JP4828009B2 - 粘着シートおよびその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着シートに関し、さらに詳しくは表面に形成される凹凸差の大きな被着体の裏面加工時に、表面に貼着され、表面を保護するために好ましく使用される粘着シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハの裏面の研削工程においては、電気回路が形成されている表面は粘着シートによって保護されている。通常の回路の電極素子による回路の高低差は5〜20μm程度であった。このような通常の回路が形成されたウエハには、従来の表面保護シートを用いても充分に保護することができ、回路が破損したり、ウエハが割れることなく充分に対応できていた。
【0003】
ところが、近年、ICチップの実装方法が多様化しており、ICチップ回路面が下側に配置されるパッケージング方法がある。このパッケージング方法では、凸状の電極素子が回路表面より突出して形成されており、その高低差は30μm以上となり、また場合によっては100μmを超えるものも現れている。このような半導体ウエハの表面に形成される凸状部分はバンプと呼ばれている。
【0004】
バンプは通常1チップに対して2個以上形成され、多いものではバンプピッチ(バンプとバンプの間隔)は数百μmになるものも存在する。バンプピッチのパターンとチップの配列によっては、バンプが集中する密の部分とバンプのパターンが疎の部分ができる。特にウエハの外周部分はチップが存在しないため、特にバンプが疎の部分となりやすい。バンプの密の場所と疎の場所では粘着シートを貼ったウエハは厚さにかなりのバラツキが発生してしまう。この状態のものを研削するとその厚み差が研削後のウエハ厚みのバラツキとしてそのまま発生してしまう問題もある。
【0005】
このようなバンプが形成されたウエハ表面を、従来の表面保護シートで保護しつつ、その裏面研磨を行うと、バンプの形状に対応して、その裏面が深く研磨され、裏面に窪み状(ディンプル状)の凹部が形成され、ウエハの厚みが不均一になる。さらには、ディンプル部から亀裂が発生し、最終的にはウエハが破壊してしまうことがあった。
【0006】
また、このような問題は、ウエハ回路の検査後に不良回路にマーキングのために形成するインク(バッドマーク)においても同様に発生する。
【0007】
バンプの大きな半導体ウエハに対しては、表面保護シートの基材フィルムの硬度を軟らかくしたり、粘着シートを厚くしたりして対応していたが、充分ではなく、上記のような問題はなお解消されなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、表面の凹凸差の大きな被着体の裏面加工時に、表面に貼着され、表面を保護するために好ましく使用され、特に極薄にまで被着体を研削しても均一な厚みで研削でき、ディンプルの発生を防止できるような粘着シートを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の粘着シートは、基材と、その上に形成された中間層と、該中間層の上に形成された粘着剤層とからなり、
該粘着剤層の23℃における弾性率が5.0×104〜1.0×107Paの範囲にあり、該中間層の23℃における弾性率が粘着剤層の23℃における弾性率以下となることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る第2の粘着シートは、基材と、その上に形成された中間層と、該中間層の上に形成された粘着剤層とからなる粘着シートであって、
中間層の40℃における弾性率が1.0×106Pa未満であることを特徴としている。
【0011】
また本発明では、前記基材の−5〜80℃の温度範囲における動的粘弾性の tanδの最大値が0.5以上であることが好ましい。
【0012】
また前記基材の厚みとヤング率との積が、0.5〜100kg/cmであることが好ましい。
【0013】
また本発明に係る粘着シートの使用方法は、上記の粘着シートを被着体の表面に貼付し、該被着体表面の保護を行ないつつ、その裏面加工を行うことを特徴としている。
【0014】
このような本発明によれば、被着体の表面に形成された凹凸に、粘着シートがよく追従して凹凸差を吸収し、裏面研磨を行っても表面の凹凸に影響されることなく、厚みのバラツキがなく、平滑に裏面研磨を行える表面保護用粘着シートおよびこれを用いた粘着シートの使用方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。まず、本発明に係る第1の粘着シートについて説明する。
【0016】
本発明に係る第1の粘着シートは、基材、中間層および粘着剤層がこの順に積層されてなる。
【0017】
粘着剤層は、従来より公知の種々の感圧性粘着剤により形成され得る。粘着剤層の23℃における弾性率が5.0×104〜1.0×107Paの範囲にあり、好ましくは6.0×104〜5.0×106Pa、さらに好ましくは8.0×104〜1.0×106Paの範囲にある。なお、粘着剤層を後述するエネルギー線硬化型粘着剤で形成する場合には、上記弾性率はエネルギー線照射前の粘着剤層の弾性率を示す。
【0018】
粘着剤層の23℃における弾性率が5.0×104Paより低いと粘着シートの端部より粘着剤がしみだしたり、凝集力の不足により、研削による力に対し、剪断変形しやすくなり、研削後のウエハの厚みのバラツキが大きくなってしまう。また、バンプの凹部にもぐりこんだ粘着剤に剪断力が加わると、ウエハ面に粘着剤が残留するおそれが高くなる。反対に粘着剤層の23℃における弾性率が1.0×107Paよりも高くなると、粘着剤層が硬くなり、バンプの凹凸に追従しにくくなり、研削後のウエハの厚みのバラツキを大きくしたり、バンプと粘着シートのすきまから研削加工の冷却水が侵入するなどの問題が起こりやすくなる。
【0019】
このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。また、エネルギー線硬化型や加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤も用いることができる。
【0020】
エネルギー線硬化(エネルギー線硬化、紫外線硬化、電子線硬化)型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。また、水膨潤型粘着剤としては、たとえば特公平5−77284号公報、特公平6−101455号公報等に記載のものが好ましく用いられる。
【0021】
エネルギー線硬化型粘着剤は、一般的には、アクリル系粘着剤と、エネルギー線重合性化合物とを主成分としてなる。
【0022】
エネルギー線硬化型粘着剤に用いられるエネルギー線重合性化合物としては、たとえば特開昭60−196956号公報および特開昭60−223139号公報に開示されているような光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられ、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどが用いられる。
【0023】
さらにエネルギー線重合性化合物として、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物たとえば2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなどを反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレートたとえば2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなどを反応させて得られる。
【0024】
エネルギー線硬化型粘着剤中のアクリル系粘着剤とエネルギー線重合性化合物との配合比は、アクリル系粘着剤100重量部に対してエネルギー線重合性化合物は50〜200重量部、好ましくは50〜150重量部、特に好ましくは70〜120重量部の範囲の量で用いられることが望ましい。この場合には、得られる粘着シートは初期の接着力が大きく、しかもエネルギー線照射後には粘着力は大きく低下する。したがって、裏面研削終了後におけるウエハとエネルギー線硬化型粘着剤層との界面での剥離が容易になる。
【0025】
また、エネルギー線硬化型粘着剤は、側鎖にエネルギー線重合性基を有するエネルギー線硬化型共重合体から形成されていてもよい。このようなエネルギー線硬化型共重合体は、粘着性とエネルギー線硬化性とを兼ね備える性質を有する。側鎖にエネルギー線重合性基を有するエネルギー線硬化型共重合体は、たとえば、特開平5−32946号公報、特開平8−27239号公報等にその詳細が記載されている。
【0026】
エネルギー線硬化型粘着剤に光重合開始剤を混入することにより、光照射による重合硬化時間ならびに光照射量を少なくすることができる。
【0027】
このような光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどが例示できる。
【0028】
光重合開始剤の使用量は、粘着剤の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部である。
【0029】
上記のようなアクリル系エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線照射前にはウエハに対して充分な接着力を有し、エネルギー線照射後には接着力が著しく減少する。すなわち、エネルギー線照射前には、粘着シートとウエハとを充分な接着力で密着させ表面保護を可能にし、エネルギー線照射後には、研削されたウエハから容易に剥離することができる。
【0030】
中間層の23℃における弾性率は、前述した粘着剤層の23℃における弾性率以下であり、好ましくは粘着剤層の弾性率の1〜100%、さらに好ましくは10〜90%、特に好ましくは30〜80%の範囲にある。
【0031】
粘着剤層と中間層の23℃における弾性率が前記の関係であれば、バンプの凹凸に充分に追従して貼付が可能となる上、粘着剤層に対する剪断力も分散するため、剥離の際に粘着剤が残留しにくくなる。また、ウエハ面上のバンプの密集している部分と疎の部分との間も厚み差が無くなるように貼付できる。
【0032】
中間層の材質としては、上記物性を満たす限り特に限定はされず、たとえばアクリル系、ゴム系、シリコーン系などの各種の粘着剤組成物、および後述する基材の調製に用いられ得る紫外線硬化型樹脂ならびに熱可塑性エラストマーなどが用いられる。
【0033】
また中間層としては、特に、0〜60℃の温度範囲における動的粘弾性の tanδの最大値(以下、単に「tanδ値」と略記する)が0.3以上、好ましくは0.4〜2.0、特に好ましくは0.5〜1.2の範囲の素材が好ましく用いられる。ここで、 tanδは、損失正接とよばれ、損失弾性率/貯蔵弾性率で定義される。具体的には、動的粘弾性測定装置により対象物に与えた引張、ねじり等の応力に対する応答によって測定される。
【0034】
さらに上記中間層の上面、すなわち粘着剤層が設けられる側の面には粘着剤との密着性を向上するために、コロナ処理を施したりプライマー等の他の層を設けてもよい。
【0035】
基材としては、従来粘着シートに使用されている各種のフィルムが特に制限されることなく用いられるが、特に、−5〜80℃の温度範囲における動的粘弾性の「tanδ値」が0.5以上、好ましくは0.5〜2.0、特に好ましくは0.7〜1.8の範囲にフィルムが好ましく用いられる。
【0036】
また上記基材の厚みとヤング率との積が、好ましくは0.5〜100kg/cm、さらに好ましくは1.0〜50kg/cm、特に好ましくは2.0〜40kg/cmの範囲にあることが望ましい。
【0037】
基材の厚みとヤング率の積がこの範囲であれば、粘着シートの貼付適性などの機械適性が向上し、作業効率が向上する。
【0038】
基材は、好ましくは樹脂フィルムからなり、硬化性樹脂を製膜、硬化したものであっても、熱可塑性樹脂を製膜したものであっても良い。
【0039】
硬化性樹脂としては、エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等が用いられ、好ましくはエネルギー線硬化型樹脂が用いられる。
【0040】
エネルギー線硬化型樹脂としては、たとえば、光重合性のウレタンアクリレート系オリゴマーを主剤とした樹脂組成物あるいは、ポリエン・チオール系樹脂等が好ましく用いられる。
【0041】
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物たとえば2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなどを反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレートたとえば2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなどを反応させて得られる。このようなウレタンアクリレート系オリゴマーは、分子内に光重合性の二重結合を有し、光照射により重合硬化し、皮膜を形成する。
【0042】
本発明で好ましく用いられるウレタンアクリレート系オリゴマーの分子量は、1000〜50000、さらに好ましくは2000〜30000の範囲にある。上記のウレタンアクリレート系オリゴマーは一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
上記のようなウレタンアクリレート系オリゴマーのみでは、製膜が困難な場合が多いため、通常は、光重合性のモノマーで稀釈して製膜した後、これを硬化してフィルムを得る。光重合性モノマーは、分子内に光重合性の二重結合を有し、特に本発明では、比較的嵩高い基を有するアクリルエステル系化合物が好ましく用いられる。
【0044】
このようなウレタンアクリレート系オリゴマーを稀釈するために用いられる光重合性のモノマーの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレートなどの脂環式化合物、
フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレートなどの芳香族化合物、もしくはテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N−ビニルピロリドンまたはN−ビニルカプロラクタムなどの複素環式化合物が挙げられる。また必要に応じて多官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。
【0045】
上記光重合性モノマーは、ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量部に対して、好ましくは5〜900重量部、さらに好ましくは10〜500重量部、特に好ましくは30〜200重量部の割合で用いられる。
【0046】
また、基材の製造に用いられる光重合性のポリエン・チオール系樹脂は、アクリロイル基を有しないポリエン化合物と、多価チオール化合物とからなる。具体的には、ポリエン化合物としては例えばジアクロレインペンタエリスリトール、トリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパンジアリルエーテル付加物、不飽和アリルウレタンオリゴマー等を挙げることができ、また多価チオール化合物としては、ペンタエリスリトールのメルカプトプロピオン酸又はメルカプト酢酸のエステル等を好ましく挙げることができる他、市販のポリエンポリチオール系オリゴマーを用いることもできる。本発明で用いられるポリエン・チオール系樹脂の分子量は好ましくは3000〜50000、さらに好ましくは5000〜30000である。
【0047】
基材を、エネルギー線硬化型樹脂から形成する場合には、該樹脂に光重合開始剤を混入することにより、光照射による重合硬化時間ならびに光照射量を少なくすることができる。
【0048】
このような光重合開始剤としては、前記と同様のものが挙げられ、その使用量は、樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部である。
【0049】
上記のような硬化性樹脂は、オリゴマーまたはモノマーを前述の物性値となるよう種々の組合せの配合より選択することができる。
【0050】
基材に用いられる熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂や、スチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体あるいはスチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体水素添加物が用いられ、特にスチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体およびスチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体水素添加物が好ましい。
【0051】
スチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体は、一般的に高ビニル結合のSIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)であり、その水素添加物とともに、ポリマー単独で室温付近に大きな tanδのピークを有している。
【0052】
また、上述の樹脂中に tanδ値を向上させることが可能な添加物を添加することが好ましい。このような tanδ値を向上させることが可能な添加物としては、炭酸カルシウム、シリカ、雲母などの無機フィラー、鉄、鉛等の金属フィラーが挙げられ、特に比重の大きな金属フィラーが有効である。
【0053】
さらに、上記成分の他にも、基材には顔料や染料等の着色剤等の添加物が含有されていてもよい。
【0054】
製膜方法としては、液状の樹脂(硬化前の樹脂、樹脂の溶液等)を、たとえば工程シート上に薄膜状にキャストした後に、これを所定の手段によりフィルム化することで基材を製造できる。このような製法によれば、製膜時に樹脂にかかる応力が少なく、フィッシュアイの形成が少ない。また、膜厚の均一性も高く、厚み精度は、通常2%以内になる。
【0055】
別の製膜方法として、Tダイやインフレーション法による押出成形やカレンダー法により製造することが好ましい。
【0056】
本発明に係る粘着シートは、上記のような基材上に形成された中間層上に粘着剤層を設けることで製造される。なお、粘着剤層を紫外線硬化型粘着剤により構成する場合には、基材および中間層は透明である必要がある。
【0057】
本発明の粘着シートにおいて、基材の厚みは、好ましくは30〜1000μm、さらに好ましくは50〜800μm、特に好ましくは80〜500μmである。
【0058】
また中間層の厚みは、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜80μm、特に好ましくは20〜60μmの範囲にある。さらに粘着剤層の厚さは、その材質にもよるが、通常は5〜100μm程度であり、好ましくは10〜80μm、特に好ましくは20〜60μm程度である。
【0059】
中間層と粘着剤層の合計厚さは、粘着シートが貼着される被着体のバンプ高さ、バンプ形状、バンプ間隔のピッチ等を考慮して適宜に選定され、一般的には、中間層と粘着剤層の合計厚さは、バンプ高さの50%以上、好ましくは60〜100%となるように選定することが望ましい。このように中間層と粘着剤層の合計厚さを選定すると、回路面の凹凸に粘着シートが追随して凹凸差を解消できる。
【0060】
本発明の粘着シートは、基材上に、中間層を形成する樹脂を塗布後、所要の手段で樹脂を乾燥または硬化させて中間層を形成し、該中間層上に、上記粘着剤をロールコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなど一般に公知の方法にしたがって適宜の厚さで塗工して乾燥させて粘着剤層を形成し、次いで必要に応じ粘着剤層上に離型シートを貼り合わせることによって得られる。
【0061】
次に、本発明に係る第2の粘着シートについて説明する。
【0062】
本発明に係る第2の粘着シートは、基材、中間層および粘着剤層がこの順に積層されてなる。基材および粘着剤としては、特に限定されず種々のものを使用できるが、前記第1の粘着シートにおいて説明したものと同様のものが好ましく使用できる。
【0063】
第2の粘着シートにおける中間層の40℃における弾性率は、1.0×106Pa未満であり、好ましくは5.0×103〜5.0×105Pa、さらに好ましくは1.0×104〜1.0×105Paの範囲にある。半導体ウエハの裏面研磨時には、研磨熱によって、粘着シートの温度が40℃程度になるため、この温度における中間層の弾性率は重要な意義を持つ。すなわち、中間層の40℃における弾性率が上記の範囲にあると、基材および粘着剤の種類に関わり無く、被着体の裏面研磨時に被着体の表面に形成された凹凸によく追従して凹凸差を吸収し、表面の凹凸に影響されることなく、厚みのバラツキがなく、平滑に裏面研磨を行える。
【0064】
本発明に係る第2の粘着シートを構成する基材、中間層および粘着剤層の厚さ等の好ましい態様は、前記第1の粘着シートと同様であり、また前記第1の粘着シートと同様の方法で製造することができる。
【0065】
本発明の第1および第2の粘着シートは、各種物品の表面保護、精密加工時の一時的な固定用に用いられ、特に、半導体ウエハの裏面を研磨する際の回路面保護用の粘着シートとして好適に用いられる。本発明の粘着シートは、上記したような特定の構成を有するため、回路面の凹凸をよく吸収する。このため、バンプ等が形成され表面の高低差が大きなウエハに対しても充分な接着力で貼付でき、しかもウエハ表面の凹凸が裏面研磨に与える影響を緩和でき、ウエハの損壊を防止できるばかりでなく、極めて平滑に研磨できる。さらに、たとえば粘着剤層を紫外線硬化型粘着剤から形成した場合には、紫外線照射により容易に接着力を低減できるため、所要の加工が終了した後、粘着剤層を紫外線照射することで容易に剥離できる。
【0066】
【発明の効果】
このような本発明によれば、被着体の表面に形成された凹凸によく追従して凹凸差を吸収し、裏面研磨を行っても表面の凹凸に影響されることなく、厚みのバラツキがなく、平滑に裏面研磨を行える表面保護用粘着シートが提供される。
【0067】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
なお、以下の実施例および比較例において、「裏面研磨適性試験」は次のようにして行った。
裏面研磨適性試験
下記ドット状の印刷によるバッドマークをバンプとし、これを6インチのミラーウエハ上に形成した。ウエハのバッドマークが形成された面に粘着シートを貼付し、反対面を研磨した。ウエハ形状、研磨条件、評価方法は以下のとおり。
(1)ウエハ形状
ウエハ径:6インチ
ウエハ厚み(ドット印刷されていない部分の厚み):650〜700μm
ドット径:500〜600μm
ドット高さ:105μm
ドットのピッチ:2.0mm間隔(ウエハ外周部20mmまでは印刷なし)
(2)裏面研磨条件
仕上げ厚さ:200μm
研磨装置:(株)ディスコ社製、グラインダーDFG840
(3)評価方法
(3-1)ディンプル
研磨されたウエハ裏面を観測して、割れ・窪みが無いものを「優」、窪みがあったとしても窪みの最大深さが2μm未満のものを「良」とし、最大深さが2μm以上の窪みが発生していたものは「不良」とした。
(3-2)ウエハ厚みのバラツキ
裏面研磨後のウエハからテープを剥離して、厚みをウエハ外周部20mmまでの位置を含む30箇所で測定して厚みの最大値から最小値を引いた値をバラツキとした。
【0069】
測定は、DIAL THICKNESS GAUGE (OZAKI MFG. CO., LTD.)を使用した。
【0070】
tan δ
tanδは、動的粘弾性測定装置により110Hzの引張応力で測定される。具体的には、基材を所定のサイズにサンプリングして、オリエンテック社製Rheovibron DDV-II-EPを用いて周波数110Hzで−40℃〜150℃の範囲で tanδを測定し、基材については−5℃〜80℃の範囲における最大値を「 tanδ値」として採用し、中間層については0℃〜60℃の範囲における最大値を「 tanδ値」として採用する。
ヤング率
ヤング率は試験速度200mm/分でJIS K7127に準拠して測定した。
弾性率
粘着剤、中間層の弾性率G'は、捻り剪断法により測定した。
【0071】
試験片:8mmφ×3mmの円柱
測定器:DYNAMIC ANALYZER RDA II (REOMETRIC社製)
周波数:1Hz
【0072】
【実施例1】
重量平均分子量5000のウレタンアクリレート系オリゴマー(荒川化学社製)50重量部と、イソボルニルアクリレート25重量部と、フェニルヒドロキシプロピルアクリレート25重量部と、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184、チバ・ガイギー社製)2.0重量部と、フタロシアニン系顔料0.2重量部とを配合してエネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0073】
得られた樹脂組成物を、ファウンテンダイ方式により、キャスト用工程シートであるPETフィルム(東レ社製:厚み38μm)の上に厚みが110μmとなるように塗工して樹脂組成物層を形成した。塗工直後に、樹脂組成物層の上にさらに同じPETフィルムをラミネートし、その後、高圧水銀ランプ(160W/cm、高さ10cm)を用いて、光量250mJ/cm2 の条件で紫外線照射を行うことにより樹脂組成物層を架橋・硬化させて、厚さ110μmの基材フィルムを得た。この基材フィルムの tanδおよびヤング率を上記の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0074】
この基材フィルムの片面に、ウレタンアクリレート(東亜合成社製)60重量部と、フェノールエチレンオキシド変性アクリレート(商品名M-101、東亜合成社製)20重量部と、イソボルニルアクリレート10重量部と、光重合開始剤(イルガキュア184)2.0重量部を配合して、ファウンテンダイ方式によりキャストし、厚さ40μmの中間層を形成した。中間層の tanδおよび弾性率を上記の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0075】
中間層上に、アクリル系粘着剤(n-ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体)100重量部と、分子量8000のウレタンアクリレート系オリゴマー120重量部と、硬化剤(ジイソシアナート系)10重量部と、光重合開始剤(ベンゾフェノン系)5重量部とを混合した粘着剤組成物を塗布乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを得た。
【0076】
得られた粘着シートを用いて、裏面研磨適性試験を行った。結果を表1に示す。
【0077】
【実施例2】
中間層を、n-ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体100重量部と、硬化剤(ジイソシアナート系)5重量部とからなる組成物にて厚さ20μmに形成し、粘着剤層の厚さを40μmとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0078】
【参考例3】
フェニルヒドロキシプロピルアクリレートを用いずに、イソボルニルアクリレート50重量部用いて基材を形成し、中間層を、2-エチルヘキシルアクリレートと酢酸ビニルとアクリル酸との共重合体100重量部と、エポキシ系架橋剤(テトラッドC)5重量部を混合した組成物にて厚さ20μmに形成し、かつ粘着剤層を、実施例1のアクリル系粘着剤と硬化剤(ジイソシアナート系)5重量部との組成物にて厚さ40μmに形成した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0079】
【実施例4】
基材フィルムとして、厚さ110μmの低密度ポリエチレンフィルム(商品名スミカセンL705)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0080】
【比較例1】
中間層を形成しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0081】
【比較例2】
中間層を酢酸ビニル90重量部とメチルメタクリレート8重量部とアクリル酸2重量部のアクリル系共重合体100重量部と硬化剤イソシアナート5重量部とを混合した組成物を塗布乾燥し、厚さ40μmに形成した以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0082】
【比較例3】
中間層を形成せず、かつ、かつ粘着剤層の厚さを20μmに形成した以外は、実施例4と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0083】
【比較例4】
基材フィルムとして、厚さ120μmのエチレン/酢酸ビニル共重合体フィルム(酢酸ビニル含量12%)を用い、中間層を形成せず、かつ、かつ粘着剤層を実施例1と同様のものを用いて、厚さ10μmに形成した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0084】
【比較例5】
基材フィルムとして、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、中間層を形成せず、かつ、かつ粘着剤層を実施例1と同様のものを用いて、厚さ10μmに形成した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
Claims (4)
- 基材と、その上に形成された中間層と、該中間層の上に形成された粘着剤層とからなる粘着シートであって、中間層の40℃における弾性率が1.0×106Pa未満であり、
前記中間層が、アクリル系粘着剤とジイソシアナート系硬化剤とを含有するアクリル系粘着剤組成物、または光重合性ウレタンアクリレート系オリゴマーと光重合性モノマーとを含有する樹脂組成物から形成される
ことを特徴とする半導体ウエハの表面保護用粘着シート。 - 前記基材の−5〜80℃の温度範囲における動的粘弾性の tanδの最大値が0.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエハの表面保護用粘着シート。
- 前記基材の厚みとヤング率との積が、0.5〜100kg/cmであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウエハの表面保護用粘着シート。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載の粘着シートを半導体ウエハの表面に貼付し、該半導体ウエハ表面の保護を行ないつつ、その裏面加工を行うことを特徴とする粘着シートの使用方法。
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