JP4826819B2 - 電波吸収体 - Google Patents

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Description

本発明は、W型六方晶フェライトの粉体とマトリックスとを含有する電波吸収材を用いた電波吸収体に関する。
W型六方晶フェライトの粉体とマトリックスからなる電波吸収体は、X帯(周波数8〜12.5GHz)やKu帯(周波数12.5〜18GHz)において、広帯域な電波吸収特性となることが知られている。W型六方晶フェライトの組成式は、CoxMe2-xBaFe16O27と示される。ここで、Meは2価の金属の1種または2種以上である。
下記特許文献1は、8〜12GHzの周波数では広帯域化および薄型化が実現でき、かつ12GHz以上の周波数でも使用できる電波吸収体の提供を目的とし(第2頁左欄第7〜10行)、CoxMe2-xBaFe16O27(0.6≦x≦0.7)で示される組成のフェライトの少なくとも1種をモル比で総量10/12以上含むフェライト粉末とマトリックスとを含有する電波吸収材料と、反射板とを有する電波吸収体を開示している(第2頁左欄第14〜24行)。
下記特許文献2は、組成式がAMe2Fe16O27で示されるW型六方晶フェライトの結晶構造のc軸異方性化合物を有し、組成式のAはCa, Ba, Sr, Pbの一種又は二種以上であり、総量が2モルのMeは、Coを0.8モル以下、並びにMg, Mn, Fe, Ni, Cu, Znの一種又は二種以上を含むフェライト電波吸収材料を開示している(段落[0017])。
特公平5−16679号公報 特開2005−347485号公報
特許文献1の図4には、組成式CoxMe2-xBaFe16O27のMeをZnとし、x=1.5またはx=1.0とした場合の電波吸収特性が示されている。x=1.5の場合には、Ku帯において良好な電波吸収特性となっているが、周波数12GHz程度未満では-10dB以下の反射量となっており、電波吸収特性の著しい低下が見られる。x=1.0の場合には、X帯において良好な電波吸収特性となっているが、周波数8GHz程度未満では-10dB以下の反射量となっており、電波吸収特性の著しい低下が見られる。
特許文献2の図2には、特許文献2の表1の組成No.3(組成式AMe2Fe16O27で、AがBa0.5とSr0.5であり、Me2はCo0.6とZn1.4である)、組成No.4(組成式AMe2Fe16O27で、AがBa1.0であり、Me2はCo0.5とZn1.5である)の焼結用粉末を用い、これとポリカーボネート樹脂とを重量比75:25として複合電波吸収材を製作し、金属板で裏打ちし、電波吸収体を製作した場合の電波吸収特性が示されている。X帯及びKu帯において良好な電波吸収特性となっているが、周波数8GHz程度未満では-10dB以下の反射量となっており、電波吸収特性の著しい低下が見られる。
このように、特許文献1及び2の技術はいずれも、X帯(周波数8〜12.5GHz)において良好な電波吸収特性を実現しうるものの、X帯未満の周波数範囲では著しく電波吸収特性が低下し、X帯未満の周波数帯を含めた広帯域な電波吸収特性を実現できないという問題を抱えていた。
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、X帯もしくはそれ以上の周波数帯の電波吸収特性を良好に保ちつつ、X帯未満の周波数範囲において電波吸収特性の著しい低下を防止することの可能な電波吸収体を提供することにある。
本発明のある態様は、電波吸収体である。この電波吸収体は、
電波吸収材からなる平板状の電波吸収体であって、
前記電波吸収材は、組成式が CoxMe2-xBaFe16O27 で示されるW型六方晶フェライトの粉体と、マトリックスとを含有
前記MeはZnであり、前記xは 0.6≦x≦1.1 であり、前記マトリックスの中に中空状の粉体が含まれ、少なくとも電波吸収の対象となる周波数範囲において前記電波吸収材の比誘電率が5.5以下であり、6〜15GHzの周波数範囲における垂直入射に対して10dB以上の電波吸収特性を有し、かつ8〜12.5GHzの周波数範囲における垂直入射に対して20dB以上の電波吸収特性を有することを特徴とする。
ある態様の電波吸収体において、さらに、7〜14GHzの周波数範囲における垂直入射に対して15dB以上の電波吸収特性を有してもよい。
本発明によれば、W型六方晶フェライトの組成を最適化することによってX帯もしくはそれ以上の周波数帯の電波吸収特性を良好に保ちつつ、マトリックスに中空状の粉体を含有させることによって電波吸収材の誘電率の低下させ、これによりX帯未満の周波数範囲において電波吸収特性の著しい低下を防止することが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、本発明の実施の形態に係る電波吸収材100の概念図である。電波吸収材100は、W型六方晶フェライトの粉体12と、マトリックス14とを含有し、マトリックス14中に中空状の粉体16が含まれる。W型六方晶フェライトの粉体12は組成式が CoxMe2-xBaFe16O27 で示され、Meは2価の金属イオン状態となり得る金属、Mg, Mn, Fe, Ni, CuおよびZnから選ばれた1種または2種以上である。また、xは 0.6≦x≦1.7 の範囲である。電波吸収材100の誘電率は、マトリックス14中に中空状の粉体16(詳細は後述)を含有することによって、中空状の粉体16を含有しない場合と比較して低くなる。
中空状の粉体16は誘電体からなるものが好ましく、例えばシリカの中空体、ガラスの中空体や樹脂の中空体から選ばれた1種または2種以上であってもよい。中空体は、粒子径が10〜120μmであって、真密度が0.2〜0.5g/cm3であってもよい。さらに、中空体は、バルーン構造を有してもよく、球体形状であってもよい。ガラスの中空体は、硼珪素ガラスを主成分とするものであってもよい。また、中空体の内部は大気圧もしくは減圧空気、又は真空であってもよい。
例えば、硼珪素ガラスを主成分とし、真密度が0.22〜0.28g/cm3である中空体をシリコンゴムと50vol.%:50vol.%(vol.%は体積比を表す)で混合した場合の複素比誘電率εrm は、2.02-j0.007である。シリコンゴムのみの複素比誘電率(すなわち、シリコンゴム100vol.%の複素比誘電率εr0)2.93-j0.015と比較すると、中空体を混合したことによって、中空状の粉体とマトリックスの混合体の複素比誘電率が低下していることがわかる。下記の数式1によって、この中空体のみ(すなわち、等価的に中空体100vol.%)の複素比誘電率(すなわちεrg)を求めると、1.39-j0.003である。また、真密度が0.33〜0.39g/cm3である場合には、εrg =1.51-j0.004、真密度が0.42〜0.48g/cm3である場合には、εrg =1.58-j0.004であった。中空状の粉体として、このような中空材を用いることによって、電波吸収材100の比誘電率を5.5以下にすることが可能である。
Figure 0004826819
中空状の粉体16は、図2のように中空体が連なったものであってもよく、あるいは中空体が凝集したものであってもよい。中空状の粉体16の表面は、疎水性となるように改質されていてもよい。この場合、ゴムや樹脂からなるマトリックス14と混合しやすくなり、また、マトリックス14と結合し易くなるため、電波吸収体を構成した場合の強度を維持し易い。また、マトリックス14中に中空状の粉体16を含有するので、電波吸収体として軽量化しやすい。
マトリックス14は、ゴム、樹脂、無機バインダー、無機・有機ハイブリッドバインダーからなってよい。ゴムは、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、塩素化ポリエチレンゴムなどから選ばれた少なくとも1種を含むものであってよい。樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレンプロピレン・スチレン共重合)樹脂、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合)樹脂などから選ばれた少なくとも1種を含むものであってよい。
また、マトリックス14は未硬化樹脂であってもよく、この場合、電波吸収材は未硬化電波吸収材となる。未硬化樹脂としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂が挙げられる。熱硬化型樹脂としては、エポキシ系樹脂が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、エポキシ系樹脂が挙げられる。マトリックス14が未硬化樹脂である場合には、硬化剤の添加や熱照射、紫外線照射によって、未硬化電波吸収材を硬化させて電波吸収体を製作する。この場合、未硬化電波吸収材を任意の形状にした後に電波吸収体を製作できるので、複雑な形状の電波吸収体を製作することも可能である。
W型六方晶フェライトの粉体12と、中空状の粉体16と、マトリックス14とを含有する電波吸収材100は、電波吸収塗料であってもよい。この場合、電波吸収材100は塗布後に硬化するものである。
電波吸収材は、さらに強化繊維を含有していてもよい。強化繊維は、誘電体からなるものが好ましく、ガラス繊維、樹脂繊維(ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維)から選ばれた1種または2種以上であってもよい。電波吸収材は、強化繊維からなる布の片側または両面に電波吸収材料(W型六方晶フェライトの粉体、マトリックス、中空状の粉体を含む)からなる層を設けたものであってもよい。強化繊維からなる布は、不織布や織布の布状であってもよい。また、強化繊維からなる布と電波吸収材料からなる層状の電波吸収材を複数重ね合わせて電波吸収体を構成してもよい。
前記電波吸収材を平板状あるいはシート状等の所定形状にした電波吸収体は、電波反射体で裏打ちされたものであってもよい。電波反射体としては、金属板、金属メッシュ、金属被覆樹脂製クロス、カーボン繊維クロス、金属または金属酸化物被覆フィルム、金属または金属酸化物被覆ガラスなどが挙げられる。金属板としては、鉄板、アルミ板、銅板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス板、チタン板などが挙げられる。金属メッシュは、織布状であっても、不織布状であってもよく、その材質は、鉄、銅、ステンレスなどであってもよい。カーボン繊維クロスは、織布状であっても、不織布状であってもよい。金属被覆樹脂製クロスは、織布状であっても、不織布状であってもよく、樹脂製クロスをなす樹脂繊維の表面にニッケル、銅、銀、金、パラジウムなどの金属薄膜を形成したものであってもよい。金属または金属酸化物被覆フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂からなるフィルムの表面に、アルミ、金、銀、銅などの金属やITO(酸化インジウム錫)、酸化錫などの金属酸化物からなる薄膜を形成したものであってもよい。金属または金属酸化物被覆ガラスは、ガラスの表面に、アルミ、金、銀、銅などの金属やITO(酸化インジウム錫)、酸化錫などの金属酸化物からなる薄膜を形成したものであってもよい。
また、電波反射体は、金属被覆樹脂製クロスまたはカーボン繊維クロスに未硬化樹脂を含浸した未硬化樹脂含浸金属被覆樹脂製クロスまたは未硬化樹脂含浸カーボン繊維クロスであってもよく、マトリックス14が未硬化樹脂からなる未硬化電波吸収材100を用いて電波吸収体を製作する場合に好適に用いられる。この場合、未硬化樹脂含浸金属被覆樹脂製クロスまたは未硬化樹脂含浸カーボン繊維クロスの未硬化樹脂と、未硬化電波吸収材100の未硬化樹脂は、同一であることが好ましい。なお、電波反射体の形状は、板状のものに限らず、円筒、角柱、球面、楕円球面やさらに複雑な形状のものであってもよい。
裏打ちは、接着層を介してなされてもよく、接着層は、接着剤や両面テープであってよい。また、裏打ちは、粘着層付金属箔テープを貼り付けることによってなされてもよい。電波吸収体が電波反射体で裏打ちされない場合や、裏打ちが不完全な場合には、電波吸収体の電波が到来する面の反対側の状態(図3参照)を考慮して電波吸収体を設計する必要がある。到来電波を遠方界として取り扱える場合には、電波吸収体の電波が到来する面の反対側の電波透過方向の入力インピーダンス(図3参照)を用いて電波吸収体を設計すればよい。
本実施の形態によれば、下記の通りの効果を奏することができる。
(1) 上記特許文献1(第2頁左欄第42〜43行)にも記載されているように、W型六方晶フェライトの粉体の組成式 CoxMe2-xBaFe16O27 の前記xが x<0.6 あるいは x>1.7 であると高周波特性が低下してしまうところ、本実施の形態の電波吸収材ではW型六方晶フェライトの粉体の組成式 CoxMe2-xBaFe16O27 の前記xを 0.6≦x≦1.7 としているので、高周波(X帯:周波数8〜12.5GHz)において良好な電波吸収特性を実現できる。
(2) 電波吸収材のマトリックス中に中空状の粉体が含まれるので、それが含まれない場合と比較して電波吸収材の誘電率が低下し、これによりX帯未満の周波数範囲において電波吸収特性の著しい低下を防止できる。なお、電波吸収材の誘電率を低下させる別の方法として、マトリックス中に単なる空隙を形成する方法も考えられる。しかしこの場合には空隙が連なる可能性があり、電波吸収材で構成した電波吸収体内部に水分などが浸入し易くなり、電波吸収性能が変化し易いという欠点が生じる恐れがある。マトリックス中に中空状の粉体を含有させた場合には、電波吸収体の気密性が維持されるので、このような恐れはほとんどないといえる。
以下、電波吸収特性の設計と、電波吸収体の実施例について説明する。ここでは、W型六方晶フェライトの粉体12の組成式 CoxMe2-xBaFe16O27(以下「組成式1」とも表記)の前記MeをZnとする。また、W型六方晶フェライト粉体12は、組成式CoO、ZnO、BaCO3、Fe2O3の粉体を所定のモル数となるよう配合し、焼成炉において+200℃/hrで昇温させ、設定温度1250℃で15時間保ち、-200℃/hrで800℃まで冷却し、常温となるまで炉内で放置して焼成したフェライトを、湿式ボールミルにて24時間粉砕し、粉砕後乾燥することによって製作されたものである。なお、焼成条件や粉砕条件は、所望とするW型六方晶フェライトの粉体12の条件によって調整され得るものである。マトリックス14は、クロロプレンゴムからなるものである。W型六方晶フェライトの粉体12を、中空状の粉体16を含有するマトリックス14に混合分散することで電波吸収材100を得る。また、電波吸収材100を用いた電波吸収体は、平板状であり、金属板(電波反射体)で裏打ちされているものとする。
図4(a)〜(c)は、クロロプレンゴムからなるマトリックス14中に中空状の粉体16を含有させることによって電波吸収材100の比誘電率を5.5とした場合の、周波数8〜12.5GHz(すなわちX帯全域)における垂直入射時の電波吸収特性の下限値を計算した設計チャートであり、(a)は上記組成式1で x=1.1、(b)は上記組成式1で x=1.2、(c)は上記組成式1で x=1.3 の場合をそれぞれ示す。各図において、電波吸収材100に占めるW型六方晶フェライト粉体12の体積混合比を0〜50%の範囲で変化させ、電波吸収材100からなる電波吸収体の厚さ(裏打ち金属板の厚さは含まない。以下同じ)を1.5〜4.0mmの範囲で変化させている。
図4(a)より、x=1.1の場合には、周波数8〜12.5GHzの全域において反射減衰量が20dB以上となる設計値(すなわちW型六方晶フェライト粉体12の体積混合比および電波吸収体の厚さ)が存在することがわかる。一方、図4(b),(c)より、x=1.2あるいはx=1.3の場合には、周波数8〜12.5GHzの全域において反射減衰量が20dB以上となる設計値は存在しないことが分かる。このとから、上記組成式1においてMeがZnのみである場合おいては、xは1.1以下であることが好ましいとわかる。また、上記特許文献1にも記載されているようにx<0.6では高周波特性が低下してしまうことを考慮すると、MeがZnのみである場合おいてはxは 0.6≦x≦1.1 であることが好ましい。
図5(a)〜(c)は、上記組成式1のxを1.1とした場合の、周波数8〜12.5GHz(すなわち、X帯全域)における垂直入射時の電波吸収特性の下限値を計算した設計チャートであり、クロロプレンゴムからなるマトリックス14中に中空状の粉体16を含有させることによって(a)は電波吸収材100の比誘電率を5.0、(b)は電波吸収材100の比誘電率を5.5、(c)は電波吸収材100の比誘電率を6.0とした場合をそれぞれ示す。各図において、図4と同様に、電波吸収材100に占めるW型六方晶フェライト粉体12の体積混合比を0〜50%の範囲で変化させ、電波吸収材100からなる電波吸収体の厚さを1.5〜4.0mmの範囲で変化させている。なお、図5(b)は、図4(a)と同一である。
図5(a),(b)より、電波吸収材100の比誘電率が5.0又は5.5の場合には、周波数8〜12.5GHzの全域において反射減衰量が20dB以上となる設計値(すなわちW型六方晶フェライト粉体12の体積混合比および電波吸収体の厚さ)が存在することがわかる。一方、図5(c)より、電波吸収材100の比誘電率が6.0の場合には、周波数8〜12.5GHzの全域において反射減衰量が20dB以上となる設計値(すなわちフェライトの体積混合比および電波吸収体の厚さ)は存在しないことがわかる。このとから、電波吸収の対象とする周波数範囲(例えばX帯あるいはX帯及びその近傍)において電波吸収材100の比誘電率は5.5以下であることが好ましいことがわかる。
図6は、本発明の電波吸収体の実施例1として、図4(a)(図5(b)と同一、上記組成式1でx=1.1、電波吸収材100の比誘電率5.5)の設計チャートに基づいて選定した設計点(W型六方晶フェライト粉体12の体積混合比30%、電波吸収体の厚さ2.65mm)における垂直入射時の電波吸収特性の計算値を示したものである。本図より、少なくとも6〜15GHzの周波数範囲において10dB以上の電波吸収特性を有しており、X帯未満の周波数範囲における電波吸収特性の著しい低下を防止した電波吸収体であることがわかる。また、少なくとも8〜12.5GHzの周波数範囲において20dB以上の電波吸収特性を有しており、X帯(周波数8〜12.5GHz)においても良好な電波吸収特性を有した電波吸収体であることがわかる。
図7は、本発明の電波吸収体の実施例2として、図5(a)(上記組成式1でx=1.1、電波吸収材100の比誘電率5.0)の設計チャートに基づいて選定した設計点(W型六方晶フェライト粉体12の体積混合比32%、電波吸収体の厚さ2.75mm)における垂直入射時の電波吸収特性の計算値を示したものである。本図より、少なくとも6〜15GHzの周波数範囲において10dB以上の電波吸収特性を有しており、X帯未満の周波数範囲における電波吸収特性の著しい低下を防止した電波吸収体であることがわかる。また、少なくとも8〜12.5GHzの周波数範囲において20dB以上の電波吸収特性を有しており、少なくとも7〜14GHzの周波数範囲において15dB以上の電波吸収特性を有しており、X帯(周波数8〜12.5GHz)全域及びKu帯(周波数12.5〜18GHz)大部分においても良好な電波吸収特性を有した電波吸収体であることがわかる。
図8は、本発明の電波吸収体の実施例3として、上記組成式1でx=1.1とし、クロロプレンゴムからなるマトリックス14の中に中空状の粉体16を含有させることによって電波吸収材100の比誘電率を5.0とし、電波吸収材100に占めるフェライトの体積混合比を39%とし、電波吸収材100からなる電波吸収体の厚さを2.5mmとした場合において、垂直入射時の電波吸収特性の計算値を示したものである。ここで、電波吸収体は、平板状であり、厚さ0.16mmの接着層(両面テープ)を介して金属板(電波反射体)で裏打ちされているものである。本図より、少なくとも6〜15GHzの周波数範囲において10dB以上の電波吸収特性を有しており、X帯未満の周波数範囲における電波吸収特性の著しい低下を防止した電波吸収体であることがわかる。また、少なくとも8〜12.5GHzの周波数範囲において20dB以上の電波吸収特性を有しており、少なくとも7〜14GHzの周波数範囲において15dB以上の電波吸収特性を有しており、X帯(周波数8〜12.5GHz)全域及びKu帯(周波数12.5〜18GHz)大部分においても良好な電波吸収特性を有した電波吸収体であることがわかる。
以上、実施例1〜3に示したように、本発明の電波吸収体は、X帯未満の周波数範囲における電波吸収特性の著しい低下を防止し、かつX帯(周波数8〜12.5GHz)全域やKu帯(周波数12.5〜18GHz)大部分においても良好な電波吸収特性を有する電波吸収体となるように設計することが可能である。具体的には、上記組成式1のxをx=1.1とし、電波吸収の対象とする周波数範囲(例えばX帯あるいはX帯及びその近傍)において電波吸収材100の比誘電率が5.5以下とすることによって、X帯未満の周波数帯を含めて広帯域な電波吸収特性(6〜15GHzの周波数範囲において10dB以上かつ8〜12.5GHzの周波数範囲において20dB以上の電波吸収特性、さらに実施例2及び3のように7〜14GHzの周波数範囲においても15dB以上の電波吸収特性)を有する設計も可能である。
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、本発明はそれに限定されず、請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施の形態に係る電波吸収材の概念図である。 本発明の実施の形態に係る電波吸収材の概念図であり、中空体が連なって中空状の粉体を形成した例を示す図である。 本発明の実施の形態に関し、電波吸収体の電波が到来する面の反対側の電波透過方向の入力インピーダンスに配慮して設計する場合の説明図である。 電波吸収材の比誘電率を5.5とした場合の、周波数8〜12.5GHz(すなわちX帯全域)における垂直入射時の電波吸収特性の下限値を計算した設計チャートであり、(a)は x=1.1、(b)は x=1.2、(c)は x=1.3 の場合の設計チャートである。 W型六方晶フェライトの粉体の組成式 CoxMe2-xBaFe16O27 の前記xを1.1とした場合の、周波数8〜12.5GHz(すなわち、X帯全域)における垂直入射時の電波吸収特性の下限値を計算した設計チャートであり、(a)は電波吸収材100の比誘電率を5.0、(b)は電波吸収材100の比誘電率を5.5、(c)は電波吸収材100の比誘電率を6.0とした場合の設計チャートである。 本発明の電波吸収体の実施例1として、図4(a)(図5(b)と同一)の設計チャートに基づいて選定した設計点(W型六方晶フェライト粉体の体積混合比30%、電波吸収体の厚さ2.65mm)における垂直入射時の電波吸収特性の計算値を示した周波数特性図である。 本発明の電波吸収体の実施例2として、図5(a)の設計チャートに基づいて選定した設計点(W型六方晶フェライト粉体の体積混合比32%、電波吸収体の厚さ2.75mm)における垂直入射時の電波吸収特性の計算値を示した周波数特性図である。 本発明の電波吸収体の実施例3として、W型六方晶フェライトの粉体の組成式 CoxMe2-xBaFe16O27 の前記xを1.1とし、電波吸収材の比誘電率を5.0とし、電波吸収材に占めるフェライトの体積混合比を39%とし、電波吸収材からなる電波吸収体の厚さを2.5mmとした場合において、垂直入射時の電波吸収特性の計算値を示した周波数特性図である。
符号の説明
12 W型六方晶フェライトの粉体
14 マトリックス
16 中空状の粉体
100 電波吸収材

Claims (2)

  1. 電波吸収材からなる平板状の電波吸収体であって、
    前記電波吸収材は、組成式が CoxMe2-xBaFe16O27 で示されるW型六方晶フェライトの粉体と、マトリックスとを含有
    前記MeはZnであり、前記xは 0.6≦x≦1.1 であり、前記マトリックスの中に中空状の粉体が含まれ、少なくとも電波吸収の対象となる周波数範囲において前記電波吸収材の比誘電率が5.5以下であり、6〜15GHzの周波数範囲における垂直入射に対して10dB以上の電波吸収特性を有し、かつ8〜12.5GHzの周波数範囲における垂直入射に対して20dB以上の電波吸収特性を有することを特徴とする電波吸収体
  2. 請求項に記載の電波吸収体において、さらに、7〜14GHzの周波数範囲における垂直入射に対して15dB以上の電波吸収特性を有することを特徴とする電波吸収体。
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