しかしながら、上述した背景技術によれば、エンジンオイルを希釈している、ガソリン、重油等の燃料量を推定するにとどまり、水の混入によるエンジンオイルの希釈は考慮されていない。即ち、少なくとも水によって希釈される(或いは、アルコール燃料を構成する少なくともアルコール及び水によって希釈される)エンジンオイルの希釈度や、このような少なくとも水のエンジンオイルへの混入量を特定することはできない。ここで特に、エンジンオイル中の水分量が増加すると、エンジンの潤滑低下、燃費悪化、破損等を生ずる可能性があるという技術的問題点がある。また、エンジンオイル中のアルコール量が増加すると、水のエンジンオイルへの混入を促進するという技術的問題点がある。
本発明は、例えば、上記問題点に鑑みてなされたものであり、少なくともエンジンオイルに混入する水の混入の程度を示す指標値を推定する混入推定装置及び方法、並びにエンジンオイル回復装置を提供することを課題とする。
本発明の混入推定装置は、上記課題を解決するために、車両に搭載され、アルコール燃料を使用可能なエンジンにおけるエンジンオイルの温度を検出するオイル温度検出手段と、前記エンジンオイルに混入する前記アルコール燃料の混入の程度を示す第1指標値を検出する燃料検出手段と、前記検出された温度及び前記検出された第1指標値に基づいて、前記エンジンオイルに混入する水の混入の程度を示す第2指標値を推定する水推定手段とを備える。
本発明の混入推定装置によれば、例えば自動車等の車両に搭載され、アルコール燃料を使用可能な内燃機関であるエンジンの動作時に、混入推定装置は、少なくともエンジンオイルに混入する水の混入の程度を示す指標値を推定する。ここに本発明に係る「アルコール燃料」とは、アルコールとガソリン等の他の燃料とを混合した燃料(所謂、アルコール混合燃料)、又はアルコールのみの燃料をいう。
また、本発明に係る「指標値」とは、典型的には、エンジンオイルに混入する水又は燃料の混入の程度を定量的に示す値であり、混入量や濃度であるが、より一般的には、水又は燃料の混入に係る何らかの物理量やパラメータという意味である。「混入量」は、エンジンオイルの単位量当りの混入量或いは絶対量でもよい。いわば広義の混入量を意味してもよい。他方、「濃度」は、百分率或いは割合でもよいし、比であってもよい。いわば広義の濃度を意味してもよい。
エンジンオイルには、エンジンのシリンダとピストンとの間から滴下した余剰燃料、及びブローバイガスに含まれる水が混入する。本願発明者の研究によれば、アルコールの有する親水性から、エンジンオイルに混入しているアルコール燃料と水との間には、一対一的な対応関係が存在すると考察される。そこで本発明では、エンジンオイルに混入しているアルコール燃料の混入の程度を示す第1指標値を検出することによって、エンジンオイルに混入する水の混入の程度を示す第2指標値を推定することができる。
オイル温度検出手段は、エンジンオイルの温度を検出する。エンジンオイルの温度は、例えばエンジンのオイルパンに温度センサを設けて直接検出してもよいし、冷却水の水温、エンジン負荷等から間接的に検出してもよい。エンジンオイルの温度を直接検出すれば、検出精度の向上が期待できる。一方、間接的に検出すれば、既存の水温センサ等を流用することができ製造コストの削減が期待できる。
燃料検出手段は、エンジンオイルに混入するアルコール燃料の混入の程度を示す第1指標値を検出する。第1指標値は、例えば燃料噴射量、エンジンオイルの温度等から間接的に検出してもよいし、エンジンオイル性状センサをオイルパンに設けて直接検出してもよい。
水推定手段は、検出されたエンジンオイルの温度、及び検出された第1指標値に基づいて、エンジンオイルに混入する水の混入の程度を示す第2指標値を推定する。具体的には例えば、第1指標値に応じた、エンジンオイルの温度と第2指標値との関係を定めるマップから第2指標値を求めればよい。或いは、所定の演算式により第2指標値を求めればよい。このようなマップは、例えば、エンジンオイルの温度、エンジンオイル中のアルコール濃度、水の溶解度等のパラメータを様々に変化させたシミュレーションの結果から、エンジンオイルの温度と第2指標値との関係を特定して構成すればよい。
本発明によれば、エンジンオイル中に親水性を有するアルコールが存在することによって、エンジンオイルへ混入しやすいブローバイガス中の水について、その水に係る指標値を推定することで適切に対処できるので、エンジンに重大な損傷を与えることを未然に防止することができる。具体的には、指標値に応じて、例えばエンジンオイルから水分を蒸発させる措置を行ったり、操縦者に警告をしたりすることによって、エンジンが損傷することを防止することができる。
特に、ガソリン燃料に比べて燃料噴射量が多く、エンジンオイルに水が混入しやすいアルコール燃料を用いる場合に、エンジンオイルに混入する少なくとも水に係る指標値の推定は、実用上極めて望ましい。具体的には例えば、燃料中のアルコール濃度が100%に近い場合、エンジンの冷却水温度が摂氏50〜60度である温間時において、ガソリン燃料の約1.5倍の燃料噴射量が必要であり、外気温が摂氏−10〜−20度である低温時において、エンジンを始動させるには、ガソリン燃料の約5〜8倍もの燃料噴射量が必要であることが本願発明者の研究により判明している。
以上の結果、本発明の混入推定装置によれば、エンジンオイルの温度、及びエンジンオイルに混入するアルコール燃料の混入の程度を示す第1指標値を検出し、該検出された温度及び第1指標値に基づいて、エンジンオイルに混入する水の混入の程度を示す第2指標値を推定することができる。
本発明の混入推定装置の一態様では、前記水推定手段は、前記検出された温度及び前記検出された第1指標値に基づいて、前記エンジンオイルに混入する前記水の変化の程度を示す第1変化値を推定する第1変化推定手段を含み、前記推定された第1変化値を積算して前記第2指標値を推定する。
この態様によれば、第1変化推定手段は、検出されたエンジンオイルの温度及び検出された第1指標値に基づいて、エンジンオイルに混入する水の変化の程度を示す第1変化値を推定する。ここに本発明に係る「変化値」とは、典型的には、変化量又は変化率であり、指標値が示す物理量又はパラメータに対応した値である。具体的には例えば、指標値が混入量であれば、変化値は、該混入量の変化量又は変化率を示す。変化値は、エンジンオイルに混入している水が減少する場合、例えば、変化値が量を示していれば負の値を、率であれば1未満の値又は100%未満の値を示すようにしてもよい。
水推定手段は、定期的に又は不定期的に第1変化推定手段により推定された第1変化値を積算して、エンジンオイルに混入する水の混入の程度を示す第2指標値を推定する。水推定手段は、第1変化値が量を示していれば該第1変化値を累計して、或いは率を示していれば該第1変化値を乗算して、第2指標値を推定する。
本発明の混入推定装置の他の態様では、前記燃料検出手段は、前記検出された温度に基づいて、前記エンジンオイルに混入する前記アルコール燃料の変化の程度を示す第2変化値を推定する第2変化推定手段を含み、前記推定された第2変化値を積算して前記第1指標値を検出する。
この態様によれば、第2変化推定手段は、検出されたエンジンオイルの温度に基づいて、エンジンオイルに混入するアルコール燃料の変化の程度を示す第2変化値を推定する。具体的には例えば、エンジンオイルの温度と第2変化値との関係を定めるマップから第2変化値を求めればよい。或いは、所定の演算式により第2変化値を求めればよい。このようなマップは、例えば、エンジンオイルの温度、アルコールの溶解度等のパラメータを様々に変化させたシミュレーションの結果から、エンジンオイルの温度と第2変化値との関係を特定して構成すればよい。燃料検出手段は、推定された第2変化値を積算して第1指標値を検出する。
これにより、エンジンオイルの温度を検出しさえすれば、例えばECU(Electronic Control Unit)等のコンピュータによって、第1及び第2指標値を求めることができ、実用上非常に有利である。
この第2変化値を推定する態様では、前記第2変化推定手段は、前記アルコール燃料のアルコール濃度を検出する濃度検出手段を含み、更に、前記検出されたアルコール濃度に基づいて、前記第2変化値を推定する。
このように構成すれば、濃度検出手段によりアルコール燃料中のアルコール濃度が自動的に検出されるので、第2変化値の推定精度を向上させることができる。また、操縦者等が予め、使用している燃料中のアルコール濃度を調べたり、設定したりすることを省くことができる。アルコール燃料を構成しているアルコールとガソリン等の他の燃料とでは沸点等が異なり、燃料中のアルコール濃度により燃料の混入の程度が異なる。従って、燃料中のアルコール濃度を検出することにより、第2変化値の推定精度、更には第1及び第2指標値の精度も向上し、例えば、エンジンオイルが劣化していないのに警告をしたり、或いはエンジンに重大な損傷を与えてしまってから警告をしたりということを防止することができる。
本発明の混入推定装置の他の態様では、前記オイル温度検出手段は、前記エンジンを冷却する冷却水の水温を検出する水温検出手段を含み、前記検出された水温に基づいて、前記エンジンオイルの温度を検出する。
この態様によれば、水温検出手段は、エンジンを冷却する例えばLLC(Long Life Coolant)等の冷却水の水温を、例えばエンジンのウォータジャケットの出口において検出する。オイル温度検出手段は、検出された水温に基づいて、例えば所定の演算式等によりエンジンオイルの温度を求める。これにより、例えばエンジンを設計する際に、エンジンオイル用の温度センサを考慮したり、配線等を考慮したりする必要が無く実用上非常に有利である。
本発明の混入推定方法は、上記課題を解決するために、車両に搭載され、アルコール燃料を使用可能なエンジンにおけるエンジンオイルの温度を検出するオイル温度検出工程と、前記エンジンオイルに含まれる前記アルコール燃料の混入の程度を示す第1指標値を検出する燃料検出工程と、前記検出された温度及び前記検出された第1指標値に基づいて、前記エンジンオイルに含まれる水の混入の程度を示す第2指標値を推定する水推定工程とを備える。
本発明の混入推定方法によれば、上述した本発明の混入推定装置と同様に、少なくともエンジンオイルに混入する水の混入の程度を示す指標値を推定することができる。
尚、本発明の混入推定方法においても、上述した本発明の混入推定装置における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
本発明のエンジンオイル回復装置は、上記課題を解決するために、上述した本発明の混入推定装置(但し、その各種態様を含む)と、前記検出された第1指標値が第1閾値より大きいか否かを判定する第1判定手段と、前記推定された第2指標値が第2閾値より大きいか否かを判定する第2判定手段と、前記第1及び第2判定手段のうち少なくとも一方が大きいと判定した場合に、前記車両を前記エンジンオイルの温度を上昇させる回復運転モードへ移行させる移行手段とを備える。
本発明のエンジンオイル回復装置によれば、上述した本発明の混入推定装置を備えるので、少なくともエンジンオイルに混入する水の混入の程度を示す第2指標値を推定することが可能である。第1判定手段は、検出された第1指標値が第1閾値より大きいか否かを判定する。第2判定手段は、検出された第2指標値が第2閾値より大きいか否かを判定する。ここに本発明に係る「第1閾値」及び「第2閾値」とは、第1及び第2判定手段による判定の基準とされる第1及び第2指標値に係る所定の閾値であり、例えば典型的には、混入量閾値又は濃度閾値である。この閾値は、予め実験的或いは経験的に、得られた混入量や濃度等のデータから、エンジンの動作又は車両の走行に支障をきたさない範囲、又は許容範囲になるようなデータを求め、固定値として予め設定してもよい。或いはメンテナンス時等に設定しなおせるようにしてもよいし、更に、例えば、エンジンの冷却水の水温等の他の物理量又はパラメータを考慮して、車両の走行中にリアルタイムで変化する可変値としてもよい。
移行手段は、第1及び第2判定手段のうち少なくとも一方が大きいと判定した場合、即ち、検出された第1指標値及び検出された第2指標値の少なくとも一方が、夫々対応する第1閾値及び第2閾値より大きいと判定された場合に、車両を回復運転モードへ移行させる。ここに本発明に係る「回復運転モード」とは、エンジンオイルの温度を上昇させて、エンジンオイルに混入している燃料及び水を蒸発させる運転モードをいう。具体的には例えば、アルコール燃料に主に用いられているエタノールの沸点を考慮して、エンジンオイルの温度が摂氏80度になるように、ヒータ等による加熱を行う。或いは、エンジンの負荷を増加させエンジンの温度を上昇させ、エンジンオイルを加熱する。
尚、ハイブリッド車のように、エンジン以外の電動モータ等の駆動手段を備える車両であれば、エンジンの負荷を増加させるために、例えば、エンジンの運転時間を拡大したり、電動モータを発電機として作用させたりしてもよい。
検出された第1指標値及び検出された第2指標値のいずれもが、夫々対応する第1及び第2閾値より小さいと判定された場合、移行手段は、車両を回復運転モードへ移行させずに通常の運転モードを維持する。
このように、本発明のエンジンオイル回復装置では、第1及び第2判定手段のうち少なくとも一方が大きいと判定した場合に回復運転モードへ移行する。従って、本発明のエンジンオイル回復装置によれば、エンジンオイルに混入する燃料及び水の混入の程度を示す第1及び第2指標値を小さくすることができる。この結果、エンジンオイルの状態を適正に保つことができ、エンジンにおける摩擦の増加、磨耗や錆びによるエンジンの劣化を防止することができる。特に、エンジンを、例えば加速時のみ等、短時間しか駆動せず、エンジンが十分暖機しないハイブリッド車のような車両において、エンジンオイルを良好な状態に保つことができる。
本発明のエンジンオイル回復装置の一態様では、前記移行手段は、前記車両が前記回復運転モードへ移行した回数を計数する計数手段と、前記計数された回数が第3閾値より大きいか否かを判定する第3判定手段と、前記計数された回数が第3閾値より大きいと判定された場合に警告を行う警告手段とを有する。
この態様によれば、例えばカウンタである計数手段は、車両が回復運転モードへ移行した回数を計数する。第3判定手段は、計数された移行回数が第3閾値より大きいか否かを判定する。エンジンオイルは、燃料及び水による希釈以外に、例えば酸化や熱等によっても劣化する。このため、回復運転によって、エンジンオイルに混入している燃料及び水を減少させることはできるが、希釈以外の原因によるエンジンオイルの自然劣化を防止することは困難である。そこで、第3判定手段により、計数された移行回数が第3閾値より大きいと判定された場合に、警告手段は、例えば、操縦者等にエンジンオイルの交換時期である旨の警告を行う。これにより、操縦者が容易にしてエンジンオイルの劣化、又はエンジンオイルの交換時期を知ることができるので、実用上非常に有利である。
尚、本発明に係る計数手段は、回復運転モードへ移行した積算回数を計数してもよいし、連続して回復運転モードへ移行した回数を計数してもよい。或いは、移行回数の代わりに回復運転を行っている時間を測定してもよい。例えば、市街地において、主に短距離の移動に使用される車両では、回復運転中に目的地に到着してしまい、回復運転モードへ移行した回数が増加してしまう可能性がある。このような場合に、計数手段により時間を測定していれば、エンジンオイルの劣化を適切に評価することができる。また、本発明に係る「第3閾値」とは、第3判定手段による判定の基準とされる移行回数又は回復運転時間に係る所定の閾値であり、移行回数閾値又は回復運転時間閾値である。
本発明のエンジンオイル回復装置の他の態様では、前記移行手段は、前記車両が前記回復運転モードへ移行したことを通知する通知手段を有する。
この態様によれば、通知手段は、車両が回復運転モードへ移行したこと、又は回復運転中であることを通知する。これにより、操縦者等がエンジン又は車両の状態を知ることができ、実用上非常に有利である。特に、通常エンジンの動作時間が短いハイブリッド車等の車両において、エンジンの動作時間が長いことによる操縦者等の不安を解消させることができる。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされよう。
以下、本発明のエンジンオイル回復装置に係る実施形態を、図1乃至7を参照して説明する。
先ず、図1を参照して本実施形態に係るエンジンオイル回復装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るエンジンオイル回復装置のブロック図である。
図1において、エンジンオイル回復装置は、例えば、自動車等であるアルコール燃料を用いるエンジン11を備える車両に搭載されている。該車両は、更に、電動モータ40及び車両における各種電子制御を行うように構成されているECU30を備えている。
ECU30は、指令部301、判定部302、推定部303、メモリ304、燃料カウンタ305、水カウンタ306、移行カウンタ307、及び入出力回路308を有している。メモリ304は、例えば、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)、バックアップROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。入出力回路308は、各センサ等の信号を入出力する。
尚、本実施形態に係る「指令部301」、「判定部302」、「推定部303」、「燃料カウンタ305」、「水カウンタ306」及び「移行カウンタ307」は、夫々、本発明に係る「移行手段」、「第1乃至第3推定手段」、「第1及び第2変化推定手段」、「燃料検出手段」、「水推定手段」、並びに「計数手段」の一例である。本実施形態では、各種電子制御用のECU30の一部を、エンジンオイル回復装置の一部として用いている。
エンジンオイル回復装置は、少なくともエンジンオイル15に混入する水の混入の程度を示す、本発明に係る「第2指標値」の一例である混入水分量を推定する混入推定装置と、検出された本発明に係る「第1指標値」の一例である混入燃料量が第1閾値より大きいか否かの判定、及び推定された混入水分量が第2閾値より大きいか否かの判定を行う判定部302と、混入燃料量及び混入水分量のうち少なくとも一方が、夫々対応する第1及び第2閾値より大きいと判定された場合に、車両を回復運転モードへ移行させる指令部301とを備える。
混入推定装置は、エンジンオイル15の温度を検出するオイル温度センサ21と、エンジンオイル15に混入する混入燃料量を検出する燃料カウンタ305と、検出された温度及び検出された混入燃料量に基づいて、エンジンオイル15に混入する水の変化の程度を示す、本発明に係る「第1変化値」の一例である水分変化量を推定する推定部303と、該推定された水分変化量を積算して、エンジンオイル15に混入する混入水分量を推定する水カウンタ306とを備える。
推定部303は、更に、オイル温度センサ21により検出された温度に基づいて、エンジンオイル15に混入するアルコール燃料の変化の程度を示す、本発明に係る「第2変化値」の一例である燃料変化量を推定する。燃料カウンタ305は、推定された燃料変化量を積算して、混入燃料量を検出する。
混入推定装置は、更に、燃料タンク18におけるアルコール燃料中のアルコール濃度を検出する濃度センサ24を備えている。尚、オイル温度センサ21によりエンジンオイル15の温度を検出する代わりに、水温センサ22よりエンジン11の冷却水16の水温を検出し、該検出された水温に基づいてエンジンオイル15の温度を検出してもよい。
エンジンオイル回復装置は、更に、エンジン11のオイルパン13に設けられたドレーンプラグ23と、操縦者等に車両の状態を通知するインフォメーションディスプレイ51及びスピーカー52と、回復運転モードへ移行した回数を計数する移行カウンタ307とを備えて構成されている。ここに、本実施形態に係るインフォメーションディスプレイ51及びスピーカー52は、本発明に係る「通知手段」及び「警告手段」の一例である。
ここで、燃料カウンタ305及び水カウンタ306を含むECU30において、混入燃料量及び混入水分量を検出又は推定する方法について、図2乃至5を参照して説明を加える。
図2は、エンジン始動時におけるエンジンオイル15に滴下する燃料量とエンジンオイル15の温度との関係を定めるマップの一例である。図3は、エンジン運転時におけるエンジンオイル15に滴下する燃料量とエンジンオイル15の温度との関係を定めるマップの一例である。図4は、エンジンオイル15から蒸発する燃料量とエンジンオイル15の温度との関係を定めるマップの一例である。ここに、図2乃至4における実線は、アルコール燃料中のアルコール濃度が、例えば約100%である高濃度の場合を、破線はアルコール濃度が、例えば20〜50%である中濃度の場合を、夫々示している。
図5は、エンジンオイル15に混入している水の増減量とエンジンオイル15の温度との関係を定めるマップの一例である。ここに図5における実線は、エンジンオイル15中のアルコール燃料の濃度が、例えば1〜2%である高濃度の場合を、破線はアルコール燃料の濃度が、例えば0.2〜0.8%である中濃度の場合を、夫々示している。
図2乃至5における縦軸の値は、単位体積当たりの燃料量又は水分量であってもよいし、絶対量であってもよい。また、横軸は冷却水16の水温であってもよい。尚、これらのマップは、例えば、エンジンオイルの温度、エンジンオイル中のアルコール濃度、水及び燃料の溶解度、燃料噴射量等のパラメータを様々に変化させたシミュレーションの結果から、上記各マップの物理量又はパラメータ間の関係を特定して構成すればよい。或いは、実験により構成すればよい。
エンジン11の始動時又は運転時では、燃料噴射弁17から噴射された燃料のうち余剰燃料が、シリンダ12とピストン14との間からエンジンオイル15に滴下する。このため、先ず、判定部302によりエンジン11の動作状態が判定される。推定部303は、該判定された動作状態に応じて、メモリ304に格納されている図2及び3に示すようなマップを選択し、オイル温度センサ21により検出されたエンジンオイル15の温度、及び濃度センサ24により検出されたアルコール燃料中のアルコール濃度に基づいて、エンジンオイル15に滴下する燃料量を推定する。
具体的には、エンジン11の始動時は、推定部303は、メモリ304に格納されている図2に示すようなマップを選択し、該マップからエンジンオイル15に滴下する燃料量を推定する。エンジン11の運転時は、推定部303は、メモリ304に格納されている図3に示すようなマップを選択し、該マップからエンジンオイル15に滴下する燃料量を推定する。エンジン11の停止時は、燃料噴射弁17からの燃料の噴射が無いので、推定部303は、滴下する燃料量をゼロとする。
推定部303は、更に、メモリ304に格納されている図4に示すようなマップを選択し、エンジンオイル15の温度及びアルコール濃度に基づいて、エンジンオイル15から蒸発する燃料量を推定する。ここに図4において、正の値は蒸発した燃料量を示し、負の値は液化した燃料量を示している。エンジンオイル15の温度が高くなれば、蒸発する燃料量は増加するが、温度が低くなれば、燃料が液化し例えばシリンダ12の内壁を伝ってエンジンオイル15中へ混入する。
推定部303は、滴下する燃料量と蒸発する燃料量との差をとり、燃料変化量を求める。燃料カウンタ305は、求められた燃料変化量を積算して、混入燃料量を検出する。尚、図4に示すようなマップにおいて、蒸発した燃料量が負の値で示されていれば、推定部303は、滴下する燃料量と蒸発する燃料量との和をとり、燃料変化量を求める。
推定部303は、メモリ304に格納されている図5に示すようなマップを選択し、エンジンオイル15の温度及び混入燃料量に基づいて、水分変化量を推定する。ここに図5において、正の値は増加した水分量を示し、負の値は減少した水分量を示している。
エンジンオイル15の温度が高くなれば、水が蒸発するので、エンジンオイル15中の水分は減少し、温度が低くなれば、水蒸気が液化してエンジンオイル15中へ混入するので水分は増加する。尚、図5において、低温域で水分量が急増し、高温域で水分量が激減しているのは、エンジンオイル15中に混入している燃料量(特に、アルコール量)が大きく変化することに起因している。水カウンタ306は、推定された水分変化量を積算して、混入水分量を推定する。
再び図1に戻り、ECU30における判定部302は、検出された混入燃料量及び推定された混入水分量が、夫々対応する第1閾値及び第2閾値より大きいか否かを判定する。混入燃料量及び混入水分量のうち少なくとも一方が、夫々対応する第1閾値及び第2閾値より大きいと判定された場合、指令部301は、エンジン11の負荷を大きくして、エンジンオイル15の温度を上昇させる回復運転モードへ車両を移行させる。
指令部301は、車両を回復運転モードへ移行させた場合、例えばインストルメントパネル内のインフォメーションディスプレイ51に、回復運転中である旨を表示させ、操縦者等に通知を行う。移行カウンタ307は、回復運転モードへ移行した回数を計数する。
混入燃料量及び混入水分量のいずれもが、夫々対応する第1閾値及び第2閾値より小さいと判定された場合、指令部301は車両を回復運転モードへ移行させずに、エンジン11又は電動モータ40を使用する、或いはエンジン11及び電動モータ40を併用する通常運転モードを維持する。
判定部302は、移行カウンタ307により計数された移行回数が第3閾値より大きいか否かを判定する。移行回数が第3閾値より大きいと判定された場合、指令部301は、例えばインストルメントパネル内のインフォメーションディスプレイ51に、エンジンオイル15の交換時期である旨を表示させると共に、スピーカー52から音声又は警報を出力させ操縦者等に警告を行う。
次に、以上のように構成されたエンジンオイル回復装置が搭載されている車両において、ECU30が実行する混入推定回復処理を図6及び7のフローチャートを用いて説明する。この混入推定回復処理は、主に車両が走行中に、例えば定期的に又は不定期的にコンマ数秒毎〜数秒毎に周期的に実行される。
図6において、先ず、混入推定処理により、混入燃料量及び混入水分量が推定される(ステップS100)。
ここで、混入推定処理について、図7を参照して説明を加える。先ず、濃度センサ24は、燃料タンク18におけるアルコール燃料中のアルコール濃度を検出する(ステップS101)。次に、オイル温度センサ21は、エンジンオイル15の温度を検出する(ステップS102)。次に、判定部302は、エンジン11の始動時であるか否かを判定する(ステップS103)。
エンジン11の始動時である場合(ステップS103:Yes)、推定部303は、メモリ304に格納されている図2にしめすような、エンジン始動時におけるエンジンオイル15に滴下する燃料量とエンジンオイル15の温度との関係を定めるマップを選択し(ステップS104)、検出されたエンジンオイル15の温度、及び検出されたアルコール濃度に基づいて、エンジンオイル15に滴下する燃料量を推定する(ステップS107)。
エンジン11の始動時でない場合(ステップS103:No)、続いて、エンジン11の運転時であるか否かが判定される(ステップS105)。エンジン11の運転時である場合(ステップS105:Yes)、推定部303は、メモリ304に格納されている図3に示すような、エンジン運転時におけるエンジンオイル15に滴下する燃料量とエンジンオイル15の温度との関係を定めるマップを選択し(ステップS106)、検出されたエンジンオイル15の温度、及び検出されたアルコール濃度に基づいて、エンジンオイル15に滴下する燃料量を推定する(ステップS107)。エンジン11の運転時でない場合(ステップS105:No)、ステップS108の処理を行う。
次に、推定部303は、メモリ304に格納されている図4に示すような、エンジンオイル15から蒸発する燃料量とエンジンオイル15の温度との関係を定めるマップを選択し(ステップS108)、検出されたエンジンオイル15の温度、及び検出されたアルコール濃度に基づいて、エンジンオイル15から蒸発する燃料量を推定する(ステップS109)。推定部303は、滴下する燃料量と蒸発する燃料量との差をとり、燃料変化量を求め、燃料カウンタ305は、該求められた燃料変化量を積算して、混入燃料量を検出する(ステップS110)。
次に、推定部303は、メモリ304に格納されている図5に示すような、エンジンオイル15に混入している水の増減量とエンジンオイル15の温度との関係を定めるマップを選択し(ステップS111)、エンジンオイル15の温度及び混入燃料量に基づいて、水分変化量を推定する(ステップS112)。水カウンタ306は、該推定された水分変化量を積算して、混入水分量を推定する(ステップS113)。
再び図6に戻り、判定部302は、車両が回復運転モードであることを示す、回復運転flagがONであるか否かを判定する(ステップS201)。回復運転flagがONでない場合(ステップS201:No)、即ち車両が通常運転モードである場合、次に混入燃料量が第1閾値より大きいか否かが判定される(ステップS202)。混入燃料量が第1閾値より小さいと判定された場合(ステップS202:No)、続いて、混入水分量が第2閾値より大きいか否かが判定される(ステップS203)。
混入燃料量が第1閾値より大きいと判定された場合(ステップS202:Yes)、又は混入水分量が第2閾値より大きいと判定された場合(ステップS203:Yes)、指令部301は、車両を回復運転モードへ移行させると共に、モニタ51にその旨を表示させ、移行カウンタ307は、移行回数を計数する(ステップS207)。
混入水分量が第2閾値より小さいと判定された場合(ステップS203:No)、車両は通常運転モードを維持して(ステップS204)、処理を一旦終了する。
回復運転flagがONである場合(ステップS201:Yes)、判定部302は、混入燃料量が第1閾値−αより小さいか否かを判定する。ここにαは保証値であり、回復運転により最低限蒸発させる燃料量である。これにより、回復運転が終了した後、すぐに再び回復運転モードへ移行することを防止することができる。尚、保証値αは、固定値であってもよいし、例えば、エンジンオイル15の温度等に応じた可変値であってもよい。
混入燃料量が第1閾値−αより小さいと判定された場合(ステップS205:Yes)、続いて、混入水分量が第2閾値−βより小さいか否かが判定される(ステップS206)。ここにβは、αと同趣旨の保証値であり、固定値であってもよいし、例えば、エンジンオイル15の温度等に応じた可変値であってもよい。混入水分量が第2閾値−βより小さいと判定された場合(ステップS206:Yes)、指令部301は、車両を通常運転モードへ移行させ(ステップS204)、処理を一旦終了する。
混入燃料量が第1閾値−αより大きいと判定された場合(ステップS205:No)、又は、混入水分量が第2閾値−βより大きいと判定された場合は(ステップS206:No)、回復運転を維持する(ステップS207)。
判定部302は、移行カウンタ307により計数された移行回数が、第3閾値より大きいか否かを判定する(ステップS208)。移行回数が第3閾値より小さければ(ステップS208:No)、一旦処理を終了する。移行回数が第3閾値より大きければ(ステップS208:Yes)、指令部301は、モニタ51にその旨を表示させると共に、スピーカー52から音声又は警報を出力させ、操縦者等に警告を行う(ステップS209)。
次に、判定部302は、エンジンオイル15の交換が実施されたか否かを判定する(ステップS210)。エンジンオイル15の交換が実施されたか否かは、例えば、オイルパン13に設けられているドレーンプラグ23に電流を予め流し、エンジンオイル15の交換の際に、ドレーンプラグ23が外されたことにより、電流が流れなくなることを検出し判定すればよい。或いは、オイルレベルゲージの変化で判定してもよいし、エンジンオイル15の交換後に作業者等が手動で入力してもよい。
エンジンオイル15の交換が実施された場合(ステップS210:Yes)、指令部301は、燃料カウンタ305、水カウンタ306及び移行カウンタ307の値を初期化し(ステップS211)、処理を一旦終了する。エンジンオイル15の交換が実施されない場合(ステップS210:No)、処理を一旦終了する。
以上のように、本実施形態によれば、エンジンオイル15の温度、及びアルコール燃料中のアルコール濃度に基づいて、エンジンオイル15に混入する混入燃料量及び混入水分量を推定することができる。更に、エンジンオイル15の温度が上昇するような回復運転を行うことにより、混入燃料量及び混入水分量を小さくすることができる。
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う混入推定装置及び方法、並びにエンジンオイル回復装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
11…エンジン、12…シリンダ、13…オイルパン、14…ピストン、15…エンジンオイル、16…冷却水、17…燃料噴射弁、18…燃料タンク、21…オイル温度センサ、22…水温センサ、23…ドレーンプラグ、24…濃度センサ、30…ECU、40…電動モータ、51…インフォメーションディスプレイ、52…スピーカー