JP4827212B2 - 電位差検知装置及び電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性と熱変色性を併せ持つインキに関する。また本発明は、これを応用した前記のインキが塗布された印刷物、それらの印刷物を利用した電位差検知装置、さらにはそれらの電位差検知装置を組み込んだ起電力検知機能付きの電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
導電性インキは、金属、金属酸化物、カーボン、導電性ポリマー等を通常のインキ組成物に加えたものが多く知られており、可逆的な熱変色性色剤は、J.H.DayによりChem.Rev.,68,649(1968)に開示されているように無機顔料としてはAg2 HgI4 、Cu2 HgI4 などが、又、有機物としては特開平61−261389号公報他に発色剤、顕色剤、および減感剤が配合された熱変色インキが開示されているが、導電性と熱変色性を併せ持ったインキ組成物は知られていない。導電性と熱変色性の双方を利用するものとして、電位差検知装置(通称:バッテリーチェッカー)や人形玩具の衣装等が知られている。これらは、前記の様な導電性インク組成物よりなる導電性の薄層と、熱変色性色剤よりなる薄層とを別々に形成させて、それらを重ね合わせることによって得られるものである。すなわち従来技術の電位差検知装置50は、図3の様に基板52の下層に導電性インク組成物等よりなる導電層53を設け、基板52の上層に熱変色性色剤よりなる熱変色層54を設けている。
【0003】
この導電層53は、両端部にある電池の電極への接触部55と、接触部55の内側にある導電部56と、中央付近にある発熱部57から構成されている。導電部56と発熱部57は同一の導電性インク組成物からなり、発熱部57は導電部56より幅が狭いことにより、その電気抵抗値が導電部56の値より大となる構成となっている。基板52の上層の熱変色層54には、導電層53の発熱部57と平面上で重なる範囲に熱変色性色剤よりなる熱変色部58が設けられている。
【0004】
これにより電位差検知装置の接触部55を電池の電極に接触させ、導電層53に通電されたとき、発熱部57の発熱が熱変色部58に伝わって熱変色層54が変色する。そのため変色の状況により電池の起電力の変化が検知出来る仕組みになっている。上記の導電層53および熱変色層54を構成する手法は、導電性インキ組成物および熱変色性インキ組成物をフルム状基板52上に印刷する等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の様に、電位差検知装置や人形玩具の衣装等への用途に対して、導電性と熱変色性の両方の発現を利用するためには、導電性材料と熱変色性材料の異なる材料を一層ずつ個別に設置する必要があり、構成が複雑であった。電位差検知装置では、導電層の発熱部は電気抵抗値を他の部位より大幅に増大させる必要から、幅を狭くするか又は層厚を薄くする必要があり、製造工程が複雑であった。さらには、発熱部の幅を狭くすることにより、熱変色層の熱変色部の幅も狭くなり、電位差検知装置に通電された時の変色状態が見にくくなるため、電位差検知装置としての機能が不十分になりがちであった。また発熱部と熱変色部の間に基板があるので発熱部の熱が熱変色部に伝わりにくいため、電位差検知装置の使用の際の電池の消耗が大きいなどの欠点があった。
【0006】
本発明の目的は導電性と熱変色性の両方の発現を複合材料に因らずに達成出来るインク組成物、それらインク組成物を塗布した印刷物、それら印刷物を応用した電位差検知装置、および起電力残量判定機能付き電池のそれぞれの提供を課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そして上記した課題を解決するための請求項1の発明は、導電性材料と熱変色性材料とを含有するインキ組成物が塗布された導電性と熱変色性を兼ね備えた塗布面と、前記の塗布面と導通する導電性の接点が設けられたことを特徴とする電位差検知装置である。
本発明の電位差検知装置では、被検知部とインキ組成物の塗布面とを接点で繋ぐことにより、被検知部の両端の間に電位差がある場合には上記塗布面に電流が流れて塗布が変色するので、塗布されるインク組成物に含まれる導電性材料と熱変色性材料の仕様構成を、適宜に調整することにより、被検知部の両端の電位差を検知することが出来る。
【0008】
また請求項2の発明は、フルム基板に、導電性材料と熱変色性材料とを含有するインキ組成物が塗布された熱変色部と、電池の電極への接触部が設けられ、さらに前記熱変色部と接触部を導通する導電部が設けられたことを特徴とする電位差検知装置である。
本発明の電位差検知装置(バッテリーチェッカー)は、接触部の他、フィルム状基板とフィルム状基板に形成された熱変色部により構成され、従来の電位差検知装置が導電層と熱変色層の2層が必要であったのに対して、熱変色と導電の作用を併せ持つ一層になり、従来よりも簡単な構造である。
【0009】
これらの発明のインキ組成物は、導電性材料と熱変色性材料とが、混合、溶解、エマルジョン化などにより単一相をなしており、均一物でありながら導電性と熱変色性を併せて発現することが出来る。
【0010】
また請求項の発明は、導電性材料は金属、金属酸化物、カーボン、導電性ポリマーの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電位差検知装置である。
本発明のインキ組成物を構成する導電性材料は、金属、金属酸化物、カーボン、導電性ポリマーの少なくとも一つ以上を含んでおり、導電性材料の導電性の程度を適宜に調整することが出来る。
【0011】
また請求項の発明は、熱変色性材料は、無機顔料、および/又は(1)電子供与性呈色性有機化合物である発色剤と、(2)該発色剤と反応して発色および変色させる顕色剤および(3)所定の温度範囲外では発色剤と顕色剤との反応を抑制することにより変色を抑止し、所定の温度範囲内で変色を促す作用をする減感剤とを含有し、温度変化により可逆的に変色することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電位差検知装置である。
本発明のインキ組成物を構成する熱変色性材料は、発色剤、顕色剤、および減感剤を適量に含有させ、さらに、減感剤の種類の選択により、任意の温度で可逆的に変色(消色を含む)させることが出来る。
【0012】
また請求項の発明は、外部に露出する電極と、内部又は外部において電極と接する接触部と、導電性材料と熱変色性材料とを含有するインキ組成物が塗布された熱変色部と、スイッチ部とから構成され、スイッチ部の接続により、前記熱変色部に通電され、当該熱変色部が発熱して変色することにより、起電力の残量確認が可能であることを特徴とする電池である。
本発明の電池は、熱変色と導電の作用を併せ持つ熱変色部とスイッチ部が組み込まれていて、スイッチ部を操作して接続することより、熱変色部が電池の正電極および負電極から通電され、自らの内部抵抗によって発熱して変色するので、必要に応じて直ちに電池の起電力の残量が確認出来る。
そのため本発明によると電池の起電力の残量を容易に確認出来、かつ導電層は熱変色層を兼ねるので構造が簡単である。
【0013】
また請求項6の発明は、導電性材料は金属、金属酸化物、カーボン、導電性ポリマーの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項5に記載の電池である。
【0014】
また請求項7の発明は、熱変色性材料は、無機顔料、および/又は(1)電子供与性呈色性有機化合物である発色剤と、(2)該発色剤と反応して発色および変色させる顕色剤および(3)所定の温度範囲外では発色剤と顕色剤との反応を抑制することにより変色を抑止し、所定の温度範囲内で変色を促す作用をする減感剤とを含有し、温度変化により可逆的に変色することを特徴とする請求項5又は6に記載の電池である。
【0015】
また本発明に関連する発明は、本発明に用いるインキ組成物を塗布した印刷物である。
本発明に関連する発明の印刷物は、印刷物のインキの塗布部分に通電されると、自らの内部抵抗によって印刷物の印刷内容が変色(発色および消色)するので、上記の電位差検知装置や人形玩具の衣装の他にも、カード型の玩具、教育資材などの多くの応用が可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を説明する。本発明のインキ組成物は後記する導電性材料と熱変色性材料に溶剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤等を加え、通常の混和装置などで均一に混合することによって得られる。溶剤としては有機溶剤又は、水とアルコール類を、単独または溶解物の相溶性に合わせて適宜の割合で混合して用いられる。紫外線硬化性樹脂オリゴマーに直接混和する方法も適用できる。
【0017】
さらに本発明のインキ組成物は、上記導電性材料と熱変色性材料が内包物であるマイクロカプセル化されたものであっても良い。マイクロカプセル化法は公知の、例えば、上記導電性材料と熱変色性材料の混合溶液に尿素とホルマリンを加えて、尿素樹脂のカプセル壁内に導電性材料と熱変色性材料を内包させる方法が採用出来る。
【0018】
本発明のインキ組成物に使用可能な導電性材料には、公知の導電性インキに使用される様な、金属、金属酸化物、カーボン、導電性ポリマーの少なくとも一つ以上を含むものが挙げられる。
【0019】
また本発明のインキ組成物に使用可能な熱変色性材料は、発色剤、顕色剤、減感剤を含み、所定の温度において可逆的に変色する様にそれらの配合が調整された公知のものである。発色剤は、一般には呈示色を有する電子供与性有機化合物が使用出来る(下記(1)参照)。
顕色剤は、電子受容性化合物であって、発色剤と反応して発色または変色させる物質であり、フェノール類等が使用される(下記(2)参照)。
減感剤は、所定の温度範囲外では発色剤と顕色剤との反応を抑制することにより変色を抑止し、所定の温度範囲内で変色を促す作用をする物質であって、アルコール類や有機酸エステル類等が使用される(下記(3)参照)。
【0020】
(1)発色剤(電子供与性有機化合物)の具体例を以下に例示する。
フルオラン類…3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノベンゾ(a)−フルオラン、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3−アミノ−5−メチルフルオラン、2−メチル−3−アミノ−6,7−ジメチルフルオラン、2−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、6′−(エチル(4−メチルフェニル)アミノ)−2′−(N−メチルフェニルアミノ)−スピロ(イソベンゾフラン−1(3H),9′−(9H)キサンテン)−3−オンなど。
ジアリールフタリド類…クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトンなど。
ポリアリールカルビノール類…ミヒラーヒドロール、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノールなど。
ロイコオーラミン類…N−(2,3−ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、N−ベンゾイルオーラミン、N−アセチルオーラミンなど。
ローダミンβラクタム類…ローダミンβラクタムなど。
インドリン類…2−(フェニルイミノエチリデン)−3,3−ジメチルインドリンなど。
スピロピラン類…N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、8−メトキシ−N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピランなど。
【0021】
(2)また顕色剤(電子受容性化合物)の具体例を以下に例示する。
フェノール類…ビスフェノールA、p−フェニルフェノール、ドデシルフェノール、o−ブロモフェノール、p−オキシ安息香酸エチル、没食子酸メチル、フェノール樹脂など。
フェノール類の金属塩…フェノールのNa、K、Li、Ca、Zn、Al、Mg、Ni、Co、Sn、Cu、Fe、Ti、Pb、Moなどの金属塩。
芳香族カルボン酸および炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸類…フタル酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸など。
カルボン酸の金属塩…オレイン酸ナトリウム、サリチル酸亜鉛、安息香酸ニッケルなど。
酸性リン酸エステルおよびその金属塩…ブチルアシッドフォスフェート、2−エチルヘキシル−アシッドフォスフェート、ドデシルアシッドフォスフェート、ジブチルフォスファイト、ジトリルフォスファイトならびにこれらエステルのNa、K、Li、Ca、Zn、Al、Mg、Ni、Co、Sn、Fe、Ti、Pb、Moなどの金属塩。
トリアゾール化合物…1,2,3−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾールなど。
チオ尿素およびその誘導体…ジフェニルチオ尿素、ジ−o−トルイル尿素など。
ハロヒドリン類…2,2,2−トリクロロエタノール、1,1,1−トリブロモ−2−メチル−2−プロパノール、N−3−ピリジル−N´−(1−ヒドロキシ−2,2,2−トリクロロエチル)尿素など。
ベンゾチアゾール類…2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4´−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾールのZn塩など。
これらの中では、フェノール類が最も好ましい。
【0022】
(3)さらに減感剤の具体例を以下に例示する。
アルコール類…n−セチルアルコール、n−オクチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ヘキシレングリコールなど。
エステル類…ミリスチン酸エステル、ラウリン酸エステル、フタル酸ジオクチルなど。
ケトン類…メチルヘキシルケトン、ベンゾフェノン、ステアロンなど。
エーテル類…ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジステアリルエーテルなど。
酸アミド化合物類…オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ラウリン酸N−オクチルアミド、カプロン酸アニリドなど。
炭素数6以上の脂肪酸…ラウリン酸、ステアリン酸、2−オキシミリスチン酸など。
芳香族化合物…ジフェニルメタン、ジベンジルトルエン、プロピルジフェニル、イソプロピルナフタリン、1,1,3−トリメチル−3−トリル−インダン、ドデシルベンゼンなど。
チオール類…n−デシルメルカプタン、n−ミリスチルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン、イソセチルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンなど。
スルフィド類…ジ−n−オクチルスルフィド、ジ−n−デシルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジエチルフェニルスルフィド、ジラウリルジチオプロピオネートなど。
ジスルフィド類…ジ−n−オクチルジスルフィド、ジ−n−デシルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジナフチルジスルフィドなど。
スルホキシド類…ジエチルスルホキシド、テトラメチレンカルボキシド、ジフェニルスルホキシドなど。
スルホン類…ジエチルスルホン、ジブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジベンジルスルホンなど。
アゾメチン類…ベンジリデンラウリルアミン、p−メトキシベンジリデンラウリルアミン、ベンジリデンp−アニシジンなど。
脂肪酸一級アミン類…オレイン酸ステアリルアミン、ステアリン酸ミリスチルアミン、ベヘニン酸ステアリルアミンなど。
これらの中では、アルコール類、エステル類などが最も好ましい。
【0023】
上記の熱変色性材料は、インキなどの液状着色剤とする場合は、特定の発色剤および顕色剤の溶剤となり得る減感剤を選んでこれに溶解させれば良く、また発色剤、顕色剤および減感剤を別の溶剤に溶解しても良く、その調整法は任意であって特に限定されるものではない。また上記したインキ組成物は、印刷物に使用することができる。すなわち上記したインキ組成物を使用して、紙や布あるいは樹脂フィルム等の公知の基材に印刷することができる。
【0024】
たとえば透明なフィルム状の基板に上記したインキ組成物をもって印刷して導電性と熱変色性を兼ね備えた塗布面を形成させることができる。さらにこの熱変色部の両端部に、良導電性の金属が蒸着された通電接触部を設けて、電位差検知装置を構成することができる。すなわち通電接触部の内側に通常の導電性インキを塗布(印刷)して導電部を形成し、さらにその内側に前記した本発明のインキ組成物をもって熱変色部を設けて電位差検知装置を製作することができる。
【0025】
上記の本発明のインキ組成物の塗布は通常の印刷装置を使用することが大量生産に好適である。本発明の印刷物の用途は、印刷の内容と仕様(色、形状等)を種々に組み合わせることにより、前記した電位差検知装置や人形玩具の衣装等以外にも多くのものが可能になる。
【0026】
例えば変色部の印刷に用いられるインキ組成物の温度と変色の関係、変色部のインキ組成物が有する電気抵抗値を適宜に設計することにより、単なる電位差の有無だけでなく、正確な電位差の値を検出することも出来る。
【0027】
【実施例】
以下、本発明のインキ組成物、印刷物を応用した電位差検知装置、および起電力残量判定機能付きの電池の実施例を具体的に説明する。
【0028】
本発明の第1実施例のインキ組成物は、金色の導電性インキ(導電材として銀粉が含有されている。日本ぺルノックス社製)1gと、平常色が赤であって45℃以上で無色になる熱変色性色素(ロイコ染料、顕色剤、減感剤を公知の方法でマイクロカプセルにしたもの)0.5gを混合して調製したもので、平常色は赤味の金色である。
【0029】
このインキ組成物を、白色のポリエチレンテレフタレート樹脂のフルム上に、3mm幅で直線状に塗布し、100℃、30分で乾燥し、厚み100μmの塗膜を得た。この塗膜の両端に1.5Vの乾電池および、1.5Vのリチウムイオン二次電池で通電したところ、いずれの場合も、赤味の金色が導電性インキのみの色である金色に変色し、通電を止めると平常色である赤味の金色に戻ることが確認された。
【0030】
次に本発明の第2実施例の電位差検知装置を説明する。図1は本発明の第2実施例の電位差検知装置1の正断面図(a)、および(a)のA−A透視図(b)である。
【0031】
電位差検知装置1は、透明なフィルム状の基板2と、下層の導電層3とが主構成である。導電層3は、両端部にある良導電性の金属が蒸着された通電接触部4と、通電接触部4の内側にある通常の導電性インキが塗布された導電部5と、その内側にある上記のインキ組成物が塗布された熱変色部6とにより構成されており、熱変色部6の面積比率は導電層3の主要をなす。さらに導電層3は通電接触部4を除く部分の下層が電気絶縁性の保護層9で覆われている。導電層3には導電部5は不可欠ではなく、通電接触部4と熱変色部6のみの構成であっても良い。
【0032】
フィルム状基板2の材質としては透明で絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、耐熱性と熱伝導性が良好で、熱変形が少なく、電位差検知装置として使い易いために、可撓性が良好で、容易に湾曲および復元するものが好ましい。透明性は電位差検知装置の使用時は導電層3側を電池に接触させ、基板2側から熱変色部の表示を見るために必要であり、透明性が長時間劣化しない材質が好ましい。通常はポリイミド、ポリエステルなどが利用される。基板2の厚さは 0.05 〜0.8 mm程度とするのが好ましい。保護層9の材質は導電層3及びフルム基板2との密着性に優れたものであれば特に限定されず、通常の塗料に使用されているポリアミド、キシレン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、などの溶液の塗布によって形成される。保護層9はポリエチレンフィルムのラミネートとしても良い。厚さは特に限定されないが、0.01〜0.05mm程度とする。
【0033】
熱変色部6は、本発明の電位差検知装置1の最も重要な部分であり、バッテリーの起電力の変化に追随して、変化に対応した印刷内容に変化する様に設計されている。本実施例では熱変色部6は図1の様に6a、6b、6cに3分割されており、6a〜6cまでの間で幅が漸次に広くなっている。これによって起電力が正常の場合は、たとえば6a、6bが高温となって変色する範囲となり、残る6cは低温であって変色しない。
【0034】
一方、電池の起電力が低下すると、低温の範囲が6bまで拡がり、起電力が電池の使用限界以下の場合は6aまで低温域が広がる。この熱変色部6は、基板2の中央に位置し、導電層3の主要部となる十分な面積を占めており、色の変化が明確に視認されるので、電池の使用可否が的確に判断出来る。
【0035】
次に本発明の第3実施例の起電力残量判定機能付き電池を説明する。図2は本発明の第3実施例の起電力残量判定機能付き電池を説明する分解斜視図である。
【0036】
電池10は、携帯電話等に用いられる充電可能な二次電池であって、略長方形の電池本体11と、起電力残量判定部材12より構成される。起電力残量判定部材12は電池本体11に接する基材24と、基材24内部を摺動可能なフィルム状基板25よりなる。基材24は基板26と支持部材27より構成される。また基板26の裏面には粘着層21が形成されている。
【0037】
基板26は白色の樹脂、またはラミネート加工した白色の紙である。基板26の寸法は、電池本体11の電極22a及び22bの露出した表面全体を網羅する大きさである。また基板26は電極22a及び22bと同寸法の穴28,28’を有している。穴28,28’は電池本体11と基板26を貼り合わせたとき、電極22a及び22bが完全に露出する位置に形成されている。
【0038】
一方支持部材27は略「コ」の字状をした透明の部材であり、合成樹脂または天然樹脂よりなる。また支持部材27の概形寸法は、基板26と同じである。支持部材27は、その外側の「コ」の字状の辺において基板26と完全一体的に接着されている。このとき基板26と支持部材27は、両者の間にフィルム状基板25を挟みこんで、さらにフィルム状基板25が摺動可能で、フィルム状基板25を摺動させた時、フィルム状基板25の接触部23a及び23bが電池本体11の電極22a及び22bに接触可能なように接着される。即ち、接触部23a及び23bを有する摺動可能なフィルム状基板25は、起電力残量判定部材12のスイッチ部14をなす。
【0039】
フィルム状基板25は耐熱性に優れ、熱伝導性の高い透明の樹脂であり、フルム状基板25の摺動方向と平行な辺の長さは基材24の長さに比べて短い。またフルム状基板25は内部に熱変色部16と接触部23a及び23bを有している。フィルム状基板25は、接触部23a及び23bの大半を露出させたまま熱変色部16をフィルム状基板25に使用する樹脂でラミネートするかまたは、同素材の樹脂を塗布することで形成される。
【0040】
熱変色部16は、基板25に本発明のインキ組成物が塗布された塗膜であって、その長さ方向の両端部に接触部23a及び23bが設けられている。熱変色部16は、塗膜をなすインキ組成物に含有される発色材、顕色材、および減感材の種類と配合量を適宜に設計することにより、任意の温度において可逆的に変色する性質を有する。また接触部23a及び23bは略円錐形状をしていて、その大半がフィルム状基板25から露出しており、フィルム状基板25に覆われた底面部において熱変色部16と完全に接続している。
【0041】
本実施例の電池10を組立てる際は、基材24の間にフィルム状基板25を挿入し、基材24を電池本体11に貼り付けるだけでよい。また使用の際は、フィルム状基板25を摺動して、接触部23a及び23bを基板26の穴28,28’から露出した電池本体11の電極22a及び22bに接触させるだけでよい。このようにすると、電極22a及び22bから接触部23a及び23bを経て熱変色部16に通電し、熱変色部16は自身の内部抵抗によって発熱し、塗布されたインキ組成物が変色する。これによって使用者は視覚的に電池の起電力の残量を判別することが出来る。
【0042】
一方、電池の起電力の残量を判別しない場合は、フィルム状基板25を摺動させ、接触部23a及び23bと電極22a及び22bが接触しないようにすればよい。このとき接触部23a及び23bがフィルム状基板25を撓ませ、これによってフィルム状基板25は基板26と支持部材27の間で挿まれ固定される。
【0043】
以上の第1実施例の電位差検知装置は、熱変色部が通電により直接に発熱するので効率が良く、電位差検知装置の使用時の電池消耗が少ない。第2実施例の電池も導電層は自身の発熱により変色するので効率が良く、起電力残量判別時の電池消耗が少なく、簡単な構造のものである。
【0044】
【発明の効果】
本発明のインキ組成物は均一物でありながら、導電性と熱変色性を併せて発現出来るので、本インキ組成物による本発明の印刷物は、通電により印刷内容が変色する特徴の玩具や情報資材への広範囲の応用が可能である。また本発明の印刷物を応用して、電位差検知装置を容易に構成出来る。本発明のインキ組成物を応用した電位差検知装置は、熱変色層を導電層と別に設ける必要がない。さらに電位差検知時に熱変色部が直接的に発熱するので、効率が良く、電池の消耗が少ない。また本発明のインキ組成物が塗布された導電部を有する起電力残量判定機能付きの電池は、熱変色部自身の発熱により変色するため効率が良いので起電力の残量判別時の電池消耗が少なく、構造が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第2実施例の電位差検知装置1の正断面図(a)、および(a)のA−A透視図(b)である。
【図2】 本発明の第3実施例の起電力残量判定機能付き電池10を説明する分解斜視図である。
【図3】 従来技術の電位差検知装置50の正断面図(a)、および平面図(b)である。
【符号の説明】
1 電位差検知装置
2 基板
3 導電層
4 通電接触部
5 導電部
6 熱変色部
9 保護層
10 電池
11 電池本体
12 起電力残量判定部材
14 スイッチ部
16 熱変色部
21 粘着層
22a,22b 電極
23a,23b 接触部
24 基材
25 フィルム状基板
26 基板
27 支持部材
28,28’ 穴

Claims (7)

  1. 導電性材料と熱変色性材料とを含有するインキ組成物が塗布された導電性と熱変色性を兼ね備えた塗布面と、前記の塗布面と導通する導電性の接点が設けられたことを特徴とする電位差検知装置。
  2. ルム基板に、導電性材料と熱変色性材料とを含有するインキ組成物が塗布された熱変色部と、電池の電極への接触部が設けられ、さらに前記熱変色部と接触部を導通する導電部が設けられたことを特徴とする電位差検知装置。
  3. 導電性材料は金属、金属酸化物、カーボン、導電性ポリマーの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電位差検知装置
  4. 熱変色性材料は、無機顔料、および/又は(1)電子供与性呈色性有機化合物である発色剤と、(2)該発色剤と反応して発色および変色させる顕色剤および(3)所定の温度範囲外では発色剤と顕色剤との反応を抑制することにより変色を抑止し、所定の温度範囲内で変色を促す作用をする減感剤とを含有し、温度変化により可逆的に変色することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電位差検知装置
  5. 外部に露出する電極と、内部又は外部において電極と接する接触部と、導電性材料と熱変色性材料とを含有するインキ組成物が塗布された熱変色部と、スイッチ部とから構成され、スイッチ部の接続により、前記熱変色部に通電され、当該熱変色部が発熱して変色することにより、起電力の残量確認が可能であることを特徴とする電池。
  6. 導電性材料は金属、金属酸化物、カーボン、導電性ポリマーの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項5に記載の電池。
  7. 熱変色性材料は、無機顔料、および/又は(1)電子供与性呈色性有機化合物である発色剤と、(2)該発色剤と反応して発色および変色させる顕色剤および(3)所定の温度範囲外では発色剤と顕色剤との反応を抑制することにより変色を抑止し、所定の温度範囲内で変色を促す作用をする減感剤とを含有し、温度変化により可逆的に変色することを特徴とする請求項5又は6に記載の電池。
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