JP4832163B2 - 石膏ボード締結用の自己穿孔ねじ - Google Patents

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本願発明は、もみ切りタイプ又はドリルタイプの石膏ボード締結用自己穿孔ねじ(ビス)に関するものである。
自己穿孔ねじには、木ねじに代表されるもみ切りタイプと、先端に切刃付きドリル部を設けたドリルタイプとがある。もみ切りタイプのねじは、先端を尖らせた先窄まり部で部材(ワーク)の組織を押し広げることによって軸を部材に進入させるものであり、木材のような軟質材製基材や例えば板厚が0.5〜0.8mm程度の薄鋼板製基材に各種ワークを締結することに多用されている。
他方、ドリルタイプの自己穿孔ねじは、例えば1mm以上の厚さの鋼板製基材に各種のワークを締結することに多用されているが、木材同士の締結にも使用されている(特に、木ねじでは割れが生じる場合にドリルタイプが使用されている)。
自己穿孔ねじの用途の一つとして、建物の壁や天井を構成する石膏ボードを枠材(下地材、基材)に締結することがある。石膏ボードを自己穿孔ねじで締結する場合、頭の全体が石膏ボードの内部に埋め込まれる必要がある。これは、石膏ボードの表面に壁紙を貼るためである。そして、石膏ボードを締結するためのねじにおいて、その頭は石膏ボードへの埋め込みを容易ならしめるため湾曲したプロフィールを有するラッパ状に形成されており、また、従来、頭の外径はねじ部の外径(呼び径)の2倍程度になっている(例えば特許文献1)。
特許第3334563号公報
石膏ボードは脆い素材であるが、近年、特に脆くなっている傾向にある。これは、リサイクルの促進のため廃物を混入することが多くなり、粒子同士の結合力が低下しているためと推測される。石膏ボードが脆くなっても所定の締結強度は必要であり、必要な締結強度を確保する方法として、締結するねじの本数を増やすことと、頭の外径を大きくすることが考えられる。
しかして、ねじの本数を増やすのはコストや作業能率の点から好ましくない。他方、頭の径を単に大きくしても、頭の体積が増えることで石膏ボードが従来以上に潰れることが懸念され、必ずしも締結力のアップにつながらない可能性が高いと言える。
本願発明はこのような現状に鑑み成されたもので、石膏ボードの締結に好適な自己穿孔ねじを提供することを課題とするものである。
ところで、石膏ボードを締結する枠材(基材)として従来は木材が使用されていたが、近年、耐火性向上や耐久性向上のため、例えば厚さ0.5〜0.8mm程度で断面略C字状に形成された薄鋼板製枠材(下地材)が多く使用されるに至っている。本願発明者はこのような実情も考慮し、本願発明を完成させた。
本願発明のねじは、軸とその基端に一体に設けた頭とを備えており、前記軸の先端部は最先端を尖らせた先窄まり部になっているか又は切刃を有するドリル部になっており、前記軸には、第1ねじ山及び第2ねじ山で構成された第1ねじ部と、前記第1ねじ山のみから成る第2ねじ部とが、第1ねじ部が前記先端側に位置するようにして形成されている一方、前記頭の頂面にはドライバビットが嵌まる係合穴けている
そして、前記第1ねじ部と第2ねじ部との谷部はそれぞれストレート状であり、前記第1ねじ部の谷径は第2ねじ部の谷径よりも小径であり、前記第1ねじ部の谷の終端部は第2ねじ部の谷と滑らかに連続するテーパ部になっており、更に、前記第1ねじ部において前記第1ねじ山は第2ねじ山よりも高さが高くなっていると共に、前記第1ねじ部における第1ねじ山の外径よりも第2ねじ部における第1ねじ山の外径が大径になっている。
更に、前記頭は、頂面に近づくに従って外径が大きくなる座面を有する基部と、前記基部の終端から張り出した薄板状のフランジ部とから成っており、前記頭の基部は縦断面視で座面の形状が湾曲しているラッパ状に形成されており、前記フランジ部の外径はねじ部の最大外径の2.5〜3倍に設定されている。
本願発明では、フランジ部を設けたことで頭の外径が従来よりも大きくなっているが、基部は従来と同じ体積のままでよい。従って、石膏ボードを締結するにおいて、石膏ボードを過度に潰すことなく、石膏ボードを押さえる面積を従来よりも大きくすることができ、その結果、高い締結強度(押さえ力)を確保できる。
ところで、ねじ山の高さがその全長にわたって同じであると、ねじ山の進入によって石膏ボードの組織が浚われた状態になり、ねじ部と石膏ボードとの密着性が低下することがある。これに対して、本願発明では、第2ねじ部の谷径を第1ねじ部の谷径よりも大径にすると共に第1ねじ山の外径が第1ねじ部よりも第2ねじ部において大径であることにより、第2ねじ部も石膏ボードに食い込む状態になるため、ねじ部と石膏ボードとの密着性を高めて締結強度を向上できる。
他方、ねじ山が1条でしかもリード角が大きいと、ねじ込みに際して、ねじ込み抵抗の反力としてねじが倒れる傾向を呈するが、本願発明では、先端側の第1ねじ部が2条ねじで頭側の第2ねじ部1条ねあるため、ねじ込みに際しての姿勢の安定性を確保しつつ、ねじ山によって石膏ボードが過度に潰されることを防止できる。
ねじ山の外径とフランジの外径との好適な比率は用途によって相違するが、本願発明のように石膏ボードを締結することに使用する場合は、2.5〜3倍程度が好適であった。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明で、自己穿孔ねじは単に「ねじ」と表示する。
(1).第1実施形態の構造
図1及び図2では第1実施形態を示しており、ねじの構成は図1に示されている。図1のうち(A)は正面図、(B)はねじ山の状態を示す観念図、(C)はねじ山を省略した状態での正面図、(D)は平面図である。
ねじは、断面円形の軸1とその基端に一体に繋がった頭2とを備えており、軸1のうち頭2と反対側の先端部は、最先端を尖らせた先窄まり部3になっている。先窄まり部3のテーパ角度θは略25度程度に設定している。なお、本実施形態の先窄まり部3は円錐状に形成しているが、縦断面の形状を曲面と成した砲弾形に形成することも可能である。
軸1には、第1ねじ山4と第2ねじ山5との条のねじ山が形成されており、隣り合ったねじ山4,5の間には縦断面視で平坦状の谷が露出している。両ねじ山4,5は先窄まり部3から始まって(立ち上がって)おり、第1ねじ山4は首下近傍まで延びているが、第2ねじ山5は軸1の約半分程度の長さまでしか延びていない。
従って、軸1に形成されたねじ部6のうち先窄まり部3の部分を除いた部分(基本ねじ部)は、第1ねじ山4と第2ねじ山5とが併存する第1ねじ部7と、第1ねじ山5しか存在ない第2ねじ部8とに分かれており、第1ねじ部7が軸1の先端側に位置して第2ねじ部8が頭2の側に位置している。なお、第1ねじ部7を2条ねじ部と言い換え、第2ねじ部8を1条ねじ部と言い換えることも可能である。
第1ねじ山4の始端(先端)は先窄まり部3の先端まで延びており、第1ねじ山4の始端がもみ(揉み)切り部4aになっている。このもみ切り部4aの食い込み作用により、軸1が部材(ワーク、基材)に進入するきっかけが作られる。第1ねじ山4及び第2ねじ山5とも終端部は徐々に高さが低くなっており、第2ねじ山5の終端は図1(A)において背面箇所に位置している。
1ねじ部7の谷部は、第2ねじ部8に連続する終端部を除いて谷径D1が一定のストレート状になっている一方、第2ねじ部8の谷部は全長にわたって谷径D2が一定のストレート状になっており、かつ、第1ねじ部7の谷径D1よりも第2ねじ部の谷径D2が大径になっている。そして、第1ねじ部7の終端部は第2ねじ部と滑らかに連続するためのテーパ部7aになっている。従って、第1ねじ部7の谷径はどの部分も第2ねじ部8の谷径よりも小径になっている。
D1とD2との寸法差はあまり大きくする必要はなく、例えば呼び径が4mmのねじの場合、D1は2.2〜2.4mm、D2は2.5〜2.7mm程度でよい。更に敷衍すると、D1はD2の85〜95%でよいと言える。
第1ねじ山4の山の高さは第2ねじ山5の山の高さよりも高くなっている。また、第1ねじ山4はその始端部及び終端部を除いて同じ高さになっている。そして、既述のように第1ねじ部7におけるストレート部の谷径D1が第2ねじ部8の谷径D2よりも小径であるため、第1ねじ部7における第1ねじ山4の外径D3は第2ねじ部8における第1ねじ山4の外径D4よりもやや小径になっている。
従って、第1ねじ部7における第2ねじ山5の外径をD5とすると、D5<D3<D4の関係になっている。また、D4とD3との差よりもD3とD5との差のほうが大きくなっている。第1ねじ山4の山の角度は30度程度、第2ねじ山5の山の角度は60度程度に設定している。勿論、両ねじ山4,5の山の角度を同じ程度に揃えることも可能である。第1ねじ山4の最大外径D4がねじの呼び径になる。
頭2は、軸1に連続した基部2aと、基部の終端から半径外向きに張り出した板状のフランジ2bとから成っており、基部2aは、頂面に近づくに従って直径が拡大するラッパ状に形成されている。換言すると、基部2aの座面は外向き凹状の曲面になっている。頭2の頂面には、ドライバビットが嵌まる係合部の一例として十字穴9形成している。
基部2aの最大外径D6はねじの呼び径D4の約2倍に設定されており、また、フランジ部2bの最大外径D7は呼び径D4の2.7倍程度に設定している。一般に石膏ボードの締結に使用するねじは呼び径D4が4〜5mmであり、この場合、フランジ部2bの厚さは0.6〜0.8mm程度でよい。
(2).使用状態
図2ではねじの使用状態を示している。この例では、石膏ボード12を断面略C字状の薄鋼板製枠材13に締結することに使用しており、(A)はねじ込み切った状態での断面図、(B)はねじ込み途中の断面図である。石膏ボード12の表面と裏面とにはそれぞれ紙14,15が貼られている。
ねじのねじ込みにおいて、先に第1ねじ部7が石膏ボード12から枠材13に進入し、次いで、第2ねじ部8が石膏ボード12と枠材13に進入していく。ねじ込み切った状態では、第2ねじ部8の第1ねじ山4に枠材13の内周縁に引っ掛かると共に、頭2はその全体が石膏ボード12の内部にめり込んだ状態になる。
ところで、第1ねじ山4しか存在しない場合は、第1ねじ山4のリード角が大きいことから、軸1が石膏ボード12及び枠材13に進入するに際してぶれる現象が生じることがある。つまり、第1ねじ山4が石膏ボード12及び枠材13に食い込んで行くに際して抵抗が生じ、このため、軸1は、第1ねじ山4の食い込み位置と反対側に倒れる傾向を呈するが、食い込み位置は軸1の回転に伴って連続的に変化するため、ねじが軸心回りにぶれる(倒れる)現象が生じる。
これに対して本実施形態では、第1ねじ部7は2条ねじになっているため、2条のねじ山4,5が軸心を挟んだ両側において石膏ボード12及び枠材13に食い込んでいくことになり、すると、石膏ボード12及び枠材13に対する両ねじ山4,5の抵抗が互いに打ち消しあって、軸1を石膏ボード13の表面に対して直立した姿勢に保持することが
できるのである。
そして、ねじ部6の全体が2条ねじであると、石膏ボード12の組織にねじ山が過度に接触して組織が潰され過ぎることがあり、このため、いわば石膏ボード12とねじとの間にガタが生じる状態になることがあるが、本願発明では、ねじ部のうち頭側に位置した第2ねじ部8は1条ねじであるため、石膏ボード12の組織が過度に潰されることはなく、その結果、石膏ボード12をしっかりと押さえ固定できるのである。
更に、枠材13には、軸1のねじ込み方向に突出したバーリング状の膨出部13aが形成され、この膨出部13aがねじ山のフランク(追い側フランク)に引っ掛かることでねじの抜けが阻止されるが、本実施形態では、膨出部13aは第2ねじ部8の箇所で第1ねじ山4のみに引っ掛かるように設定されており、このため、膨出部13aを第1ねじ山4にしっかりと引っ掛けることができる。
更に、本実施形態では、ねじ山の最大外径及び谷径とも第2ねじ部8が第1ねじ部7よりも大きくなっているため、第2ねじ部8の箇所においても谷部及び第1ねじ山4が枠材13を押し広げる傾向を呈しており、従って、ねじ込み切った状態で、第2ねじ部8は枠材13の膨出部13aにしっかりと引っ掛かっている。よって、高い締結強度を確保することが可能になる。
そして、頭2にはフランジ部2bが形成されていることにより、頭2と石膏ボード12との接触面積が従来よりも格段に広くなるため、頭2による石膏ボード12の押さえ力を格段に向上できる利点がある。また、頭の全体を大きくするのではなく、基部2aは従来と同じままでフランジ部2bを設けることで石膏ボード12の押圧面積を大きくしているため、石膏ボード12が頭2によって過度に潰されることはないのであり、この面でも、締結強度(押さえ力)のアップに貢献している。
なお、2枚の石膏ボードを重ねて枠材13に締結することがあるが、この場合は、第2ねじ部8の長さを長くするか、又は、第2ねじ部8と頭2との間にねじ無し部を形成するかしたらよい(締結した状態で2枚の石膏ボード12に第1ねじ山4が掛かっているのが好適であると言える。)。
また、本実施形態のねじは、木製の枠材に石膏ボード12を締結することにも使用できる。この場合、木製の枠材には主として第2ねじ部8が食い込むことになるが、ねじ山の最大外径及び谷径とも第2ねじ部8が第1ねじ部7よりも大きいため、ねじは枠材にしっかりと食い込む。
(3).第2実施形態
及び図では第実施形態を示している。図のうち(A)は正面図、(B)はねじ山4,5を省略した状態での正面図、(C)は平面図である。また、図は使用状態を示す図で、(A)はねじ込み切った状態での図、(B)はねじ込み途中の状態を示す図である。
この実施形態はドリルタイプのねじに適用したものであり、軸1の先端部は2つの切刃16aと2条の縦溝16bとを有するドリル部16に形成されている。ドリル部16の先端にはチゼルエッジが形成されている。ねじ部6は、2条のねじ山4,5を有する第1ねじ部7と、1条のねじ山4を有する第2ねじ部8とからなっており、両ねじ山4,5はドリル部16の近くから立ち上がっている。ドリル部16を除いた部分の形態や、頭2とねじ部6との寸法関係は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
なお、ドリル部16の外径を第1ねじ部7の谷径よりやや大径に設定するというように、両者の外径を異ならせることも可能である
ねじ山4,5をドリル部16から立ち上げることも可能であるが、枠材13がある程度以上に厚い場合(例えば1.2mm以上)は、ねじを高速で回転させて枠材13に下穴を切削することになるため、ねじ込み初期のねじの回転によって石膏ボードの組織が潰れてしまう虞がある。そこで本実施形態では、ドリル部16の長さを石膏ボード12の厚さと同じ程度に設定しており、このように構成すると、ねじが高速で回転してもねじ山4,5は石膏ボード12に全く又は殆ど掛からないため、石膏ボード12が過度に潰れてしまうことを防止できる利点がある。従って、本実施形態は、枠材13のような基材が厚い場合に好適である。
また、薄鋼板製の枠材13に使用する場合のような板材製基材への締結用に使用する場合は、一般的には、ねじ山のピッチは細かいほうが良いと言える。従って、ねじ山4,5のピッチ(或いはリード角)を、第1ねじ部7では隣り合った山4,5の裾が密接又は近接して、第2ねじ部8では隣り合った山4の間に平坦状の谷が露出するような寸法に設定しておいても良い。
第1実施形態の構造を示す図である。 第1実施形態の使用状態を示す図である。 2実施形態の構造を示す図である。 2実施形態の使用状態を示す図である。
1 軸
2 頭
2a 頭の基部
2b 頭のフランジ部
3 先窄まり部
4,5,17 ねじ山
6 ねじ部
7 第1ねじ部
8 第2ねじ部
9 係合穴の一例としての十字穴
12 ワークの一例としての石膏ボード
13 基材の一例としての薄鋼板製の枠材

Claims (1)

  1. 石膏ボードを基材に締結することに使用する自己穿孔ねじであって、
    軸とその基端に一体に設けた頭とを備えており、前記軸の先端部は最先端を尖らせた先窄まり部になっているか又は切刃を有するドリル部になっており、前記軸には、第1ねじ山及び第2ねじ山で構成された第1ねじ部と、前記第1ねじ山のみから成る第2ねじ部とが、第1ねじ部が前記先端側に位置するようにして形成されている一方、前記頭の頂面にはドライバビットが嵌まる係合穴を空けている、という構成において、
    前記第1ねじ部と第2ねじ部との谷部はそれぞれストレート状であり、前記第1ねじ部の谷径は第2ねじ部の谷径よりも小径であり、前記第1ねじ部の谷の終端部は第2ねじ部の谷と滑らかに連続するテーパ部になっており、更に、前記第1ねじ部において前記第1ねじ山は第2ねじ山よりも高さが高くなっていると共に、前記第1ねじ部における第1ねじ山の外径よりも第2ねじ部における第1ねじ山の外径が大径になっている一方、
    前記頭は、頂面に近づくに従って外径が大きくなる座面を有する基部と、前記基部の終端から張り出した薄板状のフランジ部とから成っており、前記頭の基部は縦断面視で座面の形状が湾曲しているラッパ状に形成されており、前記フランジ部の外径はねじ部の最大外径の2.5〜3倍に設定されている、
    石膏ボード締結用の自己穿孔ねじ。
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