JP4824808B2 - 熱可塑性樹脂成形体、その製造方法および熱可塑性樹脂の再資源化方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂成形体、その製造方法および熱可塑性樹脂の再資源化方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂成形体およびその製造方法に関する。さらに本発明は、廃棄物から回収した熱可塑性樹脂の再資源化方法にも関する。
一般に熱可塑性樹脂からなる部材は、原油などの埋蔵化石資源を基礎原料として合成されるものが多く、資源の有効活用の観点からバイオマスを基礎原料として合成される熱可塑性樹脂の利用、およびこれらの熱可塑性樹脂からなる部材を備えた製品の再資源化の推進が近年強く要求されてきている。
熱可塑性樹脂からなる部材を備えた製品の廃材の再資源化は、燃焼による二酸化炭素および硫黄酸化物の放出による地球温暖化、酸性雨といった環境破壊や、塩素化合物を含む熱可塑性樹脂の焼却処理によるダイオキシンの生成、飛散といった環境汚染、さらには嵩の大きい熱可塑性樹脂を含む廃材の増大によるゴミ埋立処理場の不足といった問題を抑制するという観点からも、重要かつ緊急の課題となりつつある。
また、バイオマス由来の中でも植物由来の熱可塑性樹脂は、植物の成長過程で二酸化炭素を吸収しているため廃棄時に焼却されても環境中の二酸化炭素濃度は増大しないとされており、環境に調和した材料としてその利用の拡大が重要な課題となっている。
しかし、このようなバイオマス由来の熱可塑性樹脂は、耐衝撃性などの機械的特性が劣るため、家電製品や事務用機器などの要求特性が高い部材として使用すると破損や変形などの問題があり、その利用の多くは包装材料や園芸資材用フィルムなどの比較的要求特性の低い部材に限られている。
バイオマス由来の熱可塑性樹脂が有するこれらの特性上の問題を改善するために、脂肪族ポリエステル樹脂とポリカプロラクトンとの樹脂組成物からなる成形体(たとえば、特許文献1参照)、あるいはポリ乳酸を主成分とするポリエステル樹脂に対して飽和アルキルと脂肪族ポリエステル等を結合した化合物を混合する生分解性ポリエステル組成物などが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
しかしながら、これらの成形体や組成物では機械的特性はある程度向上するものの、家電製品、事務用機器などの要求特性が高い部材として使用するには十分といえるものではない。
一方、近年わが国では所得水準の向上に伴いエアコンディショナ(本願においては単にエアコンとも記載する)、テレビジョン受信機(本願においては単にテレビとも記載する)、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品、パ−ソナルコンピュ−タ、ワ−ドプロセッサなどの情報機器、プリンタ、ファックスなどの事務用機器、その他の各種の家具、文具、玩具などが、一般家庭に高い普及率で備えられるようになっており、家庭生活における利便性は飛躍的に向上しつつある。
しかしその結果、これらの家電製品をはじめとする製品の廃棄量も年々増加する傾向にある。従来、これらの家電製品をはじめとする製品の廃材の再資源化は、鉄くずの回収ル−トを通して行なわれる場合が多かった。これに対して近年では、家電製品をはじめとする各種製品の部材の構成材料が変化し、鉄をはじめとする金属からなる部材が減少して熱可塑性樹脂からなる部材の割合が増加する傾向にある。熱可塑性樹脂は、鉄をはじめとする金属よりもデザインの自由度が大きく、構成成分の調製や添加剤の使用などにより金属では実現の難しい種々の特性を付与することができ、軽量であり耐久性が高いことなどの多くの利点を有するためである。
なお、本願においては、熱可塑性樹脂からなる部材をプラスチック部材とも記載し、プラスチック部材を備えた製品をプラスチック製品とも記載する。さらに、本願においては、プラスチック製品の廃材をプラスチック廃材とも記載する。
ここで、上記の状況を受けて、2001年4月に家電リサイクル法が施行された。この家電リサイクル法においては、2003年4月現在、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機からなる家電4品目のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率についてはエアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
そして、上記の家電リサイクル法の施行を受けてプラスチック廃材の回収は進みつつあるが、このようにして回収されたプラスチック廃材の再資源化方法としては、プラスチック廃材を燃料として使用するいわゆるサーマルリサイクルに関する方法が従来同様多く活用されている。しかし、このようなサーマルリサイクルによればプラスチック廃材の再資源化は可能であるが、燃焼による炭酸ガスの発生などの問題があるため社会的要請に充分に沿った方法であるとはいえない。
そこで、こうして回収されたプラスチック廃材からたとえば手解体などの方法により熱可塑性樹脂の系統ごとにプラスチック部材を分離して、それらのプラスチック部材を再度、製品の部材またはその原料に加工して使用するプラスチック廃材の再資源化方法が提案されている。このような再資源化方法は、上記のサーマルリサイクルと対比してマテリアルリサイクルと呼ばれている。
そして、上記のようにして熱可塑性樹脂の系統ごとに分離されたプラスチック部材の中でも、熱可塑性樹脂からなる廃材(本願においては熱可塑性樹脂廃材とも記載する)は、加熱溶融して再度成形することにより比較的容易にマテリアルリサイクルすることが可能である。
このため、現在、プラスチック廃材のマテリアルリサイクルの比率を高めるために、熱可塑性樹脂廃材のマテリアルリサイクルによる再資源化方法の研究開発が各方面で多大な努力を払って行なわれている。
しかしながら、熱可塑性樹脂廃材、特に家電製品や事務用機器などに使用されている熱可塑性樹脂廃材は、厳しい環境で長期間使用されることが多いため廃材となった時点ですでに特性が低下しており、変色または退色などの外観上の特性の低下だけでなく、強度、柔軟性などの物性も低下した耐久性に乏しい材料になっていることが多い。
そのため、このような熱可塑性樹脂廃材は、高度な特性が要求されるプラスチック部材に用いられるバージン材料としての代替用途ではなく、要求される特性が比較的低いプラスチック部材の原料として用いられることが多い。
そして、現在のところ、熱可塑性樹脂廃材のマテリアルリサイクルとしてはこのようなカスケ−ドリサイクルが主流となっている。そのため、熱可塑性樹脂廃材から再生される熱可塑性樹脂成形体の用途が限られてしまい、依然、熱可塑性樹脂廃材の大半がサーマルリサイクルされているということが問題となっている。
なお、本願においてバージン材料とは、廃材の再利用品ではなく未使用の樹脂材料のことを意味するものとし、また特性の低下したプラスチック廃材を要求特性の高いプラスチック部材に用いられる熱可塑性樹脂のバージン材料の代替用途ではなく、要求特性の比較的低いプラスチック部材の原料として用いることをカスケ−ドリサイクルと記載するものとする。
このような問題を克服するため、上記の熱可塑性樹脂廃材からのマテリアルリサイクルにより得られる熱可塑性樹脂成形体の特性を向上させ、高度な特性が要求されるプラスチック部材としても使用可能な水準に到達させるべく、多くの研究開発努力がなされている。たとえば、熱可塑性樹脂廃材(マテリアルリサイクル材料)にバージン材料を混合することによって特性を保持する方法が数多く提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
しかしながら、このようなマテリアルリサイクル方法においては、バージン材料の多くは原油などの埋蔵化石資源を基礎原料として合成され、しかも混合されるバージン材料の量は70〜90%のケースがほとんどであるため、環境に調和した材料とは言い難い。
特開2000−226501号公報 特許第3385329号 特開2000−159900号公報
上記のように、バイオマス由来の熱可塑性樹脂は、耐衝撃性などの機械的特性が劣るため、家電製品や事務用機器などの高度な特性が要求される部材として使用すると破損や変形などの問題があり、その利用の多くは包装材料、園芸資材用フィルムなどの要求特性の低い部材に限られているのが現状である。
また、市場から回収された熱可塑性樹脂廃材から、熱可塑性樹脂廃材を主原料とするマテリアルリサイクルにより再利用が可能であり、用途が広く、プラスチック部材またはその原料としても使用可能な特性を有する、熱可塑性樹脂成形体を得ることのできる、効率的かつ低コストの熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法の開発が強く望まれているにも関わらず、そのような再資源化方法は未だ知られていないのが現状である。
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであってその目的とするところは、化石資源由来の熱可塑性樹脂とバイオマス由来の熱可塑性樹脂を効果的に混合することにより、高度な特性が要求される部材にも使用が可能で、しかも埋蔵化石資源の使用量を低減することができる熱可塑性樹脂成形体を提供することにある。
さらに、本発明は、バイオマス由来の熱可塑性樹脂に混合する化石資源由来の熱可塑性樹脂を、廃棄物から回収した熱可塑性樹脂廃材に代替することで、埋蔵化石資源の使用量の低減と、サーマルリサイクルされる熱可塑性樹脂廃材を低減することができ、且つ、多様な用途に応じた特性を有する熱可塑性樹脂成形体を提供するとともに、熱可塑性樹脂の再資源化方法を提供することにある。
一方、バイオマス由来の熱可塑性樹脂は、今後耐久消費財などの部材として使用されることが予想され、将来的にはこれらの部材も再資源化が要求される。さらに、耐久消費財にバイオマス由来の熱可塑性樹脂が使用されるようになると、リサイクルする際に化石資源由来の熱可塑性樹脂とバイオマス由来の熱可塑性樹脂が混在するケースがあり、本発明は熱可塑性樹脂の有効な再資源化方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するには化石資源由来の熱可塑性樹脂と、バイオマス由来の熱可塑性樹脂と、これら両者に対して混和性を示し特性を向上させる第3成分を添加すれば、理想的な熱可塑性樹脂成形体が得られるのではないかとの着想を得、このような熱可塑性樹脂成形体を開発すべく、多くの種類の熱可塑性樹脂から得られる原料ペレット状の熱可塑性樹脂成形体を調製し、特性についての実験を繰り返し鋭意検討を重ねた結果、ついに本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)と、これらの熱可塑性樹脂成分(A)および熱可塑性樹脂成分(B)の両者に対して相溶性または分散性を示す熱可塑性樹脂成分(C)と、を含むことを特徴としている。
また、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上記熱可塑性樹脂成分(B)および上記熱可塑性樹脂成分(C)に代えて、上記熱可塑性樹脂成分(B)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位と、上記熱可塑性樹脂成分(C)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位とを含んでなる熱可塑性共重合樹脂成分(D)を含むことができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上記熱可塑性樹脂成分(C)に代えて、上記熱可塑性樹脂成分(B)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位と、上記熱可塑性樹脂成分(C)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位とを含んでなる熱可塑性共重合樹脂成分(D)を含むことができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上記熱可塑性樹脂成分(B)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位と、上記熱可塑性樹脂成分(C)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位とを含んでなる熱可塑性共重合樹脂成分(D)を含むことができる。
また、上記熱可塑性樹脂成分(A)は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂とすることができ、上記熱可塑性樹脂成分(B)は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体とすることができ、上記熱可塑性樹脂成分(C)は、脂肪族ポリエステルとすることができ、上記熱可塑性共重合樹脂成分(D)は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体とすることができる。
また、上記熱可塑性共重合樹脂成分(D)を用いる場合、上記熱可塑性樹脂成分(A)は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂であり、上記熱可塑性共重合樹脂成分(D)は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体とすることが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂成形体は、ポリオレフィンの主鎖または側鎖に、カルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位を含む変性重合体(E)を含むことができる。
一方、上記熱可塑性樹脂成分(A)は、廃棄物から回収した熱可塑性樹脂とすることが好ましく、この廃棄物は、家電製品、OA機器または電気電子部品のいずれかであることが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂成形体は、エアコン、テレビ、冷蔵庫または洗濯機のいずれかに用いることができる。
また、上記熱可塑性樹脂成形体は、その形状がペレット状の形状を有したものとすることができる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、上記の熱可塑性樹脂成形体を製造する方法であって、上記各熱可塑性樹脂成分を溶融混合した後、特定の形状に成形することが好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂の再資源化方法は、上記の熱可塑性樹脂成形体の製造方法において、上記熱可塑性樹脂成分の一として廃棄物から回収した熱可塑性樹脂を使用することにより実行することができる。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上記の構成を有することにより、化石資源由来の熱可塑性樹脂とバイオマス由来の熱可塑性樹脂とを効率よく混合でき、多様な用途に応じた特性を有することが可能となり、埋蔵化石資源を基礎原料として合成する熱可塑性樹脂の使用量を低減することができる環境に配慮した熱可塑性樹脂成形体である。
そして特に、本発明の熱可塑性樹脂成形体において、化石資源由来の熱可塑性樹脂として廃棄物から回収した熱可塑性樹脂を使用することにより、効率的なマテリアルリサイクルを達成することができ、サーマルリサイクルされる熱可塑性樹脂廃材を低減することができる。
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
<熱可塑性樹脂成形体>
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)(熱可塑性樹脂(A)と記すこともある)と、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)(熱可塑性樹脂(B)と記すこともある)と、これらの熱可塑性樹脂成分(A)および熱可塑性樹脂成分(B)の両者に対して相溶性または分散性を示す熱可塑性樹脂成分(C)(熱可塑性樹脂(C)と記すこともある)と、を含むものである。
ここで、これらの熱可塑性樹脂成分の混合比率としては、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)が4〜95質量%、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)が95〜4質量%であって、上記熱可塑性樹脂成分(C)が1〜50質量%であることが好ましい。そして特に、特性を損なうことなくバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の混合比率を増加させるには、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)が92質量%以下であり、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)と熱可塑性樹脂成分(C)の合計量が8質量%以上であることがより好ましい。
上記の混合比率において化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)のより好ましい混合比率は、その上限が90質量%、さらに好ましくは80質量%であり、その下限が10質量%、さらに好ましくは20質量%である。
また、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)のより好ましい混合比率は、その上限が90質量%、さらに好ましくは80質量%であり、その下限が10質量%、さらに好ましくは20質量%である。
さらに、熱可塑性樹脂成分(C)のより好ましい混合比率は、その上限が40質量%、さらに好ましくは30質量%であり、その下限が1質量%、さらに好ましくは2質量%である。
上記化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)が4質量%未満の場合、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の比率が高くなるため衝撃特性などに劣り、耐久消費財の部材として使用できるような特性が得られなくなり、95質量%を超えると化石資源由来の熱可塑性樹脂の比率が高くなるため、埋蔵化石資源の使用量の低減への寄与度が小さくなる。
上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)が4質量%未満の場合、化石資源由来の熱可塑性樹脂の比率が高くなるため、埋蔵化石資源の使用量の低減への寄与度が小さくなり、95質量%を超えるとバイオマス由来の熱可塑性樹脂の比率が高くなるため衝撃特性などに劣り、耐久消費財の部材として使用できるような特性が得られなくなる。
上記熱可塑性樹脂成分(C)が1質量%未満の場合、化石資源由来の熱可塑性樹脂とバイオマス由来の熱可塑性樹脂の相溶性または分散性が悪くなるため、衝撃特性などに劣り、耐久消費財の部材として使用できるような特性が得られなくなり、50質量%を超えると化石資源由来の熱可塑性樹脂とバイオマス由来の熱可塑性樹脂の相溶性または分散性は良くなるが、コストが高くなり経済的に不利となる。
<熱可塑性樹脂成形体の形状等>
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上記の熱可塑性樹脂成分を含んでいる限り、その形状は特に限定されるものではない。すなわち、本発明の熱可塑性樹脂成形体の形状は、各種製品の部材として用いられる形状となるように成形された形状を含むとともに、こればかりではなくそのような部材の形状に成形する工程で用いられる前駆体の形状であるペレット状、シート状、フィルム状、パイプ状等の形状を有したものとすることもできる。
本発明の熱可塑性樹脂成形体が各種製品の部材として用いられる形状を有する場合、そのような製品としては、たとえば家電製品、OA機器(パーソナルコンピュータ等の情報機器やプリンターやコピー機等の事務機器を含む)、電気電子部品等を挙げることができ、特に家電製品であるエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の部材として用いられる形状を有したものとすることが好ましい。
一方、本発明の熱可塑性樹脂成形体が上記のような部材の形状に成形する工程で用いられる前駆体の形状である場合、その形状としてはペレット状であることが特に好ましい。この場合、このペレットの粒径は1mm以上であることが好ましく、特に2mm以上であることがより好ましい。また、このペレットの粒径は8mm以下であることが好ましく、特に5mm以下であることがより好ましい。このペレットの粒径が1mm未満の場合には、浮遊するため作業性が低下するという傾向があり、このペレットの粒径が8mmを超えると、成形機のシリンダ−内で充分に溶融しないため均一混練されないという傾向がある。
なお、本発明の熱可塑性樹脂成形体が上記のような前駆体としての形状を有する場合、その形状としては上記のようなペレット状のもののみに限定されるものではなく、たとえばシ−ト状、フィルム状、パイプ状などいずれの形状であってもよく、押出成形機の種類、使用の態様あるいは求められる特性などから適宜選択することができる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂成形体の形状としては、上記で説明したような各形状の他、上記の各熱可塑性樹脂成分を溶融混合し単に塊状としたものやそれを不定形に粉砕したようなもの等、特に成形工程を経ていないものも含まれる。
また、本発明の熱可塑性樹脂成形体には、上記の各熱可塑性樹脂成分の他、熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラ−、重金属不活性化剤、抗菌剤、着色剤などの添加剤を所望により添加することができる。
<化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)>
本発明の熱可塑性樹脂成形体に含まれる熱可塑性樹脂成分(A)は、化石資源に由来する熱可塑性樹脂である。ここで化石資源とは、原油や石炭の他、天然ガスも含む。また、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分とは、このような化石資源を原料として得られる各種化合物を重合反応することにより生成する熱可塑性樹脂を意味する。したがって、このような熱可塑性樹脂成分(A)は非常に広範囲の熱可塑性樹脂が含まれ、逆にこのように広範囲の熱可塑性樹脂に適用可能であることが本発明の特徴のひとつである。
ここでこのような熱可塑性樹脂成分(A)を例示すると、たとえばポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、アクリル系、アクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリエーテル系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、フッ素樹脂系等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
またこれらの熱可塑性樹脂の性状としては、軟化点が100〜400℃、好ましくは120〜350℃、さらに好ましくは150〜300℃である。
軟化点が100℃未満の場合には、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)との混和性が不十分となり、軟化点が400℃を超えると成形温度が高くなり過ぎバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)が熱分解する。
本発明の熱可塑性樹脂成分(A)としては、上記した熱可塑性樹脂の中でも特にポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂は、化石資源由来の熱可塑性樹脂として最も多量に使用されている樹脂の一つであるため、本発明の利用によりこの樹脂のバージン材料としての使用量を減少させることができることから環境上極めて好ましいとともに、後述のバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)と比較的良好な混和性を有するからである。
そして、このような熱可塑性樹脂成分(A)は、廃棄物から回収した熱可塑性樹脂であることが特に好ましい。これによりマテリアルリサイクルを効果的に実現することができるからである。このような廃棄物としては、熱可塑性樹脂を含む部材が使用されているものである限り、特に限定されるものではない。たとえば、そのような廃棄物として、家電製品、OA機器、電気電子部品等を好適な例として挙げることができる。
<バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)>
本発明の熱可塑性樹脂成形体に含まれる熱可塑性樹脂成分(B)は、バイオマスに由来する熱可塑性樹脂である。ここで、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分とは、植物あるいは微生物を原料として得られる各種化合物を重合反応することにより生成する熱可塑性樹脂の他、そのような植物や微生物から直接的に抽出されるものも含まれる。
このようなバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)は、上記の化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と異なり、生分解性を示すという特徴を有するものである。ここでこのような熱可塑性樹脂成分(B)を例示すると、たとえばポリ乳酸重合体系、デンプン系、ポリエステル系、ポリヒドロキシアルカノエート系などのポリエステル系、ポリオールウレタン系等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
また、これらの熱可塑性樹脂の性状としては、軟化点が100〜400℃、好ましくは120〜350℃、さらに好ましくは150〜300℃である。
軟化点が100℃未満の場合には、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)との混和が不十分となり、軟化点が400℃を超えると成形温度が高くなり過ぎ化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)が熱分解する。
本発明の熱可塑性樹脂成分(B)としては、上記した熱可塑性樹脂の中でも特にL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体を用いることが好ましい。L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体は、植物の成長過程で二酸化炭素を吸収しているため廃棄時に焼却されても環境中の二酸化炭素濃度は増大しないとされていることから環境上好適であるばかりではなく、バイオマス由来の熱可塑性樹脂の中では優れた機械的特性等の諸特性を有しているとともに、成形用の材料として量産性に優れているからである。
<熱可塑性樹脂成分(C)>
本発明の熱可塑性樹脂成形体に含まれる熱可塑性樹脂成分(C)は、上記化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)との両者に対して相溶性または分散性を示す熱可塑性樹脂である。ここで、上記化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)との両者に対して相溶性または分散性を示すとは、これらの両熱可塑性樹脂成分に対して混和性を有し、これらの両熱可塑性樹脂成分と溶融混合した後においても相分離等を生じない特性を示すことを意味する。しかもこの熱可塑性樹脂成分(C)を上記化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の両者と混合することにより、この化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)とバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の両者についても互いに溶融混合後において相分離等を生じないという極めて優れた効果が示されるとともに、熱可塑性樹脂成形体自体の諸特性が飛躍的に向上したものとなる。
すなわち、この熱可塑性樹脂成分(C)の介在により、上記化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の両者は、熱可塑性樹脂成形体中において飛躍的に向上した諸特性を維持したまま互いに層間剥離等を生じることなく共存することが可能となる。
なお、ここでは、特殊な機能を有さない汎用的な混錬押出機および汎用的な成形機を用いるという条件下において所期の材料特性、たとえば耐衝撃強度が得られる場合、この熱可塑性樹脂成分(C)が上記化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)との両者に対して相溶性または分散性を示すものとみなすものとする。
このような熱可塑性樹脂成分(C)としては、上記した特性を示すものである限り特にその組成が限定されるものではないが、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等のグリコールと脂肪族ジカルボン酸とからなる脂肪族ポリエステルを特に好適なものとして例示することができる。
このような脂肪族ポリエステルの性状としては、軟化点が100〜400℃、好ましくは120〜350℃、さらに好ましくは150〜300℃である。
軟化点が100℃未満の場合には、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)とバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)との混和が不十分となり、軟化点が400℃を超えると成形温度が高くなり過ぎ化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)およびバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)が熱分解する。
なお、本発明の熱可塑性樹脂成分(C)としては、上記のような脂肪族ポリエステルのみではなく、たとえばポリ(ブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン等を挙げることができる。そしてこれらの熱可塑性樹脂の性状としては、上記した脂肪族ポリエステルと同様の性状を有しているものが好ましい。
<熱可塑性共重合樹脂成分(D)>
上述の通り、本発明の熱可塑性樹脂成分(C)は、上記化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)との両者に対して相溶性または分散性を示す熱可塑性樹脂であるが、この熱可塑性樹脂成分(C)と上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)とは、これらの熱可塑性樹脂成分をそれぞれ構成するモノマー単位またはオリゴマー単位を含んでなる熱可塑性共重合樹脂成分(D)(熱可塑性共重合樹脂(D)と記すこともある)とすることができる。
すなわち、本発明の熱可塑性共重合樹脂成分(D)は、上記熱可塑性樹脂成分(B)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位と、上記熱可塑性樹脂成分(C)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位とを含んでなるものである。
この場合本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上記熱可塑性樹脂成分(B)および上記熱可塑性樹脂成分(C)に代えて、この熱可塑性共重合樹脂成分(D)を含むものとすることができる(すなわち、この場合、熱可塑性樹脂成形体は熱可塑性樹脂成分(A)および(D)を含むことになる)。
また、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上記熱可塑性樹脂成分(C)に代えて、この熱可塑性共重合樹脂成分(D)を含むものとすることができる(したがって、この場合、熱可塑性樹脂成形体は熱可塑性樹脂成分(A)、(B)および(D)を含むことになる)。
また、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上記の熱可塑性樹脂成分(A)、(B)および(C)とともにこの熱可塑性共重合樹脂成分(D)を含むものとすることもできる。
なお、これらの場合において、上記化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)としてはポリオレフィン系熱可塑性樹脂を、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)としてはL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体をそれぞれ用いることが特に好ましい。このような熱可塑性共重合樹脂成分(D)と特に優れた混和性を有するためである。
ここでこのような熱可塑性共重合樹脂成分(D)としては、たとえばL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体を挙げることができる。この場合、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体は熱可塑性樹脂成分(B)のモノマー単位またはオリゴマー単位により構成されるものに相当し、脂肪族ポリエステルは熱可塑性樹脂成分(C)のモノマー単位またはオリゴマー単位により構成されるものに相当する。したがって、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体は、結果的に熱可塑性樹脂成分(B)と熱可塑性樹脂成分(C)とをそれぞれ構成するモノマー単位またはオリゴマー単位を含んでなるものに相当する。
このような熱可塑性共重合樹脂成分(D)の性状としては、軟化点が100〜400℃、好ましくは120〜350℃、さらに好ましくは150〜300℃である。
軟化点が100℃未満の場合には、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)とバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)との混和が不十分となり、軟化点が400℃を超えると成形温度が高くなり過ぎ化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)およびバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)が熱分解する。
このような熱可塑性共重合樹脂成分(D)を用いることにより、上記化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と上記バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)との両者に対して熱可塑性樹脂成分(C)を配合する場合に比し、熱可塑性樹脂成形体の諸特性をさらに向上させることができるため好ましい態様として挙げることができる。
<変性重合体(E)>
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、ポリオレフィンの主鎖または側鎖に、カルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位を含む変性重合体(E)をさらに含むことができる。このような変性重合体(E)を含むことにより化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)とバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)、および熱可塑性樹脂成分(C)あるいは熱可塑性共重合樹脂成分(D)の相溶性または分散性を改善するという優れた効果が示される。
ここでこのような変性重合体(E)としては、カルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位がブロック化またはグラフト化されているものも含むものである。
また、このような構成単位を例示すると、無水マレイン酸等を挙げることができ、よってこのような変性重合体(E)としては、ポリオレフィンとしてポリプロピレンの主鎖または側鎖に無水マレイン酸を構成単位として含むものを挙げることができる。
<熱可塑性樹脂成形体の製造方法>
本発明の上記熱可塑性樹脂成形体は、上記の各熱可塑性樹脂成分を溶融混合した後、特定の形状に成形することにより製造することができる。
ここで、上記の各熱可塑性樹脂成分を溶融混合する際には、タンブラー混合機等を用いて各熱可塑性樹脂成分が均一に混合されることが好ましい。また、このような特定の形状に成形する方法としては、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、真空成形法、トランスファ成形法、粉末成形法、ブロー成形法等を挙げることができる。
これらの成形法の中でも特に、押出成形法、射出成形法を採用することが好ましい。押出成形法を採用する場合、押出成形装置としては特に限定されるものではないが、たとえば単軸押出成形機、二軸押出成形機あるいは多軸式押出成形機等を挙げることができる。また射出成形法を採用する場合、射出成形機としては特に限定するものではないが、たとえばスクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機等を挙げることができる。
なお、上記のように特定の形状に成形する場合、その工程をより簡略化するためには、ペレット状などの形状を有する前駆体を作製することなく、熱可塑性樹脂の溶融混合物を直接破砕して押出成形機や射出成形機にそのまま投入し、熱可塑性樹脂成形体を直接製造することもできる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上述のように熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラ−、重金属不活性化剤、抗菌剤、着色剤などの添加剤を配合することができるものであるが、これらの添加剤を添加するステップとしては、押出成形機または射出成形機へ上記の各熱可塑性樹脂成分の投入するのと同時に添加することが好ましい。
一方、本発明の熱可塑性樹脂成形体がペレット状の形状を有する場合、上記の各熱可塑性樹脂成分を溶融混合した後、押出成形し、その後にシートカット、ストランドカット、ホットエアカット、アンダーウォーターカットなどのいずれの造粒方法によりペレット状の形状に成形しても良い。これらの造粒方法の中でも、後に射出成形により特定の形状の成形体に成形する場合には、熱可塑性樹脂成分の供給が円滑に行なうことができ、かつ多量の処理にも対応できるアンダーウォーターカットにより造粒することが特に好ましい。
なお、上記の各成形方法は、使用する熱可塑性樹脂成分の特性に応じて従来公知の諸条件を適宜選択することが可能である。
<熱可塑性樹脂の再資源化方法>
本発明の上記熱可塑性樹脂成形体の製造方法において、上記熱可塑性樹脂成分の一として廃棄物から回収した熱可塑性樹脂を使用することにより、熱可塑性樹脂を極めて有効に再資源化することができる。ここで、廃棄物とは、既に上記で説明したものを用いることが好ましい。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂成形体に含まれる化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)として、このような廃棄物から回収した熱可塑性樹脂を使用すれば、極めて効率的なマテリアルリサイクルを構築することができ化石資源の節約に資するものとなる。
このように本発明の熱可塑性樹脂成形体は、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)としてこのような廃棄物から回収した熱可塑性樹脂を使用することにより、化石資源の節約に資することは勿論のこと、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の使用、また熱可塑性樹脂成分(C)または熱可塑性共重合樹脂成分(D)、変性重合体(E)の作用により、本発明の熱可塑性樹脂成形体の機械的特性等の諸特性を向上させる作用を担保し、以って熱可塑性樹脂成分(B)の潜在的な使用量の増大が期待され、これらの作用が相乗的に作用することにより熱可塑性樹脂成分(A)のマテリアルリサイクルの活性化と熱可塑性樹脂成分(B)の使用の活性化とを両立させることができ、以って環境配慮上極めて好適な資材を提供するものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1〜3>
まず、本実施例の熱可塑性樹脂成形体として、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)と、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)と、これらの熱可塑性樹脂成分(A)および(B)の両者に対して相溶性または分散性を示す熱可塑性樹脂成分(C)とを、以下の表1に示した混合比率(質量%)で通常のタンブラー混合機を用いて均一混合し、スクリュー径45mmの二軸押出成形機を用いて210℃で溶融混合するとともに特定の形状に成形するべく押出成形することにより直径2mm、長さ3mmのペレット状の成形体(本発明の熱可塑性樹脂成形体)を製造した。
ここで、上記熱可塑性樹脂成分(A)はポリオレフィン系熱可塑性樹脂であるポリプロピレン(チッソ(株)製チッソポリプロK5108)を、上記熱可塑性樹脂成分(B)はL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体(三井化学(株)製レイシア(登録商標)H−100J)を、上記熱可塑性樹脂成分(C)は脂肪族ポリエステル(昭和高分子(株)製ビオノーレ1000)をそれぞれ使用した。
続いて、上記で得られたペレット状の成形体をそれぞれ10トン射出成形機のホッパーに投入し、成形温度200℃の射出成形条件でASTM準拠の物性測定用の試験片を作製し、それぞれの特性を以下の測定方法により測定した。これらの測定結果を以下の表1に示す。
なお、以下の表2に示したような比較例1〜5として、上記熱可塑性樹脂成分(C)を使用しないことを除き他は全て実施例1〜3と同様にして試験片を作成し、それぞれの特性を同じく以下の測定方法により測定した。これらの測定結果を以下の表2に示す。
<各種特性の測定方法>
(i)「引張強度」および「伸び」は、それぞれ引張降伏強さおよび引張破断伸びとしてJIS K7113に準じて測定した。
(ii)「曲げ強度」および「曲げ弾性率」は、JIS K7203に準じて測定した。(iii)「衝撃強度」は、アイゾット衝撃値としてJIS K7110に準じて測定した。
(iv)「面衝撃強度」は、JIS K7211に準じて測定した。
Figure 0004824808
Figure 0004824808
表1および表2より明らかなように、化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)とバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)に対して相溶性または分散性を示す熱可塑性樹脂成分(C)を混合したことにより、衝撃強度、特に面衝撃強度が向上した。特に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の混合比率を7質量%とした実施例1では高品位の要求特性の部材として使用が可能となった。また、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の混合比率を14質量%とした実施例2では中品位ないし低品位の要求特性の部材として使用できる可能性がある。
そして、実施例1〜3のいずれにおいても熱可塑性樹脂成分(A)〜(C)が相分離することはなく、しかも上記のように衝撃強度や面衝撃強度が向上しているのは、熱可塑性樹脂成分(C)の添加による効果であることは明らかである。
<実施例4〜5>
次に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の混合比率を上記の実施例1のものに比し増大させ、かつ諸特性も向上させ得る処方を実験した。
すなわち、熱可塑性樹脂成分(A)〜(C)は上記の実施例1〜3と同じものを使用し、さらに変性重合体(E)としてポリオレフィンの主鎖または側鎖にカルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位を含む変性重合体(三洋化成(株)製ユーメックス1010)を以下の表3に示した混合比率(質量%)で配合し、通常のタンブラー混合機で均一に混合した後、スクリュー径45mmの二軸押出成形機を用いて210℃で溶融混合するとともに特定の形状に成形するべく押出成形することにより直径2mm、長さ3mmのペレット状の成形体(本発明の熱可塑性樹脂成形体)を製造した。
続いて、このようにして得られたペレット状の成形体をそれぞれ10トン射出成形機のホッパーに投入し、成形温度200℃の射出成形条件でJIS準拠の物性測定用の試験片を作製し、それぞれの特性を上記に示した測定方法により測定した。これらの測定結果を以下の表3に示す。
Figure 0004824808
表3および上記表1〜2より明らかなように、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の混合比率を14質量%とした実施例4では、変性重合体(E)を混合したことにより衝撃強度、特に面衝撃強度が向上し、中品位の要求特性の部材として使用が可能となった。
そして、実施例4〜5のいずれにおいても熱可塑性樹脂成分(A)〜(C)および変性重合体(E)が相分離することはなく、しかも上記のように衝撃強度や面衝撃強度が向上しているのは、熱可塑性樹脂成分(C)および変性重合体(E)の添加による効果であることは明らかである。
<実施例6〜7>
次に、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の混合比率をさらに増大させ、かつ諸特性も向上させ得る処方を実験した。
すなわち、熱可塑性樹脂成分(A)および変性重合体(E)は上記実施例4〜5と同じものを使用するとともに、上記実施例4〜5で使用した熱可塑性樹脂成分(B)および熱可塑性樹脂成分(C)に代えて熱可塑性共重合樹脂成分(D)を以下の表4に示した混合比率(質量%)で配合し、通常のタンブラー混合機で均一に混合した後、スクリュー径45mmの二軸押出成形機を用いて210℃で溶融混合するとともに特定の形状に成形するべく押出成形することにより直径2mm、長さ3mmのペレット状の成形体(本発明の熱可塑性樹脂成形体)を製造した。
なお、上記の熱可塑性共重合樹脂成分(D)としては、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体(大日本インキ(株)製プラメート(登録商標)PD−150)を用いた。以下の表4において、この熱可塑性共重合樹脂成分(D)の混合比率については、便宜上熱可塑性樹脂成分(B)と熱可塑性樹脂成分(C)の混合比率として換算して示してある。上述の通り熱可塑性共重合樹脂成分(D)は、該熱可塑性樹脂成分(B)と該熱可塑性樹脂成分(C)とをそれぞれ構成するモノマー単位またはオリゴマー単位を含んでなるものだからである。
続いて、上記のようにして得られたペレット状の成形体をそれぞれ10トン射出成形機のホッパーに投入し、成形温度200℃の射出成形条件でJIS準拠の物性測定用の試験片を作製し、それぞれの物性を上記に示した測定方法により測定した。これらの測定結果を以下の表4に示す。
Figure 0004824808
表4および表1〜3より明らかなように、熱可塑性共重合樹脂成分(D)を用いることにより、衝撃強度、特に面衝撃強度が大幅に向上した。特にバイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の混合比率を18質量%として換算している実施例6においては、衝撃強度、特に面衝撃強度が大幅に向上し高品位の要求特性の部材としての使用が可能となった。また、バイオマス由来の熱可塑性樹脂成分(B)の混合比率を22.5質量%として換算している実施例7においても、中品位の要求特性の部材としての使用が可能となった。
そして、実施例6〜7のいずれにおいても熱可塑性樹脂成分(A)、熱可塑性共重合樹脂成分(D)および変性重合体(E)が相分離することはなく、しかも上記のように衝撃強度や面衝撃強度が向上しているのは、熱可塑性共重合樹脂成分(D)および変性重合体(E)の添加による効果であることは明らかである。
<実施例8>
本実施例では、上記の実施例6〜7において使用した化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)(チッソ(株)製チッソポリプロK5108)に代えて、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機からなる家電4品目の廃棄物から回収されたポリオレフィン系熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)を化石資源由来の熱可塑性樹脂成分(A)として用いることにより行なった。
具体的には、回収された家電4品目から手解体により、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂廃材を分離して、10〜15mmに破砕、洗浄、脱水乾燥した後、実施例6〜7で用いた熱可塑性共重合樹脂成分(D)(大日本インキ(株)製プラメート(登録商標)PD−150)および同じく実施例6〜7で用いた変性重合体(E)(三洋化成(株)製ユーメックス1010)とともに通常のタンブラー混合機で均一混合した(混合比率;熱可塑性樹脂成分(A)78質量%:熱可塑性共重合樹脂成分(D)20質量%:変性重合体(E)2質量%)。
その後、上記の実施例6〜7と同様にしてペレット状の成形体(本発明の熱可塑性樹脂成形体)とした後、JIS準拠の物性測定用の試験片を作製し、それぞれの物性を上記に示した測定方法により測定した。
その結果、上記の実施例6〜7と同様の諸特性を示す熱可塑性樹脂成形体を得ることができた。なお、本実施例において熱可塑性樹脂成分(A)、熱可塑性共重合樹脂成分(D)および変性重合体(E)が相分離することはなく、しかも衝撃強度や面衝撃強度が向上しているのは、廃棄物から回収した熱可塑性樹脂を用いても熱可塑性共重合樹脂成分(D)および変性重合体(E)の添加による効果が示されることを示している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (7)

  1. 化石資源由来の熱可塑性樹脂(A)およびバイオマス由来の熱可塑性樹脂(B)の両者に対して相溶性または分散性を示す熱可塑性樹脂(C)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位と、前記熱可塑性樹脂(B)を構成するモノマー単位またはオリゴマー単位と、を含んでなる熱可塑性共重合樹脂(D)と、
    変性重合体(E)と、
    前記熱可塑性樹脂(A)と、を含み、
    前記熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂であり73〜95質量%の混合比率で含まれ、
    前記熱可塑性樹脂(B)は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体であり、
    前記熱可塑性樹脂(C)は、脂肪族ポリエステルであり、
    前記熱可塑性共重合樹脂(D)は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルとを結合せしめたブロック共重合体であり、
    前記変性重合体(E)は、ポリオレフィンの主鎖または側鎖に、カルボン酸基またはその誘導体基を含有する構成単位を含むものであることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
  2. 前記熱可塑性樹脂(A)は、廃棄物から回収した熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂成形体。
  3. 前記廃棄物は、家電製品、OA機器または電気電子部品のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の熱可塑性樹脂成形体。
  4. 前記熱可塑性樹脂成形体は、エアコン、テレビ、冷蔵庫または洗濯機のいずれかに用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
  5. 前記熱可塑性樹脂成形体は、その形状がペレット状の形状を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体を製造する方法であって、前記各熱可塑性樹脂を溶融混合した後、特定の形状に成形することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  7. 請求項6記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法において、前記熱可塑性樹脂の一として廃棄物から回収した熱可塑性樹脂を使用することを特徴とする熱可塑性樹脂の再資源化方法。
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