JP4080388B2 - タービン基準出力算出装置、タービン基準出力算出方法、およびコンピュータ・プログラム - Google Patents

タービン基準出力算出装置、タービン基準出力算出方法、およびコンピュータ・プログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気タービン、ガスタービン等のタービンの出力の基準値を算出するタービン基準出力算出装置、タービン基準出力算出方法、およびコンピュータ・プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
発電所では、発電のために、蒸気タービンやガスタービン、さらにはこれらを組み合わせたコンバインドサイクル等のタービンが用いられている。これらのタービンは経年変化等の理由により特性の劣化が生じることがあり、その劣化の検知が行われている。劣化の検知のための技術が、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】
特開平8−326555号公報(特許請求の範囲参照)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、タービンの劣化の検知は必ずしも容易ではない。タービンの運用が一定の条件で(例えば、定格出力条件で)行われ、出力値が安定しているときには、タービンの出力の時間的変動そのものからタービンの特性の劣化を容易に推定できる。しかしながら、タービンの使用条件は一定であるとは限らず、出力の時間的変動のみからタービンの劣化を推定することは必ずしも容易ではない。また、出力の変動に時間的な遅れが生じる場合もある。
複数のタービンが組み合わされた場合(例えば、コンバインドサイクル)には、どのタービンに特性の劣化が生じたのかの判定が困難である。
【0004】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、タービンの劣化の基準となる基準出力を算出するタービン基準出力算出装置、タービン基準出力算出方法、およびコンピュータ・プログラムを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
A.上記目的を達成するために本明に係るタービン基準出力算出装置は、タービンに流入、流出する作動流体の該タービン内での断熱熱落差ΔH、該作動流体の質量流量Vmの二次式Q1と、該作動流体の比体積Spそれぞれの二次式Q2とを要素に含み、かつ該タービンの出力の基準値を表す基準式を記憶する基準式記憶手段と、前記基準式記憶手段に記憶された基準式に含まれる前記質量流量Vmおよび比体積Spの二次式Q1,Q2の係数を記憶する係数記憶手段と、前記基準式記憶手段に記憶された基準式および係数記憶手段に記憶された係数に基づき、前記タービンの出力の基準値を算出する基準出力算出手段と、を具備することを特徴とする。
【0006】
本発明に係るタービン基準出力算出装置では、基準式記憶手段に記憶された基準式および係数記憶手段に記憶された係数に基づき、タービンの出力の基準値を算出することができる。
基準式に、断熱熱落差ΔH(タービン内での作動流体の状態変化が断熱状態で行われるとしたときの熱落差(エンタルピーHの変化))が含まれていることから、タービンの理論的な意味での出力を算出し、タービンの出力の基準値としている。この基準値はタービンの状態(例えば、作動流体の体積流量、タービン入口側の圧力、タービン出口側の圧力等)を反映させて適宜に更新できる。
このように、基準式で算出されるタービンの出力の基準値がタービンの状態に応じて更新可能であることから、この基準値をタービンの出力の実測値と比較することで、タービンの劣化等を判定することが可能となる。
作動流体の質量流量Vmの二次式Q1と、作動流体の比体積Spの二次式Q2は、質量流量Vm等の変化に伴うタービンの効率の変化を基準値に反映するためのものであり、基準値を常に実測値と比較可能な値にすることができる。
【0007】
(1)タービン基準出力算出装置が、前記タービンの出力の実測値を入力する入力手段と、前記入力手段により入力された実測値と前記基準出力算出手段により算出された基準値とを比較する出力比較手段をさらに具備してもよい。
算出された基準値を実測値と自動的に比較することが可能となり、タービンの状態を容易に監視することができる。
この入力手段から入力されるタービンの出力の実測値は、タービンに設置された検出器から適宜に(例えば、リアルタイムで)送られたデータであってもよいし、他の装置に一旦蓄積された時系列のデータであっても差し支えない。即ち、いわゆるリアルタイム処理、バッチ処理のいずれにも本発明を適用することができる。
【0008】
(2)基準出力算出手段が、前記タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力に基づき、前記断熱熱落差を算出する手段を含んでも差し支えない。
断熱熱落差は、タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力の測定値に基づき算出することができる。
但し、このいずれかが直接的に測定できない場合でも、基準出力算出手段が、前記タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力の少なくともいずれかを推定する手段を含んでいれば、断熱熱落差の算出は可能である。
【0009】
(3)タービン基準出力算出装置が、前記タービンの出力の実測値に基づき、前記質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数を算出する係数算出手段、をさらに具備してもよい。
基準式をその時点でのタービンの出力の実測値に一致させるように二次式Q1,Q2の係数を定めることで、基準式から算出される基準値を実測値と比較容易にすることができる。
係数算出手段は、例えば、回帰分析により前記それぞれの二次式Q1、Q2の係数を算出することができる。
【0010】
係数算出手段が、前記タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力に基づき、前記断熱熱落差を算出する手段を含んでもよい。
断熱熱落差は、タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力の測定値に基づき算出することができる。
但し、このいずれかが直接的に測定できない場合でも、基準出力算出手段が、前記タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力の少なくともいずれかを推定する手段を含んでいれば、断熱熱落差の算出は可能である。
【0011】
(4)前記基準式記憶手段に記憶された基準式が、前記作動流体の比体積Spの二次式Q2に換えて、該作動流体の体積流量の二次式Q3を要素として含んでもよい。
作動流体の質量流量Vmの二次式Q1と体積流量の二次式Q3の組み合わせによっても、質量流量Vm等の変化に伴うタービンの効率の変化を基準値に反映し、基準値を常に実測値と比較可能な値にすることができる。
【0012】
(5)前記タービンが複数のタービンから構成される多段のタービンであってもよい。
タービンが多段の場合には、それぞれのタービンについて算出された出力を合計することで、タービン全体としての出力の基準値を算出できる。
【0013】
ここで、基準出力算出手段が、複数のタービンの基準出力を区分して算出してもよい。
複数のタービンの出力が区分して測定できる場合に、基準値と実測値の比較が容易に行える。
なお、この「区分して」とは、複数のタービンを個別にあるいはある程度纏めて算出することを許容することを意味する。例えば、高圧、中圧、低圧タービンからなる蒸気タービンとガスタービンとの組み合わせからタービン全体が構成される場合に、基準出力を蒸気タービンとガスタービンに区分して算出する場合が含まれる。
【0014】
B.本発明に係るタービン基準出力算出方法は、タービンに流入、流出する作動流体の該タービン内での断熱熱落差ΔH、該作動流体の質量流量Vmの二次式Q1と、該作動流体の比体積Spの二次式Q2とを要素に含み、かつ該タービンの出力の基準値を表す基準式を基準式記憶手段に記憶させる基準式記憶ステップと、前記基準式記憶ステップで前記基準式記憶手段に記憶された基準式に含まれる前記質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数を算出する係数算出ステップと、前記係数算出ステップで算出された質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数を係数記憶手段に記憶させる係数記憶ステップと、前記基準式記憶ステップで基準式記憶手段に記憶された基準式および前記係数記憶ステップで係数記憶手段に記憶された係数に基づいて、前記タービンの出力の基準値を算出する基準出力算出ステップと、を具備することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るタービン基準出力算出方法では、基準式記憶手段に記憶された基準式および係数記憶手段に記憶された係数に基づき、タービンの出力の基準値を算出することができる。
基準式に、断熱熱落差ΔHが含まれていることから、タービンの理論的な意味での出力を算出し、タービンの出力の基準値としている。この基準値はタービンの状態を反映させて適宜に更新できることから、この基準値をタービンの出力の実測値と比較することで、タービンの劣化等を容易に判定することが可能となる。
作動流体の質量流量Vmの二次式Q1と、作動流体の比体積Spの二次式Q2は、質量流量Vm等の変化に伴うタービンの効率の変化を基準値に反映するためのものであり、基準値を常に実測値と比較可能な値にするためのものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態に係るタービン基準出力算出装置10の構成を、基準出力の算出対象たる発電システムGSと共に、示すブロック図である。
タービン基準出力算出装置10は、発電システムGSの基準出力を算出する装置である。
【0017】
(発電システムGSについて)
先に発電システムGSにつき説明する。
発電システムGSは、発電機G、蒸気タービンST(高圧タービンHT、中圧タービンIT、低圧タービンLT)、復水器(コンデンサー)CD、空気圧縮機CP、ガスタービンGT、排熱回収ボイラ(HRSG: Heat Recovery Steam Generator)SG、煙突VTを有する。
【0018】
発電機Gには、空気圧縮機CP、ガスタービンGT、および蒸気タービンSTが接続される。そして、ガスタービンGT、蒸気タービンSTにより発電機Gが駆動され電気が発生する。
【0019】
空気圧縮機CPで圧縮された空気ARは燃焼室(図示せず)で燃料FLと混合されて燃焼し、燃焼ガスCGを発生する。この燃焼ガスCGは、ガスタービンGTを駆動しその後、排熱回収ボイラSGでの蒸気の発生、再加熱に用いられ、煙突VTから外界へと排出される。
排熱回収ボイラSGから発生した高圧蒸気HSは高圧タービンHTに駆動力を与えた後に、排熱回収ボイラSGで再加熱されて中圧蒸気ISとなり中圧タービンITに駆動力を与えて低圧蒸気LS1となって低圧タービンLTに駆動力を与える。低圧タービンLTには、この低圧蒸気LS1に加えて、復水器CDからの復水CWが加熱された低圧蒸気LS2が入力する。即ち、低圧蒸気LSには、低圧タービンLT、復水器CD、排熱回収ボイラSGを循環する流れが存在する。
【0020】
以上の発電システムGSは、蒸気タービンSTとガスタービンGTとを組み合わせたいわゆるコンバインドサイクルであり、燃焼ガスCGがガスタービンGTの駆動、蒸気の発生、最終的には、蒸気タービンSTとガスタービンGT双方の駆動に用いられることから、熱効率が良好である。
【0021】
(タービン基準出力算出装置10の構成)
タービン基準出力算出装置10は、中央演算装置(CPU:central processing unit)、記憶装置(メモリー等の主記憶装置、ハードディスク等の補助記憶装置のいずれでもよい)等からなるコンピュータおよびその周辺機器、このコンピュータを駆動するコンピュータ・プログラムの組み合わせから構成され、発電システムGSの基準出力を算出する。
【0022】
図1に示すように、タービン基準出力算出装置10は、具体的には、基準式記憶手段11,係数算出手段12,係数記憶手段13,基準出力算出手段14,出力比較手段15、入力手段16、出力手段17から構成される。
これらのうち、基準式記憶手段11,係数記憶手段13は、記憶装置上の記憶領域上に適宜に配置、構成される。また、係数算出手段12,基準出力算出手段14は、CPUとコンピュータ・プログラムの組み合わせにより構成される。入力手段16、出力手段17はコンピュータが外部と情報を入出力するための入出力機器である。なお、コンピュータ・プログラムは専用、汎用いずれのプログラムを用いて構成されても差し支えない。例えば、マイクロソフト社のEXCELを用いて構成することも可能である。
【0023】
基準式記憶手段11は,発電システムGSの出力の基準式を記憶するための記憶手段である。ここに記憶させる基準式は例えば、後述の式(6)、(7)、(10)であり、タービンに流入、流出する作動流体のタービン内での断熱熱落差ΔH、タービンに流入する作動流体の質量流量Vmの二次式Q1および比体積Spの二次式Q2(場合により、作動流体の体積流量Vvの二次式Q3)と、を要素として含んでいる。
【0024】
タービンへの本来の熱力学的な入力は作動流体の熱落差(タービンへの入力前後での作動流体のエンタルピーの変化)により表される。ここでは一種の理想化を行いタービン内で作動流体が断熱変化するものとして理論的なタービン出力を算出しており、この基準式で算出される出力はタービンの出力の基準値としての意味を持つ。二次式Q1,Q2は、質量流量Vm等の変化に伴うタービンの効率の変化を基準値に反映するためのものであり、基準値を常に実測値と比較可能な値にするためのものである。
なお、以上の詳細は後述する。また、ここにいう「要素として」とは、「式の実質的な要素として」の意であり、例えば、比体積Spに換えて(体積流量Vv/質量流量Vm)としても要素の実質には変わりがないと考えられる。
【0025】
係数算出手段12は,基準式記憶手段11に記憶された基準式に含まれる質量流量Vmおよび比体積Spの二次式Q1,Q2の係数を算出する算出手段である。断熱熱落差ΔH、質量流量Vm、比体積Spに対するタービンの出力の実測値が判っていれば、この実測値と基準式で算出される基準値とが対応するように二次式Q1,Q2の係数を適切に算出することができる。この係数の算出には、回帰分析(重回帰分析を含む)のような統計的な手法を利用できる。
【0026】
係数記憶手段13は,基準式記憶手段11に記憶された基準式に含まれる前記質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数を記憶する記憶手段である。
【0027】
基準出力算出手段14は,基準式記憶手段11に記憶された基準式および係数記憶手段13に記憶された二次式Q1,Q2の係数に基づき、タービンの出力の基準値を算出する算出手段である。
【0028】
出力比較手段15は、基準出力算出手段14で算出されたタービンの出力の基準値とタービンの出力の測定値とを比較する比較手段である。この比較は、単純には測定値から基準値を差し引くことで行うことができる。さらには、その差の大きさに応じて、種々の処理(例えば、変化の程度に応じた警告等)を行っても差し支えない。
【0029】
入力手段16は、係数算出手段12、基準出力算出手段14での係数、基準値の算出に必要な情報(例えば、発電システムGSでの質量流量Vm、タービンTでの入口側圧力P1、出口側圧力P2、タービンの出力実測値Pm)を入力する手段である。この入力手段16は、発電システムGSに設置された検出器から測定値を直接的に入力されても良いし、検出器からのデータが時系列的に記録された記憶装置(データベース等)から測定値を間接的に入力されても差し支えない。即ち、入力手段16は、リアルタイム処理、バッチ処理のいずれにおける入力手段をも含み、ネットワークを介してデータが入力される場合が含まれる。
【0030】
出力手段17は、算出した発電システムGSの出力の基準値や実測値との比較結果を出力する手段であり、例えば、表示装置(CRT、LCD等)、プリンター、さらには、何らかのメディア(フレキシブルディスク、CD−ROM、外部通信回線を含む)に出力する手段一般が含まれる。
【0031】
(タービン基準出力算出装置10の動作)
図2、3は、タービン基準出力算出装置10の動作手順を表すフロー図である。
図2は、基準式記憶手段11に記憶された基準式に含まれる質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数の算出を行う手順を、図3は、基準式記憶手段11に記憶された基準式および算出された係数に基づく発電システムGSの出力の基準値の算出を行う手順を表す。以下、図2,3に基づき説明する。
【0032】
A.係数の算出(図2)
(1)係数算出用データの採取を行う(ステップS11)。
このデータは、後述するように発電システムGSの性能試験用データ、実績運転データのいずれでも差し支えない。後述する基本状態値の算出が可能であれば足りる。
【0033】
(2)採取されたデータを基に基本状態値の算出を行う(ステップS12)。
ここでいう基本状態値は、各タービン(GT、HT、IT、LT)での断熱熱落差ΔH、質量流量Vm、比体積Sp(場合により体積流量Vv)をいうものとする。
断熱熱落差ΔHは、後述する式(2)を用いて、入口側温度T1、入口側圧力P1、出口側圧力P2から算出できる。但し、入口側温度T1、入口側圧力P1、出口側圧力P2の一部が判らない場合には、後述する手法により推定することができる。
【0034】
(3)質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数を算出する(ステップS13)。
この算出は、基準式に基本状態値を代入したときに算出される基準値が測定値に合致するように、回帰分析等によって係数を決定することで行える。
なお、この算出の後に、ガスタービンGTと蒸気タービンST(高圧タービンHT、中圧タービンIT、低圧タービンLT)それぞれでの基準値の算出が迅速に行えるように、ガスタービンGTと蒸気タービンSTでの基本状態値と基準値の関係を基準線(GT基準線、ST基準線)として纏めておくのが便宜である。
【0035】
(4)算出された二次式Q1,Q2の係数を記憶する(ステップS14)。
算出された係数は、係数記憶手段13に記憶される。なお、GT基準線、ST基準線を作成した場合には、これらの基準線も記憶手段に記憶する。
【0036】
B.算出された係数に基づく発電システムGSの管理(図3)
(1)発電システムGSを管理するためのデータを採取する(ステップS21)。
なお、採取するデータは発電システムGSに設置された検出器から直接採取されてもよいし、データベース等を経由して間接的に採取されても差し支えない。
【0037】
(2)採取されたデータを基に基本状態値の算出を行う(ステップS22)。
ここでいう基本状態値は、ステップS12と同様に、各タービン(GT、HT、IT、LT)での断熱熱落差ΔH、質量流量Vm、比体積Sp(場合により体積流量Vv)をいう。断熱熱落差ΔHは、入口側温度T1、入口側圧力P1、出口側圧力P2から算出でき、これらの一部が判らない場合には、推定することができるのもステップS12と同様である。
【0038】
(3)各タービン(GT、HT、IT、LT)の出力の基準値を算出する(ステップS23)。
この算出は、各タービンTに対応する基準式に基本状態値を代入することで行える。
【0039】
(4)発電システムGS全体、ガスタービンGT、蒸気タービンSTそれぞれでの出力の基準値を算出する(ステップS24)。
この算出は各タービンT毎に算出された基準値を発電システムGS全体、ガスタービンGT、蒸気タービンSTそれぞれで加算することで行える。この算出に際して保存されているGT基準線、ST基準線を使うと便宜である。
【0040】
(5)発電システムGSの出力の基準値と測定値の比較を行う。この比較は、発電システムGS全体、ガスタービンGT、蒸気タービンSTそれぞれで行われる。
この比較の結果、基準値と実測値の相違が大きい場合には、必要に応じて警告を行い、発電システムGSの各構成機器の検査が行われる。
【0041】
(基準式の説明)
以下に、基準式記憶手段11に記憶される基準式の詳細を説明する。
A.単一タービンの場合
一般的にタービンT(蒸気タービン、ガスタービンのいずれでも)の出力Pは、以下の式(1)で表される。
P=ΔH・V・η ……式(1)
ここで、
ΔH(=H1−H2):単位質量当たりでの作動流体の熱落差(タービン入口、出口でのエンタルピーHの変化)
:作動流体の質量流量(kg/秒)
η:タービン効率
である。
【0042】
この式(1)はタービンTの出力そのものと対応する式であるが、式(1)での熱落差ΔHを断熱熱落差(タービンT内での作動流体の変化が断熱状態で行われるとしたときの熱落差)に置き換えることで、次のようにタービンTの出力の基準値としての意味を持たせることができる。
【0043】
ΔHを熱落差とした場合には、式(1)で算出される出力はタービンTの出力の測定値と対応する。これに対して、ΔHを断熱熱落差とした場合には、この値は後述の式(2)で示されるように、タービンTの出口側温度T2とは無関係な値となり、一種の理想化された状態となる。
【0044】
タービンTの性能が低下した場合には、同一の状態の作動流体が入力したときにそのエンタルピーの一部しかタービンTの駆動力に用いられなくなる。このため、タービンTから排出される作動流体のエンタルピーは比較的高い状態に保たれ、言い換えれば、出口側温度T2が高くなる。
【0045】
ΔHを熱落差とした場合には、式(1)に出口側温度T2の影響が組み込まれ、算出されるタービンTの出力が変化する(言い換えれば、式(1)をタービンTの出力の基準値の算出には用い難い)。これに対してΔHを断熱熱落差とした場合には、タービンTの特性の劣化に起因するタービンTの出口側温度T2の変化が式(1)に組み込まれず、式(1)をタービンTの出力の基準値の算出に用いることができる。
以下、式(1)にタービンTの出力の基準値としての意味を持たせるために、ΔHを断熱熱落差とすることとする。
【0046】
作動流体の単位質量当たりの断熱熱落差ΔHは、入口側温度T1、入口側圧力P1、出口側圧力P2、質量流量Vから次の式(2)に基づき算出できる。
ΔH=[κ/(κ−1)]・P1[1−(P2/P1)(κ−1)/κ]……式(2)
ここで、
κ:比熱比(=Cp(低圧比熱)/Cv(定容比熱))
P1:タービン入口側圧力
P2:タービン出口側圧力
である。
【0047】
ΔHを断熱熱落差としたことから、ΔH・Vは理論上のタービンの最大出力である理論出力Prefとしての意味を持ち、式(1)は次の式(3)に置き換えることができる。
P=Pref・η ……式(3)
【0048】
図4は、質量流量Vとタービン効率ηおよびタービン出力Pの関係を表すグラフである。図4に示すように、一般にタービン効率はVを横軸にとると上に凸の曲線となる。
この曲線を二次近似すると、次の式(4)の関係が導出できる。
η=(aV 2+bV+c) ……式(4)
ここで、a〜c:係数 である。
【0049】
しかしながら、式(4)を式(1)に代入した次の式(5)について種々の検討を重ねたところ、式(5)は必ずしも測定値と一致しないことが判った。
P=ΔH・V・(aV 2+bV+c) ……式(5)
【0050】
その後に様々な調査を行ったところ、比体積Spあるいは体積流量Vvを用いて補正することで、基準式を実際の値と非常によく一致させられることが判った。これは例えば、次の式(6)である。
【0051】
Figure 0004080388
ここで、
Sp=体積流量Vv(m/秒)/重量流量Vm(kg/秒)
=比体積(密度の逆数)
=標準状態での比体積・(タービン入口側温度T1/標準温度T0)・(標準圧力P0/タービン入口側圧力P1)
である。
【0052】
式(6)は、体積流量Vmの二次式Q1と比体積Spの二次式Q2の積の形で表されている。
式(6)では比体積Spを用いて補正する場合を示しているが、次の式(7)に示すように比体積Spに換えて体積流量Vvを用いて補正することも可能である。
Figure 0004080388
【0053】
式(6)、(7)では、比体積Spの二次式Q2,体積流量Vvの二次式Q3の係数は同一に表されているが、実際の値としては異なる値が用いられることとなる。
式(6)、(7)では、どちらかと言えば式(6)の方が広い範囲の質量流量Vで、タービンTの出力と一致する。しかしながら、式(7)でも質量流量Vの変化幅がそれほど大きくなければ、出力の基準値の算出に用いて差し支えない。
なお、式(6)、(7)では、比体積Spまたは体積流量Vvの2次項までを用いて近似精度を向上しているが、これは必ずしも絶対的なものではなく、1次項まであるいは3次項以上を用いることができる。
【0054】
B.複数タービンの場合
複数のタービンが1つの軸で接続されている場合には、全体の出力の基準値Pwはこれら複数のタービンの出力を加算したものとなる。
例えば、図1で示したような蒸気タービンST(高圧タービンHT、中圧タービンIT、低圧タービンLT)、ガスタービンGT、空気圧縮機CPが接続されている場合の出力基準値Pwは以下の式(10)により表される。
【0055】
=−PCP+PGT+PHT+PIT+PLT+C ……式(10)
ここで、PCP:空気圧縮機CPの出力(実際には入力なので−がつく)
GT:ガスタービンGTの出力
HT:高圧タービンHTの出力
IT:中圧タービンITの出力
LT:低圧タービンLTの出力
C:近似定数
であり、それぞれ式(11)〜(15)のように表される。
【0056】
空気圧縮機CPについては、軸方向の成分と周方向の成分に分けて近似式が適用される。以下に示す圧縮機出力等の軸方向/周方向成分の比率は、空気圧縮機CPの入口に設けられた案内羽根の角度により変化する。
CP=PCP_ref・(a1af_m 2+b1af_m+c1)・(α1af_ 2+β1af_ +γ1)+PCP_ref_r・(a2af _m 2+b2af _m+c2)・(α2a f _ 2+β2af _ +γ2) …式(11)
【0057】
ここで、
CP_ref(=ΔHcomp・Vaf_m) :圧縮機理論出力の軸方向成分
CP_ref_r(=ΔHcomp・Vaf _m):圧縮機理論出力の周方向成分
af_m:圧縮機空気質量流量の軸方向成分
af_v:圧縮機空気体積流量の軸方向成分
afr_m:圧縮機空気質量流量の周方向成分
afr_ :圧縮機空気体積流量の周方向成分
である。
【0058】
GT=PGT_ref・(a3GT_m 2+b3GT_m+c3)・(α3GT_v 2+β3GT_ +γ3) …式(12)
ここで、
GT_ref(=ΔHGT・VGT_m) :ガスタービン理論出力
GT_m:ガスタービン入口燃焼ガス質量流量
GT_v:ガスタービン入口燃焼ガス体積流量
である。
【0059】
HT=PHT_ref・(a4HT_m 2+b4HT_m+c4)・(α4HT_v 2+β4HT_ +γ4) …式(13)
ここで、
HT_ref(=ΔHHT・VHT_m):高圧タービン理論出力
HT_m:高圧タービン入口蒸気質量流量
HT_v:高圧タービン入口蒸気体積流量
である。
【0060】
IT=PIT_ref・(a5IT_m 2+b5IT_m+c5)・(α5IT_v 2+β5IT_ +γ5) …式(14)
ここで、
IT_ref(=ΔHIT・VIT_m) :中圧タービン理論出力
IT_m:中圧タービン入口蒸気質量流量
IT_v:中圧タービン入口蒸気体積流量
である。
【0061】
LT=PLT_ref・(a6LT_m 2+b6LT_m+c6)・(α6LT_v 2+β6LT_ +γ6)+δVac …式(15)
ここで、
LT_ref(=ΔHLT・VLT_m):低圧タービン理論出力
LT_m:低圧タービン入口蒸気質量流量
LT_v:低圧タービン入口蒸気体積流量
δVac:真空度による補正項
(Vac=復水器真空度/VLT_m・PLT_ref
である。
【0062】
式(10)に式(11)〜(15)を代入することで、それぞれのタービンTの状態(入口側温度T1、入口側圧力P2、出口側圧力P2、質量流量Vm)から、発電システムGS全体としての出力の基準値を算出することができる。
【0063】
C.重回帰分析等による係数の決定
式(11)〜(15)における係数an〜cn(n:1〜6)、αn〜γn δ、Cは、実際には未知数である。これを実際の発電システムGSに合わせて算出する必要がある。即ち、Pが基準としたい状態の発電機Gの出力実測値Pmに近づくような係数an〜cn、αn〜γn δ、Cを算出する。
具体的には、式(11)〜(15)を展開して式(10)に代入し、重回帰分析を行うことにより係数an等を求めることができる。例えば、ガスタービンGTの式(12)を展開すると、次の式(20)のように表せ、重回帰分析により係数A〜Iを導出できる。
【0064】
GT=A・PGT_ref・VGT_m 2・VGT_v 2+B・PGT_ref・VGT_m 2・VGT_v+C・PGT_ref・VGT_m 2+D・PGT_ref・VGT_m・VGT_v 2+E・PGT_ref・VGT_m・VGT_v+F・PGT_ref・VGT_m+G・PGT_ref・VGT_v 2+H・PGT_ref・VGT_v+I・PGT_ref …式(20)
【0065】
係数の算出に使用するデータは、例えば次のa,bのようなデータを利用することができる。多様なデータの取得が可能であることから、どちらかといえば、aの性能試験データの方が利用するデータとして好ましいものの、いずれのデータを利用しても係数の算出が可能である。
a.発電システムGSの性能試験データ
性能試験では、発電システムGSを異なる運転条件下に置きそれぞれ異なる出力を得ることができる。
【0066】
b.発電システムGSの実績運転データ(例えば、一年間)
発電システムGSを通常運転下に置いて、そのときに得られる出力データを蓄積する。このときには、平均的運転条件に対応するように係数an等が決定されることになる。
【0067】
D.基本状態値の推定
式(10)から判るように、断熱熱落差ΔHの算出には、入口側温度T1、入口側圧力P1、出口側圧力P2が必要となり、これらのパラメータが計測されていることが望ましい。
しかしながら、次のような手法を適用することで、一部のパラメータが何らかの理由により(例えば、測定器が備えられていない)欠けている場合でも、対応することができる。
【0068】
a.ガスタービンGTの場合
入口側温度T1について、以下▲1▼、▲2▼の方法を適用して算出できる。
▲1▼燃料成分と燃料・空気流量から計算
次の式(30)の両辺が等しくなるような温度T1を算出する。燃料の成分、流量が燃料の熱量QFLの算出に、空気の流量が空気の熱量QCPの算出に用いられる。
FL+QCP=QN2+QO2+QCO2+QH2O …式(30)
【0069】
ここで、
FL:燃料の熱量
CP:空気圧縮機CP出口温度(燃焼前)における燃焼用空気の熱量
N2:ガスタービンGT入口温度T1における燃焼後の窒素の熱量
O2:ガスタービンGT入口温度T1における燃焼後の酸素の熱量
CO2:ガスタービンGT入口温度T1における燃焼後の二酸化炭素の熱量
H2O:ガスタービンGT入口温度T1における燃焼後の水分の熱量
である。
【0070】
▲2▼出口側温度T2が判っている場合には、タービンT内での作動流体の変化がポリトロープ変化だとして入口側温度T1を計算できる。
T1=T2・(P1/P2)(n−1)/n ……式(40)
ここで、
n:ポリトロープ係数
P1,P2:入口側、出口側圧力
T1,T2:入口側、出口側温度
である。
【0071】
b.中圧タービンITの場合
出口側圧力P2について、以下▲1▼、▲2▼の方法を適用できる。
▲1▼中圧タービン入口側圧力P1と復水器真空度PCDから低圧蒸気流量、クロスオーバー管等の影響を考慮して、算出できる。
具体的には、次の式(51)に基づき、出口側圧力P2を算出することができる。
P2=P1・K1m1 ……式(51)
【0072】
ここで、
Figure 0004080388
である。
【0073】
▲2▼中圧タービン排気部の車室温度tを使い、低圧蒸気熱量とのバランスから算出できる。
具体的には、以下の式(52)において、両辺が等しくなるのに必要な圧力Pを算出する。
h1・F1=h2・(F1+F2)−h3・F2 …式(52)
【0074】
ここで、
K2:クロスオーバ管の圧力降下率
h1:温度t(車室温度tと等しいとする)、圧力Pにおける中圧タービンの出口側エンタルピー
h2:(低圧タービン入口側)温度t2、圧力P・K2における低圧タービンの入口側エンタルピー
h3:(低圧主蒸気)温度t3、圧力P3における低圧主蒸気エンタルピー
F1:中圧タービン蒸気流量
F2:低圧主蒸気流量
である。
【0075】
c.低圧タービンLTの場合
入口側圧力について、中圧タービンITと同様の手法を適用できる。
具体的には、次の式(53)に基づき、出口側圧力P2を算出することができる。
P2=P1・K2 ……式(53)
【0076】
ここで、
Figure 0004080388
である。
【0077】
入口側温度については、中圧タービン排気部の車室温度tを使い、低圧蒸気熱量とのバランスから計算により求めることができる。
具体的には、以下の式(54)において、両辺が等しくなるのに必要な温度t2を算出する。
h2・(F1+F2)=h1・F1+h3・F2 …式(54)
【0078】
ここで、
K2:クロスオーバ管の圧力降下率
h1:温度t(車室温度tと等しいとする)、圧力Pにおける中圧タービンの出口側エンタルピー
h2:(低圧タービン入口側)温度t2、圧力P・K2における低圧タービンの入口側エンタルピー
h3:(低圧主蒸気)温度t3、圧力P・K23における低圧主蒸気エンタルピー
F1:中圧タービン蒸気流量
F2:低圧主蒸気流量
である。
なお、中圧タービン排気部の車室温度tが中圧タービンの排気と低圧蒸気とを混合した後での温度と見なせる場合は、車室温度tにその温度を用いることができる。
【0079】
(発電システムGSの管理)
A.発電システムGS全体の管理
式(10)を用いて、発電システムGSの管理を行うことができる。
これは次のように、式(10)から得られた出力基準値Pwと発電システムGSの出力実測値Pmとを比較することで行える。これは図3のステップS25で既述の出力の比較に対応する。
ΔP=Pw−Pm ……式(60)
ここで、ΔP:出力偏差 である。
【0080】
さらに、この出力偏差ΔPを用いて、効率の変化Δηを算出することができる。
Δη=ΔP/Qt ……式(61)
ここで、Qt:使用した燃料から発せられた総熱量(J) である。
【0081】
ここで、式(60)で表される出力偏差ΔPの意味を再度説明する(式(1)に関連して一旦説明済み)。
既述のように、出力基準値Pwは発電システムGSのある時点での出力実測値に一致するように係数が設定される。これはその時点での発電システムGSの性能に対応するように式(10)が設定されたことを意味する。従い、出力偏差ΔPは、性能の変化に対応するものと考えられる。
【0082】
タービンや圧縮機の内部において性能に影響を及ぼすような変化があった場合、出口側温度の変化により出力が変動するが、上のように求めた基準出力は出口側温度の要素を含まないため、実績の出力との比較を行うと性能の変化分が出力の偏差として算出される。
【0083】
B.個別的な管理
式(10)をタービンT毎に評価することが可能であり、例えばガスタービンGT側、蒸気タービンSTに分離することができる。
式(10)から、以下の2つの式(62)、(63)を取り出すことができる。
【0084】
GT0=−PCP+PGT ……式(62)
ST =PHT+PIT+PLT ……式(63)
ここで、
GT0:全ガスタービン出力(作動流体に空気・燃焼ガスを利用する空気圧縮機CPとガスタービンGTの出力合計)
ST0:全蒸気タービン出力(作動流体に蒸気を利用する蒸気タービンSTの出力)
である。
【0085】
ガスタービンGT、蒸気タービンSTそれぞれの実績出力を採取して(基準出力算出に使用したデータと同じ時期に、データを採取するのが便宜)、全ガスタービン出力PGT0の算出値(PGT0c)と実測値(PGT0m)、全蒸気タービン出力PSTの算出値(PST0c)と実測値(PSTm)それぞれの関係を示す近似式や図を作成しておけば、ガスタービンGT側、蒸気タービンST側の基準出力となりうる(GT基準線、ST基準線の作成)。
【0086】
なお、全ガスタービン出力の実測値(PGT0m)、全蒸気タービン出力の実測値(PST0m)は、次のa,bのような手法で全出力Pwから分離することができる。
【0087】
a.入出熱法
ガスタービンGTと蒸気タービンSTそれぞれで、入った熱Q1と出た熱Q2を求め、これを出力に換算することができる。具体的には、次の式(55)を用いる。
【0088】
ΔP=[(Q2GT−Q1GT)−(Q2ST−Q1ST)]/A…式(65)
ここで、
Q2GT, Q1GT: ガスタービンGTでの熱の入力、出力
Q2ST, Q1ST: 蒸気タービンSTでの熱の入力、出力
ΔP(=PGT0−PST0): ガスタービンGTと蒸気タービンSTの出力差
A:換算値
である。
【0089】
式(65)で算出された出力差ΔPを全体出力の実測値Pwmとの差をとることで、ガスタービンGTと蒸気タービンSTそれぞれの出力P0GT、PST0を算出できる。
ST0=(Pwm−ΔP)/2
GT0=(Pwm+ΔP)/2 …式(66)
【0090】
b.計測法
軸トルク計等を用いて、ガスタービンGTと蒸気タービンSTの境界に加わるトルクTを測定し、この測定結果を基に出力差ΔP(物理的意味合いは、式(65)と同様)を算出する。その後は、式(66)を用いてガスタービンGTと蒸気タービンSTそれぞれの出力PGT0、PST0を算出できる。
【0091】
(実験結果)
以下、本発明を適用して計算した結果を示す。
図5は、本発明に係るタービン基準出力算出装置において式(60)に基づき計算された出力偏差ΔPの具体例を示すグラフである。また、図6は、図5の比較例を表すグラフである。これらのグラフでは、横軸:時間(t)、縦軸:出力(MW)となっている。この具体例、比較例ではそれぞれ式(6)、(5)に基づき出力偏差ΔPを算出している。
図5,6を比較すれば判るように、本発明を適用した図5では誤差が小さいことが判る。
【0092】
図7は、本発明に係るタービン基準出力算出装置により計算されたガスタービンGTの基準値Pと実測値Pmの相関の具体例を表すグラフ(横軸:基準値P、縦軸:実測値Pm)である。また、図8は、この比較例を表すグラフである。この具体例、比較例ではそれぞれ式(6)、(5)に基づき出力偏差ΔPを算出している。
図7,8を比較すれば判るように、本発明を適用した図7では基準値Pと実測値Pmの相関が高いことが判る。
【0093】
図9〜11は、本発明に係るタービン基準出力算出装置によって式(6)に基づき算出された出力偏差ΔPの時間的な経過を発電出力全体、ガスタービンGT、蒸気タービンSTのそれぞれについて表したグラフである。
ガスタービンGTの水洗の前後で、図9,10では出力偏差ΔPが変動しているが、図11ではあまり変動していない。このことは、ガスタービンGTと蒸気タービンSTの出力の分離が、適切に行えていることを意味すると考えられる。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、タービンの劣化の基準となる基準出力を算出するタービン基準出力算出装置、タービン基準出力算出方法、およびコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1実施形態に係るタービン基準出力算出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1に表されたタービン基準出力算出装置の基準式記憶手段に記憶された基準式に含まれる二次式Q1,Q2の係数の算出を行う手順を表すフロー図である。
【図3】 図1に表されたタービン基準出力算出装置により発電システムの出力の基準値の算出を行う手順を表すフロー図である。
【図4】 質量流量Vとタービン効率ηおよびタービン出力Pの関係を表すグラフである。
【図5】 本発明に係るタービン基準出力算出装置により計算された出力偏差ΔPの具体例を示すグラフである。
【図6】 出力偏差ΔPの比較例を示すグラフである。
【図7】 本発明に係るタービン基準出力算出装置により計算されたガスタービンGTの基準値Pと実測値Pmの相関の具体例を表すグラフである。
【図8】 ガスタービンGTの基準値Pと実測値Pmの相関の比較例を表すグラフである。
【図9】 本発明に係るタービン基準出力算出装置によって算出された発電出力全体での出力偏差ΔPの時間的な経過を表すグラフである。
【図10】 本発明に係るタービン基準出力算出装置によって算出されたガスタービンGTでの出力偏差ΔPの時間的な経過を表すグラフである。
【図11】 本発明に係るタービン基準出力算出装置によって算出された蒸気タービンSTでの出力偏差ΔPの時間的な経過を表すグラフである。
【符号の説明】
10…タービン基準出力算出装置
11…基準式記憶手段
12…係数算出手段
13…係数記憶手段
14…基準出力算出手段
15…出力比較手段
16…入力手段
17…出力手段

Claims (15)

  1. タービンに流入、流出する作動流体の該タービン内での断熱熱落差ΔH、該作動流体の質量流量Vmの二次式Q1と、該作動流体の比体積Spの二次式Q2とを要素に含み、かつ該タービンの出力の基準値を表す基準式を記憶する基準式記憶手段と、
    前記基準式記憶手段に記憶された基準式に含まれる前記質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数を記憶する係数記憶手段と、
    前記基準式記憶手段に記憶された基準式および係数記憶手段に記憶された係数に基づき、前記タービンの出力の基準値を算出する基準出力算出手段と、
    を具備することを特徴とするタービン基準出力算出装置。
  2. 前記タービンの出力の実測値を入力する入力手段と、
    前記入力手段により入力された実測値と前記基準出力算出手段により算出された基準値とを比較する出力比較手段をさらに具備する
    ことを特徴とする請求項1記載のタービン基準出力算出装置。
  3. 前記基準出力算出手段が、前記タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力に基づき、前記断熱熱落差を算出する手段を含む
    ことを特徴とする請求項1記載のタービン基準出力算出装置。
  4. 前記基準出力算出手段が、前記タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力の少なくともいずれかを推定する手段を含む
    ことを特徴とする請求項3記載のタービン基準出力算出装置。
  5. 前記タービンの出力の実測値に基づき、前記質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数を算出する係数算出手段、
    をさらに具備することを特徴とする請求項1記載のタービン基準出力算出装置。
  6. 前記係数算出手段が、回帰分析により前記それぞれの二次式Q1、Q2の係数を算出する
    ことを特徴とする請求項5記載のタービン基準出力算出装置。
  7. 前記係数算出手段が、前記タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力に基づき、前記断熱熱落差を算出する手段を含む
    ことを特徴とする請求項6記載のタービン基準出力算出装置。
  8. 前記係数算出手段が、前記タービンの入口側温度、入口側圧力、出口側圧力の少なくともいずれかを推定する手段を含む
    ことを特徴とする請求項7記載のタービン基準出力算出装置。
  9. 前記基準式記憶手段に記憶された基準式が、前記作動流体の比体積Spの二次式Q2に換えて、該作動流体の体積流量の二次式Q3を要素として含む
    ことを特徴とする請求項1記載のタービン基準出力算出装置。
  10. 前記タービンが複数のタービンから構成される多段のタービンである
    ことを特徴とする請求項1記載のタービン基準出力算出装置。
  11. 前記基準出力算出手段が、前記複数のタービンの基準出力を区分して算出する
    ことを特徴とする請求項10記載のタービン基準出力算出装置。
  12. タービンに流入、流出する作動流体の該タービン内での断熱熱落差ΔH、該作動流体の質量流量Vmの二次式Q1と、該作動流体の比体積Spの二次式Q2とを要素に含み、かつ該タービンの出力の基準値を表す基準式を基準式記憶手段に記憶させる基準式記憶ステップと、
    前記基準式記憶ステップで前記基準式記憶手段に記憶された基準式に含まれる前記質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数を算出する係数算出ステップと、
    前記係数算出ステップで算出された質量流量Vmおよび比体積Spそれぞれの二次式Q1,Q2の係数を係数記憶手段に記憶させる係数記憶ステップと、
    前記基準式記憶ステップで基準式記憶手段に記憶された基準式および前記係数記憶ステップで係数記憶手段に記憶された係数に基づいて、前記タービンの出力の基準値を算出する基準出力算出ステップと、
    を具備することを特徴とするタービン基準出力算出方法。
  13. 前記タービンの実測値と前記基準出力算出手段により算出された基準値とを比較する出力比較ステップをさらに具備する
    ことを特徴とする請求項12記載のタービン基準出力算出方法。
  14. 請求項1記載のタービン基準出力算出装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータ・プログラム。
  15. 請求項12記載のタービン基準出力算出方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ・プログラム。
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