以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
本発明の合成樹脂成形品9は、第一樹脂6の圧縮成形により成形される成形品本体1の外周部に圧縮成形により発生するバリ部8を形成し、成形品本体1の外周部に成形品本体1と一体に第二樹脂7の射出成形により二次成形部2を成形すると共に該二次成形部2でバリ部8を一体に被覆して構成してある。
このような構成の合成樹脂成形品9としては種々の成形品があるが、例えば、台車用ボディである台車用本体、パレット、自動車用の部品(例えば、サイドブレーキのカバー、バンパー、ドアの内装等)等を挙げることができるが、もちろんこれにのみ限定されるものではない。
成形品本体1を成形するための圧縮成形の際に使用する第一樹脂6と、二次成形部2を成形するための射出成形の際に使用する第二樹脂7とは、同じ合成樹脂でもよく、あるいは異なる合成樹脂でもよい。また、色が異なっていてもよい。
第一樹脂6や第二樹脂7として使用する材料としては合成樹脂の廃品を再生して得た合成樹脂の再生材料、あるいはバージンの合成樹脂のいずれであってもよい。
図1乃至図6には本発明の合成樹脂成形品9の一実施形態が示してある。本実施形態においては合成樹脂成形品9が台車用本体の例を示している。
図1乃至図6に示す実施形態では、台車用本体の主体を構成する台車本体である成形品本体1が第一樹脂6の圧縮成形により成形され、この圧縮成形により成形される成形品本体1の外周部に圧縮成形により発生するバリ部8が形成され、このバリ部8を第二樹脂7の射出成形により成形される二次成形部2により一体に被覆してある。
本実施形態では成形品本体1を成形するための材料である第一樹脂6が硬質合成樹脂であり、二次成形部2を成形するための材料である第二樹脂7が軟質合成樹脂であって、硬質合成樹脂(第一樹脂6)よりなる成形品本体1の外端部に軟質合成樹脂(第二樹脂7)よりなる二次成形部2を成形品本体1と一体に成形した(つまり合成樹脂の二色成形により一体に成形した)ものである。第一樹脂6として使用する硬質合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレンを挙げることができる。また、第二樹脂7として使用する軟質合成樹脂としてはオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エチレン酢ビ共重合体を挙げることができる。
台車本体を構成する成形品本体1は板状をした天板部3の下面外周に天板部3と一体の環状リブ4を下方に向けて突設し、更に、天板部3の下面の外周の環状リブ4に囲まれた部分に天板部3と一体の補強リブ5を下方に向けて突設することで構成してある。
上記のような構成の硬質合成樹脂(第一樹脂6)の圧縮成形で成形した成形品本体1の外端部のバリ部8を軟質合成樹脂(第二樹脂7)の射出成形で成形した二次成形部2で一体に被覆した台車用本体(合成樹脂成形品9)は、以下のようにして合成樹脂の2色成形により全体を一体に成形するものである。
図7には本発明の台車用本体(合成樹脂成形品9)を成形するための金型装置20の一例が示してある。なお、図7は型閉めする前の状態が示してある。
金型装置20は、固定金型21と、固定金型21に対して移動自在な可動金型22と、固定金型21と可動金型22との対向面の周囲の隙間を遮蔽自在とした外周金型23よりなる硬質合成樹脂の成形品本体1を成形するための部分と、硬質合成樹脂の成形品本体1を成形した後に可動金型22を閉じたまま外周金型23のみを移動して成形された成形品本体1の外周面を露出させた状態で外周金型23の移動した跡に、成形された成形品本体1の外周面と対向するように移動自在となったスライド金型25とを備えたものである。上記外周金型23は可動金型22又は固定金型21に可動金型22の移動方向と同方向に移動自在に取付けてある(図7においては固定金型21に移動自在に取付けてある)。
ここで、可動金型22又は固定金型21に可動金型22の移動方向と同方向に外周金型23を移動自在に取付けた場合、固定金型21又は可動金型22に取付けた外周金型23を相手側の金型に対して相対的に移動して該外周金型23の内面の先端部を図7(a)の状態から図8(a)の状態となるように相手側の金型の側端面に重複させて圧縮成型用の第1キャビティ部26を形成するようになっている。この場合、図7(a)の状態から図8(a)の状態のように外周金型23の内面の先端部を相手側の金型(実施形態では可動金型22)の側端面に重複させる際、外周金型23の先端の内面側のエッジ部分が相手側の金型の側端面の先端のエッジ部に当たると上記のように図7(a)の状態から図8(a)の状態のように外周金型23の内面の先端部を相手側の金型の側面に重複させることができない。そこで、図8(c)のように外周金型23の内面と相手側の金型の側面が重複する状態でわずかな隙間Mが生じるようにしてある。また、圧縮成形は、可動金型22が樹脂を押し潰すものであり、そのときに、可動金型22が、樹脂の抵抗で横にずれて動かなくなる可能性があるため、隙間Mを形成する。更に、樹脂量を正確に注入することやキャビティ全周に樹脂が行くように、少し多めに注入するものであり、このため樹脂の逃げ道をつくるために隙間Mを形成する。
また、スライド金型25は主スライド金型部25aと副スライド金型部25bとで構成してあり、主スライド金型部25aは固定金型21に対して油圧シリンダ39により可動金型22の移動方向と直交する方向に移動自在に取付けてあり、副スライド金型部25bが可動金型22に対して主スライド金型部25aの移動方向と平行な方向に移動自在に取付けてある。主スライド金型部25aと副スライド金型部25bの対向面には第2キャビティ部28の一部が形成され、更に、主スライド金型部25aと副スライド金型部25bの対向面の上記第2キャビティ部28の一部となる部位以外の部分の一方に台形状をした係合凸部25cを設けると共に他方に台形状をした係合溝部25dが設けてある。
上記のような金型装置20を用いて2色成形で台車用本体(成形品本体1)を成形するには、圧縮成形による第一次成形で硬質合成樹脂(第一樹脂6)よりなる成形品本体1を成形すると共にこの第一次成形である圧縮成形の際に上記外周金型23の内面と相手側の金型の側面が重複する部分に形成されるわずかな隙間Mに第一樹脂6が入り込んでこの部分にバリ部8を成形し、その後、射出成形による第二次成形で軟質合成樹脂(第二樹脂7)よりなる二次成形部2を成形して該二次成形部2で上記バリ部8を一体に被覆するものである。
以下、金型装置20を用いて成形する具体例を説明する。
まず、上記金型装置20を用いて圧縮成形による一次成形で硬質合成樹脂よりなる成形品本体1を形成する工程を実行する。
すなわち、図7(a)の状態から図8(a)に示すように固定金型21に対して可動金型22を所定位置まで移動すると共に、可動金型22又は固定金型21に取付けた外周金型23を相手側の金型に対して相対的に移動して(図に示す実施形態では可動金型22が移動することで固定金型21に取付けた外周金型23に対して可動金型22が相対的に移動することになる)該外周金型23の内側面の先端部を相手側の金型の側端面に重複させる。これにより固定金型21と可動金型22との対向面の周囲の隙間を外周金型23で遮蔽して第1キャビティ部26を形成する(第1工程)。
この場合、前述のように外周金型23の先端の内面側のエッジ部分が相手側の金型の側端面の先端のエッジ部に当たることなくスムーズに図7(a)の状態から図8(a)の状態のように外周金型23の内面の先端部を相手側の金型の側面に重複させることができるように、外周金型23の内面と相手側の金型の側面が重複する状態でわずかな隙間Mが生じている。すなわち、圧縮成形は、可動金型22が樹脂を押し潰すものであり、そのときに、可動金型22が、樹脂の抵抗で横にずれて動かなくなる可能性があるため、上記のように隙間Mを形成する。更に、樹脂量を正確に注入することやキャビティ全周に樹脂が行くように、少し多めに注入するものであり、このため樹脂の逃げ道をつくるために隙間Mを形成する。
また、図7(a)、図8(a)の状態では主スライド金型部25aと副スライド金型部25bとは外周金型23の移動領域外に位置していると共に主スライド金型部25aと副スライド金型部25bは相互に離れて型開きしている。
この状態で、図8(a)に示すように第1キャビティ部26内に硬質合成樹脂(第一樹脂6)を注入する(第2工程)。この場合、射出による注入だけでなく、落とし込みによる注入等種々の注入形態が選択できる。
次に、図8(a)の状態から図9(a)の状態となるまで可動金型22を移動して第1キャビティ部26内に注入した硬質合成樹脂(第一樹脂6)を圧縮成形する(第3工程)。
圧縮成形のために可動金型22を図8(a)の状態から図9(a)の状態に移動すると可動金型22の移動に伴って台形状をした係合溝部25dが台形状をした係合凸部25cに次第に嵌り込んで図9(a)の可動金型22の最終移動位置まで来た時点でぴったりと係合する。
このように圧縮成形により硬質合成樹脂(第一樹脂6)を所定形状になるように圧縮して成形品本体1を成形するのであるが、上記図8(a)の状態から図9(a)の状態に可動金型22を移動して第1キャビティ部26内の第一樹脂6を圧縮していくと、図9(b)のように上記外周金型23の内面と相手側の金型の側面の重複部分に生じるわずかな隙間Mに第一樹脂6が入り込み、この部分にバリ部8が圧縮成形により成形される。
上記圧縮成形工程が終わると、次に、同じ金型装置20を用いて射出成形による2次成形で硬質合成樹脂よりなる成形品本体1の外端部に軟質合成樹脂(第二樹脂7)よりなる二次成形部2を射出成形で成形して該二次成形部2により上記圧縮成形工程で成形されたバリ部8を一体に被覆する工程を実行する。
すなわち、図10(a)に示すように可動金型22を閉じたまま矢印のように外周金型23を移動して上記一次成形(圧縮成形)により成形された硬質合成樹脂(第一樹脂6)よりなる成形品本体1の上記バリ部8を含む外周面を露出させる。
次に、主スライド金型部25aを図11の矢印方向に移動することで係合凸部25cと係合溝部25dとが係合しているので副スライド金型部25bが主スライド金型部25aと一体に移動し、このようにして主スライド金型部25aと副スライド金型部25bとよりなるスライド金型25を上記一次成形により成形された硬質合成樹脂(第一樹脂6)よりなる成形品本体1の外周面の露出部分に近づくように移動してスライド金型25の上記成形品本体1の上記バリ部8を含む露出部分を囲む先端部外周面を可動金型22及び固定金型21の側端面に当接し、スライド金型25の先端面と上記成形品本体1の外周面の上記バリ部8を含む露出部分との間に第2キャビティ部28を形成する(第4工程)。
次に、図12の矢印のように、外周金型23を移動して外周金型23に設けた係合部30をスライド金型25に設けた被係合部31に係合して2次成形(射出成形)における射出力によってスライド金型25が動かないようにする。
次に、図13に示すように上記第2キャビティ部28に軟質合成樹脂(第二樹脂7)を射出して硬質合成樹脂(第一樹脂6)よりなる成形品本体1の外周端部に軟質合成樹脂(第二樹脂7)よりなる二次成形部2を一体に射出成形により成形する(第5工程)。
このように射出成形により成形した第二樹脂7よりなる二次成形部2は上記成形品本体1のバリ部8を含む露出部分を被覆するように成形品本体1に一体化されるものである。
次に、図14に示すように、可動金型22を固定金型21に対して離れる方向に移動して型開きすると共にスライド金型25を型開きする。可動金型22が固定金型21に対して離れる方向に移動すると可動金型22に取付けてある副スライド金型部25bが可動金型22と共に移動して主スライド金型部25aから離れて型開きする。このように型開きをすることで合成樹脂成形品9を金型装置20から脱型して取出すものである。
上記のようにして合成樹脂成形品9を脱型した後、図15に示すように、可動金型22を固定金型21側に移動して型閉めして係合溝部25dと係合凸部25cとを係合する。
次に、図16に示すように外周金型23を移動して係合部30と被係合部31との係合を解除し、その後、主スライド金型部25aを移動することで、主スライド金型部25aと一緒に副スライド金型部25bを外周金型23の移動領域外まで移動し、その後に可動金型22を固定金型21から離れる方向に移動すると共に外周金型23を可動金型22側に突出させることで、図7の初期位置に戻す。
上記のようにして成形した合成樹脂成形品9は、硬質合成樹脂(第一樹脂6)よりなる成形品本体1の外端部に軟質合成樹脂(第二樹脂7)よりなる二次成形部2を一体に成形して該二次成形部2によりバリ部8を一体に被覆したものである。したがって、成形した合成樹脂成形品9は圧縮成形の際に発生したバリ部8を研磨して除去する作業が必要でない。したがって、成形した合成樹脂成形品9はバリ部8が露出せず、外観が良くて商品価値を高めることができ、手で持ってもバリ部8が手に触れず、手を痛めたりすることがない。
この合成樹脂成形品9である台車用本体は、図5に示すように硬質合成樹脂よりなる成形品本体1の下面側に車輪50を取付けると共に上面側にハンドル用フレーム51を取付けて台車を形成するものであり、この台車は成形品本体1の天板部3の上に載置物を載せて目的の場所に移動するのに使用する。また、他にも車輪のみの台車や全ての車輪がついているものに適用できる。ここで、成形品本体1の外周端部に圧縮成形により形成されたバリ部8を一体に被覆する二次成形部2が軟質合成樹脂の第二樹脂7で成形してあるので、台車用本体である成形品本体1の外周部に一体に成形される上記軟質合成樹脂よりなる二次成形部2が衝撃吸収部を兼ねることになり、台車の外周端部に人が当たっても軟質合成樹脂よりなる二次成形部2が当たることになって痛くなく、また、柱や壁等の障害物に衝突しても二次成形部2により衝撃を吸収して障害物や台車用本体自体の破損を防止することができるものである。
ところで、図1乃至図6に示す実施形態では、環状リブ4が補強リブ5よりも薄肉に形成してあって、硬質合成樹脂により成形品本体1を成形する際、環状リブ4部分を上記のように薄肉とすることで、天板部3の外周の環状リブ4部分は補強リブ5を突出した部分よりも成形による「ヒケ」が生じ難くなって環状リブ4の上部側面が窪むことなく平坦性を確保できるようになっている。
また、図3に示すように、補強リブ5を環状リブ4に一体に連結する部分の補強リブ5側を補強リブ5よりも薄肉に形成して薄肉の一体連結部10としてある。このように一体連結部10を上記のように薄肉とすることで、硬質合成樹脂により成形品本体1を成形する際、環状リブ4が補強リブ5と一体に連結する部分において成形による「ヒケ」が生じ難くなり、これにより環状リブ4の上部側面が波打つことがなく、天板部3の外周の直線性を確保できるようになっている。また、環状リブ4が補強リブ5と一体になっているので環状リブ4の強度が向上する。
また、図1、図4に示すように天板部3の環状リブ4に接している部分の肉厚を天板部3の他の部分よりも薄肉に形成してある。これも上記と同様に、硬質合成樹脂により成形品本体1を成形する際、環状リブ4の天板部3からの突出基部部分において「ヒケ」が生じ難くなって環状リブ4の上部側面が波打つことがなく、天板部3の外周の直線性を確保できるようになっている。この場合、図1、図4に示す実施形態では天板部3の環状リブ4に接している部分の下面側に凹部11を形成することでこの部分を薄肉部12としてあって天板部3の上面側に段が生じないようにしているが、凹部11を天板部3の環状リブ4に接している部分の上面側に設けたり、あるいは、凹部11を天板部3の環状リブ4に接している部分の上面部と下面部の両方に設けて上面側に段が生じるようにしてもよい。
上記のように本実施形態では、成形品本体1の環状リブ4に「ヒケ」が生じないようにするための上記した複数の構成を備えた実施形態を示しているが、上記成形品本体1の環状リブ4に「ヒケ」が生じないようにするための複数の構成のうちすべての「ヒケ」防止の構成を具備するものにのみ限定されず、上記複数の「ヒケ」防止の構成うち1又は複数の組み合わせたものであってもよい。
そして、上記のように成形品本体1の環状リブ4に「ヒケ」が生じないようにすることで、硬質合成樹脂(第一樹脂6)で成形した成形品本体1の外周部の環状リブ4部分に成形により「ヒケ」が生じ難くなって、環状リブ4が波打つことがなくて直線性を確保でき、これにより環状リブ4の外面に軟質合成樹脂(第二樹脂7)の二次成形部2を一体成形する際、上記硬質樹脂(第一樹脂6)よりなる環状リブ4の「ヒケ」部分に軟質合成樹脂(第二樹脂7)が回りこんで硬質合成樹脂の成形品本体1の外端部と軟質合成樹脂の二次成形部2との境界が波打つことなく綺麗になって商品価値を高めることができるようになっている。
また、二次成形部2と天板部3の境界上面を下方に段落して段差部15を形成してある。図1、図4に示す実施形態では二次成形部2側に段差部15が形成してあるが、天板部3側に段差部15を形成してもよい。このように二次成形部2と天板部3の境界上面に段差部15を設けることで、荷物が優先的に軟質合成樹脂に接することになり、滑り止めになる。
硬質合成樹脂よりなる成形品本体1の外端部には成形品本体1と一体に軟質合成樹脂よりなる二次成形部2が成形されるのであるが、図1、図4に示す実施形態においては、上記硬質合成樹脂よりなる成形品本体1の外周の環状リブ4の外面側に軟質合成樹脂よりなる二次成形部2を一体に成形してある。このように硬質合成樹脂よりなる成形品本体1の外周の環状リブ4の外面側に軟質合成樹脂よりなる二次成形部2を一体に成形するものにおいては、天板部3と二次成形部2とが一体化している界面のうち外力が作用する方向(横方向)と交差する界面の面積(つまり縦方向の面積)が広くなり、障害物と衝突した場合に横方向からの力が二次成形部2に作用しても、界面部分が剥がれ難くなるので好ましいものである。
図1、図4に示す二次成形部2には成形される合成樹脂成形品9である台車用本体の外端上面を構成するための外端天板部17が設けてある。二次成形部2は断面略逆U字状をしていて、断面略逆U字状の上底面片部分が外端天板部17となっている。この外端天板部17、断面略逆U字状の外側側片13のいずれか又は両方、あるいは二次成形部2の全体の肉厚を成形品本体1の天板部3又は補強リブ5よりも薄肉としてもよい。
また、断面略逆U字状をした二次成形部2の両側片は環状リブ4よりも長くて二次成形部2の両側片の下部が環状リブ4よりも図1、図4のように下方に突出している。このように二次成形部2の両側片の下部が環状リブ4よりも下方に突出していることで、図6(b)の矢印イ方向から更に強い衝撃力が加わった場合、断面略逆U字状をした二次成形部2の外側側片13が図6(b)のように変形し、更に、図6(c)のように外側側片13の下部が内側側片の下部を押して内側側片の下部の環状リブ4の下端より下方に突出した部分が変形することで衝撃を吸収する。更に、衝撃が強い場合、環状リブ4が補強リブ5よりも薄肉に形成してあることで薄い環状リブ4も図6(d)のように変形して衝撃を吸収できる。ここで、バリ部8は内側側片の下部がちぎれないように一体化すると共に、強度を補っている。
また、第二樹脂7である軟質合成樹脂よりなる二次成形部2に第二樹脂7よりなる補強用リブ部16を一体に設けてある。補強用リブ部16により軟質合成樹脂製の二次成形部2の形状を維持し、また、二次成形部2部分のある程度の強度維持ができるようになっている。また、衝撃吸収部となる二次成形部2がコンクリート等によって擦れて薄くなることや孔が開いても、補強用リブ部16が衝撃吸収部の役目を果たす。
なお、第二樹脂7により成形される二次成形部2の形状は上記の実施形態のものにのみ限定されない。
合成樹脂成形品9である台車用本体の主体を構成する成形品本体1の外端に一体に成形される二次成形部2は成形品本体1を成形するための第一樹脂6である硬質合成樹脂の色合いよりも明るい色合いの第二樹脂7である軟質合成樹脂により成形することが好ましい。これにより暗い場所でも台車の外端部の位置が確認しやすく、台車を移動する際、障害物にぶつけたりするのを防止できるようになっている。また、成形品本体1は外周端部に成形される二次成形部2よりも相対的に暗い色となるため、成形品本体1に荷物を載置することで汚れても目立たなくすることができることになる。
ここで、合成樹脂成形品の廃材を再生した再生樹脂を使用すると再生樹脂は一般に黒っぽい色(暗い色合い)であるため、成形品本体1を成形するための第一樹脂6として再生樹脂を使用することができる。この場合、二次成形部2を成形するための第二樹脂7としては明るい色を出すためバージン樹脂を使用する。
上記実施形態では成形する合成樹脂成形品9として台車用本体の例を示したが、合成樹脂成形品9がパレットの場合も同様にしてパレットの主体を構成する成形品本体1を硬質合成樹脂の第一樹脂6により成形し、パレットの外周端部に発生するバリ部8を一体に被覆する二次成形部2を軟質合成樹脂の第二樹脂7により成形してもよい。
この場合も、二次成形部2が成形品本体1の圧縮成形により成形されるバリ部8を被覆して外部に露出させない役目と、二次成形部2が衝撃吸収部の役目を兼用し、パレットとして使用した際、上記台車の場合で述べたのと同様の作用効果を奏することができる。
図17には、本発明の合成樹脂成形品9を成形するための金型装置20の他例が示してある。
前述の実施形態の金型装置20においては外周金型23を固定金型21に対して可動金型22の移動方向と同方向に移動自在に取付けた例を示したが、本実施形態は外周金型23を可動金型22に対して可動金型22の移動方向と同方向に移動自在に取付けたものであり、他の構成は前述の実施形態の金型装置20と同じ構成であるので説明は省略する。図17(a)は硬質合成樹脂を注入する前の状態を示し、図17(b)は硬質合成樹脂により成形品本体1を成形する一次成形の段階を示し、図17(c)は軟質合成樹脂よりなる二次成形部2を成形品本体1と一体に成形する二次成形の段階を示している。成形順序は前述の実施形態と同様であるので説明は省略する。
前述の実施形態では第一樹脂6を圧縮成形して成形品本体1を成形する際、可動金型22の側面と外周金型23の先端部の内面との間の僅かな隙間Mに第一樹脂6が入り込んでバリ部8が成形されるが、本実施形態の金型装置20では外周金型23を可動金型22に対して可動金型22の移動方向と同方向に移動自在に取付けてあるので、圧縮成形において外周金型23の先端部内面が固定金型21の側端面と重複するようにしてスライドする構造とするため、外周金型23の先端部の内面と固定金型21の側端面との間に図17(d)に示すような僅かな隙間Mを形成してあり、このため、第一樹脂6を圧縮成形して成形品本体1を成形する際、固定金型21の側面と外周金型23の先端部の内面との間の僅かな隙間Mに第一樹脂6が入り込んでバリ部8が成形されることになる。ここで、前述の実施形態では形成されるバリ部8は成形品本体1の天板部3と反対側に成形されるが、本実施形態では形成されるバリ部8は成形品本体1の天板部3の端部において表面から突出するように形成される。そして、この天板部3の端部の表面に突出するバリ部8を含めて成形品本体1の外端部を、軟質合成樹脂(第二樹脂7)による二次成形で成形した二次成形部2で被覆一体化することになる。これにより、図17(e)に示すように軟質合成樹脂である第二樹脂7で被覆された硬質合成樹脂である第一樹脂6で成形したバリ部8が天板部3の端部に突出して形成されるので、この部分が天板部3の上に載せた載置物が滑り落ちるのを防止するストッパの役目をするものであり、また、硬質合成樹脂よりなるバリ部8が軟質合成樹脂で覆われているので、載置物がバリ部8で損傷したり、あるいは人が触れて傷付いたりしないものであり、また、ストッパとなる部分の芯部分が硬質合成樹脂のバリ部8であるため、ストッパ部分が破損し難いものである。
図18には、本発明の合成樹脂成形品9を成形するための金型装置20の更に他例が示してある。
前述の各実施形態では成形品本体1の外周端部に成形される二次成形部2の形状が断面逆U字状をしている場合における金型装置20であり、この金型装置20においては二次成形部2の形状が断面逆U字状であるため第2キャビティ部28を形成するためのスライド金型25を主スライド金型部25aと副スライド金型部25bとの二部材で構成している。これに対し、本実施形態は成形品本体1の外周端部に形成される二次成形部2の形状が断面コ字状又はE字状をしている場合における金型装置20であり、二次成形部2の形状が断面断面コ字状又はE字状をしているので、第2キャビティ部28を形成するためのスライド金型25を横方向に移動することで離型でき、このため、前述の実施形態のようにスライド金型25を主スライド金型部25aと副スライド金型部25bとの二部材で構成する必要がなく、図18のように一部材で構成してある。
本実施形態の金型装置20はこのスライド金型25が前述の各実施形態と異なるのみで、他の構成は同じ構成となっており、金型装置20における合成樹脂成形品9の成形も基本的には前述と同様にして第一樹脂6を圧縮成形をして成形品本体1を成形すると共に第一樹脂6の圧縮成形により成形される成形品本体1の外周部に圧縮成形により発生するバリ部8を形成し、その後、成形品本体1の外周部に成形品本体1と一体に第二樹脂7の射出成形により二次成形部2を成形すると共に該二次成形部2でバリ部8を一体に被覆して合成樹脂成形品9を成形するようになっている。
図19には、本発明の合成樹脂成形品9を成形するための金型装置20の更に他例が示してある。
本実施形態における金型装置20は、固定金型21と、固定金型21に対して移動自在な可動金型22と、固定金型21の側部に移動自在に取付けられた固定側外周金型32と、可動金型22の側部に移動自在に取付けられた可動側外周金型33と、側スライド金型34とで構成してある。
側スライド金型34は固定金型21に移動自在に取付けてあり、側スライド金型34の移動方向は可動金型22の移動方向と直交する方向となっている。固定側外周金型32と可動側外周金型33とはいずれも可動金型22の移動方向と平行方向に移動自在となっており、固定側外周金型32、可動側外周金型33をそれぞれ後退させた状態で、側スライド金型34を固定金型21の側面側に移動して前進させ、側スライド金型34の先端面を固定金型21の側面に隙間なくぴったりと当接できるようになっており、この状態で、可動金型22を固定金型21側に移動して側スライド金型34の先端面が可動金型22の側面に重複し、固定金型21と可動金型22と側スライド金型34とで囲まれた部分が第1キャビティ部26を形成するようになっている。このように側スライド金型34の先端面が可動金型22の側面に重複した状態で更に可動金型22を固定金型21側にスライドできるように構成してある。
この場合、側スライド金型34の先端面が固定金型21の側面にぴったりと隙間なく当接した状態で、該側スライド金型34の先端面に、可動金型22を移動してその側面を重複させる際、側スライド金型34の先端面の端部のエッジ部分が可動金型22の側面のエッジ部分に当たると可動金型22を移動してその側面を側スライド金型34の先端面に重複させることができない。このため側スライド金型34の先端面が固定金型21の側面にぴったりと隙間なく当接した状態で可動金型22を移動してその側面を側スライド金型34の先端面に重複させた場合、可動金型22の側面と側スライド金型34の先端面との間にわずかな隙間Mが生じるようにしてある。すなわち、圧縮成形は、可動金型22が樹脂を押し潰すものであり、そのときに、可動金型22が、樹脂の抵抗で横にずれて動かなくなる可能性があるため、上記のように隙間Mを形成する。更に、樹脂量を正確に注入することやキャビティ全周に樹脂が行くように、少し多めに注入するものであり、このため樹脂の逃げ道をつくるために隙間Mを形成する。
また、上記側スライド金型34を上記と逆方向に移動することで後退させ、固定側外周金型32と可動側外周金型33とをそれぞれ前進させて突き合わせることで、固定側外周金型32と可動側外周金型33の対向面の突き合された部分以外の対向面に上記第1キャビティ部26と連通する第2キャビティ部28が形成されるようになっている。
上記の構成の金型装置20を用いて合成樹脂成形品9を成形する具体例を説明する。
まず、上記金型装置20を用いて圧縮成形による一次成形で硬質合成樹脂よりなる成形品本体1を形成する工程を実行する。
すなわち、図19(a)の状態で可動金型22を固定金型21側に移動して可動金型22の側面を側スライド金型34の先端面に重複して第1キャビティ部26を形成する。
この場合、前述のように可動金型22の側面端部のエッジ部分が側スライド金型34の先端面の端部のエッジ部分に当たることなくスムーズに可動金型22の側面と側スライド金型34の先端面とが上記わずかな隙間Mを介して重複することになる。
この状態で、第1キャビティ部26内に硬質合成樹脂(第一樹脂6)を注入する。この場合、射出による注入だけでなく、落とし込みによる注入等種々の注入形態が選択できる。
次に、可動金型22を更に固定金型21側に移動して第1キャビティ部26内に注入した硬質合成樹脂(第一樹脂6)を図19(b)のように圧縮成形する。
このように圧縮成形により硬質合成樹脂(第一樹脂6)を所定形状になるように圧縮して成形品本体1を成形するのであるが、可動金型22を移動して第1キャビティ部26内の第一樹脂6を圧縮していくと、上記可動金型22の側面と側スライド金型34の先端面との間のわずかな隙間Mに第一樹脂6が入り込み、この部分にバリ部8が圧縮成形により成形される。
上記圧縮成形工程が終わると、次に、同じ金型装置20を用いて射出成形による2次成形で硬質合成樹脂よりなる成形品本体1の外端部に軟質合成樹脂(第二樹脂7)よりなる二次成形部2を射出成形で成形して該二次成形部2により上記圧縮成形工程で成形されたバリ部8を一体に被覆する工程を実行する。
すなわち、可動金型22を閉じたまま図19(c)の矢印のように側スライド金型34を移動して上記一次成形(圧縮成形)により成形された硬質合成樹脂(第一樹脂6)よりなる成形品本体1の上記バリ部8を含む外周面を露出させる。
次に、図19(c)のように固定側外周金型32と可動側外周金型33とをそれぞれ前進させて突き合わせて第2キャビティ部28を形成する。このようにして形成される第2キャビティ部28は一側に上記バリ部8を含む外周面の露出部分が位置することになる。次に、第2キャビティ部28に軟質合成樹脂(第二樹脂7)を射出して硬質合成樹脂(第一樹脂6)よりなる成形品本体1の外周端部に軟質合成樹脂(第二樹脂7)よりなる二次成形部2を一体に射出成形により成形する。
このようにして前述した本発明の合成樹脂成形品9を成形するものである。