以下、本発明に係る可変動弁装置のアクチュエータの各実施形態を図面に基づいて詳述する。この実施形態では、内燃機関の可変動弁装置を、1気筒当たり2つの吸気弁を備えた吸気側に適用したものである。
すなわち、可変動弁装置は、図5〜図10に示すように、シリンダヘッド1に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられて、バルブスプリング3,3によって閉方向に付勢された一対の吸気弁2,2と、該各吸気弁2,2のバルブリフト量を可変制御する可変機構4と、該可変機構4の作動位置を制御する制御機構5と、該制御機構5を回転駆動するアクチュエータである駆動機構6とを備えている。
前記可変機構4は、シリンダヘッド1の上部に有する軸受14に回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、該駆動軸13に圧入等により固設された偏心回転カムである駆動カム15と、駆動軸13の外周面に揺動自在に支持されて、各吸気弁2,2の上端部に配設されたバルブリフター16,16の上面に摺接して各吸気弁2,2を開作動させる2つの揺動カム17,17と、駆動カム15と揺動カム17,17との間に連係されて、駆動カム15の回転力を揺動カム17,17の揺動力として伝達する伝達手段とを備えている。
前記駆動軸13は、図7にも示すように、機関前後方向に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや、該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されており、この回転方向は図中、時計方向(矢印方向)に設定されている。
前記軸受14は、図9Aに示すように、シリンダヘッド1の上端部に設けられて駆動軸13の上部を支持するメインブラケット14aと、該メインブラケット14aの上端部に設けられて後述する制御軸32を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a、14bが一対のボルト14c、14cによって上方から共締め固定されている。
前記駆動カム15は、図8にも示すように、ほぼリング状を呈し、円環状のカム本体と、該カム本体の外端面に一体に設けられた筒状部とからなり、内部軸方向に駆動軸挿通孔が貫通形成されていると共に、カム本体の軸心Yが駆動軸13の軸心Xから径方向へ所定量だけオフセットしている。また、この駆動カム15は、駆動軸13に対し前記両バルブリフター16,16に干渉しない一方の外側に駆動軸挿通孔を介して圧入固定されていると共に、カム本体の外周面が偏心円のカムプロフィールに形成されている。
前記両揺動カム17は、同一形状のほぼ雨滴状を呈し、円環状のカムシャフト20の両端部に一体的に設けられていると共に、該カムシャフト20が内周面を介して駆動軸13に回転自在に支持されている。また、先端部のカムノーズ部21側にピン孔が貫通形成されていると共に、下面には、カム面22が形成され、カムシャフト20側の基円面と、該基円面からカムノーズ部21側に円弧状に延びるランプ面と、該ランプ面からカムノーズ部21の先端側に有する最大リフトの頂面に連なるリフト面が形成されており、該基円面とランプ面及びリフト面が、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面の所定位置に当接するようになっている。
前記伝達手段は、駆動軸13の上方に配置されたロッカアーム23と、該ロッカアーム23の一端部23aと駆動カム15とを連係するリンクアーム24と、ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17とを連係するリンクロッド25とを備えている。
前記ロッカアーム23は、中央に有する筒状の基部が支持孔を介して後述する制御カム33に回転自在に支持されている。また、筒状基部の外端部に突設された前記一端部23aには、ピン26が嵌入するピン孔が貫通形成されている一方、基部の内端部に突設された前記他端部23bには、リンクロッド25の一端部と連結するピン27が嵌入するピン孔が形成されている。
前記リンクアーム24は、比較的大径な円環状の基部24aと、該基部24aの外周面所定位置に突設された突出端24bとを備え、基部24aの中央位置には、前記駆動カム15のカム本体が回転自在に嵌合する嵌合孔24cが形成されている一方、突出端24bには、前記ピン26が回転自在に挿通するピン孔が貫通形成されている。
前記リンクロッド25は、ロッカアーム23側が凹状のほぼく字形状に形成され、両端部25a,25bには前記ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17のカムノーズ部21の各ピン孔に挿入した各ピン27,28の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔が貫通形成されている。
なお、各ピン26,27,28の一端部には、リンクアーム24やリンクロッド25の軸方向の移動を規制するスナップリングがそれぞれが設けられている。
前記制御機構19は、駆動軸13の上方位置に同じ軸受14に回転自在に支持された制御軸32と、該制御軸32の外周に固定されてロッカアーム23の支持孔に摺動自在に嵌入されて、ロッカアーム23の揺動支点となる制御カム33とを備えている。
前記制御軸32は、図5に示すように、駆動軸13と並行に機関前後方向に配設されていると共に、所定位置のジャーナル部が前記軸受14のメインブラケット14a、とサブブラケット14bとの間に回転自在に軸受されている。 前記制御カム33は、円筒状を呈し、軸心P2位置が制御軸32の軸心P1から所定分だけ偏倚している。
前記駆動機構6は、図1、図2及び図5に示すように、シリンダヘッド1の後端部に固定されたハウジング35と、該ハウジング35の一端部に固定された回転力付与機構である電動モータ36と、ハウジング35の内部に設けられて電動モータ36の回転駆動力を前記制御軸32に伝達するボール螺子伝達機構37とから構成されている。
前記ハウジング35は、図1及び図2に示すように、アルミ合金材などによって一体に形成され、内部に前記制御軸32の軸方向とほぼ直角方向に沿って配置されて、ボール螺子伝達機構37が収容配置される細長い収容部35aと、該収容部35aの上端部中央に上方へ突出して、内部に前記制御軸32の一端部32aが臨む膨出室35bが形成されて、この両室35a、35bによって作動室が構成されている。
また、この作動室35a、35bは、一端開口(図中手前側開口)がシール部材を介して図外のカバーによって閉塞されるようになっている。さらに、前記収容室35aは、軸方向の一端部に円形状の開口部35cが形成されていると共に、他端部側が壁部35dによって閉塞されている。
前記電動モ−タ36は、比例型のDCモータによって構成され、ほぼ円筒状のモータケーシング38の矩形状先端部38aが前記収容室35aの一端開口部35cを封止する状態で固定されている。また、電動モ−タ36は、一端開口部35cの内周面に圧入された円筒状のリテーナ39の内周側に設けられたメカニカルシール39aによって駆動シャフト36aを介してシールされている。また、電動モータ36は、図5に示すように、機関の運転状態を検出するコントロールユニット40からの制御信号によって駆動するようになっている。
このコントロールユニット40は、クランク角センサ41やエアーフローメータ42、水温センサ43や、制御軸32の回転位置を検出するポテンショメータ44等の各種のセンサからの検出信号をフィードバックして現在の機関運転状態を演算などにより検出して、前記電動モータ36に制御信号を出力している。
前記ボール螺子伝達機構37は、前記ハウジング35の収容室35a内に電動モータ36の駆動シャフト36aとほぼ同軸上に配置されたボール螺子軸45と、該ボール螺子軸45の外周に螺合する移動ナットであるボールナット46と、膨出室35b内で前記制御軸32の一端部に直径方向に沿って連結された連係アーム47と、該連係アーム47と前記ボールナット46とを連係するリンク部材48とから主として構成されており、前記連係アーム47とリンク部材48によって伝達機構が構成されている。
前記ボール螺子軸45は、両端部を除く外周面全体に所定幅のねじ部であるボール循環溝49が螺旋状に連続して形成されていると共に、収容室35aの一端開口部35cと他端部の小径部内にそれぞれ臨んだ両端部45a、45bが第1、第2ボールベアリング50、51によって回転自在に軸受けされている。
また、前記各ボールベアリング50,51は、その外輪50a、51aがそれぞれ収容室35aの両端部に形成された小径段差部に圧入によって固定されていると共に、各内輪50b、51bが各ボール50c、51cとの間のクリアランスを介して軸方向へ僅かに移動可能になっている。
さらに、ボール螺子軸45は、一端部45aの先端の六角軸と電動モータ36の駆動シャフト36aの先端部が円筒状の連結部材52によって同軸上で軸方向移動可能に結合され、かかる結合によって電動モータ36の回転駆動力を前記ボール螺子軸45に伝達すると共に、ボール螺子軸45の軸方向の僅かな移動を許容している。
前記ボールナット46は、ほぼ円筒状に形成され、内周面に前記ボール循環溝49と共同して複数のボール54を転動自在に保持するガイド溝53が螺旋状に連続して形成されていると共に、複数のボール54の循環列をボールナット46の軸方向の前後2個所に設定する2つのディフレクタが取り付けられている。このディフレクタは、前記ボール循環溝49とガイド溝53との間を転動する前記複数のボール54を同一溝内に循環させるために、同循環列内に再び戻すようにボール54を案内するものであり、この循環列を軸方向の前後2個所に設けたものである。
そして、ボールナット46は、各ボール54を介してボール螺子軸45の回転運動をボールナット46に直線運動に変換しつつ軸方向の移動力が付与されるようになっている。
また、ボールナット46は、図1及び図2に示すように、前記制御軸32側の外端部に、前記リンク部材48の他端部が回転自在に連結される枢支部55が設けられていると共に、該枢支部55の下部近傍にリンク部材48の傾倒と揺動を許容する左右一対の切欠溝56が形成されている(図5、図6参照)。
前記枢支部55は、ボールナット46の軸方向の電動モータ36側の端縁にほぼ円筒状に一体に形成されて、内部に枢支ピン57が貫通固定されていると共に、上端部がボールナット46の上部外面より僅かに突出している。
一方、切欠溝56は、前記枢支部55の基端側からボールナット46の上端部をほぼ半U字形状に切り欠いて形成され、リンク部材48の他端部外周面との間に隙間Cが形成されている。
前記連係アーム47は、図1〜図5に示すように、ほぼ雨滴状に形成され、大径基部47aが制御軸32の一端部32aに軸方向から一体的に固定されていると共に、先細り状の先端部47bに制御軸32方向に沿って連続して貫通したピン孔が貫通形成されている。
前記リンク部材48は、板材をプレス成型によって横断面ほぼコ字形状に折曲形成してなり、平行な一対の板状リンク部と、該両リンク部をほぼ中央で結合する結合部とから構成されている。
また、リンク部材48は、一端部が両リンク部によって前記連係アーム47のアーム部47aを挟持状態に嵌合していると共に、該一端部に穿設されたピン孔と前記アーム部先端部のピン孔にそれぞれ挿通されたピン59を介して前記アーム部47bの先端部に揺動自在に連結されている。一方、他端部は、両リンク部が枢支部55を挟んだ状態で配置されていると共に、ここにそれぞれ形成されたピン孔に前記ピン57が挿通して枢支部55に対して回転自在に連結されている。
したがって、このリンク部材48は、図1及び図2にも示すように、枢支部55を介してボール螺子軸45の軸心とほぼ平行でかつボールナット46の外面軸方向にほぼ沿って傾倒かつ揺動可能に設けられており、完全に傾倒した姿勢では上端部がボールナット46の外面から上方へ僅かに突出した形になっている。
前記ポテンショメータ44は、一般的なものであって、前記連係アーム47の前方に配置されて、制御軸32と同期回転する該連係アーム47の回転に伴い図外の検出ピンが回転し、この回転位置をセンサ部44aによって検出して、この検出信号を前記コントロールユニット40に出力するようになっている。
また、この実施形態では、前記ボールナット46のハウジング端壁35d側端縁と前記第2ボールベアリング51との間に、ボールナット46を第1ボールベアリング50方向へ付勢する付勢手段であるコイルスプリング60が弾装されている。
このコイルスプリング60は、そのコイル長Lがボールナット46が最大左方向(小バルブリフト時)に移動してもボールナット46の端縁と第2ボールベアリング51とを押圧する長さに設定されていると共に、両端部60a、60bがそれぞれ第1、第2スプリングリテーナ61,62によって支持されている。
前記両スプリングリテーナ61、62は、図3及び図4に示すように、金属板をプレス成形によってほぼ段差径の円筒状に形成され、ボールナット46の端縁と第2ボールベアリング51の外輪51aの一端縁にそれぞれ軸方向から嵌着する深皿状の基部61a、62aと、該基部61a、62aの円盤状側端壁61b、62bのほぼ中央に対向して突設された小径円筒状の突起部である保持部61c、62cとから構成されている。
前記第1スプリングリテーナ61は、基部61aの内径が前記ボールナット46の外径よりも若干大きく設定されていると共に、前記側端壁61bの外面にコイルスプリング60の一端部が弾持されている。
また、前記保持部61cは、外周面が先端先細り状のテーパ面に形成されている共に、外径がコイルスプリング60の内径よりも若干小さく設定されて、該コイルスプリング60の一端部60aに所定隙間をもって挿通している。さらに、この保持部61cの軸方向の長さは、比較的長く形成されて、第2スプリングリテーナ61の保持部61cよりも長く設定されている。
一方、前記第2スプリングリテーナ62は、基部62aの内径が前記第2ボールベアリング51の外輪51aの外径よりも若干大きく設定されていると共に、側端壁62bの外面にコイルスプリング60の他端部が弾持されている。
また、前記保持部62cは、外周面が先端先細り状のテーパ面に形成されていると共に、外径がコイルスプリング60の内径よりも若干小さく設定されて、該コイルスプリング60の他端部60bに所定隙間をもって挿通している。さらに、この保持部62cの軸方向の長さは、比較的短く形成されているが、図4に示すように、ボールナット46が最大右方向(最大バルブリフト位置)に移動した際に、先端縁が前記第1スプリングリテーナ61の保持部61cの先端縁と突き合わせ状態に当接した場合における両保持部61c、62cの全体の長さは、圧縮変形したコイルスプリング60の各線間が非接触状態になって、各線間に微小隙間が形成されるような長さに設定されている。
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず、例えば、機関のアイドリング運転時を含む低回転運転領域には、コントロールユニット40からの制御信号によって電動モータ36に伝達された回転トルクは、ボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴って各ボール54がボール循環溝49とガイド溝53との間を転動しながらボールナット46を図1に示すように、最大左方向へ直線状に移動させる。
これによって制御軸32は、図9に示すように、リンク部材48と連係アーム47とによって時計方向に回転駆動される。
これによって、制御カム33は、軸心P2が図9A、Bに示すように、制御軸32の軸心P1の回りを同一半径で回転して、肉厚部が駆動軸13から上方向に離間移動する。これにより、ロッカアーム23の他端部23bとリンクロッド25の枢支点は、駆動軸13に対して上方向へ移動し、このため、各揺動カム17は、リンクロッド25を介してカムノーズ部21側が強制的に引き上げられて全体が時計方向へ回動する。
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量は充分小さくなる。
したがって、かかる機関の低回転領域では、バルブリフト量が、図11のL1に示すように、最も小さくなることにより、各吸気弁2の開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
また、この時点における制御軸32に作用する正負の交番トルクは、十分小さく、したがって連係アーム47やリンク部材48を介してボールナット46に伝達される荷重も小さいことから、ボール螺子軸45及びボールナット46のねじ部に対する大きな集中荷重の発生はない。したがって、各ボール54によるボール螺子軸45とボールナット46との間の摩耗などの発生が防止される。
また、機関高回転領域に移行した場合は、コントロールユニット40からの制御信号によって電動モータ36が逆回転し、この回転トルクがボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴ってボールナット46が各ボール54を介して図1に示す位置から図2に示す右方向へ直線移動する。
これによって、制御軸32は、制御カム33を図9に示す位置から時計方向へ回転させて、図10A、Bに示すように軸心P2を下方向へ回動させる。このため、ロッカアーム23は、今度は全体が駆動軸13方向寄りに移動して他端部23bが揺動カム17のカムノーズ部21をリンクロッド25を介して下方へ押圧して該揺動カム17全体を所定量だけ反時計方向へ回動させる。
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量は大きくなる。
よって、かかる高回転領域では、各吸気弁2のバルブリフト量が、図11のL2に示すように、最大に大きくなり、該各吸気弁2の開時期が早くなると共に、閉時期が遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上して十分な出力が確保できる。
そして、この最大バルブリフトの場合における正負の交番トルクは、最小リフト時の場合よりも大きくなる。ところが、ボール螺子軸45とリンク部材48との間のなす角度が、最小リフト時よりは小さくなるため、ラジアル荷重は十分抑制され、前述のように、制御軸32から連係アーム47及びリンク部材48を介して伝達された大きな交番荷重を、各ボール54を介してボールナット46のガイド溝53とボール螺子軸45のボール循環溝49の円周方向の全域で受けることになるから、かかる入力荷重が円周方向に分散されて集中荷重の発生を十分に回避することができる。
したがって、ガイド溝53とボール循環溝49間での摩耗などの発生を効果的に防止できることから、装置の耐久性の向上が図れる。
しかも、前述のように、ボール螺子軸45の回転力をボール循環溝49とガイド溝53間で各ボール54がほぼ転がり接触状態で転動することによりボールナット46に伝達するようになっており、各部間の摩擦抵抗が極めて小さくなることから、ボールナット46の移動が円滑になると共に、移動応答性が向上する。この結果、機関運転状態変化に応じて制御軸32による吸気弁2,2のバルブリフト制御応答性も良好になる。
また、この実施形態によれば、コイルスプリング60のばね力によってボールナット46が出力軸45の軸方向に押圧されていることから、該ボールナット46と出力軸45との間のバックラッシが吸収される。
このため、ボールナット46に、前述した交番トルクが伝達されても、該ボールナット46の軸方向の振動が抑制されて、振動異音の発生や両者間の摩耗の発生を防止できる。
しかも、前記各スプリングリテーナ61,62の各保持部61b、62bが、伸縮変形するコイルスプリング60の内周面をガイドすることから、該コイルスプリング60の径方向の位置ずれを規制することができる。この結果、コイルスプリングの傾き変形を防止できる。
また、コイルスプリング60のほぼ最大圧縮時には、両保持部61b、62bの各先端縁が突き合わさって、それ以上のコイルスプリング60の圧縮変形を規制するストッパとしての機能するため、該コイルスプリング60のほぼ最大に近い範囲まで圧縮変形した場合でも、該コイルスプリング60の線間に微小隙間を形成することができる。
この結果、コイルスプリング60の線間接触による塑性変形が抑制されて、ばね力の低下を防止できる。
さらに、前記コイルスプリング60のボールナット46に対するばね力をバルブリフト量が漸次大きくなるにしたがって大きく作用させるため、大きな交番トルクが掛かる最大バルブリフト時での振動の発生を効果的に防止することが可能になる。一方、バルブリフト量が小さいときは、コイルスプリング60のばね力を最も減少させるようにしたので、例えば機関始動時などの時点でのボールナット46の移動応答性が良好になる。
また、コイルスプリング60のばね力は、第2スプリングリテーナ62を介して第2ボールベアリング51の固定された外輪51aに作用させる一方、ボールナット46とボール螺子軸45を介して内輪51bを外輪51aの押圧力と軸方向の反対方向(矢印方向)へ押圧することから、該内外輪51a、51b及びこの間に配置されたボール51cとの間のクリアランスが吸収されて、該各内、外輪51a、51bやボール51c間のガタ付きを防止することが可能になる。
また、第1ボールベアリング50は、内輪50b側がボール螺子軸45を介してコイルスプリング60のばね力によって図中左方向へ付勢されていることから、該内輪50bとボール50c及び外輪50aとの間のクリアランスも吸収されて、該第1ボールベアリング50のガタの発生も防止できる。
さらに、各スプリングリテーナ61,62の各保持部61c、62cの外周面が先端先細り状のテーパ面になっていることから、組付時におけるコイルスプリング60の各端部60a、60bを該保持部61c、62cに挿通し易くなって、組付作業性が良好になる。
また、ボールナット46の最大左方向の位置では、コイルスプリング60により制御軸32などを介して予め機関始動可能なバルブリフト位置(小リフト)に保持していることから、機関の始動性に影響がなくなり、該始動性が良好になる。
しかも、ボールナット46が軸方向のいずれの位置にあってもコイルスプリング60のばね力が作用していることから、該ボールナット46と出力軸45との間のクリアランスが常に吸収されて、両者45,46間のガタ付きの発生を常時防止することが可能になる。
さらに、前記リンク部材48を、板材をプレス成形によって折曲変形して形成するだけであるから、その成形作業が容易になると共に、中実の場合に比較して軽量化が図れる。このため、慣性質量が小さくなって、ボールナット46の移動負荷を小さくすることが可能になる。
また、この実施形態では、前記リンク部材48の傾倒や揺動を許容する枢支部55を切欠溝56の内部に設けたことから、枢支部55をボール螺子軸45に十分に近づけることが可能になり、したがって、リンク部材48を傾倒した際におけるユニット体全体のコンパクト化をさらに促進することができる。
つまり、枢支部55の一部を切欠溝56の内部に配置した状態になっていることから、リンク部材48も、その分、ボールナット46内に収容された形になる。
また、リンク部材48の枢支部55がボールナット46の外端部に形成されているので、ボールナット46の肉厚を大きくすることが可能になり、これによって十分な強度とスペースを確保することができる。
図12及び図13は第2の実施形態を示し、第1スプリングリテーナ63をボールナット46の端縁に一体に形成したものである。
すなわち、この第1スプリングリテーナ63は、ボールナット46の端部外周縁に、コイルスプリング60の一端部60aを弾持する円環フランジ状の基部63aが一体に形成されていると共に、ボールナット46の端面外周部にコイルスプリング60の一端部60aの内側に配置される保持部63bが一体に形成されている。
したがって、この実施形態によれば、第1スプリングリテーナ63をボールナット46と一体化することによって、部品点数の削減による製造コストの低減化が図れる共に、コイルスプリング60などの組付作業性も良好になる。なお、他の構成は第1の実施形態と同様であるから、第1の実施形態と同様な作用効果が得られる。
図14及び図15は第3の実施形態を示し、コイルスプリング60の形状が第2ボールベアリング51側が拡開状になるほぼ円錐状に形成されており、該コイルスプリング60は、一端部60aが第1の実施形態と同じ第1スプリングリテーナ61に弾持されている一方、他端部60bが前記第2ボールベアリング51ではなく、前記壁部35dの内面に弾持されている。
したがって、この実施形態では、コイルスプリング60のばね力が、ボールナット46を介してボール螺子軸45の軸心方向に作用することから、該ボールナット46とボール螺子軸45との間のバックラッシ隙間を効果的に吸収できる。また、第1ボールベアリング50の内輪50bも左方向に押圧されることから、ガタの発生を防止できる。
図16及び図17は第4の実施形態を示し、この実施形態は基本構成が第1の実施形態と同様であるが、相違するところは、コイルスプリング60のコイル長Lを短くしたものである。
すなわち、コイルスプリング60は、ボールナット46が最大左方向に位置している場合、つまり最小バルブリフト制御時には、一端部60a第1スプリングリテーナ61の基部61aの側端面61bから離間するような長さZに設定されており、その離間幅は機関始動時の最小バルブリフト域から車両の発進直後までのリフト高になるまでの長さに設定されている。
また、ボールナット46が最大右方向へ移動した際には、両保持部61c、62cの対向先端縁が突き当たってコイルスプリング60の線間に微小隙間を保持するなどの構成は第1の実施形態と同様である。
したがって、この実施形態によれば、機関始動時の最小バルブリフト域からから所定のバルブリフト域まではコイルスプリング60によるばね力がボールナット46に作用しないことから、この領域でのボールナット46の移動応答性が向上する。
また、前記所定のバルブリフト域を通過した後は、コイルスプリング60のばね力がボールナット46に作用して、該ボールナット46とボール螺子軸45との間のバックラッシを吸収するので、交番トルクによるボールナット46の振動や異音の発生を十分に抑制することができる。
前記実施形態から把握される前記請求項に記載した発明以外の技術的思想について以下に説明する。
請求項(1) 前記伝達機構は、前記制御軸と一体に揺動する連係アームと、該連係アームと前記移動ナットを揺動自在に連結するリンク部材とによって構成したことを特徴とする請求項1に記載の可変動弁装置のアクチュエータ。
請求項(2) 前記出力軸をボールベアリングによって回転自在に支持すると共に、該ボールベアリングの内輪と外輪のうち、いずれか一方を固定あるいは前記出力軸に対して固定する一方、他方を軸方向へ移動可能に設け、該他方側に前記スプリングリテーナを取り付けたことを特徴とする請求項2または3に記載の可変動弁装置のアクチュエータ。
この発明によれば、コイルスプリングのばね力がスプリングリテーナを介して前記ボールベアリングの軸方向へ移動可能な内輪あるいは外輪を軸方向へ押圧するため、該内輪や外輪及びこの間に配置されたボールとの間のクリアランスが吸収されて、該各内、外輪やボール間のガタ付きを防止することが可能になる。
請求項(3) 前記各スプリングリテーナの突起部の外周面を先端先細り状のテーパ面に形成したことを特徴とする請求項2または3に記載の可変動弁装置のアクチュエータ。
この発明によれば、突起部の先端部が小径になっていることから、コイルスプリングの各端部を該突起部に挿通し易くなって、組付作業性が良好になる。
請求項(4) 前記移動ナットが前記付勢手段によって最大一方向へ付勢された位置において、前記制御軸を介して可変機構により制御される機関弁のバルブリフト量を機関始動可能な小リフトとなるように設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の可変動弁装置のアクチュエータ。
この発明によれば、移動ナットの最大一方向の位置では、付勢手段により制御軸などを介して予め機関始動可能なバルブリフト位置(小リフト)に保持していることから、機関の始動性に影響がなくなり、該始動性が良好になる。
請求項(5) 前記付勢手段は、前記移動ナットに対して該移動ナットの軸方向への移動全範囲において付勢力を付与することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の可変動弁装置のアクチュエータ。
この発明によれば、移動ナットが軸方向のいずれの位置にあっても付勢手段の付勢力が作用していることから、該移動ナットと出力軸との間のクリアランスが常に吸収されて、両者間のガタ付きの発生を常時防止することが可能になる。
請求項(6) 前記コイルスプリングの一端部を、前記移動ナットの端縁にスプリングリテーナを介して常時弾接させたことを特徴とする請求項2または3に記載の可変動弁装置のアクチュエータ。
この発明によれば、前記請求項(5)と同様な作用効果が得られる。
請求項(7) 前記機関弁の作動状態を制御軸を介して可変にする可変機構は、機関のクランク軸に同期して回転し、外周に駆動カムが設けられた駆動軸と、支軸に揺動自在に支持されて、カム面がバルブリフター上面を摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムと、一端部が前記駆動カムに機械的に連係し、他端部がリンクロッドを介して揺動カムに連係したロッカアームとを備え、
機関運転状態に応じて前記ロッカアームの揺動支点を変化させることにより、揺動カムのカム面のバルブリフター上面に対する当接位置を変化させて機関弁のバルブリフトを可変にするように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の可変動弁装置のアクチュエータ。
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば電動モータ36の配置はエンジンルームのレイアウトによって自由に変更でき、図3、図4に示す左側ではなく反対の右側にしてもよい。また、回転付与機構としては電動モータの他に、油圧モータなどであってもよい。
さらに、ボール螺子の循環列を形成する例として、ディフレクタを示したが、チューブなどを用いて循環列を形成する方式であってもよい。また、螺子軸と移動ナットとは、ボール54を用いずにボルト、ナットの関係で直接噛合させることも可能である。
また、本発明は、吸気弁側の他に排気弁側あるいは両方の弁側に適用することが可能である。