[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図13は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1は、本実施の形態のインバータ過熱警告装置付電動車両である、ハイブリッド車両10の略構成図である。ハイブリッド車両10は、前置エンジン付後輪駆動車であるFR車である。ハイブリッド車両10は、エンジン12と、第1モータジェネレータである、発電機(MG1)14と、第2モータジェネレータである、走行モータ(MG2)16とを備える。発電機14と走行モータ16とは、それぞれ請求項に記載したモータに対応する。
また、ハイブリッド車両10は、エンジン12のクランクシャフトにダンパ20を介して動力分割部22を連結し、動力分割部22に発電機14の回転軸及び2段変速機構付の減速歯車部24の出力軸26を連結している。また、減速歯車部24に走行モータ16の回転軸を連結している。
図2は、図1に示したエンジン12と発電機14と走行モータ16との動力を伝達する部分の構成を詳しく示す図である。図2に示すように、動力分割部22は、サンギヤ28と、サンギヤ28の周囲に配置したリングギヤ30と、サンギヤ28およびリングギヤ30に噛合する複数のピニオンギヤ32と、複数のピニオンギヤ32を自転かつ公転自在に支持するキャリア34とを備える遊星歯車機構である。キャリア34にはエンジン12のクランクシャフト18を、ダンパ20を介して連結し、サンギヤ28には発電機14の回転軸を連結している。また、リングギヤ30を出力軸26に連結している。
発電機14は、3相交流モータであり、エンジン12始動用モータとしても使用可能であるが、発電機として使用する場合には、動力分割部22で、キャリア34から入力されるエンジン12からのトルクを、サンギヤ28側とリングギヤ30側とに分配する。
また、減速歯車部24は、フロントサンギヤ36とリアサンギヤ38とロングピニオンギヤ40とショートピニオンギヤ42と第2リングギヤ44と第2キャリア46とを備える複合式遊星歯車機構である。ショートピニオンギヤ42は、フロントサンギヤ36およびロングピニオンギヤ40と噛合している。ロングピニオンギヤ40は、リアサンギヤ38とショートピニオンギヤ42と第2リングギヤ44とに噛合している。また、減速歯車部24は、第1制動部48および第2制動部50を備える。
走行モータ16の出力は、第1制動部48または第2制動部50のいずれかの作動により、低速(ロー)側、高速(ハイ)側いずれかの速度に減速されてから出力軸26に取り出される。すなわち、低速側の速度に減速する場合には、リアサンギヤ38よりも歯数の多い第2リングギヤ44を第2制動部50により固定して、走行モータ16の出力をリアサンギヤ38、ロングピニオンギヤ40、第2キャリア46を介して出力軸26に取り出すようにする。これに対して、高速側の速度に減速する場合には、リアサンギヤ38よりも歯数の少ないフロントサンギヤ36を第1制動部48により固定して、走行モータ16の出力をリアサンギヤ38、ロングピニオンギヤ40、ショートピニオンギヤ42、第2キャリア46を介して出力軸26に取り出す。走行モータ16は、3相交流モータであり、かつ、発電機、すなわち電力回生用としても使用可能である。
エンジン12の回転は、動力分割部22を介して出力軸26側と発電機14側とに取り出す。発電機14の駆動により発生した電力は、図示しないバッテリに充電される。発電機14は、回転数を無段階制御可能としている。また、発電機14は、発電量を制御することにより、エンジン12の動作点を、燃費性能を良好にする面から最適にする役目も有する。ここで、図1に戻り、出力軸26の回転は、プロペラシャフト52、ディファレンシャルギヤ54を介して駆動輪である、後輪56に伝達され、後輪56が駆動する。
図3は、このようなハイブリッド車両10において、エンジン12と発電機(MG1)14と走行モータ(MG2)16とに駆動のための信号を送るとともに、過熱警告ランプ58と警告ブザー60とに制御信号を送る状態を説明するためのブロック図である。まず、動力分配制御部であり、かつ、過熱警告制御部であるハイブリッド制御用電子ユニット、すなわち車両コントローラ62は、車両を駆動するための動力を分配制御する機能を有する。車両コントローラ62には、アクセルペダルの操作量に対応するアクセル開度を検出するアクセル開度センサ64と、車速を検出するレゾルバ等により構成する車速センサ66と、シフトポジションを検出する図示しないシフトセンサとからの検出信号を、それぞれ車両コントローラ62に入力している。車両コントローラ62は、CPU,メモリであるRAM、ROM等を有するマイクロコンピュータである。
また、エンジン12に、車両コントローラ62からの制御信号を入力することにより、燃料噴射制御、点火制御、吸入空気量調節制御等の運転制御が行われるようにしている。また、エンジン12からは、エンジン12の回転数等のエンジン12の運転状態を表す信号を車両コントローラ62に出力している。なお、車両コントローラ62とエンジン12との間にエンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)を設けて、車両コントローラ62からの信号により、エンジンECUを介してエンジン12を運転制御し、また、エンジン12からの運転状態を表す信号をエンジンECUに出力することもできる。
一方、図3に示す発電機14および走行モータ16の駆動状態は、車両コントローラ62から信号を入力される発電機制御部でもあるモータ制御部、すなわちモータコントローラ68により、発電機用インバータ70または走行モータ用インバータ72を介して制御している。モータコントローラ68は、それぞれのインバータ70,72に、発電機14および走行モータ16の駆動制御信号をそれぞれ出力し、それぞれのインバータ70,72は駆動制御信号に基づいて発電機14および走行モータ16のそれぞれを駆動する。また、車両コントローラ62は、それぞれインバータ過熱警告部である、視覚表示手段、すなわち過熱警告点灯部である、過熱警告ランプ58と、音声手段として警告音を発する警告ブザー60とに出力信号を出力し、それぞれを駆動可能としている。
また、発電機用インバータ70、走行モータ用インバータ72のそれぞれに、インバータ70,72を構成するスイッチング素子である、IGBT等の電気素子の支持部の温度を検出する温度検出手段である、インバータ温度センサ74を設けている。また、発電機14、走行モータ16のそれぞれに、発電機14または走行モータ16のコイル、すなわち巻線の温度を検出するモータ温度センサ76を設けている。インバータ温度センサ74およびモータ温度センサ76のそれぞれからの検出信号は、モータコントローラ68を介して車両コントローラ62に入力している。本実施の形態では、車速センサ66と、過熱警告ランプ58と、警告ブザー60と、車両コントローラ62と、モータコントローラ68と、インバータ温度センサ74と、モータ温度センサ76とにより、インバータ過熱警告装置を、構成している。インバータ過熱警告装置は、インバータ70,72が過熱している場合にこれを過熱警告ランプ58と警告ブザー60とによりユーザに知らせる。
また、モータコントローラ68は、検出された発電機用インバータ70の温度が第1の所定温度以上である場合、検出された発電機14の温度が第2の所定温度以上である場合の少なくともいずれかである場合に、発電機用インバータ70の駆動に基づく発電機14の出力トルクに対応する許可最大出力トルク指令値を通常時よりも低く制限する発電機負荷率制限制御を行う。発電機14に関する許可最大トルク指令値を低くする場合、出力トルク指令値に基づく電流指令値の最大値を低くしてもよい。さらに、モータコントローラ68は、検出された走行モータ用インバータ72の温度が第1の所定温度以上である場合、検出された走行モータ16の温度が第2の所定温度以上である場合の少なくともいずれかである場合に、走行モータ用インバータ72の駆動に基づく走行モータ16の出力トルクに対応する許可最大出力トルク指令値を通常時よりも低く制限する走行モータ負荷率制限制御を行う。走行モータ16に関する許可最大出力トルク指令値を低くする場合に、出力トルク指令値に基づく電流指令値の最大値を低くしてもよい。
図4は、走行モータ用インバータ72の温度と走行モータ16負荷率(MG2負荷率)との関係の1例を示す図である。図4では、インバータ72温度が123℃を超えると、走行モータ16負荷率が制限され、インバータ72温度に対して一定の割合で徐々に減少している。ここで、「走行モータ16負荷率」は、走行モータ16の発生可能な最大トルクTRmaxに対する走行モータ16の許可最大トルク指令値TRorの割合{=(TRor/TRmax)×100(%)}であり、走行モータ用インバータ72の検出温度が所定温度(例えば123℃)を超えると減少する。発電機用インバータ70の温度と発電機14負荷率との関係も、上記の走行モータ用インバータ72の場合と同様の傾向を有する。また、「発電機14負荷率」は、発電機14の発生可能な最大トルクTRmax´に対する発電機14の許可最大トルク指令値TRor´の割合{=(TRor´/TRmax´)×100(%)}であり、発電機用インバータ70の検出温度が所定温度を超えると減少する。
一方、従来から、このようなハイブリッド車両10(図3)において、発電機14または走行モータ16用のインバータ70,72の温度からそれぞれで一意的に設定される発電機14負荷率または走行モータ16負荷率(以下、単に「モータ負荷率」という。)が所定値、例えば図4のモータ負荷率の60%を下回った場合に、インバータ70,72の電気素子を保護する観点から、ハイブリッド車両10の制御装置が過熱であるとして、過熱警告ランプ58(図3)を点灯させることが考えられていた。また、従来は、一旦、過熱警告ランプ58が点灯した場合に、図4のモータ負荷率が80%を超えた場合に初めてハイブリッド車両10(図3)の制御装置が過熱状態にないとして、過熱警告ランプ58を消灯させることが考えられていた。
例えば、従来から、上記と同様の構成を有するハイブリッド車両において、上記の図2に示した構成と同様に、走行モータ16に連結している減速歯車部24で、ローギヤとハイギヤとの切り替えを行えるようにすることが考えられている。例えば、ローギヤとハイギヤとのギヤ比を、それぞれ3.9と1.9とすることが考えられている。このようなハイブリッド車両において、ハイギヤからローギヤに変速する以前において、ハイギヤで走行可能な最低速度(例えば40km/h程度)で走行すると、ローギヤで同じ速度で走行する場合と比べて、走行モータ16の回転数は低くなる。例えば、減速歯車部24のローギヤとハイギヤとのギヤ比が上記のような場合、ローギヤからハイギヤに動力伝達部のギヤ比が切り替わることにより、走行モータ16の回転数は2倍程度、例えば、4000min-1から2000min-1に低下する。そしてこの状態からアクセル開度を100%とするアクセル全開走行が行われると、走行モータ16の回転数が低く、かつ、走行モータ16に対する要求トルクが高い状態となる。この場合には、走行モータ16を駆動するインバータ72(図3)のスイッチング素子の通電量が大きくなり、かつ、スイッチング素子のスイッチング速度が遅くなることに対応して、スイッチング素子の電流通電時間が長くなり、インバータ72の温度が、モータ負荷率の所定値以下、例えば図4のモータ負荷率の60%以下に対応する温度(例えば125℃から130℃を超える温度)に上昇しやすくなる。そして、インバータ72(図3)の温度が、モータ負荷率の所定値以下に対応する温度にまで上昇した場合には、過熱警告ランプ58が点灯する。このように過熱警告ランプ58を点灯させることにより、例えば車両が登坂を十分に行えなくなる可能性があることを事前にユーザに警告でき、また、ユーザは、登坂性能が不足している原因がインバータ72等の過熱であることを認識できる。
ただし、インバータ72の温度が、モータ負荷率の所定値以下に対応する温度にまで上昇した場合でも、ユーザがアクセルペダルを戻す、すなわちアクセル開度を小さくする等により、すぐにインバータ72温度が低下し、モータ負荷率が過度に制限される領域から外れる可能性がある。この場合、車両挙動に関する性能がユーザにとって問題とならないのにもかかわらず、過熱警告ランプ58が点灯してしまうこととなる。このため、ユーザに不要な不安感を持たせてしまう可能性がある。本実施の形態は、このような事情から、ユーザに不要な不安感を持たせないようにすることを目的として発明した。
このために、本実施の形態では、車両コントローラ62は、車速とモータ負荷率とに対応して設定されたマップから、過熱警告ランプ58点灯の条件に使用する閾値を参照し、過熱警告ランプ58点灯の条件を満たしているか否かを判定するようにしている。すなわち、車両コントローラ62は、モータ負荷率と車速とに基づいて、過熱警告ランプ58により発電機用インバータ70または走行モータ用インバータ72の過熱を警告させるか否かを判定するようにしている。そして、車両コントローラ62は、この判定の判定結果に応じて過熱警告ランプ58を作動させるようにしている。以下、これをより詳しく説明する。
車両コントローラ62は、マップ記憶手段と、過熱警告判定手段とを有する。マップ記憶手段は、ROM等であり、モータ負荷率と車速とに対応して、過熱警告ランプ58によりインバータ70,72過熱を警告させる条件に用いる運転状態、すなわち、モータ負荷率が連続して所定値を超えている場合に処理回数に対応して加算されるカウント値、すなわちカウンタに対応する閾値が設定されたマップ、すなわちマップのデータを記憶している。
また、過熱警告判定手段は、CPUであり、モータ負荷率と車速とに基づいて、マップから閾値を参照し、カウンタがインバータ70,72過熱を警告させる状態にあるか否かを閾値に基づいて判定する機能を有する。すなわち、過熱警告判定手段は、カウンタに対応する時間が閾値を超えている場合に限り、インバータ70,72過熱を警告させる状態にあると判定するようにしている。また、マップに設定された閾値は、後で詳しく説明するように、モータ負荷率と車速とに対応して変更されている。CPUは、インバータ70,72過熱を警告させると判定した場合に、過熱警告ランプ58および警告ブザー60を作動させるための信号を発する機能も有する。
図5は、過熱警告ランプ58の点灯条件を説明するための図である。すなわち、次の「第1の点灯要求条件」から「第4の点灯要求条件」までのいずれかの条件が成立した場合に、過熱警告ランプ58を点灯させるようにしている。「第1の点灯要求条件」は、発電機用インバータ70(図3)の温度上昇による過熱警告ランプ58の点灯要求があることである。「第2の点灯要求条件」は、走行モータ用インバータ72の温度上昇による過熱警告ランプ58の点灯要求があることである。「第3の点灯要求条件」は、発電機14のコイルの温度、すなわち発電機14の温度が上昇することによる過熱警告ランプ58の点灯要求があることである。「第4の点灯要求条件」は、走行モータ16のコイルの温度、すなわち走行モータ16の温度が上昇することによる過熱警告ランプ58の点灯要求があることである。
また、図6は、過熱警告ランプ58の消灯条件を説明するための図である。すなわち、次の「第1の消灯要求条件」から「第4の消灯要求条件」までのすべての条件が成立した場合に、過熱警告ランプ58を消灯させるようにしている。「第1の消灯要求条件」は、発電機用インバータ70の温度低下による過熱警告ランプ58の消灯要求があることである。「第2の消灯要求条件」は、走行モータ用インバータ72の温度低下による過熱警告ランプ58の消灯要求があることである。「第3の消灯要求条件」は、発電機14のコイルの温度、すなわち発電機14の温度が低下することによる過熱警告ランプ58の消灯要求があることである。「第4の消灯要求条件」は、走行モータ16のコイルの温度、すなわち走行モータ16の温度が低下することによる過熱警告ランプ58の消灯要求があることである。
次に、上記の図5に示した発電機用インバータ70の温度上昇による過熱警告ランプ58の点灯要求がある(第1の点灯要求条件を満たしている)か否か、および、図6に示した発電機用インバータ70の温度低下による過熱警告ランプ58の消灯要求がある(第1の消灯要求条件を満たしている)か否かを判定する判定方法を、図7に示すフローチャートを用いて説明する。車両コントローラ62(図3)は、ハイブリッド車両10の図示しないイグニッションスイッチがオンされることにより、制御を開始する。そして、図7のステップS11において、過熱ランプ点灯用カウンタC1と、過熱ランプ消灯用カウンタC2とを、初期設定としてそれぞれ0とする。過熱ランプ点灯用カウンタC1は、発電機用インバータ70(図3)の温度により第1の点灯要求条件を満たしているか否かを判定するために用いる。また、過熱ランプ消灯用カウンタC2は、発電機用インバータ70の温度により第1の消灯要求条件を満たしているか否かを判定するために用いる。
そして、図7のステップS12において、発電機用インバータ70の温度上昇により過熱警告ランプ58が点灯していないか否か、すなわち点灯中でないか否かを判定する。ステップS12の判定で、過熱警告ランプ58が点灯中でないと判定されると、ステップS13に進み、発電機14に関するモータ負荷率が予め設定した所定値A、例えば60%を超えているか否かを判定する。モータ負荷率が所定値Aを越えている場合には、正常であるとして、ステップS14に進み、過熱ランプ点灯用カウンタC1をクリア、すなわち0とし、ステップS16に進む。
これに対して、ステップS13でモータ負荷率が所定値A以下であると判定した場合には、ステップS15で過熱ランプ点灯用カウンタC1に1を加算、すなわちインクリメントし、これを新たな過熱ランプ点灯用カウンタC1とし、ステップS16に進む。
続いて、ステップS16で過熱ランプ点灯用カウンタに対応する時間である、過熱ランプ点灯用カウンタ換算時間が、次に説明する閾値設定用マップを参照して取得したマップ定数である、閾値T−NG、すなわち点灯用継続時間よりも大きいか否かを判定する。過熱ランプ点灯用カウンタ換算時間は、過熱ランプ点灯用カウンタC1に、図7のステップS12からステップS16まで、およびステップS18の処理、または、ステップS19からS22まで、およびステップS18の処理を1回の処理とした場合に1回毎の処理を行う周期、すなわち制御周期αを乗じた時間である。制御周期αは、例えば数10msecである。
図8は、発電機用インバータ70に関する過熱警告ランプ58点灯判定用の、閾値T−NG設定用マップを示している。このマップは、発電機14に関するモータ負荷率と、車速とに対応して設定されている。図8で、α(制御周期)、α+β、α+γ、α+δは、それぞれ継続時間を表す閾値であり、α、α+β、α+γ、α+δの順に大きくなっている(α<α+β<α+γ<α+δ)。また、β、γ、δはそれぞれ1sec以上の値である。また、閾値が単なるαであることは、実質的に、発電機用インバータ70温度による過熱警告ランプ58の即時点灯要求があることに対応する。また、図8の「非点灯」は、発電機用インバータ70温度による過熱警告ランプ58の点灯要求がないことを表している。図8から明らかなように、発電機に関するモータ負荷率が60%を越える、すなわち、61%以上では、車速にかかわらず、発電機用インバータ70温度上昇による点灯要求はない。このような閾値T−NG設定用マップは、マップ記憶手段で記憶させている。
また、車速が0から10km/hの低車速では、過熱警告ランプ58の即時点灯要求領域、すなわち閾値がαである領域は、モータ負荷率の0から30%の範囲と小さい。これに対して、車速が70から250km/hの高車速では、過熱警告ランプ58の即時点灯要求領域はモータ負荷率の0から50%または60%までの範囲と大きくなっている。
本実施の形態では、図8に示した閾値設定用マップを使用して、発電機用インバータ70の温度上昇による過熱警告ランプ58の点灯要求があるか否かを判定する。すなわち、図7に戻り、ステップS16で、車速センサ66(図3)からの車速と、インバータ温度センサ74からのインバータ70温度に対応するモータ負荷率とに基づいて、図8の閾値設定用マップのデータを参照して、対応する閾値T−NGを取得し、過熱ランプ点灯用カウンタ換算時間が閾値T−NGよりも大きいか否かを判定する。なお、車速によっては対応する値が記憶させたマップにない場合もあるが、この場合にはマップを線形補完することにより対応する値を求める。過熱ランプ点灯用カウンタ換算時間が閾値T−NGよりも大きいと判定された場合には図7のステップS17に進み、発電機用インバータ70の温度上昇により過熱警告ランプ58の点灯要求があると判定する。そして上記の図5に戻り、他の過熱警告ランプ58の点灯要求の有無、すなわち第2から第4の点灯要求条件が満たされているか否かにかかわらず、過熱警告ランプ58を点灯させる。また、これとともに、警告ブザー60(図3)を作動させ、警告音を発する。
これに対して、図7のステップS16において、過熱ランプ点灯用カウンタ換算時間が閾値T−NG以下であると判定された場合には、ステップS18に進み、再びステップS12に戻り、ステップS12からステップS17までまたはステップS18までの処理を、ステップS17に移行するまで繰り返す。
図9は、発電機用インバータ70(図3)の温度と、過熱ランプ点灯用カウンタC1と、過熱警告ランプ58の点灯オンオフ状態との時間経過の1例を示す図である。図9に示すように、発電機用インバータ70の温度が上昇し、時間t1で、発電機14(図3)に関するモータ負荷率がAを下回ることに対応する所定温度T1を超える高い温度になると、過熱ランプ点灯用カウンタC1が1ずつ加算される。そして、時間t2で、過熱ランプ点灯用カウンタC1が閾値設定用マップから取得した閾値T−NGを超えると、発電機用インバータ70の温度上昇により過熱警告ランプ58の点灯要求があるとして、過熱警告ランプ58が点灯する(オンされる)。すなわち、発電機14に関するモータ負荷率が所定値A、例えば60%以下でも、閾値T−NGが図8のα+β、α+γ、α+δである場合には、過熱警告ランプ58は即時には点灯されない。
また、図7に戻り、ステップS12の判定で、過熱警告ランプ58が点灯中であると判定されると、ステップS19に進み、インバータ70の温度低下による過熱警告ランプ58の消灯要求があるか否かを判定する処理に進む。すなわち、ステップS19で、発電機14に関するモータ負荷率が予め設定した所定値B、例えば80%未満であるか否かを判定する。モータ負荷率が所定値B未満である場合には、まだ発電機用インバータ70が過熱状態にあるとして、ステップS20に進み、過熱ランプ消灯用カウンタC2をクリア、すなわち0とし、ステップS22に進む。
これに対して、ステップS13でモータ負荷率が所定値B以上であると判定した場合には、ステップS21で過熱ランプ消灯用カウンタC2に1を加算、すなわちインクリメントし、これを新たな過熱ランプ消灯用カウンタC2とし、ステップS22に進む。
続いて、ステップS22で過熱ランプ消灯用カウンタC2が、予め設定した消灯用継続時間に対応する所定値K、例えば10カウントを超えているか否かを判定する。過熱ランプ消灯用カウンタC2が所定値Kを超えている場合には、ステップS23に進み、発電機用インバータ70の温度低下により過熱警告ランプ58の消灯要求があるとして、上記の図6に戻り、他の消灯要求条件成立、すなわち、第1から第4の消灯要求条件のすべてが満たされていることを条件に、過熱警告ランプ58を消灯させる。
これに対して、図7のステップS22において、過熱ランプ消灯用カウンタC2が所定値K以下であると判定された場合には、ステップS18に進み、再びステップS12に戻り、ステップS12、ステップS19からステップS23までまたはステップS18までの処理を、ステップS23に移行するまで繰り返す。
また、以上では、図5に示した発電機用インバータ70の温度上昇による過熱警告ランプ58の点灯要求がある(第1の点灯要求条件を満たしている)か否か、および、図6に示した発電機用インバータ70の温度低下による過熱警告ランプ58の消灯要求がある(第1の消灯要求条件を満たしている)か否かを判定する判定方法を説明した。これに対して、図5に示した走行モータ用インバータ72の温度上昇による過熱警告ランプ58の点灯要求がある(第2の点灯要求条件を満たしている)か否か、および、図6に示した走行モータ用インバータ72の温度低下による過熱警告ランプ58の消灯要求がある(第2の消灯要求条件を満たしている)か否かを判定する判定方法も、閾値設定用マップと、閾値設定用マップにより取得した閾値以外は上記と同様にして行う。走行モータ用インバータ72(図3)に関して第2の点灯要求条件を満たしているか否かを判定するために、次の閾値設定用マップを参照してマップ定数である、閾値T−NG´を取得する。
図10は、走行モータ用インバータ72に関する過熱警告ランプ58点灯判定用の、閾値T−NG´設定用マップを示している。このマップは、走行モータ16に関するモータ負荷率と、車速とに対応して設定されている。図10で、α、α+β´、α+γ´、α+δ´、α+ε´は、それぞれ継続時間を表す閾値であり、α、α+β´、α+γ´、α+δ´、α+ε´の順に大きくなっている(α<α+β´<α+γ´<α+δ´<α+ε´)。また、αは、上記で説明した制御周期であり、極短い時間であり、例えば数10msecである。また、β´、γ´、δ´、ε´はそれぞれ1sec以上の値である。また、閾値が単なるαであることは、実質的に、走行モータ用インバータ72温度上昇による過熱警告ランプ58の即時点灯要求があることに対応する。また、図10の「非点灯」は、走行モータ用インバータ72温度上昇による過熱警告ランプ58の点灯要求がないことを表している。図10から明らかなように、走行モータ16に関するモータ負荷率が60%を越える、すなわち、61%以上では、車速にかかわらず、走行モータ用インバータ72温度上昇による点灯要求はない。このような閾値T−NG´設定用マップも、マップ記憶手段で記憶させている。
また、車速が0から10km/hの低車速では、過熱警告ランプ58の即時点灯要求領域、すなわち閾値がαである領域は、モータ負荷率の0から50%の範囲と大きい。これに対して、車速が70から250km/hの高車速では、過熱警告ランプ58の即時点灯要求領域は、モータ負荷率の0から30%または20%までの範囲と小さくなっている。
このような図10に示したマップを使用して取得した閾値T−NG´を用いて、走行モータ用インバータ72に関して第2の点灯要求条件が満たされているか否かを判定する。その他の第2の点灯要求条件判定または第2の消灯要求条件判定の判定方法は、上記の発電機用インバータ70に関する第1の点灯要求条件判定または第1の消灯要求条件判定の場合と同様である。
また、発電機14の温度が上昇することによる過熱警告ランプ58の点灯要求がある(第3の点灯要求条件を満たしている)か否かと、走行モータ16の温度が上昇することによる過熱警告ランプ58の点灯要求がある(第4の点灯要求条件を満たしている)か否かと、発電機14の温度が低下することによる過熱警告ランプ58の消灯要求がある(第3の消灯要求条件を満たしている)か否かと、走行モータ16の温度が低下することによる過熱警告ランプ58の消灯要求がある(第4の消灯要求条件を満たしている)か否かとは、それぞれ発電機14または走行モータ16の温度を検出するモータ温度センサ76(図3)からの検出温度が所定値を超えるか、または別の所定値を下回るか、または、検出温度に対応するモータ負荷率が所定値を超えるか、または別の所定値を下回るか等により判定する。また、上記の図7に示した発電機用インバータ70の温度による過熱警告ランプ58点灯要求または消灯要求があるか否かを判定するフローチャートと、図7に対応する走行モータ用インバータ72の温度による過熱警告ランプ58点灯要求または消灯要求があるか否かを判定するフローチャートとは、同時に実行させるようにしている。
さらに、本実施の形態の場合、図8に示した発電機用インバータ70に関する閾値T−NG設定用マップと、図10に示した走行モータ用インバータ72に関する閾値T−NG´設定用マップとでは、車速とモータ負荷率とに対応する傾向を異ならせている。すなわち、図11に示すように、発電機用インバータ70の場合に、0から10km/hの低車速で過熱警告ランプ58の即時点灯領域を小さく、70から250km/hの高車速で即時点灯領域を大きくしているのに対し、走行モータ用インバータ72の場合には、0から10km/hの低車速で過熱警告ランプ58の即時点灯領域を大きく、70から250km/hの高車速で即時点灯領域を小さくしている。
このように閾値設定用マップにおいて、発電機用インバータ70の場合と走行モータ用インバータ72の場合とで傾向を異ならせている理由は次の通りである。まず、発電機用インバータ70の場合、上記の図2に示したように、発電機14とエンジン12とは動力分割部22を構成する遊星歯車機構により連結しており、エンジン12からの動力を受けて発電機14は発電する。したがって、車速が高くなるほど、エンジン12、発電機14の回転数はそれぞれ高くなり、発電機14の負荷率制限により発電機14のトルクが抑えられると、エンジン12が回転することに対する負荷が小さくなって、エンジン要求出力指令が変わらないのにもかかわらず吹け上がりする、すなわちクランクシャフト18の回転数が高くなってしまう。そして、走行モータ16側の出力軸26から取り出されるトルクが小さく抑えられてしまう。すなわち、車速が高い場合に発電機14のトルクが抑えられると、車両の駆動力が大きく抑えられるため、発電機14のトルクの寄与率は大きく、車両の挙動に関する性能に与える影響は大きい。
これに対して、車速が低いと、車両の駆動源として主として走行モータ16を使用するため、車両の駆動力に対する発電機14のトルクの寄与率は小さく、車両の挙動に関する性能に与える影響は小さい。このような理由から、上記の図8に示したマップでは、低車速で発電機用インバータ70の即時点灯領域を小さくして、過熱警告ランプ58をすぐには点灯しにくくしている。また、高車速で発電機用インバータ70の即時点灯領域を大きくして、過熱警告ランプ58を低車速の場合よりもすぐに点灯しやすくしている。
また、走行モータ用インバータ72の場合、低車速では、車両の駆動源として主として走行モータ16を使用するため、車両の駆動力に対する走行モータ16のトルクの寄与率は大きくなる。このため、低車速では、走行モータ16の車両の挙動に関する性能に与える影響は大きい。これに対して、高車速では、低車速の場合よりも車両の駆動源としてエンジン12を使用する割合が大きくなり、相対的に車両の駆動力に対する走行モータ16のトルクの寄与率は小さくなる。このため、高車速では、走行モータ16の車両の挙動に関する性能に与える影響は小さい。このような理由から、上記の図10に示したマップでは、低車速で走行モータ用インバータ72の即時点灯領域を大きくして、過熱警告ランプ58をすぐに点灯しやすくしている。また、高車速で走行モータ用インバータ72の即時点灯領域を小さくして、過熱警告ランプ58を高車速の場合よりもすぐには点灯しにくくしている。
さらに、本実施の形態では、上記の図8、図10の閾値設定用マップを、0から10km/hの低い車速範囲に対応する低車速用マップと、70から250km/hの高い車速範囲に対応する高車速用マップとを有し、低車速用マップと高車速用マップとを異なる種類の性能に基づいて設定している。すなわち、低車速用マップの、モータ負荷率と車速とに対応する閾値T−NG、T−NG´は、車両の登坂性能に基づいて設定している。また、高車速用マップの、モータ負荷率と車速とに対応する閾値T−NG、T−NG´は、車両の加速性能、すなわち追い越し性能に基づいて設定している。
例えば、0km/hと10km/hとの車速に対応する低車速用マップは、車両が斜度14度の登坂路の登坂性能を有するか否かに基づいて設定している。まず、車速0km/hに対応する閾値T−NG、T−NG´に関して、モータ負荷率を制限した状態で登坂路を発進させると仮定したシミュレーションまたは実車による実験において、登坂不可能となるモータ負荷率では即時点灯領域、すなわち閾値T−NG、T−NG´をαとして設定している。すなわち、車両がずり下がるか否かにより、閾値T−NG、T−NG´をαとするか、またはそうでない領域とするかを決定している。
また、車速10km/hに対応する閾値T−NG、T−NG´に関して、上記の登坂路を車速10km/hで走行させると仮定したシミュレーションまたは実車による実験において、負荷率を低下させた場合に車速10km/hの一定車速での走行を維持できるか否かを基準として、維持できない負荷率では、閾値T−NG、T−NG´をαとして即時点灯領域としている。
また、10km/hを超えて250km/hまでの車速範囲での、高車速用マップは、車両が十分な加速性能を有するか否かに基づいて設定している。まず、この設定のために、実車実験またはシミュレーションにより、発電機14または走行モータ16に関するモータ負荷率が100%と、10から60%の間の複数のモータ負荷率とでそれぞれ順に固定した状態で、アクセル全開加速、すなわちアクセル開度を100%として、0から250km/hまでの走行データを取得し、図12に1例を示すような複数の時間と車速との関係を表す線図を求める。なお、図12では、モータ負荷率が100%を含めて3種類しかないが、実際には、これよりも多く取得する。そして、10km/h置きの各車速で、図12の実線の傾きに対応する瞬間加速度を算出する。例えば、プロペラシャフト52(図1)の1回での回転数の変化量の5点移動平均に対応するものから瞬間加速度を算出する。
また、図12に示したモータ負荷率が100%である場合の10km/h毎の各車速での瞬間加速度を基準とし、この基準に対して瞬間加速度が1/2以下にまで低下する場合のモータ負荷率を求める。そしてこの場合のモータ負荷率とその場合の車速とでの閾値T−NG、T−NG´をα(図8、図11参照)として過熱警告ランプ58の即時点灯領域とする。
また、即時点灯領域以外の閾値T−NG、T−NG´は次のようにして設定する。すなわち、発電機用インバータ70と走行モータ用インバータ72とのそれぞれの場合の各車速で、仮にその閾値設定領域に対応するモータ負荷率から、即時点灯領域直前まで低下した場合でも丸め誤差の影響で即時点灯領域にあると判定されないようにしている。このために、上記の図8、図10に示したマップで設定する、即時点灯領域以外の閾値T−NG、T−NG´は、モータ負荷率の復帰レートで復帰可能な時間β、γ、δ、β´、γ´、δ´、ε´、を、αに加えることにより設定している。
ここで、「復帰レート」を説明すると、図13に示すように、時間t1´でモータ負荷率が例えば20%等に低下した場合に、インバータ70,72温度がその後低下した場合に、急激にモータ負荷率を復帰させるのではなく、ある一定の時間割合で徐々に復帰させるようにしており、その場合の時間割合を復帰レートとしている。すなわち、図13に示すようにt1からt2までの時間でモータ負荷率を時間に対して直線的に増加させており、この場合の傾きを復帰レートとしている。復帰レートは、発電機用インバータ70と走行モータ用インバータ72との場合で異なり、走行モータ用インバータ72の場合に発電機用インバータ70の場合よりも大きくしている。
そして、上記の図8、図10に示したマップで即時点灯領域以外の閾値T−NG、T−NG´を設定する場合には、各車速で、閾値設定領域に対応するモータ負荷率から即時点灯領域に対応するモータ負荷率直前に低下するとしても、丸め誤差の影響で即時点灯領域にあると判定されないようにしている。すなわち、即時点灯領域に対応するモータ負荷率に低下することなく、復帰レートにより元の閾値設定領域に対応するモータ負荷率に復帰可能な最長時間を算出し、これを図8、図11のβ、δ、γ、β´、δ´、γ´、ε´とし、これにαを加えたもの(例えばα+β)を、その閾値設定領域に対応する閾値T−NG、T−NG´としている。したがって、β、δ、γの順に大きくなり(β<δ<γ)、また、β´、δ´、γ´、ε´の順に大きくなっている(β´<δ´<γ´<ε´)。
また、本実施の形態では、このように算出したマップのすべての値をデータとしてマップ記憶手段により記憶させるのではなく、格子点に対応する車速を5個等に少なく限定している。すなわち、各モータ負荷率毎にモータ負荷率100%での加速度を基準に加速度が1/2となる、すなわち即時点灯領域となるポイントを抽出する。そして、車速とモータ負荷率とに対応する線図で線形補完を滑らかに行える場合の変曲点となる点に対応する車速を、マップ記憶手段により記憶させる格子点に対応する車速とし、これを例えば、5個等に少なく限定している。これにより、マップ記憶手段で記憶させるマップのデータ量を小さくできる。図8に示す発電機用インバータ70に関する閾値設定用としては、車速を0,10,70,180,250km/hの5個の格子点とし、これに対応する複数のモータ負荷率での閾値T−NGの、図8に示すようなデータをマップ記憶手段で記憶させている。また、図11に示す走行モータ用インバータ72に関する閾値設定用としては、車速を0,10,70,130,250km/hの5個の格子点とし、これに対応する複数のモータ負荷率での閾値T−NG´の、図10に示すようなデータをマップ記憶手段で記憶させている。
このような本実施の形態のインバータ過熱警告装置付電動車両によれば、インバータ過熱警告装置は、過熱警告ランプ58と、過熱警告ランプ58によりインバータ過熱を警告させるか否かを判定する車両コントローラ62とを備え、車両コントローラ62は、発電機14または走行モータ16の発生可能な最大トルクに対する発電機14または走行モータ16の許可最大トルク指令値の割合であり、発電機用インバータ70または走行モータ用インバータ72の検出温度が所定温度を超えると減少するモータ負荷率と、車速とに基づいて、過熱警告ランプ58によりインバータ過熱を警告させるか否かを判定する。このため、発電機14用または走行モータ16用のインバータ70,72の温度だけ、またはインバータ70,72の温度に対応するモータ負荷率だけに基づいて過熱警告ランプ58によりインバータ過熱を警告させるか否かを判定する場合と異なり、インバータ70,72過熱に関しては、インバータ70,72過熱により車両の挙動に関する性能がユーザに問題となるほどに変化することに対応する必要な場合にだけ、ユーザにインバータ70,72過熱を警告することができ、通常走行が可能な場合のインバータ70,72過熱の不要な警告をなくせる。この結果、ユーザに不要な不安感を持たせないようにすることができる。
また、車両コントローラ62は、モータ負荷率と車速とに対応して、過熱警告ランプ58によりインバータ70,72過熱を警告させる条件に用いる運転状態に対応する閾値T−NG、T−NG´が設定されたマップを記憶するマップ記憶手段と、モータ負荷率と車速とに基づいて、マップから閾値T−NG、T−NG´を参照し、運転状態がインバータ過熱を警告させる状態にあるか否かを閾値T−NG、T−NG´に基づいて判定する過熱警告判定手段とを有する。また、マップに設定された閾値T−NG、T−NG´は、モータ負荷率と車速とに対応して変更している。また、マップは、低い車速範囲に対応する低車速用マップと、高い車速範囲に対応する高車速用マップとを有し、低車速用マップと高車速用マップとが異なる種類の性能に基づいて設定されており、かつ、低車速用マップの、モータ負荷率と車速とに対応する閾値T−NG、T−NG´は、車両の登坂性能に基づいて設定している。このため、登坂性能が低下している場合に、より瞬時に過熱警告ランプ58によりインバータ70,72過熱を警告させることを行いやすくなる。低車速時には、十分な車両の登坂性能を有することが特に求められるため、ユーザの必要性からより適したインバータ70,72の過熱警告を行うことができる。
さらに、高車速用マップの、モータ負荷率と車速とに対応する閾値T−NG、T−NG´は、車両の加速性能に基づいて設定しているので、加速性能が低下している場合に、より瞬時に過熱警告ランプ58によりインバータ70,72過熱を警告させることを行いやすくなる。高車速時には、十分な車両の加速性能を有することが特に求められるため、ユーザの必要性からより適したインバータ70,72の過熱警告を行うことができる。
なお、本実施の形態では、車両コントローラ62により過熱警告ランプ58を点灯させる場合に、警告ブザー60(図3)を作動させるようにしている。ただし、警告ブザー60を省略して過熱警告ランプ58の点灯のみを行うようにすることもできる。また、過熱警告ランプ58を省略する代わりに、過熱警告ランプ58の点灯処理に対応する条件が満たされた場合に、警告ブザー60を作動させることもできる。また、この場合、過熱警告ランプ58の消灯に対応する処理をなくして、一定時間のみ作動させることもできる。また、過熱警告ランプ58の点灯、消灯の代わりに、ディスプレイに過熱警告の表示を表示、非表示とさせたり、ハザードランプを点滅、非作動にさせることもできる。この場合、ディスプレイ、ハザードランプは、過熱警告部に対応する。
次に、本実施の形態において、過熱警告ランプ58を点灯させ、または消灯させる場合の実施例の2例を説明する。第1の実施例として、走行モータ16(図3)用のインバータ72の温度とモータ負荷率との関係が、上記の図4と同様である場合において、仮にアクセル全開走行、すなわちアクセル開度100%での走行時に、車速70km/hで走行モータ用インバータ72の検出温度が130℃に達したとする。この場合、モータ負荷率が30%に低減され、図10に示したマップでの閾値T−NG´がαとなるため、過熱警告ランプ58は即時点灯状態となる。また、その後、インバータ72温度が正常に復帰し、インバータ72の検出温度が、モータ負荷率の80%を超えることに対応する125℃未満となった場合には、所定時間経過後に走行モータ用インバータ72温度低下による過熱警告ランプ58消灯要求のカウンタがクリアされ、すなわち、第2の消灯要求条件が満たされ、他の消灯要求条件が満たされることを条件に、過熱警告ランプ58が消灯する。
また、第2の実施例として、第1の実施例と同様の場合で、車速130km/hで走行モータ用インバータ72の検出温度が131℃に達したとする。この場合、モータ負荷率が20%に低減され、図10に示したマップでの閾値T−NG´はαとなる。すなわち、この場合には、車両の加速性能上の制約が大きいとされる。このため、過熱警告ランプ58は即時点灯状態となる。これに対して、同じ場合で、車速130km/hで走行モータ用インバータ72の検出温度がモータ負荷率30%を超えることに対応する温度、すなわち、130℃未満の温度になると、モータ負荷率100%の場合に対して加速度が1/2まで低下していない、すなわち、十分な加速性能があるとして、過熱警告ランプ58を点灯させるまでに閾値α+β´に対応する待ち時間を設ける。すなわち、過熱警告ランプ58を瞬時には点灯しにくくする。そして、この待ち時間分、インバータ72温度が負荷率30%であることを継続していた場合には、過熱警告ランプ58を点灯させる。なお、上記の実施の形態において、マップ記憶手段により記憶させていない車速においての閾値を判断する場合には、その車速の両側で設定された2の車速等に対応して線形補完により過熱警告ランプ58の点灯に関する閾値を算出するようにする。
[第2の発明の実施の形態]
また、上記の第1の実施の形態では、閾値設定用のマップを、車速とモータ負荷率とに対応するものとして設定、記憶させていたが、第2の実施の形態として、車速の代わりに、車両要求パワーを用いることもできる。例えば、上記の図8に示した発電機用インバータ70に関する閾値設定用マップにおいて、パワー比{=(発電機14の要求発電パワー)/(車両の要求消費パワー)}が異なる複数種類のマップにおいて、車速の代わりに車両要求パワーを使用する。例えば、パワー比が同じで、発電機14の要求パワーが抑えられるとしても、車両要求パワーが小さい場合には、車両挙動に関する性能に与えられる影響は小さくなる。このため、車両要求パワーが小さい場合に、過熱警告ランプ58の点灯までの待ち時間を長くするように閾値を設定する。
また、この場合、車両コントローラ62は、モータ負荷率と車両要求パワーとに基づいて、過熱警告ランプ58によりインバータ70,72過熱を警告させるか否かを判定する。また、車両コントローラ62は、過熱警告ランプ58によりインバータ70,72過熱を警告させる条件に用いる運転状態に対応する閾値を記憶している。また、車両コントローラ62は、モータ負荷率と車両要求パワーとに対応して、過熱警告ランプ58によりインバータ70,72過熱を警告させる条件に用いる運転状態に対応する閾値が設定されたマップを記憶するマップ記憶手段と、モータ負荷率と車両要求パワーとに基づいて、マップから閾値を参照し、運転状態がインバータ過熱を警告させる状態にあるか否かを閾値に基づいて判定する過熱警告判定手段とを有する。また、マップに設定された閾値は、モータ負荷率と車両要求パワーとに対応して変更されるようにする。また、低車速用マップの、モータ負荷率と車両要求パワーとに対応する閾値は、車両の登坂性能に基づいて設定されるようにし、高車速用マップの、モータ負荷率と車両要求パワーとに対応する閾値は、車両の加速性能に基づいて設定されるようにする。
なお、上記の各実施の形態において、過熱警告ランプ58または警告ブザー60により、インバータ70,72過熱のみを作動により知らせるようにし、発電機14または走行モータ16の過熱は別の過熱警告ランプ等により知らせるようにすることもできる。
10 ハイブリッド車両、12 エンジン、14 発電機(MG1)、16 走行モータ(MG2)、18 クランクシャフト、20 ダンパ、22 動力分割部、24 減速歯車部、26 出力軸、28 サンギヤ、30 リングギヤ、32 ピニオンギヤ、34 キャリア、36 フロントサンギヤ、38 リアサンギヤ、40 ロングピニオンギヤ、42 ショートピニオンギヤ、44 第2リングギヤ、46 第2キャリア、48 第1制動部、50 第2制動部、52 プロペラシャフト、54 ディファレンシャルギヤ、56 後輪、58 過熱警告ランプ、60 警告ブザー、62 車両コントローラ、64 アクセル開度センサ、66 車速センサ、68 モータコントローラ、70 発電機用インバータ、72 走行モータ用インバータ、74 インバータ温度センサ、76 モータ温度センサ。