以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
図1は、この発明に従う車両の制御装置の搭載例として示されるハイブリッド車両の構成を示す概略ブロック図である。
図1を参照して、ハイブリッド車両100は、エンジンENGと、動力分割機構50と、電動機の代表例として示されるモータジェネレータMG1,MG2と、減速機54と、駆動軸52と、車輪(駆動輪)62とを備える。ハイブリッド車両は、さらに、モータジェネレータMG1,MG2を駆動制御するための、バッテリB、PCU(Power Control Unit)20および制御装置30を備える。
エンジンENGは、ガソリン等の燃料の燃焼エネルギーを源として駆動力を発生する。エンジンENGには、燃料を燃焼することにより発生する排気ガスを排出する排気管70が連結されている。この排気管70には、排気ガスを浄化する触媒72が設けられている。この触媒72は、炭化水素や一酸化炭素を酸化して、二酸化炭素や水分にするとともに、窒素酸化物を還元する、いわゆる三元触媒である。この触媒72が浄化作用を発揮するためには、十分に暖められている必要がある。そのため、長時間停止後等のエンジンENGの始動時には、触媒72の温度が低いため、温度を上昇させる暖機が行なう必要がある。
本実施の形態においては、後述するように、触媒72の暖機が必要であるか否かを触媒温度Tcに基づいて判断している。そのため、排気管70上であって、触媒72付近には触媒温度Tcを検出するための温度センサ74が設けられている。
動力分割機構50は、エンジンENGの発生する駆動力を、駆動軸52への経路とモータジェネレータMG1への経路とに分割可能に構成される。動力分割機構50には、たとえば遊星歯車機構が用いられる。
モータジェネレータMG1,MG2の各々は、発電機としても電動機としても機能し得るが、モータジェネレータMG1は概ね発電機として機能することが多いため「発電機」と呼ばれることがあり、モータジェネレータMG2は主として電動機として動作するため「電動機」と呼ばれることがある。
モータジェネレータMG1は、動力分割機構50を介して伝達されたエンジンENGからの駆動力によって回転されて発電する。モータジェネレータMG1による発電電力は、インバータ22に供給され、バッテリBの充電電力として、あるいはモータジェネレータMG2の駆動電力として用いられる。
モータジェネレータMG2は、インバータ14から供給された交流電力によって回転駆動される。モータジェネレータMG2によって生じた駆動力は、減速機54を介して駆動軸60へ伝達される。なお、駆動軸60にて駆動される車輪62以外の車輪(図示せず)については、単なる従動輪としてもよいが、さらに図示しない別のモータジェネレータにて駆動されるように構成して、いわゆる電動の四輪駆動システムを構成するようにしてもよい。
また、回生制動動作時にモータジェネレータMG2が車輪62の減速に伴なって回転される場合には、モータジェネレータMG2に生じた起電力(交流電力)がインバータ14へ供給される。この場合には、インバータ14が供給された交流電力を直流電力に変換してバッテリBへ供給することにより、バッテリBが充電される。
バッテリBとしては、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池を適用可能である。なお、ハイブリッド車両では、バッテリBに代えて、電気二重層キャパシタなどを適用可能であるが、以下、本実施の形態では、二次電池で構成されたバッテリBを「蓄電機構」とする構成について説明する。
電圧センサ10は、バッテリBの充放電電圧値Vbを検出し、その検出結果を制御装置30へ出力する。電流センサ26は、電源ライン6に介装され、バッテリBの充放電時に用いられる充放電電流値Ibを検出し、その検出結果を制御装置30へ出力する。温度センサ11は、バッテリBを構成する電池セルなどに近接して配置され、バッテリBの内部温度であるバッテリ温度Tbを検出し、その検出結果を制御装置30へ出力する。
PCU20は、昇圧コンバータ12と、平滑コンデンサC2と、インバータ14,22とを含む。
非絶縁型の昇圧チョッパを構成する昇圧コンバータ12は、リアクトルL1と、スイッチング制御される電力用半導体素子(以下、「スイッチング素子」と称する)Q1,Q2とを含む。リアクトルL1は、スイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードと電源ライン7との間に接続される。また、平滑コンデンサC2は、電源ライン7および接地ライン8の間に接続される。
スイッチング素子Q1およびQ2は、電源ライン7および接地ライン8の間に直列に接続される。スイッチング素子Q1,Q2のオンオフは、制御装置30からのスイッチング制御信号PWMCによって制御される。
この発明の実施の形態において、スイッチング素子としては、代表的にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が適用される。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置されている。
インバータ14は、電源ライン7と接地ライン8との間に並列に設けられる、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とから成る。各相アームは、電源ライン7および接地ライン8の間に直列接続されたスイッチング素子から構成される。たとえば、U相アーム15は、スイッチング素子Q3,Q4から成り、V相アーム16は、スイッチング素子Q5,Q6から成り、W相アーム17は、スイッチング素子Q7,Q8から成る。また、各スイッチング素子Q3〜Q8には、逆並列ダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q3〜Q6のオンオフは、制御装置30からのスイッチング制御信号PWMI2によって制御される。
モータジェネレータMG2は、固定子に設けられたU相コイル、V相コイルおよびW相コイルと、図示しない回転子とを含む。U相コイル、V相コイルおよびW相コイルの一端は、中性点で互いに接続され、その他端は、インバータ14のU相アーム15、V相アーム16およびW相アーム17と接続される。インバータ14は、制御装置30からのスイッチング制御信号PWMI2に応答したスイッチング素子Q3〜Q8のオンオフ制御(スイッチング制御)により、昇圧コンバータ12およびモータジェネレータMG2の間で双方向の電力変換を行なう。
具体的には、インバータ14は、制御装置30によるスイッチング制御に従って、電源ライン7から受ける直流電圧を3相交流電圧に変換し、その変換した3相交流電圧をモータジェネレータMG2へ出力することができる。これにより、モータジェネレータMG2は、指定されたトルクを発生するように駆動される。また、インバータ14は、車両の回生制動時、車輪62からの回転力を受けてモータジェネレータMG2が発電した3相交流電圧を制御装置30によるスイッチング制御に従って直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を電源ライン7へ出力することができる。
なお、ここで言う回生制動とは、ハイブリッド車両を運転する運転者によるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴なう制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
インバータ22は、インバータ14と同様に構成されて、スイッチング制御信号PWMI1によってオンオフ制御されるスイッチング素子Q3〜Q8および、逆並列ダイオードD3〜D8を含んで構成される。
モータジェネレータMG1は、モータジェネレータMG2と同様に構成されて、固定子に設けられたU相コイル、V相コイルおよびW相コイルと、図示しない回転子とを含む。U相コイル、V相コイルおよびW相コイルの一端は、中性点で互いに接続され、その他端は、インバータ22のU相アーム15、V相アーム16およびW相アーム17と接続される。インバータ22は、制御装置30からのスイッチング制御信号PWMI1に応答したスイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング制御により、昇圧コンバータ12およびモータジェネレータMG1の間で双方向の電力変換を行なう。
具体的には、インバータ22は、制御装置30によるスイッチング制御に従って、電源ライン7から受ける直流電圧を3相交流電圧に変換し、その変換した3相交流電圧をモータジェネレータMG1へ出力することができる。これにより、モータジェネレータMG1は、指定されたトルクを発生するように駆動される。また、インバータ22は、エンジンENGの出力を受けてモータジェネレータMG1が発電した3相交流電圧を制御装置30によるスイッチング制御に従って直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を電源ライン7へ出力することもできる。
モータジェネレータMG1,MG2には電流センサ24,28が設けられる。三相電流iu,iv,iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように電流センサ24,28は2相分のモータ電流(iv,iw)を検出するように配置すれば足りる。電流センサ24,28によって検出されたモータジェネレータMG1のモータ電流MCRT1およびモータジェネレータMG2のモータ電流MCRT2は、制御装置30へ入力される。さらに、制御装置30には、図示しないアクセル開度センサから運転者により操作されたアクセルペダルの開度を表わす信号が入力されるとともに、図示しない車輪速センサから車速を表わす信号が入力される。
電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)で構成される制御装置30は、マイクロコンピュータ、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含んで構成され、所定のプログラム処理に従って、エンジンENGおよびモータジェネレータMG1,MG2の回転数やトルクの配分等の制御量を決定し、その決定した制御量に基づいてエンジンENGおよびモータジェネレータMG1,MG2を制御する。このとき、制御装置30は、モータジェネレータMG1,MG2に対しては、決定した制御量に従ってモータジェネレータMG1,MG2が動作するように、昇圧コンバータ12およびインバータ14,22のスイッチング制御のためのスイッチング制御信号PWMC(昇圧コンバータ12)、PWMI1(インバータ22)、およびPWMI2(インバータ14)を生成する。
さらに、制御装置30には、温度センサ74によって検出された触媒72の温度(触媒温度)Tcが入力される。制御装置30は、イグニッションスイッチ(図示せず)がオンされたことに応じて車両システムが起動すると、温度センサ74から入力された触媒温度Tcに基づいて触媒の暖機が必要であるか否かを判断する。具体的には、触媒温度Tcが上述した浄化作用を発揮するための所定の閾値温度を下回るときには、制御装置30は、触媒74の暖機が必要であると判断する。
なお、触媒74の暖機が必要であるか否かの判断は、イグニッションスイッチがオンされてからの経過時間、または車両システムが起動してからの経過時間を計測することによって行なうようにしてもよい。
そして、触媒74の暖機が必要であると判断された場合には、制御装置30は、バッテリBから電力が供給されたモータジェネレータMG2からの駆動力で車両を走行させる暖機走行を実行する。この暖機走行においては、エンジンENGは、暖機中の触媒が浄化可能な範囲内の排気ガスを排出するように制御される。このときエンジンENGで発生した駆動力は車両の走行に用いられず、車両は、モータジェネレータMG2で発生した駆動力により走行する。
(制御装置の制御構造)
以下、制御装置30における車両の暖機走行を実現するための制御構造について説明する。
図2は、制御装置30の制御構造を示すブロック図である。
図2を参照して、制御装置30は、エンジン制御部32と、バッテリ制御部34と、許容電力設定部36と、トルク指令値演算部38と、インバータ入力電圧指令演算部40と、コンバータ用デューティー比演算部42と、コンバータ用PWM信号変換部44と、モータ制御用相電圧演算部46と、インバータ用PWM信号変換部48とを含む。
エンジン制御部32は、エンジンENGの動作状態を制御する。エンジン制御部32には、温度センサ74によって検出された触媒温度Tcが入力される。エンジン制御部32は、触媒温度Tcが浄化作用を発揮するための所定の閾値温度を下回るときには、触媒72の暖機が必要であると判断し、触媒暖機の要求を指示する信号(触媒暖機要求)を生成して許容電力設定部36へ出力する。
バッテリ制御部34は、バッテリBの充放電状態を管理制御する。具体的には、バッテリ制御部34は、電圧センサ10から受けた充放電電圧値Vbと、電流センサ26から受けた充放電電流値Ibと、温度センサ11から受けたバッテリ温度Tbとに基づいて、バッテリBの充電量(SOC:State Of Charge)を算出する。算出されたバッテリBのSOCは許容電力設定部36に入力される。
バッテリBのSOCを算出する構成については、様々な周知の技術を用いることができるが、一例として、バッテリ制御部34は、開回路電圧値から算出される暫定SOCと、充放電電流値の積算値から算出される補正SOCとを加算することでSOCを導出する。具体的には、バッテリ制御部34は、各時点における充放電電流値Ibおよび充放電電圧値VbからバッテリBの開回路電圧値を算出し、当該開回路電圧値を予め実験的に測定されたバッテリBの基準状態におけるSOCと開回路電圧値との関係を示す基準充放電特性に適用することで、バッテリBの暫定SOCを算出する。さらに、バッテリ制御部34は、充放電電流値Ibを積算して補正SOCを算出し、この補正SOCに暫定SOCを加算することでSOCを導出する。
許容電力設定部36は、算出されたバッテリBのSOCに基づいて、後述する方法によって許容電力(充電許容電力Win(n)および放電許容電力Wout(n))を設定する。許容電力Win(n)および放電許容電力Wout(n)は、その化学反応的な限界で規定される、制御タイミングt(n)における充電電力および放電電力の短時間の制限値である。
そのため、許容電力設定部36は、予め実験的に取得されたバッテリBのSOCおよびバッテリ温度Tbをパラメータとして規定された許容電力マップを格納しておき、算出されるSOCおよびバッテリ温度Tbに基づいて、制御タイミングt(n)における許容電力を設定する。そして、許容電力設定部36は、その設定した制御タイミングt(n)における充電許容電力Win(n)および放電許容電力Wout(n)をトルク指令値演算部38へ出力する。
トルク指令値演算部38には、バッテリBの充電許容電力Win(n)および放電許容電力Wout(n)の他に、アクセル開度センサ(図示せず)からのアクセル開度信号および車輪速センサ(図示せず)からの車速信号が入力される。また、トルク指令値演算部38には、エンジン制御部32から、エンジン回転数センサ(図示せず)にて検出されたエンジン回転数を表わすエンジン回転数信号が入力される。
トルク指令値演算部38は、これらの入力信号およびメモリに保存されたプログラム等に基づいて演算処理を行なうことによって、エンジンENGおよびモータジェネレータMG1,MG2の回転数やトルクの配分等の制御量を決定する。そして、トルク指令値演算部38は、その決定したモータジェネレータMG1,MG2の回転数MRN1,MR2およびトルクの配分を指示するトルク指令値TR1,TR2を、インバータ入力電圧指令演算部40へ出力する。また、当該トルク指令値TR1,TR2をモータ制御用相電圧演算部46へ出力する。
インバータ入力電圧指令演算部40は、トルク指令値演算部38からのトルク指令値TR1,TR2およびモータ回転数MRN1,MRN2に基づいてインバータ入力電圧Vmの最適値(目標値)、すなわち電圧指令Vdc_comを演算し、その演算した電圧指令Vdc_comをコンバータ用デューティー比演算部42へ出力する。
コンバータ用デューティー比演算部42は、電圧センサ10から充放電電流値Vbを受け、電圧センサ13から電圧Vm(=インバータ入力電圧)を受け、インバータ入力電圧指令演算部40から電圧指令Vdc_comを受けると、充放電電圧値Vbに基づいて、インバータ入力電圧Vmを電圧指令Vdc_comに設定するためのデューティー比を演算し、その演算したデューティー比をコンバータ用PWM信号変換部44へ出力する。
コンバータ用PWM信号変換部44は、コンバータ用デューティー比演算部42からのデューティー比に基づいて昇圧コンバータ12のスイッチング素子Q1,Q2をオン/オフするための信号PWMCを生成し、その生成した信号PWMCを昇圧コンバータ12へ出力する。
モータ制御用相電圧演算部46は、インバータ入力電圧Vmを電圧センサ13から受け、モータジェネレータMG1,MG2の各相に流れるモータ電流MCRT1,MCRT2を電流センサ24,28からそれぞれ受け、トルク指令値TR1,TR2をトルク指令値演算部38から受ける。そして、モータ制御用相電圧演算部46は、これらの入力信号に基づいて、モータジェネレータMG1,MG2の各相のコイルに印加する電圧の操作量を出力する。
インバータ用PWM信号変換部48は、モータ制御用相電圧演算部46からの電圧の操作量に基づいて、実際にインバータ14の各スイッチング素子Q3〜Q8をオン/オフする信号PWMI1およびインバータ22の各スイッチング素子Q3〜Q8をオン/オフする信号PWMI2を生成し、その生成した信号PWMI1,PWMI2を対応するインバータの各スイッチング素子Q3〜Q8へ出力する。
これにより、各スイッチング素子Q3〜Q8は、スイッチング制御され、対応するモータジェネレータが指令されたトルクを出力するように当該モータジェネレータの各相に流す電流を制御する。このようにして、モータ駆動電流MCRT1,MCRT2が制御され、トルク指令値TR1,TR2に応じたモータトルクが出力される。
以上のような制御構造を採用することによって、通常走行時においては、制御装置30は、車両の走行状態およびバッテリBの充電状態等に基づいて、エンジンENGおよびモータジェネレータMG2の少なくともいずれか一方から駆動力を発生させる。このとき、制御装置30が、運転者のアクセル操作量に関係なく、エンジンENGによる運転とモータジェネレータMG2による運転とを自動的に切替えて、最も効率が良くなるように制御することによって、燃費向上および排気ガスの大幅な抑制を実現している。
その一方で、触媒温度Tcが所定の閾値温度よりも低く、エンジン制御部32から触媒暖機要求が発せられた場合には、制御装置30は、車両を暖機走行させる。具体的には、制御装置30は、エンジンENGを発進時に無負荷状態で起動し、エンジンENGが排出する排気ガスにより所望の暖機が実現するまでアイドリング回転数で駆動させるとともに、バッテリBから電力が供給されたモータジェネレータMG2から車両の走行に必要な駆動力を発生させる。
しかしながら、この暖機走行において、バッテリBのSOCが低下したことによってバッテリBの放電許容電力が制限される場合には、モータジェネレータMG2から車両を走行させるのに必要な駆動力を発生させることが困難となるため、触媒の暖機中であっても、車両を走行させるのに必要な出力でエンジンENGを駆動させなければならない。したがって、暖機中の触媒72の浄化能力を上回る量の排気ガスが排出されてしまうという問題が生じる。
図3は、バッテリBの放電許容電力Woutの設定動作を説明するための図である。
図3を参照して、ラインLN1は、通常走行時において設定されるバッテリBの放電許容電力WoutとバッテリBのSOCとの関係を表わす。ラインLN1に示されるように、バッテリBの放電許容電力Woutは、バッテリBのSOCが所定の基準範囲内にあるときには略一定の電力が確保される。
なお、所定の基準範囲は、回生電力を受け入れ可能なように、また、要求に応じて直ちにモータジェネレータに電力を供給可能なように、満充電の状態(100%)と全く充電されていない状態(0%)とのおおよそ中間付近に設定される。一例として基準範囲は、その下限Xminが40%に設定され、その上限Xmaxが80%に設定される。
そして、バッテリBのSOCが該基準範囲の下限Xmin%を下回ると、放電許容電力Woutは、SOCが小さくなるほど低下するように制限される。すなわち、バッテリBのSOCが基準範囲の下限Xmin%を下回ると、バッテリBの放電電力が制限される放電制限制御が開始される。
ここで、長時間停止後などで触媒72の暖機が必要であると判断された場合であって、前回走行終了時のSOCが下限Xmin%に近い所定値Xth%であるケースを考える。
このようなケースでは、モータジェネレータMG2から車両の走行に必要な駆動力を発生させるために、バッテリBの放電電力がモータジェネレータMG2に供給される。このとき、バッテリBのSOCが基準範囲の下限Xmin%を下回ると、放電許容電力Woutは、図3のラインLN1の関係に従ってその電力量が制限される。そのため、放電許容電力Woutが車両の暖機走行に必要な電池出力Pevを満たさないために、その不足分の出力を補うようにエンジンENGを駆動させる必要が生じる。
図3の例では、車両の暖機走行を行なうことによって、バッテリBのSOCは所定値Xth%からX1%にまで減少する。SOCがX1%のときには、放電許容電力Wout(=W1)が車両の暖機走行に必要な電池出力Pevを大きく下回っている。したがって、両者の差分(=Pev−W1)を出力するようにエンジンENGを駆動させるため、上述したような暖機中の触媒72の浄化能力を上回る量の排気ガスが排出されるという問題が発生する。
そこで、本実施の形態に係る車両の制御装置は、このような暖機走行時の排気性状の悪化を防止するために、車両の暖機走行時には、バッテリBの放電制限制御における制限を、車両の通常走行時よりも緩和する構成とする。
詳細には、図3のラインLN2で示されるように、SOCが基準範囲の下限Xmin%を下回る領域において、暖機走行時の放電許容電力Woutは、通常走行時に設定される放電許容電力Woutを上回るように設定される。
このときの放電許容電力Woutは、車両の暖機走行に必要なSOCに基づいて、車両の暖機走行の実行中においては、常に暖機走行に必要な電池出力Pev以上となるように設定される。なお、車両の暖機走行に必要なSOCとは、車両の暖機走行に必要な総エネルギーをバッテリBのSOCに換算したものである。
したがって、バッテリBのSOCがXth%からX1%に減少したときにおいても、放電許容電力Woutは暖機走行に必要な電池出力Pevを満たしている。これにより、車両の暖機走行を行なうのに必要な駆動力をモータジェネレータMG2の発生する駆動力のみで賄うことができる。その結果、エンジンENGから暖機中の触媒72の浄化能力を上回る量の排気ガスが排出されるのを抑制することができる。
以上に述べたようなバッテリBの放電制限制御は、図2の制御装置30における許容電力設定部36によって行なわれる。具体的には、許容電力設定部36は、放電許容電力Woutを設定するための放電許容電力マップを図示しないROMから読出し、その読出した放電許容電力マップを用いて、バッテリBのSOCおよびバッテリ温度Tbに基づいて放電許容電力Woutを設定する。
放電許容電力マップは、バッテリBのSOCおよびバッテリ温度Tbに応じた放電許容電力Woutがマップ化されている。許容電力設定部36は、エンジン制御部32からの触媒暖機を要求する信号(触媒暖機要求)がH(論理ハイ)レベルのときであって、かつ、バッテリBのSOCが所定値Xth%以下のときには、Wout拡大時用の放電許容電力マップを読出し、その読出した放電許容電力マップを用いて放電許容電力Woutを設定する。
一方、触媒暖機要求がL(論理ロー)レベルのとき、あるいは、触媒暖機要求がHレベルのときであってもバッテリBのSOCが所定値Xth%を上回るときには、許容電力設定部36は、通常走行時用の放電許容電力マップを読出し、その読出した放電許容電力マップを用いて放電許容電力Woutを設定する。
図4および図5は、放電許容電力マップの一例を示す図である。図4は、通常走行時の放電許容電力マップを示し、図5は、Wout拡大時用の放電許容電力マップを示す。
図4を参照して、通常走行時用の放電許容電力マップでは、上記図3に示したようなバッテリBのSOCと放電許容電力Woutとの関係が、様々なバッテリ温度Tbに対応して設定される。図中のラインk1はバッテリ温度TbがT1のときの関係を示しており、ラインk2はバッテリ温度TbがT1よりも高いT2のときの関係を示している。バッテリ温度Tbが低くなるほど放電許容電力Woutが小さくなるように設定されている。
一方、図5を参照して、Wout拡大時の放電許容電力マップでは、図4に示した通常走行時用の放電許容電力マップに対して低SOC領域における放電許容電力Woutが拡大されている。図中のラインk3およびk4は、バッテリ温度TbがT1およびT2のときの関係をそれぞれ示しており、図4のラインk1およびk2に対して低SOC領域の放電許容電力Woutがそれぞれ拡大されている。
(放電許容電力のレート制御)
ここで、車両を暖機走行させるときに、バッテリBのSOCに応じて、許容電力設定部36において用いられるマップを通常走行時用のマップからWout拡大時用のマップへの切替えを行なう構成とした場合には、その切替えタイミングにおいては、放電許容電力Woutが急激に増加することになる。そして、この放電許容電力Woutの急激な増加に応じて、バッテリBからの供給電力によりモータジェネレータMG2が発生する駆動力も急激に増加する。
同様に、Wout拡大時用のマップから通常走行時用のマップへの切替えタイミングにおいても、放電許容電力Woutの急激な減少を受けてモータジェネレータMG2が発生する駆動力が急激に減少する。したがって、放電許容電力マップの切替えタイミングごとに駆動力に不連続部分が発生し、この不連続部分が車両に振動を与える。これは、車両のドライバビリティの低下に繋がる。
その一方で、このような車両の振動を回避するために放電許容電力Woutを一定のレートで漸増または漸減させる構成とすると、暖機走行の開始直後において十分な電池出力が得られず、モータジェネレータMG2が車両の走行に必要な駆動力を発生できない可能性がある。したがって、上述した、暖機中の触媒72の浄化能力を上回る量の排気ガスが排出されるという問題を完全に解消することが困難となる。
そこで、本実施の形態では、ドライバビリティの維持と排気性状の向上とを両立させるために、放電許容電力マップが切替わる過渡期においては、放電許容電力Woutを除変させるためのレート(以下、除変レートとも称する)を一時的に上昇させる構成とする。
図6は、図2における許容電力設定部36の制御構造を示すブロック図である。
図6を参照して、許容電力設定部36は、目標放電許容電力決定部360と、Wout除変レート設定部362と、放電許容電力設定部364とを含む。
目標放電許容電力決定部360は、図示しないバッテリ制御部34により算出されたバッテリBのSOCおよび温度センサ11からのバッテリ温度Tbに基づいて、制御タイミングt(n)における放電許容電力Wout(n)の目標値(以下、目標放電許容電力とも称する)Wout*(n)を決定する。
このとき、目標放電許容電力決定部360は、触媒暖機要求がHレベルであって、かつ、バッテリBのSOCが所定値Xth%以下のときには、Wout拡大時用の放電許容電力マップ(図5)を用いて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する。一方、触媒暖機要求がLレベルのとき、あるいは、触媒暖機要求がHレベルのときであってもバッテリBのSOCが所定値Xth%を上回るときには、通常走行時用の放電許容電力マップ(図4)を用いて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する。
さらに、目標放電許容電力決定部360は、放電許容電力マップを通常走行時用のマップからWout拡大時用のマップへ切替えたことに並行して、低SOC領域の放電許容電力Woutが拡大されていることを指示するフラグである、Wout拡大中フラグFWEをオン状態にセットする。なお、このWout拡大中フラグFWEは、放電許容電力マップがWout拡大時用のマップから通常走行時用のマップへ切替えられたときには、オフ状態にリセットされる。
目標放電許容電力決定部360は、目標放電許容電力Wout*(n)とともに、Wout拡大中フラグFWEをWout除変レート設定部362へ出力する。
Wout除変レート設定部362は、目標放電許容電力Wout*(n)およびWout中拡大フラグFWEを受けると、制御タイミングt(n)において指令値として用いられる放電許容電力Wout(n)を算出するための除変レートWRを設定する。これにより、制御タイミングt(n)における放電許容電力Wout(n)は、目標放電許容電力Wout*(n)を最終値として、設定された除変レートWRに従って連続的に変化する。
また、Wout除変レート設定部362は、Wout拡大中フラグFWEを受けると、後述する方法によってエッジ検出フラグFEDをセット/リセットして放電許容電力設定部364へ出力する。
放電許容電力設定部364は、Wout除変レート設定部362により設定された除変レートWRを用いて制御タイミングt(n)における放電許容電力Wout(n)を演算する。そして、放電許容電力設定部364は、その演算した放電許容電力Wout(n)をトルク指令値演算部38(図2)へ出力する。
以下に、図7を用いて、Wout除変レート設定部362が行なう除変レートWRの設定動作について説明する。
図7は、許容電力設定部36が行なう除変レートWRの設定動作を説明するためのタイミングチャートである。
図7を参照して、時刻t1において触媒暖機要求がLレベルからHレベルに立上ると、目標放電許容電力決定部360は、バッテリBのSOCが所定値Xth%以下であるか否かを判定する。SOCが所定値Xth%以下である場合には、時刻t1以降の時刻t2において、目標放電許容電力決定部360は、Wout拡大中フラグFWEをオンにセットする。
このとき、Wout除変レート設定部362は、目標放電許容電力決定部360から入力されるWout拡大中フラグFWEを監視しており、Wout拡大中フラグFWEにオフからオンへの立上りが検出されたことに応じて、時刻t3において、エッジ検出フラグFEDをオン状態にセットする。
なお、エッジ検出フラグFEDは、Wout拡大中フラグFWEがセット/リセットされるタイミングを検出してオン状態にセットされるフラグである。すなわち、エッジ検出フラグFEDによって、放電許容電力マップの切替えタイミングが指示される。
そして、エッジ検出フラグFEDがセットされると、Wout除変レート設定部362は、除変レートWRを、通常走行時に用いられる除変レートWRLから当該除変レートWRLよりも高い除変レートWRHへ変更する。
放電許容電力設定部364は、変更後の除変レートWRHを用いて制御タイミングt(n)における放電許容電力Wout(n)を演算する。これにより、放電許容電力Wout(n)は、時刻t3以降、除変レートWRHに従って増加する。そして、時刻t4において、放電許容電力Wout(n)が目標放電許容電力Wout*(n)以上であることが確認されると、Wout除変レート設定部362は、エッジ検出フラグFEDをオフ状態にリセットする。
エッジ検出フラグFEDがリセットされると、Wout除変レート設定部362は、除変レートWRを、除変レートWRHから通常走行時に用いられる除変レートWRLへ変更する。これにより、時刻t4以降においては、放電許容電力Wout(n)は、除変レートWRLに従って減少する。
このような除変レートWRの変更は、放電許容電力マップをWout拡大時用のマップから通常走行時用のマップへ切替えるタイミングにおいても同様に行なわれる。
詳細には、図7を参照して、時刻t5において触媒暖機要求がHレベルからLレベルに立下った場合には、目標放電許容電力決定部360は、時刻t5以降の時刻t6においてWout拡大中フラグFWEをオフにリセットする。
このとき、Wout除変レート設定部362は、Wout拡大中フラグFWEにオンからオフへの立下りが検出されたことに応じて、時刻t7において、エッジ検出フラグFEDをオン状態にセットする。
そして、エッジ検出フラグFEDがセットされると、Wout除変レート設定部362は、除変レートWRを、通常走行時に用いられる除変レートWRLから当該除変レートWRLよりも高い除変レートWRHへ変更する。放電許容電力設定部364は、変更後の除変レートWRHを用いて制御タイミングt(n)における放電許容電力Wout(n)を演算する。
これにより、放電許容電力Wout(n)は、時刻t7以降、除変レートWRHに従って減少する。そして、時刻t8において、放電許容電力Wout(n)が目標放電許容電力Wout*(n)以下であることが確認されると、Wout除変レート設定部362は、エッジ検出フラグFEDをオフ状態にリセットする。
エッジ検出フラグFEDがリセットされると、Wout除変レート設定部362は、除変レートWRを、除変レートWRHから通常走行時に用いられる除変レートWRLへ変更する。これにより、時刻t8以降においては、放電許容電力Wout(n)は、除変レートWRLに従って減少する。
なお、図7のように、車両を暖機走行から通常走行へ切替えるのに連動して、放電許容電力マップをWout拡大時用のマップから通常走行時用のマップに切替える場合においては、上述したような車両の排気性状への影響度が比較的小さいと考えられるが、通常走行に必要な電力を上回る電力がバッテリBから無駄に持ち出されるのを防止することができる点で有効である。
図8は、許容電力設定部36が行なうバッテリBの放電許容電力Woutの設定動作を説明するためのフローチャートである。
図8を参照して、許容電力設定部36は、バッテリ制御部34からバッテリBのSOCおよびバッテリ温度Tbを取得すると(ステップS01)、エンジン制御部32からの触媒暖機要求があるか否かを判断する(ステップS02)。触媒暖機要求がない場合(ステップS02においてNOの場合)には、許容電力設定部36は、通常走行時用の放電許容電力マップ(図4)をROMから読出す。そして、許容電力設定部36は、その読出した通常走行時用の放電許容電力マップを用いて、バッテリBのSOCおよびバッテリ温度Tbに基づいて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する(ステップS06)。さらに、許容電力設定部36は、Wout拡大中フラグFWEをオフ状態にリセットする(ステップS07)。
一方、ステップS02において触媒暖機要求がある場合には、許容電力設定部36は、続いて、バッテリBのSOCが所定値Xth%以下であるか否かを判断する(ステップS03)。
バッテリBのSOCが所定値Xth%よりも高いと判断された場合(ステップS03においてNOの場合)には、処理はステップS06およびS07に移される。すなわち、許容電力設定部36は、通常走行時用の放電許容電力マップ(図4)を用いて、バッテリBのSOCおよびバッテリ温度Tbに基づいて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する。
一方、ステップS03において、バッテリBのSOCが所定値Xth%以下と判断された場合には、許容電力設定部36は、Wout拡大時用の放電許容電力マップ(図5)をROMから読出す。そして、許容電力設定部36は、その読出したWout拡大時用の放電許容電力マップを用いて、バッテリBのSOCおよびバッテリ温度Tbに基づいて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する(ステップS04)。さらに、許容電力設定部36は、Wout拡大中フラグFWEをオン状態にセットする(ステップS05)。
次に、許容電力設定部36は、Wout拡大中フラグFWEを参照し、Wout拡大中フラグFWEにオフからオンへの立上りが検出されたか否か、あるいは、Wout拡大中フラグにFWEにオンからオフへの立下りが検出されたか否かを判断する(ステップS08)。Wout拡大中フラグFWEに立上りまたは立下りが検出されたときには、許容電力設定部36は、エッジ検出フラグFEDをオン状態にセットする(ステップS09)。
一方、Wout拡大中フラグFWEに立上りまたは立下りが検出されない場合には、許容電力設定部36は、エッジ検出フラグFEDをオフ状態にリセットする(ステップS10)。
そして、許容電力設定部36は、エッジ検出フラグFEDがオン状態にセットされているか否かを判断する(ステップS11)。エッジ検出フラグFEDがオン状態にセットされていない場合(ステップS11においてNOの場合)には、許容電力設定部36は、通常走行時に用いられる除変レートWRLを用いて制御タイミングt(n)における放電許容電力Wout(n)を演算する(ステップS14)。
一方、ステップS11において、エッジ検出フラグFEDがオン状態にセットされている場合には、許容電力設定部36は、通常走行時に用いられる除変レートWRLよりも高い除変レートWRHを用いて制御タイミングt(n)における放電許容電力Wout(n)を演算する(ステップS12)。
そして、許容電力設定部36は、その演算した放電許容電力Wout(n)が、ステップS04で決定した目標放電許容電力Wout*(n)以上であるか否かを判断する(ステップS13)。
放電許容電力Wout(n)が目標放電許容電力Wout*(n)以上である場合(ステップS13においてYESの場合)には、許容電力設定部36は、ステップS10に戻ってエッジ検出フラグFEDをオフ状態にリセットする。一方、放電許容電力Wout(n)が目標放電許容電力Wout*(n)未満である場合(ステップS13においてNOの場合)には、許容電力設定部36は、ステップS09に戻ってエッジ検出フラグFEDをオン状態にセットする。
なお、ステップS13に示した処理は、先のステップS09において、Wout拡大中フラグFWEにオフからオンへの立上りが検出されたことに応じてエッジ検出フラグFEDをオン状態にセットされている場合に対応するものである。これに対して、先のステップS09において、Wout拡大中フラグFWEにオンからオフへの立下りが検出されたことに応じてエッジ検出フラグFEDをオン状態にセットされている場合には、ステップS13の処理は、許容電力設定部36が、放電許容電力Wout(n)が、ステップS04で決定した目標放電許容電力Wout*(n)以下であるか否かを判断することによって行なわれる。
この場合、ステップS13において、放電許容電力Wout(n)が目標放電許容電力Wout*(n)以下である場合には、許容電力設定部36は、ステップS10に戻ってエッジ検出フラグFEDをオフ状態にリセットする。一方、放電許容電力Wout(n)が目標放電許容電力Wout*(n)を上回る場合には、許容電力設定部36は、ステップS09に戻ってエッジ検出フラグFEDをオン状態にセットする。
以上に述べたように、本発明の実施の形態によれば、車両を暖機走行させる場合には、SOCが所定値以下となる領域におけるバッテリの放電許容電力が、通常走行時に設定される放電許容電力を上回るように設定される。そのため、車両の暖機走行を行なうのに必要な駆動力をモータジェネレータMG2の発生する駆動力のみで賄うことが可能となる。その結果、エンジンから暖機中の触媒の浄化能力を上回る量の排気ガスが排出されるのを抑制することができる。
また、本発明の実施の形態によれば、通常走行時用の放電許容電力マップにおける低SOC領域の放電許容電力を拡大させたWout拡大用の放電許容電力マップが新たに設けられるとともに、これらの放電許容電力マップが相互に切替わる過渡期においては、放電許容電力を除変させるためのレートが一時的に上昇するように設定される。これにより、当該過渡期において放電許容電力が急激に変化した場合であっても、車両のドライバビリティの維持と排気性状の向上とを両立させることができる。
[変形例]
本発明は、「蓄電機構」を構成するバッテリBが、複数個の単電池を直列に接続してなる組電池で構成される場合についても適用することができる。
図9は、本発明の実施の形態の変形例に従う車両の制御装置の搭載例として示されるハイブリッド車両の構成を示す概略ブロック図である。
図9を参照して、本変形例に係る車両は、図1に示す車両において、バッテリBに代えて、n(nは自然数)個の電池ブロックB1〜Bnに区分される組電池からなるバッテリBAを配置するとともに、制御装置30に含まれるバッテリ制御部34および許容電力設定部36に代えて、バッテリ制御部34Aおよび許容電力設定部36Aを配置したものである。したがって、共通する部分についてはその図示および詳細な説明は繰返さない。
バッテリBAは、複数個の単電池を直列に接続してなる組電池であり、各々が、数個ずつの直列接続された単電池からなるn個の電池ブロックB1〜Bnに区分される。
電圧センサ10Aは、バッテリBAの充放電電圧値VBを検出し、その検出結果をバッテリ制御部34Aへ出力する。また、電圧センサ10Aは、電池ブロックB1〜Bnの充放電電圧値Vb1〜Vbnをそれぞれ検出し、その検出結果をバッテリ制御部34Aへ出力する。なお、充放電電圧値VBは、バッテリBA全体での充放電電圧値を示し、充放電電圧値Vb1〜Vbnの総和に相当する。
電流センサ26は、バッテリBAの充放電時に用いられる充放電電流値Ibを検出し、その検出結果をバッテリ制御部34Aへ出力する。
温度センサ111〜11nは、電池ブロックB1〜Bnの内部温度であるバッテリ温度Tb1〜Tbnをそれぞれ検出し、その検出結果をバッテリ制御部34Aへ出力する。
バッテリ制御部34Aは、電圧センサ10Aから受けた充放電電圧値Vb1〜Vbnと、電流センサ26から受けた充放電電流値Ibと、温度センサ111〜11nから受けたバッテリ温度Tb1〜Tbnとに基づいて、バッテリBA全体でのSOC(SOC_t)を算出する。また、これらの入力に基づいて、電池ブロックB1〜BnのそれぞれにおけるSOC(SOC1〜SOCn)を算出する。算出されたバッテリBAのSOC_tおよびSOC1〜SOCnは許容電力設定部36Aに入力される。なお、バッテリBAのSOCを算出する構成については、先の実施の形態と同様に、様々な周知の技術を用いることができる。
許容電力設定部36Aは、算出されたバッテリBAのSOC(SOC_tおよびSOC1〜SOCn)に基づいて許容電力(充電許容電力Win(n)および放電許容電力Wout(n))を設定する。
図9を参照して、許容電力設定部36Aは、放電許容電力Wout(n)の設定手段として、目標放電許容電力決定部360Aと、Wout除変レート設定部362と、放電許容電力設定部364とを含む。
なお、図9に示す許容電力設定部36Aは、図6に示す許容電力設定部36において目標許容電力決定部360に代えて目標許容電力決定部360Aを配置したものであるので、共通する部分についての詳細な説明は繰返さない。
次に、図10を用いて、目標放電許容電力決定部360Aにおける目標放電許容電力Wout*(n)の決定動作について説明する。
図10は、目標放電許容電力決定部360Aが行なうバッテリBAの目標放電許容電力Wout*(n)の決定動作を説明するためのフローチャートである。
図10を参照して、目標放電許容電力決定部360Aは、バッテリ制御部34AからバッテリBAのSOC(SOC_tおよびSOC1〜SOCn)と、バッテリ温度Tb1〜Tbnとを取得すると(ステップS01およびS011)、図示しないエンジン制御部32からの触媒暖機要求があるか否かを判断する(ステップS02)。
触媒暖機要求がない場合(ステップS02においてNOの場合)には、目標放電許容電力決定部360Aは、電池ブロックB1〜BnにおけるSOCばらつきが所定の閾値X%以上であるか否かを判断する(ステップS024)。なお、SOCばらつきは、電池ブロックB1〜BnのSOC1〜SOCnのうちの最大値と最小値との差から算出される。
電池ブロックB1〜BnにおけるSOCばらつきが所定の閾値X%以上である場合(ステップS024においてYESの場合)には、目標放電許容電力決定部360Aは、通常走行時用の放電許容電力マップ(図4)をROMから読出す。そして、目標放電許容電力決定部360Aは、その読出した通常走行時用の放電許容電力マップを用いて、SOCが最小となる電池ブロックBi(iは1以上n以下の自然数)のSOCiおよびバッテリ温度Tbiに基づいて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する(ステップS061)。そして、許容電力設定部36Aは、処理を図8のステップS07に移す。
一方、電池ブロックB1〜BnにおけるSOCばらつきが所定の閾値X%よりも小さい場合(ステップS024においてNOの場合)には、目標放電許容電力決定部360Aは、通常走行時用の放電許容電力マップ(図4)をROMから読出す。そして、目標放電許容電力決定部360Aは、その読出した通常走行時用の放電許容電力マップを用いて、バッテリBA全体のSOC_tおよびバッテリ温度Tb1〜Tbnの平均値に基づいて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する(ステップS062)。そして、許容電力設定部36Aは、処理を図8のステップS07に移す。
再びステップS02に戻って、触媒暖機要求がある場合には、目標放電許容電力決定部360Aは、電池ブロックB1〜Bnのバッテリ温度Tb1〜Tbnが所定の基準温度Tb_thよりも高いか否かを判断する(ステップS021)。電池ブロックBiのバッテリ温度Tbiが所定の基準温度Tb_th以下となる場合(ステップS021においてNOの場合)には、目標放電許容電力決定部360Aは、該当する電池ブロックBiのバッテリ温度Tbiを所定の基準温度Tb_thに等しいとみなして(ステップS022)、処理をステップS023に移す。
このようにバッテリ温度Tbiを実際の温度を下回る基準温度Tb_thとみなすこととしたのは、車両の暖機走行の実行中においては、バッテリBAが高温側での放電電力量の制限を受けるのを回避するためである。
一方、電池ブロックBiのバッテリ温度Tbiが所定の基準温度Tb_thよりも高い場合(ステップS021においてYESの場合)には、目標放電許容電力決定部360Aは、処理をステップS023に移す。ステップS023において、電池ブロックB1〜BnにおけるSOCばらつきが所定の閾値X%以上であるか否かを判断する。
電池ブロックB1〜BnにおけるSOCばらつきが所定の閾値X%以上である場合(ステップS023においてYESの場合)には、目標放電許容電力決定部360Aは、さらに、電池ブロックB1〜BnのSOC1〜SOCnの最小値(最小SOC)が所定値Xth%以下であるか否かを判断する(ステップS031)。
最小SOCが所定値Xth%以下であると判断された場合(ステップS031においてYESの場合)には、目標放電許容電力決定部360Aは、Wout拡大時用の放電許容電力マップ(図5)を用いて、SOCが最小となる電池ブロックBi(iは1以上n以下の自然数)のSOCiおよびバッテリ温度Tbiに基づいて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する(ステップS041)。そして、許容電力設定部36Aは、処理を図8のステップS05に移す。
一方、ステップS031において、最小SOCが所定値Xth%よりも高いと判断された場合には、目標放電許容電力決定部360Aは、通常走行時用の放電許容電力マップ(図4)をROMから読出す。そして、目標放電許容電力決定部360Aは、その読出した通常走行時用の放電許容電力マップを用いて、SOCが最小となる電池ブロックBi(iは1以上n以下の自然数)のSOCiおよびバッテリ温度Tbiに基づいて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する(ステップS061)。そして、許容電力設定部36Aは、処理を図8のステップS07に移す。
一方、ステップS023において、電池ブロックB1〜BnにおけるSOCばらつきが所定の閾値X%よりも小さい場合(ステップS023においてNOの場合)には、目標放電許容電力決定部360Aは、さらに、電池ブロックBAのSOC_tが所定値Xth%以下であるか否かを判断する(ステップS032)。
SOC_tが所定値Xth%以下であると判断された場合(ステップS032においてYESの場合)には、目標放電許容電力決定部360Aは、Wout拡大時用の放電許容電力マップ(図5)を用いて、SOC_tおよびバッテリ温度Tb1〜Tbnの平均値に基づいて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する(ステップS042)。そして、許容電力設定部36Aは、処理を図8のステップS07に移す。
一方、ステップS032において、SOC_tが所定値Xth%よりも高いと判断された場合には、目標放電許容電力決定部360Aは、通常走行時用の放電許容電力マップ(図4)をROMから読出す。そして、目標放電許容電力決定部360Aは、その読出した通常走行時用の放電許容電力マップを用いて、SOC_tおよびバッテリ温度Tb1〜Tbnの平均値に基づいて目標放電許容電力Wout*(n)を決定する(ステップS062)。そして、許容電力設定部36Aは、処理を図8のステップS07に移す。
図8のステップS05およびS07以降の動作については、図8で説明したのと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
本実施の形態の変形例によれば、蓄電機構が複数個の単電池を直列に接続してなる組電池から構成される場合であっても、上述の本実施の形態における効果と同様の効果を発揮させることができる。特に、電池ブロック毎のSOCを算出し、算出したSOCのばらつきが大きい場合には、最小SOCに基づいて目標放電許容電力を決定することによって、より確実に、車両の暖機走行を行なうのに必要な駆動力をモータジェネレータMG2の発生する駆動力のみで賄うことが可能となる。その結果、エンジンから暖機中の触媒の浄化能力を上回る量の排気ガスが排出されるのを確実に抑制することができる。
なお、本実施の形態および変更例においては、車両の通常走行は「第1の制御手段」による制御の実行によって実現され、車両の暖機走行は「第2の制御手段」による制御の実行によって実現される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
6,7 電源ライン、8 接地ライン、10,10A,13 電圧センサ、11,111〜11n,74 温度センサ、12 昇圧コンバータ、14,22 インバータ、15 U相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、24,26,28 電流センサ、30 制御装置、32 エンジン制御部、34,34A バッテリ制御部、36,36A 許容電力設定部、38 トルク指令演算部、40 インバータ入力電圧指令演算部、42 コンバータ用デューティー比演算部、44 コンバータ用PWM信号変換部、46 モータ制御用相電圧演算部、48 インバータ用PWM信号変換部、50 動力分割機構、52,60 駆動軸、54 減速機、62 車輪、70 排気管、72 触媒、100 ハイブリッド車両、360,360A 目標放電許容電力決定部、362 Wout除変レート設定部、364 放電許容電力設定部、B,BA バッテリ、B1〜Bn 電池ブロック、C2 平滑コンデンサ、D1〜D8 逆並列ダイオード、ENG エンジン、MG1,MG2 モータジェネレータ、Q1〜Q8 スイッチング素子。