構成(図12)と略同等であるので、図示を省略し、必要に応じて、図12を参照することとする。
本発明に係る化学反応装置(マイクロリアクタ)は、概略、図1(a)に示すように、一面側に所定の幅及び深さを有する反応流路11が形成されたガラス(SiO)等の主基板(第1の絶縁性基板)10と、該主基板10の一面側に対向するように設けられ、他面側に所定の平面形状を有する薄膜ヒータ(温度調整層)30が形成されたガラス(SiO)等の副基板(第2の絶縁性基板)20と、主基板10及び副基板20間に介在するように設けられた接合酸化膜(酸化膜)21と、を相互に積層するように接合した構成を有している。
ここで、主基板10に形成された反応流路11の内壁面には、例えば、該反応流路11内での化学反応(触媒反応)を促進するための触媒層12が形成され、また、副基板20の他面側(主基板との対向面とは反対側の面)に設けられた薄膜ヒータ30は、例えば、図12(c)に示した構成と同様に、上記反応流路11の平面形状(流路形状)に対応する形状を有して形成されている。なお、薄膜ヒータ30は、副基板20の他面側に形成された構成に限定されるものではなく、例えば、主基板10の他面側であって、反応流路11の平面形状(流路形状)に対応する領域に形成されるものであってもよい。
また、図1(a)に示した構成において、少なくとも、副基板20を構成するガラス基板は、例えば、0.2mm以下の板厚を有し、主基板10と副基板20間に介在する接合酸化膜21は、例えば、数百nm(数千Å)程度の膜厚を有する陽極接合プロセスで酸素原子と共有結合可能な金属膜を陽極接合によって酸化した膜により構成されている。特に、本発明においては、酸化される前の状態の膜材料として、低テンションのタンタルシリコン(TaSi)を良好に適用することができる。なお、本発明の具体的な構成(板厚や膜厚、材質等)については、後に詳しく検証する。
このような構成を有する化学反応装置の製造プロセスは、概略、図1(b)に示すように、まず、ガラス(SiO)からなる主基板10の一面側に、フォトエッチング技術等を用いて、例えば、ミクロンオーダーの幅及び深さを有する溝部11aを形成し、溝部11aにアルミニウムを被膜後、陽極酸化して酸化アルミニウムからなる多孔質膜を形成する。その後、銅−亜鉛(Cu−Zn)系の触媒物質の懸濁液に浸漬してアニールすることにより、溝部11aの多孔質膜の内壁面に触媒粒子が担持された触媒層12を形成する。
この主基板10側の溝部11aの形成工程とは独立して、例えば、板厚0.2mm以下のガラス(SiO)からなる副基板20の一面側に、スパッタ法により数百nm厚の非晶質構造のタンタルシリコン(TaSi)の薄膜21aを形成する。薄膜21aの厚さは200nm〜500nm程度が陽極接合には適しているが、厚く堆積させすぎると、皺が生じてしまい膜厚が不均一になってしまうので200nm〜300nmの膜厚が好ましい。そして、副基板20の他面側に例えば、副基板20の他面側に金(Au)を含む発熱抵抗体等からなる薄膜ヒータ30を形成する。
次いで、上記主基板10の一面側と、副基板20の一面側に形成された薄膜21aとを対向するように重ねて、図1(c)に示すように、300℃〜800℃の温度条件で、主基板10と薄膜21aとの間に300V〜2000Vの直流電圧を印加して、陽極接合法により薄膜21aが主基板10のガラス成分である酸素原子と結びついて接合酸化膜21となって主基板10と副基板20とを接合する。これにより、主基板に形成された溝部11aの開口端が副基板及び接合酸化膜21により閉止され、所定の流路形状を有する反応流路11が形成される。
なお、ここでは、図1(b)において、副基板側にスパッタ法により薄膜21aを形成するプロセスを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、予め主基板10の一面側に薄膜21aを形成した後、溝部11aを形成し、副基板20を薄膜21aと接合することにより、溝部11aを閉止するようにしてもよい。また、例えば、副基板20の他面側に薄膜ヒータ30を形成した後、一方の面側に薄膜21aを形成するようにしてから陽極接合を行ってもよい。
このような構成を有する化学反応装置において、例えば、メタノールと水からなる原料物質を気化した混合流体(混合ガス;第1の流体物質)を上記反応流路11内に導入するとともに、図示を省略したヒータ電源により薄膜ヒータ30に所定の電圧を印加して加熱し、反応流路11内に付着形成された触媒層12に所定の熱エネルギーを供給することにより、吸熱触媒反応(メタノール水蒸気改質反応)が生じて水素ガス(第2の流体物質)と少量の二酸化炭素が生成される。なお、メタノール等の炭化水素系(又は、アルコール系)の原料から触媒反応により水素ガスを生成する技術は、近年、本格的な実用化に向けての研究開発が目覚ましい燃料改質供給方式の燃料電池における燃料供給装置にも適用される技術であり、本発明に係る化学反応装置の燃料電池への適用例については詳しく後述するものとする。
次に、上述した構成を有する化学反応装置に適用される薄膜21aの材質及び特性について、詳しく説明する。
本願発明者らは、本発明に係る化学反応装置に適用される接合酸化膜21となる薄膜21aに適用が可能な材料について、種々の実験を行い、その有効性について検証したところ、上述したように、タンタルシリコン(TaSi)からなる金属膜が極めて良好な特性を示すことを見出した。以下、その理由を具体的に説明する。
図2は、本発明に係る化学反応装置に適用される薄膜21aの材質とストレス特性との関係を示す実験結果である。また、図3は、比較例としてシリコン基板上に形成したタンタル薄膜の結晶性を検証のためのX線回折測定の結果を示すデータであり、図4は、シリコン基板上に形成したタンタルシリコン薄膜の結晶性を検証のためのX線回折測定の結果を示すデータであり、図5は、シリコン基板のX線回折測定の結果を示すデータである。
本願発明者らは、薄膜21aに適用が可能な種々の金属材料(金属性材料)を用いて、図1に示したような構成を有する化学反応装置を製造し、その特性の良否を判断した。それによると、ガラス基板又はシリコン(Si)基板(例えば、副基板20)の一面側に薄膜21aとなる金属の薄膜をスパッタ法により形成するプロセスにおいて、例えば、ガラス基板又はSi基板の板厚が0.7mm以上の場合では、100nm(1000Å)〜1μm程度の膜厚を有するタンタル(Ta)からなる薄膜21aをスパッタ法により形成した場合、ガラス基板又はSi基板の平板性は良好に保持されるのに対して、化学反応装置の小型薄型化のために、ガラス基板又はSi基板の板厚を0.2mm以下にした場合では、同様のプロセス条件において、ガラス基板又はSi基板の平板性が損なわれ、反り返りが発生することが確認された。
このような現象は、金属薄膜等に特有の結晶性に伴うテンション(伸張力又は圧縮力)に起因して、基板と薄膜21aとの間でストレス(引っ張り応力又は圧縮応力の差)が生じることによるものと考えられる。そこで、薄膜21aに適用が可能な各種の金属材料(金属性材料)について、シリコン基板上に膜厚200nm(2000Å)の薄膜を形成した場合に生じるストレスについて測定したところ、図2に示すような結果を得た。
図2に示すように、上述したベタ膜のタンタル(Ta;図中、SPb参照)においては、ストレス値が28×10 N/cm (28×10 10 dyn/cm 程度と極めて高く、かつ、X線回折の結果においても、タンタル特有の回折角度(2θ)である概ね33〜34付近degに、幅が狭く極めて高い強度(概ね12000CPS程度)を示す鋭峻なピークが得られ、これにより、この実験においてシリコン基板上に形成されたタンタルの薄膜は結晶性が極めて高い膜質(単結晶性)を有し、これによる高いテンションに起因して、シリコン基板との間で高いストレスを生じ、基板の反り返り等の現象を招くことが判明した。
特にタンタルのみからなる薄膜21aのように金属単体の場合、金属結合によって結晶性が高く、厚さ方向にわたってヒビが入りやすくなり、結果としてヒビによって露出した部分から陽極接合前に酸化が進行してしまい、陽極接合を行っても良好に接合できない状態になっていた。
また、上述したタンタルをシリコン基板上に所定の等間隔でライン状に形成した場合(図中、SPf参照)においては、ストレス値が23×10 N/cm (23×10 10 dyn/cm 程度にまで低減するものの、依然として高い数値を示すことが判明した。
これに対して、タンタルシリコン(TaSi;図中、SPe参照)においては、ストレス値がほとんど0N/cm (0dyn/cm 程度と極めて低く、かつ、X線回折の結果においても、タンタル特有の回折角度(2θ)の近傍である概ね35〜40deg付近に、幅が広く比較的低い強度(概ね5000CPS程度)を示す比較的緩やかなピークが得られ、これにより、この実験においてシリコン基板上に形成されたタンタルシリコンの薄膜は結晶性が比較的低い膜質(アモルファス性)を有し、テンションが極めて低いことが判明した。したがって、シリコン基板との間に生じるストレスが抑制されるため、基板の平板性を良好に保持することができることが判明した。つまり陽極接合時に酸化してガラスと接合するのに優れたTaに添加剤としてSiを加えることで薄膜21aの結晶性が低下して柔軟になり、陽極接合に適した厚さに成膜しても基板が陽極接合に困難な程度に反り返ることがない。
このように、比較的薄い基板上に結晶性の低い金属薄膜を形成することにより、基板との間で生じるストレスを低減することができ、特に、今回、本願発明者らは、上述したような実験結果に鑑み、種々検討を重ねた結果、0.2mm以下の板厚を有するガラス基板上に、薄膜21aを形成する場合、該薄膜21aに適用される薄膜材料として20×10 N/cm (20×10 10 dyn/cm 以下のストレス値を有する金属材料(金属性材料)であれば、上述したタンタルシリコンに限らず、良好に適用することができることを見出した。
なお、上述したタンタル及びタンタルシリコン以外の材質については、図2に示すように、例えば、タンタルと二酸化シリコンとの合金(Ta−SiO;図中、SPa参照)、及び、二酸化シリコン(石英ガラスSiO;図中、SPc参照)においては、10×10 N/cm (10×10 10 dyn/cm 以下の比較的低いストレス値が得られるものの、これらは、接合される対象となる基板中のガラス成分の酸素原子と結合性が弱く、本発明に係る薄膜21aに良好に適用することができないという結論に達した。
また、タングステンチタン(WTi;図中、SPd参照)においては、概ね17〜18×10 N/cm (17〜18×10 10 dyn/cm 程度の比較的低いストレス値が得られるものの、大気中において酸化されやすいという特性を有している。一方、化学反応装置の製造プロセスにおいては、副基板の一面側に薄膜21aを形成する処理や、上述した主基板と副基板(具体的には、一面側に形成された薄膜21a)との陽極接合を、酸素を含む通常の大気を導入した炉内(大気雰囲気中)で加熱して実行できることが低コスト化やプロセスの簡易化の観点から望ましい。
そのため、比較的酸化しやすい金属材料(すなわち、タングステンチタン等)を薄膜21aに適用する場合、陽極接合をする前の段階(例えば、当該膜の形成時や形成後の保管時等)において大気中の酸素により酸化が進行しないように、酸素を含まない特殊な雰囲気下(例えば、真空雰囲気中)で薄膜21aを形成したり、保管したりする等の措置を講じなければならないため、プロセスの複雑化や基板の取り扱いの煩雑化を招くという問題を有している。
したがって、薄膜21aに適用される金属材料(金属性材料)としては、上記タングステンチタンに比較して、大気中(酸素を含む雰囲気中)では酸化されにくく、陽極接合の際に所定の温度条件及び電圧印加条件を課した状態で酸化が促進される金属材料である、上記タンタルシリコンの方がより適しているという結論に達した。
なお、図3に示した実験データにおいて、タンタル特有の回折角度ではない65deg付近に微小なピーク(強度4000CPS程度)が認められ、また、図4に示した実験データにおいても、回折角度55deg付近に微小なピーク(強度4000CPS程度)が認められる。このピークについて、上記各種金属材料による薄膜を形成するために適用したシリコン基板単体を用いてX線回折を行うと、図5に示すように、シリコン特有の鋭峻なピークが回折角度55deg付近に観測された。これにより、図4における微小なピークは、基板を構成するシリコン原子によるものと推定され、図3における微小なピークは、詳細は不明であるものの、X線回折測定器内の不純物やシリコン基板に含まれる不純物等に起因するものと推定される。
次いで、上述した薄膜21aに適用されるタンタルシリコンの組成比率について、詳しく説明する。
図6は、シリコン基板上に形成されたタンタルシリコン膜の組成比率を示す図である。
上述した実験において、シリコン基板上にスパッタ法により形成されるタンタルシリコン膜のうち、図2に示したように、ストレス値が極めて小さい値となる場合のタンタルとシリコンの組成比率を、当該膜の表面から膜厚(深さ)方向に測定すると、図6に示すように、タンタルシリコン膜の膜厚に相当する200nm(2000Å)の深さまで、タンタル0.7に対してシリコン0.3の組成比率(モル比率)が一定であり、均質な膜質を有する薄膜21aが形成されていることが判明した。なお、深さ200nmよりも深い範囲では、シリコン基板の組成比率(シリコン1.0、タンタル0)を示した。
以上のことから、本実施形態に係る化学反応装置においては、溝状の反応流路が形成されたガラス基板からなる主基板と、該反応流路の開放端を閉止するための、板厚が0.2mm以下のガラス基板又はSi基板からなる副基板との間に、数百nm(数千Å)の膜厚を有する薄膜を形成した際のストレス値が概ね20×10 N/cm (20×10 10 dyn/cm 以下となる金属材料、例えば、タンタル0.7に対してシリコン0.3の組成比率を有するタンタルシリコンからなる薄膜21aを介在させた構成を有することにより、当該薄膜21aを副基板にスパッタ法により形成した場合であっても、副基板への薄膜21aのテンションの影響を抑制して、副基板の反り返り等の発生を抑制することができる。
したがって、副基板上に形成された薄膜21aと主基板を構成するガラス基板とを陽極接合により接合する場合であっても、平板性を保持しつつ、良好な接合状態を実現することができるので、反応流路からの流体物質の漏洩による反応特性の劣化や動作不良等の発生や、基板相互の剥離や破損等を抑制して、信頼性の高い化学反応装置を実現することができる。
また、上記薄膜21aに適用されるタンタルシリコンは、酸素を含む大気中では酸化されにくく、所定の温度条件及び電圧印加条件下で酸化反応が進行する特性を有していることから、化学反応装置の製造プロセスにおいて、薄膜21aが形成された副基板を大気中(酸素を含む雰囲気下)で搬送や保管した場合であっても、薄膜21aの表面が酸化されにくく、陽極接合における条件下でのみ酸化が促進されるので、基板の取り扱いが容易になり、プロセスの簡易化や低コスト化を図ることができる。
さらに、本実施形態に係る化学反応装置によれば、主基板及び副基板として、ガラス基板を適用することができるので、主基板としてシリコン基板等を適用した場合に比較して、化学反応装置を安価に製造することができる。
<電源システムへの適用例>
次に、本発明に係る化学反応装置を燃料電池を備えた電源システムに適用した場合の具体例について説明する。
図7は、本発明に係る化学反応装置を適用可能な電源システム(燃料電池システム)の一実施形態の全体構成を示す概略ブロック図である。なお、ここでは、電源システムとして、燃料改質供給方式を採用した固体高分子型の燃料電池を備えた構成について説明する。
図7に示すように、本実施形態に係る電源システム(燃料電池システム)100は、概略、メタノールCHOH等の炭化水素系の発電用燃料と水HOが個別に封入された燃料カートリッジ(発電用燃料容器)120と、該燃料カートリッジ120から取り出された発電用燃料(メタノールCHOH)を改質して水素ガスHを取り出す改質部(改質手段)112と、水素ガスHと酸素Oとを用いた電気化学反応により電気エネルギーを生成する固体高分子型の燃料電池からなる発電セル部(燃料電池本体)111と、発電セル部111における電気化学反応により生成された副生成物である水HOを回収するとともに、少なくとも発電セル部111の電解質膜(イオン交換膜)への当該水の供給状態を制御する水回収制御部(水回収制御手段)113と、燃料カートリッジ120に封入された発電用燃料の改質部への供給状態を制御する燃料供給制御部(燃料供給制御手段)114と、少なくとも燃料カートリッジ120に封入された水の発電セル部111の電解質膜への供給状態を制御する水供給制御部(水供給制御手段)115と、を備えた構成を有している。
ここで、発電セル部111、改質部112、水回収制御部113、燃料供給制御部114及び水供給制御部115は、発電モジュール110を構成し、該発電モジュール110に対して、燃料カートリッジ120が着脱可能に構成されている。したがって、後述するように、発電モジュール110は、例えば、本発明に係る燃料電池システムが搭載される電子機器に内蔵され、あたかも乾電池やバッテリ等を交換する場合と同様の使い勝手で、該電子機器(発電モジュール)に対して、燃料カートリッジのみを着脱(交換)することにより発電用燃料及び水が補給される。
以下、各構成について詳しく説明する。
(発電セル部111)
図8は、本実施形態に係る電源システムに適用可能な燃料改質供給方式を採用した固体高分子型の燃料電池を示す概略構成図である。
本実施形態に係る電源システム(燃料電池システム)に適用される発電セル部(燃料電池本体)111は、図8に示すように、概略、白金や白金・ルテニウム等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなるアノード極ELaと、白金等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなるカソード極ELcと、アノード極ELaとカソード極ELcの間に介挿されたフィルム状の電解質膜(イオン交換膜)LYiと、を有し、アノード極ELa側には、後述する燃料供給制御部114及び改質部112により発電用燃料(メタノールCHOH)を改質して得られた水素ガスHが供給され、一方、カソード極ELc側は、例えば、外気に連通して、大気(空気)中の酸素Oが直接かつ常時供給されるように構成されている。
ここで、本実施形態に係る発電セル部111においては、燃料カートリッジ120(燃料封入部121)から取り出されたメタノールCHOHが改質部112により改質されて、水素ガスHのみがアノード極ELaに供給されるとともに、燃料カートリッジ120(水封入部122)から取り出された水HOが直接、又は、発電セル部111における発電動作に伴って副生成物として生成される水HOが回収されて、電解質膜LYiに供給される。発電セル部111への水素ガスH及び水HOの供給状態(供給タイミング及び供給量)は、後述する燃料供給制御部114、及び、水供給制御部115又は水回収制御部113により、適宜制御される。
そして、このような構成を有する燃料改質供給方式の燃料電池における発電動作に係る電気化学反応は、アノード極ELaに水素ガスHが供給されると、次の化学反応式(1)に示すように、触媒反応により電子(e)が分離して水素イオンHが発生し、電解質膜LYiを介してカソード極ELc側に通過するとともに、アノード極ELaを構成する炭素電極により電子eが取り出されて負荷LDに供給される。
2H → 4H+4e ・・・(1)
一方、カソード極ELcに空気(酸素O)が供給されることにより、次の化学反応式(2)に示すように、触媒により負荷LDを経由した電子eと電解質膜LYiを通過した水素イオンHと空気中の酸素Oが反応して、副生成物として水(HO)が生成される。
4H+O+4e → 2HO ・・・(2)
ここで、上述した一連の電気化学反応((1)式及び(2)式)は、概ね60〜80℃の比較的低温の温度条件で進行し、電気エネルギー(電力)以外の副生成物は基本的に水HOのみとなる。なお、このような電気化学反応により取り出される電気エネルギーは、発電セル部111のアノード極ELaに供給される水素ガスHの量に依存する。
なお、上述した発電動作において、電解質膜LYiにおける水素イオンHの伝導(通過)には、水HO(水分)が介在して、Hイオンが生成される必要があり、上記電気化学反応を促進して発電効率を高めるためには、電解質膜LYi付近の雰囲気を水蒸気飽和状態(湿潤状態)にする必要があることが知られている。
そこで、本実施形態においては、発電セル部111(電解質膜LYi)への水の供給方法として、システム起動時(発電動作開始時及び開始直後)においては、水供給制御部115により燃料カートリッジ120の水封入部122に封入された水HOが直接供給されて、電解質膜LYiが所定の湿潤状態(水蒸気飽和状態)に保持されるように制御され、発電セル部111における発電動作が定常状態に移行した後においては、水回収制御部113により発電セル部111における発電動作に伴って生成され、回収された水HOが供給されて、電解質膜LYiが所定の湿潤状態(水蒸気飽和状態)に保持されるように制御される。
(改質部112)
図9は、本実施形態に係る電源システムに適用される改質部の一構成例を示す概念図であり、図10は、本実施形態に係る電源システムに適用される改質部おける化学反応の一例を示す概念図である。また、図11は、本実施形態に係る電源システムの改質部に、本発明に係る化学反応装置を適用した場合の一構成例を示す概略図である。
本実施形態に係る電源システムに適用される改質部112は、図9に示すように、燃料カートリッジ120から供給されたメタノールCHOH及び少量の水HOを加熱して気化させる燃料気化器(蒸発器)112aと、気化されたメタノール(メタノールガス)及び水(水蒸気)から所定の触媒反応により、水素ガスHを生成する燃料改質器112bと、燃料改質器112bにおいて、水素ガスHの生成の際に副生成物として生成される一酸化炭素CO及び水HOから所定の触媒反応により、水素ガスHと二酸化炭素COを生成するCO除去器112cと、少なくとも燃料気化器112a及び燃料改質器112bにおける化学反応を促進するための温度条件を制御する薄膜ヒータHa、Hb及び燃焼器112dと、を備えて構成されている。
ここで、薄膜ヒータHa、Hbは、改質初期には、図示を省略した電源(例えば、蓄電池等の補助電源)からの電力により発熱し、改質された水素が供給されることによって発電セル部111が発電してからは、発電セル部111において生成された電気エネルギー(電力)を電源として切り換えて発熱することで発熱温度が制御され、一方、燃料器112dは、発電セル部111のアノード電極ELa側において上記(1)式に示した化学反応に寄与することなく残留した未反応の水素ガスHと大気中に含まれる酸素Oとの酸化反応(燃焼反応)により発熱温度が制御される。
特に、本実施形態に係る電源システムの構成においては、発電セル部111(電解質膜LYi)への水の供給方法として、システム起動時(発電動作開始時及び開始直後)には、発電セル部111の発電動作に伴って発生する未反応の水素ガスHの量が少なく、燃料器112dの燃焼反応において十分な熱エネルギーを得ることができないため、補助電源等に予め充電された電力を用いて、薄膜ヒータHa、Hbが十分高い温度(上述した化学反応を促進するために必要な温度条件;120℃、280℃)になるように制御され、発電セル部111における発電動作が定常状態に移行した後においては、当該発電動作に伴って発生する未反応の水素ガスHが燃料器112dに十分供給されて、燃焼反応により十分な熱エネルギーが得られるので、補助電源から薄膜ヒータHa、Hbへの電力の供給を遮断もしくは低減して、発電動作に伴って生成される電気エネルギーにより、当該薄膜ヒータHa、Hbの温度を制御する手法を適用することができる。
このような温度制御機構に加えて、改質された水素が供給されることによって発電セル部111が発電してからは、発電セル部111で発電に利用されなかった残存した水素及び外部から取り込んだ空気中の酸素を燃焼器112dに供給することにより燃焼器112d内で水素の燃焼反応を引き起こして高い熱量の発熱をもたらす。したがって、発電以降は、燃焼器112dが改質部112の主たる熱源となって、薄膜ヒータにHa、Hbにより補助的に加熱して温度条件の細かな調整(微調整)が行われることになり、比較的少ない電気エネルギー(電力)で所望の温度条件(後述する数百℃程度の温度条件)を実現することができ、生成された電気エネルギーの消費を抑制することができる。
そして、このような構成を有する改質部112での加熱によって、燃料気化器112aにおける吸熱気化反応、燃料改質器112bにおける触媒反応(吸熱水蒸気改質反応)、CO除去器112cにおける触媒反応(発熱水性シフト反応及び発熱選択酸化反応)が実現される。
具体的には、改質部112において、例えば、メタノールCHOH及び水HOから、水素ガスHを生成する場合にあっては、図10(a)に示すように、まず、燃料気化器112aにおける蒸発過程において、上述した薄膜ヒータHa及び燃焼器112dを制御して、メタノールCHOH及び水HOの沸点程度の温度条件にあわせて燃料気化器112aの加熱温度(例えば、概ね120℃程度)に設定することにより、燃料カートリッジ120から供給されたメタノールCHOH及び水HOを個別に加熱して、もしくは、混合液体を一括して加熱して気化する。
次いで、燃料改質器112bにおける水蒸気改質反応過程において、薄膜ヒータHb及び燃焼器112dを制御して、概ね280℃程度の温度条件に設定することにより、49.4kJ/molの熱エネルギーを吸収(吸熱)して、次の化学反応式(3)に示すように、水素Hと微量の二酸化炭素COを生成する。なお、この水蒸気改質反応においては、水素Hと二酸化炭素CO以外に副生成物として微量の一酸化炭素COが生成される。
CHOH+HO → 3H+CO ・・・(3)
したがって、このような有害な副生成物を除去するため、図10(b)に示すように、CO除去器112cにおける水性シフト反応過程により、一酸化炭素に対して水HO(水蒸気)を反応させることにより、40.2kJ/molの熱エネルギーを放出(発熱)して、次の化学反応式(4)に示すように、二酸化炭素COと水素Hが生成される。
CO+HO →CO+H ・・・(4)
さらに、CO除去器112cにおける選択酸化反応過程により、水性シフト反応において二酸化炭素と水素に変換されなかった一酸化炭素COに対して、酸素Oを反応させることにより283.5kJ/molの熱エネルギーを放出(発熱)して、次の化学反応式(5)に示すように、二酸化炭素COが生成される。
CO+(1/2)O →CO (5)
ここで、CO除去器112cにおける水性シフト反応過程及び選択酸化反応過程においても、図示を省略したが、CO除去器112cに付設された温度調節機構(図示を省略;具体的には、吸熱器や冷却器等)により、上記熱エネルギーの放出(発熱)に対応した(上記熱エネルギーを吸収する)温度条件が設定されるものであってもよい。
(燃料供給制御部114)
図7に示すように、燃料供給制御部114は、燃料カートリッジ120(燃料封入部121)と発電モジュール110との着脱可能な接続を行なうためのインターフェースとしての機能を有するとともに、少なくとも燃料カートリッジ120に封入された発電用燃料(メタノールCHOH)を、上述した改質器112に対して供給するタイミング及び供給量を制御する機能を有している。
(水供給制御部115)
図7に示すように、水供給制御部115は、燃料カートリッジ120(水封入部122)と発電モジュール10との着脱可能な接続を行なうためのインターフェースとしての機能を有するとともに、少なくとも燃料カートリッジ210に封入された水HOを、上述した改質部112及び発電セル部111に対して供給するタイミング及び供給量を制御する機能を有している。
なお、燃料供給制御部114及び水供給制御部115は、具体的には、例えば、燃料カートリッジ120と改質部112間、及び、燃料カートリッジ120と発電セル部111間の燃料供給経路や水供給経路に、液体ポンプや流量制御バルブ等(もしくは、これらと同等の機能を有する供給機構)を備えた構成を適用することができる。
(水回収制御部113)
図7に示すように、水回収制御部113は、発電セル部111における発電動作に係る電気化学反応において、副生成物として生成される水HOを回収して、少なくとも発電セル部111に再度供給し、電解質膜(イオン交換膜)を所定の湿潤状態に保持する。さらに、水回収制御部113により回収された水の一部は、改質部112(燃料気化器112a、CO除去器112c)に供給されて各化学反応に用いられるようにしてもよい。なお、水回収制御部113は、具体的には、液体ポンプや流量制御バルブ、流路切換バルブ等(もしくは、これらと同等の機能を有する供給機構)を備えた構成を適用することができる。
(燃料カートリッジ120)
図7に示すように、燃料カートリッジ120は、発電用燃料であるメタノールCHOHが封入されたパッケージからなる燃料封入部121と、所定量の水HOが封入されたパッケージからなる水封入部122とからなり、例えば、これらが一体化されて、発電モジュールに対して、着脱可能に構成されている。
なお、本実施形態に係る燃料電池システムにおいて、発電用燃料がなくなり、発電モジュールから取り外された燃料カートリッジは、所定のリサイクルルートを介して回収されて、適正に処分されることが望ましいが、回収されることなく廃棄された場合であっても、有害物質(例えば、有機塩素化合物や重金属等)の発生等、環境に影響を与えることのない、又は、その影響の少ない材質より形成されていることが望ましい。
また、本実施形態に係る燃料電池システムに用いられる発電用燃料としては、少なくとも、上述した燃料電池からなる発電セル部において、高いエネルギー変換効率で電気エネルギーを生成することができ、かつ、発電用燃料が封入された上記燃料カートリッジが使用後、自然界に投棄又は埋め立て処分されて、残存する発電用燃料が大気中や土壌中、水中に漏れ出し、あるいは、焼却処分されて大気中に排出された場合等であっても、自然環境に対して汚染物質とならない燃料であることが望ましく、具体的には、上記メタノールのほか、エタノール、ブタノール(アルコール類)等の炭化水素系の液体燃料を良好に適用することができる。
そして、このような構成を有する電源システムにおいて、上記改質部112の燃料気化器112a、燃料改質器112b、CO除去器112c及び燃焼器112dの各々について、上述した本発明に係る化学反応装置(反応部)を適用し、これらを相互に積層形成した構成を良好に適用することができる。すなわち、図11に示すように、例えば、上述した燃料気化器112aは、一面側に反応流路が形成された主基板(ガラス基板)SBaと、一面側にタンタルシリコンからなる接合酸化膜MLaが形成されるとともに、他面側に発熱抵抗体からなる薄膜ヒータHaが形成された副基板(ガラス基板)CLaとを陽極接合により接合した化学反応装置(マイクロリアクタ)の構成を良好に適用することができる。
また、上述した燃料改質器112bについても、一面側に反応流路が形成された主基板(ガラス基板)SBbと、一面側にタンタルシリコンからなる接合酸化膜MLbが形成されるとともに、他面側に薄膜抵抗体からなる薄膜ヒータHbが形成された副基板(ガラス基板)CLbとを陽極接合により接合した化学反応装置(マイクロリアクタ)の構成を良好に適用することができる。
また、上述したCO除去器112cについても、一面側に反応流路が形成された主基板(ガラス基板)SBcと、一面側にタンタルシリコンからなる接合酸化膜MLcが形成された副基板(ガラス基板)CLcとを陽極接合により接合した化学反応装置(マイクロリアクタ)の構成を良好に適用することができる。
さらに、上述した燃焼器112dは、一面側に反応流路が形成された主基板(ガラス基板)SBdと、燃料改質器112bの主基板SBbを副基板(閉止基板)として、該主基板SBbの他面側に形成されたタンタルシリコンを介して、陽極接合された構成を良好に適用することができる。
そして、これらの改質部112の各構成は、薄膜ヒータHa、Hbや燃焼器112dから放射される熱エネルギーの伝達状態を考慮して、燃料気化器112a、燃焼器112d、燃料改質器112b及びCO除去器112cの順で積層形成されている。なお、図11においては、各化学反応装置における流体物質の導入部及び排出部の構成について、図示を省略したが、例えば、上述した図9、図10に示した一連の化学反応に対応するように、各層間で連通する流路を備えた構成を良好に適用することができる。
これにより、電源システム100における改質部112を構成する各化学反応装置の基板相互、及び、該化学反応装置相互を良好に接合することができるので、基板の剥離や損傷、流体物質の漏洩等を生じることなく、所望の化学反応により、メタノール等の炭化水素系の発電用燃料から水素ガスを生成して発電セル部に良好に供給することができ、信頼性の高い電源システムを実現することができる。
また、このような構成によれば、改質部112の構成を大幅に小型薄型化することができるとともに、安価な基板材料を用いて、簡易な製造プロセスで形成することができるので、例えば、ノート型パーソナルコンピュータや携帯情報端末等の携帯型の電子機器への当該電源システムの搭載を容易にして促進することができる。
なお、本実施形態に係る電源システムにおいては、本発明に係る化学反応装置を適用した改質部により生成される所定の流体物質(水素ガス等)を用いて発電を行う、燃料改質供給方式の燃料電池を備えた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、化学反応装置(マイクロリアクタ)を用いて生成された流体物質の燃焼反応に伴う熱エネルギーによるもの(温度差発電)や、燃焼反応等に伴う圧力エネルギーを用いて発電器を回転させて電力を発生する力学的なエネルギー変換作用等によるもの(ガス燃焼タービンやロータリーエンジン、スターリングエンジン等の内燃、外燃機関発電)、また、発電用燃料FLの流体エネルギーや熱エネルギーを電磁誘導の原理等を利用して電力に変換するもの(電磁流体力学発電、熱音響効果発電等)等、種々の形態を有する電源システムに適用することができる。
本発明に係る化学反応装置及びその製造プロセスの一実施形態を示す概略図である。 本発明に係る化学反応装置に適用される接合酸化膜となる薄膜の材質とストレス特性との関係を示す実験結果である。 シリコン基板上に形成したタンタル薄膜の結晶性を検証のためのX線回折測定の結果を示すデータである。 シリコン基板上に形成したタンタルシリコン薄膜の結晶性を検証のためのX線回折測定の結果を示すデータである。 シリコン基板のX線回折測定の結果を示すデータである。 シリコン基板上に形成されたタンタルシリコン膜の組成比率を示す図である。 本発明に係る化学反応装置を適用可能な電源システム(燃料電池システム)の一実施形態の全体構成を示す概略ブロック図である。 本実施形態に係る電源システムに適用可能な燃料改質供給方式を採用した固体高分子型の燃料電池を示す概略構成図である。 本実施形態に係る電源システムに適用される改質部の一構成例を示す概念図である。 本実施形態に係る電源システムに適用される改質部おける化学反応の一例を示す概念図である。 本実施形態に係る電源システムの改質部に、本発明に係る化学反応装置を適用した場合の一構成例を示す概略図である。 従来技術におけるマイクロリアクタの基本構造を示す概略構成図である。 従来技術におけるマイクロリアクタの製造プロセスに適用される陽極接合法を示す概念図である。
符号の説明
10 主基板
11 反応流路
12 触媒層
20 副基板
21 接合酸化膜
21a 薄膜
30、Ha、Hb 薄膜ヒータ
100 電源システム
111 発電セル部
112 改質部
112a 燃料気化器
112b 燃料改質器
112c CO除去器
112d 燃焼器

Claims (5)

  1. 所定の反応流路内で化学反応を生じる化学反応装置の製造方法において
    一面側に溝状の前記反応流路が形成されたガラス製の第1の基板と、前記第1の基板に対向して設けられ、前記反応流路の開放端を閉止するガラス製の第2の基板とを準備する基板準備工程と
    前記第1の基板及び前記第2の基板のうち一方の基板に対してスパッタ法によりタンタル原子とシリコン原子とからなる金属膜を形成する金属膜形成工程と、
    前記一方の基板に形成された前記金属膜を前記第1の基板及び前記第2の基板のうち他方の基板に接してから前記金属膜を陽極接合により酸化する接合工程と、を含むことを特徴とする化学反応装置の製造方法
  2. 前記基板準備工程において準備する前記一は、その板厚が0.2mm以下であることを特徴とする請求項1記載の化学反応装置の製造方法
  3. 前記金属膜形成工程において、前記一方の基板と前記金属膜との間での引っ張り応力又は圧縮応力の差20×10 N/cm 以下に設定することを特徴とする請求項1又は2記載の化学反応装置の製造方法
  4. 前記金属膜形成工程において形成する前記金属膜は、非晶質の膜を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置の製造方法
  5. 前記基板準備工程において、前記第1の基板の前記反応流路の内壁面に第1の流体物質を第2の流体物質に変換する反応を促進する触媒物質付着形成する触媒形成工程を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の化学反応装置の製造方法
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