JP4831328B2 - エキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エキシマレーザ用、特にArFエキシマレーザ用、更にはArF液浸技術等にも使用されるレチクル、フォトマスク用合成石英マスク基板等の石英ガラス基板用として好適な、光透過率、透過率均一性に優れ、複屈折が小さく、かつ使用に際して光透過率変化が少なく均一であるエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法に関する。
近年、超LSIの高集積化に伴う露光パターンの微細化が進み、回路パターンを半導体ウエハー上に描画するリソグラフィー装置(ステッパー装置)においても露光光源はより短波長化が求められてきている。この結果、露光装置の光源として、従来のi線(波長365nm)からKrFエキシマレーザ(波長248nm)が主流となり、近年ではArFエキシマレーザ(波長193nm)の実用化が始まってきており、更に高NA化のための液浸技術の導入が鋭意検討されている。
このような光源の短波長化やレンズの高NA化に伴い、露光装置に使用されるレンズ、ウインドウ、プリズム等の光学部品に加えてIC回路の原版であるフォトマスク用合成石英マスク基板、所謂レチクルについても、より高精度なものが求められてきている。特にArFエキシマレーザに関しては、光学部品と同様に高い紫外線透過性、透過性の高均一性、エキシマレーザ照射に対する透過率の安定性及び均一性、更には今後の露光方式によっては複屈折の低減も含めて極めて重要な課題が多数存在している。
合成石英ガラス用基板の原料となる合成石英ガラスインゴットを製造する方法には、一般的に、シリカ原料を火炎加水分解して得られるシリカ微粒子を溶融しつつ堆積成長する直接法と、シリカ原料を火炎加水分解して得られるシリカ微粒子を堆積成長した後、透明ガラス化するスート法という2つの製造方法がある。
通常、紫外線吸収の原因となる金属不純物の混入を避けるために、例えば直接法では高純度の四塩化ケイ素等シラン化合物やシリコーン化合物の蒸気を直接酸水素火炎中に導入し、これを火炎加水分解させてシリカ微粒子を生成させ、直接回転する石英ガラス等の耐熱性基体上に堆積・溶融ガラス化させて、透明な合成石英ガラスとして製造される。
このようにして製造された透明な合成石英ガラスは、190nm程度の短波長領域まで良好な光透過性を示し、紫外線レーザ光、具体的にはi線の他、KrF(248nm)、XeCl(308nm)、XeBr(282nm)、XeF(351nm,353nm)、ArF(193nm)等のエキシマレーザ光及びYAGの4倍高調波(250nm)等についての透過材料として用いられてきた。
紫外線に対する透過率は、例えばArFエキシマレーザでは使用波長である波長193.4nmの光に対する透過率が最も重要であるが、合成石英ガラスの場合、この波長領域の光に対する透過率は不純物の含有量によって低下する。この不純物の代表的なものはNa等のアルカリ金属とCu、Fe等の金属元素である。合成石英ガラスの場合、原料であるシラン類、シリコーン類の純度が極めて高純度のものを使用することにより、得られた合成石英ガラス中に含まれるこれら金属不純物の濃度を感度のよい検出装置で測定しても検出不可能なレベル(<1ppb)まで低減することが可能であるが、Na、Cuについては合成石英ガラスに対する拡散係数が比較的大きいために、熱処理によって、外部から拡散し、混入することが多く、これらの処理はそのような汚染が生じにくいように特に注意が必要である。
また、上記不純物以外にも合成石英ガラス中に存在する固有欠陥も透過率に影響を与えることが知られている。この欠陥とは、合成石英ガラスを構成するSi−O−Si構造に対して酸素が過不足しているもの、例えば酸素欠損欠陥(Si−Si:245nmに吸収を有する)や、酸素過多欠陥(Si−O−O−Si:177nmに吸収を有する)が有名であるが、紫外線用途の合成石英ガラスの場合、このような欠陥が、少なくとも分光測定で測定できるレベルにあるものは最初から除外されているので、より微妙な欠陥、例えば極度に伸縮したり、圧縮したSi−O−Si結合であるとか、Si−O−Si結合角が安定領域から外れた状態等が問題になると言われている。
このようなより微妙な欠陥が、波長200nm以下の紫外線領域になると微小な吸収をもたらすと言われている。これらは、合成石英ガラスの製造方法に起因して生じるものと考えられており、例えば上記に記載したような直接法によれば、製造した合成石英ガラスインゴットの成長方向に対して垂直な面における中心部と外周部とで微妙な透過率差が、例えばArFエキシマレーザの波長193.4nmにおいては、0.5%程存在する。これはシリカの成長溶融面の温度分布によると考えられ、外周部の方の表面温度が中心部より低いために微妙な不安定構造により外周部の紫外線透過率が低くなるものと考えられている。
特開平7−61823号公報(特許文献1)には、これら不安定構造を取り除くための手段として、直接法による合成石英の成長速度を2mm/時間以下に低減する方法が開示されている。
この方法は有効な手段であると思われるが、成長速度が非常に遅いため、生産性が悪く経済的に問題がある。
インゴットの紫外線透過率を向上させる効果的な方法として、特許第2762188号公報(特許文献2)は、熱処理工程における合成石英ガラス成形体の汚染によって生じる200nm以下の波長の光の吸収が、波長150〜300nm、望ましくは180〜255nmの範囲内の波長の紫外線を照射することによって消失することも開示している。
次に、紫外線透過率と同様に重要な特性として、合成石英ガラスのエキシマレーザ照射に対する安定性がある。特にArFエキシマレーザの場合、KrFエキシマレーザに比べて5倍位ダメージが入り易いと言われており、非常に重要な要素である。
合成石英ガラスにArFエキシマレーザが照射された場合に生じる現象として、Si−O−Siの結合がレーザ光の非常に強いエネルギーによって開裂し、E’センター(イープライムセンター)と呼ばれる常磁性欠陥が生成し、215nmの吸収が生じる現象がある。これは合成石英ガラスの193.4nmに対する透過率低下をもたらす。また、構造的には合成石英ガラスの網目構造が再配列してガラス密度が上昇するレーザコンパクションと呼ばれる現象を生じることとしてもよく知られている。
このような合成石英ガラスのレーザ照射に対する安定性を向上するためには、上記に記載したように合成石英ガラスの固有欠陥を低減すると同時に、合成石英ガラス中の水素分子濃度をあるレベル以上にすることが極めて効果的であると知られている。
また、エキシマレーザ照射による合成石英ガラスへのダメージを合成石英ガラス中の水素分子が阻害することは、特開平1−212247号公報(特許文献3)に示されて以来、熱心に研究されていてよく知られている事実である。
この水素分子は、特開平7−43891号公報(特許文献4)にも開示されているように、特にArFエキシマレーザを高エネルギー(100mJ/cm2・pulse)による加速的な照射試験をした場合に水素分子が多いと、照射初期での波長193.4nmでの吸収が増大するが、その後長期的な照射を継続すると吸収は緩和される。逆に水素分子が少ないと照射初期段階の193.4nmでの吸収は小さいが、長期的照射では吸収が増大する。従って、合成石英ガラス中に含有される水素分子濃度を適度に調整する必要がある。
特に生産性の追求、歩留まり向上を狙った直接法による合成石英ガラスインゴットは、その製法条件によって、酸水素ガスバランスでは水素が酸素量論量に比べ過剰な条件で作製されているために、作製された合成石英ガラスインゴット中に水素分子が非常に多く含有されており、上記ArFエキシマレーザを照射した際の照射初期吸収が増大し易い。
合成石英ガラス中に水素分子を適量含有させる方法には2通りある。一つは合成石英ガラスインゴットの成長時に燃焼ガスである水素やプロパンと酸素の比率を適当に調節することにより、成長インゴット中に水素分子を含有させる方法である。この方法であれば、合成石英ガラスインゴット中の水素分子濃度を0〜2×1019分子数/cm3程度の範囲で調整することが可能である。
もう一つの方法は、合成石英ガラス体を水素雰囲気中で熱処理することにより水素分子を熱拡散する方法である。この方法は水素分子濃度を厳密に制御できるという利点を有するが、一方で危険な水素ガスを用いるため、爆発の危険性を伴うこと、安全対策等の設備費用がかかり経済的な負担が大きいこと、熱処理になるために不純物拡散の危険性があり、透過率が低下し易いこと等が不利な点として挙げられる。
特に最近では、例えばArFエキシマレーザの実際の使用において、レーザ照射初期吸収の抑制及び均一性が重要になってきている。
特開平7−61823号公報 特許第2762188号公報 特開平1−212247号公報 特開平7−43891号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、エキシマレーザに使用されるレチクル、所謂フォトマスク用合成石英マスク基板等に用いられる合成石英ガラス基板において、紫外線透過率及び透過性の均一性の向上、エキシマレーザ照射時の透過率の安定性と均一性等、光学的により高均質を有するエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、合成石英ガラスインゴットを温度1700〜1900℃の範囲で所望の形状に熱間成型し、得られた合成石英ガラスブロックを温度1000〜1300℃の範囲でアニールし、これを所望の厚みでスライスし、得られた基板を研摩して合成石英ガラス基板を製造する場合、スライスした合成石英ガラス基板を温度700〜1300℃の範囲で一定時間熱処理した後、そのスライスした合成石英ガラス基板に紫外線を一定時間照射することにより、合成石英ガラス基板を得ることができると共に、この合成石英ガラス基板が、エキシマレーザ用、特にArFエキシマレーザ用として用いられて、良好な透過率を有し、しかも劣化の少ないフォトマスク用合成石英ガラス基板となることを知見し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法を提供する。
[請求項
(I)合成石英ガラスインゴットを温度1700〜1900℃の範囲で所望の形状に熱間成型し、
(II)熱間成型した合成石英ガラスブロックを温度1000〜1300℃の範囲でアニールし、
(III)アニールした合成石英ガラスブロックを所望の厚みでスライスし、
(IV)スライスした合成石英ガラス基板を研摩して合成石英ガラス基板を製造する方法において、スライスした合成石英ガラス基板を温度700〜1300℃の範囲で一定時間熱処理した後、そのスライスした合成石英ガラス基板に紫外線を一定時間照射することを特徴とするエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
[請求項
スライスした合成石英ガラス基板の厚みが、40mm以下であることを特徴とする請求項記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
[請求項
スライスした合成石英ガラス基板の熱処理時間が、5〜24時間の範囲であることを特徴とする請求項又は記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
[請求項
スライスした合成石英ガラス基板への紫外線照射時間が、12〜60時間の範囲であることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
請求項5
合成石英ガラスインゴットを、シリカ原料化合物を酸水素火炎によって気相加水分解又は酸化分解してシリカ微粒子をターゲット上に堆積させると共に、これを溶融ガラス化することにより製造した請求項1乃至4のいずれか1項記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
請求項6
アニール後の合成石英ガラスブロックの水素分子濃度が5×10 17 〜1×10 19 分子数/cm 3 である請求項1乃至5のいずれか1項記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
請求項7
エキシマレーザ用合成石英ガラス基板の水素分子濃度が5×10 15 〜5×10 17 分子数/cm 3 である請求項6記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
本発明によれば、エキシマレーザ、特にはArFエキシマレーザ用、更にはArF液浸技術等にも使用されるフォトマスク用合成石英マスク基板材用途、所謂レチクル材用に使用され、良好な透過率及び均一な透過率分布を有し、しかも劣化の少ないエキシマレーザ用合成石英ガラス基板及びその製造方法を提供できる。
本発明のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板は、
(I)合成石英ガラスブロック中の水素分子濃度が5×1017〜1×1019分子数/cm3のブロックから得られ、
(II)このブロックから製造される合成石英ガラス基板中での水素分子濃度が、5×1015〜5×1017分子数/cm3
(III)合成石英ガラス基板面内での波長193.4nmにおける内部透過率のバラツキが0.2%以下、
(IV)合成石英ガラス基板の波長193.4nmにおける透過率が内部透過率で99.6%以上である。
更に詳述すると、本発明のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板は、水素分子濃度が5×1015〜5×1017分子数/cm3、好ましくは1×1016〜1×1017分子数/cm3である。合成石英ガラス基板の水素分子濃度が5×1015分子数/cm3未満の場合は、上記したArFエキシマレーザを照射した際に照射初期吸収の発生は抑制できるが、長期照射時に吸収が増大してしまう。一方、5×1017分子数/cm3を超える場合は、逆に本発明の狙いであるレーザ初期吸収の抑制が果たせずに初期吸収が増大してしまう。
更に、エキシマレーザ用合成石英ガラス基板の波長193.4nmにおける内部透過率の基板面内でのバラツキが0.2%以下、好ましくは0.1%以下である。これは透過率分布の大きな基板を、例えば高集積化を狙った光ステッパー装置のレチクルとして使用した際、ウエハー上への露光にムラ等の不具合が生じてしまうため、基板面は極力均一な透過率分布にすることが好ましい。
同様にエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の波長193.4nmにおける内部透過率が99.6%以上である。これは内部透過率が低いと、例えばレチクル材として使用した際にArFエキシマレーザ光が合成石英ガラス基板を通過した時に光エネルギーが吸収されて熱エネルギーに変化し、これにより合成石英ガラスの密度変化をきたし、更に屈折率変化をも生じるおそれがある。例えば光源がArFエキシマレーザ光とする露光装置のレチクル材に上記内部透過率が99%未満の合成石英ガラスインゴットを使用した場合に、レチクル材の光の屈折率変化で像面がゆがむ等の不具合を引き起こしてしまう場合がある。
本発明のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板は、更に、ArFエキシマレーザをエネルギー密度10mJ/cm2・pulse、照射数2×106pulseで合成石英ガラス基板面内へ照射した場合における透過率変化量のバラツキが、0.5%以下であることが好ましい。この透過率変化のバラツキは、エキシマレーザ用合成石英ガラス基板にArFエキシマレーザをエネルギー密度10mJ/cm2・pulse、照射数2×106pulseで照射した場合、波長215nmにおける吸光度変化から波長193.4nmにおける透過率変化量を算出して求めたものである。これは、上記の合成石英ガラス基板中の水素分子濃度を調節したことによりエキシマレーザ照射時の安定化が図られ、透過率変化を大幅に抑制することが可能になる。
また、合成石英ガラス基板面内中の複屈折の分布が中心部よりも外周部の方が高く、ガラス基板面内中の複屈折の最大値が2nm/cm以下、特に1nm/cm以下であることが好ましい。
合成石英ガラス基板中の複屈折は、熱間成型で合成石英ガラスブロック中に残留した熱歪をアニールにより除歪する際に、冷却過程で発生する中心部と外周部との冷却速度差に起因している。中心部と外周部とでは、外周部の方が冷却速度が速いために複屈折が中心部よりも高い分布を示す。
更に、本発明の合成石英ガラス基板は、OH含有量が300〜1200ppm、特に400〜800ppmであることが好ましい。OH含有量が、直接法の場合、300ppmより低くなるとシリカの成長に支障をきたし、1200ppmを超えるとシリカの成長速度が下がるために生産性が大きく低下してしまう場合がある。
次に、本発明のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法について詳述する。
まず、原料の合成石英ガラスインゴットの製造方法から説明すると、シリカ原料化合物を酸水素火炎によって気相加水分解又は酸化分解してシリカ微粒子をターゲット上に堆積させると共に、これを溶融ガラス化して合成石英ガラスインゴットを製造する方法(いわゆる直接法)である。
この場合、原料のシリカ原料化合物としてはケイ素化合物が用いられ、特に下記一般式(1)、(2)又は(3)で示されるシラン化合物又はシロキサン化合物が好適に用いられる。
1 nSiR2 4-n (1)
(式中、R1は水素原子又は脂肪族一価炭化水素基、R2は加水分解性基を示し、nは0〜4の整数を示す。)
Figure 0004831328

(式中、R3は水素原子又は脂肪族一価炭化水素基を示し、mは1以上の整数、特に1又は2である。また、pは3〜5の整数である。)
ここで、R1,R3の脂肪族一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等の炭素数2〜4のアルケニル基等が挙げられる。また、R2の加水分解性基としては、塩素等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。
具体的に上記一般式(1)で示されるシラン化合物としては、SiCl4、CH3SiCl3、(CH32SiCl2、Si(OCH34、Si(OCH2CH34、CH3Si(OCH33等が挙げられ、一般式(2)、(3)で示されるシロキサン化合物としては、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
そして、酸水素火炎を形成する石英製バーナーに原料のシラン又はシロキサン化合物、水素、一酸化炭素、メタン、プロパン等の可燃性ガス、酸素等の支燃性ガスの各々を供給する。
なお、シラン化合物、水素等の可燃性ガス、酸素等の支燃性ガスを供給するバーナーは、通常と同様に、中心部が多重管、特に三重管又は五重管バーナーを用いることができる。
また、合成石英ガラスインゴットを製造する装置は、竪型又は横型でもいずれも使用することができる。
得られた合成石英ガラスインゴットから、合成石英ガラス基板を製造する場合は、
(I)温度1700〜1900℃の範囲で所望の形状に熱間成型し、
(II)熱間成型した合成石英ブロックを温度1000〜1300℃の範囲でアニールし、
(III)アニールした合成石英ガラスブロックを所望の厚みでスライスし、
(IV)スライスした合成石英ガラス基板を研摩する
という各工程を経て合成石英ガラス基板を製造する方法において、
合成石英ガラスブロックとして水素分子濃度が5×1017〜1×1019分子数/cm3のものを使用し、
(A)スライスした合成石英ガラス基板を温度700〜1300℃の範囲で一定時間熱処理し、かつ
(B)(A)の処理後の合成石英ガラス基板に紫外線を一定時間照射することによって本発明の合成石英ガラス基板を得ることができる。
更に詳述すると、先述したように製造した合成石英ガラスインゴットの表面に付着した微細なシリカ粉(スート)を円筒研削機等で除去した後、表面に付着した汚れ等をフッ酸中でエッチングし、純水でよく洗い流し、クリーンブース等で乾燥させる。次に所望の形状にするための熱間成型を実施する。次いで、真空溶解炉で、高純度カーボン材等の型材に合成石英ガラスインゴットを仕込み、炉内雰囲気をアルゴン等の不活性ガス下で大気圧よりも若干の減圧で温度1700〜1900℃の範囲において30〜120分間保持して、円柱状のインゴットを合成石英ガラスブロックにする。
この熱間成型で生じた熱応力歪を除歪するため、所謂アニール処理を大気圧炉内で大気中又は窒素等の不活性ガス雰囲気下で温度1000〜1300℃の範囲内において少なくとも5時間以上保持した後、数時間以上かけて歪点温度付近までゆっくりと冷却する。これにより合成石英ガラスブロック中の複屈折を20nm/cm以下に抑えることができる。この複屈折は、最高温度と歪点付近までの冷却速度を調整することによって、例えば2nm/cm以下まで抑えることが可能である。
アニール後の合成石英ガラスブロックの水素分子濃度は、5×1017〜1×1019分子数/cm3、特に1×1018〜1×1019分子数/cm3である。5×1017分子数/cm3より低いと、スライスした合成石英ガラス基板の水素分子濃度を調整する為の熱処理で、水素分子濃度を設定範囲内にすることができなくなり、1×1019分子数/cm3より高いと、合成石英ガラスインゴットの成長が困難になる。
なお、水素分子濃度の調整は、合成石英ガラスインゴットを製造する際のシリカ原料化合物、水素等の可燃性ガス、酸素等の支燃性ガスの各々について、供給バランスを調整することにより行われる。
アニール後の合成石英ガラスブロックは、各面を平面研削機によって研削すると同時に各面を平行に仕上げる。これを次にスライス加工、各辺の面取り加工まで実施する。
上記合成石英ガラスブロックをスライスする場合、スライス基板の厚みは40mm以下、特に10mm以下であることが好ましい。即ち、このスライスした合成石英ガラス基板の厚みが40mmを超えるとスライス基板中の水素分子濃度を調整する際に時間を要してしまう場合がある。例えば、ICのフォトマスク用合成石英マスク基板として現在主流のサイズでは、6インチ角で厚み6.35mmが代表的である。このサイズの合成石英ガラス基板を得るための元の合成石英ガラスブロックは、通常厚み100mm以上ある。従って、熱間成型した合成石英ガラスブロックの状態で水素分子濃度を調整した場合、1000℃以上の温度で0.5ヶ月以上保持してもまだ本発明の水素分子濃度に設定するのは困難であるため、生産性の点で非常に不利である。これは、水素分子の拡散移動は合成石英ガラスブロックの大きさに左右されるためである。
上記スライスした合成石英基板の熱処理(A)は、通常の大気圧炉中で大気又は窒素等の不活性ガス雰囲気下、高純度石英管内にスライス基板を重ねて置いて実施すればよい。
スライスした合成石英基板の熱処理では低温で短時間の処理が可能である。この時の熱処理温度は、700〜1300℃の範囲、好ましくは800〜900℃の範囲とするのがよい。700℃未満の場合は熱処理時間が長くなり、1300℃を超える場合は熱処理炉内からの不純物汚染及び拡散速度が速まるために残存水素分子の調整が難しくなる場合がある。
具体的には厚みが40mm以下のスライスした合成石英基板を、上記アニール用の大気圧炉で純化処理された石英円筒管内に重ねて充填し、石英円筒管の上下に合成石英製の蓋を付けて温度700〜1300℃の範囲内で5〜24時間、好ましくは5〜12時間保持することにより、複屈折の最大値が2nm/cm以下の合成石英ガラス基板を得ることができる。700℃未満の場合は、スライスした合成石英基板中の水素分子濃度を外部へ拡散移動させるのに熱処理時間が長くなり、1300℃を超える場合は熱処理炉内からの不純物汚染及び拡散速度が速まるために残存水素分子の調整が難しくなることなどの不具合がある。
特に複屈折の最大値が1nm/cm以下の合成石英ガラス基板を得ようとする場合には、厚み40mm以下のスライスした合成石英基板を上記アニール用の大気圧炉で純化処理された石英円筒管内に重ねて充填し、石英円筒管の上下に合成石英製の蓋を付けて温度1100〜1300℃の範囲で5〜24時間、好ましくは5〜12時間保持し、500〜600℃まで1〜35℃/hrの冷却速度で冷却する。
次いで、上記熱処理後のスライスした合成石英ガラス基板への紫外線照射(B)は、上述した通り、特許第2762188号公報などに記載された公知の方法を用いればよい。これは主波長253.7nm及び184.9nmの低圧水銀ランプ、波長172nmのXeエキシマランプ又は波長222nmのKrClエキシマランプが挙げられる。この時の紫外線照度は少なくとも1μW/cm2を必要とする。照射時間は紫外線ランプの寿命が一般的に短いところからランプ使用が多くなり、ランニングコストが高くなることを考慮して12〜60時間程度でよい。12時間よりも短いと透過率向上効果が薄れるため、12時間以上の照射が望ましい。
これは熱間成型、アニール後の石英ブロックの状態にUV照射を実施してもよく、その後の工程は上記の工程でスライス基板へのUV照射を除いて進めれば問題ない。
UV照射後のスライス基板をラップ加工、プレ研摩加工、ファイナル研摩加工と従来の研摩加工工程を経てエキシマレーザ用合成石英ガラス基板を製造することができる。
なお、必要に応じて所望の厚みに調整するため、合成石英ガラス基板を再度スライスしたり、平板研削を行うこともできる。
このようにして得られたエキシマレーザ用合成石英ガラス基板は、例えばステッパー装置等でIC基板を製造する際のフォトマスク用合成石英マスク基板材、所謂レチクル材として使用される。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、下記例で、内部透過率、複屈折、水素分子濃度の測定方法は以下の通りである。
内部透過率:
紫外分光光度法(具体的には、VARIAN社製透過率測定装置(Cary400))により測定した。
複屈折:
複屈折測定装置(具体的には、UNIOPT社製複屈折測定装置(ABR−10A))を用いて測定した。
水素分子濃度:
レーザーラマン分光光度法(具体的には、Zhurnal Priklandnoi Spektroskopii Vol.46 No.6 pp.987〜991,1987に示される方法)により測定した。使用機器は日本分光社製NRS−2100を用い、ホトンカウント法にて測定を行った。アルゴンレーザーラマン分光光度法による水素分子濃度の測定は検出器の感度曲線によっては値が変わってしまうことがあるので、標準試料を用いて値を校正した。
[実施例、比較例]
原料としてメチルトリクロロシラン3000g/hrを酸素12Nm3/hrと水素30Nm3/hrから火炎を形成している石英製バーナーに供給し、酸化又は燃焼分解させてシリカ微粒子を生成させ、これを回転している石英製ターゲット上に堆積すると同時に溶融ガラス化して合成石英ガラスインゴットを得た。
この場合、図1に示したように、回転する支台1上に石英ガラス製ターゲット2を取り付ける一方、原料蒸発器3内に入れたメチルトリクロロシラン4にアルゴンガス5を導入し、このアルゴンガス5にメチルトリクロロシラン4の蒸気を随伴させ、かつこれに酸素ガス6を混合した混合ガスを石英製バーナー7の中心ノズルに供給すると共に、このバーナー7には、更に上記混合ガスを中心にして順次内側から外側に酸素ガス8、水素ガス9、水素ガス10、酸素ガス11を供給し、バーナー7から上記原料メチルトリクロロシラン、酸水素火炎12をターゲット2に向けて噴出して、シリカ微粒子13をターゲット2に堆積させ、同時に溶融透明ガラス化させて合成石英ガラスインゴット14を得た。
合成石英ガラスインゴットは原料のメチルトリクロロシランを毎時一定流量になるように制御し、かつシリカの溶融成長面の形状を一定に維持させるようにバーナーセッティング調整やバーナー各ノズルより導入される酸水素ガス流量のバランス調整を実施した。これにより140mmφ×600mmの合成石英ガラスインゴットを得ることができた。
次に、この合成石英ガラスインゴットの表面に付着した未溶融のシリカ(スート)を円筒研削機にて表面を研削した後、表面洗浄のため、50質量%フッ酸溶液中に5時間浸漬させた後、純水槽内で洗い流し、クリーンブース内で乾燥した。
この表面処理された合成石英ガラスインゴットを真空溶解炉にてカーボン製型材の中に据えて、温度1780℃、アルゴンガス雰囲気下で40分間加熱して合成石英ガラスブロックとし、更にこれをアニール処理として、温度1100℃で2時間保持した後、15℃/hrで950℃まで冷却し、160mm×160mm×350mmLの合成石英ガラスブロックとした。なお、この合成石英ガラスブロックの水素分子濃度は、4×1018分子数/cm3であった。
合成石英ガラスブロックの表面調整後、10mm又は40mmの厚みにスライスし、面取り処理を実施した後、スライスした合成石英ガラス基板30枚を上記アニール炉と同一タイプ炉で内径240mmφの純化処理された石英管内に重ねて置いて、上下に合成石英製の板で蓋をし、表1に示す条件でスライスした合成石英ガラス基板中の水素分子濃度を調整した。
更に、これらのスライス基板に低圧水銀ランプを48時間照射した後、通常のラップ加工、研摩加工を通して、6インチ角の厚み6.35mmの通常の代表サイズである合成石英ガラス基板を得た。
この合成石英ガラス基板から10mm×6.35mm×90mmのサンプルを切り出して、4面(10mm×90mmの2面、6.35mm×90mmの2面)を研摩して、水素分子濃度及びArFエキシマレーザ照射により波長215nmでの吸光度を既知の方法により測定した。また、この基板から30mm角のサンプルを切り出した後、30mm角の面に対する波長193.4nmでの透過率を実測した。合わせて基板面内の透過率分布も実測した。脱水素処理条件、UV照射条件及びArFエキシマレーザ特性の結果を表1に示す。
Figure 0004831328
合成石英ガラスの製造装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 支台
2 石英ガラス製ターゲット
3 原料蒸発器
4 メチルトリクロロシラン
5 アルゴンガス
6 酸素ガス
7 バーナー
8 酸素ガス
9 水素ガス
10 水素ガス
11 酸素ガス
12 酸水素火炎
13 シリカ微粒子
14 合成石英ガラスインゴット

Claims (7)

  1. (I)合成石英ガラスインゴットを温度1700〜1900℃の範囲で所望の形状に熱間成型し、
    (II)熱間成型した合成石英ガラスブロックを温度1000〜1300℃の範囲でアニールし、
    (III)アニールした合成石英ガラスブロックを所望の厚みでスライスし、
    (IV)スライスした合成石英ガラス基板を研摩して合成石英ガラス基板を製造する方法において、スライスした合成石英ガラス基板を温度700〜1300℃の範囲で一定時間熱処理した後、そのスライスした合成石英ガラス基板に紫外線を一定時間照射することを特徴とするエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
  2. スライスした合成石英ガラス基板の厚みが、40mm以下であることを特徴とする請求項記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
  3. スライスした合成石英ガラス基板の熱処理時間が、5〜24時間の範囲であることを特徴とする請求項又は記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
  4. スライスした合成石英ガラス基板への紫外線照射時間が、12〜60時間の範囲であることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
  5. 合成石英ガラスインゴットを、シリカ原料化合物を酸水素火炎によって気相加水分解又は酸化分解してシリカ微粒子をターゲット上に堆積させると共に、これを溶融ガラス化することにより製造した請求項1乃至4のいずれか1項記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
  6. アニール後の合成石英ガラスブロックの水素分子濃度が5×10 17 〜1×10 19 分子数/cm 3 である請求項1乃至5のいずれか1項記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
  7. エキシマレーザ用合成石英ガラス基板の水素分子濃度が5×10 15 〜5×10 17 分子数/cm 3 である請求項6記載のエキシマレーザ用合成石英ガラス基板の製造方法。
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