JP4462750B2 - 電波吸収体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンテナの不要輻射対策、テレビゴースト対策、レーダーゴースト対策、電波暗室、電波暗箱、医療用機器、デジタル情報機器、建築用壁材、タイル等に用いられる電波吸収体に関し、特に近年、小型化高機能化の進むデジタル情報機器のEMI対策部品として用いられる電波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電波を使用する建物、設備、また、携帯電話、デジタルカメラ、ノートパソコンをはじめとする携帯情報端末等の内部およびその周囲において、電波の不要な反射、散乱、干渉が生じる箇所に電波吸収材を装着し、入射した電波のエネルギーを熱エネルギーに変換することにより電波を吸収することで、不要電波に起因する種々のトラブルを抑制することが行われている。
【0003】
一般に、絶縁体中に磁性粉末または軟磁性金属粉末を分散含有し、その磁気損失を利用して電波を減衰させることで不要電波の除去を行う電波吸収材が知られている。
【0004】
上記電波吸収体を構成する材質としては、ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂中に磁性粉末または軟磁性金属粉末を所定の比率で配合した複合材が使用されており(特開平4−80274号公報参照)、通常、射出成形法、圧延法、熱間プレス成型法等により作製されている。
【0005】
一般に、電波吸収体が電波を吸収しやすい周波数は電波吸収体の材料によって決まるため、電波吸収体の材料は使用する周波数帯域で電波を効率よく吸収するものが用いられている。近年、デジタル情報機器に代表される機器の小型軽量化の要求と各種デバイスの高速化、高機能化に伴い、広い周波数帯域に渡って、不要電波を効率よく吸収できる電波吸収体が強く望まれている。このように吸収すべき不要電波の周波数帯域が広い場合、単一の材料では広い周波数に渡って電波を効率よく吸収することが困難なため、効率よく吸収できる電波の周波数帯域が異なる材料を混合して複合材を得るかまたは別々に成形後、張り合わせるなどして使用していた。
【0006】
例えば、特開昭58−188192号公報では、フェノール樹脂にフェライトとスチールファイバーを混合して電波吸収体を得ることが開示されている。また、特開平4−26195号公報、特開平5−206677号公報では、図4に示すように、吸収特性の異なる電波吸収層8、9を接着剤にて積層し、金属板、金属箔、導電性繊維や導電性樹脂からなる電波反射層10で裏打ちした電波吸収体7が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭58−188192号公報に開示された電波吸収体は効率よく電波を吸収できる周波数帯域が9〜12GHzと高く、デジタル情報機器のEMI対策に必要な100MHz〜1000MHzの周波数帯域では効率よく不要電波を吸収することはできない。
【0008】
また、特開平4−26195号公報、特開平5−206677号公報に開示された図4の電波吸収体7は、接着や熱圧着工程の付加によるコストアップ、熱膨張率の違いによる剥離等の問題があり、また、張り合わせによって厚みが増すことで、近年小型化の進むデジタル情報機器の分野においては、機器内部に設置すること自体が困難であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の欠点に鑑みなされたものであり、熱硬化性樹脂3〜15重量%、フェライト粉末75〜95重量%、およびカーボンファイバー2〜20重量%を含有した複合材からなる電波吸収体であって、前記フェライト粉末は平均粒径が1〜300μm、最大粒径が500μm以下であり、前記カーボンファイバーは平均アスペクト比が2〜25、平均直径が3〜50μmであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記カーボンファイバーの結晶の平均c軸方向長さを1nm以上としたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記複合材の周波数100MHzにおける減衰定数が1dB/cm以上、周波数1000MHzにおける減衰定数が7dB/cm以上であることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、前記カーボンファイバーを実質的に無配向としたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1に示す、本発明の電波吸収体1は、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂2、Ni−Zn系フェライト等のフェライト粉末3およびカーボンファイバー4を混合し、必要に応じて有機溶剤等を添加、混合した後、射出成型法、圧延法、熱間プレス成型法、押出成型法、鋳込成型法等により所定の形状に成形し、所定の温度にて一定時間加熱硬化させることによって得られたものである。
【0016】
そして、硬化体中における熱硬化性樹脂2が3〜15重量%、フェライト粉末3が75〜95重量%、カーボンファイバー4が2〜20重量%の比率であり、フェライト粉末3は平均粒径が1〜300μm、最大径が500μm以下であり、カーボンファイバー4は図2に示すカーボンファイバー4の長さLと直径Dの比であるアスペクト比L/Dの平均値が2〜25、平均直径Dが3〜50μmとしてある。
【0017】
ここで、熱硬化性樹脂2の比率が3重量%より少ないと、成型体の強度が著しく低下し、電波吸収体1として使用することが困難であり、15重量%を超えると、熱硬化性樹脂2の量が過剰となり、加熱硬化時に成型体にボイドや膨れを生じてしまい実用的でない。特に、成型体強度と硬化時の変形、ボイド、膨れ防止の観点から、熱硬化性樹脂2は5〜10重量%の比率であることが好ましい。
【0018】
このような電波吸収体1を構成する熱硬化性樹脂2としては、フェノール樹脂またはエポキシ樹脂が好適であるが、熱硬化性樹脂であれば上記に限定されずに使用することができる。
【0019】
また、フェライト粉末3の比率が75重量%未満だと、主に100MHz〜1000MHzの高周波帯域において電波吸収特性が低下し、95重量%を超えると樹脂量が低下して成型体の強度が低下するか、カーボンファイバー5の量が低下して主に100MHz以下の低周波帯域において電波吸収特性が低下する。特に、電波吸収特性と成型体強度を考慮すれば、フェライト粉末3は77〜92重量%の比率であることが好ましい。
【0020】
フェライト粉末3としては、Ni−Zn系フェライト、Ni−Zn−Cu系フェライト、Mn−Zn系フェライト、M型六方晶フェライト等があり、本発明においてはこれらのフェライトのうち、1種類以上を混合して使用することができるが、特にNi−Zn系フェライト、Ni−Zn−Cu系フェライトは必要とされる周波数帯域における吸収特性がよく、好結果が得られる。
また、フェライト粉末3は、平均粒径が1〜300μm、好ましくは10〜100μmであるものを使用する。これはフェライト粉末3の平均粒子径が1μm未満だと、長時間に渡る粉砕工程が必要であるため、原料のコストが高くなり、フェライト粉末3の平均粒子径が300μmを超えると、成型体のハンドリング時に脱粒が生じやすいからである。
また、フェライト粉末3は、最大粒径が500μm以下、好ましくは200μm以下であるものを使用する。これはフェライト粉末3の最大粒径が500μmより大きくなると、成型体のハンドリング時に脱粒が生じやすいからである。
【0021】
また、カーボンファイバー4の比率が2重量%未満であると、主に100MHz以下の低周波帯域において電波吸収特性が低下し、20重量%を超えるとカーボンファイバー4の均一分散が困難になり、成型体においてカーボンファイバー4の脱粒が生じやすく、実用的でない。特に、電波吸収特性の向上と脱粒発生防止の観点から、カーボンファイバー4は5〜20重量%の比率であることが好ましい。
【0022】
また、カーボンファイバー4の平均アスペクト比が2未満のものを使用すると、特に100MHz未満の低周波数帯域において十分な電波吸収特性が得られず、平均アスペクト比が25を超えるものは均一分散が困難となり、成型体においてカーボンファイバー4の脱粒が生じやすく、実用的でない。特に、電波吸収特性の向上と分散性向上、脱粒防止の観点より、カーボンファイバー4の平均アスペクト比は5〜25のものを使用するのが好ましい。ここで、カーボンファイバー4の平均アスペクト比は、本発明の電波吸収体1の破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、任意の面積中におけるカーボンファイバー4の長さLおよび直径Dを測定し、それらの比L/Dを数平均することにより求めることができる。
【0023】
カーボンファイバー4としてはPAN系カーボンファイバー、ピッチ系カーボンファイバーを使用することができるが、直径およびアスペクト比のばらつきが小さいPAN系カーボンファイバーを使用することが好ましい。
【0026】
また、カーボンファイバー4の直径Dの平均値は3〜50μm、好ましくは5〜20μmのものを使用するのがよい。これは、カーボンファイバー4の平均直径Dが3〜50μmの範囲において、製造が容易であるため原料コストが安く、また、分散性が良好であるため、得られた成型体のハンドリング時に脱粒が生じにくく、製造工程における歩留まりが向上するからである。ここで、カーボンファイバーの平均直径は、本発明の電波吸収体1の破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、任意の面積中のカーボンファイバー4の直径Dを測定し、平均することにより求めることができる。
【0027】
また、カーボンファイバー4は、結晶の平均c軸方向長さが1nm以上、好ましくは10nm以上であるものを使用するのがよい。これは結晶の平均c軸方向長さが1nm以上のとき、100MHz〜1000MHzの周波数帯域における電波吸収特性が特に良好となるからである。ここで、カーボンファイバーの平均c軸方向長さは、本発明の電波吸収体1の任意の破断面のカーボンファイバーから、X線回折法により測定することができる。
【0028】
また、本発明の電波吸収体1では、周波数100MHzにおける減衰定数を1dB/cm以上、周波数1000MHzにおける減衰定数を7dB/cm以上としたことにより、デジタル情報機器等において問題となる100MHz〜1000MHzの不要電波を効率よく吸収することが可能であり、EMI対策部品としてより好適に使用することができる。ここで言う減衰定数は、ネットワークアナライザを使用して高周波電流電圧法で測定した複素比透磁率および複素比誘電率の実数部μr’ 、εr’および虚数部μr’’ 、εr’’の値を使用して、数1により算出することができる。
【0029】
【数1】
【0030】
さらに、本発明の電波吸収体1では、前記カーボンファイバー4を実質的に無配向とすることが好ましい。このため電波吸収特性に異方性が無く、どの方向から入射した不要電波に対しても効率よく吸収することができる。そのため、回路基板上の各所からの不要な自己放射電波に加え、周囲の他の電子機器から発振される様々な不要放射電波を効率良く吸収する必要がある、デジタル情報機器等のEMI対策部品として好適に使用することができる。
【0031】
ここで、カーボンファイバー4が実質的に無配向とは、配向が全くないか、あっても配向度が20%以下であることを言う。ここで言う配向度とは、任意の断面と、その断面に直角に交差する断面、および前記二つの断面に直角に交差する断面の、合わせて3つの断面のそれぞれにおいて任意の範囲を観察し、各断面において、任意の方向を0度と規定し、該断面におけるカーボンファイバー4の長軸の方向を0度から180度の範囲にあると規定したときの長軸の方向を0〜45度、45〜90度、90〜135度、135〜180度の4範囲に分けて数をカウントしたとき、最大頻度である角度範囲のカウント数から最小頻度である角度範囲のカウント数を引いたときの差が、各角度範囲のカウント数の合計に対して20%以下であることを言う。
【0032】
本発明による電波吸収体1の使用形態としては、例えば図3(a)に示すように、板形状として回路基板6に実装したICパッケージ5の上部、あるいは内部に貼り付けたり、高周波ラインケーブル上に貼り付けたり、回路基板を覆う筐体としたり、あるいは筐体に貼り付けることができる。また、図3(b)に示すように、キャップ形状としてICパッケージ5全体を覆ったり、チューブ状としてその中に高周波ラインケーブルを通したり、ケース形状としてデジタル情報機器等の回路あるいは素子等を覆うように実装することができる。
【0033】
また、電波暗室の壁材、オフィスの壁材、建築用部材、タイル等の外壁材、食器、装身具、医療用機器、ガスケット、アイソレータ、アッテネータ、ターミネータ、サーキュレータ、光素子周辺の高周波磁気シールド、光電送モジュール等の不要電磁波の吸収用途として使用することができる。
【0034】
【実施例】
実施例1
まず、熱硬化性樹脂2、フェライト粉末3、カーボンファイバー4それぞれの比率およびカーボンファイバー4の平均アスペクト比の適正範囲を調べるために、各成分の比率および使用するカーボンファイバー4の平均アスペクト比の異なる電波吸収体1を作製し、100MHz〜1000MHzにおける電波吸収特性を調べた。
【0035】
具体的には、熱可塑性樹脂2としてレゾール型フェノール樹脂、フェライト粉末3としてNi−Zn系フェライト粉末、カーボンファイバー4として、PAN系カーボンファイバーを使用した。これらを所定の比率で高速ミキサー内に投入して造粒を行い、得られた造粒体を常温のもと、300MPaの圧力で粉末加圧成型、離型後、高温で加熱硬化し、試験片を得た。次に、得られた試験片の3点曲げ強度を、JIS−K6911により測定した。次に、得られた試験片の複素比透磁率および複素比誘電率を、ネットワークアナライザを使用して、高周波電流電圧法にて測定し、その値を数1に代入して100MHz乃至1000MHzにおける減衰定数を計算により求めた。
【0036】
まず、フェライト粉末3およびカーボンファイバー4の比率を、本発明の範囲内とし、熱硬化性樹脂2の比率を2〜17重量%の範囲で変化させて実験を行った。
なお、カーボンファイバー4の平均アスペクト比は5に、カーボンファイバー4の結晶の平均c軸方向長さは1nmのもので統一した。実験結果を表1に示す。なお、硬化後の成型体に膨れを生じたものには×、生じなかったものには○と表記した。
【0037】
表1によれば、本発明の範囲内である、熱可塑性樹脂2の比率が3〜15重量%の範囲のもの(No.2〜No.5)では、成型体強度が10MPa以上であり、電波吸収体として十分な強度を有しており、成型体に膨れを生じることも無かった。ただし、No.5はNo.2〜No.4と比較して成型体表面のボイドが多かった。これに対し、本発明の範囲外である、熱可塑性樹脂2の比率が3重量%より小さいもの(No.1)では、成型体強度が10MPa以下と低く、電波吸収体として実用的でない。同じく本発明の範囲外である、熱可塑性樹脂2の比率が15重量%を超えるもの(No.6)は硬化後の成型体に膨れが生じ、電波吸収体として実用的でなかった。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例2
次に、熱硬化性樹脂2の比率を本発明の範囲内とし、フェライト粉末3およびカーボンファイバー4の比率をそれぞれ65〜97重量%、0〜20重量%の範囲で変化させた。なお、カーボンファイバー4の平均アスペクト比は5に統一した。結果を表2に示す。
【0040】
表2によれば、本発明の範囲内である、フェライト粉末3の比率が77〜95重量%、カーボンファイバー4の比率が2〜20重量%のもの(No.8〜No.11)では、硬化後の成型体のハンドリング中に脱粒が無く、また、100MHzでの減衰定数が1dB/cm以上、1000MHzでの減衰定数が7dB/cm以上であった。これに対し、フェライト粉末3の比率が95%を超える場合、熱可塑性樹脂2の比率またはカーボンファイバー4の比率が本発明の範囲外となるが、熱可塑性樹脂2の比率が3重量%未満だと、表1のNo.1に示すとおり、成型体の強度が10MPa以下となり、電波吸収体として実用的でなかった。また、カーボンファイバー4の比率が2%未満の場合(No.7)、100MHzでの減衰定数が1dB/cm未満であった。また、フェライト粉末3の比率が75%未満の場合(No.13)、1000MHzでの減衰定数が7dB/cm未満であった。また、カーボンファイバー4の比率が20重量%を超えるもの(No.12)では、成型体のハンドリング時においてカーボンファイバー4の脱粒が生じるため、電波吸収体として実用的でなかった。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例3
次にカーボンファイバー4の平均アスペクト比を1〜30まで変化させた。なお、熱硬化性樹脂2、フェライト粉末3、カーボンファイバー4の比率はそれぞれ5重量%、85重量%、10重量%に統一した。結果を表3に示す。
【0043】
表3によると、本発明の範囲内であるカーボンファイバー4の平均アスペクト比が2〜25の範囲のもの(No.15〜No.18)では、硬化後の成型体のハンドリング中において脱粒が無く、また、100MHzでの減衰定数が1dB/cm以上、1000MHzでの減衰定数が7dB/cm以上であり、特に平均アスペクト比が5〜25の範囲のもの(No.16〜No.18)では100MHzおよび1000MHzでの減衰定数が大きかった。これに対し、本発明の範囲外であるカーボンファイバー4の平均アスペクト比が2未満のもの(No.14)では、100MHzでの減衰定数が1dB/cm未満、1000MHzでの減衰定数が7dB/cm未満であった。また、本発明の範囲外であるカーボンファイバー5の平均アスペクト比が25を超えるもの(No.19)では、硬化後の成型体のハンドリング中に脱粒が生じるため、電波吸収体として実用的でなかった。
【0044】
【表3】
【0045】
以上の実験結果より、熱可塑性樹脂2の比率としては3〜15重量%、さらに好ましくは5〜10重量%、フェライト粉末3の比率としては75〜95重量%、さらに好ましくは77〜92重量%、カーボンファイバー4の比率としては2〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%の範囲がよく、使用するカーボンファイバー4の平均アスペクト比としては2〜25、さらに好ましくは5〜15の範囲であることがよいと言える。
実施例4
次に、フェライト粉末3の平均粒径およびカーボンファイバー4の平均直径Dの適正範囲を検証するため、フェライト粉末3の平均粒径およびカーボンファイバー4の平均直径Dを変化させて実験を行った。
【0046】
その結果、フェライト粉末3の平均粒径が1〜300μmのものでは実施例1の方法により比較的簡単に造粒体を作製することができ、硬化後の成型体のハンドリング時においても脱粒が見られなかった。それに対して、平均粒径が1μm未満のフェライト粉末3では造粒体の作製が困難で、歩留まりが悪かった。また、平均粒径1μm未満のフェライト粉末3は製造時の粉砕時間が長いため、価格が高いという欠点がある。同じく、平均粒径300μmを超えるフェライト粉末3、または最大粒径が500μmを超えるフェライト粉末3、または平均直径Dが3μm以下のカーボンファイバー4、または平均直径Dが50μmをこえるカーボンファイバー4では、造粒時の均一分散が困難であり、造粒体の歩留まりや硬化後の成型体のハンドリング時における脱粒、成型体の表面粗さの各項目において、特性がやや劣ることが確認された。
【0047】
従って、フェライト粉末3の平均粒径としては1〜300μm、さらに好ましくは10〜200μm、最大粒径500μm以下さらに好ましくは300μm以下、カーボンファイバー4の平均直径Dとしては3〜50μmさらに好ましくは5〜25μmがよいことが確認された。
【0048】
次に、カーボンファイバー4の結晶の平均c軸方向長さの適正範囲を検証するため、カーボンファイバー4の結晶の平均c軸方向長さを0.5〜50nmの範囲で変化させた。なお、その他は実施例1と同じとした。
【0049】
なお、熱硬化性樹脂2、フェライト粉末3、カーボンファイバー4の比率はそれぞれ5重量%、85重量%、10重量%に統一し、カーボンファイバー4の平均アスペクト比は5のものを使用した。結果を表4に示す。
【0050】
表4によると、カーボンファイバー4の結晶の平均c軸方向長さが1nm以上のもの(No.21〜No.23)では、100MHzでの減衰定数および1000MHzでの減衰定数が向上し、特に10nm以上のもの(No.22〜23)で顕著である。従って、カーボンファイバー4の平均c軸方向長さとしては1nm以上、さらに好ましくは10nm以上のものを使用するのがよいことが確認できた。
【0051】
【表4】
【0052】
実施例5
次に、カーボンファイバー4の配向度と電波吸収特性の異方性について確認するため、各種の成形方法で試験片の作製を行った。成形方法として、粉末加圧法、コーター法、射出成型法、圧延法の4種類を行った。粉末加圧法については、実験1と同一方法にて試験片を作製した。コーター法、および射出成型法においては、熱可塑性樹脂2、フェライト粉末3、カーボンファイバー4を所定量混合した後、トルエンを添加してスラリー化し、コーターまたは射出成型機にて成形後、トルエン分を乾燥させた後、250℃にて加熱硬化させて試験片を得た。また、圧延法については、上記混合物を圧延成型機のロール間に供給してシート化し、250℃にて加熱硬化させて試験片を得た。
【0053】
なお、熱硬化性樹脂2、フェライト粉末3、カーボンファイバー4の比率はそれぞれ5重量%、85重量%、10重量%に統一し、カーボンファイバー4の平均アスペクト比は5、結晶の平均c軸方向長さは1nmのものを使用した。
【0054】
また、配向度は、得られら試験片の任意の断面と、その断面に直角に交差する断面、および前記二つの断面に直角に交差する断面の、合わせて3つの断面のそれぞれにおいて、任意の範囲を観察し、各断面において任意の方向を0度と規定し、該断面におけるカーボンファイバー4の長軸の方向を0度から180度の範囲にあると規定したときの長軸の方向を0〜45度、45〜90度、90〜135度、135〜180度の4範囲に分けて数をカウントし、最大頻度である角度範囲のカウント数から最小頻度である角度範囲のカウント数を引いたときの差と各角度範囲のカウント数を合計した値との比を算出した値の最大値のことであり、各断面を走査型電子顕微鏡にて観察することにより求めた。結果を表5に示す。
【0055】
表5によると、粉末加圧法、コーター法にて成型した試験片中のカーボンファイバー4の配向度は20%以下であったが、射出成型法、圧延法によって得られた試験片のカーボンファイバー4の配向度は20%を超える値となった。これらの試験片に対して、電波吸収特性の異方性を確認するため、前述の3つの断面それぞれに対して電界の方向が垂直な場合の吸収特性を測定した。その結果、配向度が20%以下の場合、電波吸収特性は前述の3つの断面において有意差が無く、異方性は確認されなかったが、配向度が20%を超える場合、電波吸収特性は前述の3つの断面間で有意差があり、異方性が確認された。このことより、カーボンファイバー4を実質的に無配向とすることにより、電波吸収特性に異方性が生じないことが確認された。こうして得られた電波吸収体1は、どの方向から入射した不要電波に対しても効率よく吸収することができる。そのため、回路基板上の各所からの不要な自己放射電波に加え、周囲の他の電子機器から発振される様々な不要放射電波を効率良く吸収する必要がある、デジタル情報機器等のEMI対策部品としてより好適に使用することができる。
【0056】
また、成形方法としては、粉末加圧法またはコーター法が、カーボンファイバー4を実質的に無配向とすることが可能であるため、好適であると言える。
【0057】
【表5】
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、熱硬化性樹脂、フェライト粉末、およびカーボンファイバーを特定範囲の比率で含有した複合材からなり、前記カーボンファイバーは平均アスペクト比が2〜25である電波吸収体とすることで、不要電波を効率的に吸収することが可能となる。
【0059】
また、本発明によれば、製造工程における歩留まりを向上させることが可能となると同時に、成型体の機械的強度も向上させることが可能となる。また、特にデジタル情報機器のEMI対策において必要とされる100MHz〜1000MHzの周波数帯域において効果的に不要電波を吸収することが可能となる。
【0060】
さらに、本発明によれば、いかなる向きから発せられる不要電波に対しても効率よく吸収する電波吸収体とすることが可能となり、様々な使用条件、実装方法において、効果的に不要電波を吸収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電波吸収体の拡大断面図である。
【図2】本発明の電波吸収体に用いるカーボンファイバーの拡大斜視図である。
【図3】(a),(b)は本発明の電波吸収体の使用形態を示す断面図である。
【図4】従来の電波吸収体の断面図である。
【符号の説明】
1:電波吸収体
2:熱可塑性樹脂
3:フェライト粉末
4:カーボンファイバー
5:ICパッケージ
6:回路基板
7:電波吸収体
8:電波吸収層1
9:電波吸収層2
10:電波反射層
L:長さ
D:直径
Claims (4)
- 熱硬化性樹脂3〜15重量%、フェライト粉末75〜95重量%、およびカーボンファイバー2〜20重量%を含有した複合材からなり、前記フェライト粉末は平均粒径が1〜300μm、最大粒径が500μm以下であり、前記カーボンファイバーは平均アスペクト比が2〜25、平均直径が3〜50μmであることを特徴とする電波吸収体。
- 前記カーボンファイバーは結晶の平均c軸方向長さが1nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。
- 周波数100MHzにおける減衰定数が1dB/cm以上、周波数1000MHzにおける減衰定数が7dB/cm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電波吸収体。
- 前記カーボンファイバーが実質的に無配向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電波吸収体。
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