JP4830263B2 - 高耐圧絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ - Google Patents
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Description
IGBTは当初、家電、交通、産業分野のモータ制御用デバイスとして縦形構造の個別素子として盛んに開発されてきた。最近では、IGBTの動作を制御する制御回路をIGBTと同一チップ上に搭載した、いわゆるパワーICの市場拡大により、パワーICへの搭載を目的とした横形IGBTの開発も活発になっている。
図11は、一般的な高耐圧のnチャネル形横形IGBTの要部断面図である。尚、導電形を反転することによりpチャネル形横形IGBTとなる。また図には動作を説明するための電子電流Ieと正孔電流Ihを示した。
n形半導体基板あるいはn形エピタキシャル層などのn形半導体層1の表面にn形バッファ層11とp形ベース層2をある距離を設けて形成する。この距離は素子に要求される耐圧に応じて決定される。そして、n形バッファ層11内にはコレクタ層12を、p形ベース層2内にはp形コンタクト層3を、いずれも高不純物濃度のp形拡散層で形成する。また、p形ベース層2の表面層にはn形エミッタ層4が高不純物濃度の拡散層で形成される。
p形コレクタ層12にはコレクタ電極13が接続し、またp形コンタクト層3およびn形エミッタ層4の一部にエミッタ電極6が接続する。エミッタ電極6にはエミッタ端子Eが接続し、コレクタ電極13にはコレクタ端子Cを接続し、ゲート電極7にはゲート端子Gが接続する。
エミッタ端子Eに対してゲート端子Gにしきい値電圧以上の電圧を与えるとゲート絶縁膜8直下のp形ベース層2の表面にチャネル5が形成され、これを介しn形エミッタ層4から多数キャリアである電子がn形半導体層1に注入されて電子電流Ieが流れる。そして、p形コレクタ層12に流入する電子電流によって少数キャリアである正孔がn形バッファ層11を介してn形半導体層1に注入され、正孔電流Ihが流れ、n形半導体層1が伝導度変調する。これがIGBTのオン動作である。
一方、ゲート端子Gに与えていたゲート電圧をしきい値電圧未満までに下げるとゲート絶縁膜8直下のチャネル5が消失し、電子電流Ieの注入が停止する。これにより、IGBTをオフさせることができる。
図12は、図11のnチャネル形横形IGBTのラッチアップ現象を説明する図である。
IGBTがオン状態になるとコレクタ領域14から少数キャリアである正孔がn形半導体層1に注入され正孔電流Ihが流れる。この正孔電流Ihはn形半導体層1−p形ベース層2−p形コンタクト層3−エミッタ電極6の経路でエミッタ端子Eに流れる。正孔電流Ihがp形ベース層2を流れる時に、n形エミッタ層4直下のp形ベース層2の横方向抵抗Rbによって電圧降下が発生し、この電圧降下によってn形エミッタ層4とp形ベース層2のpn接合が順バイアスされる。この順バイアス電圧が0.6V以上になると、n形エミッタ層4からp形ベース層2へ電子が注入され、電子流ILeがn形エミッタ層4−p形ベース層を経由してn形半導体層1に流れ込み、p形コレクタ層12/n形半導体層1/p形ベース層2/n形エミッタ層4で構成される寄生サイリスタがオンすることになる。これがIGBTのラッチアップ現象である。
ラッチアップの発生を防止するためにはp形ベース層2の横方向抵抗Rbによる電圧降下を抑え、n形エミッタ層4とp形ベース層2のpn接合が0.6V以上に順バイアスされないようにする必要がある。n形エミッタ層4とp形ベース層2のpn接合の順バイアス電の上昇を抑える手法として、n形エミッタ層4のパターンを最適化する方法がある。以下、これについて説明する。
図13は、高耐圧横型IGBTの平面パターンを示す図である。n形ドリフト層17が直線箇所と曲線箇所で構成され、蛇行したパターンとなっている。曲線箇所はエミッタ・ゲート領域9がドレイン領域14で囲まれたエミッタコーナー15とドレイン領域14がエミッタ・ゲート領域9で囲まれたコレクタコーナー16がある。X−X線で切断した要部断面図が図11である。
このパターンではn形エミッタ層4は高濃度拡散層でストライプ状に形成されている。尚、p形コンタクト層3はn形エミッタ層4に重なるようにn形エミッタ層4の下部領域まで形成される。このn形エミッタ層4のパターンは最も一般的であり、このパターンでは前記のpn接合の順バイアス電圧の上昇で、ラッチアップが発生しやすい。そこで、ラッチアップ対策した例が特許文献1に記載されており、それを図14の横形IGBTに適用した場合のパターンについて説明する。
この横型IGBTではn形エミッタ層4は高濃度拡散層44と高濃度拡散層45で構成され、高濃度拡散層45は分割形成され、この分割された高濃度拡散層45に挟まれて高濃度層44が形成されている。エミッタ電極6は高濃度拡散層44に接触し、高濃度拡散層45には接触しない。また、p形コンタクト層3の平面形状は直線でなく櫛の歯状に入り組んでおり、高濃度拡散層44の先端部がp形コンタクト層3の先端部に囲まれるように形成されている。尚、高濃度拡散層44と高濃度拡散層45は同一条件で形成される。
このパターンの特徴は、電子電流はエミッタ電極6と非接触のn形エミッタ層4を構成する高濃度拡散層45のみに流れ、その時、高濃度拡散層45の横方向抵抗Reにより高濃度拡散層45の先端部の電位を上昇させるところにある。この電位上昇によりp形ベース層2とn形エミッタ層4のpn接合電圧の上昇が抑えられ、ラッチアップが起こりにくくなる。また、このパターンではエミッタフォロア構造となるため、IGBTの飽和電流を抑える効果もある。
図17および図18は、ラッチアップ対策した横型IGBTの構成図であり、図17は要部平面図、図18(a)は図17のX−X線で切断した要部断面図、図18(b)は図17のY−Y線で切断した要部断面図、図18(c)は図17のZ−Z線で切断した要部断面図である。図17はゲート酸化膜8とエミッタ電極6とゲート電極7は省略されており、n形半導体層1の表面に形成された拡散層のみを示している。
p形ベース層2内に高濃度拡散層44で形成されたn形エミッタ層4が短冊状に形成され、n形エミッタ層4はp形コンタクト層3によって分割される。分割されたn形エミッタ層4同士の間隔は要求特性によって調整される。このパターンではゲート電極7に対してp形コンタクト層3がn形エミッタ層4と並列に配置されるため、突き出したp形コンタクト層3からn形ドリフト層に蓄積した正孔を効果的に引き抜くことができて、ラッチアップの発生を抑えることができる。
また、例えば特許文献3では、絶縁ゲート形半導体装置のオン抵抗を増大させることなく、アバランシェ耐量やラッチアップ耐量を向上させるために、n形エミッタ層のチャネル側に低濃度拡散層を形成して、寄生トランジスタをオンしにくくすることが報告されている。
このラッチアップの発生を防止するためには、前記したように、n形エミッタ層とp形ベース層で形成される接合の電位上昇をいかに抑えるかが鍵となる。そのため、n形エミッタ層のパターンを工夫し、この領域での横方向抵抗を持たせる手法が考案されている。しかし、これらの手法ではn形エミッタ層が高濃度拡散で形成されるため、横方向抵抗を上げるためにはエミッタ電極との非接触面積を増やす必要がある。これはn形エミッタ層のパターン面積を増加させることになり、素子面積の増加をもたらす結果となる。
前記高濃度拡散層に前記エミッタ電極が接触し、前記低濃度拡散層に前記エミッタ電極が接触しない構成とする。
また、前記第1導電形半導体層の表面層に前記第2導電形ベース層から離して形成された第2導電形コレクタ層と、該第2導電形コレクタ層に接触するコレクタ電極とを有するとよい。
また、前記第1導電形半導体層の表面層に前記第2導電形ベース層と離して形成された第1導電形バッファ層と、該第1導電形バッファ層の表面層に形成された前記第2導電形コレクタ層と、該第2導電形コレクタ層に接触するコレクタ電極とを有するとよい。
また、前記第1導電形半導体層の裏面側の表面層に形成された第1導電形バッファ層と、該第1導電形バッファ層の表面層に形成された前記第2導電形コレクタ層と、該第2導電形コレクタ層に接触するコレクタ電極とを有するとよい。
IGBTのラッチアップを防止するためには、n形エミッタ層とp形ベース層で形成される接合の電位上昇を抑える必要があり、これを実現する方法としてn形エミッタ層の抵抗を大きくする手法がある。そこで本発明では、n形エミッタ層の抵抗を増加させるためにn形エミッタ層を低濃度拡散層と高濃度拡散層の2つの拡散層で構成する。すなわち、エミッタ電極と接触する部分とその近傍には高濃度拡散層を形成し、その他の部分を低濃度拡散層で形成する。これにより、n形エミッタ層の横方向抵抗を少ない形成面積で増加させることが可能となる。また、n形エミッタ層においてラッチアップが発生する部分は低濃度拡散層で形成するため、MOS電流の増加とともにこの部分での電圧降下も上昇する。よって、n形エミッタ層とp形ベースコンタクト層の接合電位の上昇を素子電流の増加に応じて効果的に抑えることができる。以上により、IGBTのラッチアップ耐量向上を図ることができる。
この構成とすることにより、少ない形成面積でn形エミッタ層の横方向抵抗を増加させることが可能となり、その結果、少ない形成面積でラッチアップ耐量を向上させることができる。
以下の説明では、従来構造と同一部位には同一の符号を付した。
n形半導体基板あるいはn形エピタキシャル層などの比抵抗5〜10Ω・cm程度のn形半導体層1の表面に不純物濃度1013cm-2程度のn形バッファ層11と不純物濃度3×1013cm-2程度のp形ベース層2をある距離を設けて形成する。この距離は素子に要求される耐圧に応じて決定される。そして、n形バッファ層11内には不純物濃度3×1015cm-2程度のコレクタ層12を、p形ベース層2内にはp形コンタクト層3を、いずれも高不純物濃度のp形拡散層で形成する。p形ベース層2の表面層にはn形エミッタ層4が高濃度拡散層46と高濃度拡散層46より不純物濃度の低い低濃度拡散層47で形成される。高濃度拡散層46は不純物濃度5×1015cm-2程度で形成され、低濃度拡散層47は不純物濃度1013cm-2程度で形成される。低濃度拡散層47は分割され、この分割された低濃度拡散層47同士に挟まれて高濃度拡散層46が形成され、この高濃度拡散層46のゲート電極側の先端部はp形コンタクト層3内に形成されている。p形コンタクト層3はp形ベース層2に比べ不純物濃度が高くゲート電圧が印加されても反転してチャネルとならないため、高濃度拡散層46とp形ベース層2との間に形成されるp形コンタクト層3は反転防止層の役割を果たす。高濃度拡散層46の低濃度拡散層47に隣接する側面は低濃度拡散層47と接続されるように形成される。
また、p形コンタクト層3およびn形エミッタ層4の一部にエミッタ電極6が接続し、p形コレクタ層12にはコレクタ電極13が接続する。エミッタ電極6にはエミッタ端子E、コレクタ電極13にはコレクタ端子C、ゲート電極7にはゲート端子Gがそれぞれ接続する。
図3および図4は、図1および図2の高耐圧横形IGBTにおけるラッチアップの発生を抑制する様子を説明する図で、図3は図1のa−a線で切断した要部断面図、図4は図3のn形エミッタ層とp形コンタクト層とp形ベース層の拡大図である。
図3ではn形エミッタ層4が高濃度拡散層46と低濃度拡散層47の2つの拡散層で形成されている点が図11と異なる。ラッチアップのトリガ電流となるホール電流Ihはp形ベース層2の横方向抵抗Rbを通り、p形コンタクト層3を経由してエミッタ電極6に流れ込む。
そして、従来技術のようにn形エミッタ層4を高濃度拡散層44、45だけで形成した場合に比べて、n形エミッタ層4での電圧降下をより大きくすることが可能となり、横方向抵抗Reを大きくするためのパターン面積を増加させる必要はない。これは、素子面積の増加を抑える効果をもたらす。
パワーICへ適用する高耐圧横形IGBTに本発明を適用する場合ではこの低濃度拡散層47を、制御回路を構成するCMOSのLDD(Light Doped Drain)層の形成と同時に形成することが可能である。
前記したように、図1のようなパターンでn形エミッタ層を高濃度拡散層46と低濃度拡散層47で形成することで、n形エミッタ層4の横方向抵抗Reを、パターン面積を増やすことなく大きくすることができる。また、MOS電流の増加とともにn形エミッタ層4の電圧降下をより効果的に上昇させることができ、素子のラッチアップを防止することができる。
図1との違いは、p形コンタクト層3が入り組んでいないことと、n形エミッタ層4を構成する高濃度拡散層46の先端部がp形反転防止層33内に形成されている点である。
この場合も高濃度拡散層46の先端部のp形反転防止層33にはチャネルが形成されないため、電子電流Ieは低濃度拡散層47を介してチャネル5に流れるため、第1実施例と同様の効果が得られる。
図1との違いは、高濃度拡散層46が低濃度拡散層47より引っ込んでいる点である。この場合も第1実施例と同様の効果が得られる。
図1と比べると低濃度拡散層47の先端部の角部がp形コンタクト層3で隠れなくなる分だけ、先端部の長さが長くなり、オン抵抗が多少小さくなる。
尚、縦型IGBTの場合も、横型IGBTと同様に、耐圧が比較的低い場合にはn形バッファ層は形成しない場合もある。本実施例は第1実施例を高耐圧縦型IGBTに適用したものであるが、第2実施例、第3実施例においても、高耐圧縦型IGBTに適用することも可能である。
2 p形ベース層
3 p形コンタクト層
3a p形コンタクト層端
4 n形エミッタ層
5 チャネル/チャネル形成箇所
6 エミッタ電極
6a エミッタ電極端
7 ゲート電極
8 ゲート絶縁膜
10 LOCOS酸化膜
11 n形バッファ層
12 p形コレクタ層
13 コレクタ電極
17 n形ドリフト層
33 p形反転防止層
46 高濃度拡散層
47 低濃度拡散層
E エミッタ端子
G ゲート端子
C コレクタ端子
Ie 電子電流
ILe 電子流
Ih 正孔電流
Rb 横方向抵抗(p形ベース層)
Re 横方向抵抗(n形エミッタ層)
Claims (9)
- 第1導電形半導体層の表面層に選択的に形成された第2導電形ベース層と、該第2導電形ベース層の表面層に選択的に形成された第1導電形エミッタ層と、該第1導電形エミッタ層と前記第1導電形半導体層に挟まれた前記第2導電形ベース層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを有する絶縁ゲート形バイポーラトランジスタにおいて、
前記第1導電形エミッタ層が高濃度拡散層と該高濃度拡散層より不純物濃度の低い低濃度拡散層の2つの拡散層で形成され、
前記低濃度拡散層はチャネル幅方向に分割されて配置され、この分割された低濃度拡散層同士に挟まれて前記高濃度拡散層が配置され、
前記ゲート電極側に位置する前記高濃度拡散層と前記低濃度拡散層の端部が前記ゲート電極に対して交互に配置され、
前記高濃度拡散層と前記半導体層との間の前記ベース層の表面層に前記高濃度拡散層と隣接して第2導電形反転防止層を有し、
前記高濃度拡散層に前記エミッタ電極が接触し、前記低濃度拡散層に前記エミッタ電極が接触しないことを特徴とする絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ。 - 前記エミッタ層に隣接し前記ゲート電極と反対側に前記ベース層の表面層に選択的に形成された第2導電形コンタクト層を有し、
前記反転防止層は、前記コンタクト層が前記高濃度拡散層の底部を覆い前記エミッタ層と前記半導体層との間の前記ベース層の表面に延在したものであることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ。 - 前記ゲート電極側に位置する前記高濃度拡散層の端部とゲート電極との距離が前記ゲート電極側に位置する前記低濃度拡散層の端部と前記ゲート電極との距離よりも大きく、前記ゲート電極側に位置する前記反転防止層の端部とゲート電極との距離が前記ゲート電極側に位置する前記低濃度拡散層の端部と前記ゲート電極との距離よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ。
- 前記第1導電形半導体層の表面層に前記第2導電形ベース層から離して形成された第2導電形コレクタ層と、該第2導電形コレクタ層に接触するコレクタ電極とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ。
- 前記第1導電形半導体層の表面層に前記第2導電形ベース層と離して形成された第1導電形バッファ層と、該第1導電形バッファ層の表面層に形成された前記第2導電形コレクタ層と、該第2導電形コレクタ層に接触するコレクタ電極とを有することを特徴とする請求項4に記載の絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ。
- 前記第1導電形半導体層の裏面側の表面層に形成された第2導電形コレクタ層と、該第2導電形コレクタ層に接触するコレクタ電極とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ。
- 前記第1導電形半導体層の裏面側の表面層に形成された第1導電形バッファ層と、該第1導電形バッファ層の表面層に形成された前記第2導電形コレクタ層と、該第2導電形コレクタ層に接触するコレクタ電極とを有することを特徴とする請求項6に記載の絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ。
- 前記第1導電形半導体層の表面層にLDD層を有するCMOSを備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ。
- 請求項8に記載の絶縁ゲート形バイポーラトランジスタの製造方法であって、
前記LDD層と前記低濃度拡散層とを同時に形成することを特徴とする絶縁ゲート形バイポーラトランジスタの製造方法。
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