JP4831660B2 - 蒸気タービン性能を低コストで推定する方法 - Google Patents

蒸気タービン性能を低コストで推定する方法 Download PDF

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Description

本発明は、総括的には蒸気タービン−発電機システムに関し、より具体的には、比較的安価なセンサを使用して蒸気タービンの性能を推定する方法に関する。
大型蒸気タービン−発電機システムは、その所有者にとっては大きな資本投資であり、それらの所有者にとってのその経済的利益は、蒸気タービンが稼動する熱効率に応じて変わる。大型蒸気タービン−発電機の所有者は、そのシステムの作動パラメータを、そのシステムのために設計した及び/又はそのシステムの初期据付け後の作動試験時に明らかになった最適なセットの作動パラメータに可能な限り近い状態に維持することに極めて強い関心がある。さらに、時間の経過と共に、内部部品の劣化及びその他の原因により、性能の低下が発生する可能性がある。
蒸気タービン−発電機サブシステムの据付け作業の一部として、所有者及び/或いは工事請負業者又はタービン製造業者が、そのシステムの熱消費率を実証又は測定するために様々な専用精密センサを使用して非常に正確な試験を行うのが普通である。熱消費率は、電力出力の単位当たりの熱入力の単位数として定義された、蒸気タービン−発電機システムの熱効率の尺度である。熱消費率の1つの標準的な試験は、ASME試験として知られており、ASME(米国機械学会)の刊行物である「ANSI/ASME PTC 6−1976 Steam Turbines」に定義されている。上記両試験の要件及び特徴は、そのような条件のエネルギー含量及び得られた電力出力を正確に求めるために、蒸気タービン内の温度、圧力及び流量と共に得られた発電機電力出力を正確に測定することである。測定値の精度は十分に高く、測定結果に適用される測定許容誤差を比較的小さくする必要がある。このような試験は、実行するのに大きな費用がかかる。例えば、標準ASME試験は、大きなコストでの専用測定装置の大規模な設置と共に、試験を行うための大量の労力を必要とする。それらのコストに加えて、ASMEタイプの試験は、蒸気タービン−発電機システムの日々の稼動中に使用するのには適していないという付加的な欠点を有する。
タービンの耐用期間中での付加的時点においてこの試験を繰り返すことは費用がかさむので、蒸気タービンの性能試験の少なくとも1つの公知方法においては、性能を推定するために、タービンには多数の「ステーション」センサが設けられる。
例えば、特許文献1には、熱性能モニタが記載されており、この熱性能モニタは、蒸気タービン−発電機システムをその制御可能に選択した圧力及び温度で作動させることの経済的損失、効率、熱消費率における偏差及び出力損失をオペレータ及び評価技術者(results engineer)に知らせる。制御弁位置信号及び発電機からの電気出力信号と共に、特定の温度及び圧力信号をシステム内の様々な箇所で発生させる。このデータは、対応する設計値と共に処理され、設計値からの温度偏差、圧力偏差及び排気圧力偏差による経済的損失が計算される。別の計算により、システム内のタービンの効率とその結果としての出力損失との比較が生成される。
特許文献2には、蒸気品質を判定するための方法及び装置が記載されており、この方法及び装置では、蒸気のサンプル流に対して熱を加え又は蒸気のサンプル流から熱を除去して、過熱又は過冷点に到達させる。サンプルを過熱又は過冷するために必要なエネルギー量を、蒸気の流量、温度及び圧力のようなその他のパラメータと共に計算に入れて蒸気の品質を判定する。蒸気品質センサは、タービンその他のような装置における用途を有すると考えられる。
特許文献3は、電力を経済的に送電するための方法及びシステムに関するものである。例えば蒸気タービンのような複数の発電装置のリアルタイムの熱消費率及び各装置の対応するエミッションデータを用いて、低コストで電力を送電する。また、この特許に記載された方法は、発電に関連するコストを他の電気事業体から電力を購入するコストと比較して、電力の送電に関連したコスト低減を達成する。各発電装置は、ボイラ、蒸気タービン及び発電機に接続したセンサを含む。これらのセンサは、当技術分野においては公知であり、例えば発電装置の発電部分の水及び空気の温度及び圧力、燃料流量、電力並びに同様な特性を測定するために設けられる。各々のセンサによって発生したデータは、データ収集インタフェースに転送されて、リアルタイムの熱消費率を計算し、またシステムオペレータが経済的に電力を送電するために用いる熱消費率曲線を生成するために、プラント処理装置によって利用される。
特許文献4は、蒸気タービンにおいてブレード温度を推定する方法に関するものである。この方法は、主として入力及び出力段のブレード直接ではない位置における圧力及び温度を含む測定値を利用する。先ず始めに、水/蒸気サイクル分析プログラムを用いることによって、また指定の実験によって、ブレード温度がシミュレーションされる。また、幾つかの大型蒸気タービンにおいて、HP及びLPケーシングのそれぞれの段に温度測定装置を取付けることも開示されている。これらの測定値は、ブレード温度がその限界値を越えた時はいつでも、オペレータ又は担当主任技術者に表示される。
ステーション・センサは、有用な性能の推定値を提供するが、それらに代わる精密センサよりも実質的に精度が劣る。従って、ステーション・センサからのデータを用いて生成した性能推定値もまた、精密センサを使用して生成した性能推定値よりも精度が劣る。
特開昭60−192807号 米国特許第5327772号 米国特許第5621654号 特開2002−501584号
従って、本発明の幾つかの構成では、据付け蒸気タービンの効率を判定する方法を提供する。本方法は、第1の複数の時点において、1つのセットのステーション・センサを使用して蒸気タービンの少なくとも1つの性能変数の第1の平均値と第1の分散値とを推定する段階を含む。本方法はさらに、第1の複数の時点の少なくとも幾つかを包含する時点を含む第2の複数の時点において、精密センサを含む異なるセットのセンサを使用して少なくとも1つの性能変数の第2の平均値と第2の分散値とを推定する段階を含む。第1の平均値、第1の分散値、第2の平均値及び第2の分散値を用いて第1の平均値と第2の平均値との間のマッピング関数が求められる
別の態様では、本発明は、蒸気タービンの効率を判定するためのプロセッサを提供する。本プロセッサは、第1の複数の時点において、1つのセットのステーション・センサを使用して蒸気タービンの少なくとも1つの性能変数の第1の平均値と第1の分散値とを推定するように構成される。本プロセッサはまた、第1の複数の時点の少なくとも幾つかを包含する時点を含む第2の複数の時点において、精密センサを含む異なるセットのセンサを使用して性能変数の第2の平均値と第2の分散値とを推定するように構成される。本プロセッサはまた、第1の平均値、第1の分散値、第2の平均値及び第2の分散値を用いて第1の平均値と第2の平均値との間のマッピング関数求めるように構成される。
さらに別の態様では、本発明は、その上に記録された命令を有する機械読取り可能な媒体を提供し、この命令は、第1の複数の時点において、1つのセットのステーション・センサを使用して蒸気タービンの少なくとも1つの性能変数の第1の平均値と第1の分散値とを推定することをプロセッサに命令するように構成される。この命令はまた、第1の複数の時点の少なくとも幾つかを包含する時点を含む第2の複数の時点において、精密センサを含む異なるセットのセンサを使用して性能変数の第2の平均値と第2の分散値とを推定することをプロセッサに命令するように構成される。この命令はさらに、第1の平均値、第1の分散値、第2の平均値及び第2の分散値を用いて第1の平均値と第2の平均値との間のマッピング関数求めるように構成される。
マッピングが或る時間にわたってほぼ一定でありかつ高度の信頼性でもって同一コードタイプの幾つかの蒸気タービン間で反復可能であることが確認された場合、ステーション・センサのみを備えた同一コードタイプの別の蒸気タービンに対して、所定の平均値シフトを適用してステーション・センサによって高い性能推定値精度を得ることができる。分散値は、精密センサを使用して得られる分散値よりも大きくなるであろうが、それでもなお使用可能となる。従って、適正なマッピングを判定した後には精密センサは最早や必要とされないので、関心事の効率推定値に影響を与える可能性があるセンサの再較正、交換又はその他の変更が行われたことが知らされるまでは、高い性能推定値精度が低い未来コストで得られる。
蒸気タービン−発電機システムの交替オペレータに使用可能な主制御装置は、主蒸気及び再熱蒸気供給源の温度及び圧力を決定するボイラ制御装置と、第1つまり高圧タービン段に導入される蒸気の量を決定する1つ又は複数の主蒸気導入制御弁とを含む。そのような蒸気タービン−発電機システムのオペレータに対する実際的な指針は、容易に、迅速にかつ詳細な技術的分析なしで解釈してこれらの主制御装置の操作を可能にすることができるような方式での実質的に瞬時の作動パラメータの評価を含む。本発明の技術的効果は、精密センサの代わりにステーション・センサを使用して、使用可能な性能推定値を提供することである。
次に図1を参照すると、ここに全体的に示すのは、蒸気タービン−発電機システム10である。蒸気タービン−発電機システム10は、蒸気ボイラ14から熱入力を受ける蒸気タービン−発電機12を含む。ボイラ14は、石炭燃焼式、石油燃焼式又は熱回収式蒸気発生器のような任意の従来型のものとすることができる。ライン16で表したオペレータ18からのオペレータ入力を用いて、蒸気タービン−発電機12は、タービン制御装置17によって制御され、またボイラ14は、プラント・リアルタイム制御装置15によって制御される。電力出力が発生し、それはライン20で表している。蒸気タービン−発電機12からの1つのセットの測定パラメータが、ライン22を介してデータ処理サブシステム24に供給される。測定パラメータのタイプは、長期間にわたって十分な信頼性と精度とで得ることができかつ蒸気タービン−発電機12とボイラ14とを分刻みで制御する際にオペレータ18を導くことができるような方式で、データ処理サブシステム24が解釈することができるタイプである。データ処理サブシステム24の出力は、オペレータインタフェースサブシステム26に供給され、このサブシステム26は、例えばブラウン管ディスプレイ装置、プリンタ或いはその他のアナログ又はデジタルディスプレイ装置のような従来型のタイプとすることができる。データ処理サブシステム24からの出力はまた、データを短期間又は長期間記憶できるデータ記憶サブシステム28にも供給することができる。データ記憶サブシステム28は、プリンタを含む任意の従来型のタイプとすることができる。しかしながら、本明細書で1例として用いている実施形態では、データ処理サブシステム24は、デジタルプロセッサを含み、またデータ記憶サブシステム28は、例えば磁気又は光ディスク或いは磁気テープ記憶装置のようなデジタル記憶装置を含むのが好ましい。
オペレータインタフェースサブシステム26と並列に結合されるのは、評価技術者インタフェースサブシステム27である。インタフェース27は、評価技術者29が、オペレータ18と比較してよりゆっくりとデータ処理サブシステム24の出力を検討するのを可能にする。評価技術者29がデータを検討した一層高いレベルの精緻な分析に一部基づいて、技術者は、オペレータ18と通信してタービン−発電機システム10の長期にわたる性能を改善する。技術者はまた、システムの保守手順を決定し、サブシステム27は、これらの手順を明らかにするのを助ける。
次に図2を参照すると、ここに示すのは、本発明を説明するのに必要な詳細部のみを含む蒸気タービン−発電機12の簡略概略図である。蒸気タービン−発電機12は、従来型のものであり、その内部に取付けられた測定装置を有する。従って、蒸気タービン−発電機12についての詳しい説明は省略する。本発明は、発生した電力出力の測定値を含む、蒸気タービン−発電機システム10全体にわたる様々な箇所における温度及び圧力測定値を用い、また対応する設計値に対するそれら測定値の関係を比較してシステム全体にわたる電力損失、効率及び熱消費率を判定する。
図1の蒸気タービン−発電機12は、電力出力を発生する発電機34に対して機械継手32を介して結合された蒸気タービン30を含む。発電機34内のトランスデューサ(図示せず)は、データ処理サブシステム24に伝送するためにライン22に供給される電力出力信号W1を生成する。ライン16上のオペレータ入力は、油圧式、電気油圧式、デジタル式又はその他の公知の手段によって主制御弁アクチュエータ36に供給され、主制御弁アクチュエータ36は、ライン40で示すように主蒸気導入制御弁38を作動させる。弁位置信号V1が適当な手段によって発生され、この信号は、主制御弁38の開放量を表し、データ処理サブシステム24に伝送するためにライン22に供給される。弁38は、一般的に蒸気タービンに関連する多数の蒸気導入制御弁を表していることを理解されたい。
ボイラ14の一部である蒸気発生器42は、管路44上の主制御弁38に供給する高温加圧蒸気の供給源を形成する。主制御弁38を通過した蒸気は、主蒸気管路46を介して高圧タービン48の入力側に供給される。本明細書で使用する場合、「HP」という用語は、高圧タービン48を意味する。今や部分的に膨張されかつ冷却されているが、未だ大きなエネルギーを含有しているHPタービン48から流出した蒸気は、低温の再熱管路50を介して、これもまたボイラ14の一部である再熱器52に供給される。主制御弁38の上流側かつほぼ主制御弁38の入口における管路44内の蒸気の圧力及び温度は、それを表す第1の圧力信号P1及び第1の温度信号T1を生成するためにセンサ(図示せず)によって測定され、これらの信号は、データ処理サブシステム24に伝送される。高圧タービン48の下流側かつ実質的に高圧タービン48の出口における低温再熱管路50内の蒸気の圧力及び温度は、それを表す第3の圧力信号P3及び第3の温度信号T3を生成するためにセンサ(図示せず)によって測定され、これらの信号もまたデータ処理サブシステム24に伝送される。
圧力センサ(図示せず)が、HPタービン48の第1段の近傍で感知した圧力を表す圧力信号P2を生成し、この信号は、データ処理サブシステム24に伝送される。
中圧タービン54(以下、「IP」タービンと記す)は、高温再熱管路56を介して再熱器52から再熱蒸気を受け、蒸気を膨張させて蒸気からエネルギーを取り出し、排出管路58を介して低圧タービン60に蒸気を排出する。HPタービン48、IPタービン54及び低圧タービン60(以下、「LP」タービンと記す)の機械的出力は、継手手段62及び64によって示すように機械的に相互結合され、これら継手手段62及び64は次に、継手32にまた発電機34に機械的に結合される。IPタービン54の上流側にある高温再熱管路56内の第4の温度T4及び圧力P4が、センサ(図示せず)によって測定され、それを表す信号が、データ処理サブシステム24に伝送される。さらに、IPタービン54の下流側にある管路58内の蒸気の第5の温度T5及び圧力P5が、センサ(図示せず)によって測定され、それらの量を表す信号もまた、データ処理サブシステム24に伝送される。別の実施形態では、T5及びP5は、LPタービン60の低圧ボウルにおいて測定される。
LPタービン60からの排出蒸気は、管路66を介して復水器68に供給され、復水器68において蒸気は水に復水され、その後、再使用のために管路70を介して蒸気発生器42に送られる。システムの効率を低下させる可能性がある要因の1つは、十分でない復水器68の作動であり、そのことにより、低圧タービン60の排出側における背圧が正常値よりも高くなるおそれがあることである。そのような背圧は、効率を改善するために復水器68の作動を調整する必要があることを示している。管路66内の圧力センサ(図示せず)は、排出圧信号P6を生成し、この信号は、更なる処理と表示のためにデータ処理サブシステム24に伝送される。
使用する温度センサは、任意の従来型のものとすることができるが、本明細書で説明した実施形態では、各温度センサは、ウェル内に配置されかつその温度を測定しようとしている蒸気にアクセスできるように置かれた複数の高精度クロメル・コンスタンタン(タイプE)熱電対を含むことに注目されたい。各センサの複数の熱電対を使用することによって、これら複数の熱電対からの結果を平均して、個々の熱電対の誤差つまりシステム温度における小さな差異を実質的に低減することができる。これに加えて、1つよりも多くの熱電対の使用は、センサ位置において熱電対の1つ又はそれ以上が故障した場合に予備手段を提供する。温度信号の伝送は、アナログ電圧を用いて達成することができ、或いは温度信号を伝送前にデジタル化して測定値に対する伝路の長さ及びノイズの影響を少なくすることができる。同様に、圧力センサは、例えば適当な圧力、精度及び環境温度範囲を有するHeiseモデル715T又はRosemont圧力トランスミッタの商品名で購入可能な圧力センサのような任意の従来型のものとすることができる。
本明細書で説明したタイプのセンサを利用して効率を判定する様々な方法は、特開昭60−192807号に詳述されており、本明細書で詳しく説明する必要はない。さらに、蒸気タービン効率を精密に推定するための試験手順(ASME PTC 6.0を含む)は、様々なANSI(米国規格協会)及びASMEの刊行物によってよく知られており、ここで詳細に繰り返す必要はない。
本発明の幾つかの構成では、また図3を参照すると、据付け蒸気タービンの効率を判定する方法100を提供する。本方法は、例えば、データ処理サブシステム24の記憶装置内にある、方法100の段階に対応した一連の予めプログラムされた命令を、オペレータが開始することによって実行することができる。しかしながら、他の構成では、コンピュータワークステーションのような別のデータ処理サブシステム又は適当な処理システムを使用することができる。幾つかの構成では、一連の予めプログラムされた命令は、本方法の段階を実行することをプロセッサに命令する記録した命令として供給される。これらの命令は、フロッピー(商標)ディスク、CD−ROM、CD−R又はCD−RW或いはDVDのような機械読取り可能な媒体に記録することができる。(「機械読取り可能な媒体」という用語は、完全なセットの命令の一部が多数の同様な及び/又は異なるタイプの媒体間に分割されている構成を含むように広義に解釈されることを意図している。)本発明の技術的効果は、段階102で、第1の複数の時点において、1つのセットのステーション・センサを使用して蒸気タービンの少なくとも1つの性能変数の第1の平均値と第1の分散値とを推定することによって達成される。幾つかの構成では、これらのステーション・センサは、温度及び圧力信号T1、T2、T3、T4、T5、P1、P2、P3、P4及びP5並びに電力出力信号W1を発生するセンサを含むことができる複数のセンサ(図1及び図2には図示せず)を含む。本方法はさらに、段階104で、第1の複数の時点の少なくとも幾つかを包含する時点を含む第2の複数の時点において、少なくとも1つの性能変数の第2の平均値と第2の分散値とを推定することを含む。段階104における推定には、精密センサ(これらもまた図には図示せず)を含む異なるセットのセンサを使用する。本方法はさらに、段階106で、第1の平均値と第2の平均値との間のマッピング関数求めることを含む。このマッピングには、第1の平均値、第1の分散値、第2の平均値及び第2の分散値を用いる。
本明細書で使用する場合、「第1の平均値」というは、その各々が異なる時点における性能変数を表す、1つのセットの平均値推定値を意味する。第1の平均値は、1つのセットのステーション・センサを使用して測定される。同様に、「第1の分散値」というのは、対応する1つのセットの分散値推定値を意味する。「第2の平均値」というのは、その各々が第1の平均値の時点と必ずしも対応する必要はない異なる時点における性能変数を表す、1つのセットの平均値推定値を意味するが、幾つかの構成では、第2の平均値は、第1の平均値の時点に近い1つのセットの平均値推定値を表す。第2の平均値は、精密センサを含む1つのセットのセンサを使用して測定される。「第2の分散値」というのは、対応する1つのセットの分散値推定値を意味する。これらの用語における「第1の」及び「第2の」という用語は、必ずしも時間、量などの順序付けを意味するのではなく、単に2つのセットの推定値を区別するために使用している。
また、「ステーション・センサ」という用語は、蒸気タービン施設に関連しかつ該蒸気タービン施設に含まれた1つのセットのセンサを意味する。ステーション・センサは、蒸気タービン施設を連続的にモニタするために使用することができる。他方、「精密センサ」というのは、ASME PTC 6.0効率を正確に判定するために使用するセンサのようなセンサである。これらのセンサは、施設内に含まれるものではなく、通常は初期性能測定のために製造業者によって使用されるものであり、一般的にタービン内に永久的に取付けられることはない。
本発明の幾つかの構成では、段階108で、第2の複数の時点の最後の時点よりも後の1つ又はそれ以上の時点において、蒸気タービンの少なくとも1つの性能変数の付加的平均値が推定される。この付加的平均値の推定には、1つのセットのステーション・センサとマッピング関数とを使用する。各そのような付加的平均値推定値は、精密センサよりも本来的に精度が劣るステーション・センサを使用して得られた測定値における偏差及びその他の誤差を補正した性能変数推定値に対応する。このような推定値の分散値は、精密センサを使用して得られた分散値よりも大きくなることになるが、このような推定値の平均値は、マッピングを使用しなかった場合よりも正確となり、安価なセンサのみを使用して得られる有用な性能推定値を提供することになる。
幾つかの構成では、少なくとも1つの性能変数は、蒸気タービンのHP、IP及びLPセクションの1つ又はそれ以上の第2の効率であるか又は第2の効率を含む。
また、幾つかの構成では、付加的な時点において、少なくとも1つの性能変数の第3の平均値と第3の分散値とが推定される。(同様に、この文脈において本明細書で使用する場合の「第3の」という語も、時間、価値、重要性などの順序付けを意味するのではなく、1つのセットの測定値を別のセットの測定値から区別するために使用している。)第3の平均値及び第3の分散値は、少なくとも1つの精密センサを含むが、第2の平均値推定値及び第2の分散値推定値を測定するために使用する精密センサの全てよりも少ない精密センサを含むことになるサブセットのセンサを使用して推定される。これらの推定値は、より少ない数であり、従ってより安価であるが、それにも拘わらずステーション・センサよりも正確な(また、ステーション・センサとは独立した)サブセットの精密センサを使用して、第2の平均値推定値及び第2の分散値推定値を補強するために使用することができる。幾つかの構成では、付加的時点は、第2の複数の時点の開始時点と終了時点との間の時点を含み、かつこれらの付加的時点は各々、第2の複数の時点とは異なる。ここに述べた1つのセットの精密センサ測定値は、完全なPTC 6.0式の性能試験に代わるものとして使用することができる。
幾つかの構成では、本明細書に記載した方法は、マッピング関数が或る時間にわたって本質的に一定であると判定されるまで反復することができる。また、幾つかの構成では、本発明の様々な構成が、精密センサベースの効率推定値のための完全な一式のPTC6.0計器を有することに依存していないにも拘わらず、1つのセットの精密センサを使用した推定は、ASME PTC 6.0推定値を得ることを含むことができる。セクション効率を推定するためにサブセットのPTC 6.0計器を使用した精密試験は、ステーション・センサベースの推定値と精密センサベースの推定値との間の所望のマッピングを求めるのに十分である。
本発明の幾つかの構成はまた、異なる施設の複数の蒸気タービンにおいて本方法の段階を反復して同一タイプのセンサ間における反復性を判定する段階を備える。そうすることで、同一タイプのセンサにとって有効なマッピングを、このタイプのセンサを使用している全ての蒸気タービン施設において本方法の段階(特に、精密センサを含む段階)の全てを反復することを必要とせずに得ることが可能になる。
更なる説明のために、また図4のグラフ200を参照して、少なくとも2つ又はそれ以上の精密な効率推定値(ASME PTC6.0)が入手可能であり、また1月時点における(推定値210、212及び214)、2月時点における(推定値220、222及び224)及び3月時点における(推定値230、232及び234)様々なセンサ推定値が入手可能であると仮定しよう。各時点における複数の測定値を用いて、精密センサベースの性能推定値210、220及び230に対する平均偏差(測定値における円の中心で表す)及び標準偏差(各円の上方及び下方の棒線で表す)を求める。本明細書で使用する場合の「性能」というのは、蒸気タービンのHP、IP及びLPセクションに対して判定したセクション効率を意味する。熱消費率もまた、計算しかつ座標上にプロットすることができる。さらに、(例えば)同一時点でステーション・センサのみを使用して、性能推定値(セクション効率)を求める(214、224、234)。同一時点で、さらに1つのサブセットの精密センサとステーション・センサとを使用して、性能推定値(セクション効率)を求める。1つのサブセットの精密センサもまた、本発明を実施するのに有用ではあるが、必須ではない。211、213、221及び223のような中間データ点を得るために、ステーション・セットを使用して性能推定が実行される。211、213、221及び223における推定値は、完全セットの精密センサを使用して推定値210、220及び230を得た時点の間のかつそれらの時点とは異なる1つのセットの時点において求められる。
説明のために、精密センサベースの推定値の分散値を最小側とし、またステーション・センサベース推定値の分散値を最大側として、3つの性能推定方法の各々に関連した誤差変動幅又は分散値を相対的比率で示す。
精密センサベースの推定値の余分なコストにより、それらの使用可能性には限界があるが、ステーション・センサベースの推定値は蒸気タービン制御システムとインタフェースした現地モニタ・ハードウエアを介して連続的にモニタされるので、使用可能にすることができるステーション・センサベースの推定値の数には限界がない。
十分な数の点が求められると、3つの場合の各々における性能推定値における傾向を確認することができ、2つのセットの推定値間のマッピングを判定することができる。マッピングが或る時間にわたってほぼ一定でありかつ高度の信頼性でもって同一コードタイプの幾つかの蒸気タービン間で反復可能であることが確認された場合、ステーション・センサのみを備えた同一コードタイプの別の蒸気タービンに対して、所定の平均値シフトを適用してステーション・センサにより高い性能推定値精度を得ることができる。分散値は、精密センサを用いて得られる分散値よりも大きくなるであろうが、それでもなお使用可能となる。適正なマッピングを判定した後には精密センサは最早や必要とされないので、高い性能推定値精度が低い未来コストで得られる。
発明を様々な特定の実施形態に関して説明してきたが、本発明が特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内の変更で実施できることは、当業者には明らかであろう。特許請求の範囲内に記した参照符号は、本発明の技術的範囲を狭めるためのものではなく、本発明を容易に理解するためのものである。
蒸気タービン−発電機システムの簡略ブロック図。 本発明の構成において採用したモニタ箇所を示す、蒸気タービン−発電機システムの簡略概略図。 蒸気タービン性能を低コストで推定する本発明の方法の様々な構成を表したフローチャート。 本発明の構成の典型的な使用によって得た推定値の幾つかを示すグラフ。
符号の説明
10 蒸気タービン−発電機システム
12 蒸気タービン−発電機
14 蒸気ボイラ
15 プラント制御装置
16 オペレータ入力
17 タービン制御装置
18 オペレータ
20 電力出力
24 データ処理サブシステム
26 オペレータインタフェースサブシステム
27 評価技術者インタフェースサブシステム
28 データ記憶サブシステム
29 評価技術者

Claims (10)

  1. 据付け蒸気タービン(30)の効率を判定する方法(100)であって、
    第1の複数の時点において、1つのセットのステーション・センサを使用して蒸気タービンの少なくとも1つの性能変数の第1の平均値(214、224、234)と第1の分散値とを推定する段階(102)と、
    前記第1の複数の時点の少なくとも幾つかを包含する時点を含む第2の複数の時点において、精密センサを含む異なるセットのセンサを使用して前記少なくとも1つの性能変数の第2の平均値(210、220、230)と第2の分散値とを推定する段階(104)と、
    前記第1の平均値、第1の分散値、第2の平均値及び第2の分散値を用いて前記第1の平均値と第2の平均値との間のマッピング関数求める段階(106)と、
    を含む方法。
  2. 前記第2の複数の時点の最後の時点よりも後の少なくとも1つの時点において、前記1つのセットのステーション・センサとマッピング関数とを使用して蒸気タービンの前記少なくとも1つの性能変数の付加的平均値を推定する段階(108)をさらに含む、請求項1記載の方法。
  3. 据付け蒸気タービン(30)の効率を判定する方法(100)であって、
    第1の複数の時点において、1つのセットのステーション・センサを使用して蒸気タービンの少なくとも1つの性能変数の第1の平均値(214、224、234)と第1の分散値とを推定する段階(102)と、
    前記第1の複数の時点の少なくとも幾つかを包含する時点を含む第2の複数の時点において、精密センサを含む異なるセットのセンサを使用して前記少なくとも1つの性能変数の第2の平均値(210、220、230)と第2の分散値とを推定する段階(104)と、
    前記第1の平均値、第1の分散値、第2の平均値及び第2の分散値を用いて前記第1の平均値と第2の平均値との間のマッピング関数求める段階(106)と、
    異なる施設における同一コードタイプの複数の蒸気タービンにおいて、前記推定する段階と求める段階とを反復して、前記同一タイプのセンサ間における反復性を判定する段階と、
    を含む方法。
  4. 前記第2の複数の時点の最後の時点よりも後の少なくとも1つの時点において、前記1つのセットのステーション・センサとマッピング関数とを使用して複数の蒸気タービンの各蒸気タービンの前記少なくとも1つの性能変数の付加的平均値を推定する段階(108)をさらに含む、請求項3記載の方法。
  5. 付加的時点で複数の蒸気タービンの各蒸気タービンにおいて、少なくとも1つの前記精密センサを含む前記異なるセットのセンサのサブセットを使用して前記少なくとも1つの性能変数の第3の平均値と第3の分散値とを推定する段階(108)をさらに含み、前記マッピング関数求める段階が、前記第1の平均値、第1の分散値、第2の平均値及び第2の分散値と共に前記第3の平均値及び第3の分散値を用いる段階をさらに含み、さらに、前記複数の蒸気タービンの各蒸気タービンにおいて、前記付加的時点が、前記第2の複数の時点の開始時点と終了時点との間の時点を含みかつ前記第2の複数の時点とは異なる、請求項3に記載の方法。
  6. 蒸気タービン(30)の効率を判定するためのプロセッサであって、該プロセッサが、
    第1の複数の時点において、1つのセットのステーション・センサを使用して蒸気タービンの少なくとも1つの性能変数の第1の平均値(214、224、234)と第1の分散値とを推定し(102)、
    前記第1の複数の時点の少なくとも幾つかを包含する時点を含む第2の複数の時点において、精密センサを含む異なるセットのセンサを使用して前記少なくとも1つの性能変数の第2の平均値(210、220、230)と第2の分散値とを推定し(104)、
    前記第1の平均値、第1の分散値、第2の平均値及び第2の分散値を用いて前記第1の平均値と第2の平均値との間のマッピング関数求める(106)、ように構成されている、
    プロセッサ。
  7. 前記第2の複数の時点の最後の時点よりも後の少なくとも1つの時点において、前記1つのセットのステーション・センサとマッピング関数とを使用して蒸気タービンの前記少なくとも1つの性能変数の付加的平均値を推定する(108)ようにさらに構成されている、請求項6記載のプロセッサ。
  8. 前記少なくとも1つの性能変数が、蒸気タービン(30)のHP(48)、IP(54)及びLP(60)セクションのセクション効率を含む、請求項6記載のプロセッサ。
  9. 付加的時点において、少なくとも1つの前記精密センサを含む前記異なるセットのセンサのサブセットを使用して前記少なくとも1つの性能変数の第3の平均値と第3の分散値とを推定する(108)ようにさらに構成され、かつ前記マッピング関数求めるために前記第1の平均値、第1の分散値、第2の平均値及び第2の分散値と共に前記第3の平均値及び第3の分散値を用いるようにさらに構成されている、請求項6記載のプロセッサ。
  10. 前記付加的時点が、前記第2の複数の時点の開始時点と終了時点との間の時点を含みかつ前記第2の複数の時点とは異なる、請求項9記載のプロセッサ。
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