JP4804625B2 - 半導体ウエハ加工用保護シートおよび半導体ウエハの加工方法 - Google Patents

半導体ウエハ加工用保護シートおよび半導体ウエハの加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばシリコンやガリウム−ヒ素などの半導体ウエハの加工時に使用される半導体ウエハ加工用保護シートに関する。より詳細には、半導体ウエハの回路パターン形成面(以下,単に「パターン面」と称する場合がある)の裏面を研磨、研削等により薄型加工する際に、パターン面に貼り付けて保護するとともに、薄型加工により薄肉化した半導体ウエハを保持するための半導体ウエハ加工用保護シートに関する。さらには当該保護シートを用いた半導体ウエハの加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、配線パターンが形成された半導体ウエハのパターン面の反対側にある裏面の薄型加工方法として、例えば、研削方法、研磨方法等が知られている。これらの方法では、パターン面が損傷したり、研削くずや研削水などにより汚染されるのを防止するため、パターン面を保護しておく必要がある。また、半導体ウエハはそれ自体が薄肉で脆いのに加え、パターン面が凹凸状であり、わずかな外力によっても破損しやすいため、半導体ウエハを保持する必要がある。そのため、半導体ウエハの裏面を薄型加工するにあたっては、半導体ウエハのパターン面の保護と半導体ウエハ自体の固定を行うために、パターン面に保護シートを貼り付けた後に、裏面に研磨、研削等の薄型加工を施すのが一般的である。前記保護シートとしては、プラスチックフィルムからなる基材上にアクリル系粘着剤等が塗布されてなるものが一般的に用いられている。
【0003】
しかし、前記保護シートでは、半導体ウエハのパターン面の凹凸差が粘着層よりも大きくなると、保護シートがパターン面の凹凸差に追従できなくなる。一方、パターン面の凹凸差に応じて粘着層を大きくすると、保護シートが変形して、薄型加工時に半導体ウエハに厚みばらつきが生じてウエハが破損したり、パターン面が研削水などにより汚染される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、半導体ウエハのパターン面の凹凸差が大きい場合にも、パターン面の凹凸差への追従性がよく、薄型加工後の半導体ウエハの厚みばらつき等を抑えることができる半導体ウエハ加工用保護シートを提供することを目的とする。さらには、前記半導体ウエハ加工用保護シートを用いた半導体ウエハの加工方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すく、鋭意検討した結果、以下に示す半導体ウエハ加工用保護シートにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、基材フィルム上に粘着層が積層されている半導体ウエハ加工用保護シートにおいて、前記粘着層として、基材フィルム側から放射線硬化性の第一粘着層、次いで第一粘着層上に非放射線硬化性の第二粘着層が積層されていることを特徴とする半導体ウエハ加工用保護シート、に関する。
【0007】
本発明の半導体ウエハ加工用保護シートは、通常の粘着層である第二粘着層に加えて、第一粘着層を有しているため、パターン面の凹凸差が大きくても、当該保護シートを半導体ウエハのパターン面に貼り付ける際に、第一粘着層が適度に変形して、その凹凸に良く追従でき、ウエハ表面と保護シートとがよく密着される。また、薄型加工に際しては、放射線硬化性の第一粘着層は放射線にて硬化させることにより粘着層の変形が少なくなり、粘着層の変形による薄型加工時のウエハの厚みばらつきを防止できる。一方、非放射線硬化性の第二粘着層は、放射線を照射しても粘着性を失うことがないため、放射線照射後も保護シート表面のタックは十分あり、ウエハ周辺部からの水浸入、シート剥離を防止できる。
【0008】
前記半導体ウエハ加工用保護シートにおいて、第一粘着層の厚さが20μm以上であることが好ましい。
【0009】
第一粘着層の厚さは、半導体ウエハ表面の凹凸の高さや、半導体ウエハの保持性、保護性を損なわない範囲で適宜選択できるが、一般には20μm以上、好ましくは30〜200μm程度である。厚さが20μm未満では、半導体ウエハのパターン面の凹凸への追従性が発揮されにくくなり、薄型加工時に割れやディンプルの発生が生じやすくなる。一方、200μmを越えると第一粘着層のはみ出しや、テープの貼付けに時間がかかり作業効率が低下したり、研削加工機器に入らなかったりするおそれがある。また、シートをウエハから剥離する際、シートの曲げ応力により、研削加工後の薄肉のウエハが破損する恐れが生じる。第一粘着層の厚さは、50〜100μmとするのがより好ましい。
【0010】
また前記半導体ウエハ加工用保護シートにおいて、第一粘着層(放射線硬化前)の25℃における貯蔵弾性率が、30〜2000KPaであり、かつゲル分が80重量%以下であることするものであることが好ましい。
【0011】
第一粘着層が柔らかすぎると、保護シートの形状安定性が低下し、たとえば、長期保存時や荷重がかかった場合の保護シートが変形する可能性がある。また、保護シートヘかかる圧力により、第一粘着層のはみ出しが生じて、半導体ウエハを汚染するおそれもある。かかる安定性等の点から前記貯蔵弾性率は30KPa以上、さらには50KPa以上するのが好ましい。一方、第一粘着層が硬くなると半導体ウエハ表面の凹凸への追従性に劣り、ウエハの薄型加工時に隙間から水浸入や、ウエハ割れ、ディンプルの発生が生じやすくなるため、前記貯蔵弾性率は2000KPa以下、さらには1000KPa以下とするのが好ましい。
【0012】
また前記第一粘着層のゲル分は、80重量%以下、好ましくは60重量%以下である。ゲル分が多くなると、保護シートを半導体ウエハのパターン表面に貼り付け時にポリマーの動きが悪くなり、凹凸面への追従性が劣り、ウエハの薄型加工時にウエハ割れやディンプルの発生が生じやすくなる。なお、前記貯蔵弾性率が前記範囲内にあっても、ゲル分が高いと追従性の点で好ましくない。
【0013】
なお、「ゲル分」とは、第一粘着層を形成する粘着剤をトルエン:酢酸エチル=1:1(重量比)の混合溶剤中に25℃で7日間、浸潰させた時の溶解しないものの割合(重量%)である。
【0014】
前記半導体ウエハ加工用保護シートにおいて、第一粘着層が、炭素−炭素二重結合を分子中に有するアクリル系ポリマーを主成分として含有してなることが好ましい。
【0015】
第一粘着層を形成する放射線硬化性粘着剤のベースポリマーとして、アクリル系ポリマーは粘着層を形成するうえで好ましく、また分子中に炭素−炭素二重結合を有するものは、別途低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することがないため、安定した層構造の粘着層を形成することができる。
【0016】
さらに、本発明は、前記半導体ウエハ加工用保護シートの第二粘着層を、パターンが形成された半導体ウエハ表面へ貼り付け、放射線を照射して第一粘着層を硬化させた後に、半導体ウエハの裏面に薄型加工を施すことを特徴とする半導体ウエハの加工方法、に関する。
【0017】
前記本発明の半導体ウエハ加工用保護シートは、未硬化状態の第一粘着層により粘着層としての十分な厚みを確保し、これを半導体ウエハのパターン面に貼り付けることで凹凸のある半導体ウエハの表面凹凸が大きい場合にも、追従性よく貼り付けることができる。特に前記表面凹凸が10μm以上の場合に有効である。また、半導体ウエハの裏面に薄型加工にあたっては、放射線を照射して第一粘着層を硬化させて、粘着層の変形を抑え、粘着層の変形による薄型加工後のウエハの厚みばらつきを防止する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の半導体ウエハ加工用保護シートを図1を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、本発明の半導体ウエハ加工用保護シートは、基材フィルム1上に、粘着層2が設けられている。粘着層2は、基材フィルム側から放射線硬化性の第一粘着層21、次いで第一粘着層21上に非放射線硬化性の第二粘着層22が積層されている。また、必要に応じて、第二粘着層22上にはセパレータ3を有する。図1では、基材フィルムの片面に粘着層を有するが、基材フィルムの両面に粘着層を形成することもできる。半導体ウエハ加工用保護シートはシートを巻いてテープ状とすることもできる。
【0019】
基材フィルム1の材料は、特に制限されるものではないが、放射線を少なくとも一部透過するものを用いるのが好ましい。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、及びこれらの架橋体などのポリマーがあげられる。また、前記ポリマーは単体で用いてもよく、必要に応じて数種をブレンドしてもよく、また多層構造として用いてもよい。
【0020】
基材フィルム1の厚みは、通常10〜300μm、好ましくは30〜200μm程度である。基材フィルム1は、従来より公知の製膜方法により製膜できる。例えば、湿式キャスティング法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法などが利用できる。基材フィルム1は、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸または二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。また、基材フィルム1の表面には、必要に応じてマット処理、コロナ放電処理、プライマー処理、架橋処理(化学架橋(シラン))などの慣用の物理的または化学的処理を施すことができる。
【0021】
第二粘着層の形成には非放射線硬化性の粘着剤が使用される。前記粘着層を構成する粘着剤としては一般的に使用されている感圧性粘着剤を使用でき、たとえば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の適宜な粘着剤を用いることができる。なかでも、半導体ウエハヘの接着性、剥離後の半導体ウエハの超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性などの点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0022】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどがあげられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0023】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリンなどがあげられる。これら共重合可能なのモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の50重量%以下が好ましい。
【0024】
さらに、前記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0025】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。第二粘着層は半導体ウエハ等の汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、さらに好ましくは40万〜300万程度である。
【0026】
また、前記非放射線硬化性の粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高めるため、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤などのいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法があげられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、上記ベースポリマー100重量部に対して5重量部以下程度、好ましくは0.01〜5重量部程度配合するのが好ましい。
【0027】
さらに、第二粘着層を形成する粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤などの添加剤を用いてもよい。
【0028】
一方、第一粘着層の形成には放射線硬化性の粘着剤が使用される。放射線硬化性の粘着剤は炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。
【0029】
放射線硬化性の粘着剤としては、たとえば、一般的な粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化性粘着剤を例示できる。
【0030】
一般的な粘着剤としては、たとえば、前記第二粘着層で例示したアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の感圧性粘着剤と同様のものがあげられる。これらのなかでも特にアクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0031】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、たとえば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどがあげられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。
【0032】
放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0033】
また、放射線硬化性の粘着剤としては、上記説明した添加型の放射線硬化性粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化性粘着剤があげられる。内在型の放射線硬化性粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着層を形成することができるため好ましい。
【0034】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。このようなベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記第二粘着層で例示したアクリル系ポリマーがあげられる。
【0035】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。たとえば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基および炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合または付加反応させる方法があげられる。
【0036】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などがあげられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、上記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、たとえば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどがあげられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物などを共重合したものが用いられる。
【0037】
ベースポリマー中の炭素−炭素二重結合の量は、粘着剤の保存性を考慮すると、JIS K−0070によるヨウ素価で30以下、さらにはヨウ素価0.5〜20とするのが好ましい。
【0038】
前記内在型の放射線硬化性粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0039】
前記第一粘着層の形成に用いる放射線硬化性の粘着剤には、第一粘着層を紫外線線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどがあげられる。
【0040】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、反応性を考慮すると0.1重量部以上、さらには0.5重量部以上とするのが好ましい。また、多くなると粘着剤の保存性が低下する傾向があるため、15重量部以下、さらには5重量部以下とするのが好ましい。
【0041】
さらに、第一粘着層を形成する粘着剤には、第二粘着層を形成する粘着剤で例示した外部架橋剤や、従来公知の各種の添加剤を用いてもよい。
【0042】
本発明の半導体ウエハ加工用保護シートの作製は、たとえば、基材フィルム1に、直接、放射線硬化性の粘着剤を塗布し第一粘着層21を形成し、さらに非放射線硬化性の粘着剤を塗布し第二粘着層22を形成する方法、また、別途、剥離ライナー3に第一粘着層21と第二粘着層22をそれぞれ形成した後、それらを基材フィルム1に図1になるように貼り合せる方法、剥離ライナー3上の第二粘着層22、第一粘着層21の順で多層形成したものを基材フィルム1に図1になるように貼り合せる方法等を採用することができる。
【0043】
第一粘着層の厚みは前記述の通り、20μm以上が好ましく、さらに好ましくは30μm〜200μmである。
【0044】
第二粘着層は、半導体ウエハを十分に固定させるため、厚みが3μm以上、さらには5μm以上とするのが好ましい。また厚みが大きくなると、ウエハパターン面の凹凸への追従性が低下するため、100μm以下、さらには50μm以下とするのが好ましい。
【0045】
また第一粘着層と第二粘着層の総和の厚みは、半導体ウエハのパターン面の凹凸形状に合わせて適宜に設定できるが、35μm以上であることが好ましく、40〜200μmがさらに好ましい。
【0046】
セパレータ3は、必要に応じて設けられる。セパレータ3の構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等があげられる。セパレータ3の表面には、接着層2からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の離型処理が施されていても良い。セパレータ3の厚みは、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μm程度である。
【0047】
本発明の半導体ウエハ加工用保護シートは、第一粘着層を未硬化の状態で半導体ウエハのパターン面に貼り付け、放射線照射により硬化させた後に薄型加工に供する以外は、常法に従って用いられる。放射線照射の手段は特に制限されないが、たとえば、紫外線照射等により行われる。
【0048】
半導体ウエハのパターン面への保護シートの貼り付けは、テーブル上にパターン面が上になるように半導体ウエハを載置し、その上に保護シートの第二粘着層をパターン面に重ね、圧着ロールなどの押圧手段により、押圧しながら貼り付ける。また、加圧可能な容器(例えばオートクレーブなど)中で、半導体ウエハと保護シートを上記のように重ね、容器内を加圧するによりウエハに貼り付けることも出きる。この際、押圧手段により押圧しながら貼り付けてもよい。また、真空チャンバー内で、上記と同様に貼り付けることもできる。貼付け方法はこれら限定されるものではなく、貼り付ける際に、基材フィルムの融点以下に加熱をすることもできる。
【0049】
薄型加工は、常法を採用できる。薄型加工機としては、研削機(バックグラインド)、CMPパッド等があげられる。薄型加工は、半導体ウエハが所望の厚さになるまで行われる。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はそれによって何等限定されるものではない。
【0051】
実施例1
(基材フィルム)
140μmのエチレン酢酸ビニル共重合物のフィルムを使用した。
【0052】
(第一粘着層の作成)
アクリル酸エチル35重量部、アクリル酸ブチル45重量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル20重量部からなる混合モノマーをトルエン溶液中で共重合させて、数平均分子量300000のアクリル系共重合ポリマーを得た。この共重合ポリマー100重量部に対し、20重量部の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させ、ポリマー分子内側鎖に炭素−炭素二重結合を導入した。こうして得られたポリマー100重量部(固形分)に対して、さらにポリイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン製)0. 2重量部、アセトフェノン系光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,チバスペシャルフィケミカルズ社製)3部を混合して放射線硬化性の粘着剤溶液(UV−A)を調製した。前記粘着剤溶液を離型処理されたフィルム上に塗布、乾燥することで厚さ130μmの第一粘着層を作成した。
【0053】
第一粘着層の粘着剤(UV−A)の25℃における貯蔵弾性率は500KPaであった。貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置 レオメトリックスARESスペクトロメーター(周波数1Hz,サンプル厚2mm,圧着加重100g)で測定した。「ゲル分」は、55重量%であった。
【0054】
(第二粘着層の作成)
アクリル酸2−エチルヘキシル82重量部、アクリル酸3重量部およびアクリルアミド15重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させて得られた数平均分子量700000のアクリル系共重合ポリマーを含有する溶液に、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)3重量部およびエポキシ架橋剤(商品名「テトラッドC」、三菱瓦斯化学製)0.1重量部を加えて、非放射線硬化性の粘着剤溶液(感圧A)を調製した。前記粘着剤溶液を、離型処理されたフィルム上に塗布、乾燥することで厚さ5μmの第二粘着層を作成した。
【0055】
(半導体ウエハ加工用保護シートの作成)
上記、基材フィルムに第一粘着層、第二粘着層を順次に積層し、目的の半導体ウエハ加工用保護シートを得た。
【0056】
(評価)
テーブル上に100μm高さのバンプ付きウエハを置き、その上に上記半導体ウエハ加工用保護シートを、圧着ロールにて貼り合わせた。ウエハサイズ(バンプ含まず)は6インチ、厚さ625μmである。その後、紫外線照射、研削(200μmになるまで)、剥離を行った。下記水浸入、ウエハ割れについて評価した。結果を表1に示す。
【0057】
(使用した機械)
貼付:日東精機株式会社製NELDR8500II。
紫外線照射:日東精機株式会社製UM810。
研削:ディスコ株式会社製のシリコンウエハ研削機。
剥離:日東精機株式会社製HR8500II。
【0058】
(水浸入)
研削中に保護シートとウエハとの間に研削水が染み込んだか否かを、保護シートを剥離した後に、100倍の光学顕微鏡にて確認した。20枚について評価を行い1枚でも水浸入した場合には水浸入「あり」とした。
【0059】
(ウエハ割れ)
研削後に割れが発生したか否かを確認した。20枚について評価を行い1枚でも割れがある場合にはウエハ割れ「あり」とした。
【0060】
実施例2〜3、参考例1〜2、比較例1〜2
実施例1において、表1に示すように基材フィルム、第一粘着層、第二粘着層の内容を変更した半導体ウエハ加工用保護シートを作成し、また表1に示すバンプまたはインキの形成されたウエハを用いて、評価を行った以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 0004804625
表1中、UV−B:UV−Aにおいてポリイソシアネート系架橋剤の使用量をを0.05重量部に変えた場合。UV−C:UV−Aにおいてポリイソシアネート系架橋剤の使用量を0.5重量部に変えた場合。UV−D:UA−Aにおいてポリイソシアネート系架橋剤の使用量を1重量部に変えた場合。感圧B:感圧Aにおいて、架橋剤としてエポキシ架橋剤0. 05重量部のみを用いた場合。EVA:エチレン酢酸ビニル共重合物。PE:ポリエチレン。PET:ポリエチレンテレフタレート。
【0062】
実施例1〜3では水浸入、ウエハ割れがなく作業できた。なお、実施例3、比較例2では75μm高さのインキ付きウエハを用いた。
【0063】
参考例1は、本発明の半導体ウエハ加工用保護シートの第一粘着層(放射線硬化前)の貯蔵弾性率の好ましくない場合を示すための参考例であり、貯蔵弾性率が高いため第一粘着層のバンプヘの密着性が悪く、研削時にウエハ割れが生じた。参考例2は、本発明の半導体ウエハ加工用保護シートの使用態様を紫外線照射を研削後に行った場合であり、研削時に第一粘着層が未硬化で柔らかいため研削時の圧力で変形しウエハが割れた。
【0064】
比較例1は、第一粘着層のみを設けた半導体ウエハ加工用保護シートを用いた場合、比較例2は第二粘着層のみを設けた半導体ウエハ加工用保護シートを用いた場合であり、研削時に水浸入が発生し、またウエハ割れが生じた。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体ウエハ加工用保護シートの断面図である。
【符号の説明】
1:基材フィルム
21:第一粘着層
22:第二粘着層
3:セパレータ

Claims (1)

  1. 基材フィルム上に粘着層が積層されており、前記粘着層として、基材フィルム側から紫外線硬化性の第一粘着層、次いで第一粘着層上に非紫外線硬化性の第二粘着層が積層されている半導体ウエハ加工用保護シートを用いた半導体ウエハの加工方法であって、
    前記半導体ウエハ加工用保護シートの第二粘着層を、パターンが形成された半導体ウエハ表面へ貼り付け、紫外線を照射して第一粘着層を硬化させた後に、半導体ウエハの裏面に薄型加工を施すことを特徴とする半導体ウエハの加工方法。
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