JP6187657B2 - ポリオレフィン樹脂フィルム - Google Patents

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本発明は、バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂フィルムに関し、より詳細には、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなる樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂フィルムに関する。
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。
バイオマス由来の樹脂としては、乳酸発酵を経由して製造されるポリ乳酸(PLA)が先行して商業生産が始まったが、生分解性であることをはじめ、プラスチックとしての性能が現在の汎用プラスチックとは大きく異なるため、製品用途や製品製造方法に限界があり広く普及するには至っていない。また、PLAに対しては、ライフサイクルアセスメント(LCA)評価が行われており、PLA製造時の消費エネルギーおよび汎用プラスチック代替時の等価性等について議論がなされている。
ここで、汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂等、様々な種類が用いられている。特に、ポリエチレンは、フィルム、シート、ボトル等に成形され、包装材等の種々の用途に供されており、世界中での使用量が多い。そのため、従来の化石燃料由来のポリエチレンを用いることは環境負荷が大きい。
そのため、ポリエチレンの製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。例えば、現在までに、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレンやブチレンを、再生可能な天然原料から製造することが研究されてきた(例えば、特許文献1を参照)。
特表2011−506628号公報
本発明者らは、ポリオレフィン樹脂フィルムの原料であるエチレンに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたポリオレフィン樹脂フィルムは、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン樹脂フィルムと、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
したがって、本発明の目的は、バイオマス由来のエチレンを用いたカーボンニュートラルなポリオレフィンを含む樹脂組成物からなる樹脂フィルムを提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造された樹脂フィルムと機械的特性等の物性面で遜色ないポリオレフィン樹脂フィルムを提供することである。
本発明による樹脂フィルムは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなる樹脂組成物からなるものであって、
上記の樹脂組成物が、上記のバイオマス由来のエチレンを上記の樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなり、上記の樹脂組成物が、0.91〜0.96g/cmの密度を有することを特徴とするものである。
本発明の態様においては、上記の樹脂組成物が、1〜30g/10分のメルトフローレートを有することが好ましい。
本発明の態様においては、上記の樹脂組成物が、上記のバイオマス由来のエチレンを、上記の樹脂組成物全体に対して5〜95質量%含んでもよい。
本発明の態様においては、上記のモノマーが、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα−オレフィンをさらに含んでもよい。
本発明の態様においては、上記のモノマーが、バイオマス由来のα−オレフィンをさらに含んでもよい。
本発明の態様においては、上記の樹脂組成物が、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα−オレフィンとを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含んでもよい。
本発明の態様においては、上記の樹脂組成物が、5〜90質量%の上記のバイオマス由来のポリオレフィンと、10〜95質量%の上記の化石燃料由来のポリオレフィンとを含むものであってもよい。
本発明の態様においては、上記のα−オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであることが好ましい。
本発明の態様においては、上記のポリオレフィンが、ポリエチレンであることが好ましい。
本発明の態様においては、上記の樹脂組成物が押出成形されてなる樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明の態様においては、上記の押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われることが好ましい。
本発明の態様においては、上記の樹脂フィルムからなる、包装製品であることが好ましい。
本発明の態様においては、上記の樹脂フィルムからなる、シート成形品であることが好ましい。
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂フィルムが、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなる樹脂組成物からなり、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなることで、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂フィルムを実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
また、本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂フィルムと比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来のポリオレフィン樹脂フィルムを代替することができる。
バイオマス由来のエチレン
本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンの原料となるバイオマス由来のエチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により得ることができる。以下、バイオマス由来のエチレンの製造方法の一例を説明する。
バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
本発明において、バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
本発明のエチレンを得るために、この段階で、エタノール中の不純物総量が1ppm以下にする等の高度な精製をさらに行ってもよい。
エタノールの脱水反応によりエチレンを得る際には通常触媒が用いられるが、この触媒は、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。プロセス上有利なのは、触媒と生成物の分離が容易な固定床流通反応であり、例えば、γ―アルミナ等が好ましい。
この脱水反応は吸熱反応であるため、通常加熱条件で行う。商業的に有用な反応速度で反応が進行すれば、加熱温度は限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上の温度が適当である。上限も特に限定されないが、エネルギー収支および設備の観点から、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。
反応圧力も特に限定されないが、後続の気液分離を容易にするため常圧以上の圧力が好ましい。工業的には触媒の分離の容易な固定床流通反応が好適であるが、液相懸濁床、流動床等でもよい。
エタノールの脱水反応においては、原料として供給するエタノール中に含まれる水分量によって反応の収率が左右される。一般的に、脱水反応を行う場合には、水の除去効率を考えると水が無いほうが好ましい。しかしながら、固体触媒を用いたエタノールの脱水反応の場合、水が存在しないと他のオレフィン、特にブテンの生成量が増加する傾向にあることが判明した。恐らく、少量の水が存在しないと脱水後のエチレン二量化を押さえることができないためと推察している。許容される水の含有量の下限は、0.1%以上、好ましくは0.5%以上必要である。上限は特に限定されないが、物質収支上および熱収支の観点から、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
このようにしてエタノールの脱水反応を行うことによりエチレン、水および少量の未反応エタノールの混合部が得られるが、常温において約5MPa以下ではエチレンは気体であるため、これら混合部から気液分離により水やエタノールを除きエチレンを得ることができる。この方法は公知の方法で行えばよい。
気液分離により得られたエチレンはさらに蒸留され、このときの操作圧力が常圧以上であること以外は、蒸留方法、操作温度、および滞留時間等は特に制約されない。
原料がバイオマス由来のエタノールの場合、得られたエチレンには、エタノール発酵工程で混入した不純物であるケトン、アルデヒド、およびエステル等のカルボニル化合物ならびにその分解物である炭酸ガスや、酵素の分解物・夾雑物であるアミンおよびアミノ酸等の含窒素化合物ならびにその分解物であるアンモニア等が極微量含まれる。エチレンの用途によっては、これら極微量の不純物が問題となるおそれがあるので、精製により除去しても良い。精製方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。好適な精製操作としては、例えば、吸着精製法をあげることができる。用いる吸着剤は特に限定されず、従来公知の吸着剤を用いることができる。例えば、高表面積の材料が好ましく、吸着剤の種類としては、バイオマス由来のエタノールの脱水反応により得られるエチレン中の不純物の種類・量に応じて選択される。
なお、エチレン中の不純物の精製方法として苛性水処理を併用してもよい。苛性水処理をする場合は、吸着精製前に行うことが望ましい。その場合、苛性処理後、吸着精製前に水分除去処理を施す必要がある。
ポリオレフィン
本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、上記の製造方法により得られたものを用いることが好ましい。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。なお、ポリオレフィンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
バイオマス由来のポリオレフィンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα−オレフィンをさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα−オレフィンをさらに含んでもよい。
上記のα−オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3〜20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα−オレフィンを含むことで、重合されてなるポリオレフィンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
上記のポリオレフィンが、ポリエチレンであることが好ましい。バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となるからである。
上記のポリオレフィン中のバイオマス由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリオレフィン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、ポリオレフィン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
bio(%)=PC14/105.5×100
本発明においては、理論上、ポリオレフィンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリオレフィンのバイオマス度は100%となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリオレフィン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリオレフィンのバイオマス度は0%となる。
本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンやバイオマス由来の樹脂フィルムは、バイオマス度が100%である必要はない。樹脂フィルムの一部にでもバイオマス由来の原料が用いられていれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減するという本発明の趣旨に沿うからである。
本発明において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
ポリオレフィン、特に、エチレン重合体やエチレンとα−オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができるため好ましい。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む触媒である。
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1〜30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1〜4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基等が挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。
周期律表第IV族の遷移金属化合物において、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、炭素数1〜20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基等が挙げられる。
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種または二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタン等のランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性層状珪酸塩、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられる。
また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
また、ポリオレフィンとして、エチレンの重合体やエチレンとα−オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
樹脂組成物
本発明において、樹脂組成物は、上記のポリオレフィンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは25〜75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂フィルムを実現できる。
上記の樹脂組成物は、0.91〜0.96g/cm、好ましくは0.915〜0.955g/cm、より好ましくは0.92〜0.95g/cmの密度を有するものである。樹脂組成物の密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。樹脂組成物の密度が0.91g/cm以上であれば、該樹脂組成物からなる樹脂フィルムの剛性を高めることができる。また、樹脂組成物の密度が0.96g/cm以下であれば、該樹脂組成物からなる樹脂フィルムの透明性や機械的強度を高めることができる。
上記の樹脂組成物は、1〜30g/10分、好ましくはインフレ法では1.5〜6.0g/10分、Tダイ法では、4〜20g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するものである。メルトフローレートとは、JIS K7210−1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。樹脂組成物のMFRが1g/10分以上であれば、成形加工時の押出負荷を低減することができる。また、樹脂組成物のMFRが30g/10分以下であれば、該樹脂組成物からなる樹脂フィルムの機械的強度を高めることができる。
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリオレフィンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα−オレフィンとを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含んでもよい。つまり、本発明においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリオレフィンと、化石燃料由来のポリオレフィンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
本発明の態様によれば、樹脂組成物は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは25〜75質量%のバイオマス由来のポリオレフィンと、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは25〜75質量%の化石燃料由来のポリオレフィンとを含むものである。このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のエチレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物の製造工程において、または製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリオレフィン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲で添加される。
樹脂フィルム
本発明による樹脂フィルムは、上記の樹脂組成物からなり、樹脂組成物がバイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなることで、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂フィルムを実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂フィルムと比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来のポリオレフィン樹脂フィルムを代替することができる。
本発明による樹脂フィルムの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本発明においては、押出成形されてなることが好ましく、押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われることがより好ましい。
例えば、以下の方法で、押出成形により樹脂フィルムを成形することができる。上記した樹脂組成物を乾燥させた後、ポリオレフィンの融点以上の温度(Tm)〜Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融し、例えばTダイ等のダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラム等で急冷固化することによりフィルムを成形することができる。溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
上記のようにして得られる樹脂フィルムの厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、5〜500μm程度、好ましくは5〜200μm程度である。また、樹脂フィルムは、単層のフィルムとして用いてもよいし、複数枚をラミネートして積層フィルムとして用いてもよい。
用途
本発明による樹脂フィルムは、容器や袋等の包装製品、化粧シートやトレー等のシート成形品、積層フィルム、光学フィルム、樹脂板、各種ラベル材料、蓋材、およびラミネートチューブ等の各種用途に好適に使用することができ、特に、包装製品およびシート成形品が好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
測定・条件
下記の実施例1〜および比較例1〜において、バイオマス度とは、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量の値である。
樹脂フィルムの製造
下記の実施例1〜および比較例1〜で用いた押出製膜機の条件は、以下のとおりであった。
スクリュー径:90mm
スクリュー型式:フルフライト
L/D:28
Tダイ:11S型ストレートマニホールド
Tダイ有効開口長:560mm
比較例1
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SHA7260、バイオマス度:94.5%、密度:0.955g/cm、MFR:20g/10分)を290℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、積層フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
実施例1
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SHA7260、バイオマス度:94.5%、密度:0.955g/cm、MFR:20g/10分)50質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC701、バイオマス度:0%、密度:0.919g/cm、MFR:14g/10分)50質量部とをドライブレンドした樹脂(バイオマス度:48%、密度:0.937g/cm、MFR:17g/10分)を、290℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、積層フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
実施例2
バイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SHA7260、バイオマス度:94.5%、密度:0.955g/cm、MFR:20g/10分)33質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC701、バイオマス度:0%、密度:0.919g/cm、MFR:14g/10分)67質量部とをドライブレンドした樹脂(バイオマス度:32%、密度:0.931g/cm、MFR:16g/10分)を、290℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、積層フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
比較例2
化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC701、バイオマス度:0%、密度:0.919g/cm、MFR:14g/10分)を290℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、積層フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
樹脂組成物および樹脂フィルムの評価
上記の実施例1〜および比較例1〜2で用いた樹脂組成物の加工適性および得られたフィルムの特性について、以下の各種評価:(1)ドローダウン、(2)ネックイン、(3)モーター負荷、(4)樹脂圧力、(5)ループスティフネス、を行った。
(1)ドローダウン
上記の実施例1〜および比較例1〜2で用いた樹脂組成物を、上記の押出製膜機を用いて、Tダイ幅560mm、樹脂温度290℃、スクリュー回転数34rpmの条件で、押出コーティング膜が膜切れするか、サージングする最高引取り速度(m/分)を測定した。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
(2)ネックイン
上記の実施例1〜および比較例1〜2で用いた樹脂組成物を、上記の押出製膜機を用いて、Tダイ幅560mm、スクリュー回転数105rpmの条件で、引取り速度140m/分、エアーギャップ120mmの時の両耳ネックイン(mm)を測定した。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
(3)モーター負荷
上記の実施例1〜および比較例1〜2において、上記の押出製膜機を用いて樹脂フィルムを製造した際のモーター負荷(A)を測定した。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
(4)樹脂圧力
上記の実施例1〜および比較例1〜2において、上記の押出製膜機を用いて樹脂フィルムを製造した際の樹脂圧力(MPa)を測定した。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
(5)ループスティフネス
上記の実施例1〜および比較例1〜2で得られた積層フィルムを、幅15mm、長さ150mmに切り出し、剛性試験機(東洋精機製作所社製、商品名:ループステフネステスタ)を用いてフィルムの剛性(N)の測定を行った。ループの長さは60mmとした。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。
Figure 0006187657
比較例3
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm、MFR:2.7g/10分)を320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、積層フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
実施例3
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm、MFR:2.7g/10分)33質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC604、バイオマス度:0%、密度:0.918g/cm、MFR:8g/10分)67質量部とをメルトブレンドした樹脂(バイオマス度:29%、密度:0.918g/cm、MFR:6.3g/10分)を、320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、積層フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
実施例4
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm、MFR:2.7g/10分)33質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC604、バイオマス度:0%、密度:0.918g/cm、MFR:8g/10分)37質量部と、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:KC573、バイオマス度:0%、密度:0.910g/cm、MFR:15g/10分)30質量部とをメルトブレンドした樹脂(バイオマス度:29%、密度:0.916g/cm、MFR:8.4g/10分)を、320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、積層フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
実施例5
バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名:SLL318、バイオマス度:87%、密度:0.918g/cm、MFR:2.7g/10分)33質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC604、バイオマス度:0%、密度:0.918g/cm、MFR:8g/10分)37質量部と、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:KS560T、バイオマス度:0%、密度:0.898g/cm、MFR:16g/10分)30質量部とをメルトブレンドした樹脂(バイオマス度は29%、密度は0.912g/cm、MFRは8.7g/10分)を、320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、積層フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
比較例4
化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:LC600A、バイオマス度:0%、密度:0.919g/cm、MFR:7g/10分)を320℃の樹脂温度にて、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100)上に押し出して、積層フィルムを得た。押出成形の条件を、有効巾は560mm、押出厚みは30μm、押出速度は100m/分に設定した。
樹脂組成物および樹脂フィルムの評価
上記の実施例3〜5および比較例3〜4で用いた樹脂組成物の加工適性および得られたフィルムの特性について、以下の各種評価:(6)ドローダウン、(7)ネックイン、(8)モーター負荷、(9)樹脂圧力、(10)シール開始温度、を行った。
(6)ドローダウン
上記の実施例3〜5および比較例3〜4で用いた樹脂組成物を、上記の押出製膜機を用いて、Tダイ幅560mm、樹脂温度290℃、スクリュー回転数34rpmの条件で、押出コーティング膜が膜切れするか、サージングする最高引取り速度(m/分)を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
(7)ネックイン
上記の実施例3〜5および比較例3〜4で用いた樹脂組成物を、上記の押出製膜機を用いて、Tダイ幅560mm、スクリュー回転数105rpmの条件で、引取り速度140m/分、エアーギャップ120mmの時の両耳ネックイン(mm)を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
(8)モーター負荷
上記の実施例3〜5および比較例3〜4において、上記の押出製膜機を用いて樹脂フィルムを製造した際のモーター負荷(A)を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
(9)樹脂圧力
上記の実施例3〜5および比較例3〜4において、上記の押出製膜機を用いて樹脂フィルムを製造した際の樹脂圧力(MPa)を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
(10)シール開始温度
上記の実施例3〜5および比較例3〜4で得られた積層フィルムを、厚さ幅15mm、長さ200mmに切り出し、シール温度は90〜150℃、シール圧力は30N/cm、シール時間は1秒でヒートシールして、シールが開始される温度(℃)を特定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
Figure 0006187657

Claims (10)

  1. バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα−オレフィンを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンと、を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムを備えるラミネートチューブであって、
    前記樹脂組成物が、5〜90質量%の前記バイオマス由来のポリオレフィンと、10〜95質量%の前記化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなり、
    前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなり、前記樹脂組成物が、0.91〜0.96g/cmの密度を有する、ラミネートチューブ
  2. 前記樹脂組成物が、1〜30g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1に記載のラミネートチューブ
  3. 前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンを、前記樹脂組成物全体に対して5〜95質量%含んでなる、請求項1または2に記載のラミネートチューブ
  4. 前記バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα−オレフィンをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のラミネートチューブ
  5. 前記バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが、バイオマス由来のα−オレフィンをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のラミネートチューブ
  6. 前記樹脂組成物が、25〜75質量%の前記バイオマス由来のポリオレフィンと、25〜75質量%の前記化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のラミネートチューブ
  7. 前記α−オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のラミネートチューブ
  8. 前記ポリオレフィンが、ポリエチレンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のラミネートチューブ
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のラミネートチューブの製造方法であって、
    前記樹脂組成物を押出成形することを特徴とする、製造方法。
  10. 前記押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われる、請求項9に記載の製造方法。
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