ところで上述した内作方式では、各モジュールは1または2以上の水処理機器と、前記水処理機器に接続される配管等と、を備えるが、各モジュールに配置される水処理機器や配管等の種類、数等は個々の水処理プラントの仕様によって異なり、必ずしも一様ではない。このため従来の内作方式では、各モジュール内に配置する配管については、現場据付方式の場合と同様に各モジュールに合わせて個別に設計する必要があり、モジュール製作に要する時間や費用の増大を招いていた。
また各モジュール内には、このモジュール内に配置された配管を支持する配管ラックが敷設されており、現場で複数のモジュール同士を接続して水処理プラントを組立てる際には、配管が配管ラックに固定された状態で複数のモジュール同士が互いに接続される。
ここで、異なるモジュールに配置された1対の配管同士はあらかじめ所定の位置で接合されるように配管ラックに固定されているが、従来、複数の配管同士のジョイント位置を正確に規定することは困難であった。また、従来使用されている配管ラックは配管を固定する位置の自由度が少ないため、互いに隣接する1対のモジュールに配置された配管ラック同士のジョイント位置がずれていた場合は、配管の固定位置を変更する操作が大掛かりとなるといった問題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、配管のジョイント位置を容易かつ正確に規定でき、モジュール製作に要する時間や費用を低減できる配管ラックを提供することを目的とする。具体的には、本発明は複数の配管が並べられる配管ラックであって、配管の固定や配管同士の接合を容易に行える配管ラック、この配管ラックを用いた水処理プラント、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は各種プラント、特に水処理プラントに設けられる配管を支持する配管ラックであって、複数の配管を略同一平面上に並べる配管戴置部の周囲にスリットを形成することで、配管を固定する固定具を取り付けるための穿孔を行うことなく、配管戴置部の辺縁の任意の位置で配管を固定できるようにした配管ラックを使用することを特徴とする。より具体的には、本発明は以下を提供する。
(1)複数の配管を並べて戴置する略矩形の配管戴置部と、前記配管戴置部の外縁側に設けられ前記複数の配管を固定する固定部と、を備える略矩形の配管保持部材を有する配管ラックであって、前記配管戴置部と前記固定部との間に、前記配管戴置部の辺縁に沿って延びる隙間が形成されており、前記固定部は、前記複数の配管のそれぞれを前記辺縁に沿った任意の位置で固定して、前記配管保持部材、及び前記配管保持部材に接続され前記配管保持部材の辺縁と直交する方向に延びる支柱と、を備える中枠体と、前記支柱と接続される枠材で構成され前記中枠体を取り囲む略直方体枠状の外枠体と、をさらに備え、前記中枠体は、前記配管保持部材の端縁が前記外枠体から前記外枠体の内側方向に所定の距離で離れた状態で前記外枠体に接続されていることを特徴とする配管ラック。
配管保持部材は、少なくとも二次元に拡がって外縁が略矩形をなす形状であれば特に限定されず、複数の配管を略同一平面上に並べることができる形状の任意の部材で構成できる。例えば、略矩形の平板で構成して略矩形平面状としてもよく、あるいは棒状部材で構成して略矩形枠状としてもよい。平板は、単独で用いてもよく複数の平板を互いに接続してもよい。また「枠状」には枠の内部が空洞の形状のみならず、枠内部に棒状部材等を設けて枠内を縞状または網状等とした形状が含まれるものとする。配管保持部材は互いに対向する1対の面を備え、以下、かかる1対の面の一方であって配管と接する面を「表面」、他方の面を「裏面」と称する。
配管保持部材は、配管が戴置される配管戴置部と、固定具により配管を固定して保持する固定部とを備え、配管戴置部は配管保持部材の内側に形成され、固定部は前記配管戴置部の外縁近傍に設けられる。固定部と配管戴置部とは略同一平面上に設けられ、固定部と配管戴置部との間には、配管保持部材の表面と裏面とを貫通する隙間が配管戴置部の辺縁に沿って設けられる。
隙間は、配管戴置部と固定部とを別部材で構成して固定部を配管戴置部から所定の間隔で離間した状態で配管戴置部に接続することにより形成することができる。具体的には、略矩形枠または略矩形平板で配管戴置部を構成し、この配管戴置部から所定間隔開けた位置に棒状部材で構成した固定部を接合することで隙間を形成できる。
また、配管戴置部と固定部とを同一部材で一体的に構成し、配管戴置部と固定部との間を所定の長さで切り取ることで隙間を形成してもよい。具体的には、長尺状平板の辺縁から所定の距離(例えば10〜30mm程度)内側に入った部分を連続的に切り取って直線状に延びる連続穴を設けてこの連続穴を隙間とし、連続穴の一方の側部を配管戴置部、他方の側部を固定部としてもよい。隙間は、配管戴置部の一辺縁に対して1または2以上、設けてもよい。
配管は配管戴置部から固定部へ延び、配管戴置部と固定部との間の隙間に配管固定用の固定具の端部を挿入することにより、配管の端縁が配管戴置部の辺縁から延出した状態で固定される。すなわち、配管保持部材に設けられた隙間は、配管を固定する固定具を挿通するねじ穴として機能し、隙間は辺縁に沿ってほぼ連続的に延びていることから、本発明に係る配管ラックにおいては、ねじ穴を穿孔することなく配管戴置部の辺縁付近の任意の位置で配管を容易に固定することができる。また、配管の固定位置の変更も容易であるため、他の配管ラックに固定された配管とのジョイント位置がずれていた場合の位置修正が簡易に行える。
さらに隙間は配管戴置部の辺縁に略平行に延びることから、隙間の位置を基準として配管の端縁をあらかじめ定めた長さで突出させることが容易となる。このため、ほぼ同一の高さに並べられた複数の配管が他の配管と結合されるためのジョイント位置を容易に規定できる。
(1)記載の発明では、配管保持部材を支える支柱を設けて中枠体を構成し、この中枠体を略直方体枠状の外枠体に接続するため、配管ラックを容易に移動させることができる。また、配管保持部材に並べた配管の端縁を外枠体の位置まで突出させることにより、配管の端縁(すなわちジョイント口)の位置を容易に揃えることができる。なお、中枠体には配管保持部材を1または2以上設けることができるが、複数の配管保持部材を設ける場合、配管保持部材は同一形状とし、複数の配管保持部材を支柱が延びる方向に沿って多段に配置する。
(2)同一形状の複数の前記外枠体が接続された外枠連結体をさらに備える(1)に記載の配管ラック。
(2)記載の発明では、形状を同一にした外枠体が複数、互いに接続される。複数の外枠体は形状が同一であるため、互いに隣接する1組の外枠体の一方を構成する枠材を、この枠材に隣接し他方の外枠体を構成する別の枠材と接合することで、前記1組の外枠体同士を容易に接合できる。また、配管ラックに配置した配管の端縁を外枠体の外縁位置まで突出させることで、別々の外枠体に配置された配管同士のジョイント位置をさらに容易に規定できる。
(3)互いに隣接する1組の前記外枠体の枠材同士を挟んで連結する接合具により、前記複数の外枠体が互いに連結されている(2)に記載の配管ラック。
(3)記載の発明では、枠材同士を挟んで接合する接合具を用いることにより、枠材が延伸する方向の任意の位置に接合具を取り付けることができる。このため、互いに隣接する外枠体に配置された配管同士をジョイントさせる際、外枠体同士を接合する接合具が障害となることを回避できる。
(4)前記外枠体の互いに対向する両端側にそれぞれ取り付けられる1対の脚体をさらに備える(1)から(3)のいずれかに記載の配管ラック。
(4)記載の発明では、外枠体に脚体を取り付けることで、配管ラックを配置する高さを自由に設定できる。
(5)水処理機器と、前記水処理機器に接続される複数の配管と、を含む水処理プラントであって、前記複数の配管は、(1)から(4)のいずれかに記載の配管ラックに保持されている水処理プラント。
(6)水処理機器と、前記水処理機器に接続される複数の配管と、が配置された複数のモジュールを製造するモジュール製造工程と、前記複数のモジュール同士を接続することにより水処理プラントを製造する組立工程と、を含む水処理プラントの製造方法であって、前記モジュール製造工程において、前記複数の配管を(1)から(4)のいずれかに記載の同一形状の複数の配管ラックに配置することを特徴とする水処理プラントの製造方法。
従来の水処理プラントにおいては、個々の仕様に合わせて配管が配置されていたことに対して、(5)〜(6)記載の発明では同一形状の複数の配管ラックに配置する。本発明では、配管ラックは形状が一定であるため配管の配置位置の決定が容易である。特に、(1)〜(4)のいずれかに記載の配管ラックでは、配管戴置部辺縁の任意の位置で配管を固定でき、配管の固定位置の自由度が高くできるため、配管同士の接合も容易となる。
本発明によれば、配管のジョイント位置を容易かつ正確に規定でき、配管の配設位置の設定や微調整を容易に行なうことができる。このため、本発明に係る配管ラックを用いることにより、水処理プラント等の各種プラントを安価かつ短期間で製造できる。
以下、図面を用いて本発明について詳細に説明する。以下の説明において同一部材には同一符号を付し、説明を省略または簡略化する。また、上下左右前後といった位置を示す用語は、本明細書における説明のために作成された図面を基準として便宜的に使用されるものに過ぎず、本発明に係る配管敷設用構造体の位置関係を規定するものではない。
図1は、本発明の第1実施形態に係る配管ラック1を構成する中枠体10の全体斜視図である。本実施形態では中枠体10は、実質的に同一形状の4つの配管保持部材110と、6本の支柱151と、を備える。配管保持部材110は略長方形枠状であり、支柱151が配管保持部材110の4つの角のそれぞれと、各長辺のほぼ中央部分に取り付けられることにより、本実施形態の中枠体10は、4つの配管保持部材110がほぼ水平な状態で並べられた4段構成とされている。
図2は、最上段に配置された配管保持部材110を、支柱151の一部とともに示した図である。この図に示すように各配管保持部材110は、長方形枠状の戴置枠112と、互いに略平行な1組の長固定材113Nおよび互いに略平行な1組の短固定材113Mと、直線状の3本の間材115と、で構成されている。
長固定材113Nと短固定材113Mとは支柱151を介して互いに直交し、戴置枠112の4辺のそれぞれに沿って設けられ、固定部130を形成する。また、戴置枠112と間材115とは略矩形枠状の配管戴置部120を形成している。長固定材113Nは戴置枠の長辺112Nに略平行で、本実施形態では長さは約600cmである。一方、短固定材113Mおよび間材115は戴置枠の短辺112Mに略平行で、本実施形態ではこれらの長さはいずれも約230cmである。
本実施形態では戴置枠112は強度を高めるため、断面形状が略L字状の鋼材(以下、「L型鋼材」)で構成されている。一方、長固定材113Nおよび短固定材113Mは戴置枠112に比べれば強度が低くてよいため、本実施形態では平板状の鋼材(以下、「板状鋼材」)で構成されているが、配管保持部材110を構成する部材はこれらの鋼材に限定されない。例えば、強度が必要な場合はL型鋼材に代えて断面略U字状の鋼材(以下、「溝型鋼」)や断面四角形の角材等を用いることもできる。なお、平板状の鋼材を用いる場合で強度が必要であれば、角材等を用いる場合に比べて板厚を多くしてもよい。
長固定材113Nおよび短固定材113Mはそれぞれ、隙間Sを有した状態で戴置枠112に接合されている。図3は、図1において符号Aで示す部分を含む配管戴置部120の模式図であり、取り付け具140によって短固定材113Mが戴置枠の短辺112Mに取り付けられている状態を示す。本実施形態では短固定材113Mは、戴置枠の短辺112Mの外縁から延伸するように戴置枠112に取り付けられている。なお、本実施形態において戴置枠112の水平方向の幅H1は約5cmで、短固定材113Mの幅H2は約3cmである。図3において上側となっているこれらの鋼材の一面は配管Pが戴置される表面F、その反対面が裏面Bとなり、隙間Sは戴置枠112の各辺の一端側から他端側に連続的に延びている。
図4は、図1において符号Aで示す部分の部分拡大図であり、配管Pを固定具131で固定した状態を配管保持部材110の表面F側から見た状態を示し、図5は裏面B側から見た状態を示す。固定具131は略U字状の線状部材で、両端縁は雄ねじになっており、配管保持部材110の表面Fに戴置された配管Pを線状部材で挟んだ状態で両端縁を隙間Sに差し込み、配管保持部材110の裏面B側でナットNを取り付けることにより、配管Pを固定する。
図2〜4に示すように、配管保持部材110に設けられた隙間Sは略矩形状の配管戴置部120の辺縁に沿って延びている。このように本発明では配管戴置部120と固定部130との間は、取り付け具140が取り付けられている部分を除いて空隙になっている。このため本発明においては、配管戴置部120の辺縁を構成する戴置枠112に沿った任意の位置に固定具131のねじを差し込んで配管Pを固定できる。さらに、ナットNを緩めるだけで一度固定した配管Pの固定位置を変更できるため、配管Pの固定位置の微調整も容易となる。
また、隙間Sは配管戴置部120の辺縁に略平行に設けられているため、配管Pの端縁を隙間Sの位置を基準として所定の長さで配管戴置部120の外側に延出させることで、配管Pと他の配管とのジョイント位置を容易に規定できる。隙間Sおよび固定部130は少なくとも配管戴置部120の4辺のいずれかひとつに沿って設ければよい。しかし配管Pのジョイント位置の自由度を高めるためには、互いに略平行な1対の辺(例えば1対の長辺112N、または1対の短辺112M)のそれぞれに沿って設けることが好ましく、本実施形態のように4辺のそれぞれに沿って設けることがさらに好ましい。
図6は、本発明の第2実施形態に係る配管ラック2の全体斜視図である。配管ラック2は、中枠体10に加え、中枠体10を取り囲む略直方体枠状の外枠体20を備える点で第1実施形態に係る配管ラック1と異なる。図7は外枠体20の全体斜視図であり、この図に示すように外枠体20は、1対の略長方形枠状をなす側面枠211、212と、略正方形枠状をなす実質的に同じ形状の3つの支持枠221〜223と、で構成され、側面枠211、212および支持枠221〜223は強度を高めるため、矩形断面を有する角材で構成されている。
1対の略同一形状の側面枠211および側面枠212は互いに略並行に並べられ、側面枠211、212の長辺の両端縁から約50cm入った部分に支持枠221および支持枠223がそれぞれ1つずつ取り付けられ、互いに対向する側面枠211および側面枠212の長辺同士がこれら支持枠221、223により接続されている。また、互いに対向する側面枠211および側面枠212の長辺の中央部分同士は支持枠222により互いに接続されている。なお、以下の説明において、図7において手前に描かれた側面枠211を「正面側面枠」、奥の側面枠212を「背面側面枠」、右側の支持枠221を「右側支持枠」、左側の支持枠223を「左側支持枠」、右側支持枠221と左側支持枠223との間に位置する支持枠222を「中央支持枠」と称して区別する場合がある。
図6に示すように支持枠221〜223の幅で規定される外枠体20の奥行きW2は、中枠体10の奥行きW1より長い。一方、右側支持枠221と左側支持枠223との間の距離L1は、側面枠211、212の長辺の長さで規定される外枠体20の長さL2より短いが、中枠体10の長さL1と実質的に同じである。
中枠体10は、支柱151が支持枠221〜223に取り付けられることにより外枠体20に接続され、配管保持部材110の端縁は外枠体20から所定の距離で離れた状態に位置する。具体的には、配管保持部材110の長手方向両端縁(短固定材113Mが設けられている側にある端縁)は、(L2−L1)÷2の長さで外枠体20の内側に入っており、配管保持部材110の短手方向両端縁(長固定材113Nが設けられている側にある端縁)は、(W2−W1)÷2の長さで外枠体20の内側に入った部分に位置する。
この配管ラック2では、図6に示すように配管の端縁を配管保持部材110の端縁から外枠体20の位置まで突出させることで配管のジョイント位置を容易に規定できる。具体的には例えば図6に示すように、配管保持部材110の長手方向に略平行に延びる2本の配管P1、P2を配管ラック2に収容し、直線状の一方の配管P1の両端縁を配管保持部材110の長手方向の両端縁から外枠体20の側面枠211、212の端縁の位置まで突出させる。また、L字状の別の配管P2は一端縁を配管保持部材110の長手方向の一端縁から側面枠211、212の端縁の位置まで突出させ、他端縁を配管保持部材110の短手方向の端縁から側面枠212の枠面の位置まで突出させる。
このように本発明では外枠体20の位置を目標として配管P1、P2の端縁を配管保持部材110から外枠体20まで延伸させることで、配管のジョイント位置を容易に規定し、前記配管を他の配管ラックに固定された配管と容易にジョイントさせることができる。
図8は、本発明の第3実施形態に係る配管ラック3を模式的に示した斜視図である。配管ラック3は、2つの同一形状の外枠体20を含む外枠連結体40と、この外枠連結体40を支える2種類の脚体である小脚体30Sおよび大脚体30L(以下、これらをまとめて「脚体30」と称する場合がある)と、で構成されている。外枠体20は、図6の外枠体20と同じ構成であり外枠体20内部には図1と同様の構成の中枠体10が接続されているが、図8では中枠体10を省略して図面を簡略化している。また以下において、2つの外枠体20を区別する場合は、図面左側の外枠体20を「左外枠体20L」、図面右側の外枠体20を「右外枠体20R」と称する。
図9は小脚体30Sの全体斜視図であり、小脚体30Sは略長方形枠状の支持台310と、この支持台310の長手方向の両端縁に取り付けられた1対の略同一形状の脚部320と、を備える。支持台310の長さW2は、外枠体20の奥行きW2に等しく、支持台310の幅W3は、外枠体20の長さL2と中枠体10の長さL1の差(L2−L1)に等しい。一方、大脚体30Lは、小脚体30Sの支持台310の幅W3を2倍とした以外は小脚体30Sと同様の構成である。図8に示すように、小脚体30Sは単一の外枠体20の一端縁を支持するために用いられ、互いに隣接する1対の外枠体20同士の両方を支持する場合は大脚体30Lが用いられる。
外枠連結体40は、左外枠体20Lと右外枠体20Rとを長手方向の端縁同士が当接するようにして、接合具50で連結されることにより構成されている。また、外枠連結体40は、外枠体20の枠材と脚体30の枠材とが、接合具50で連結されることにより、脚体30上に支持されている。かかる配管ラック3は、脚体30の脚部320の高さを変更することで任意の高さに配管を配置することができる。また、図8に示すように外枠連結体40に含まれる外枠体20の個数や接続形態を変更することで、配管の長さや配置を容易に設定できる。
例えば、外枠連結体40の端縁に位置する左外枠体20Lの長手方向の左側端縁には大脚体30Lが接続され、他の外枠体を左外枠体20Lに接続して支持できるように構成されている。同様に、右外枠体20Rに接続された小脚体30Sに代えて大脚体30Lを用いれば、右外枠体20R側に別の外枠体を容易に連結できる。
図10は、本発明の第4実施形態に係る配管ラック4を模式的に示した斜視図である。配管ラック4は、5つの同一形状の外枠体20を含む外枠連結体41と、この外枠連結体41を支える2種類の小脚体301Sおよび大脚体301Lと、を備える。外枠体20は、図6に示す外枠体20と同一構成で、5つの外枠体20の内側にはそれぞれ、図1に示す中枠体10がひとつずつ接続されている。
小脚体301Sは、図8の小脚体30Sとほぼ同一の構成であるが、脚部320の下端同士を1対の棒状部材で接続した点が小脚体30Sと異なる。同様に大脚体301Lも脚部320の下端同士が1対の棒状部材で接続されている点以外は、図8の大脚体30Lと同様の構成である。
第4実施形態の配管ラック4には、5つの外枠体と、それぞれ3つずつの小脚体301Sおよび大脚体301Lとが含まれている。配管ラック4の外枠体41は、5つの外枠体20のうち3つが長手方向の端縁同士で接するように直列に接続された部分と、残りの2つが長手方向の端縁同士が接するように互いに接続された部分とからなる平面視略L字状である。本実施形態では、配管保持部110は略矩形の配管戴置部120の全周囲に隙間Sと固定部130とを備える構成となっていることから、外枠体20には長手方向、短手方向のどちらの端面においても他の外枠体20を連結させることができる。
このように本発明では、中枠体10とこの中枠体10を取り囲む外枠体20とを1つのユニットとし、このユニットを1または2以上組み合わせて様々な仕様の配管ラックを構成できる。かかる配管ラックには配管を配設するとともに、前記配管に1または2以上の水処理機器を接続することで、水処理プラントの構成単位となるモジュールを構成する。
複数のモジュールに含まれる配管は、同一形状の配管ラックに配設されていることから、モジュール同士を接続する際に配管同士を接続させる位置の決定が容易である。特に前記実施形態に係る中枠体10を用いれば、中枠体10に固定した配管の位置変更が容易であり、モジュール同士を容易に連結させることができる。また、中枠体10を外枠体20に接続すれば、モジュールの移動が容易である上、異なるモジュールの配管同士のジョイント位置を正確に規定することがさらに容易となる。
ここで図11を用いて配管同士を接続する方法について説明する。図11は、配管を保持する図6の外枠体20を2つ用意し、一方を図8の左外枠体20L、他方を右外枠体20Rとして左外枠体20Lの配管P1と右外枠体20Rの配管P3を当接させた状態を示す断面模式図である。図11に示すように、配管P1は、左外枠体20の側面枠212の右側端縁の位置まで延伸させるようにして、左外枠体20Lの内側の中枠体10Lに保持される。一方、配管P3は右外枠体20Rの側面枠212Rの左側端縁の位置まで延伸させるようにして、右外枠体20Rの内側の中枠体10Rに保持される。左外枠体20Lおよび右外枠体20Rとは同一形状であるため、左外枠体20Lの右側端縁と右外枠体20Rの左側端縁とを当接させることにより、配管P1と配管P3との端縁とを当接させて配管P1と配管P3とを容易に接続できる。
次に、図12〜図14を用いて左外枠体20Lと右外枠体20Rとの連結方法、および外枠体20と脚体30との接合方法について説明する。図12は、図8の左外枠体20Lと右外枠体20Rとの連結部分、および外枠体20と脚体30との接合部分(符号Bで示す破線で囲った部分)を正面側から見た拡大模式図である。図13は、図12の線Y−Y矢視模式図、図14は接合具50による接合状態を示す拡大模式図である。
図12に示すように、左外枠体20Lと右外枠体20Rとは4個の接合具50を用いて4箇所で互いに連結されている。外枠体20は、長手方向の両端縁のそれぞれで4箇所ずつ、合計8箇所、8個の接合具50を用いて2個の脚体30と接合されている。各接合具50は、図14に示すように同種の1対の平板51と、同種の1対のボルト53およびナット54と、で構成されている。図14において溝型鋼材Kは、平板51の間に挟み込まれ、鋼材Kの両側において平板51に設けたねじ穴(図示せず)に差し込んだボルト53がナット54で固定されることにより、鋼材K同士が当接した状態で固定され、互いに接合される。
かかる接合具50は、外枠体20および脚体30を構成する棒状の枠材同士を挟んで接合するため、外枠体20および脚体30を構成する枠材の任意の位置に取り付けることができる。従って、かかる接合具50を用いることにより、接合具50が配管同士の接続の障害となることを回避し、外枠体20同士または外枠体20と脚体30とを簡易に連結することができる。
このように、本発明に係る配管ラックによれば、前記配管ラックに固定した配管をイオン交換装置、紫外線酸化装置、限外膜濾過装置等の水処理機器に接続してモジュールを製造し、複数のモジュールを相互に連結することで水処理プラントを簡易に組立てて製造できる。本発明に係る配管ラックの外枠体は互いに簡易に連結でき、また、別々の外枠体に固定した配管同士のジョイント位置の設定や変更も容易であることから、本発明においては水処理プラントの設計に際しては、配管をあらかじめ配管ラックに収容した後、外枠体同士を適宜、組み合わせることにより、様々な仕様の水処理プラントを容易かつ安価に製造することができる。
図15は、本発明に係る配管ラック2Aを複数、用いて構成された水処理プラント9Pの全体像を示す模式図であり、図16は、図15の破線で囲った部分を拡大した拡大模式図である。複数の配管ラック2Aは実質的に同一の形状で、図6に示す配管ラック2と実質的に同一の構成を有するが、これらの図では図示を簡略化している。
図16に示された水処理プラント9Pの部分には、12台の配管ラック2Aと、5台の水処理機器3Pと、2槽の貯水槽7Pとが配置されている。各配管ラック2Aには、異なる形状の多数の配管5Pが保持されているが、以下では、個々の配管を区別せず「配管5P」と称することとする。同様に、水処理機器3Pの仕様も異なっており、例えば、イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂塔、活性炭塔、または脱炭酸塔等で構成されているが、以下の説明ではこれらを個別に区別せず、「水処理機器3P」と総称する。
また、図16に示された水処理プラント9Pの部分(以下、「第1部」と称する)には、配管ラック2Aから延出した配管5Pを保持するため、配管ラック2Aとは大きさが異なる複数の配管ラック2Bがさらに設けられている。これらの配管ラック2Bは、中枠体に設けられる配管保持部材の数および大きさが異なる以外は配管ラック2Aと同様の構成であり、それぞれ、外枠体と、配管保持部材を備える中枠体を備えているが、図15、図16では図示を簡略化している。水処理プラント9Pでは配管5Pは主として配管ラック2Aにより支持され、配管ラック2Bは補助的に設けられるものであることから、以下、配管ラック2Aを中心にして水処理プラント9Pの第1部について説明する。
水処理プラント9Pの第1部には、長手方向の端縁同士で接するように4つの配管ラック2Aが直列に接続された列が上下に積層された部分(以下、「4列積層部分」)4Rと、長手方向の端縁同士で接するように2つの配管ラック2Aが直列に接続された列が上下に積層された部分(以下、「2列積層部分」)2Rと、がある。なお、4列積層部分4Rの下側の配管ラック2Aは、両端に位置する配管ラック2Aしか図面には現れていない。
2列積層部分2Rの片側の配管ラック2Aは、4列積層部分4Rの一端縁の配管ラック2Aの側面に接続され、4列積層部分4Rと2列積層部分2Rとで構成された部分は、図10の配管ラック4と同様に平面視略L字型となっている。
各配管ラック2Aには、複数の配管5Pが並べて保持され、配管5Pは外枠体20から延出する。配管ラック2Aから延出した配管5Pの端部は、水処理機器3P、貯水槽7P、または隣接する他の配管ラック2Aに保持された配管5Pの端部と接続される。補助的に設けられる配管ラック2Bは、配管ラック2Aと水処理機器3Pまたは貯水槽7Pとの間に設けられ、配管ラック2Aから延出した配管5Pを保持する。
このように、配管ラック2Aに配管5Pを配置し、配管5Pの端縁を配管ラック2Aから延出させて、配管ラック2Aの外に配置した水処理機器3Pと適宜接続することで、モジュールを構成できる。モジュールは、相互に接続され、水処理プラント9Pが構成される。水処理プラント9Pでは、配管5Pにより接続された複数の水処理機器3Pで被処理水が処理され、処理水として純水等が得られる。
本発明では各モジュールを構成する配管ラック2Aとして、少なくとも中枠体10と外枠体20とを有し、実質的に同一構成の配管ラック2Aを統一的に使用することで、配管ラック2A同士を隣接させて他のモジュールと接合して簡易に水処理プラント9Pを構築できる。また、かかる配管ラック2Aを用いて構成されたモジュールは互いに接続または取り外すことが簡単であるため、設備の増設または削減が容易となる。